SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/24(土) 22:08:57.09 ID:QnpkscZJ0<>ガラララ・・・
兄「うお、なんて量だ、年末だっていうのに」
「そういう商売をしてる奴もいるってことだ、誰もが暮れを整理整頓で明かしているわけじゃあない」
兄「なにもこんな時期にまで仕事熱心になることもないだろう」
ガチャンッ
兄「……っつー、金属のハコは冷たいな、木製にしろっての」
「客に文句つけるな、検品頼むぞ」
兄「はいはい、お任せあれよ…あれ?インクどこだ、インク…」
「そうだ、お前去年まではちょくちょくこの時期になると家に帰ってただろ、あれは良いのか?今年」
兄「えー…ああ、まぁ、仕事が忙しいなら仕方ないと思ってなぁ…お、あったあった」<>兄「…メリークリスマス」
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/24(土) 22:14:55.83 ID:QnpkscZJ0<> 兄「故郷に帰って出来の悪い弟と一緒に酒を酌み交わすのも悪くはないんだが、それでも会社に迷惑をかけるにはいかないさ」
「そりゃな」
ガチャガチャ
兄「……ん?これ」
「検品」
兄「だから、これだよ」
「…なんだ」
兄「この金属製の等身大人形が…まさか1/1スケールのミニチュアってわけでもないだろ」
「そうかもな」
兄「ふざけんなよ、これは機人盗賊御用達の機体じゃねえか」
「お得意だろ?」
兄「馬鹿野郎!後ろ暗い香り仄かな品物ならいくつも歯を食いしばって見過ごしてきたが、こんなものはあんまりだ!」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/24(土) 22:23:11.11 ID:QnpkscZJ0<> 「この時期が最も警察の手の及ばない時期なんだ、仕方ないだろ」
兄「仕方ないだと!」
「全てを隠ぺいして運べるほど奴らも金を湯水の如く使えないってことだ、堂々と正面玄関から大量に仕入れたい時だってある」
兄「…この世界の物流に毒牙をかけるのはいつだって魔族!そして盗賊と相場は決まっている!俺らの仕事は!?」
「貿易だ、それがどうした?」
兄「お前…!」
「近年、世界各地を魔族の変種が襲っているんだ…俺らだって得意先への航路がいくつか途絶えてる」
「こういう商売をしていかなきゃ、俺らだって危ないんだ」
兄「…さぞ儲かるんだろうな」
「ああ、汚い仕事を回してすまないとは思っているが、会社のためだ、目を瞑ってくれ」
兄「……」
「お前は真面目すぎる、こんなことはどこだってやっているんだ」
兄「…わかってるよ」
「……すまない」
兄「……作業に戻ってくれ、検品を済ませるから」
「……」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/24(土) 22:30:23.47 ID:QnpkscZJ0<> ガチャッ
兄「…はぁ…すごい数だ、これが全て盗賊達の身体になるのか」
兄「頑丈で…しなやかで…荷馬車を襲うにはおあつらえ向きの機体なんだろうな」
兄「だが親から貰った肉体を棄ててまで、こんな表情も何もない身体を寄り代に悪徳を重ねて生きていくなんて…俺には考えられん」
兄(…その片棒を、俺は担いでいるわけだが…)サラサラ
「おい、兄」
兄「どうした、追加のハコなら脇に寄せておいてくれ」
「手紙だ」
兄「ああ、じゃあ…それもまとめて脇に」
「違う、お前宛てだよ」
兄「…俺に?」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/24(土) 22:37:27.59 ID:QnpkscZJ0<> ガチャッ
兄「……ふー、疲れた疲れた…なんて仕事量だ、盗賊どもめ」
兄「さっさとシャワーを浴びて、…そうか、明日は休日か、ふむ」
兄「丁度良く機嫌も悪いし、酒飲んでから寝るか…よしよし」
兄(…本当なら母さんや弟達と過ごしているところだが、それも来年に持ち越しだな)
兄「今年は一人寂しくクリスマスですよ、っと…はぁ」
トポポポポ
グイッ
兄「……ぷはー、うめえ…」
兄「……」
兄「ああ!母さんのプディング食いたい!やっぱり休み入れときゃよかった!あーやっちまった!」ゴロンゴロン
兄「あーでも家に帰るとまた体重増えるしなあ!でも美味いんだよなあ母さんのプディング!」ゴロンゴロン <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga <>2011/12/24(土) 22:56:41.45 ID:c10Nv2kAO<> 兄「さて」
