◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 10:44:59.50 ID:MdzyGnxAO<>遊戯王ZEXALとポケモンのクロス
VIPで少し投下したやつです
ZEXALの方は一応漫画準拠<>遊馬「ポケモンげっとビングだぜ、オレ!」
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 12:34:39.85 ID:MdzyGnxAO<>
アストラル「ポケットモンスター、縮めてポケモン。この世界に存在する不思議な生き物の事だ」
アストラル「この世界はカントー地方、ジョウト地方、ホウエン地方、シンオウ地方、そしてイッシュ地方と区分けされるのだが……」
アストラル「この物語ではその内のシンオウ地方という北の国を舞台とする。主人公は言わずもがな『九十九遊馬』、彼だ」
アストラル「それではこれから遊馬やポケモン達が織り成す冒険の世界へレッツゴー!」
アストラル「ちなみに私の出番はこれだけだ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 13:00:53.12 ID:MdzyGnxAO<>
====
そこはフタバタウンという田舎町の一角。
九十九遊馬と武田鉄男はいつものようにポケモンバトルを繰り広げていた。
遊馬「どぅわーっ!?」
地面を転がっていく遊馬。
遊馬「いでで……」
後頭部を手で押さえながら遊馬は自分と向かい合っている相手へと目を向ける。
鉄男「これで五十連敗だな、遊馬」
鉄男は爆笑しながら言っている。
遊馬「くそおー! 汚えぞ、鉄男! オレのポケモンは持ち物なしなのにぃー!!」
鉄男「腕の差だ! お前じゃあどんなものポケモンに持たせてもオレに勝てねーぜ!!」
遊馬「ちぇっ!」
鉄男「じゃーな、遊馬。せいぜいポケモンを鍛えとくんだな」
片手を振って鉄男は去っていった。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 13:18:51.78 ID:MdzyGnxAO<>
遊馬「……オレも帰るかなー」
「どうしたの、遊馬」
遊馬「! 小鳥ー!」
小鳥「ん?」
小鳥は遊馬の右手にあるモンスターボールを見て、
小鳥「また鉄男君にポケモンバトルで負けちゃったのね」
遊馬「ああ、今日も全滅だぁ!!」
小鳥「全滅って……ポニータとかけっこで勝負とか、イシツブテを素手で割る……みたいな?」
遊馬「おう!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 14:50:46.31 ID:MdzyGnxAO<>
小鳥「ホントにおバカなんだから……」
溜息まじりに小鳥は言うが、遊馬は笑い、
遊馬「わかってないなぁ小鳥は。あれはチャレンジ……いや、かっとビングなんだ!!」
小鳥「って言ってもどれも出来てないじゃない!」
遊馬「大事なのは挑み続けること! かっとび続けることだろ!?」
遊馬は真剣な目で右手のモンスターボールを見つめている。
小鳥は呆れたような顔だ。
遊馬「諦めなきゃ、いつかは高速で走れるし叩き割れる!」
小鳥「それってポケモントレーナーだったお父さんとお母さんが使ってたモンスターボールなんでしょ?」
遊馬「ああ、中にいるコイツも父さん達のポケモンだ。大事な相棒さ」
遊馬は信じている。この相棒(ポケモン)と一緒ならどんなことでもやり遂げられる。諦めなければ夢を叶えられる!
小鳥「遊馬の目指す夢って、今は一つしかないじゃない」
遊馬「まーね! どでかい夢さ!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 14:57:58.55 ID:MdzyGnxAO<>
====
彼の名は九十九遊馬。彼はポケモンリーグチャンピオンを目指している。
遊馬「たっだいまー!」
遊馬は自宅のドアを勢いよく開ける。しかし、家の中は静閑としている。
遊馬「あれ、誰もいないのかぁ?」
遊馬が廊下へ一歩踏み出すと、後ろから襟首を掴まれた。
遊馬「どぅわ!?」
「こりゃ遊馬!」
遊馬「ば、婆ちゃん!」
春「帰ってきたらただいまと言えといつも言っているじゃろ!」
遊馬「いやさっき言ったよ!」
春「そうじゃったか?」
遊馬「そうだ、明里姉ちゃんは?」
春「ズイの新聞社に行っているよ。今は忙しい時期なんじゃろ」
遊馬「ふーん。今日の晩飯はなに?」
春「お前の好きなポケモン飯フルコースじゃ!」
遊馬「マジでぇ!? やったー! 出来たら呼んでー、テレビ見てくるー!」
春「って、こりゃー!! 手洗いうがいせんかー!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 15:04:32.16 ID:MdzyGnxAO<>
====
遊馬「ヤバいヤバい、婆ちゃんのせいで遅れたじゃん!」
TV「テッテレー」
………………
にゃにゃにゃにゃ〜ん!(運命ギター風)
強盗「へっへえ、よくやったぜスカンプー! お前の臭いガスで銀行強盗も楽勝だったぜ」
スカンプー「ぷううっ」
強盗「へけっ、あとはドダイトスを待たせてるからソイツに乗って逃げれば……」
シャキンッ!
強盗「!?」
スカンプー「」バタン
強盗「どうしたスカンプー!」
「そこまでよ、強盗スカンプー太郎」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 15:26:31.98 ID:MdzyGnxAO<>
強盗「だ、誰だテメエは!?」
にゃにゃにゃにゃ〜ん!!
「天が呼ぶ……」
「地が呼ぶ、人が呼ぶ、ポケモンが呼ぶ、悪を倒せと私を呼ぶ!!」
「快傑ニャ☆ルマー、参上!!」
強盗「快傑ニャ☆ルマーだと!?」
ニャ☆ルマー「あなたの悪事もここまでよ。行きなさい、ニャルマー!!」
ニャルマー「にゃおーん!」
バリバリイイッ!
強盗「そんなあ……」バタン
ニャ☆ルマー「……彼もまた取り憑かれた一人のようね。己の心の闇に」
にゃにゃにゃにゃ〜ん!(運命ピアノ風)
………………
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 15:40:26.35 ID:MdzyGnxAO<>
………
翌朝、《トレーナーズスクール》
遊馬「昨日も最高だったよなー、『快傑ニャ☆ルマー』!!」
鉄男「……」
遊馬「鉄男?」
鉄男「お前さぁ……」
「とどのつまり、遊馬君は子供なんですね」
遊馬・鉄男「イインチョー!!」
等々力「特撮なんて、子供が見るものですからねー」
遊馬「そんなことねーよ!」
鉄男「委員長は言い過ぎだと思うが、それでも『快傑ニャ☆ルマー』はなぁ……」
遊馬「なんだよー、何が悪いんだよー!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 15:56:46.36 ID:MdzyGnxAO<>
等々力「とどのつまり、」
鉄男「ヒーローが女の子だから」
遊馬「なんだよその理由!? カッコイイなら別にそれでいいじゃんか!」
鉄男「カッコイイか?」
等々力「さあ。とどに女の子なのに快傑ってなんなんでしょうか」
遊馬「カッコイイだろおおおおっ!?」
小鳥「おはよう、遊馬。何の話してるの?」
遊馬「あっ、小鳥ー聞いてくれよー!」
小鳥「へっ、な、なになに?」
遊馬「最近特撮が面白い!!」
小鳥「は、はあ?」
遊馬「カッコイイよな? カッコイイだろ!?」
小鳥「な、なにが?」
等々力「とどのつまり、『ニャ☆ルマー』の話です!」
小鳥「あ、イインチョー」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 16:55:34.24 ID:MdzyGnxAO<>
鉄男「特撮の『快傑ニャ☆ルマー』ってあるだろ? それで遊馬がそれ面白いって言い出してよ」
小鳥「……快傑ニャルマー、って何?」
三人「……………………………………」
小鳥「?」
遊馬「小鳥はもう席着けよ」
小鳥「なにそれ!」
遊馬「だからなー、『ニャ☆ルマー』の魅力はぁ……」
「何の話かな、遊馬くん?」
遊馬「だあああっ! 次から次へとおっ!?」
キャッシー「お、おはよう遊馬くん……」
遊馬「……」
キャッシー「……」
遊馬「あっ、キャッシー! おはよー!」
キャッシー「う、うん、ありがとう」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 17:06:22.73 ID:MdzyGnxAO<>
遊馬「キャットちゃんもさー、カッコイイと思うよなー?」
キャッシー「え、えっと?」
遊馬「カッコイイだろ!?」
キャッシー「か、カッコイイ……///」
遊馬「ほらー! 分かってくれる人がいたぜー!」
鉄男「そーみたいダナ」
等々力「とどのつまり、遊馬くんはやっぱり子供なんですね」
小鳥「……」
遊馬「なんだよそれー! ていうか小鳥は何でちょっと怒ってるんだよおー!?」
キャッシー「言っちゃった言っちゃった///……きゃ! っと」
等々力「とどのつまり、今日もこのクラスは平和みたいです」
鉄男「だな」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 21:18:50.42 ID:MdzyGnxAO<>
====
〜放課後〜
遊馬「よおーっし、今日もかっとビングだぜー!!」
小鳥「またポケモンバトル?」
鉄男「おいおい。まさか」
遊馬「なっ、やろうぜ鉄男ー!」
鉄男「やっぱりかよ。でもお前、オレに今五十連敗してるじゃねえか」
遊馬「今日こそ勝つ! かっとビングだ、オレー!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 22:58:33.14 ID:MdzyGnxAO<>
小鳥「遊馬、かっとぶのもいいけどあんまり鉄男君に迷惑かけちゃダメよ?」
鉄男「い、いや迷惑ではねえけどよ。ゆ、遊馬とのバトルもそれなりに……」
遊馬「鉄男?」
鉄男「なっ、何でもねえよ!」
遊馬「?」
等々力「とどのつまり、遊馬君はこの等々力孝がもらっていきましょう」
遊馬・鉄男・小鳥「イインチョー!!!」
等々力「まあ最初から一緒にいたんですけどね。ほら、キャットちゃんも」
キャッシー「……」
鉄男「委員長が遊馬をもらうってどういう事だよ?」
等々力「その通りの意味です。とどのつまり、遊馬君とこの委員長である等々力孝がバトルするんです」
遊馬「委員長と、オレが?」
等々力「はい」
遊馬「いいな、それ!」
等々力「決まりですね!」
鉄男・小鳥「ええええええええ〜っ!」
鉄男(あっさりと決めやがった……!)
小鳥(このあと遊馬と一緒にショッピングに行くつもりだったのに……!)
すると鉄男と小鳥の背後からぞっとする視線が放たれる。
鉄男・小鳥「!?」
キャッシー「ごろごろ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/03(土) 23:23:08.89 ID:MdzyGnxAO<>
====
《とある草むら》
等々力「この辺でいいですか?」
遊馬「ああ、構わないぜ!」
遊馬・等々力「決闘(バトル)!!」
遊馬「行け、ヘイガニー!」
ヘイガニ「へいへいー!」
等々力「ヘイガニですか。とどのつまり、このポケモンで行きましょう! カモン、タマザラシ!」
タマザラシ「たまー」
遊馬「いいっ! 初めて見るポケモン!?」
等々力「とどのつまり、てたたきポケモンのタマザラシです!」
遊馬「タマザラシ……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 03:12:57.77 ID:I8yeP7XAO<>
鉄男「始まったな」
小鳥「委員長のポケモン、可愛いじゃない」
キャッシー「……舐めてかかると痛い目に遭うわよ///」
小鳥「……何で顔赤いのよ?」
キャッシー「いや、ちょっと、あのタマザラシの真ん丸な形が……///」
小鳥「ああ……」
等々力「タマザラシ、とどのつまり、『たいあたり』です!」
タマザラシ「たまー!」
タマザラシは走ってヘイガニへと向かうが、
ヘイガニ「…………」
よちよちとタマザラシは小さい脚を動かすだけでちっとも進んでいない。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(九州)<>sage<>2011/12/04(日) 08:24:50.55 ID:1ULbGVlAO<> ねたのかな
とりあえず支援 <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 10:37:36.25 ID:I8yeP7XAO<>
遊馬「い、イインチョー?」
等々力「とどのつまり、タマザラシは歩くのが苦手なんです!」
タマザラシ「たま、たまっ」
遊馬「ってことは」
ヘイガニ「へい?」
遊馬とヘイガニは互いに見合う。
鉄男「タマザラシは隙だらけってことだな」
遊馬「それなら一気に決めてやるぜー、『クラブハンマー』だ!」
ヘイガニ「へいへーい!」
がちりと固めたハサミでヘイガニはタマザラシの腹を殴った。
タマザラシ「たまー!?」
ゴロゴロとタマザラシが殴られた勢いで後ろに倒れて転がっていく。
遊馬「よっしゃー!! ヘイガニ、近付いて追撃だー!!」
ヘイガニ「へいへーい!」
鉄男「あっ、バカ!」
小鳥「?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 10:42:36.57 ID:I8yeP7XAO<>
遊馬「かっとビングだ、ヘイガニー!!」
ヘイガニ「へーい!」
もう一度クラブハンマーをタマザラシに当てようとするヘイガニだが、
等々力「とどのつまり、砂糖より甘いですよ遊馬君!」
先程のクラブハンマーの衝撃で転がっていたタマザラシはいまだに止まっていない。
ヘイガニ「へい!?」
転がるタマザラシに攻撃を外すヘイガニ。
等々力「とどのつまり、タマザラシは『歩くより転がる方が速い』んです!」
遊馬「な、なに〜っ!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 10:55:41.03 ID:I8yeP7XAO<>
等々力「とどのつまり、『ころがる』ですよ!」
タマザラシ「たまー!!」
高速回転したタマザラシの体当たりでヘイガニは弾き飛ばされ、遊馬にぶつかった。
ヘイガニ「へいー!?」
遊馬「どぅええええ!」
バタン、と二人が倒れ込む。
等々力「ヘイガニ、加えて遊馬君も戦闘不能。とどのつまり勝負ありですね」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 10:58:44.99 ID:I8yeP7XAO<>
小鳥「遊馬!」
遊馬「くそー。委員長がこんなに強いなんてー」
鉄男「お前は考えなさすぎなんだよ」
キャッシー「でも、きゃっと今度は遊馬君が勝つわ」
遊馬「そう言ってくれるのはキャットちゃんだけだぜー」
キャッシー「あ、えと、その……///」
小鳥「むー」
遊馬「んじゃ、そろそろ帰るか。もう遅いしさー」
小鳥「そうね」
等々力「とどのつまり、僕もこれで帰らせてもらいましょう」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 11:02:56.91 ID:I8yeP7XAO<>
鉄男「……ん?」
鉄男のズボンのポケットから何かが鳴っている。
ポケギアだ。
どうやらメールのようで、
鉄男「こいつは……」
遊馬「どうしたんだー、鉄男?」
鉄男「い、いや何でもねえ」
ポケギアをポケットにしまい、鉄男は走り出した。
鉄男「じゃあな、みんな! また学校で会おうぜ!」
遊馬「あ、うん!」
小鳥「じゃあねー」
等々力「鉄男君の家はあちらの方でしたっけ?」
遊馬「うーん……どうしたんだろ、あいつ」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/04(日) 12:35:14.64 ID:ON7rilPDO<> キャッシーはアニメ準拠なのか漫画準拠なのか <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/04(日) 13:20:00.64 ID:+XrRdUdDP<> かっとびにingだからかっとビングだけどげっとなら普通にゲッティングなんじゃ… <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 14:46:23.14 ID:I8yeP7XAO<>
====
翌朝、《トレーナーズスクール》
遊馬「今日もいい天気、ポケモンバトル日和だぜー!」
小鳥「もう、それしか頭にないんだから」
遊馬「小鳥もやればいいのにさー。せっかく可愛いんだし!」
小鳥「え、か、かわ……?//」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 14:52:16.79 ID:I8yeP7XAO<>
遊馬「小鳥のムックル!」
小鳥「む、むっくる?」
遊馬「そうそう、可愛いよなー小鳥のムックル」
小鳥「……はあ」
遊馬「? どうした、小鳥」
小鳥「もういい、遊馬なんてし・ら・な・い」
遊馬「なんだよそれ!」
小鳥「ほんと、ポケモン脳なんだから」
遊馬「ポケモン脳って……。大体この学校にいる奴はほとんどポケモンバトルが好きなんだよ! ほら、あれ見ろって!」
小鳥「?」
遊馬の指差す方向ではポケモンバトルが行われていた。
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(長屋)<><>2011/12/04(日) 14:53:39.75 ID:b17czIlV0<> てすた <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 15:00:17.46 ID:I8yeP7XAO<>
小鳥「こんな朝早くから……って遊馬、バトルしてるの鉄男君じゃない?」
遊馬「あ、ホントだ」
等々力「た、大変です〜!」
遊馬「どーしたんだ、イインチョー?」
等々力「とどのつまり、鉄男君が『シャーク』とバトルを……」
遊馬「シャークと!?」
小鳥「誰?」
等々力「とどのつまり、この学校の札付きの、学校一のポケモントレーナーでもある人です!」
小鳥「へえ〜」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 15:09:27.02 ID:I8yeP7XAO<>
遊馬「でも、それのどこが大変なんだよ?」
等々力「それが……」
遊馬達に話をしようと委員長は口を開くが、委員長の言葉を掻き消すようにバトルをしている方から叫び声が響いた。
鉄男「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
遊馬「鉄男……ッ!?」
鉄男と鉄男のゴンベが地面に倒れ伏す。
鉄男「く……」
「約束通り、お前のゴンベは貰ってくぜ」
声の主である少年の名は神代凌牙、通称『シャーク』。今のバトルでの鉄男の対戦者だ。
シャークは地面に落ちている鉄男のモンスターボールを拾い、それにゴンベを戻した。
凌牙「じゃーな、雑魚(デブ)。昨日尻尾巻いて逃げてりゃこんな目に遭わなかったのによ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 15:14:21.78 ID:I8yeP7XAO<>
シャークがその場を去ろうとした時、
遊馬「鉄男!」
凌牙「?」
等々力「鉄男君、大丈夫ですか!?」
小鳥「しっかり!」
凌牙(くだらねえ)
遊馬「ちょっと待てよ!」
凌牙「だから誰だよ、お前」
遊馬「オレは鉄男のクラスメートの九十九遊馬だ! お前、鉄男のゴンベをどうする気だ!!」
凌牙「今のバトルにオレ達は互いのポケモンを賭けた。こいつは当然の報酬だぜ?」
遊馬「!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 15:20:58.00 ID:I8yeP7XAO<>
小鳥「鉄男君、なんでそんな!」
鉄男「あいつに昨日呼び出されて、オレはポケモントレーナーを名乗る腕じゃないって因縁つけられて……」
凌牙「そういうことだ。そいつは同意した上でバトルを受けた、お前に口出しされる覚えはねぇな」
遊馬「でも、人のポケモンを奪うなんて許されるわけない! シャーク、ならオレがお前を倒してゴンベを……」
鉄男「! やめろ、遊馬! お前には関係ないだろ!?」
遊馬「あっ、」
遊馬(しまった、勢いでついかっとビングを〜!?)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 15:26:48.29 ID:I8yeP7XAO<>
頭を抱える遊馬に対し、シャークは鼻で笑う。
凌牙「フッ、そんなデブのお友達がオレに敵うはずねぇだろ!」
遊馬「そ、そんなのやってみないと分かるかよ! オレだってポケモンチャンピオン目指してるんだ!!」
凌牙「! ポケモンチャンピオンだと……? ふざけるな、そんな軽々しくチャンピオンを目指すなんて言うんじゃねぇ!!」
遊馬「な……、オレの夢なんだ。オレの勝手だろっ!?」
凌牙「ハンッ、夢……ね」
シャークは右の手の平を一瞥して、握り締める。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 15:31:55.30 ID:I8yeP7XAO<>
凌牙「笑わせるぜ。どうせお前、ロクなポケモン持ってねぇんだろ。そんな奴に夢見る価値なんてないね!」
遊馬「なに、」
小鳥「なんですって!?」
凌牙「あん?」
遊馬「小鳥!?」
小鳥は遊馬に見向きもせず、シャークへと歩を進めていく。
小鳥「遊馬のこと何も知らないくせに、勝手なこと言わないでよ!」
遊馬「小鳥……」
普段の小鳥なら絶対にしないような怒りを表した顔。
その表情と対峙するシャークは、
凌牙「へぇ。そこの馬鹿のようにオレに突っ掛かってくる男はいくらでもいたが、女は初めてだ」
そして右足を蹴り上げた。彼の前にいる小鳥の腹に向かって。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 15:34:31.17 ID:I8yeP7XAO<>
小鳥「…………ッ!?」
遊馬「小鳥――――――ッ!!?」
腹を蹴られた小鳥は肺から空気が無理矢理出され、痛みでその場にしゃがみ込む。
鉄男「観月ッ!!」
鉄男と委員長が小鳥に駆け寄っていく。
凌牙「ハハハハっ!!」
遊馬「てめえ、よくも!!」
シャークにつかみ掛かろうとする遊馬だが、その身体は多数の触手によって制止される。
遊馬「ぶっ飛ばしてやる!! はなしやがれー!!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/04(日) 15:36:54.75 ID:I8yeP7XAO<>
ドゴッ、と触手が遊馬を地面に押し付ける。
遊馬「がはぁっ!」
凌牙「ふん。いいだろう、チャンスをやる」
シャークは鉄男のモンスターボールを見つめながら話す。
凌牙「オレもお前を潰したいし、勝負してやるよ。お前が勝てばデブのポケモンは返してやる、しかしオレが勝ったら今度はお前のポケモンを貰う! まぁ、ヘボいのしか持ってないんだろうがな」
凌牙「バトルは明後日の休み、場所はシンジ湖だ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 19:36:18.81 ID:VIjpYeSAO<>
====
遊馬「……」
父母が使っていたモンスターボールを見つめ、座り込んでいる遊馬。そこへ鉄男がやって来た。
鉄男「遊馬、観月は委員長が保健室へ連れていってくれたぞ」
遊馬「小鳥は大丈夫なのか?」
鉄男「観月から、遊馬には気にしないでって伝えといてくれってさ」
遊馬「……」
鉄男「自分がやったことだから遊馬が気に負うことはない……だってよ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 19:43:39.54 ID:VIjpYeSAO<>
遊馬「ふ、ふざけんなよ! オレのせいで小鳥がやられたんだ、気にしないでいられるかよ!?」
鉄男「別にお前のせいじゃない。もちろん観月のせいでもない。悪いのはシャーク、そしてあいつに挑んだオレだ」
遊馬「鉄男は悪くないだろ!? それに、シャークが悪いんだからオレはシャークを許せないんだ!!」
鉄男「でもお前には、」
遊馬「関係あるさ!!」
鉄男「!」
遊馬「小鳥を傷付けられた、それだけで関係は十分だ!」
鉄男「……」
鉄男がズボンのポケットから何かを取り出し、それを遊馬の顔の前に突き出した。
鉄男「オレのもう一匹のポケモンだ」
遊馬「……!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 19:46:51.89 ID:VIjpYeSAO<>
突き出されたのはモンスターボールだった。
鉄男「お前、ヘイガニしか持ってないだろ。シャークが一匹でバトルしてくるなんてことはないと思うし……持っていけよ」
遊馬「鉄男……」
しかし、遊馬はボールを押し返す。
鉄男「遊馬……」
遊馬「いいよ、鉄男のポケモンを傷付けるわけにはいかないし。オレの力で何とかするからさ!」
鉄男「……そうか」
遊馬「じゃ、オレは小鳥のところに寄ってから帰るよ」
鉄男「いや、遊馬」
遊馬「?」
鉄男「もう一つ、教えとく」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 20:14:49.49 ID:VIjpYeSAO<>
====
遊馬はマサゴタウンという町に来ていた。
遊馬「ここか」
彼はとある研究所の前に立っている。
そこは『ナナカマド博士の研究所』。
鉄男から聞いた話だと、この研究所の主であるナナカマド博士はポケモンについて研究していてポケモンに詳しいらしい。
そこで遊馬はシャークに勝てないか、ナナカマド博士に相談しにきたのだった。
遊馬(でも、偏屈なじいさんって有名なんだよなー)
だがもう四の五の言っている場合じゃない。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 20:28:54.43 ID:VIjpYeSAO<>
遊馬は研究所のインターホンを押す。
遊馬「……」
誰かが出てくる様子はない。
遊馬「誰もいないのかー?」
今は夕方だ。と言っても辺りはうっすら暗いので、研究所に明かりがついているのが分かり誰かがいることが窺える。
遊馬はもう一度インターホンを押してみる。
やはり誰も出てこない。
もう一度押す。
出てこない。
もう一度。
反応なし。
もう一度、
「うるさーいッッッ!!!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 20:31:38.98 ID:VIjpYeSAO<>
五回目にして研究所のドアは怒号とともに開かれた。
遊馬「いだーっ!?」
どうやら勢いよく開かれたドアに顔をぶつけられたらしく、遊馬は地面を転がり回っている。
「なんだね、君は」
研究所から出てきたのは初老(とまではいかないが結構な年齢だろう)の男性だ。
白衣を着用しているからか、遊馬はナナカマド博士だとすぐ判断した。
遊馬「あんた、ナナカマド博士か?」
「…………」
遊馬「?」
すうっ、と男性は息を大きく吸い込み、
「初対面の人に対して、あんたとは何だ――――――――ッ!!!」
怒鳴った。
遊馬「ひええええええええええええ!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 20:33:57.81 ID:VIjpYeSAO<>
====
少し落ち着いたようで、男性は平淡に話す。
ナナカマド「うむ、そうとも。私がナナカマドだ」
遊馬(聞いてた通りの恐いおじさんだった……)
ナナカマド「少年、君の名前は?」
遊馬「ひ、ひゃい! 九十九遊馬でありやす!!」
ナナカマド「九十九遊馬君、か。マサゴの子ではないな?」
遊馬「あ、うん」
ナナカマド「それで私に何の用だ?」
遊馬「オレにポケモンのことを教えてほしいんだ!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 20:36:47.37 ID:VIjpYeSAO<>
ナナカマド「ポケモンのことを?」
遊馬「ああ、あんたは博士でポケモンに詳しいんだろ?」
ナナカマド「そうだが」
遊馬「ならオレにポケモンバトルが強くなる方法を教えてくれ!!」
ナナカマド「……なるほど。一つ聞いていいかな?」
遊馬「?」
ナナカマド「君は小学生か?」
遊馬「は……?」
ナナカマド「……」
遊馬「いや、中学生だけど」
ナナカマド「そうか……。それなら、小学生になって出直せい!!」
ピシャリとナナカマドは研究所のドアを閉めた。
遊馬「でえええ! 何でだよおおおおおおお!?」
ドアの向こうからナナカマドは答える。
ナナカマド『私は小学生のお願いしか聞かん!』
遊馬「なんだよそれ〜!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 20:41:26.11 ID:VIjpYeSAO<>
遊馬(くそ〜……こうなったら話を聞いてくれるまで待ってやる!)
====
時刻は深夜十二時、遊馬は今だにナナカマド博士の研究所の外にいた。
遊馬「ううー、さみぃー」
北の国と言われるだけあってか、夜はやはり寒い。
野宿なんてしたことがない遊馬は夜の寒さの脅威を初めて知ることになる。
遊馬「くぅ〜、でもバトルは明後日、いや明日なんだ……ここで引き下がるわけにはいかないぜ!」
遊馬は右手でモンスターボールを持っている。
遊馬「かっとビングだー、オレ!!」
つい力んでボールのスイッチを押してしまった。
ヘイガニ「へいへーい! ……へい!?」
出てきてすぐに寒さに体を震わすヘイガニ。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 20:45:11.92 ID:VIjpYeSAO<>
遊馬「あ、ごめんごめん!」
ヘイガニ「へい?」
遊馬はこの寒い中ずっと凍えていたからか、顔色が悪い。ヘイガニはそれに気づいた。
遊馬「寒いのに出しちゃってごめんなー」
ボールにヘイガニを戻そうとする遊馬。
しかし、
ヘイガニ「へい!」
避けられた。
遊馬「……戻れ!」
ヘイガニ「へい!」
遊馬「戻れ!」
ヘイガニ「へい!」
遊馬「戻れ!」
ヘイガニ「へい!」
何度もヘイガニを戻そうとする遊馬。それを全てかわすヘイガニ。
遊馬「なんで避けるんだよー!?」
ヘイガニ「へいへーい!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 20:54:24.53 ID:VIjpYeSAO<>
遊馬「何笑って……」
ヘイガニ「へい」
遊馬の足にくっつくヘイガニ。
遊馬「!」
ヘイガニ「……へい」
遊馬「もしかして、お前も一緒に待っててくれるのか?」
ヘイガニ「へいへーい!」
遊馬「……そっか。ありがとう、ヘイガニ」
ヘイガニ「へいへーい」
いつの間にか二人の体の震えは止まっていた。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 21:06:59.36 ID:VIjpYeSAO<>
====
ポケモン博士、ナナカマドの朝は早い。
ナナカマド「うむ、今日もいい天気だな」
窓を開けて外の景色を眺めるナナカマド。そこで彼は視界にあるものを映す。
ナナカマド「む?」
よく確認はできないが、研究所の壁に誰かがもたれ掛かっているらしい。
ナナカマド(泥棒か?)
そう思ったナナカマドは急いで確かめに外へ出る。
すると、彼はある意味で驚かされる。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 21:24:10.77 ID:VIjpYeSAO<>
ナナカマド「君は昨日の……」
研究所にもたれていたのは遊馬と彼のヘイガニだった。今は眠っているが、遊馬達はあれからずっとここにいたのだ。
遊馬「んあ……」
うっすら目を開く遊馬とヘイガニ。ナナカマドは彼らに接近して、
ナナカマド「君、何故こんなところに?」
遊馬「わわっ、ナナカマド博士!?」
ナナカマド「まさかお願いとやらを私に聞いてもらうためにここで待っていたのか?」
遊馬「そ、そうなんだ! 聞いてくれ、実は……」
遊馬の言葉はそこで切れる。ナナカマドが彼の腕を引き寄せたのだ。
いきなり前に引かれて盛大にすっ転ぶ遊馬。すぐに何か文句を言おうとするが、
遊馬「……!!」
遊馬とナナカマドの目の前、そこにはポケモンが立っていた。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 21:33:03.99 ID:VIjpYeSAO<>
遊馬は何かの本でこのポケモンを見たことがある。恐らくビーダルだ。
ビーダルはいかにも襲って来そうな様子で鼻息を荒くしている。というより、先程遊馬が立っていた場所に軽くパンチをして地面を砕いたところだ。相当荒れている。
遊馬(ひ、ひえええ〜っ)
野生のポケモンの恐ろしさを前にした遊馬は尻もちをつく。
ナナカマド「何をやっている! 君のヘイガニがピンチだぞ!」
いつの間にかビーダルは寝ぼけてフラフラしているヘイガニに矛先を向けている。
遊馬「し、しまった。ヘイガニー!!」
ナナカマド「仕方ない、ムクバード!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 21:45:31.86 ID:VIjpYeSAO<>
ボム、とナナカマドが放ったモンスターボールからムクバードが現れた。
ナナカマド「ムクバード、ヘイガニを助けるのだ。『かぜおこし』!」
ムクバード「むくばー!!」
翼を羽ばたかせることで風が起こり、ビーダルを風が襲う。
ビーダル「……!」
ナナカマド「大したダメージにはなっていないようだな。しかし、ヘイガニをボールに戻す隙は出来たはずだ!」
遊馬「戻れ、ヘイガニ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 21:49:29.32 ID:VIjpYeSAO<>
モンスターボールのスイッチを押す遊馬だが、ヘイガニは戻らない。
ナナカマド「距離が遠すぎるのか!」
遊馬「ど、どうすりゃいいんだよ〜!?」
ナナカマド「これは渡したくなかったが、そんな事を言っている場合ではないか」
ナナカマドが肩にかけていたバッグを遊馬へと放り投げた。遊馬はそれを両手でキャッチする。
遊馬「これは……?」
ナナカマド「私の鞄だ。その中にはモンスターボールが三つあり、それぞれにポケモンが入っている。そのうち一匹を使ってビーダルからヘイガニを守るのだ。私のムクバードがヤツの気を逸らしている間にな!」
遊馬「分かった!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 21:52:04.84 ID:VIjpYeSAO<>
ナナカマド「ムクバード、『かげぶんしん』だ!」
ムクバードの分身がビーダルの真上を飛び回る。
ビーダル「!」
まんまとムクバードを目で追い、気を逸らされるビーダル。
ナナカマド「今だ、少年!」
遊馬「おう! 行け、ポケモン!!」
遊馬は鞄の中の一つのボールを取り出し、投げた。
ヒコザル「うっきー!」
ナナカマド「そのポケモンはヒコザル、炎タイプだ! …………って」
遊馬「よっしゃー、ヒコザル、『ひのこ』だー!」
ヒコザル「うきー!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 22:12:24.57 ID:VIjpYeSAO<>
ヒコザルの小さな口から吐き出された小さな火の玉がビーダルの腹の辺りに当たった。
遊馬「決まったぜー!」
ビーダル「びーだるぅ!!」
遊馬「あれっ、元気そう?」
ナナカマド「馬鹿者!! ビーダルは水タイプで、炎タイプのヒコザルの技は効かん!」
遊馬「それを早く言ってくれよ〜!?」
ナナカマド「ジョーシキだぜ、ぼうや!」
そうこうしている間にビーダルは新たな敵、ヒコザルへと狙いを変えてヒコザルに迫ってきている。
ナナカマド「奇襲作戦は失敗だ! だが、ビーダルが君に向かっていったことでヘイガニを助けることができる!」
ムクバードが空中からヘイガニをさらっていく。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 22:18:24.93 ID:VIjpYeSAO<>
遊馬「いや、助かったけど……!」
ビーダルが口から水を発射する。ヒコザルを抱えながらそれを何とか避ける遊馬。
遊馬「この状況はヤババナイトー!!」
次々と襲い来る放水に遊馬もそれを避けるしかない。しかし、このまま避け続けるなんて不可能だ。
遊馬「何かこのヤババな状況を打開する方法は!?」
ナナカマド「あるにはある! しかし、アレを君に使いこなせるかどうか……」
遊馬「あるんだったら教えてくれよ!」
ナナカマド「うむ……私の鞄にモンスターボール以外に尖った左目だけのサングラスのようなものがあるはずだ。それを目に付けるのだ!」
鞄の中をガサゴソと手で掻き分ける遊馬。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 22:21:31.14 ID:VIjpYeSAO<>
遊馬「! これか……?」
ナナカマドの言った通りのものが鞄から出てきた。遊馬はナナカマドの言った通りにそれを目に付ける。
遊馬「なんだこれ?」
ナナカマド「それはそれで見たポケモンの情報が分かるハイテクな機械、その名も……」
遊馬「名前なんか今はどうだっていいさ! 使い方を教えてくれ!」
ナナカマド「ポケモンをその機械で見るだけだ」
遊馬「よし、それなら!」
機械越しにビーダルを見る遊馬。機械のレンズのような部分にビーダルの情報が文字で記される。
《ビーダル、ビーバーポケモン……》
遊馬「? これ……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 22:27:59.61 ID:VIjpYeSAO<>
ナナカマド「危ない!」
ビーダルの水鉄砲が遊馬の顔面にヒットする。
遊馬「うばあ!」
ビーダル「だるぅ!」
すかさず、遊馬と距離を詰めるビーダル。
逃げろ、とナナカマドの叫び声が聞こえる。
しかし遊馬はビーダルにあえて逆らわなかった。
遊馬「ぐ……!」
ナナカマド「少年!!」
ビーダルに押さえ付けられ、地面に背中を打つ遊馬。
ビーダルは遊馬の肩に噛み付いた。
遊馬「ぐああああっ!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 22:30:45.98 ID:VIjpYeSAO<>
ナナカマド「く、ムクバード! ヘイガニを下ろして少年を……」
遊馬「来るな!!」
ナナカマド「!?」
ビーダル「だるぅ……!!」
遊馬「ビーダル、お前」
遊馬はビーダルの頬にそっと手を寄せる。
ビーダル「だるぅ……?」
遊馬「お前、もしかして恐いのか? この町に迷い込んだんじゃ……」
ビーダルに当てた手でビーダルの頬を撫でる遊馬。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/06(火) 22:33:05.76 ID:VIjpYeSAO<>
遊馬「でも大丈夫だ、オレがお前の住んでたところに帰してやるからさ!」
ビーダル「だるぅ……」
遊馬「なっ?」
ビーダル「だるぅっ!」
攻撃の手を止めたビーダルは遊馬に泣きながら抱き着く。
遊馬「あはは、くすぐったいって!」
ナナカマド「……」
ナナカマド(ビーダルというポケモンは川を木のみや泥のダムでせき止めて住み処を作る。この町ではそれは無理な事だ。それが余計にビーダルの不安を募らせた、だからビーダルは我を忘れて我々に襲い掛かってきたのか)
遊馬「博士! 早くコイツを元の居場所に連れていってやろうよ!」
ナナカマド「む……、あ、ああ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<><>2011/12/06(火) 22:34:05.94 ID:VIjpYeSAO<> 今日の投下は終わりです
見てくださる方がいたらありがとうございました <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(関西・北陸)<>sage<>2011/12/06(火) 23:43:06.98 ID:eYCdB3wAO<> 面白い <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(石川県)<>sage<>2011/12/07(水) 02:44:55.58 ID:9m8v25W10<> 乙
蟹が手持ちと聞いて
ヒトデやくらげのポケモンも持ってるのかなーって思った
でもそれじゃ海産物でシャークとかぶりそう… <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(西日本)<>sage<>2011/12/07(水) 06:36:32.97 ID:bklZUQHA0<> メノクラゲとヒトデマンか <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/07(水) 18:34:00.22 ID:r7JBDHvDO<> 支援乙
ヘイガニとヒコザルは良いチョイスだな <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/12/08(木) 00:27:56.05 ID:DrtpFj7p0<> ヘイガニ「だが俺はレアだぜ」 <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/10(土) 23:59:56.78 ID:2oKxMm+AO<>
====
ビーダルを元の住み処へ帰した遊馬達。
遊馬「いやーまさかアイツがお父さんだったなんてなー」
ナナカマド「家族共々、君にお礼を言っていたな」
遊馬「でもオレはただ博士の機械で見たビーダルの情報からビーダルの気持ちを読み取っただけなんだ」
ナナカマド「! そうか、君はあの機械から……」
ナナカマドは早足で歩きだし、
遊馬「?」
ナナカマド「少年、私の研究所へ来なさい」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 00:20:42.07 ID:u4FyPiqAO<>
====
《ナナカマド博士の研究所》
遊馬(すげぇー! 何か変な機械がたくさんあるー!)
ナナカマド「勝手に触ってくれるなよ」
遊馬「ぎくっ」
ふうっ、とナナカマドはため息をついて窓の方へ体を向ける。
ナナカマド「遊馬、と言ったかな」
遊馬「あ、うん」
ナナカマド「遊馬、君は失礼な少年だ。いきなり私を訪ねたにもかかわらず自分から名乗りもしない、年上の私に敬語も使わない」
遊馬「う……」
ナナカマド「君は非常識な少年だ。バトルの知識においては、相手のタイプすらまともに把握しないで勢いで戦う始末」
遊馬「ううっ……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 00:38:51.96 ID:u4FyPiqAO<>
ナナカマド「だが君にも評価できるところはあるようだ」
遊馬「!」
ナナカマド「それは優しさ、ポケモンを思いやる気持ちは人一倍強いみたいだな。そして先程見せた土壇場での判断力は目を見張るものだった」
再び遊馬に向き合うナナカマド。
ナナカマド「君のその優しさと判断力という長所を生かせば君はきっと凄いトレーナーになるだろう」
遊馬「オレが凄いトレーナーに……」
ナナカマド「うむ! それにはもっとポケモンが必要だな。このヒコザルを持っていきなさい」
ヒコザルがボールから出てきて、遊馬の肩に乗っかる。
ヒコザル「うっきー!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 00:43:58.98 ID:u4FyPiqAO<>
遊馬「持っていきなさい、って……貰っていいの?」
ナナカマド「うむ、すっかり君に懐いているようだしな」
遊馬「やったー! 初めてのポケモンゲットだぜー!!」
ヘイガニ「へいへーい!」
ナナカマド「それと、これも君にあげよう」
ナナカマドは三角形の機械を遊馬に手渡す。
遊馬「さっきのハイテク機械!! い、いいのか!?」
ナナカマド「いいのだ。特に私には必要はない。それに君の判断力はこれがあってこそ輝く」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 00:57:32.40 ID:u4FyPiqAO<>
ナナカマド「一応説明だけしておこう。その機械の名前は『P・ゲイザー』、ポケ・ゲイザーとも言う。ポケ・ゲイザーで見たポケモンの情報は丸分かりというハイテクな機械、つまりはポケモン図鑑といったところだな」
遊馬「『P・ゲイザー』! コイツを使えばシャークにも勝てるかもしれねぇ!」
ナナカマド「シャーク?」
遊馬「ああ、実は……」
遊馬はシャークとバトルをすることになった経緯をナナカマドに話した。
ナナカマド「……なるほど。それで私を訪ねてきたのか」
遊馬「なあ、博士! オレがシャークに勝つにはどうしたらいいかな!?」
ナナカマド「うむ……。確かに君の実力はシャークとやらに劣っているのだろう。しかし、私はさっき言ったはずだ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 01:04:40.42 ID:u4FyPiqAO<>
遊馬の鼻先に人差し指を突き出すナナカマド。
ナナカマド「君の優しさと判断力は優れている。そして、君にはポケモンがいる! 君に足らないところはポケモン達が補ってくれるのだ。また逆も同様。君がポケモンを、ポケモンが君を信じる限り君はそう簡単に負けはしまい!」
遊馬「! は、はい!」
ナナカマド「私の言いたい事は以上。あとは君自身で頑張りなさい」
遊馬はナナカマドにお礼を言い、研究所をあとにする前にナナカマドにこう言った。
遊馬「そういえば、小学生のお願いしか聞かないんじゃ……?」
ナナカマド「改めて考えてみたのだ」
ナナカマドは親指を立てて、
ナナカマド「中学生もイイ!」
遊馬(誰かあの指折ってぇ!)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 01:26:07.28 ID:u4FyPiqAO<>
====
来たる決戦の日!
《シンジ湖》
小鳥、鉄男、委員長の三人は遊馬の到着を待っていた。
等々力「遅いですね、遊馬君」
小鳥「うん……」
鉄男「……」
遊馬はまだ来ていない。
三人から少し離れたところにシャークは立っている。
凌牙「どうせオレに恐れをなして逃げたんだろ」
鉄男「そんなことない! 遊馬は絶対に来る!!」
小鳥「鉄男君……」
等々力(ならシャークは何で遊馬君を待ってるんでしょう)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 01:35:58.50 ID:u4FyPiqAO<>
凌牙「フン!」
シャークは湖の中心にある洞窟の方を見てそっぽを向いてしまった。
「バトル前によそ見なんて余裕だな、シャーク!」
凌牙「!」
小鳥・鉄男「遊馬!」 等々力「遊馬君!」
凌牙「ふん、馬鹿が。尻尾を巻いて逃げてりゃあポケモンだけは助かったものを……」
遊馬「小鳥、体は大丈夫なのか?」
小鳥「うん、少し痛いけど。でも遊馬、どうして来たのよ。遊馬が気に負うことは……」
遊馬「昨日も保健室で言っただろ? シャークは鉄男のポケモンを盗って、小鳥を傷付けた! それをオレは許せねぇ!!」
小鳥「遊馬……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 01:46:15.23 ID:u4FyPiqAO<>
遊馬「さあ、バトルをしようぜシャーク!」
凌牙「ふっ、勝負は二対二だ! いいな?」
遊馬「おう!」
遊馬・凌牙「決闘(バトル)!!」
先にモンスターボールを投げたのはシャークだ。
凌牙「行け、オクタン!」
オクタン「おくとーん!」
遊馬「あのポケモンは!?」
等々力「とどのつまり、きゅうばんポケモンのオクタンです!」
遊馬「オクタン? そうか、あの時の触手はコイツのだったのか!」
凌牙「どうした、早くポケモンを出せ」
遊馬「オクタンか……」
出すポケモンを決めて、遊馬はモンスターボールを投げた。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 01:49:55.24 ID:u4FyPiqAO<>
遊馬「昨日習った。炎タイプには水タイプだー!」
ヘイガニ「へいへーい!」
凌牙「……」
シャークがポカンとする。
鉄男と委員長の二人が固まる。
遊馬「どうした?」
鉄男「遊馬、オクタンは水タイプだ……」
遊馬「なんだってええええ!?」
小鳥「?」
等々力「とどのつまり、遊馬君は体色でタイプを判断したんですか?」
遊馬「あ、あたり……赤だし」
鉄男「ヘイガニだってオレンジだろうが!」
遊馬「そういえばそうだ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 02:05:06.10 ID:u4FyPiqAO<>
凌牙「フン、とんだマヌケな野郎だぜ。そんなヘボい腕で本気でポケモンチャンピオンになるつもりかよ!」
遊馬「く……、でも水タイプと水タイプ! 相性では互角だ!」
凌牙「どうかな?」
遊馬「ヘイガニ、『クラブハンマー』!」
ヘイガニ「へいへーい!」
ドスッとヘイガニのハサミがオクタンを殴る。
遊馬「いいぞ、ヘイガニ!」
凌牙「馬鹿が!!」
オクタンがその多量な足でヘイガニに纏わり付き、ヘイガニの身動きをとれなくする。このためにあえてクラブハンマーを受けたのだ。
凌牙「『ちきゅうなげ』だぁ!!」
オクタン「おくとーん!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 02:08:30.65 ID:u4FyPiqAO<>
投げ飛ばされたヘイガニは地面に勢いよく打たれる。
遊馬「ヘイガニー!!」
ヘイガニ「へいへーい!」
すぐにヘイガニは起き上がった。
凌牙「体は馬鹿みたいに丈夫のようだな」
遊馬「今度はさっきのようにはいかねぇ! ヘイガニ、『バブルこうせん』!!」
ヘイガニ「へいへーい!」
ヘイガニがハサミを開くと、ハサミの中から大量の泡が飛び出す。
等々力「物理攻撃が駄目なら特殊攻撃ですね!」
鉄男「だが……」
バシイッ! とオクタンは飛んで来る泡を払いのけた。
遊馬「!」
凌牙「効かねぇよ。本当の特殊攻撃ってものを教えてやる、『オクタンほう』!!」
オクタンの銃口のような口から、ビシュンと墨が打ち出された。
墨は見事にヘイガニの顔面にぶち当たり、ヘイガニの視界が真っ黒に染まる。
ヘイガニ「へいー!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 21:48:30.83 ID:u4FyPiqAO<>
シャークの次の指示を受けたオクタンはヘイガニに頭をぶつけて攻撃する。
何が起こったか分からないまま、ヘイガニはそのまま吹き飛ばされた。
ヘイガニ「へ、へい……」
遊馬「あの墨をどうにかしないとバトルにならね〜!!」
鉄男「オレのゴンベもあの墨にやられたんだ……!」
小鳥「どうにもできないの!?」
ヘイガニ「へい……」
顔をこすって墨を拭うヘイガニだが、墨は全くとれない。
凌牙「フッ、特別に見せてやる。オレのもう一匹のポケモンを!」
ボコッとオクタンの真下の地面に穴があいた。オクタンはその中に入る。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 21:54:29.82 ID:u4FyPiqAO<>
遊馬「穴ぁ? なんでそんなもの……」
鉄男「っ! 違う遊馬! 後ろだぁ!!」
ボカアアッ! とヘイガニの後ろの地面からポケモンが現れた。
等々力「あのポケモンは……りくザメポケモンのフカマルです!」
フカマル「かまー!」
鉄男「卑怯だぞ! 二匹もポケモンを出すなんて!!」
凌牙「オレは二対二のポケモンバトルとは言ったが、シングルバトルとは言ってないぜ?」
等々力「とどのつまり、屁理屈です!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 21:58:59.42 ID:u4FyPiqAO<>
凌牙「『りゅうのいかり』だぁ!!」
フカマル「かまー!!」
フカマルの吐き出す青い炎がヘイガニを囲み、その身体を焼く。
ヘイガニ「へいい!?」
遊馬「ヘイガニー!!」
ヘイガニ「……、」
ヘイガニは倒れた。
鉄男「……!」
遊馬「も、戻れヘイガニ!」
等々力「遊馬君!」
鉄男「遊馬は一匹しかポケモンを持っていない……ヘイガニを失ったらもう……」
小鳥「遊馬……!」
凌牙「フッ、お前のお友達曰くヘイガニしか持っていないみたいだな。さっさとポケモンを置いてけよ。まあ、仮にもう一匹持っていたとしてもお前じゃオレに勝てねぇ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 22:01:07.17 ID:u4FyPiqAO<>
無理なんだよ、とシャークは吐き捨てる。
遊馬「……無理じゃない」
凌牙「!」
ガチリと拳を握り締める遊馬。
遊馬「ふざけるな、オレは絶対に諦めない! 諦めたら人の心は死んじゃうんだよ!!」
その拳を開き、遊馬はモンスターボールを投げた。
鉄男「もう一つのモンスターボール!?」
ヒコザル「うきー!」
小鳥「遊馬ってあんなポケモン持ってたっけ?」
鉄男「いや、持ってないと思う……」
等々力「とどのつまり、あのポケモンはヒコザル! この辺りでは見ないポケモンです!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 22:04:32.32 ID:u4FyPiqAO<>
遊馬「まだ勝負はこれからだぜ、シャーク!!」
凌牙「……っ!」
『諦めたら人の心は死んじゃうんだよ!!』
凌牙「諦めないって言葉は……」
凌牙(イラッとくるぜ!)
遊馬「ヒコザル、オクタンに『ひのこ』だ!」
ヒコザル「うきー!」
小さな炎が地面に埋まっているオクタンへと向かう。
凌牙「そんな弱火じゃあオレのオクタンは料理できないぜ!」
オクタン「おくとーん!」
バタバタと足を動かして暴れるオクタン。それにより砂が舞い上がり、それだけでヒコザルの吐いた炎は消えてしまう。
遊馬「……!」
凌牙「最後の希望もその程度かよ」
等々力「炎タイプのヒコザルはオクタンにもフカマルにも相性が悪い……とどのつまり、形勢も逆転せず、むしろよりピンチになりました!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 22:13:56.56 ID:u4FyPiqAO<>
シャークの指示で、オクタンとフカマルは次々とヒコザルを攻撃していく。
凌牙「『きりさく』!!」
フカマル「かまー!」
ザギイイッ!! と斬撃がヒコザルに叩き込まれる。
ヒコザル「うき……、」
数々の攻撃を受けたヒコザルはその一撃によりついにひざをつく。
遊馬「ヒコザルー!!」
凌牙「これでも諦めないなんて寝言、ほざくのか?」
遊馬「……っ!」
遊馬(駄目だ……全然かっとべねぇ!!)
小鳥「遊馬……」
シャークのポケモンは水タイプのオクタンとドラゴン・地面タイプのフカマル。
対して遊馬のポケモンは炎タイプのヒコザルただ一匹。しかもヒコザルは数多の攻撃を受けて衰弱している。
相性的にも戦力的にも体力的にも、遊馬が不利。それはバトルの事をよく知らない小鳥にも分かる程の圧倒的に不利な状況。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 22:18:45.37 ID:u4FyPiqAO<>
バトルを見守っている鉄男と委員長もほとんど諦めかけている。
仕方ない、と小鳥は思う。小鳥だって同じだ。
しかし小鳥は見た。遊馬もこのバトルの勝利を諦めかけている。
小鳥(そんな……)
遊馬は今まで不可能な挑戦をたくさんしてきた。
それは強靭な足腰を持つポニータにかけっこで勝つとか、全身が岩で出来ているイシツブテを素手で叩き割るとか。
結局いつも失敗に終わる。しかし遊馬は次の日もまた次の日も挑戦していく。
筋肉痛になり腕に包帯を巻きながらも遊馬は諦めずに挑戦する。
昔からそうだった。小鳥はずっとそれを見てきた。
だからこそ、小鳥は叫ぶ。
どんなに無理だと分かっていても不可能へ挑戦する遊馬が初めて諦めかけている、その時だからこそ小鳥は遊馬に叫ぶ。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 22:23:33.78 ID:u4FyPiqAO<>
小鳥「遊馬!!」
遊馬「!」
彼女はただ一言だけ言う。
小鳥「かっとビングよ、遊馬!」
そして今朝作ってきたおにぎりを遊馬に投げた。
遊馬「これは……」
小鳥「私特製のポケモン飯! それを食べて元気百倍よ!」
遊馬が何かに挑戦する前はいつもあのおにぎりを食べることを小鳥は知っている。
遊馬はポケモン飯を頬張り、飲み込んでただ一言だけこう言う。
遊馬「おう!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 22:27:04.95 ID:u4FyPiqAO<>
再び遊馬はシャークの方を向く。
凌牙「覚悟は出来たのか?」
遊馬「ああ、腹に力も入った!」
遊馬はジャケットのポケットから三角形の機械を取り出し、装着する。
遊馬(そうだ、オレにはこれがある!)
遊馬「P・ゲイザー、セット!」
レンズ越しにオクタンとフカマルを見る遊馬。機械がポケモンの情報を読み取り、読み取った情報がレンズに並べられていく。
しかし、情報は特に意味のないものばかりだった。
遊馬(くそ〜! これじゃあシャークに勝てねぇ〜!!)