パサッ
兄「手紙の差出人…“ノゥディ”さんかな?達筆すぎて逆に読みにくいな」
兄「誰だかイマイチ思い出せないが、まぁ中身を見ればわかるだろう」
パラッ
兄「…えー…っと…クリスマスの件、わざわざお便り…ああ!俺が前に質問を送った学者さんか!」
兄「まさか返事が来るとは…!どれどれ…」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga <>2011/12/24(土) 23:17:40.79 ID:c10Nv2kAO<>
“クリスマスという日が古代において重要な祭典であることは、多くの資料からも明らかです”
“その祭典は古代において大きなウェイトを占める宗教のものであることも有名です”
“ですが、クリスマスに行われる民俗行事については、そう深い研究が及んでいません”
“いち学者として、あなたがクリスマスの民俗に興味を抱いていることは、とても嬉しく思っています”
ガチャ
老人「やあ、紅茶はいらんよ」
女「私」
老人「! 遠路はるばるやってきて無言で入ってくることもないだろう」
女「久しぶり」
老人「…ああ…久しぶり…まあ、座りなさい、疲れただろう」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga <>2011/12/24(土) 23:36:27.27 ID:c10Nv2kAO<> サラサラ
老人「店の方はどうかね、うまく、やっていけそうかね」
女「こういう副収入があるから平気」
老人「…何より、と言えばいいのか…」
女「それは手紙?」
老人「ん、ああ、返事を書いていてね」
女「そう」
老人「クリスマスの民俗について興味がある人から質問が届いたのだよ、嬉しくて、忙しいのだが、つい筆を取ってしまった」
女「! クリスマス」
老人「君はもう少し、別の分野にも食いつくべきかなあ」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga <>2011/12/25(日) 00:27:55.98 ID:b4T8jvuAO<>
女「サンタクロース」
老人「クリスマスの祭典は有名だが、サンタクロースの知名度はあまりにも低い」
老人「私はこういった分野も手を伸ばしているが…君は?サンタクロースについて…」
女「…昔、論文を読んだ…気がする」
女「子供達に玩具を配給して回る、紅衣の老人」
老人「素晴らしい、孫とは大違いだな」
女「比べないで」
老人「ふっふ」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/25(日) 00:49:25.76 ID:1B9+g5Ha0<> 女「当時の困窮した地域への物資補給、そのイベントの一環として行われていた…または、当時から何か由来ある祭事か…」
老人「クリスマスのサンタクロースについては、あまりに情報が少ない…研究も、全く進んでいない」
女「推測の域を出ないと言うのも憚られる」
老人「うむ…ああ、紅茶でも飲むかね?」
女「ココア」
老人「無いよ」
女「じゃあいらない」
老人「そうかい…ま、そういうことで、私も手紙の彼からの質問にどう答えたものかと、迷っていてね」
女「質問の内容は?」
老人「うむ、それがね…“サンタクロースとは、当時の霊体であったり、魔族なのではないか?”という、意見に近い質問なんだが」
女「…霊体……魔族」
老人「そう」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/25(日) 00:59:57.94 ID:1B9+g5Ha0<> 女「魔族が特定の日に、恵みをもたらす…」
老人「漁港か、農村か…収穫や大漁の時期を示しているということかね」
女「そういった自然からの大規模な恩恵を、サンタクロースの配給の由来と見なすこともできる」
老人「いやいや、サンタクロースは実在する、と考えてみてはどうかね」
女「ありえない」
老人「可能性の選択肢に登らないほどにかね?」
女「猛獣にソリをひかせ、子供達に玩具を配給する老人…どう考えても奇祭でしかない、サンタクロースという人物は存在しない」
老人「当時からの伝説であると」
女「そう」
老人「ふむ…まぁ、自然な考え方であるといえよう」
老人「しかし奇祭として人間が扮するであろう“サンタクロース”、それは当然あったかもしれない、だがオリジナルにサンタクロースは存在していた、という可能性もあるのではないかね」
女「そんなことはわからない」