いや待てよ、と遊馬はふとヒコザルを見る。
遊馬(そういえばオレはヒコザルの事を炎タイプってことくらいしか知らない)
今度はヒコザルの情報を機械で読み取る。
遊馬(これって……)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 22:29:10.17 ID:u4FyPiqAO<>
凌牙「何をしているか分からないが、今更何をしてもオレには勝てねぇぜ!」
遊馬「そんなのやってみないと分からない!」
凌牙「……ふっ。ならやってみろ!」
オクタンが水を噴射し、フカマルが青い炎を吐き出す。
この攻撃を喰らえば、ヒコザルは戦闘不能になるだろう。
凌牙「残念だったな、この状況でもうお前に勝ち目はねぇよ! お前とデブのポケモンは目の前で湖に沈めてやるぜ!」
遊馬「いや……このバトル、オレの勝ちだ!」
その言葉と同時にヒコザルの全身から炎が溢れ出た。
ヒコザル「うきいいいいっ!!」
凌牙「なに……!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 22:32:26.67 ID:u4FyPiqAO<>
鉄男「あれは!」
等々力「とどのつまりヒコザルの特性……、」
猛火。
ヒコザルの発する炎はまさにそれだ。
遊馬「ピンチになる程、ヒコザルのパワーは増すんだ!」
凌牙「ヒコザルの特性か……!」
遊馬「『かえんほうしゃ』だ!!」
ヒコザル「うきいいいっ!」
ヒコザルの口から吐き出された激しい炎にオクタンとフカマルの技が呆気なく散っていく。
オクタン・フカマル「……ッ!」
凌牙「怯むなぁっ! 二匹の技でなら押し切れる!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 22:37:45.09 ID:u4FyPiqAO<>
シャークは攻撃を促そうとするが、
凌牙「ッ!?」
ピカッ、と湖の洞窟から強い光が発してシャークの視界を奪った。
凌牙「なにが……?」
チカチカする視界の中でシャークは見る。
猛火は目の前まで迫ってきていた。
オクタン「おくとーん……!」
フカマル「かまー!?」
指示が遅れ、オクタンとフカマルは何も出来ずに炎に包まれていく。
当然、シャークも例外ではない。
凌牙「がぁぁああああああ!!」
オクタンとフカマルは倒れた。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 22:42:00.03 ID:u4FyPiqAO<>
ヒコザル「うき!」
戦いを終えたヒコザルは遊馬の肩に上っていく。
遊馬「……」
ヒコザル「?」
倒れたオクタンとフカマルを見て遊馬は、
遊馬「か、勝った?」
と、その背中を後ろから殴られる。
鉄男「このバカ、心配させやがって!」
等々力「凄いです、遊馬君! あのシャークに勝ったんですよ!」
遊馬「はは、ホントだ。夢みてぇ……」
小鳥「やったね、遊馬」
遊馬「おう!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 22:44:52.88 ID:u4FyPiqAO<>
凌牙「……、」
仰向けのまま、シャークは湖の方へ目を向けている。
遊馬「確かに鉄男のゴンベだ」
シャークから受けとったモンスターボールを鉄男に渡す遊馬。鉄男はボールにほお擦りして号泣する。
鉄男「よかったぜゴンベー!」
凌牙「……」
遊馬「ほら、立てよ」
シャークに右手を差し出す遊馬。
凌牙「何のマネだ?」
遊馬「お前はオレの友達に迷惑をかけた。でもさ、シャーク。オレ、お前とのバトルすっげー楽しかったぜ!」
凌牙「……!」
遊馬「またバトルをしよう! 今度はポケモンなんて賭けないでさ」
凌牙「……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 22:47:25.91 ID:u4FyPiqAO<>
シャークは遊馬の手を払いのけて自力で立ち上がる。ポケモンをボールに収めた彼は、
凌牙「九十九遊馬、覚えとくぜ」
一言だけ言ってもう一度湖の方を見てから去っていった。
鉄男「……遊馬、ありがとな。ゴンベを取り返してくれて」
遊馬「いいって! お前ももうポケモンを賭けてバトルなんてすんなよ?」
鉄男「ああ」
等々力「じゃあ帰りましょうか」
鉄男「そうだな。遊馬、観月、帰ろうぜー」
遊馬「いや、鉄男と委員長は先に帰っててくれ」
鉄男・等々力「?」
鉄男「ま、まあいいけど」
湖をあとにする鉄男と委員長。
湖に残ったのは遊馬と小鳥だけだ。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 22:49:22.40 ID:u4FyPiqAO<>
小鳥「遊馬、何かあるの?」
遊馬「ああ。小鳥に大事な話があるんだ」
小鳥「え……?」
もう夕方なのか、オレンジ色の光が湖を照らしている。
オレンジ色の湖で男女が二人きり。どこかロマンチックな雰囲気と言えなくもない。
小鳥(な、なにこれ……)
雰囲気のせいなのか、不思議と鼓動が速くなる。
夕日を背に小鳥の前に立っている遊馬はいつもと感じが違う。
小鳥「え、えっと遊馬。話ってなに?」
遊馬「オレと付き合ってくれ!!」
小鳥「ええええええ〜っ!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/11(日) 22:54:13.51 ID:u4FyPiqAO<>
急な話に小鳥は混乱する。
小鳥「そ、それはその、遊馬、どういうこと?」
遊馬「前から言おうと思ってたんだ。でも言い出せなかった。こういうのって心の準備とかいるしさ」
小鳥「う、うん」
遊馬「でも今日覚悟を決めたんだ。だから小鳥に告白した」
小鳥「こ、告白……」
遊馬「小鳥、答えてくれるか?」
小鳥「えっと……うん。私も同じ気持ちだから……」
遊馬「ってことは、」
小鳥「うん。お願いします」
ペこりと頭を下げる小鳥。
遊馬「よっしゃー!」
遊馬はヘイガニをボールから出して一緒に喜ぶ。どうやらヘイガニにはこの事を言っていたらしい。
小鳥「そ、それで遊馬。いつになるのかな? その……」
遊馬「その?」
小鳥「いわせないでよ、もうっ」
遊馬「うーんと、明日だな。早い方がいいだろ?」
小鳥「う、うん! 明日からね!」
<>
◆UjkDVXCLOk<><>2011/12/11(日) 22:55:45.62 ID:u4FyPiqAO<> 今日は終わり
ヘイガニは海老と思ってくれればいいです 次回はイチャラブ(嘘)
見てくださった方ありがとうございました <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/11(日) 23:03:16.84 ID:jQfSFfNk0<> >>1乙
そっかフカマルがいたか…
てっきり水タイプオンリーになるかと <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/11(日) 23:35:42.42 ID:wTH8pZh8o<> >>1乙 <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 21:41:52.15 ID:bUTumE1AO<>
====
《小鳥の家》
夜、小鳥は毛布にくるまっていたが眠れないでいた。
小鳥「うう……」
夕方の事が忘れられない。
小鳥は毛布から顔を出して、
小鳥「明日から遊馬とこ、恋人同士……」
口に出してみるとやはりくすぐったい。というか恥ずかしいようで、小鳥はすぐに毛布の中へと顔を引っ込める。
小鳥「て、手とかつないだ方がいいのかな? ていうかちゃんといつも通りに話せるかな? あとデ、デートとか……」
どんどん妄想が膨らんでいく。このまま夜を明かしてしまいそうだ。
しかし、小鳥は思い直す。
小鳥「そ、そうだ。明日は恋人になって初めての日なんだから、隈なんて作りたくないし早く寝よう! ムックル、『フェザーダンス』をお願い!」
ムックル「くるっぽー!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 21:45:09.93 ID:bUTumE1AO<>
====
たくさんの羽に包まれて小鳥はすやすやと心地よさそうに眠っていた。だが、寝過ぎた。
小鳥「ん……?」
起き上がり、時計を見る小鳥。針を追うと時刻は八時だと分かる。
小鳥「や、やばい!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 21:47:06.83 ID:bUTumE1AO<>
====
急いで支度をして家から飛び出す小鳥。
小鳥「いってきまーす!」
と、家を出てすぐに誰かとぶつかった。
小鳥「ご、ごめんなさい! ……って遊馬!?」
遊馬「あだだ……。どうしたんだよ、そんなに急いで」
小鳥「遊馬こそ、遅刻しちゃうよ?」
遊馬「……」
小鳥「もしかして待っててくれたの?」
遊馬「まぁね」
小鳥「そ、そっか。ありがとう」
とにかく急がないと、小鳥が遊馬を急くが、
遊馬「大丈夫大丈夫。鉄男にこれ借りてきたからさ!」
遊馬の足元にはスケートボードがあった。
遊馬「後ろに乗れ、小鳥!」
小鳥「うん! ってちょっと待って! なんでヒコザルも乗って……まさか……」
スケートボードの上でヒコザルは火を吹いている。
遊馬「しっかり掴まってろよ」
遊馬の合図でヒコザルが炎を発射すると、スケートボードはピジョットのごとくマッハで飛んでいった。
小鳥「きゃああああああああああああああああああああああ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 21:49:05.80 ID:bUTumE1AO<>
《トレーナーズスクール》
小鳥「やっと着いた……」
遊馬「でも速かっただろ? 楽しかったし!」
小鳥「どこがよっ。まあ何とか間に合ったけど」
遊馬「じゃ、早く教室行こうぜ!」
小鳥「あ! ゆ、遊馬! そ、その」
遊馬「?」
両手を後ろでもじもじする小鳥。
遊馬「何かあったのか?」
小鳥「う、ううん! 何でもない!」
遊馬「そっか」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 21:51:04.02 ID:bUTumE1AO<>
====
ガラリと教室のドアを開けて中へ入る遊馬。
遊馬「おっはよー!」
彼の到着にいち早く反応したのは(髪形が)猫耳少女キャッシーだ。
キャッシー「ゆ、遊馬君!」
遊馬「キャットちゃん、おはよ!」
キャッシー「う、うん。おはよう遊馬君……って」
小鳥「おはよー、キャットちゃん」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 21:53:23.58 ID:bUTumE1AO<>
キャッシー「にゃ〜んであなたが遊馬君と!? まさか一緒に登校してきたんじゃないでしょうね!!」
明らかに遊馬と話す時と性格が一変しているキャッシーに小鳥は苦笑いをする。
遊馬「さっき一緒にスケボーで来たとこさ!」
キャッシー「ふ、二人乗り!」
小鳥「いいじゃない、あなたに文句言われる覚えはないわ。それに遊馬と私はその……」
遊馬「なんだよ?」
小鳥「な、何でもない!」
遊馬の肩に手を置くキャッシー。
キャッシー「そんにゃことより、遊馬君! あのシャークにポケモンバトルで勝ったそうね!」
遊馬「なんだよ、もう知ってるのか?」
教室の奥から鉄男の口笛が聞こえる。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 21:55:08.52 ID:bUTumE1AO<>
今度は遊馬の腕に手を回して接近するキャッシー。
キャッシー「きっと遊馬君の“きゃっとビング”の力ね! すごいわ遊馬くーん」
小鳥「ちょっと! 近づきすぎじゃない!?」
キャッシー「あら、何か文句でも?」
小鳥「む……オオアリクイクイアリよ!」
キャッシー「猫は小鳥を食べるのよ!」
小鳥「なに、やる気!?」
戦闘体勢に入る小鳥とキャッシー。遊馬は二人にどいてよ、と突き飛ばされる。
遊馬「おいおい、二人ともどうしたんだよー!」
小鳥「ゆっ、遊馬は何も分かってない!」
遊馬「な、なにが?」
小鳥「昨日の事よ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 21:57:37.03 ID:bUTumE1AO<>
遊馬「昨日? ……あっ、そうか。でももう先生来ちゃうしなー」
小鳥「? なんで先生?」
遊馬「なんでって、職員室に一緒に行ってくれるんだろ?」
小鳥「………………え?」
遊馬「昨日約束したじゃんか! なんだよ、忘れたのかー!?」
小鳥「ちょっと待って。付き合うって……職員室に一緒に行くってこと?」
遊馬「他に何かあるのか?」
ボッ、と小鳥の顔が耳まで赤くなる。
遊馬「小鳥?」
遊馬が小鳥の顔を覗くと、ばちんと乾いた音が教室に響いた。
遊馬「どぅええええ!?」
小鳥「遊馬のバカ!」
スタスタと早歩きで自分の席に向かい、着席する小鳥。
涙目で真っ赤な頬を手で押さえる遊馬。キャッシーはオドオドしている。
一部始終を見ていた鉄男が遊馬に近寄り、
鉄男「……遊馬、観月に何かしたのか?」
遊馬「し、知らねえ」
チラリと小鳥の方に目をやる遊馬。ふん、とそっぽを向かれた。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 21:59:13.72 ID:bUTumE1AO<>
遊馬「なんなんだ……?」
ガラリと教室のドアが開かれる。
右京「みなさん、おはようございます」
遊馬「げっ、先生!」
右京「そんなところで寝てどうしたんですか、遊馬君?」
遊馬「違うんだよ先生! これは色々あってぇ〜……って、そうだ。先生に話があるんだった!」
右京「話ですか?」
遊馬「ああ」
いつもとは違い、真剣な顔の遊馬。ただ事ではないと右京は察し、
右京「分かりました。では聞きましょう。みなさんは自習をしていてください」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 22:01:03.56 ID:bUTumE1AO<>
遊馬「……というわけなんだ」
右京「なるほど。ご家族の方には話したんですか?」
遊馬「うん、婆ちゃんには。婆ちゃんは賛成してくれた」
右京「なら、私も賛成しましょう。学校側にもかけあってみます」
遊馬「ありがとう、右京先生!」
右京「いえいえ。それにトレーナーズスクールの存在意義は本来それですから。まあ少し寂しい気はしますがね」
遊馬「それと、クラスのみんなにもそのことを伝えたいんだ」
右京「そうですね。では教室に戻ったら話しましょうか」
遊馬「うん!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 22:19:08.51 ID:bUTumE1AO<>
教室に戻ってきた遊馬と右京。
右京「みなさん、みなさんに大事な話があります」
なんだなんだ、と教室がざわつく。
右京「それでは遊馬君」
遊馬「ああ」
小鳥「遊馬?」
遊馬「みんな、聞いてくれ! オレは今日から旅に出る!!」
小鳥「ええええええええええええええええ!?」
鉄男「どういうことだよ、遊馬!?」
等々力・キャッシー「遊馬君!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 22:21:24.26 ID:bUTumE1AO<>
等々力「旅って……とどのつまり学校をやめるんですか?」
キャッシー「にゃ! やめる!?」
遊馬「ああ」
鉄男「ああ、ってそんなこと一言も……」
小鳥「……あっ」
鉄男「観月?」
小鳥(あの告白ってこれの事だったの……?)
遊馬「ごめん、みんな。でもオレ、前から思ってたんだ。ポケモンチャンピオンになりたい、それには旅に出なくちゃって!」
等々力「遊馬君の夢は知っていましたが……」
遊馬「それで昨日シャークに勝って、新しい仲間も出来て、その思いがさらに強くなったんだ! だからまた決心した!」
遊馬「オレはポケモンチャンピオンになる!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 22:25:04.33 ID:bUTumE1AO<>
鉄男「ぷっ」
等々力「ははっ」
あはははは、と教室に笑い声が響き渡る。
遊馬「な、なんで笑うんだよー!?」
等々力「す、すみません。でも」
鉄男「遊馬らしいって思ってな」
遊馬「な、なんだよそれ」
キャッシー「遊馬君! 頑張ってね、きゃっとビングよ!」
ガシッ、と遊馬の手を握るキャッシー。
遊馬「ああ、ありがとうキャッシー」
小鳥「もうっ」
遊馬「小鳥……」
小鳥「いいんじゃない? 遊馬の決めたことなら」
遊馬「おう!」
クラスメート達が笑う中、担任の右京だけが何故か涙ぐんでいた。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 22:27:48.24 ID:bUTumE1AO<>
====
《遊馬の家》
遊馬「P・ゲイザーは持っただろ。あと着替えが入った鞄と……いや要らないか? あ、モンスターボール忘れてた!」
ドタバタと家中を走り回る遊馬。
遊馬「他の町にはポケモンセンターってのがあるらしいし、ボールとP・ゲイザーだけでいっか」
春「いってらっしゃい、遊馬。途中で明里に会ったらよろしく言っといてくれ」
遊馬「おう、婆ちゃん!」
準備を終えて遊馬は家をあとにする。
遊馬「いってきまーす!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 22:29:22.80 ID:bUTumE1AO<>
と、遊馬は家から二メートルも離れていないところで立ち止まった。
小鳥「おそーい!」
遊馬「こ、小鳥ぃ!?」
小鳥はキャリーバッグを片手に持って遊馬の家の前に立っていた。
遊馬「どうしたんだその荷物?」
小鳥「着替えよ、着替え」
遊馬「着替え? なんでそんなもの持ってんだよ」
小鳥「私まだあのこと許してないんだからね」
遊馬「はぁ?」
小鳥「罰として、私も遊馬と一緒に旅をするんだから!」
遊馬「はああああああああああああああ!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 22:34:50.16 ID:bUTumE1AO<>
《マサゴタウン》
遊馬「よっしゃー! トラベリングだ、オレー!!」
小鳥「待ってよ、遊馬!」
ガラガラとキャリーバッグを引きずりながら走る小鳥。
遊馬「その荷物邪魔じゃないか?」
小鳥「これくらい持って行かなきゃ。これでも結構減らしたのよ」
遊馬「オレは服なんて持ってきてないけどなー」
小鳥「え、持ってきてないの!?」
遊馬「ポケモンセンターってところで道具のプスコン通信が出来るんだってさ。それで着替えも家から送ってもらえるんだ」
小鳥「プスコン? ていうかそれ早く言ってよぉ」
遊馬「オレ、小鳥が来るなんて知らなかったしー」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 22:36:44.95 ID:bUTumE1AO<>
小鳥「それでこの町には何をしにきたの?」
遊馬「小鳥に紹介しようと思ってさ」
小鳥「なにを?」
いつの間にか遊馬達はとある建物の前にいた。
小鳥「ここって……」
遊馬「はっかせー!!」
突然大声で叫び出す遊馬。
何回か遊馬が叫ぶと、
「うるさーいッ!!!」
勢いよく開かれたドアが遊馬の顔面にクラッシュする。
小鳥「遊馬ぁ!?」
「まったく、ちゃんとインターホンを押さんか」
遊馬「この間は押したけど同じだったじゃん……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 22:39:24.87 ID:bUTumE1AO<>
あまりの衝撃的な出来事に小鳥はオロオロしている。
「む、遊馬。この女の子は?」
遊馬「オレの幼なじみの小鳥だよ」
ナナカマド「うむ、いい名前だ。私はナナカマド、よろしく」
小鳥「よ、よろしくお願いします」
ナナカマド(女子中学生もいいものだな)
ウンウン、と首を縦に揺らすナナカマド。
小鳥「ゆ、遊馬、この人どういう人?」
遊馬「ナナカマド博士、ポケモンの研究をしている偏屈なおじさんさ」
ナナカマド「偏屈とは心外だぞ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 22:41:03.46 ID:bUTumE1AO<>
遊馬「この人がヒコザルをくれたんだ」
小鳥「そうだったの?」
ナナカマド「うむ、博士である私は初心者トレーナーにポケモンを渡して援助する役目も担っているのだ」
鞄に手を入れてナナカマドは二つのモンスターボールを取り出した。
ナナカマド「遊馬に一匹あげたからあと二匹しか残っておらんが、どうだ、君も欲しいかね?」
小鳥「私はバトルをしないんでこの子だけで十分かな?」
自分のモンスターボールを見て微笑む小鳥。
ナナカマド「天使だ……ではなく、まあ人それぞれだからな。そういう考えも兵隊アリだろう」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 22:43:04.21 ID:bUTumE1AO<>
遊馬「バトルは楽しいんだぜー? 小鳥もやってみれば分かるって!」
小鳥「私はさ、ポケモンといられるだけで楽しいから」
遊馬「それはそうだけどさー」
ナナカマド「遊馬、あまり人の考えに口出しするものではないぞ。それより私に何か用があって来たのだろう?」
遊馬「ああ、そうだった! 博士、オレ今日から旅に出ることにしたんだ!」
ナナカマド「旅?」
遊馬「うん、ポケモン達とシンオウ中を回る立派なポケモントレーナーになるための旅さ!」
遊馬の言葉を聞いて少しにやけるナナカマド。
遊馬「あー! 博士も笑うのかよー!!」
ナナカマド「いや、すまない。しかし私の予想通りでつい、な」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/13(火) 22:45:49.85 ID:bUTumE1AO<>
遊馬「予想通り?」
ナナカマド「私が君にヒコザルをあげたのは、君が旅立つことを見越してのことだ。私のようなポケモン博士からポケモンを貰ったトレーナーは皆旅に出るそうでな」
もっともヒコザルが君に懐いているというのは本当だがな、とナナカマドは付け足す。
ナナカマド「そして、ポケモン博士からポケモンを貰ったトレーナーは皆凄いトレーナーになるとも言われる」
遊馬「凄いトレーナー……」
ナナカマド「この間も言ったな。ま、なれるかどうかは君次第だ」
遊馬「なってみせるよ! 何たって、オレはポケモンチャンピオンになるんだからさ!」
ナナカマド「ポケモンチャンピオンか、夢は大きくだな。しかし君一人の力だけでは達成出来ない。周りの支えがあってこそ。まあその点は心配いらないようだがな」
チラリと小鳥の方を見るナナカマド。何かを察したのか、小鳥は頷く。
ナナカマド「では、気をつけて行ってくるように。今度会う時は今より立派になっているだろう」
遊馬「おう! ありがとう、ナナカマド博士!」
<>
◆UjkDVXCLOk<><>2011/12/13(火) 22:49:00.05 ID:bUTumE1AO<> 今日の分は終わり
あまり進展はなかったですが、次回はあの人が登場です
見てくださった方ありがとうウラ <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/18(日) 12:37:30.34 ID:o74vxCYAO<> わく <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:08:38.64 ID:ZKzbu3GAO<>
====
遊馬はポケモンセンターの前で小鳥を待っていた。
小鳥「荷物預けてきたよ、遊馬ー!」
遊馬「よし、そんじゃ行くかー」
小鳥「ちょっと待って遊馬」
遊馬「?」
何やら分厚いガイドブックに目を通している小鳥。
小鳥「この先の道路からはトレーナーがいたり、強い野生ポケモンが出てくるらしいから気をつけてね」
遊馬「おう、任せとけ!」
小鳥「本当に大丈夫なの?」
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/19(月) 22:11:27.54 ID:Is9Xa+rio<> うほ <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:11:34.21 ID:ZKzbu3GAO<>
手を大きく振って歩く遊馬。
小鳥は知っている。遊馬が調子に乗っている時はロクなことがない。
遊馬「でもさー、ワクワクするよな! 歩いてたらいきなりバトル挑まれたりポケモンが出て来たり! これぞ旅って感じだよなー!!」
小鳥「浮かれるのはいいけど、気をつけてよ」
と、小鳥は立ち止まる。
遊馬「?」
遊馬は後ろを見て歩いていて、小鳥の行動の意図がいまいち掴めない。
遊馬「どうしたんだ、小鳥?」
小鳥「ゆ、遊馬。う、後ろ……」
小鳥の指差す方へ目を向ける遊馬。すると、
ビーダル「だるぅぅ!!」
小鳥「や、野生のビーダル!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:13:02.68 ID:ZKzbu3GAO<>
小さく悲鳴をあげる小鳥。対して遊馬は恐れるどころか気軽そうに、
遊馬「おっ、ビーダルじゃん!」
ビーダル「だるぅ!!」
凶暴そうなビーダルが遊馬を押し倒す。
小鳥「ゆ、遊馬!」
心配そうに叫ぶ小鳥だが、
遊馬「ははは、やめろって〜」
なんか遊馬は呑気に笑っている。
よく見たらビーダルは遊馬を襲っているのではなく、彼に抱き着いていた。
小鳥「あれ?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:15:35.56 ID:ZKzbu3GAO<>
遊馬「このビーダルさ、オレの友達なんだ!」
小鳥「友達?」
遊馬「迷っているところを面倒みただけなんだけどさ」
小鳥「へえ……」
ビーダルとじゃれあう遊馬を見てクスリと笑う小鳥。
小鳥「遊馬って本当にポケモンが好きよね」
遊馬「あったり前だろー!」
すると、ビーダルが急に立ち上がり辺りを見渡す。
遊馬「どうかしたのかビーダル」
ビーダルは不審そうに近くの草むらを見る。
ビーダル「だるぅ!!」
草むらに向かって走り出すビーダル。
遊馬「お、おい!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:17:16.47 ID:ZKzbu3GAO<>
ビーダルの後を追い、草むらを掻き分けて進む遊馬。
ビーダルに追いつくとポケモンが倒れているのが見えた。
遊馬「こ、こいつは?」
P・ゲイザーを取り出して倒れたポケモンの情報を読み取る遊馬。
少し遅れて小鳥がやって来る。
小鳥「遊馬、シャークとのバトルでも気になってたけどその目に付けているのって何?」
遊馬「これか? これはP・ゲイザー、レンズ越しにポケモンを見ればそのポケモンの情報が分かるっていうハイテクな機械さ」
ようやく気付いたのか、小鳥が倒れたポケモンを見て、
小鳥「すごく傷ついてる、ひどい……誰がこんな事……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:19:26.06 ID:ZKzbu3GAO<>
ポケモンの情報を読み取り終えた遊馬。
遊馬「このポケモンはコリンクっていうらしい」
P・ゲイザーではポケモンの状態も調べることができる。
遊馬「コリンクは毒状態なんだ。だからこんなに苦しんでる」
小鳥「毒?」
遊馬「毒状態になると体力がじわじわと奪われていくんだ」
小鳥「そんな、じゃあ早くなんとかしないと!」
遊馬「でもオレ、どくけし持ってないしな……」
二人がコリンクの様子を見ている間に採りに行っていたのか、ビーダルがモモンの実を持ってきた。
ビーダル「だる!」
小鳥「それは?」
遊馬「モモンのみだ! でかしたぜ、ビーダル!」
コリンクにモモンのみを食べさせる遊馬。コリンクの表情は少し和らいだ。
それを見て遊馬と小鳥は胸を撫で下ろす。しかしまだ安心はできない。
ガイドブックを見る小鳥。
小鳥「遊馬、ポケモンセンターはポケモンの回復ができるんだって。コリンクを連れていこう」
遊馬「わかった!」
ビーダルにお礼と別れを告げて、遊馬達は近くの町コトブキシティにあるポケモンセンターへ向かった。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:21:04.56 ID:ZKzbu3GAO<>
《コトブキシティのポケモンセンター》
ジョーイ「かしこまりました、ではコリンクを預かりますね」
小鳥「お願いします」
コリンクを回復マシンへと運ぶジョーイ。
遊馬はロビーにあるソファーに座っている。
小鳥「遊馬」
カウンターの方から戻ってきた小鳥を見て遊馬は立ち上がり、
遊馬「小鳥、コリンクはどうだった?」
小鳥「回復にはまだ時間がかかるみたい」
遊馬「そっか……」
再びソファーに座る遊馬。小鳥はその隣に座って、ガイドブックを開く。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:23:37.97 ID:ZKzbu3GAO<>
小鳥「遊馬、ここら辺には毒タイプのポケモンは少ないみたい」
遊馬「ああ。多分トレーナーがコリンクに毒を負わせたんだ」
膝の上で手を握る遊馬。
遊馬「許せねえ! ポケモンを傷つけてそのまま放っておくなんて!!」
小鳥「遊馬……。とりあえず今はコリンクの無事を祈ろう?」
遊馬「ああ」
少し俯く二人だが、その耳にこんな声が響く。
「ホントに見ていないウラか〜!?」
その声はカウンターから聞こえ、見るとそれに当てられたジョーイが困った顔をしている。
ジョーイだけではない、ロビーにいるトレーナー達も少し嫌な顔をする。
一方、センター中が迷惑そうな雰囲気の中で遊馬と小鳥は互いに顔を見合わせていた。
遊馬・小鳥「……ウラ?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:25:23.92 ID:ZKzbu3GAO<>
ジョーイ「申し訳ありません。そのようなポケモンはうちでは預かってはございません」
ペこりと頭を下げるジョーイ。
しかしジョーイに怒鳴っていた少年の方は収まらない。
「そんなハズはないウラよ! あのケガだとそう遠くには行っていないウラ!」
少年の名前は表裏徳之助。
彼もポケモントレーナーであり、そして……
遊馬「よ! 徳之助」
徳之助「遊馬!?」
小鳥「こんなところで会うなんて」
そう、彼は遊馬達の通うトレーナーズスクールでの友達だ。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:27:19.28 ID:ZKzbu3GAO<>
徳之助「どうして遊馬達がコトブキに……?」
遊馬「それはこっちの台詞だぜ、徳之助。オレ達はシンオウを旅することに決めたからこうして町を回ってるんだけど」
小鳥「どうしてセンターで大声で怒鳴ってたの?」
徳之助「それが……オレのポケモンがいなくなってしまったウラ」
遊馬「ポケモンが?」
徳之助はジョーイに向き直り、
徳之助「本当に預かっていないウラか!?」
ジョーイ「はい。この辺りには毒タイプがあまりいないので、そもそも毒状態のポケモンはそんなに見かけませんし……」
遊馬「毒?」
徳之助「違うウラ! オレのポケモンはトレーナーとのバトルで毒を受けたウラ!」
小鳥「トレーナーとのバトル?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:29:26.32 ID:ZKzbu3GAO<>
ジョーイ「そのポケモンがどんな種類かを言ってもらえれば他のセンターに掛け合えますけど……」
徳之助「そうしてもらうと有り難いウラ。オレのポケモンは『コリンク』ウラ!」
自分のポケモンの名を大声で叫ぶ徳之助だが、それ以上の声が横から聞こえて驚く。
遊馬・小鳥「コリンクー!?」
====
ジョーイ「はい、この子が先程預かったコリンクですね」
コリンク「がうっ」
徳之助「おー! オレのコリンクに間違いないウラ!!」
再会を喜び、抱き合う徳之助とコリンク。
遊馬「まさか徳之助のポケモンだったなんてなー」
小鳥「良かったじゃない、持ち主が見つかって」
遊馬「おう!」
コリンクを抱えて踊りはじめる徳之助を見て微笑む遊馬と小鳥。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:31:17.86 ID:ZKzbu3GAO<>
徳之助「いやー、まさか遊馬達が助けてくれたなんて。借りができてしまったウラ」
遊馬「借りなんて思うなよ、徳之助。オレ達は友達なんだからさ!」
小鳥「それより徳之助君。さっきトレーナーとのバトルでコリンクが毒を負ったって……」
徳之助「……そうウラ。昨日フタバでコリンクを連れて歩いていたら、トレーナーにバトルを挑まれたウラ」
小鳥「そのトレーナーってどんな人なの?」
徳之助「それは……」
バトルの事を思い出したのか、俯く徳之助。
遊馬「徳之助、教えてくれよ! そいつはどんな奴なんだ!?」
徳之助「シャーク……ウラ!」
遊馬「シャーク……!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:33:47.22 ID:ZKzbu3GAO<>
徳之助「シャークは知っているウラね? オレ達のトレーナーズスクールで札付きの神代凌牙の事ウラ!」
遊馬「ああ、知ってるさ。オレもこの前シャークと戦ったばかりだ」
徳之助「シャークと戦ったウラか!?」
遊馬「その時は勝ったんだけどさ」
徳之助「シャークに勝ったウラ……?」
小鳥「ほとんど運だけどね」
遊馬「そんな言い方ないだろー!」
小鳥「でも昨日って……遊馬とシャークのバトルのすぐ後よね?」
遊馬「シャークってあの二匹以外にポケモン持ってたんだな」
徳之助「確かオレと戦った時は四匹持ってたウラ」
遊馬「四匹!?」
徳之助「それでコリンクと戦った毒ポケモンは……」
遊馬「待て、徳之助!」
徳之助「?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:35:23.78 ID:ZKzbu3GAO<>
遊馬「それは聞かないぜ。シャークとはまた戦いたいし、その時になってあいつの手持ちポケモンをオレが知ってたら不公平だからな!」
徳之助「それはすまないウラ」
小鳥「話を戻すけど、シャークとバトルをしたのはフタバなんでしょ? ならどうしてコリンクはフタバから離れたマサゴの道路で倒れていたの?」
徳之助「それが、オレがバトルに負けたらシャークは傷付いたコリンクを掴んでそのまま去っていってしまったウラ」
小鳥「シャークがコリンクをわざわざ遠くへ連れて行って捨てていったのね! ひどい……」
嘆く小鳥だが、一方で遊馬は納得のいかない顔をしている。
小鳥「どうしたの遊馬?」
遊馬「うーん。シャークがなんでそんなことしたのかな、って思ってさ」
小鳥「なんでって……」
遊馬「オレ、シャークはそこまで悪い奴じゃないと思うんだ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:37:03.47 ID:ZKzbu3GAO<>
小鳥「どうして? だってあの人は……」
遊馬「確かにシャークは鉄男のポケモンを奪ったり、小鳥を傷付けたり、ひどい事をしてた」
小鳥「……」
遊馬「でも、あいつ……ポケモンを好きなんだよ」
小鳥「? どうしてそんなことが分かるの?」
遊馬「何となくだけど実際にバトルした感覚かな……あいつとのバトルは楽しかった! あんなに楽しいバトルをする奴がポケモンを嫌いな訳がない!」
遊馬「鉄男、委員長、キャッシー、徳之助! オレが今までに戦ったトレーナーもみんなポケモンが好きなんだ! だから楽しいバトルが出来た……そうだろ、徳之助?」
徳之助「それは否定できないウラ」
小鳥「私には分からないわ……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:39:07.27 ID:ZKzbu3GAO<>
徳之助「……でも昨日のシャークは変な感じだったウラ」
遊馬「変な感じ?」
徳之助「どこか追い詰められているような感じだったウラ」
遊馬「追い詰められている感じ……ね」
小鳥「それは考えても分からないんじゃない?」
遊馬「そうだなー。今度シャークと会ったら分かるかもしれない」
小鳥「今は旅に集中ね!」
遊馬「おう!」
徳之助「旅って次の目的地は決まってるウラか?」
遊馬「ああー、まだだったなー」
小鳥「ガイドブック読む?」
遊馬「めんどくさい……」
小鳥「ええー……」
徳之助「そういうことなら、決まるまでコトブキシティの観光なんてどうウラ?」
小鳥「コトブキシティの、」
遊馬「観光〜?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:44:25.19 ID:ZKzbu3GAO<>
《コトブキシティ》
徳之助「さて、お二人さん。シンオウ地方が誇る大都市、コトブキシティにようこそウラ!!」
ピエロ姿の徳之助が身体を大袈裟に広げる。
遊馬「なんだよ徳之助、改まって」
小鳥「ていうかその格好はナニ!」
徳之助「ケッコー、サマになってるウラ?」
遊馬・小鳥「まあまあ」
徳之助「ところで、二人はポケッチを知ってるウラ?」
ポケッチ? と顔を見合わせる遊馬と小鳥。その様子から知らないようだ。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:45:37.06 ID:ZKzbu3GAO<>
徳之助「ポケッチとは『ポケモンウォッチ』の略ウラ。腕時計型の便利なアイテムウラ」
ほら、と腕に付けたポケッチを遊馬に見せ付ける徳之助。
それを見た遊馬は瞳を輝かせる。
遊馬「す、すげー! なんだこれー!!」
徳之助は遊馬の喜びように少しニヤつき、
徳之助「ポケッチはアプリがあってこそ真価を発揮するウラ」
ピピ、と徳之助がポケッチのボタンを押すとポケッチの画面にデジタル時計が映る。
遊馬「うおっ!」
徳之助「このアプリは『デジタルどけい』ウラ。でもこれで驚いていてはまだまだウラよ」
ボタンを弄り、徳之助は次々と様々なアプリを遊馬に見せ付けていく。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:47:14.21 ID:ZKzbu3GAO<>
徳之助「これは『でんたく』! 難しい計算も楽々解けるウラ!」
遊馬「おお!」
徳之助「今度は『メモようし』! これに大事な事を書けば忘れることはないウラ!」
遊馬「おおー!」
徳之助「『ダウジングマシン』! 落ちている道具の在り処が知れるウラ! 落とし物を見つけるのに最適!」
遊馬「おおおー!」
徳之助「『アラーム』! こいつがあれば寝坊をすることなしで早い朝もバッチシウラ!」
遊馬「おおおおおおー!!!」
徳之助「どうウラ、ポケッチが欲しいウラ?」
遊馬「ほすぃー!!」
小鳥(気持ちいいくらい簡単に乗せられてる……)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:49:21.92 ID:ZKzbu3GAO<>
遊馬「徳之助ー、それどこで売ってるんだー?」
徳之助「まだ売り出されてはいないウラ。でもオレはいくつか予備があるウラ」
遊馬「おっ! ならそれくれよー!」
徳之助「タダではやれないウラ。条件があるウラよ」
遊馬「なんだよー、くれよー」
徳之助「この町にいる三人のピエロを見つけ出し、ピエロ達が出すクイズに答えられたらポケッチをやるウラ!」
遊馬「ピエロのクイズー!?」
徳之助「そうウラ。そいつが条件ウラ」
遊馬「でもピエロなんて……」
ふと目の前の徳之助を見つめる遊馬。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:50:25.98 ID:ZKzbu3GAO<>
遊馬「……、っているじゃんピエロ!!」
指を差された徳之助は笑い、
徳之助「よくぞ見つけたウラ!」
遊馬「舐めすぎだろ、オレを!」
徳之助「さあ、オレのクイズに答えるウラ!」
『第一問、毒状態を直す道具は次の内どれ?』
A、モモンのみ
B、クラボのみ
C、メメンのみ
徳之助「これは簡単な問題ウラ」
遊馬「わかった! 答えはBのクラボのみだー!!」
ぶぶー! とブザー音が鳴る。
徳之助「不正解ウラ」
遊馬「うそー!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:51:53.84 ID:ZKzbu3GAO<>
小鳥「遊馬、ついさっきモモンのみでコリンクの毒を治したばっかじゃない!」
遊馬「あ……」
ピンポンピンポーン、今度は軽やかなメロディーが鳴る。
徳之助「正解ウラ」
小鳥「かすってもないし!」
遊馬「うっ……、たまたま間違えたんだよ。次は間違えねえ!」
徳之助「二人目のピエロはテレビ番組を放送する所にいるウラ」
遊馬「わかったぜ!」
《テレビ局》
遊馬「ここだな!」
小鳥「でもピエロなんていないわ」
徳之助「オレをお探しウラか?」
遊馬「徳之助?」
徳之助「確かにオレは表裏徳之助ウラ。でもピエロとしては第二のピエロなんだウラ」
そう言う徳之助の呼吸は荒い。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:53:20.37 ID:ZKzbu3GAO<>
遊馬・小鳥「……」
徳之助「なんだウラ! その目は!」
遊馬「とにかくクイズを出してくれよ」
徳之助「わ、わかったウラ」
『第二問、ニャルマーはなにポケモン?』
遊馬「かいけつポケモン!」
ぶぶー!
徳之助「不正解ウラ」
遊馬「なんでだよー!?」
小鳥「ねこかぶりポケモン?」
ピンポンピンポーン!
徳之助「正解ウラ」
遊馬「どうして小鳥が知ってんだ!?」
小鳥「前にキャッシーが言ってたの聞いたから」
遊馬「でもこれで残るはあと一問だな! 徳之助、最後のピエロはどこだ?」
徳之助「トレーナー達の憩いの場、ウラ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:54:47.37 ID:ZKzbu3GAO<>
《ポケモンセンター》
遊馬「またピエロがいない!」
徳之助「お、お待たせウラ……」
ゼエゼエと息絶え絶えの徳之助。
小鳥(よくやるわ……)
遊馬「そんじゃ徳之助ー、最後の問題頼むぜ!」
徳之助「オッケー……ウラ」
『第三問、今何問目?』
遊馬「……」
徳之助「これは三秒以内に答えるウラ」
遊馬「わかんねえ!!」
小鳥「なんで!」
ぶぶー!
徳之助「タイムアップウラ」
遊馬「あちこち移動してたから覚えてなかったー!」
小鳥「しっかり第三問って言ってたじゃない……」
遊馬「しまったー!」
ピンポンピンポーン!
徳之助「正解ウラ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:56:24.78 ID:ZKzbu3GAO<>
遊馬「よっしゃ、これで全問正解でポケッチを貰えるよな!」
徳之助「約束どおり、ポケッチを渡すウラ」
遊馬は両手を差し出すが、徳之助はそれをかわして小鳥にポケッチを手渡す。
遊馬「え」
小鳥「わ、私に?」
遊馬「ええええー!!?」
徳之助「実質、遊馬は一つも正解していないウラ」
遊馬「そりゃねーぜ、徳之助〜!」
泣きつく遊馬だが徳之助は取り合わない。
遊馬「くーれーよー」
徳之助「……、はあ」
『裏の裏は表なんだぜ、徳之助!』
かつて徳之助は復讐のために人を騙して自分を強くみせようとしていた。しかし遊馬のその言葉で彼は救われたのだ。
徳之助「仕方ないウラ。ポケッチをやるウラ」
遊馬「本当か!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 22:58:58.09 ID:ZKzbu3GAO<>
徳之助「ただし、また条件があるウラ!」
遊馬「クイズはもう勘弁だぜー?」
徳之助「そんな単調じゃつまんないウラ。今度の条件はオレとのポケモンバトルで勝つことウラ!」
遊馬「バトル……!」
徳之助「どうウラ、この条件呑むウラ?」
遊馬「よし、わかった! トレーナーがバトルを挑まれたら逃げる選択はねえ!」
徳之助「決まりウラ!」
徳之助「勝負は二対二のバトルウラ! 準備はいいウラ?」
遊馬「おう! いつでも来い!!」
小鳥「どうしてこうなるのよ……」
遊馬「小鳥、シャークに勝ったのは運なんかじゃねえ! それを証明してやる!」
小鳥「う、うん」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 23:00:07.25 ID:ZKzbu3GAO<>
徳之助「まずはこのポケモンウラ」
モンスターボールを取り出し構える徳之助。遊馬もそれに倣う。
遊馬・徳之助「決闘(バトル)!!」
二人が同時にボールを投げて、ボールからポケモンが現れる。
ヘイガニ「へいへーい!」
遊馬「行くぜ、ヘイガニ! かっとビングだぜ!!」
意気込む遊馬とヘイガニだが、徳之助のポケモンの姿が見えない。
ヘイガニ「へい?」
遊馬「徳之助、早くポケモンを出してくれよー?」
徳之助「す、すまないウラ」
頭を掻きながら徳之助は申し訳なさそうに、
徳之助「そういえばシャークとのバトルで傷付いたポケモンはセンターに預けてあったウラ」
遊馬「だぁ〜!」
盛大にずっこける遊馬。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 23:01:24.17 ID:ZKzbu3GAO<>
小鳥「ポケモンの回復はまだなの?」
徳之助「みたいウラ」
遊馬「勝負はお預けかよー!?」
うーん、と考え込む徳之助。
徳之助「! そうウラ! ならこういうのはどうウラ?」
遊馬「どういうの?」
徳之助「ポケモンジムって知ってるウラ?」
遊馬「なんだそれ」
徳之助「トレーナーが実力を試すために挑める施設ウラ。そこにはジムリーダーがいて、リーダーに勝ったらジムバッジを貰えるウラ」
ジムバッジの説明をつらつらと述べる徳之助。遊馬は、へーほーとか言って頷いている。
遊馬「つまり八つあるジムのジムリーダーに勝ってジムバッジを貰ったらポケモンリーグに挑戦できるんだな!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/19(月) 23:09:02.98 ID:ZKzbu3GAO<>
徳之助「そのとおりウラ! リーグで優勝したらポケモンチャンピオンへも近づけるウラ!!」
遊馬「すげー!!」
小鳥(ていうかそんな大事な事、何で遊馬は今まで知らなかったのよ)
徳之助「ちなみにこのコトブキシティの隣町『クロガネシティ』にそのポケモンジムがあるウラ」
そこで! と遊馬の眼前に人差し指を突き付ける徳之助。
徳之助「そのクロガネジムのジムバッジをゲットできたら、ポケッチをあげるウラ!」
小鳥「ちょっと待って! ジムリーダーって強いトレーナーなんでしょ?」
徳之助「もちろんウラ」
小鳥「その人に勝ってジムバッジをゲット……なんて条件、厳しすぎじゃない?」
徳之助「オレはバイトだし権限はないウラ。本来はクイズを正解することでポケッチを渡すように言われているウラが、特別にこの条件にしてるんだウラ」
小鳥(バイトだったんだ)
遊馬「ま、心配するなよ小鳥! ジムリーダーなんてオレのかっとビングで倒してやるしさ!」
小鳥「大丈夫かな……」
徳之助「バッジを手に入れたらオレに見せに来るウラ」
遊馬「かっとビングだ、オレ!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<><>2011/12/19(月) 23:10:27.34 ID:ZKzbu3GAO<> 今日は終わり
見てくださった方ありがとうございました <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/19(月) 23:22:44.58 ID:M7DI5Xtp0<> 乙おつ
見てるよ!! <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:08:35.63 ID:nm4VtdoAO<>
====
《クロガネゲート》
小鳥「このクロガネゲートを抜ければクロガネシティね」
遊馬「……はあ」
小鳥「遊馬?」
先程野生のケーシィにからかわれて動き回されたため、疲れきった顔の遊馬だ。
小鳥「もう、そんなことでどうするのよ。ジムリーダーに勝つんでしょ?」
遊馬「分かってるって」
「まだこんなところにいたのか、遊馬」
遊馬「ん?」
突然前から飛んできた声に遊馬達が前に目を向けると、そこにはクラスメートの武田鉄男がいた。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:11:24.95 ID:nm4VtdoAO<>
遊馬「て、鉄男ー!?」
鉄男「よっ、遊馬!」
遊馬「鉄男がどうしてここに……」
小鳥「今日はよく知り合いに会うわね」
鉄男「そりゃ徳之助のことか?」
小鳥「徳之助君に会ったの?」
鉄男「ああ、コトブキでポケッチをもらったんだ」
そう言う鉄男の腕にはポケッチが巻かれていた。
それを見た遊馬は何かぶつぶつとふて腐れている。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:14:26.94 ID:nm4VtdoAO<>
鉄男「それより質問の答え、オレも旅に出ることにしたのさ!」
遊馬「鉄男も〜!?」
鉄男「遊馬だけ抜け駆けはさせねえ。委員長も同じで旅に出たよ」
小鳥「私達のクラス、大丈夫かしら……」
鉄男「それで遊馬、今ジムの話してたよな?」
遊馬「ああ」
鉄男「これを見ろよ」
自分のサスペンダーに付けた『戦利品』を見せびらかす鉄男。
遊馬「あーっ! ……ってなんだそれ?」
鉄男「クロガネジムのジムバッジだ!」
遊馬「ジ、ジムバッジ!?」
小鳥「っていうことは、鉄男君はクロガネのジムリーダーに?」
鉄男「ああ、勝ったさ! さっき勝負がついた所だ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:16:15.73 ID:nm4VtdoAO<>
遊馬「すげー!」
初めて見るジムバッジに瞳を輝かす遊馬。しかし、何かに気付いたのか、
遊馬「そうか……! 鉄男がジムリーダーに勝ったってことは、鉄男に勝てたらジムリーダーにも勝てるってことか!」
小鳥「違うと思う」
遊馬「バトルだ、鉄男ー!」
鉄男「……勝負にならないと思うぞ?」
遊馬「な、なにー!」
鉄男「オレはジムに挑戦して強くなった。それに新戦力も加わったからな」
遊馬「オレだってヒコザルがいるんだ! 鉄男とだって戦えるさ!」
鉄男「……よし、分かった。受けてたってやる」
遊馬VS鉄男 形式、二対二のシングルバトル
遊馬・鉄男「決闘(バトル)!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:19:06.72 ID:nm4VtdoAO<>
遊馬「オレのポケモンはこいつだー! かっとビングだぜ! ヘイガニー!!」
ヘイガニ「へいへーい!」
鉄男「相変わらず懲りずにヘイガニを出してきたな。それならオレはワンリキーだ!」
ワンリキー「りきー!」
遊馬「!」
小鳥「鉄男君のワンリキーね!」
遊馬「持ってるのは知ってたけど、バトルで使ってくるのは初めてだ!」
鉄男「いつもは、お前じゃゴンベで十分だしな。今回は特別に出しただけだ」
遊馬「く、舐めやがって……。いけ、ヘイガニ! 『クラブハンマー』だ!!」
ヘイガニ「へいへーい!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:22:19.32 ID:nm4VtdoAO<>
ハサミに力を入れてワンリキー目掛けて振り回すヘイガニ。しかし、その攻撃は軽々と止められる。
ワンリキー「りき!」
遊馬「片手で!?」
鉄男「『あてみなげ』だ!」
ヘイガニの突撃してくるパワーを受け流したワンリキーはそのパワーを殺さずにむしろ利用してヘイガニを地面に投げ下ろした。
ヘイガニ「へいー!?」
遊馬「ヘイガニー!!」
鉄男「ただ突進してくるだけじゃオレのワンリキーは倒せないぞ!」
遊馬「……っ、『バブルこうせん』!」
ヘイガニがハサミを開き、中から泡が飛び出す。
鉄男「指一本で十分! 『からてチョップ』!!」
人差し指で次々と泡を破壊していくワンリキー。
鉄男「いつもと変わらないぞ、遊馬!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:25:29.12 ID:nm4VtdoAO<>
最後の泡が破壊された。
ワンリキーは走り出し、ヘイガニにチョップを繰り出そうとするが、
ワンリキー「……!?」
ヘイガニの姿がない。
キョロキョロとヘイガニを探すワンリキー。その下でモゾモゾと地面が動いている。
鉄男「っ! ワンリキー、下だぁ!!」
ドオオオン!! とヘイガニの穴を掘るがワンリキーにクリーンヒットした。
鉄男「……!」
遊馬「よっしゃああ!!」
小鳥「やった、遊馬の攻撃が当たったわ!」
遊馬「鉄男! オレだってこの数日間で少しは成長したんだ!」
ヘイガニが再びそのハサミをワンリキーにぶつける。
ワンリキー「……ッ!!」
ゴウウッ!! ヘイガニのクラブハンマーが決まった。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:28:45.05 ID:nm4VtdoAO<>
遊馬「どうだ!」
ワンリキーが膝をつき、うずくまる。
鉄男「ワンリキー!」
ワンリキー「りきぃ……」
鉄男「……少しはやるようになったみたいだな、遊馬」
だが、と付け足す鉄男。
遊馬「っ!?」
ドシャン、と地面に俯せになりヘイガニが倒れた。
遊馬「ヘイガニー!!」
鉄男「あえて攻撃を受けて、それで受けたダメージを倍に返す技『カウンター』」
遊馬「カウンター……!」
鉄男「そういう戦い方もあるってことだ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:30:40.73 ID:nm4VtdoAO<>
ヘイガニをモンスターボールへ戻す遊馬。
遊馬「でも、まだこいつが残ってる! かっとビングだ、ヒコザル!!」
ヒコザル「うきー!」
鉄男「来たな、ヒコザル……!」
遊馬「さっきのバトルで傷付いたワンリキーなんて相手じゃねえ! ヒコザル、『ひのこ』だ!」
ヒコザルの吐いた火の粉が膝をついているワンリキーを囲む。
ワンリキー「っ!」
火の粉を前に戦意を削がれるワンリキー。
鉄男「火傷を負ったのか!」
熱気に当てられて、成す術もなくワンリキーは倒れる。
ワンリキー「……りきぃ」
鉄男「くっ! 戻れ、ワンリキー」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:32:06.27 ID:nm4VtdoAO<>
小鳥「これで鉄男君も残り一匹ね!」
鉄男がモンスターボールを投げる。
遊馬「……?」
モンスターボールの放つ光でポケモンの姿がよく見えない。
遊馬(ゴンベか……? いや、鉄男の新戦力だ!)
遊馬「なんでもいいや! 来ないならやってやれ、ヒコザル! 『ひのこ』だぁ!!」
ヒコザル「うっきー!!」
鉄男のポケモン目掛けて大量の火の粉が飛んでいく。
しかし、その火の粉が何かに弾き飛ばされた。
ヒコザル「うき!?」
鉄男「ポケモンの姿が見えないなら、よく目をこらしてみろ」
ビタビタ、と辺りに水滴の雨が降る。
遊馬「水滴? まさか、水タイプか!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:34:05.94 ID:nm4VtdoAO<>
ポケモンの正体を確かめるためにP・ゲイザーを装着する遊馬。
遊馬「……! ポッチャマ!!」
鉄男「そう、オレの新たな仲間……ペンギンポケモン・ポッチャマだ!」
ポッチャマ「ぽちゃー!!」
ヒコザル「!」
大きくジャンプするポッチャマ。ヒコザルは呆気にとられて動けない。
鉄男「『みずでっぽう』!」
バシャアアッ!! 水鉄砲がヒコザルに命中する。
遊馬「ヒコザルー!!」
炎タイプに水タイプの技は効果は抜群だ。水鉄砲を受けたヒコザルは戦闘不能になった。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:36:03.22 ID:nm4VtdoAO<>
もう勝負はついたと判断したのか、鉄男はポッチャマをボールへ戻す。
鉄男「五十一連勝だ、遊馬」
遊馬「戻れ、ヒコザル!」
小鳥「遊馬!」
遊馬「くっそー、また負けたー!!」
鉄男「でも惜しかったぜ。ヘイガニのあなをほるはいい攻撃だった」
遊馬「へへ、鉄男に褒められるなんて初めてだ」
小鳥「ふふ」
遊馬「それで鉄男、ポッチャマってポケモンはどこで捕まえたんだ?」
鉄男「ああ……前に話したナナカマド博士に貰ったんだ」
遊馬「ナナカマド博士に!?」
鉄男「オレの強さを認めて、ポケモンをくれたんだよ」
遊馬「……っ!」
遊馬(オレの時と全然違うじゃん!)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:40:58.19 ID:nm4VtdoAO<>
鉄男「ポッチャマのおかげでクロガネジムを楽々突破できたんだぞ」
遊馬「ポッチャマの? なんで?」
鉄男「クロガネのジムリーダーは岩タイプ使いだからな」
小鳥「ジムリーダーはみんなそれぞれのエキスパートタイプがあるらしいわ」
ガイドブック片手に言う小鳥。
遊馬「へー、そうなんだ」
鉄男「いいか遊馬。炎タイプは岩タイプに弱い。間違ってもクロガネのジムリーダーにはヒコザルで挑まないことだ!」
遊馬「わ、わかってるよ。タイプの相性くらい!」
鉄男「どうだかなー」
でも、と鉄男は遊馬の肩に手を置き、
鉄男「頑張れよ、遊馬!」
遊馬「おう!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:42:27.38 ID:nm4VtdoAO<>
====
《ポケモンセンター》
ジョーイ「お待たせしました。はい、ポケモンはすっかり元気になりましたよ」
遊馬「ありがとう、ジョーイさん!」
小鳥「ポケモンの回復も終わったし、ジムに行く?」
遊馬「おう! かっとビングだぜ、オレ!!」
ジョーイ「あら、クロガネジムに挑戦するんですか?」
遊馬「そうなんだ! オレは八つのジムを制覇して、ポケモンリーグに出場するのさ!!」
ジョーイ「それはいいことですね。ぜひ頑張ってください!」
遊馬「じゃあ行こうぜ、小鳥!」
小鳥「うん!」
ジョーイ「あ……ちょっと待ってください!」
遊馬・小鳥「?」
ジョーイ「水を差すようで悪いんですが、今クロガネのジムリーダーは不在でして……」
遊馬「不在?」
小鳥「いないってことよ」
遊馬「いない〜!?」
ジョーイ「はい。ジムリーダーはこの時間帯、ジムの勤務から外れているんです」
小鳥「何をやっているんですか?」
ジョーイ「クロガネ炭鉱で石炭を掘っているかと」
小鳥「クロガネ炭鉱?」
遊馬「そのタンコーに行けばジムリーダーに会えるんだな!」
ジョーイ「ええ、恐らく」
遊馬「よし、タンコーに行くぜ小鳥!」
小鳥「えー! 石炭を掘り終えるのを待てばいいじゃない!」
遊馬「ゼンマイハニーは急げ、って!」
小鳥「何よそれ〜!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:44:14.83 ID:nm4VtdoAO<>
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《クロガネ炭鉱》
クロガネジムのジムリーダー、ヒョウタはポケモンと石炭を掘っていた。
ヒョウタ「ふぅむ……イシツブテ、その穴を掘り進めてくれ」
イシツブテ「いっしぇい!」
壁に開いた小さな穴を掘り進めるイシツブテ。すると、中から何かが出てきた。
発掘したものを拾い上げるヒョウタ。
ヒョウタ「これは『ずがいのかせき』かな」
ヒョウタ(ズガイドスはもう持っているんだけど、研究所にでも贈るかな)
ヒョウタ「イシツブテ、ありがとう。君のおかげで化石を手に入れられたよ」
イシツブテ「いっしぇい!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:45:43.38 ID:nm4VtdoAO<>
ヒョウタ「そっちはどうだい、イワーク?」
イワーク「いわーっ!」
その長い身体を活かして、イワークは地層の奥深くまで穴を掘り進めていた。
穴から顔を抜いたイワークの口には太陽の石がくわえられている。
ヒョウタ「おお、『たいようのいし』! これも珍しいものだよ!」
イワーク「いわっ!」
イシツブテ「いっしぇい……」
大きく身を反らせ、イシツブテを見下ろして威張るイワーク。イシツブテは人差し指で地面をなぞっていじけている。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:46:58.65 ID:nm4VtdoAO<>
ヒョウタ「いやいや、二匹とも素晴らしいものを発掘してくれたよ!」
ヒョウタに宥められ、イシツブテとイワークは笑顔になる。
ヒョウタ「さてと。発掘はやめて、次はバトルの練習でもしようか」
意気込むイシツブテ達だが、その頭にコロコロと石がぶつかる。
頭に?を浮かべるイシツブテとイワーク。その突如、彼らの頭上の壁が崩れ落ちた。
ズガアアアッ!! 岩がなだれ落ち、イシツブテとイワークは埋められる。
ヒョウタ「な、なんだぁ!?」
落石とともに女の子の悲鳴も聞こえた気がする。
「いだだ……」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:48:32.05 ID:nm4VtdoAO<>
岩の中から一人の少年がはい出て来る。
ヒョウタ「なんなんだ、君は!」
遊馬「オレは九十九遊馬! ポケモンチャンピオンを目指してるんだ!」
ヒョウタ「ポ、ポケモンチャンピオン?」
すると、壁に開いた穴の外側から声がする。
小鳥「遊馬ー! 大丈夫ー!?」
ヘイガニ「へいへーい!」
遊馬「小鳥ーヘイガニー、大丈夫だー! オレはこのままジムリーダーを探すからそこで待っててくれー!!」
ヒョウタ「! 君は……!」
遊馬「ん? そうだ、にーちゃん! クロガネのジムリーダーってどこにいるか知らないか?」
ここにいるって聞いたんだけどなー、と周りを見る遊馬。その傍でヒョウタは苦笑いを浮かべて立っている。
それもそうだ。遊馬の探しているジムリーダーは彼のことなのだから。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:49:28.68 ID:nm4VtdoAO<>
ヒョウタ「君、それは僕の……」
ボオオオン!! 岩に埋まっていたイシツブテ達がついに岩を跳ね上げて飛び出した。
イシツブテ「いっしぇーい!!」
イワーク「いわーっ!!」
二匹は怒っている。その怒りの矛先は当然遊馬だ。
遊馬「いっ!?」
イシツブテ達はさっきまで自分達が埋まっていた岩をつかみ、遊馬へと投げようとするが、
ヒョウタ「やめるんだ、イシツブテ! イワーク!」
イシツブテ・イワーク「っ!」
ヒョウタが介入してきたため、すぐに攻撃の手を止めるイシツブテとイワーク。
遊馬「石、岩……?」
『クロガネのジムリーダーは岩タイプ使いだからな!』
遊馬「まさか、にーちゃんがジムリーダーの……?」
ヒョウタ「ああ! 僕がクロガネシティジムジムリーダーのヒョウタさ」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:51:09.63 ID:nm4VtdoAO<>
====
《クロガネ炭鉱外》
炭鉱から出てきた遊馬の元に駆け付ける小鳥とヘイガニ。
小鳥「大丈夫だった、遊馬?」
ヘイガニ「へいへーい!」
遊馬「大丈夫だって言ったじゃんかー」
小鳥「! 遊馬、あの人は?」
遊馬に遅れて炭鉱から出てきたヒョウタを見て小鳥が言う。
遊馬「ヒョウタのにーちゃん。クロガネのジムリーダーなんだ!」
小鳥「へえ、見つけられたのね」
ヒョウタ「うん、僕はヒョウタ。君は遊馬くんのガールフレンドかい?」
小鳥「ガ、ガールフレンドなんて……」
ヒョウタ「ははは、冗談だよ」
遊馬「こいつはオレの幼なじみの小鳥っていうんだ!」
小鳥「ちょっと、なんで遊馬が紹介するのよ!」
ヒョウタ「まあまあ。つまりはただの幼なじみってことだ、今はね」
小鳥「うぅ」
遊馬「そんなことよりヒョウタにーちゃん! バトルしようぜ、バトル!!」
ヒョウタ「いいとも。ジムへ案内しよう」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:52:23.08 ID:nm4VtdoAO<>
====
《クロガネジム》
ヒョウタ「ここがクロガネジムだよ」
ヒョウタがジムの扉を開けると、岩が一面に敷かれたバトルフィールドが目に映った。
遊馬「ジムの中ってこんなんなのかー!」
小鳥「すごい……迫力あるわ」
ヒョウタ「遊馬くん、ようこそクロガネジムへ!」
遊馬「ここでバトルするんだよな!」
ヒョウタ「うん。ジム戦では公式ルールに則って、バトルフィールドを使用するのさ」
遊馬「ワクワクするぜ!」
ヒョウタ「では始めようか」
それぞれ向かい合うようにバトルフィールドに立つ遊馬とヒョウタ。
ヒョウタ「二対二のシングルバトルで構わないかい?」
遊馬「ああ、いいぜ!」
遊馬(ていうかそれしか出来ねぇし)
小鳥「! 観客席があるのは嬉しいかも」
ムックル「くるぽー」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:53:31.80 ID:nm4VtdoAO<>
遊馬・ヒョウタ「決闘(バトル)!!」
遊馬「かっとビングだ、ヒコザル!!」
ヒコザル「うきー!」
ヒョウタ「ヒコザル……!」
小鳥「遊馬! ヒコザルを使うなって鉄男君に言われてたじゃない!」
遊馬「仕方ないだろ、二匹しかいないんだし!」
それに、と遊馬はヒョウタと目を合わせ、
遊馬「ヒコザルなら岩タイプに勝てる!」
ヒョウタ「ほう……」
遊馬に倣い、モンスターボールを投げるヒョウタ。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 22:59:48.37 ID:nm4VtdoAO<>
イワーク「いわーっ!!」
遊馬「! イワーク……!!」
小鳥「なんて大きいの!?」
イワークの身体はジムの天井まで届きそうなくらい巨大。対するヒコザルの身長は天井はおろか遊馬の背の半分もない。
それは絶大なる図体差。
ヒコザル「うき……」
思わず後ずさるヒコザル。
遊馬「ヒコザル!」
ヒコザル「!」
遊馬「大丈夫さ。かっとべば、身長なんて関係ねぇ!」
ヒコザル「うき!」
遊馬の言葉をうけて前進するヒコザル。その目に迷いはない。
ヒョウタ「いいよ。ここで臆したら君の負けだったからね」
ヒョウタ(まあヒコザルよりも今は遊馬くんのもう一匹のポケモン……ヘイガニに気をつけるべきだ)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 23:01:02.17 ID:nm4VtdoAO<>
遊馬「ヒコザル、『ひのこ』だ!」
ヒコザル「うきー!!」
ヒコザルが火の粉を放つ。それをイワークは正面から受け止める。
遊馬「よし! 攻撃を食らわせたぜ!」
ヒョウタ「どうかな?」
火の粉を正面から受けたイワークだが、全く平気なようで岩でお手玉をしている。
遊馬「なにぃー!?」
ヒョウタ「イワークは岩タイプ! 岩タイプに炎タイプの技は相性が悪いんだ」
遊馬(そうだったぁ……!)