老人「はっは、もっと夢を持ちたまえよ」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga <>2011/12/25(日) 10:33:19.14 ID:b4T8jvuAO<> 女「手紙にはこう書けばいい」
老人「む?」
女「“そんなものはいない”」
老人「酷い話だ」
女「“古代人の空想か逸話の誇大伝承です”」
老人「畳み掛けますね」
女「“あまり魔術的な方向へ思索を反らし、現実から逃げないよう”」
老人「言い過ぎですよ、君なりのジョークかい」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/25(日) 16:04:57.90 ID:1B9+g5Ha0<> 女「魔力や魔術が絡む伝承とは付き合っていられない」
老人「考古学者らしからぬ発言だ、もっともだがね」
女「魔術が生み出す現象…または疑似生物、不可能とは言い切れない事だけど、あり得ないその一言で切ってしまいたくなるわ」
老人「我々が立ち向かう歴史の難しい所さ」
コポポポ・・・
老人「果実茶でもいかがかな」
女「ゲテモノ」
老人「君ならば飲んでくれると思っていたのにな」ゴクゴク
女「前に飲んだ」
老人「そうだったかね?」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/25(日) 17:15:18.43 ID:1B9+g5Ha0<> サラサラ・・・
老人「……」
女「なんて返事を?」
老人「とりあえず“霊や魔力が関わっている可能性は低い”という旨を伝えておくことにしました」
女「やっぱりそうなる」
老人「我々も資料がなくては断定ができないからね、まぁ、“その可能性も否定はできない”とも添えておくのだが」
女「それがいい、私達も“ありえない”とは思っていても、どこかで“あり得るかもしれない”とは思うから」
老人「うむ」
サラサラ <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/25(日) 18:45:52.07 ID:oOspkLgn0<> こんな時代なら宗教も無そうだな <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/25(日) 21:57:12.46 ID:1B9+g5Ha0<> 老人「しかし、戯言なのだが」
女「?」
老人「もしもこのサンタクロースというものが存在していれば…君が以前に発見した石板の謎にも、近づけるのではないかね」
女「…あれはクリスマスの宗教、その真面目な部分を記したものだった…民族との関わりが記されているものとは違うように思える」
老人「だが頭打ちなのだろう?」
女「そうだけど」
老人「ならばサンタクロースとやらに現を抜かすのも悪くはないのでは?」
ズズズ・・・
老人「ふむ、砂糖が足らんなあ」ボドッ
女「……」 <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/25(日) 23:38:00.93 ID:1B9+g5Ha0<> ガチャッ
「おじいさま、教授様からの資料と手紙を…!」
女「…」
老人「おお、すまないね、私が行けばいいものを小間使いさせてしまって」
「…いえ、これも私の役目ですから」
パサッ
老人「…ふむ、やはり素数番の多くには関連性が認められない、か…なるほど、うむ」
「では、失礼します」
老人「孫を頼むよ」
「…はい」
バタン
老人「…君、彼女と知り合いかね?」
女「見た事はある」
老人(睨みつけていたように見えるが…まぁ彼女、綺麗だからなぁ、嫉妬か…?まさかなあ) <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/26(月) 00:01:02.19 ID:YIW/vNML0<> 女「それは?」
老人「碑文だよ、以前君にも見てもらったものの一つだ…君を呼んだのも、このためだね」
女「…番数は22、人型か」
老人「人型の碑文から読み取ることができる情報は多くて助かる」
女「その多くが宗教と関わりがある」
老人「そう、何らかの物語から飛び出したような、実にユニークな意匠のものが多い」
女「この槍を掲げている目の無い人物…ルシナス、私が調べていた宗教のものと一致する点が多かった」
老人「うむ、同一のものと見ていいだろう」
女「硬く、破壊不可能な碑文…そこに刻まれたルシナス…」
女「…これまで多発する事件…それを考えると、いつかは…」
老人「うむ…」 <>