小鳥「鉄男君に注意されたばかりじゃない!」
遊馬「うぐっ」
遊馬(いや待てよ……岩タイプは水に弱いんだ!)
もう一つのモンスターボールに手をかける遊馬。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 23:02:13.66 ID:nm4VtdoAO<>
遊馬(ヘイガニは水タイプなんだ。イワークに強い!)
ヒョウタ「! ヒコザルを交代させる気だね。だがその前に……イワーク、『ステルスロック』!!」
遊馬「!」
イワークが尻尾を払うと、いくつかの岩が飛び出した。
ヒコザルにかわすように指示する遊馬。しかし、岩はヒコザルに届く前に宙で止まってしまう。
遊馬「な、なんだ……?」
ヒョウタ「さあ、ヘイガニを出しなよ」
遊馬「言われなくても、だ! いけ、ヘイガニ!!」
ヘイガニ「へいへーい!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 23:03:52.08 ID:nm4VtdoAO<>
ヒョウタ「ふふ」
クイクイ、と宙を漂っていた岩が急に一点に集中する。
そう、ヘイガニの方に。
遊馬「っ!?」
岩がヘイガニをタコ殴りにする。
ヘイガニ「へいー!?」
遊馬「ヘイガニー!!」
ヘイガニが地面にハサミをついて倒れる。どうやら攻撃が収まったらしい。
ヒョウタ「『ステルスロック』は相手がポケモンを交代した時に初めて効果を発揮する技。弱点をつきにきたみたいだけど、逆にそれを利用させてもらったよ」
遊馬「く……ヘイガニ、大丈夫か?」
ヘイガニ「へいへーい!」
遊馬「よし……。まだヘイガニは戦えるぜ!」
ヒョウタ「ああ。ここからは小手先なしの真っ向勝負だ!」
ヘイガニ「へいーっ!!」
イワーク「いわーっ!!」
同時に飛び出すヘイガニとイワーク。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 23:05:13.97 ID:nm4VtdoAO<>
遊馬「『クラブハンマー』だ!」
イワークにハサミをぶつけようと腕を伸ばすヘイガニだが、遥か高くにそびえるイワークには届かない。
ヒョウタ「『たたきつける』!」
イワーク「いわーっ!!」
その長い尻尾でヘイガニを狙うイワーク。しかしヘイガニはシャカシャカとイワークの身体をはい回りそれを避ける。
遊馬「身体の小さなポケモンには小さいなりの戦い方があるってもんだ!」
ヒョウタ「むしろ好都合さ! 『しめつける』を食らわせてやれ!」
ヘイガニ「っ!」
イワークの長い身体に締め付けられて、ヘイガニは身動きがとれなくなった。
遊馬「ヘイガニー!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 23:06:40.49 ID:nm4VtdoAO<>
ギチギチとしめつけるのダメージがヘイガニに蓄積していく。
小鳥「このままじゃヘイガニが……!」
遊馬「ヘイガニ……!!」
目を閉じて俯く遊馬。その姿はもう何も出来ないことを物語っている。
ヘイガニ「へい……へーい!」
遊馬「!」
イワークに締め付けられながらもヘイガニは遊馬に何かを伝えようとしている。
そう、ヘイガニは諦めていないのだ。
遊馬「ヘイガニ……!」
遊馬(そうだ、オレは諦めねぇ!)
遊馬「ポケモンが諦めてないなら、それに応えてやるのがトレーナーの務めなんだ!」
小鳥「遊馬……!」
遊馬「ハサミは封じられてる……なら、口から『バブルこうせん』だぁ!!」
ヘイガニ「へいへーい!」
ヘイガニの放ったバブルがイワークの顔面に当たった。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 23:08:18.19 ID:nm4VtdoAO<>
効果が抜群の技を受け、イワークはヘイガニを締め付けていた力を緩めてしまう。
遊馬「今だ! 『クラブハンマー』!!」
イワークの身体をすり抜けたヘイガニはハサミを大きく振りかぶり、イワークの顔面へと下ろした。
イワーク「いわあああああ!!?」
効果抜群と相まって急所に攻撃を当てられたイワークはそのまま倒れ込む。
ヒョウタ「! イワークッ!!」
イワーク「いわ……」
イワークは倒れた。
ヒョウタ「戻るんだ、イワーク!」
遊馬「まずは一匹倒したぜ!」
ヘイガニ「へいへーい!」
小鳥「すごいわ、遊馬!」
ヒョウタ「……やるね。僕の思ってた通りだ。炭鉱の天井を崩したのはヘイガニのクラブハンマーか。それを当てられちゃイワークも一たまりもないってわけだ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 23:09:30.00 ID:nm4VtdoAO<>
腰に手をかけるヒョウタ。二匹目を繰り出すつもりだ。
ヒョウタ「だがこいつには勝てない! ズガイドス!!」
ズガイドス「がぁーい!」
遊馬「ズガイドス……?」
P・ゲイザーを装着してズガイドスの情報を読み取る遊馬。
遊馬「ズガイドス、ずつきポケモン……およそ一億年前に古代の密林で暮らしていた。鉄のように硬い頭蓋骨……!?」
ヒョウタ「そう。ズガイドスの頭は……」
ヘイガニに突進してくるズガイドス。対してヘイガニはハサミを構えて迎え撃つ。
両者がぶつかり合う。
ヘイガニ「へいー!!」
ズガイドス「がぁーい!!」
バギィッ!! 何かがひび割れるような嫌な音が鳴る。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 23:10:49.84 ID:nm4VtdoAO<>
遊馬「……!」
ひび割れたのはヘイガニのハサミの方だった。
ヘイガニ「へい……、」
ヘイガニは倒れた。
ヒョウタ「……君のヘイガニの強固なハサミでも敵わないのさ」
ヘイガニの特性シェルアーマー。この特性もズガイドスの特性かたやぶりの前では無意味だった。
遊馬「ヘイガニいいいい!!」
小鳥「これで遊馬も残り一匹……!」
ヒョウタ(だがその一匹は……)
遊馬「ヘイガニ、よくやってくれた。戻ってくれ! ……あとは頼んだぞ、ヒコザル!!」
ヒコザル「うきー!」
ヒョウタ「ポケモンを交代したね。『ステルスロック』の効果はまだ持続中だよ!」
遊馬「なに!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 23:12:45.23 ID:nm4VtdoAO<>
岩がヒコザルを襲う。
ヒコザル「うきぃ……!」
遊馬「ヒコザルー!!」
小鳥「ヒコザルは炎タイプ。炎タイプに岩タイプは効果抜群だから、今のステルスロックでヒコザルの体力は……」
ヒコザル「うき……っ」
ヒョウタ「そんなボロボロの身体で、僕のズガイドスに太刀打ち出来るかな?」
遊馬「……くそ、」
いや待てよ、と遊馬は思う。
遊馬(鉄男はヒョウタにーちゃんに勝った。でもポッチャマだけで勝てたとは思えない……ヒョウタにーちゃんの手持ちはイシツブテとイワークとズガイドス……)
遊馬(鉄男のポケモンはゴンベにポッチャマにワンリキー……)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 23:15:26.62 ID:nm4VtdoAO<>
遊馬「! ワンリキー!?」
遊馬(そうか!!)
ヒョウタ「何を考えているかは知らないが、無駄だよ。君に勝ち目はない!」
遊馬「そんなこと、やってみなくちゃ分からねぇだろ!」
ヒョウタ「なら、やってみようか! ズガイドス、『ずつき』だ!!」
ズガイドス「がぁーい!!」
遊馬(来たな!)
遊馬「このP・ゲイザーで読み取った! ヒコザルの技は炎技だけじゃねぇ!!」
ヒョウタ「なに?」
遊馬「いけぇ、ヒコザル! お前の力を見せてやれ!!」
ヒコザル「うきぃ!」
突進してくるズガイドスに向かい合うヒコザル。
ヒョウタ「馬鹿な! ズガイドスの攻撃を真正面から受ける気か!?」
遊馬「相性が悪い相手だからって諦めてちゃそこでトレーナー失格なんだよ! 諦めなきゃかっとべる!!」
遊馬「かっとべ、ヒコザル! 『かわらわり』だぁ!!」
ガキィッ!! と何かがひび割れる音がする。
ズガイドス「……、」
頭に亀裂が入ったズガイドスは音もなく倒れた。
ヒョウタ「岩タイプに強い、格闘技か……!」
<>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>saga<>2011/12/25(日) 23:16:07.52 ID:dYMpCTeIO<> 「グヘヘ……まさかレベル3のキャタピーとレベル98のゴローンを交換なんて太っ腹だねェ〜、アンタ。」
相手のトレーナーはDQNの様だ。
俺は死ぬ程嫌だった。あんなキモいトレーナーの元でコキ使われるなんて……
「バイバイ、ゴローン……」
俺はゴローニャに進化した。 <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 23:16:35.91 ID:nm4VtdoAO<>
遊馬「倒れた……っていうことは!」
小鳥「やったわ、遊馬! ジムリーダーに……!」
遊馬「勝った、勝った! 勝ったビングー!!」
ヒコザル「うっきー!」
ヒョウタ「戻れ、ズガイドス!」
遊馬「!」
ヒョウタ「負けたよ。僕は相性の良し悪しで勝負を決め付けていた……負けるのも当然かな」
遊馬「何言ってんだよ! 楽しかったぜ、ヒョウタにーちゃんとのバトル!」
ヒョウタ「ふふ、君には完敗だね。勝者にはこれを」
ジムバッジを遊馬に手渡すヒョウタ。
ヒョウタ「コールバッジだ!」
遊馬「ジムバッジげっとビングだ、オレー!!」
小鳥「これでポケッチが貰えるね」
遊馬「オレにもようやくポケッチが……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/25(日) 23:22:50.65 ID:nm4VtdoAO<>
ヒョウタ「そうだ、遊馬くん」
遊馬「うん?」
ヒョウタ「君はこれから各地のポケモンジムを回っていくんだろう?」
遊馬「ああ、そうだけど」
ヒョウタ「なら、こいつも連れていってほしいんだ」
ポケットから何かを取り出したヒョウタ。だが遊馬にはそれはただの石ころにしか見えない。
遊馬「な、なんだこれ」
ヒョウタ「ポケモンの化石さ。これを復元すると古代のポケモンが蘇る!」
遊馬「古代のポケモン……! って、そんなもの貰っていいのかよ?」
ヒョウタ「構わないよ。さっき炭鉱で見つけたものだし。それに復元したポケモンには色々な景色を見てもらいたいからね」
遊馬「じゃあ遠慮なく……」
遊馬「ついでにポケモンの化石もゲットだぜー!!」
小鳥「ジムバッジもゲットしたし、コトブキシティに戻ろっか!」
遊馬「おう! ポケッチ楽しみだぜー」
ヒョウタ「ジム戦、頑張ってね遊馬くん」
遊馬「またバトルしような、ヒョウタにーちゃん!」
<>
◆UjkDVXCLOk<><>2011/12/25(日) 23:23:33.16 ID:nm4VtdoAO<> 今日の分は終わり
ありがとうございました <>
SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/25(日) 23:48:26.15 ID:0kcuUP7k0<> 乙!!
ポケモンも遊戯王も大好きな俺得 <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:04:36.30 ID:6zbL+0vAO<>
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《コトブキシティ》
遊馬「よう、徳之助!」
徳之助「何か用ウラ? 遊馬」
遊馬「そりゃねぇぜ、徳之助!」
小鳥「遊馬が徳之助君に見せたいものがあるんだって」
徳之助「見せたいもの〜?」
遊馬「持ってきたぜ、コイツをさ!」
コールバッジを徳之助に見せ付ける遊馬。
徳之助「それはクロガネのジムバッジ……! 本当にとってきたウラ……!」
遊馬「へへっ、どんなもん!」
小鳥「ジムバッジを見せたらポケッチをくれるんでしょ?」
徳之助「うぐ……、約束は守るウラ」
遊馬にポケッチを差し出す徳之助。
遊馬「ポケッチげっとビングだぜ、オレ!!」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:07:00.24 ID:6zbL+0vAO<>
さっそく腕にポケッチを巻く遊馬。
それを見て小鳥も腕に付けたポケッチを遊馬に見せ、
小鳥「これでお揃いね!」
遊馬「おう!」
徳之助「そうだウラ。遊馬、この次は『ソノオタウン』に行くウラ?」
遊馬「ソノオタウン?」
小鳥「コトブキシティを北に行くとある、ハクタイシティへの途中にある町……だって」
相変わらずガイドブックをそのまま読む小鳥。
遊馬「へえ。ジムがあるのはどっちなんだ?」
徳之助「ハクタイシティにあるウラ。どっちみちソノオタウンには行かないといけないウラよ」
遊馬「じゃあ次の目的地は決まりだな!」
小鳥「うん!」
遊馬「んじゃ、オレ達は行くよ徳之助」
徳之助「待つウラ! まだ話は終わってないウラ!」
遊馬「なんだよ?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:09:44.59 ID:6zbL+0vAO<>
徳之助「少し気になることがあるウラ」
遊馬「気になることぉ?」
徳之助「ソノオタウンのことウラ。ソノオタウンは町全体が花に包まれて、それはそれは綺麗な所なんだウラ」
遊馬「いい所じゃねぇか」
小鳥「早く行ってみたいね」
徳之助「そんな華やかな町にも裏があるウラ。聞いた話、どうやらあの町で何か良からぬことを企んでいる連中がいるらしいウラ」
遊馬「良からぬことを……?」
徳之助「実態は不明ウラ。ただ一つ分かることはその組織はおかしな連中ってことだウラ!」
遊馬「おかしな連中ねぇ」
徳之助「とにかく気をつけるウラ、遊馬。もしそいつらと会うことがあっても、まともに相手をしないことウラ!」
遊馬「お、おう」
人差し指を顔に突き付けられ、後ずさる遊馬。
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:12:19.15 ID:6zbL+0vAO<>
徳之助「オレの話は以上ウラ」
遊馬「まあ言いたいことは分かったよ」
徳之助「それは結構ウラ」
遊馬「それにしても……徳之助、変わったよな」
徳之助「……ウラ?」
遊馬「なんか前より優しくなったっていうかさ!」
徳之助「こ、これくらいお安い御用ウラ……」
徳之助「で、でも! これにも裏があるウラ? オレは遊馬達に恩を売って、いつかそれを返してもらえるように……」
遊馬「ん〜。よく分かんねぇけど、心配してくれてんだろ?」
徳之助「っ!」
遊馬「ありがとうな、徳之助!!」
徳之助「ウ、ウラ……」
遊馬達は徳之助に別れを告げ、コトブキシティを去っていく。
その背中を見て、
徳之助「……まったく」
徳之助(アイツの裏をいつか見てみたいウラ)
モンスターボールを手に持ち、徳之助は薄く笑った。
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:15:00.79 ID:6zbL+0vAO<>
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《コトブキシティ―西の外れ》
神代凌牙、通称『シャーク』。
彼はコトブキシティを歩いている。
凌牙「…………」
シャークはトレーナーズスクールでトップクラスの強さを持つポケモントレーナーだ。その実力はジムリーダーに相当する程。
地方全体として見ても彼はかなりの強さを持つトレーナーである。
そんな彼がどうしてコトブキシティにいるかというと、
凌牙(どこを見てもポケモンバトルを繰り広げている奴らばかり……イラッとするぜ)
シャークは落ちぶれていた。
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:19:13.86 ID:6zbL+0vAO<>
確かに彼はトレーナーズスクールでその実力を奮い、実質学校のトップになっていた。彼に逆らう者はいず、逆らえばバトルを仕掛けて反逆者(そいつ)のポケモンを奪った。
シャークに敵う者はいない……学校の誰もがそう思っていた。しかし、ただ一人。彼に恐れずに立ち向かい、そして見事彼から勝利をもぎ取った者がいた。
九十九遊馬。
その少年がシャークの人生を狂わせた。
凌牙(さぁて……今日はどいつを狙うか……)
シャークは辺りを見渡し、獲物を探す。
九十九遊馬とのバトルの敗北はシャークを一気におとしめた。
シャークがポケモンをろくに持っておらずバトルの腕も素人同然の九十九遊馬に負けたという噂はすぐに学校中に広がっていった。
かつてシャークの強さに惹かれて彼を取り巻いていた連中もその噂を聞き付けて失望し、それを初めにシャークの周りからどんどんと人が離れていった。
シャークの居場所はなくなり、シャークは自ら学校を去った。
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:24:36.40 ID:6zbL+0vAO<>
凌牙(……くく。アイツにするか)
シャークの目が捉えたのは一人の男性。多分年齢は三十はいっていないだろうが、その見た目は三十代後半と言われても納得出来るくらいに老けている。
凌牙(獲物発見!)
すぐにシャークは男性につかみ掛かり、路地裏へと連れ込む。
男性「なんだ、君は?」
少し驚いたようだが、男性は特段慌てる様子はない。
凌牙「運が悪かったな。オレに狙われるとは」
男性「何を言っているのかな?」
凌牙「この状況で気づかねぇのかよ?」
モンスターボールを取り出し、男性に突き付けるシャーク。
男性「! モンスターボールか」
凌牙「クク……」
モンスターボールのスイッチが押され、中からポケモンが現れる。
オクタン「おーくたん!」
オクタンは触手を伸ばし、男性の喉の前で止める。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:29:10.12 ID:6zbL+0vAO<>
男性「……オクタン。水タイプのポケモンだな」
ここまでされても顔色一つ変えない男性。流石にシャークも不審がる。
凌牙(コイツ、頭大丈夫か?)
男性「水タイプは素晴らしいな。弱点は電気タイプと草タイプしかない上に炎タイプ地面タイプ岩タイプの弱点をつき、相性が悪いのは草タイプと自身のタイプである水タイプの二つだけ」
凌牙「何を……」
男性「しかし、そんな水タイプも完全ではない。弱点が二つだけと言うが、私から言わせれば二つもあるよ。まあ例え弱点がなくとも、完全だとは言えないがな」
凌牙「さっきから何が言いたいんだ」
男性「子供相手に語りすぎたな。私の話を簡潔にまとめると、こうだ」
『この世界に完全なものなど存在しない』
男性はそう言い切った。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:33:14.80 ID:6zbL+0vAO<>
シャークは少し呆気にとられたが、すぐにその言葉に対し鼻で笑う。
凌牙「そんなこと、火を見るより明らかだぜ」
男性「そうだな。君の言う通りだ。しかし、そんな私の考えを否定する者もいる」
男性「そんな愚者は哀れにも自分の不完全さに気づかずに一生を過ごしていくのだ、不完全な一生を。君も感じたことはないかね。人間の愚かさを。ポケモンの惨めさを」
凌牙「……」
男性「感じているのならば、君は完全な存在だ。……そう、私と同じように」
凌牙「完全……だと……」
男性「ふふ、そう。君が周りから避けられるのも周りの人間が不完全だからなのだ」
凌牙「何でそのことを知って……!」
男性「私には分かる。何故なら私達は同じ完全な人間だからさ。私には分かるよ、君の苦しみが……」
突然、男性の目から涙がこぼれ落ちた。
凌牙「何で泣いてるんだよ……」
男性「分かるのだ。私もかつては君と同じ境遇だったから。私も避けられたよ、多くの人間に」
凌牙「お前も……?」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:37:38.38 ID:6zbL+0vAO<>
男性「……私はね、ついに周りの人間が誰ひとりとしていなくなった時、こう考えたのだよ」
『周りの人間達は不完全』
『私は完全』
『人間達が不完全だから、完全な私を理解することができない』
『不完全なこの世界が悪い』
凌牙「…………」
男性「そして私は決めた。この不完全な世界が悪いのなら、いっそ今の世界を壊してしまおうとな。絶望を野望へと、私は変えた!」
男性の瞳は暗く、それは憎悪の闇で染まっていた。しかしどこか悲しげな念も込められている。
男性「君もそう思わないか?」
凌牙「!」
男性「不完全な者達の勝手な都合でつまはじきにされたのだ、完全である君がね。私は悲しく思うよ。何故完全な者がのけ者にされるのか……」
男性がシャークに近寄り、腰を直角に曲げて、それでもシャークと同等の目線で話す。
男性「この世界が憎くないか?」
凌牙「に、くい……」
凌牙(憎い……)
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:41:38.74 ID:6zbL+0vAO<>
シャークはあの少年に負けたことで確かに一人ぼっちになった。自分の意思ではない。周りの人間が離れていったのだ。
しかし、今ここにいるのは彼の意思だ。周りの人間が離れたから一人ぼっちになったのではない。最終的に彼は自分から孤独へと向かった。
その行動からは少しの感情が読み取れる。
僅かな憎しみの気持ちが。
ドクン! シャークの鼓動が耳をすませば聞き取れる程に大きく鳴る。
男性「ふふ……その僅かな憎悪が君の心を駆り立てる」
さらに男性はシャークの耳元で囁く。
男性「私はある組織のリーダーをやっていてね。その組員は全員選ばれた完全な存在なのだよ。私は完全な人間を集め、その者達とともに新世界を作る。完全な世界をだ」
男性は背筋を伸ばしてその長身を披露する。
アカギ「私の名はアカギ。どうだ、私と新世界(完全)を目指してみないか?」
薄暗く汚い路地裏にはやけにまばゆい光が差し込んでいた。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:43:55.34 ID:6zbL+0vAO<>
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《ソノオタウン》
遊馬「着いたぜ、ソノオタウン!」
小鳥「すごーい!」
辺り一面に広がる花畑に瞳を輝かせる小鳥。
小鳥「とってもキレイね!」
遊馬「そうだ! みんなにも見せてやろうぜ!!」
手持ちのボールを全て投げる遊馬。
ヘイガニ「へいへーい!」
ヒコザル「うきー!」
小鳥「ムックル、あなたも!」
ムックル「くるぽー」
ポケモン達は各々好きなように行動していく。
遊馬「よーし、お前も見るか? まだ姿も分からないオレの仲間!」
そう言う遊馬の話し相手はヒョウタから貰ったポケモンの化石だ。
遊馬「お前にもいつか見せてやるからな、この絶景をさ!」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:47:17.63 ID:6zbL+0vAO<>
小鳥「遊馬ー!」
ヘイガニやムックルが集めたもので作ったのか、花飾りを頭につけた小鳥が遊馬に手を振っている。ヒコザルは花を燃やさないようにするためか小鳥の肩の上だ。
遊馬「いいな、それー。オレにも花をくれよヘイガニー」
ヘイガニ「へーい!」
チョキンチョキンと生えている花を切って集めていくヘイガニ。遊馬もそれを温かく見守る。
しかし、そんな彼らの背後から怒声が響いた。
「コラァアアアア!!!」
遊馬「いいっ!?」
おじさん「勝手に花を摘んではいかんだろう!」
遊馬・小鳥「す、すみません」
ヘイガニ「へい……」
小鳥「気をつけます……」
おじさん「まあ分かってくれたらそれでいいんだ。……このソノオの花は摘むためにあるんじゃないからな」
遊馬「おじさん、アンタは誰なんだ?」
おじさん「私はあまいミツを売る仕事をしてるんだ」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:50:30.38 ID:6zbL+0vAO<>
小鳥「あまいミツって?」
おじさん「その名の通り、甘いミツさ。ポケモン達はあまいミツが好きなんだ」
遊馬「甘いミツかー」
ジュルリとよだれを垂らす遊馬。
小鳥「遊馬……」
遊馬「あっ」
おじさん「はっはっは。いいよ、特別にサービスだ。あまいミツを君達にあげよう」
遊馬「本当かー!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:54:21.45 ID:6zbL+0vAO<>
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《ソノオのはなばたけ》
おじさん「ええと、ここら辺に…………あった!」
木によじ登り何かを探っているおじさん。どうやら蜂の巣に手を入れているようだ。
遊馬「って、蜂の巣!? 大丈夫なのかよー!」
おじさん「はは、大丈夫さ。こいつはポケモン、ミツハニーの巣だ。基本的にはミツハニーは大人しいポケモンだし、今は巣にいないんだ」
巣から腕を抜いたおじさんの手には真っ黄色の液体が乗っていた。
遊馬「うまそ〜!」
下りてきたおじさんからミツを貰って舐める遊馬と小鳥。
遊馬「うめーっ!!」
小鳥「うん、おいしい!」
おじさん「そう言ってくれるとこっちも嬉しいよ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:55:31.06 ID:6zbL+0vAO<>
と、仕事をしていい汗をかいたおじさんの笑顔は消え、その顔は驚愕の色に変わっている。
遊馬・小鳥「?」
おじさん「ミツハニーだ!」
遊馬「え……」
遊馬達の後ろにミツハニーの群れが羽音を立てて並んでいた。
ミツハニー「はにー!!」
一匹のミツハニーの怒号で、大量のミツハニーが遊馬に襲い掛かった。
遊馬「どぅえええええ!!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 11:57:30.63 ID:6zbL+0vAO<>
顔中に痣を作り、遊馬はミツハニーの前で土下座していた。
ミツハニー「はにー」
遊馬「もうしませんです、はい……」
遊馬(ていうかなんでオレだけ……)
何かを感じ取ったのか、ミツハニーが遊馬の頭に体当たりをかます。
遊馬「いだーっ! 何するんだよ、人がせっかく謝って……!」
ガツンとミツハニーの渾身の一撃が遊馬のオデコにヒットする。
遊馬「ぐぁああああ!?」
小鳥「ゆ、遊馬、大丈夫?」
遊馬「くじけそう……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 12:01:44.76 ID:6zbL+0vAO<>
おじさん「ミツハニー、彼は泥棒じゃなくてね。私がミツを渡したんだよ」
ミツハニー「はにんっ!」
おじさんが宥めようとするも、ミツハニーは聞く耳を持たない。
遊馬「まったく、頑固な奴だぜ!」
ミツハニー「はにッ!」
ギロリとミツハニーに睨まれて背筋を凍らす遊馬。
遊馬「くっそ〜……」
小鳥「とりあえずあまいミツのお土産も貰ったし、ハクタイシティに進もう?」
遊馬「そうだな。あんなミツハニーのいる町じゃあ安心して夜も眠れないぜ! あまいミツは美味かったけど!」
む、とミツハニーが遊馬を睨む。それをおじさんがまあまあ、と宥める。
おじさん「もう行くのかい? ゆっくりしていけばいいのに。このソノオにはまだ観光名所がたくさんあるよ」
遊馬「いや、ゆっくりなんてしてられねぇんだ! 何てったってオレはジムリーダーに挑まなくちゃいけねぇからね!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 12:06:52.67 ID:6zbL+0vAO<>
おじさん「ジムリーダーに?」
遊馬「ああ! 全てのジムを制覇して、オレはポケモンリーグに出場するのさ!!」
おじさん「それは凄いことだ!」
ミツハニー「はにぃっ」
ミツハニーが鼻で笑う。
遊馬「そこぉ! 何がおかしいんだよー!?」
ミツハニー「はにはにはにぃはにぃ!」
遊馬「なにい!! オレじゃあリーグはおろか、ジムリーダーに勝つことも出来ないだって〜!?」
ミツハニー「はにぃん!」
遊馬「今度こそ堪忍袋の緒が切れたぜ!! もう許さねぇ、このハチ野郎〜!!」
ミツハニー「はにぃ〜」
遊馬「オレじゃあお前に敵わない……なんだって〜!?」
ミツハニーは遊馬にタックルをして遊馬のコールバッジを奪う。
遊馬「あっ、バッジが!?」
ミツハニー「はにんっ」
遊馬「返せよ、ミツハニー!!」
ミツハニー、聞く耳持たず。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 12:09:05.24 ID:6zbL+0vAO<>
睨み合う遊馬とミツハニー。
ミツハニー「はにぃ〜!!」
遊馬「ぐぬぬ〜!!」
おじさん「落ち着きなさい、二人共!」
小鳥「遊馬!」
ザクザクと地面を踏む音がする。
おじさん「! お客さんが来たみたいだ。小鳥ちゃん、ここは頼んだよ!」
小鳥「あ、はい!」
入口の方へと走っていくおじさん。客は二人のようで、男女が入口で突っ立っている。
おじさん「いやーすみません。立て込んでまして。今回はどのような御用件で……」
ドゴオッ! おじさんが言い終える前に男の方の客がおじさんに蹴りを入れた。
おじさん「ぐぁぁ……!」
遊馬・小鳥・ミツハニー「……!!」
小さなうめき声を聞いて、遊馬達が男女客へと注目する。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 12:11:30.89 ID:6zbL+0vAO<>
男「無駄ナ事ハ喋ラナクテイイ」
女「我々ノ言ウコトダケ聞イテロ」
おじさん「うぐ……っ」
小鳥「おじさんっ!」
ミツハニー「はにぃー!」
遊馬「何なんだ、お前ら!?」
男「我々ハ世界ヲ変エル者」
女「我々ハ世界ヲ変エル者」
男「モウ此処ニハ用ハナイ」
女「ジャアナ」
花畑をあとにする奇妙な男女客。
遊馬「待てよ!」
おじさん「……くうっ」
遊馬「!」
小鳥「おじさん!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2011/12/31(土) 12:15:51.87 ID:6zbL+0vAO<>
持ち物を確認するおじさん。
おじさん「しまった……あまいミツを奪われた……!」
遊馬「あまいミツを!?」
おじさん「奴らの狙いはあまいミツだったか……!」
小鳥「そんな……」
遊馬「くそ、許せねぇ……よくもおじさんを!! あまいミツまで奪っていきやがった!」
拳を握りしめ、憤る遊馬。
小鳥「! 遊馬、まさか……」
遊馬「ごめん小鳥、おじさんを看ていてくれ! オレは奴らを追う!!」
遊馬は駆け出し、奇妙な連中の後を追っていった。
小鳥「遊馬!」
おじさん「遊馬くん……。……ミツハニー、お願いだ!」
ミツハニー「!」
おじさん「遊馬くんを手助けしてやってくれ!!」
ミツハニー「はにぃ……」
<>
◆UjkDVXCLOk<><>2011/12/31(土) 12:20:56.74 ID:6zbL+0vAO<> 今日は終わり
読んでくださった方ありがとうございました <>
SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/31(土) 13:29:53.49 ID:Q1v0z2Rk0<> シャークさんキター!!
だがしかし既に闇落ちフラグがたっとるwww
乙 <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 11:25:49.51 ID:/FShPILAO<>
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《たにまのはつでんしょ》
遊馬「あいつら、この中に入っていったな」
発電所のドアを開けて中へ入る遊馬。
遊馬(鍵がかかってなかった……ここに住んでいる人はどうしてるんだ?)
どうやら発電所の中は単純に一本道らしい。長い廊下をひそりひそりと歩いていく遊馬。
するとようやく大きな部屋にたどり着いた。
部屋に入ろうとする遊馬だが、
遊馬「!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 11:28:37.24 ID:/FShPILAO<>
「あー、持ってきたのね。下っ端ちゃん達〜」
部屋には何者かがいた。見たところ、先程の男女もいるようだ。
男「マーズ様、コレガ『あまいミツ』デス」
男女ともう一人、偉そうな女性はマーズというらしい。
そのマーズに男があまいミツを渡す。
マーズ「はーん、これがね〜。実際これ何の役に立つのかしら? ってかアンタ、名前呼ぶのやめてよ気持ちわるう」
男「デハ、何ト呼ベバヨイデショウカ」
マーズ「何でもいいわよ、めんどくさー」
遊馬(あいつら……一体何者だ?)
マーズ「そうそー。それであっちの方も順調?」
今度は男ではなく女に話すマーズ。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 11:32:28.46 ID:/FShPILAO<>
女「アッチトハ」
マーズ「大体分かるでしょー、めんどくさ」
女「……」
マーズ「発電所の電気よ、で・ん・き」
女「ソレナラマモナク……」
女が別の部屋から誰かを連れて来る。
しかしただ事ではない様子で、その人は縄で身体を縛られていた。
遊馬(……!)
女は縛られた人を床にたたき付けて、その顔を踏み付ける。
「ぐ……!」
その人を見下ろして、マーズは言う。
マーズ「ショチョーさん、まだ教えてくれないの〜?」
所長「っ……、君達は……」
遊馬(所長……! ここに住んでる人か!)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 11:37:19.03 ID:/FShPILAO<>
マーズ「だーからさぁ、電気を少ぉ〜し分けてくれれば悪いようにはしないって」
所長「発電所の電気を奪い、どうする気だ……!」
マーズ「恐い顔しないでよーう。私達ある物を作ってて、それに電気が必要だから欲しいだけよ」
所長「ある物……? どちらにしろ、君達のような人達にあげる電気はない!」
マーズ「……はぁ、めんどくさ」
天井に張り付いていたズバットが所長に飛びつき、その羽で所長の背中を切り裂いた。
所長「うがぁぁぁああああ!!?」
遊馬「…………ッ!!」
マーズ「本当、不完全ってめんどくさー。さっさと教えろっての。そうすれば、死ななくて済んだのにサ」
ズバット「ずばっ!」
所長にトドメをさすために、羽を振り上げるズバット。
遊馬(くそ……!)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 11:42:22.13 ID:/FShPILAO<>
ついに遊馬は飛び出した。
遊馬「やめろぉおおお!!」
マーズ「ん?」
男女「……」
所長「……っ、!」
遊馬は所長を庇うようにマーズ達の前に立ち塞がった。
ズバットは所長を離れ、マーズの肩に止まる。
マーズ「誰? あなた」
遊馬「オレは九十九遊馬だ! マーズ、オレはお前を許さねぇ!!」
マーズ「ウフフ、面白い面白ーい」
ぱちぱちと拍手をするマーズ。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 11:47:40.05 ID:/FShPILAO<>
マーズ「ってか、名前知られちゃってるじゃん。あなたが言ったから」
男「……」
マーズ「ま、いいけどさー。面白い事になりそーう」
クルクルと片足を上げてその場で回るマーズ。
遊馬「ふざけんな! お前、自分がしてる事分かってんのか!?」
マーズ「ん〜? 面白いこと!」
遊馬「てめぇ……!」
マーズ「面白い、面白ーい! あなた面白ーい! そこの下っ端ちゃん達より断然面白いわー」
マーズは男女に合図を送り、それを理解したのか男女は別の部屋へ去っていく。
遊馬「!」
マーズ「下っ端達には消えてもらったわ。あなたは私だけで相手してあげる」
遊馬「相手……」
マーズ「ポケモンバトルよ、ポっケモンバトルぅ〜!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 11:52:22.15 ID:/FShPILAO<>
遊馬「……!」
腰にある、ポケモンが入っているモンスターボールを見る遊馬。
マーズ「あららん。それとも自信がないとか?」
遊馬「く……、上等だ! お前なんてオレがぶっ倒してやる!!」
マーズ「ウフフ……」
遊馬・マーズ「決闘(バトル)!!」
遊馬「かっとビングだ、ヘイガニ!」
ヘイガニ「へいへーい!」
マーズ「ドーミラー!」
ドーミラー「どみーん」
遊馬「! 初めて見るポケモンだ」
マーズ「私のお気に入りよ。……強いから!」
ドーミラーの瞳が光ると建物の中にいるはずが、砂が巻き上がり砂嵐が起こった。
遊馬「うわあああ!?」
砂の混じった突風に吹き飛ばされる遊馬とヘイガニ。
しかし飛ばされたのは二人だけじゃない。身体を拘束された所長も砂の嵐に巻き込まれている。
遊馬「! 所長ォ!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 11:57:06.06 ID:/FShPILAO<>
マーズ「ドーミラー、『ねんりき』!」
ドーミラー「どみらー!」
ドーミラーの超能力により、砂が有り得ない動きをする。
遊馬「!!」
バシャアアッ!! 砂の波が遊馬達をさらう。
遊馬「ぅあっ……!」
ヘイガニ「へいい!?」
所長「……っ!」
砂の波は発電所の窓を破り、そのまま外へはい出た。
地面へとたたき付けられる遊馬達。
遊馬「ぐっ!」
遊馬(でも、外は狭い部屋よりも戦いやすいぜ!)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 12:01:24.47 ID:/FShPILAO<>
マーズは少し遅れてズバットを使って飛んで発電所から出てきた。
マーズ「選手こうたーい! ズバット!!」
ズバット「ずばー!」
遊馬「オレは今度もヘイガニだ!」
ヘイガニ「へいへーい!」
マーズ「ズバット、『かみつく』よ!」
指示を受けてズバットはヘイガニに飛び掛かる。
ヘイガニ「へい!?」
遊馬「『クラブハンマー』で払うんだ!」
ヘイガニ「へいー!!」
がむしゃらにハサミを振り回し、ズバットを払おうとするヘイガニ。
ズバット「ずば……!」
それでもズバットはなんとかヘイガニの頭に噛み付く。
しかしヘイガニはものともせずに噛み付いているズバットにそのままクラブハンマーを食らわせた。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 12:05:01.20 ID:/FShPILAO<>
ズバット「……!?」
ついにヘイガニに払いのけられ、地面に倒れ込むズバット。
遊馬「よし! まずはズバットを倒したぜ!!」
マーズ「ふーん、『シェルアーマー』ね。めんどくさー。でも気付かなかった?」
遊馬「?」
ヘイガニ「へい……、」
バタリとヘイガニは倒れた。
遊馬「! ヘイガニ!」
マーズ「かみつくは効かなかったみたいだけど、一緒に『ギガドレイン』もしてたのよ」
遊馬「草タイプの技! ズバットが覚えるのか……!!」
戻れ、と遊馬はヘイガニをボールへ戻す。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 12:09:17.11 ID:/FShPILAO<>
マーズ「こっちも戦闘不能だけどっ。戻ってズバットちゃん」
遊馬(……残るはヒコザルしかいねぇ。あいつにはドーミラーと、多分三匹目もいるだろうし……どうする……)
マーズ「ウフフ」
遊馬「悩んだって仕方ねえ! ヒコザル、いけぇ!!」
ヒコザル「うきー!」
マーズ「それで最後?」
遊馬「ああ! だがこいつだけでお前を倒すぜ!!」
マーズ「……面白ーい」
ドーミラー「どみーん」
マーズ「ドーミラー、『じんつうりき』!」
ヒコザル「……!」
神通力によって身動きを封じられるヒコザル。
遊馬「このままじゃあ……! 待ってろ、ヒコザル!!」
『P・ゲイザー、セット!』
遊馬「ドーミラーのタイプを読み取るぜー!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 12:12:00.49 ID:/FShPILAO<>
ぴぴっ、とレンズにドーミラーの情報が映し出される。
遊馬「ええっと……はがねタイプぅ?」
聞いたことのない単語に首を傾げる遊馬。
他にはエスパーともあるものの、イマイチ遊馬にはそこからヒントは得られない。
遊馬(はがね・エスパータイプ? 何のタイプが効くんだよ〜!?)
遊馬が頭を抱える間にも、ドーミラーは次の攻撃を仕掛けようとしている。
遊馬(まずい!)
遊馬「とにかくなんかやってみねえと〜!」
ヒコザルを縛り付けていた神通力もようやく解けたようだ。
遊馬「ヒコザル、『ひのこ』だ!」
ヒコザル「うきー!!」
ヒコザルの放つ火の玉がドーミラーに命中した。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 12:16:04.73 ID:/FShPILAO<>
遊馬「どうだ!?」
マーズ「すごいすごーい、相性的には間違ってないわー。鋼タイプは炎タイプに弱いものー」
遊馬(そうだったのか!)
遊馬「へへ、ラッキー・ストライプ! 効果抜群でドーミラーに大ダメージを与えられたぜ!!」
マーズ「でも結局間違ってる」
遊馬「え……?」
マーズ「ドーミラー、『ジャイロボール』!!」
ドーミラー「どみらーん!!」
火の粉をまともに喰らったはずのドーミラーが平然と動き出し、身体を丸めて転がるようにヒコザルに突進する。
ヒコザル「うきぃー!?」
遊馬「ヒコザルー!!」
遊馬(なんで! 鋼タイプは炎タイプが弱点じゃないのかよ!?)
マーズ「そう。それはそうなんだけど、あなたのヘイガニと同じように私のドーミラーにも特性があるの」
遊馬「特性……!」
マーズ「私のドーミラーの特性『たいねつ』。これのおかげで炎攻撃は平気なのよ、面白い?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 12:20:00.36 ID:/FShPILAO<>
遊馬「く……」
遊馬(だからヒコザルに対して相性が悪いはずのドーミラーを出してきたのか!)
ヒコザルは体力を相当削られたようで、かなり疲労している。
マーズ「もう終わっちゃいそうね」
遊馬「……、」
マーズ「いっそ一思いに一瞬で息の根を止めてあげる。ドーミラー、『ジャイロボール』!」
ドーミラー「どみー!!」
ガリガリとドーミラーは地面を削りながらヒコザルへと迫る。
遊馬「……っ!」
マーズ「終わりよ!」
ゴアアアアッ!! 地面が割れ、大地を揺るがす衝撃が響き渡る。
だが地面が割れたのも大地が揺らいだのも、ドーミラーのジャイロボールのせいではない。
マーズ「……!」
それらは全て、ヒコザルの身体から出ている炎が引き起こした現象だ。
ヒコザル「うきいいいい!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 12:24:57.02 ID:/FShPILAO<>
マーズ「そんな……! まだそんな力が残っていたの!?」
遊馬「へへっ。そっちが特性でくるなら、こっちも特性だ!」
マーズ「特性……!」
遊馬「ヒコザルの『もうか』! ピンチになるほどパワーが増すのさ!」
ヒコザルの炎にあてられ、耐熱を持つドーミラーでさえ体力を奪われていた。
ドーミラー「どみ、……」
ドーミラーは倒れた。
マーズ「……!!」
遊馬「二匹目撃破だぜー!」
マーズ「……やっぱり面白ーい」
ドーミラーをボールに戻すとすぐにマーズは次のポケモンを出す。
ブニャット「にゃー!」
遊馬(! また見たことねぇポケモン!)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 12:33:04.36 ID:/FShPILAO<>
マーズ「めんどくさいから、私のお気に入りの子で勝負をつけるわ!」
遊馬「望むところだ!」
ヒコザルとブニャット、両者は同時に飛び出してぶつかり合う。
ヒコザル「うきいいいい!!」
ブニャット「にゃー!!」
遊馬「『かえんぐるま』!」
マーズ「『きりさく』!」
ヒコザルは身体を炎で包み、燃えた全身を使いブニャットへ突撃する。対するブニャットは鋭い爪を立てて、ヒコザルを切り刻む。
両者の力は互角。しかし、
ヒコザル「うきぃ……」
身体を切られ、うずくまるヒコザル。
遊馬「ヒコザルううう!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 12:36:46.69 ID:/FShPILAO<>
両者の力は互角だった。
だが、ヒコザルの力は特性もうかによるもの。その特性によりピンチの時にパワーを高めるが、
逆に言えばそれは少ない体力をさらに酷使する、両刃の剣。
特性に頼らないでも高いパワーを持つブニャットに押されるのも当然のことだ。
マーズ「さってと、バトルも終わったし……後は私の好きにしていい?」
ヒコザルへ近寄り、ヒコザルの首を掴むマーズ。
遊馬「! 何する気だ!?」
ブニャットに制止され、遊馬はマーズに近寄れない。
マーズ「敗者には罰を与えないとね」
遊馬「罰……!?」
マーズ「殺すのよ」
遊馬「! 何でそんなこと……!!」
マーズ「んー? 面白いから」
遊馬「……! ふざけんなぁああああ!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 12:41:33.00 ID:/FShPILAO<>
マーズ「ウフフ、じゃあサヨナラ。あなたはよく頑張ったわ」
ヒコザルの首を掴む腕に力を入れるマーズ。
遊馬「やめろォォオオオオ!!」
瞬間、ヒュンと何かが通り過ぎた。
マーズ「?」
何が起きたか分からないマーズ。少し遅れて手に掴んでいたものがなくなったことに気づく。
マーズ「! ヒコザルは……?」
マーズの頭上で羽音が鳴るのが聞こえる。
遊馬「まさか……」
ミツハニー「はにぃー!」
遊馬「ミツハニー!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 12:44:44.79 ID:/FShPILAO<>
ミツハニーの背中にはヒコザルがもたれている。
遊馬「なんでお前……」
ミツハニーは遊馬の元へ降り立ち、ヒコザルとある物を渡す。
遊馬「これ……コールバッジ!」
ミツハニー「みつは!」
遊馬にウインクするミツハニー。
遊馬「……ミツハニー、もしかして一緒に戦ってくれるのか?」
ミツハニー「みーつは!」
大きく頷くミツハニー。遊馬はそれを見て笑う。
遊馬「頼りにしてるぜ、ミツハニー!」
ミツハニー「はにぃー!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 12:46:25.66 ID:/FShPILAO<>
マーズ「めんどくさ……たった一匹、虫が増えただけでどうなるの?」
遊馬「そんなことやってみなくちゃ分からねぇ! ミツハニー、『かぜおこし』!!」
ブオオオッ!! ドーミラーの砂嵐にも劣らない程のパワーの強風がブニャットを襲う。
ブニャット「にゃ……!」
マーズ(つ、強い!)
遊馬「お前言ったよな。殺すのが面白いって……ふざけんな! そんなことが面白いわけねぇ!!」
マーズ「! あなたこそふざけないで……じゃあ何が面白いって言うのよ!」
遊馬「ポケモンバトルだ!!」
マーズ「!」
遊馬「それも罰があるとかそんなつまらねぇものじゃない。トレーナーとトレーナーが誇りをかけて戦う。その中で押されたり押し返したり……色々な方法で勝ちを取りに行く!」
遊馬「勇気を出してかっとんで、大逆転勝利をつかみ取る! それが面白いんだよぉ!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 12:56:30.31 ID:/FShPILAO<>
ミツハニーは自身で起こした風に乗り、ブニャットへと驀進していく。
ブニャット「にゃ……!」
ミツハニー「はにぃーっ!!」
ドガアアッ!! ミツハニーの頭突きがブニャットに直撃した。
ブニャット「にゃぁああああああ!!?」
ブニャットは倒れた。
マーズ「……!!」
遊馬「お前の考えは間違ってんだよぉ!」
マーズ「く……、」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 12:58:22.52 ID:/FShPILAO<>
ブロロロと上空にヘリコプターが飛んでいる。
遊馬「! なんだありゃあ!?」
マーズ「……やっと終わったようね」
ズバットを掴んでマーズは地面を離れていく。
遊馬「待て!」
遊馬が駆け付けた時にはマーズはすでに手の届かない高さにいた。
マーズ「電気はしっかりもらったわ。今回は負けってことにしておいてあげる。じゃねー」
手を振り、マーズはヘリの中へと入っていった。
遊馬「逃げられたか……」
ミツハニー「はにぃ」
所長「……う、」
遊馬「! 所長、大丈夫か!?」
所長「君は……?」
遊馬「オレは九十九遊馬! さっきの悪い奴らは逃げちまった!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 13:21:26.25 ID:/FShPILAO<>
所長「遊馬くんか。……電気はどうなったんだ?」
遊馬「それが……まんまと盗まれて……」
所長「……そうか。いやそれはいいんだ。気になるのは奴らの狙い……大量の電気を使い、奴らは何をする気なのか……」
遊馬「……」
所長「奴らは世界を変える組織だと……『ギンガ団』、そう名乗っていたよ」
遊馬「ギンガ団……!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 14:01:59.79 ID:/FShPILAO<>
====
マーズ達を乗せたヘリコプターはすでにソノオタウンから遠く離れた空を飛んでいた。
マーズ「はぁ〜あ。疲れたー」
マーズは後部席に座り、操縦席にギンガ団下っ端男、その隣にギンガ団下っ端女が座っている。
下っ端男「マーズ様。発電所ノ電気ハ、コノエレキブルニ貯メサセテオキマシタ」
言いながらモンスターボールをマーズに差し出す下っ端男。
マーズ「あっそう、ご苦労様ー」
モンスターボールを受け取るとマーズは話題を変えて、
マーズ「そうだ、あなたの面白いことってなに?」
下っ端男「我々『シタッパ』ハ、オモシロイナドト下ラナイ感情ハ持チ合ワセテイナイカト」
マーズ「アホくさ。あなたに聞いた私がおバカちゃんだったわー」
下っ端男「……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 14:09:09.02 ID:/FShPILAO<>
下っ端男から目を離して、次にマーズは男の隣に座っている下っ端女に尋ねてみる。
マーズ「ねぇ、あなたは?」
下っ端女「難シイ事ダト思イマス。デモソウネ……。タノシイコトなら、好きな人といる時かしら」
マーズ「へ〜、下っ端ちゃんでも好きな人が出来るのねー。……ってあなた口調変わって……」
バタンと操縦席にいる下っ端男が倒れる。
マーズ「!」
下っ端女「まさか現実で悪に遭遇するなんてね」
マーズ「あなた……下っ端じゃないわね」
姿を見るために下っ端女を偽る謎の人物に掴み掛かろうとするマーズだが、避けられた。
マーズ「あなた、何者?」
「通りすがりのヒーローよ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 14:10:24.72 ID:/FShPILAO<>
====
《ソノオタウン》
遊馬「んーなんとかギンガ団って奴らを追い払ったのはいいんだけど、一件落着ってわけじゃあないんだよなー」
ミツハニー「はにぃ……」
ミツハニーは落ち込んでいる。発電所の電気を盗まれたのもあるが、ギンガ団は元はミツハニーの集めたあまいミツを盗んで逃げていったのだ。
遊馬「元気出せよ、ミツハニー。ミツならオレも一緒に集めるの手伝うからさ!」
ミツハニー「はにぃ」
遊馬(ついでにあまいミツも貰えるし!)
ミツハニー「……」
遊馬の心を読んだのか、遊馬をジトリと睨むミツハニー。
遊馬(人助けっていいもんだなー!)
ゴツンとミツハニーが遊馬を頭突く。
遊馬「いで〜!?」
ミツハニー「はにぃん」
遊馬「何すんだよー! ……ったく、少しは大人しくなったと思ったら……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 14:11:37.16 ID:/FShPILAO<>
と、遊馬は近くの草むらからポケモンが鳴くのを聞いた。
遊馬「?」
草を掻き分けると、そこにはニャルマーがいた。
ニャルマー「にゃ〜」
遊馬「へー、ニャルマーか。どうしたんだ? 迷子にでも……」
ニャルマー「にゃー」
遊馬のことなど無視してその場を去っていくニャルマー。
遊馬「何なんだぁ、一体……」
ミツハニー「はにはに!」
遊馬「どうした? ミツハニー……って、あー!」
ニャルマーがいた草むらにはあまいミツの入ったビンが転がっていた。
遊馬「これってまさかギンガ団に盗まれたあまいミツか!?」
ミツハニー「はにはに〜!」
ミツハニーの反応を見るに、どうやら正解らしい。
遊馬「ってことは……」
ミツハニー「はにぃん!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 14:14:31.62 ID:/FShPILAO<>
====
《ソノオのはなばたけ》
おじさん「大丈夫かな、遊馬くん」
小鳥「ちょっと心配だけど……遊馬なら大丈夫だと思います。あれで、やる時はやるんです。それにミツハニーも助けに行ってくれましたし」
おじさん「うん。彼らを信じよう」
二人が無事を祈る中、遊馬とミツハニーは揃って笑顔で帰ってきた。
遊馬「よ、小鳥ー!」
ミツハニー「はにぃ!」
小鳥「ゆ、遊馬!?」
おじさん「ミツハニー!」
遊馬「何だよ、二人共。大きな声出して」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 14:17:19.21 ID:/FShPILAO<>
小鳥「何だ、って……さっきの泥棒はどうしたのよ?」
遊馬「やっつけたさ。ヘイガニとヒコザル……それとオレとミツハニーの絆(かっとビング)で!」
ミツハニー「はにーん!」
手と羽でハイタッチをする遊馬とミツハニー。
それを見て小鳥とおじさんは目を見合わせる。
小鳥・おじさん「……」
小鳥「遊馬達……仲良くなってる?」
その小鳥の発言に遊馬はポカンとする。
遊馬「そうか?」
小鳥「誰が見てもそうよ。さっきまで喧嘩してたのに」
一方ミツハニーはというと、何故か頬を赤く染めておじさんの後ろに隠れている。
遊馬「まったく意味が分かんねぇ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 14:19:04.60 ID:/FShPILAO<>
小鳥「遊馬、結局あの泥棒達は何だったの?」
遊馬「んー。あいつら組織を作ってて、それが『ギンガ団』っていうらしいんだ」
おじさん「そういえば、世界を変えるとか何とか言っていたような」
遊馬「よく分からないんだけどね」
小鳥「世界を……なんでまたそんな大それたことなんて」
遊馬「まっ、とにかく今は一件落着ってことで!」
ポケットから何かを取り出す遊馬。
小鳥「それって!」
おじさん「あまいミツ! 取り返してくれたのか!」
遊馬「そ、そんなトコかな」
おじさん「ありがとう! お礼にあまいミツをあげるよ!」
遊馬「よっしゃー!!」
小鳥「で、でもさっきもお土産で貰いましたし……」
遊馬「人の厚意は素直に受け取ろうぜ、小鳥ー」
おじさん「そういうことだな!」
あまいミツを受け取る遊馬。
遊馬「あまいミツ、げっとビングー!!」
小鳥「まったく、もう」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/02(月) 14:20:36.25 ID:/FShPILAO<>
遊馬「じゃあ今度こそオレ達は行くよ!」
おじさん「うん。ジム戦もいいけど、体にも気をつけるんだよ」
遊馬「ありがとう、おじさん!」
小鳥「お世話になりました」
遊馬「ミツハニーも元気でな!」
ミツハニー「み、みつはっ!」
じゃーな、と別れを告げて歩き出す遊馬達。
ミツハニーは寂しそうにその背中を見つめる。
おじさん「……。ミツハニー」
ミツハニー「はに?」
おじさん「行っておいで」
ミツハニー「はにぃ!?」
おじさん「あの少年が気に入ったんだろう? ついて行きたいならついて行きなさい。お前の好きにするんだ」
ミツハニー「……、」
おじさん「なぁに、私なら大丈夫さ。君の仲間達もいるし、あまいミツも採れる。心配はいらないよ」
ミツハニー「はに……、はにぃ!」
大きく頷くミツハニー。その動作には感謝と謝罪、別れなどの意味が込められている。
ミツハニーは頭を上げると満面の笑みを浮かべて羽ばたき、新たな主人の元へと飛んでいった。
<>
◆UjkDVXCLOk<><>2012/01/02(月) 14:23:20.03 ID:/FShPILAO<> 新年初投下終わり
今年も読んでくださると光栄です ありがとうございました
あと酉変えてます <>
◆UjkDVXCLOk<><>2012/01/02(月) 14:24:38.09 ID:/FShPILAO<> 変わってない? まあいいや <>
SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>sage<>2012/01/02(月) 15:08:16.47 ID:tDQeSnGM0<> 乙
遊馬たちのキャラやストーリー運びが本家っぽくって好きだぜ
応援してるよ! <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/07(土) 23:10:29.58 ID:F1ZSSNEAO<>
====
《205ばんどうろ》
遊馬「小鳥ー、ここを進めばハクタイシティに着くのか?」
ガイドブックを眺める小鳥。
小鳥「うん。この先のハクタイの森を抜ければすぐにハクタイシティよ」
遊馬「よっしゃー! 二つ目のジムバッジ、手に入れてやるぜ!!」
小鳥「頑張ってね、遊馬」
遊馬「おう! 新しい仲間も出来たし!」
遊馬はミツハニーの入ったモンスターボールを掲げ、
遊馬「かっとビングだ、オレー!!」
小鳥「遊馬、遊馬」
遊馬「ん?」
小鳥「あれって……」
少し離れた所でウロチョロとしている少年を指差す小鳥。
遊馬「太一じゃねぇか」
小鳥「うん」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/07(土) 23:12:54.33 ID:F1ZSSNEAO<>
太一「あー、どこ行ったんだぁ。あの泥棒光ー!」
遊馬「太一ぃ〜!」
太一「! 遊馬、小鳥!」
小鳥「一体どうしたの? こんなところで」
太一「それが……オレのポケッチが盗まれたんだよ!」
遊馬・小鳥「ポケッチが!?」
太一「そうなんだ……」
小鳥「誰に盗まれたの?」
太一「変な光だ!」
小鳥「変な光……?」
太一「よく分かんないんだけど……その光がオレの横を通り過ぎてったら、腕にあったポケッチがなくなってて……」
遊馬「泥棒、か……」
小鳥「遊馬?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/07(土) 23:17:20.54 ID:F1ZSSNEAO<>
遊馬(もしかしたらギンガ団に関係があるかもしれねぇ……)
遊馬「太一、オレがそいつを捕まえてやるぜ!」
太一「本当か!?」
遊馬「小鳥も、いいだろ?」
小鳥「うん!」
遊馬「よし、決まりだ! 太一、その光はどこへ行ったんだ?」
太一「それを探してるんだけど……。でも盗まれた時はソノオタウンにいて、光はこっちの方角に逃げたから……多分ここらへんにいるんじゃないかなぁ」
小鳥「じゃあ私達はハクタイの森の方へ行こう、遊馬」
遊馬「そうだな。太一はこの道を探しててくれ!」
太一「うん。ありがとう、二人共!」
遊馬「礼には及ばないって!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/07(土) 23:19:43.87 ID:F1ZSSNEAO<>
====
《ハクタイのもり》
遊馬「う、うぁあああああああ!?」
スピアー「すぴいい!!」
遊馬はスピアーに追いかけられていた。
小鳥「遊馬、大丈夫!?」
遊馬「あ、ああ……大丈夫じゃ、ないかも」
スピアーに針を刺されて全身が腫れまくった遊馬だ。
遊馬「確信はあったんだけど、スピアーでもなかったんだなー。ポケッチ泥棒!」
小鳥「遊馬、スピアーの針の光で判断しただけじゃない」
太一君が言うには電気みたいな光だったって、と小鳥は続けて言う。
遊馬「電気みたいな光ねぇ。なら電気タイプか……って、こんな森の中じゃあ電気タイプなんていないだろ〜!?」
小鳥「うーん」
考え込む二人。しかし五秒も持たずに遊馬は走り出す。
遊馬「考えても仕方ねぇ! とりあえず探せるまで探そうぜ!!」
小鳥「うん!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/07(土) 23:24:53.14 ID:F1ZSSNEAO<>
====
ハクタイの森では遊馬達以外にも何かを探している人物がいた。
「うん、やっぱりそうよね。私がやらなくちゃね」
「でも、ただの噂じゃない。何で噂ごときに私が付き合わなきゃいけないワケ?」
「あ、でもでも。私ってそれなりの立場の人じゃない? 誰も見てないからって逃げて帰ったら情けないじゃん!」
「でもでもでもさ、逃げるってワケじゃないわよ? っていうか、誰かに頼まれたワケじゃないし。あ、町の人達に頼まれたんだった!」
「でもでもでもでも! 何もなかったって言えばそれで……ってそれじゃあ罪悪感が……何もしなければ私の信用がた落ちだし……」
「ああ〜、もうっ!!」
などと、これは会話ではなく独り言だ。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/07(土) 23:29:13.19 ID:F1ZSSNEAO<>
ナタネ「そうよ! 私を誰だと思ってるのよ! 私はハクタイのジムリーダー、ナタネなのよ!!」
ハクタイシティジムジムリーダー・ナタネ。彼女はある用事でこのハクタイの森を訪れた。
ナタネ「私以外に誰がやるっていうのよ!」
意気込むナタネ。しかしすぐに態度は一変し、
ナタネ「でもやっぱり恐い!」
震えるナタネだが、やはり気持ちは変わり、
ナタネ「悩んでても仕方ない! レッツゴー!!」
ナタネは颯爽と走り出すが、すぐに誰かにぶつかり転ぶ。
「いだぁ!?」
ナタネ「もう、なんなのよ〜!!」
「だ、大丈夫か?」
ぶつかった相手は少年だった。少年もナタネと同じように転んだのだが、ナタネの方を心配したのか、彼女に手を差し延べてきた。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/07(土) 23:33:29.43 ID:F1ZSSNEAO<>
「ほら!」
ナタネ「あ……」
強引にそれでいて優しく、ナタネの手を掴んで引き上げる少年。
ナタネ「あ、ありがとう」
「お礼なんていいって! オレがぶつかったんだし!」
ナタネ「ぶつかったのは私で……」
「うん?」
ナタネ「う、ううん。何でもない……。そうだ、私はナタネって言うの! あなたは?」
遊馬「オレは九十九遊馬! ポケモントレーナーなんだ! よろしくな、ナタネ!!」
ナタネ「うん、よろしくね」
遊馬「ところでナタネ、ここがどの辺か分からないか? 道に迷っちゃってさー」
ナタネ「分かるわ。えっと……」
地図を取り出そうとポケットに手を入れるナタネだが、地図がない。
ナタネ「あ、あれ? 地図なくしちゃったみたい……!」
遊馬「そっかー」
ナタネ「でも大丈夫! 私土地勘あるから、こんな森くらい!」
遊馬「そりゃ頼りになるぜ! 友達とはぐれちゃったんだ。一緒に探してくれ!」
ナタネ「喜んで!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/07(土) 23:35:34.60 ID:F1ZSSNEAO<>
====
遊馬「…………」
ナタネ「…………」
胸を張り歩くナタネについていった遊馬だが、どうやらもっと道に迷ってしまったらしい。
遊馬「何処だよ、ここ〜!?」
ナタネ「ご、ごめんなさ〜い!!」
遊馬「謝るなよ、ナタネ」
ナタネ「でも! 私、土地勘なんてない……見栄を張って嘘をついてたの!! それであなたに迷惑を……」
遊馬「確かに余計に迷ったと思う。でも、ナタネはオレのために頑張ってくれたんだろ? それだけで十分さ!」
ナタネ「うぅ……」
泣きじゃくるナタネを宥めながら遊馬は遠くを指差して、
遊馬「見ろよ! あそこに家がある。とりあえずあそこで休憩しようぜ!」
ナタネ「う、うん」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/07(土) 23:37:55.69 ID:F1ZSSNEAO<>
====
《もりのようかん》
遊馬「『もりのようかん』か……」
ナタネ「おいしそうな名前ね」
遊馬「あ、ああ」
遊馬(同じ事考えてた)
遊馬「誰か住んでるのかなー?」
洋館を見上げる遊馬。一方ナタネは洋館の入口のドアを開けて中に入ろうとしている。
遊馬「お、おい!?」
ナタネ「中には誰もいないみたい。遊馬くんの言う通り、ここで休憩させてもらいましょう!」
遊馬(無茶苦茶な奴だなぁ)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/07(土) 23:40:06.73 ID:F1ZSSNEAO<>
ナタネ「へぇ〜、中は結構キレイなのね」
長い廊下を回りながら渡るナタネ。
遊馬「転ぶぞー」
遊馬の発言の二秒後にナタネは転んだ。
ナタネ「いたた……」
遊馬「何してるんだよ、ナタネー」
ナタネ「あははー」
遊馬「……というより、本当に誰もいないなー」
ナタネ「あ、羊羹あるよー」
そう言うナタネはキッチンに入り冷蔵庫を覗いている。
ナタネ「食べようよ、遊馬くん!」
ハチャメチャなナタネの行動に苦笑する遊馬。
そういえば、立場は違えど遊馬と小鳥の日常もこんな感じだ。
遊馬(小鳥どうしてるだろ)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/07(土) 23:42:03.87 ID:F1ZSSNEAO<>
ナタネ「遊馬くん、こっちこっちー!」
目を離した隙にナタネはテーブルに小皿を並べて羊羹を切り分け始めていた。
遊馬「本当に食うのかよ!?」
ナタネ「え、いらない?」
遊馬「…………」
静かに椅子に腰掛ける遊馬。
ナタネは羊羹を口に含みながら、
ナタネ「多分ここに人は住んでないと思うよー」
遊馬「なんでそんなこと言えるんだ?」
ナタネ「ここ電気通ってないみたいだし、ガスもさっき確認したら匂いしないし」
遊馬「? じゃあこの羊羹は……?」
カランとナタネが羊羹に刺していた爪楊枝を落とした。
ナタネ「……っ!」
遊馬「?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/07(土) 23:49:53.61 ID:F1ZSSNEAO<>
ナタネ「ゆ、遊馬くん。か、肩……」
遊馬「なんだ?」
ナタネが遊馬の肩の方を見て震え上がっている。何事かと遊馬は何の気無しに首を回すと、肩に何か人魂のようなものが乗っていた。
遊馬「どぅえええーっ!?」
宙返りをして椅子からすっ転ぶ遊馬。
「ごすごすごす!」
遊馬の見事なリアクションを見て笑う人魂。
遊馬「なんだこいつ! ユ、ユーレイ!?」
ナタネ「ち、違うわ遊馬くん……それはポケモン! ガスじょうポケモンのゴースよ!」
遊馬「ゴース……!?」
P・ゲイザーを取り出し確認する遊馬。
遊馬「ガスじょうポケモン、ゴース……」
ゴース「ごすごす!」
遊馬「お、おどかしやがって……」
ユーレイの正体がポケモンだとわかり、胸を撫で下ろす遊馬。しかしナタネの方は顔が真っ青なままだ。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/07(土) 23:51:34.75 ID:F1ZSSNEAO<>
遊馬「ナタネ?」
ナタネ「ま、まさか……。でも嘘。ありえない!」
遊馬「どうしたんだよ、ナタネ!?」
ナタネ「遊馬くん、この建物の名前ってなんだっけ……?」
遊馬「は……? えっと、『もりのようかん』じゃなかったか?」
ナタネ「や、やっぱり……」
額を床に付けてナタネは何かぶつぶつ言っている。
遊馬「本当にどうしたんだ?」
ナタネ「私ね、この洋館に用があったのよ」
遊馬「森の洋館に?」
ナタネ「ええ。私はハクタイシティに住んでるんだけど、町の人達が何か噂しているのよ。なんでも、森の洋館に幽霊が出る! って。その幽霊が町に悪戯をするらしいの!」
遊馬「それって……」
ちらりとゴースを見る遊馬。しかしナタネは首を横に振り、
ナタネ「違う。幽霊はゴースとは違う何かだと私は思う」
遊馬「違う何か、ね……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/07(土) 23:53:20.08 ID:F1ZSSNEAO<>
ナタネ「私は町の人達に頼まれた。その幽霊の正体を確かめて捕まえてくれってね。だから私はここに来た!」
ナタネの目は真剣で、それに遊馬は感化される。
遊馬「……!」
ナタネは幽霊を捕まえる、という無理難題に挑戦しようとしている。
そう、それは言わば『かっとビング』。
遊馬にはナタネの『かっとびたさ』がものすごく分かる。
遊馬「……よし、分かった」
ナタネ「?」
遊馬「オレも一緒に幽霊を探すよ!」
ナタネ「ほ、本当!?」
ガバッと遊馬の肩に両手を置くナタネ。その顔は今にも泣きそうである。
ナタネ「あ、これは違うのよ? 本当は幽霊が恐いとかじゃなくて、ただ私って方向音痴じゃない? だから喜んでるのよ。それにあなたが言ってくれたから尚更……いやなんでもない!」
遊馬「あ、うん」
ナタネ「さあて、それじゃあ幽霊を探しに行きましょうか!!」
遊馬に背を向けて歩きだそうとするナタネだが、振り返るとすぐ目の前にゴースがいて、
ゴース「ごすごす!」
ナタネ「〜〜〜!」
バタリと倒れ込むナタネ。
遊馬「ナタネええええええええ!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 08:26:18.00 ID:AmH4qhjAO<>
====
とりあえず遊馬は洋館の寝室のベッドにナタネを寝かせた。
遊馬「起きないなぁ……ここはオレだけで幽霊を探すか!」
寝室から出ていく遊馬。
遊馬「そうだ。ヒコザル、ミツハニー!」
ヒコザル「うきー」
ミツハニー「はにぃ」
遊馬「寝室の用心棒を頼むぜ!」
ヒコザル「うき!」
ミツハニー「はにん!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 08:29:17.13 ID:AmH4qhjAO<>
寝室をあとにして長い廊下を歩く遊馬。
遊馬(これで手持ちはヘイガニ一匹だけか……)
モンスターボールを眺め、遊馬は笑う。
遊馬「でも、お前と一緒ならかっとべるよな!」
ヘイガニ『へいへーい!』
遊馬「とりあえず……」
辺りを見渡す遊馬。すると掛け時計が見え、時刻は午後六時五分前だと分かった。
遊馬「ゲッ!? 『快傑ニャ☆ルマー』やるじゃん!!」
リビングに入りテレビに駆け付ける遊馬。
遊馬「でも確か電気って通ってないんじゃ……」
そう言いながらもテレビの電源を入れる遊馬。すると電源が入り、液晶画面に映像が流れた。
テレビ『天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ、ポケモンが呼ぶ……悪を倒せと私を呼ぶ! 快傑ニャ☆ルマー、参上!!』
遊馬「おっしゃー! なんだよ、映るじゃん!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 08:31:38.62 ID:AmH4qhjAO<>
………
怪盗「ウフフ、これがスイクンの水晶……ついに手に入れたわ!」
ザンッ!
怪盗「! 誰!?」
ニャ☆ルマー「正義の心に導かれ、やって来たわ。快傑ニャ☆ルマー参上!!」
怪盗「快傑ニャ☆ルマー……!?」
ニャ☆ルマー「あなたね、最近世間を騒がしている怪盗っていうのは」
怪盗「快傑ニャ☆ルマー……聞いたことがある。どんな事件も解決し、その犯人の前に現れては必ず成敗する……正義の味方!」
ニャ☆ルマー「そこまで知っているのね。なら覚悟は出来ているのかしら?」
怪盗「覚悟? あなた、私をそこらの悪人(ざこ)と一緒にしないでくれる?」
怪盗の背後からポケモンが現れる。
ブニャット「にゃー!」
怪盗「私は狙った物は全て手に入れる、怪盗ブニャット!!」
ニャ☆ルマー「怪盗ブニャット……!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 08:33:06.43 ID:AmH4qhjAO<>
………
遊馬「今日も面白いぜ、ニャ☆ルマー!」
テレビに見入る遊馬だが、テレビは突如ブツンと音を立て、テレビの画面には何も映らなくなった。
遊馬「な! 何で切れたんだぁ!? いいところなのに〜!!」
ガタガタと遊馬はテレビを揺らしてみるが、うんともすんとも言わない。
遊馬「く、くそ……」
諦めて幽霊探しに戻る遊馬。
するとその耳に悲鳴が聴こえた。
遊馬「! ナタネ!?」
部屋を飛び出して寝室へと走る遊馬。
しかし、リビングから寝室をつなぐ長い廊下は大量のゴースで溢れかえっていた。
遊馬「なんだよ、これ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 08:37:27.34 ID:AmH4qhjAO<>
ゴース「ごーすごす」
ゴースの群れは寝室まで達しているのがわかる。
遊馬「ナタネが危ねぇ!」
モンスターボールを取り出して投げる遊馬。
遊馬「ヘイガニ、ゴースに『クラブハンマー』だ!」
ヘイガニ「へいへーい!」
ハサミを振り回すヘイガニ。しかしゴースのガス状の身体はその攻撃をすり抜けてしまう。
遊馬「攻撃が当たらねぇ!? ……そうか、ゴーストタイプには打撃は食らわないのか!!」
なら、と遊馬はヘイガニにバブル光線を出すように指示する。
ヘイガニの出したバブルは一直線にゴース達に向かっていく。このまま当たればゴース達を分散させることが出来る。
遊馬「いけるぜ!」
瞬間、バブルが弾けた。
遊馬「……なっ、」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 08:39:31.97 ID:AmH4qhjAO<>
ゴース達の中心にプラズマがあった。
いや、『いた』という表現が正しい。プラズマはまるで生き物のように滑らかに動き、瞬く間に遊馬とヘイガニの前に現れる。
遊馬・ヘイガニ「!!」
キシシ、と笑いながらプラズマは遊馬達を掴んで寝室から離れていく。
遊馬「! 離せ……っ!!」
もがく遊馬だが、プラズマの力は強くテコでも動かない。
遊馬「くそ……」
遊馬(ヒコザル、ミツハニー……ナタネを守ってくれ!)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 08:41:32.23 ID:AmH4qhjAO<>
====
プラズマに連れられて遊馬達がやって来たのはさっきのリビングルームだった。
遊馬「戻ってきちまったってことかよ!?」
ヘイガニ「へいへーい!」
部屋につくと、遊馬達は解放された。まあ投げ飛ばされたのだが。
遊馬「いでで……まったく、乱暴だぞ!」
遊馬はプラズマに文句を言うが、プラズマはキシシと笑うだけだ。
遊馬(コイツはポケモンなのか?)
つけていたP・ゲイザーでプラズマの正体を暴こうとする遊馬だが、レンズには『error』の文字が表示された。
遊馬(読み取れない? なら、まさかコイツ……)
遊馬「ナタネが言ってた幽霊か……!?」
遊馬の叫びにプラズマが答えることはなく、プラズマは周囲に火花を散らしている。
それは戦意ある行動。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 08:43:03.71 ID:AmH4qhjAO<>
遊馬「!」
電撃が遊馬達へと向かって放たれた。
遊馬「うぉおお!!」
ヘイガニを抱えて電撃をかわす遊馬。
その間にプラズマはリビングの隣にあるキッチンの方へ飛び込んだ。
遊馬「?」
プラズマを追ってキッチンに顔を覗かせる遊馬。
だがキッチンにプラズマの姿はない。
遊馬「どこへ……」
チーン、と電子レンジが鳴る。
遊馬「! なんで電子レンジが動いて……、!?」
電子レンジの口が開くと、中から炎が放出された。
遊馬「いぃ……ッ!?」
なんとか炎を避ける遊馬。しかし、避けきれず炎が頬を掠める。
遊馬「な、なんだ!? いきなり電子レンジが攻撃してくるなんて!!」
ヘイガニ「へい〜!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 08:44:51.30 ID:AmH4qhjAO<>
よく見ると、電子レンジはキシシと笑っている。遊馬はその笑い方に見覚えがあった。
遊馬「こいつ、まさかさっきのプラズマかよ〜!?」
プラズマはもう一度炎を放出しようとしている。
遊馬「でも、炎なら……! ヘイガニ、『クラブハンマー』だぁ!!」
ヘイガニ「へいへーい!」
ガシャン、とヘイガニはハサミで電子レンジの口を閉じて、そのまま殴り飛ばした。
電子レンジは豪快に音を立てて床へ落ちる。
遊馬「効果は抜群だぜ!」
ブスブスと電子レンジから煙が出て来た。
遊馬「や、やりすぎたか……?」
そろーっと電子レンジを覗く遊馬。
電子レンジ「……」
それは電子レンジだった。
紛れも無い電子レンジ。そう、そこにプラズマはいなかった。
ビュオオッ!! 遊馬の背後から突風が吹く。
遊馬「……ッ!!」
ピピ、とP・ゲイザーがレンズに情報を映す。
遊馬「! これ、あのプラズマの事か……?」
『―――、プラズマポケモン。でんきのような からだは いちぶの きかいに はいりこむことが できる。 そして そのからだで いたずらする』
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 08:47:26.35 ID:AmH4qhjAO<>
====
目を覚ますと、薄暗い天井が見えた。
ナタネは寝室のベッドから起き上がる。
ナタネ「どこぉ、ここ〜?」
目を擦りながら周りを見るナタネ。そしてすぐに彼女の眠気は吹き飛んだ。
ゴース「ごすごす!」
ナタネ「ひゃああああっ!?」
ゴースの群れは寝室の中まで侵食していた。
震えるナタネを見て笑うゴース達。
ナタネ「ゴ、ゴース……? そっか! 私、ゴースにびっくりして気絶して……」
と、ナタネは思い出したように、
ナタネ「そうだ! 遊馬くんは!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 08:49:05.54 ID:AmH4qhjAO<>
消えた遊馬を探すため、寝室中を駆け回るナタネ。
ナタネ「い、いない……!? そんな……!」
腰を落として、床に尻をつくナタネ。
ナタネ「ひ、一人にしないでよぅ……私、幽霊とかの類いは苦…………、ううん! そんなわけないから!」
ナタネ「私はジムリーダー! どんな相手にも果敢に挑む、強くたくましい……カッコイイジムリーダー!! 幽霊なんて平気よ!」
ナタネ「……でもやっぱり恐いよ〜!!」
ついにナタネは泣き出した。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 08:51:59.81 ID:AmH4qhjAO<>
泣いているナタネをよそに、寝室にいるゴースはより数を増していく。
ゴース「ごーすごす!」
ナタネ「ん……?」
ナタネが気づいた時にはゴースの群れは寝室という空間を余すことなく広がっていた。
その光景にナタネは言葉も出ない。
ゴース「ごすごすごーすごす!」
部屋中のゴース達はナタネをその身体で包んでいく。
身体が浮き、宙で足をバタバタさせるナタネ。
ナタネ「ちょ、ちょっと! 何なのよ〜!?」
床から離れていくとともに段々と意識も遠のいていく。
ナタネ「……っ、」
その原因はガスじょうポケモン・ゴースの身体のガス。それはインド象をも気絶させる猛毒だ。
ナタネはジムリーダーである、つまりは一つのタイプの専門家。ナタネが猛毒をすぐに察知したのはその専門タイプが災いしたからだった。
ナタネ(毒タイプは苦手なのに……うぐっ)
モンスターボールを握ろうにも、手に力が入らない。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 08:54:00.67 ID:AmH4qhjAO<>
ナタネ(もう、ダメ……!)
ナタネの意識が飛ぶ直前、部屋中のゴースが突風にさらわれた。
纏わり付いていたゴースがいなくなったため、ナタネは地に着く。
ナタネ「ど、どうして……」
部屋の出入り口を見ると、そこには二匹のポケモンがいた。
ヒコザル「うきぃ!」
ミツハニー「はにぃん!」
ナタネ「ヒコザルとミツハニー!?」
二匹に近寄ろうとするナタネ。しかし、突風から逃れた一匹のゴースがナタネに向かって飛び掛かった。
ナタネ「きゃ……!」
ヒコザル・ミツハニー「!!」
ブオオオオッ!! ヒコザルとミツハニー、それぞれが炎と風を出す。
ゴース「……!?」
炎と風は合わさって、熱風となりゴースを吹き飛ばした。
ナタネ「! さっきの風はやっぱりあなた達の技だったのね」
頷く二匹。
ナタネ「もしかして二人共、遊馬くんのポケモン?」
二匹は肯定の意を表す。
ナタネ「そっか、ありがとうね!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 08:58:50.66 ID:AmH4qhjAO<>
二匹の頭を撫でてやるナタネ。
ナタネ「……待って」
ヒコザル「?」
ナタネ「どうして遊馬くんはあなた達に私を守るように言ったの? ひょっとして私の話した幽霊を探しに……!?」
ナタネのただ事じゃなさそうな様子に不安そうにヒコザルとミツハニーは顔を見合わせる。
その二匹の様子からナタネは確信する。
ナタネ「ヒコザル、ミツハニー、付いてきて! 遊馬くんを助けに行かなくちゃ!!」
ナタネ(遊馬くん、絶対に幽霊と戦っちゃダメ……!)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:00:04.31 ID:AmH4qhjAO<>
====
遊馬「うわぁあああ!?」
強風にあてられ、遊馬とヘイガニはリビングの壁に頭をぶつける。
遊馬「いだぁ!!」
ヘイガニ「へぃぃ!!」
二人の目の前には一台の扇風機が立っている。
ピピ、とP・ゲイザーのレンズ部分に流れる文字を読む遊馬。
遊馬「このプラズマが……電化製品に入り込む、だって!?」
キシシ、と相変わらずプラズマは笑っている。
そう、扇風機の中で。
プラズマは扇風機に入り込んでいるのだ。
遊馬「さっきも電子レンジに入って、攻撃を仕掛けてきた!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:07:02.20 ID:AmH4qhjAO<>
先程受けた攻撃を思い出す遊馬。
遊馬(さっきの電子レンジは炎攻撃。今の扇風機は風を出してた……)
遊馬「入る電化製品によって、出せる技が変わるのか!」
リビング、キッチンを見渡す遊馬。ここにある電化製品と言えばテレビや電子レンジ、扇風機に冷蔵庫……。
遊馬「! 冷蔵庫……!」
気付いた頃にはプラズマはすでに扇風機から冷蔵庫に移動していた。
冷蔵庫のドアが開き、冷気が遊馬達に向かう。
遊馬「さ、さみ〜!」
ヘイガニ「へい〜!」
遊馬「冷蔵庫だから氷技か……!」
遊馬(でも、あとは入れそうな電化製品はねえ! プラズマが出てきたところがチャンス!)
プラズマが冷蔵庫から出てくる。
遊馬「今だ、ヘイガニ! 『クラブハンマー』!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:09:28.53 ID:AmH4qhjAO<>
ヘイガニがハサミを固めて、それをプラズマへと振り下ろした。
しかし、手応えがない。
ヘイガニ「へい……!?」
ハサミはただ空気を切っただけだった。
遊馬「プラズマはどこへ行ったんだ!?」
リビングを見渡す遊馬。すると、ある物がリビングのど真ん中にあった。
遊馬「…………」
洗濯機だ。
遊馬「なんでこんなトコに洗濯機があるんだよ〜!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:11:51.98 ID:AmH4qhjAO<>
洗濯機は電化製品。つまり……、
遊馬「プラズマは洗濯機に入り込んだのか! ……よし。ヘイガニ、やられる前にやれってさ! 『クラブハンマー』!!」
今度は洗濯機へとハサミをぶつけようとするヘイガニ。
遊馬「……!」
だが、遊馬は気付く。
洗濯機にプラズマは入っていない。
ガシャアアンッ!! ヘイガニが洗濯機を殴った音だ。
ヘイガニ「へい?」
手応えを感じたものの、洗濯機にいるはずのプラズマが出て来ないことに頭を傾げるヘイガニ。
遊馬「危ねぇ、ヘイガニ!」
ヘイガニ「!」
ガガガガ――ッ!! ヘイガニのすぐ横には芝刈り機が迫っていた。
遊馬「ヘイガニいいいい!!」
ヘイガニの元へ走る遊馬。
間一髪、遊馬はヘイガニを抱えてギリギリで芝刈り機にひかれずに済む。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:13:59.23 ID:AmH4qhjAO<>
遊馬「っ……、ギリギリせぇふ……」
どうやらプラズマは庭にあった芝刈り機にその身体を入り込ませたようだ。
グオングオンと芝刈り機は大きな音を出してリビングやらキッチンやらを走り回る。
遊馬達はそれを避けるだけでいっぱいいっぱいだ。
遊馬「……っ!」
芝刈り機の通った床を見ると、カーペットはズタズタになっていて、ひどい所は床板までバキバキに砕かれている。
一瞬で床一面が穴だらけになってしまった。
その光景に遊馬は背筋が寒くなる。
遊馬(もう足場もなくなってきた……このままじゃあ、オレもヘイガニもあの床みたいに……!)
足がすくむ。遊馬はその場から動けなくなっていた。
遊馬「……!」
そんな遊馬の元へ、カーペットやら床板やらを砕き散らしながら、芝刈り機は走り寄ってくる。
遊馬の足は動かない。
芝刈り機との距離はもう三メートルもない。
遊馬「く……!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:16:44.35 ID:AmH4qhjAO<>
ヘイガニ「へーい!!」
ドシャン、ヘイガニは遊馬に飛び掛かり、遊馬を倒れさせて芝刈り機から遊馬の身を守った。
あたかも、先程遊馬がヘイガニを助けた時のように……間一髪、芝刈り機の攻撃をかわした。
遊馬「ヘイガニっ!」
ヘイガニ「へい……、」
遊馬の手を両のハサミで包み込むヘイガニ。
遊馬「ヘイガニ……」
前にもこんなことがあった。
遊馬は幼い頃、シンジ湖で迷子になってしまったことがある。
遊馬は泣きながら、一人、日の落ちかかった湖をさ迷っていた。
遊馬がもう諦めかけていた時、湖から現れたのがヘイガニだった。
その頃は野生だったものの、ヘイガニは遊馬に駆け寄り遊馬の手を握り、『大丈夫、大丈夫』と遊馬を励ましてくれた。
すると自然と遊馬の心から不安と恐怖が消えてなくなったのだ。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:19:29.54 ID:AmH4qhjAO<>
あの時と同じように、遊馬の心からは不安と恐怖が消え去っていく。
ヘイガニ「へいへい」
遊馬の頭を撫でてやるヘイガニ。
遊馬「へへ。くすぐったいぜ、ヘイガニ」
今度は遊馬がヘイガニの頭を撫で返す。
遊馬「ありがとな、ヘイガニ。元気出たよ!」
ヘイガニ「へいっ!」
頬を赤く染めて、ヘイガニは頭をかぐ。
遊馬「行くぞ!」
遊馬の目は闘志に溢れる。その目が見つめる相手はもちろん、プラズマが入り込んだ芝刈り機だ。
遊馬「オレとヘイガニの幼なじみの絆……かっとビングを見せてやる!!」
ヘイガニ「へいへーい!」
芝刈り機とヘイガニが同時に飛び出す。
遊馬「『クラブハンマー』!」
ヘイガニ「へいへーい!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:21:11.41 ID:AmH4qhjAO<>
芝刈り機の頭へとハサミを当てようとするヘイガニだが、芝刈り機の勢いに弾き飛ばされてしまう。
遊馬「ヘイガニー!!」
ヘイガニ「へい……、」
遊馬(ただぶつかっていくだけじゃあダメだ! でもヘイガニの戦闘スタイルはクラブハンマーやバブルこうせんで攻めるもの……どうしようもねぇ……)
ヘイガニ「へい!」
ヘイガニの身体が青白く光っている。
遊馬「! なんだ……!?」
ピピピピ!! P・ゲイザーが鳴り出した。
レンズにヘイガニの情報が流れていく。
遊馬「これ……。ヘイガニ、まさか新しい技を覚えたのか!?」
ヘイガニ「へい!」
頷くヘイガニ。
遊馬「……これならあの芝刈り機を倒せるかもしれない」
ヘイガニ「へいへい!」
遊馬「よし! やるぜ、ヘイガニ!!」
ヘイガニ「へーい!」
両のハサミをじっと構えるヘイガニ。
プラズマは少し不思議に思うが、ヘイガニに向かって発進する。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:22:33.59 ID:AmH4qhjAO<>
遊馬「今だ! 『こごえるかぜ』!!」
ヘイガニのハサミから冷気が放射される。
冷気は芝刈り機にではなく、その足元の床へと向かった。
床が凍り、芝刈り機がスリップする。
何回転かして、芝刈り機は壁にぶつかり停止した。
遊馬「!」
芝刈り機に近づいてみた遊馬だが、プラズマが中にいる様子はなかった。
遊馬「また違う電化製品に入り込んだのか!?」
しかしリビングにはもうプラズマが入り込みそうなものはない。
先程プラズマ自身が部屋中を目茶苦茶にしたのだから。
プラズマ「……らまー」
遊馬「! プラズマ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:24:04.00 ID:AmH4qhjAO<>
ヘイガニ「へいへーい!」
プラズマを指差して怒るヘイガニ。
プラズマ「らま……」
遊馬「待ってくれ、ヘイガニ!」
ヘイガニ「へい!?」
プラズマ「……?」
遊馬「プラズマ、この洋館に出て悪戯をするっていう噂の幽霊の正体はお前だな?」
プラズマ「らま……」
びくびくと身体を震えさせる所を見ると、そのようだ。
遊馬「怒ってるわけじゃねえ。でもさ、オレはお前がどうしてそんなことをしたのか……その理由を知りたいんだ」
しばらく怯えていたプラズマだが、遊馬の真っ直ぐな瞳を見て小さく頷き、キッチンにある冷蔵庫を持ってきてそのドアを開けた。
すると……、
遊馬「! これは……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:26:21.63 ID:AmH4qhjAO<>
冷蔵庫の中には色々なものがあった。
遊馬はその中の一つを取り出し、
遊馬「これ、ポケッチじゃねぇか!」
ポケッチにはしっかりと『太一』と名前が書いてある。
遊馬「ポケッチ泥棒はプラズマだったのか……、!!」
冷蔵庫の中にある他のものを見て、遊馬はある事に気付く。
遊馬「プラズマ、お前……」
====
ナタネは長い廊下を走っていた。
その後ろにはヒコザルとミツハニーもいる。
ナタネ「遊馬くん、あのポケモンと戦ってはダメ……!」
ナタネ(町の人達に幽霊のことを聞いた時、私は自分でこの森の洋館のことを調べてみた)
ナタネ(それで分かったのが洋館にはゴースが棲みついていること。森の洋館にある森の羊羹はおいしいこと……そして、)
ナタネ「この洋館にはプラズマポケモン・ロトムというゴーストポケモンがいること!」
ロトムが現れるという洋館のリビングルームが見えてきた。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:29:05.49 ID:AmH4qhjAO<>
ナタネ「遊馬くんっ!!」
部屋のドアを勢いよく開けるナタネ。
「いだあ!!」
どうやら誰かがドアにぶつかったらしい。
ナタネ「あ、ごめんなさい! 大丈夫……って遊馬くん!!」
遊馬「っつう……お、ナタネか。おはよ、気が付いたのか?」
ヒコザル「うき!」
ミツハニー「はにぃ!」
遊馬「ヒコザルとミツハニーもありがとな。ナタネを守ってくれてさ」
ナタネ「…………」
遊馬「……ナタネ?」
ナタネ「お、おはよーじゃないよ! なんでそんな落ち着いて……、え!?」
床がボロボロになっているリビングのある一点に注目してナタネの表情が固まる。
ロトム「らま?」
ナタネ「きゃあああああああ!!」
遊馬「ど、どうしたナタネー!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:32:42.08 ID:AmH4qhjAO<>
ナタネ「ど、どど……どうしてロトムが〜!?」
遊馬「? ロトムってこのプラズマの事か?」
ナタネ「そ、そう。プラズマポケモン・ロトム、幽霊の正体……」
遊馬「何だ、知ってたのかよ?」
ナタネ「何でそんなに落ち着いてるの! ていうか一緒に羊羹食べながらテレビ見てるし!! 玩具も部屋中にあるしー!!」
遊馬「ああ、これか?」
遊馬は床に散らばった玩具を拾い上げて、
遊馬「これさ、そこの冷蔵庫に入ってたんだよ。実はロトムが人から玩具を盗んでてさー。まったく困ったもんだぜ」
キッチンにある冷蔵庫を指差しながら笑う遊馬。
ナタネ「確か……町の人達も物を盗まれたって言ってたような」
遊馬「でもロトムにも理由があるんだ。こいつ、こんな薄暗い洋館でひとりぼっちだろ? だから誰かと遊びたかった。それで人間にちょっかいかけてたってワケさ!」
ロトム「らまらま!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:34:25.56 ID:AmH4qhjAO<>
ナタネ「あ、遊びたかった……?」
思わず顔を引きつらせるナタネ。
遊馬「ナタネ、確かにロトムのやったことは悪いことだったかもしれねえ。でもこいつはただ寂しかっただけなんだ! それを分かってやってくれ!」
ヘイガニ「へいー!」
ロトム「らま……!」
遊馬とヘイガニとロトムが揃ってナタネに頭を下げる。
ナタネ「…………。遊馬くん、あなたは不思議な香りのトレーナーね」
遊馬「え……?」
ナタネ「ロトム、あなたの気持ちは分かった。今回は遊馬くん達に免じて許すわ」
ロトム「らま……」
遊馬「ナタネ……!」
ナタネ「でも、町の人達にはちゃんと謝るのよ?」
ロトム「らまー!」
笑顔で部屋を飛び回るロトム。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:37:01.67 ID:AmH4qhjAO<>
ナタネ「……ふふ」
遊馬「ナタネ、ありがとな」
ナタネ「ううん。こちらこそ、私を守ってくれてありがとう」
遊馬「? オレは……」
ナタネ「あなたのポケモン達よ」
遊馬「おう、そっか」
ヒコザルとミツハニー、ヘイガニの頭を撫でてボールにしまっていく遊馬。
ナタネ(…………)
ナタネ「ねえ、遊馬くん」
遊馬「なんだ?」
ナタネ「あなたもポケモントレーナーだから、ハクタイのジムには挑戦するのよね?」
遊馬「あったり前さぁ! クロガネジムの次はハクタイジムを攻略してやるぜ!!」
ナタネ「そっか……それは楽しみね」
遊馬「?」
ナタネ「……ま、今はロトムと遊びましょ?」
遊馬「おう!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:39:20.81 ID:AmH4qhjAO<>
====
夜が明け、森は朝日に包まれる。
小鳥「ううーん」
小鳥は昨夜はテントの中で夜を明かした。
もちろんそのテントは小鳥のものではない。
「結局、お友達は見つからなかったわね」
小鳥「モミさん!」
モミ「ごめんね、力になれなかったわ」
小鳥「いえ。私を泊めてくれただけでも感謝してますから」
モミ「でも、お友達は……」
小鳥「……遊馬、」
モミ「今日も一緒に探しましょう。きっと見つかるわ」
小鳥「はい!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:42:10.75 ID:AmH4qhjAO<>
====
《もりのようかん》
ロトムに別れを告げた遊馬とナタネは洋館の外に出て朝日を浴びていた。
ナタネ「気持ちいい〜! 森の朝日は最高ねー!!」
遊馬「おう! 初めてだけどいいもんだなー」
遊馬「って! こんなことしてる場合じゃなかったぁ!!」
ナタネ「どしたの?」
遊馬「小鳥を探さねぇと!」
ナタネ「小鳥……?」
遊馬「昨日話しただろ? 森ではぐれた友達さ!」
ナタネ「そ、そうなんだ……」
ナタネ(……女の子だったのね)
遊馬「じゃあな、ナタネ! オレはまた森を探すよ!」
ナタネ「ま、待って!!」
遊馬「?」
ナタネ「その……これを見て!」
首に提げていたのか、ネックレスを外して遊馬に見せるナタネ。
遊馬「これって、……」
ナタネ「ええ、ジムバッジよ」
遊馬「ってことは、ナタネはジムリーダーに……」
ナタネ「勝ったんじゃなく、私がジムリーダーなのよ」
遊馬「な……!」
ナタネ「そこで遊馬くん。友達が見つかったら、ジムに挑戦しに来て。そしてあなたがジム戦に勝ったらジムバッジをあげるわ。でも、あなたが負けたら……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/08(日) 09:44:38.41 ID:AmH4qhjAO<>
====
モミ「……もう森の出口ね」
小鳥「はい……」
小鳥(遊馬、どこに行ったの……?)
モミ「小鳥さん、もう一度森を回って……」
小鳥「いえ。もうこれ以上はモミさんに迷惑が……、!!」
遠くを見て動きを止める小鳥。
モミ「どうしたの?」
モミは小鳥の視線を追う。その先には巨大な洋館があり、二人の人物がいた。
その二人のうち一人は女性。もう一人は少年で、モミは小鳥から聞いた話から、その少年が小鳥の探していた友達なのだと察する。
小鳥「モミさん、すみません!」
モミ「ええ、無事見つかってよかったわね。元気で」
小鳥「はい!」
遊馬の元へと走り出す小鳥。
小鳥「遊……」
しかし、遊馬と向かい合う女性の次の言葉でその足を止める。
「あなたが私に負けたら……遊馬くん、あなたをもらいます!」
小鳥「ええええええーっ!!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<><>2012/01/08(日) 09:46:24.79 ID:AmH4qhjAO<> 途中寝てました エリカとかアニメデントとか、草タイプ使いはこんな感じだよね
読んでくださった方、ありがとうございました <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)<>sage<>2012/01/08(日) 13:35:43.89 ID:Y9R19xpAO<> わく <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県)<>sage<>2012/01/08(日) 18:26:15.84 ID:136CYmtJ0<> 乙
ナタネとアンアの見た目、なんか似て… <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 19:10:38.63 ID:IqwsgXgAO<>
====
《ハクタイシティ》
遊馬「ハクタイシティ、アライビングー!」
小鳥「……」
遊馬「どうした? 小鳥」
小鳥「しらないっ!」
遊馬「……なに怒ってんだよ?」
小鳥「遊馬がいけないのよ!」
遊馬「?」
小鳥(私は一生懸命探してたのに……なんで遊馬はいつもこう……)
遊馬に先立って歩く小鳥だが、前を向いていなかったらしく通行人にぶつかる。
小鳥「あっ、ご、ごめんなさい」
「ううん、いいのよ。私もちょっと本に夢中になってしまっていたから」
そう言う女性の手には何やら分厚い本が握られている。
小鳥「難しそうな本……」
「うふふ。私は考古学を勉強していてね。これはシンオウ地方の歴史書なのよ。確かに難しいかもね」
小鳥「へえ、考古学!」
遊馬「小鳥、なんだよトートバッグって?」
小鳥「トートバッグじゃなくて、考古学!」
「ふふっ。まあ手軽に言えば、太古のシンオウ地方に住んでいた人類の生活や文化を学んでいるってことよ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 19:12:29.26 ID:IqwsgXgAO<>
遊馬「ふーん。で、お姉ちゃんは誰なんだ?」
思わずキョトンとする女性。
小鳥「ち、ちょっと遊馬!」
「……ふふ、いいのよ。名も名乗らないでいきなり失礼だったかしら?」
遊馬「そんなことねぇけどさ。オレは九十九遊馬、ポケモンチャンピオンを目指してるんだ!」
小鳥「私は観月小鳥です。遊馬とは幼なじみで、一緒に旅をしてます」
「ポケモンチャンピオンを目指して旅、か……。懐かしいわね、私もそんな頃があったわ」
シロナ「私はシロナよ。よろしくね」
遊馬「おう!」
小鳥「はい!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 19:15:58.08 ID:IqwsgXgAO<>
====
《ポケモンセンター》
モンスターボールをいくつかカウンターに並べていくシロナ。
シロナ「これとこれ……そうね、この子もお願いします」
ジョーイ「かしこまりました。シロナさん、いつもお疲れ様です」
シロナ「ええ」
小鳥(シロナさんって有名な人なのかな?)
小鳥「ねえ、遊馬……あれ?」
さっきまで隣にいたはずの遊馬がいなくなっている。
遊馬「すげー! シロナ姉ちゃん、こんなにポケモン持ってるんだなー!!」
カウンターにかじりつき、シロナのモンスターボールを見て遊馬は瞳を輝かせている。
小鳥「ちょっと遊馬!」
遊馬の襟首を掴みカウンターから引きはがす小鳥。
遊馬「なにすんだよ、小鳥ー!」
小鳥「ジョーイさんが困ってるでしょ!」
ジョーイ「あはは……」
シロナ「確かに、回復は遅れちゃうかもね」
遊馬「う……ご、ごめん」
シロナ「いいわよ。そのくらい元気がある方が私は好きだしね」
カウンターを離れ、ロビーのソファーに腰掛ける遊馬達。
シロナ「遊馬くんはポケモンを何匹持っているの?」
遊馬「ヘイガニとヒコザルとミツハニーの三匹さ!」
シロナ「へえ、なかなか面白いポケモンを使うのね」
遊馬「へへ、まぁね!」
シロナ「小鳥ちゃんは?」
小鳥「私はポケモントレーナーじゃないですから……ムックルだけです」
シロナ「そうなの」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 19:17:42.84 ID:IqwsgXgAO<>
小鳥「シロナさんはベテランさんなんですか?」
シロナ「そうね……。トレーナーとしては長い間やっているわ」
遊馬「!」
小鳥「すごいですね!」
シロナ「そんなことないわ。ポケモンが好きならいくらでもやっていけるからね」
遊馬「なあ、シロナ姉ちゃん!」
シロナ「?」
遊馬「シロナ姉ちゃんのポケモンを見せてくれよ!」
小鳥「遊馬、またいきなり……」
シロナ「……ふふっ。遊馬くんも私と同じようにポケモンが大好きみたいね。いいわ、では外に出ましょうか」
遊馬「よっしゃあ!」
小鳥「もうっ」
====
ポケモンセンターからは少し離れた所に空き地があった。
シロナ「ここら辺がいいわね」
腰に手を回し、シロナはモンスターボールを掴んで投げる。
遊馬「お〜!!」
ボールから出てきたポケモンは遊馬達が見たことのないポケモンばかりだ。
シロナ「紹介していくわ。右からトリ……」
遊馬「その必要はねえぜ!」
シロナ「え……?」
『P・ゲイザー、セット!』
シロナ「!」
遊馬「右からトリトドン・ミカルゲ・トゲキッス・ミロカロス……だね!」
小鳥「強そうなポケモンばっかりね」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 19:19:23.20 ID:IqwsgXgAO<>
遊馬「いいなー、オレもこんなポケモンが欲しいぜ!!」
ブルル、と遊馬の腰にかけているモンスターボールが振動する。
遊馬「はは、ごめんごめん。オレにはお前達がいるんだったな!」
ついにポケモンが自分からボールを脱出する。
ヘイガニ「へいへーい!」
ヒコザル「うきー!」
ミツハニー「はにぃん!」
遊馬に詰め寄るポケモン達。
遊馬「うわわ……」
小鳥「遊馬がひどいこと言うから、みんな怒ってるじゃない」
ヘイガニ「へいー!」
ヒコザル「うきぃー!」
ミツハニー「はにぃー!」
遊馬「うっ……あ、そうだ! シロナ姉ちゃん!」
シロナ「え、私?」
遊馬「今からポケモンバトルをしてくれよ! それで機嫌を直してもらうのさ!」
シロナ「ま、まあいいけど」
小鳥「遊馬、本気? シロナさんはベテラントレーナーなのよ」
遊馬「だからオレが勝てるはずないって? そんなもんやってみなくちゃ分かんねぇさ! 大事なのはかっとび続けることだろ!?」
小鳥「……はあ」
もう小鳥は溜め息をつくしかなかった。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 19:21:16.48 ID:IqwsgXgAO<>
====
遊馬「形式は三対三のシングルバトルだ!」
シロナ「構わないわ」
遊馬・シロナ「決闘(バトル)!!」
遊馬「まずはミツハニー、お前だ!」
ミツハニー「はにぃ!」
シロナ「いきなさい、トゲキッス!」
トゲキッス「とげきーっす」
遊馬「トゲキッスか!」
P・ゲイザーでトゲキッスの情報を読み取る遊馬。
遊馬「飛行タイプなのか! ならミツハニーとは空中戦になりそうだな! なあ、ミツハニー!!」
ミツハニーは無反応だ。
遊馬「……あれ?」
小鳥「まだ怒ってるんじゃない? ミツハニー」
遊馬「そうなのか? ……いや、オレとミツハニーには絆があるんだ! 大丈夫だって!!」
ミツハニー「は、はにぃん!?」
一瞬にして顔を真っ赤にするミツハニー。どうやら「大丈夫」を「大好き」と聞き間違えたようだ。
ミツハニー「み、つは? はにはにぃ?」
チラチラと遊馬を見るミツハニー。
遊馬「ん、どうした? ミツハニー。大丈夫だって、オレがいるからさ!」
ミツハニー「は、はにぃ〜!?」
心臓に矢を打たれたかのような衝撃に思わず倒れるミツハニー。
遊馬「ミツハニー、大丈夫か!?」
ミツハニー「はにぃ……」
遊馬「ミツハニー!!」
シロナ「……あのー、始めていいかしら?」
遊馬「お、おう!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 19:22:50.18 ID:IqwsgXgAO<>
遊馬「行くぜ、ミツハニー!」
ミツハニー「はにぃん!」
遊馬「『かぜおこし』だぁ!!」
ブオオオッ!! トリトドンに向けて強風が吹く。
トリトドン「ぽわ……!」
シロナ「なかなか強いかぜおこしね。でも……」
ぐちゃあっ、風に裂かれトリトドンの身体がまるでゼリーのように簡単に砕け散った。
遊馬「いっ……!?」
きゃあ、と悲鳴をあげて目を覆う小鳥。
シロナ「ごめんなさい。確かに直視はできない光景よね」
バラバラになったはずのトリトドンの身体が元に戻りつつある。
遊馬「!」
P・ゲイザー『トリトドン、ウミウシポケモン。ホネがなく グニャグニャの からだ。 からだの いちぶが ちぎれても すぐに さいせいされて もとどおり。』
遊馬「再生能力……!?」
シロナ「その通り。『じこさいせい』よ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 19:25:06.53 ID:IqwsgXgAO<>
トリトドン「ぽわ〜!!」
完全に元の姿を取り戻したトリトドンはミツハニーへと反撃に出る。
シロナ「今度はこちらが行くわ! トリトドン、『だくりゅう』!!」
口から泥の混じった水を放出するトリトドン。
ミツハニー「はにぃ……!!」
遊馬「うわぁあああ!?」
ミツハニーと遊馬は泥水に流され、ミツハニーは瀕死になった。
小鳥「遊馬!」
ミツハニー「はにぃ〜……」
遊馬「戻れ、ミツハニー!」
シロナ「ふふ。よくやったわ、トリトドン」
笑みを浮かべながらトリトドンの頭を撫でるシロナ。どこと無くその表情は子供っぽい。
遊馬「く〜! やっぱり強えぜ!!」
全身泥だらけで地団太を踏む遊馬。
小鳥「大丈夫? 遊馬」
遊馬「なんてことねえさ! 何より、強いトレーナーが相手だからこそポケモンバトルは燃えるんだ!!」
遊馬「頼むぜ、ヘイガニ!!」
ヘイガニ「へいへーい!」
シロナ「トリトドン、交代よ! 次はあなたよ。ミカルゲ!」
ミカルゲ「みょーん」
遊馬「先手必勝だぜ! かっとビングだ、ヘイガニ!!」
ヘイガニ「へーい!」
ヘイガニはハサミを固めてそれをミカルゲへと振り下ろす。
ドゴオオオッ!! クラブハンマーの衝撃がミカルゲの顔を潰した。
ミカルゲ「……っ!」
小鳥「急所に当たったわ!」
遊馬「いいぞ、ヘイガニ!」
ヘイガニはミカルゲの顔からハサミを離す。
ヘイガニ「へい……?」
ミカルゲ「……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 19:26:46.84 ID:IqwsgXgAO<>
何かハサミに違和感を覚えるヘイガニ。
クラブハンマーはミカルゲの顔面にヒットした。しかし、あまりに手応えがなさすぎる。
ヘイガニ「へい……、」
遊馬「どうしたんだ? ヘイガニ」
シロナ「あなたのヘイガニは気付いたようね」
遊馬「な、なにを……」
シロナ「ミカルゲというポケモンは元から耐久面に優れているのだけど、ミカルゲの打たれ強さはそれだけが理由じゃないわ」
ピピ、P・ゲイザーがミカルゲの情報を流す。
遊馬「! ミカルゲのタイプ……ゴースト・悪の複合タイプ!!」
小鳥「ゴーストと悪……?」
『ポケモントレーナーへの道〜入門編〜』なる本を取り出し読みはじめる小鳥。ちなみにこの本は遊馬の所持品である(まあ、当の本人は目を通してすらいないが)。
小鳥「『どんなタイプにも弱点がある』。ゴーストタイプはゴーストタイプと悪タイプに弱く、悪タイプは虫タイプと格闘タイプに弱い……」
シロナ「『しかし複合タイプにはその弱点を互いに補い合うものもある』……それが、ゴースト・悪タイプ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 19:29:03.60 ID:IqwsgXgAO<>
遊馬「……つまり、…………………………どういう事だ?」
小鳥「ミカルゲには弱点がないのよ!」
遊馬「な、なんだって!?」
シロナ「ヘイガニの攻撃はミカルゲの芯まで届いていなかったってこと」
ミカルゲ「みょーん!」
ヘイガニ「……っ!」
首を伸ばしてヘイガニを威嚇するミカルゲ。寸胴だった身体はたちまちくびれのある高身長へと変わる。
シロナ「防御だけじゃない。攻撃面において、ゴーストタイプのミカルゲはトリッキーな戦法が持ち味なのよ!」
ミカルゲの首から青白い炎が飛び出す。
遊馬「なんだ!?」
シロナ「『おにび』!」
青白い炎はヘイガニを囲い、行く手を阻む。
ヘイガニ「へい!?」
ヘイガニは火傷を負った!
小鳥「火傷! 攻撃力が下がる状態異常ね!」
遊馬「しまった……!」
シロナ「これで本当にあなたのヘイガニの攻撃はミカルゲに届かなくなったわ。決めるわよ、『あくのはどう』!」
ミカルゲ「みょーん!!」
長い首から出てくる黒紫色の炎のような塊がヘイガニにぶつかり、ヘイガニは戦闘不能になる。
遊馬「ヘイガニー!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 19:37:52.82 ID:IqwsgXgAO<>
小鳥「これで遊馬はヒコザルだけ……!」
シロナ「戻りなさい、ミカルゲ。最後は私の手持ち最強のポケモンでいくわ」
遊馬「手持ち最強のポケモン……!」
シロナ「ミロカロス!!」
ミロカロス「みろー!」
シロナの最後のポケモンはミロカロス。
遊馬はミロカロスを見ただけで肌が痺れるような感覚を覚える。それだけの実力を持つポケモンなのだ。
しかし、それでいてその威光からはどこか神々しさも感じられる。
小鳥「きれい……」
遊馬(強いポケモンが相手だからって、オレ達のかっとビングに変わりはねえ!)
遊馬「なっ、ヒコザル!」
ヒコザル「うきー!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 19:40:15.19 ID:IqwsgXgAO<>
ミロカロスとヒコザル、両者が睨み合う。
ミロカロス「……」
ヒコザル「……」
先に動いたのはヒコザルだ。
遊馬「『かわらわり』だぁ!」
ズドオオッ!! ミロカロスの首あたりにヒコザルのチョップがヒットする。
ミロカロス「……っ!」
シロナ「気張るのよ、ミロカロス! 『アクアテール』!!」
ミロカロスはその長い尻尾でヒコザルをはたく。
空中へ投げ出されるヒコザル。
ヒコザル「うきぃ!?」
うまく態勢をとれないヒコザルを追撃するため、ミロカロスは身体を伸ばしてヒコザルとの距離を詰める。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 19:41:28.29 ID:IqwsgXgAO<>
遊馬「くそ……!」
シロナ「相性の壁は覆せないわ! 『アクアテール』!!」
バシイイッ!! 鞭で叩いたような乾いた音が辺りに響く。
シロナ「ミロカロスのアクアテールが決まったわ。ヒコザルは戦闘不能……」
突如、空き地が光に包まれる。
遊馬「なんだぁ!?」
シロナ「あれは……!」
光源はヒコザルだ。
光はヒコザルの身体を包み、その形は何かの姿だと認識できる。
小鳥「どうなってるの……?」
シロナ「進化が始まったんだわ!」
遊馬「進化……!!」
もう一度ヒコザルの身体が激しく光ると、ヒコザルはその姿を変えていた。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 19:44:11.59 ID:IqwsgXgAO<>
小鳥「ヒコザルの姿が変わった!?」
遊馬「よっしゃー! ヒコザルが進化したぜー!!」
全身を使って喜びを表現する遊馬。
小鳥「え、え? 進化って?」
シロナ「進化とは、ポケモンがある条件を果たした時に起こる現象のことよ。条件は様々だけど、ほとんどのポケモンはバトルで経験を積むことで進化するわ。進化したポケモンは前よりもパワーアップするの」
小鳥「じゃあ……」
遊馬「勝てるかもしれねぇ、ミロカロスに! なっ、ヒコザル!! ……いや、」
ピピ、ヒコザルの進化した姿の名をP・ゲイザーがレンズに流す。
遊馬「モウカザル! かっとビングだぜ!!」
モウカザル「うききい!」
新たな姿を得たモウカザルは目にも留まらぬ速さでミロカロスの腹にパンチを食らわした。
ミロカロス「みろぉおおお!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:07:15.06 ID:IqwsgXgAO<>
シロナ「ミロカロス! 『マッハパンチ』ね……!!」
遊馬「それだけじゃねえぜ! モウカザル、『おにび』だ!」
モウカザル「うっききー!」
ドシュン!! モウカザルが投げた火の玉がミロカロスに命中する。
ミロカロス「……っ!」
ミロカロスは火傷を負った!
小鳥「さっきミカルゲが使った技ね。これでミロカロスはうまく戦えないわ!」
遊馬「これでトドメだぜ! 『かえんぐるま』!!」
モウカザル「うききいいいっ!」
ミロカロスの額に炎で身体を包んだモウカザルが突進する。
ミロカロス「……ッ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:08:36.90 ID:IqwsgXgAO<>
モウカザルは身体を回転させて、さらにミロカロスにダメージを与える。
遊馬「これでミロカロスは……!」
シロナ「どうかしら? 確かにモウカザルはミロカロスにかえんぐるまでダメージを与えてはいるけど」
そう、逆に言えばミロカロスはダメージを受けながらも倒れてはいない。
ミロカロス「みろおおっ!!」
モウカザル「!?」
バシイイッ!! ついにモウカザルはミロカロスに弾き飛ばされてしまった。
遊馬「そんな!」
シロナ「これでフィニッシュよ。『みずのはどう』!」
バシャアアッ!! モウカザルを包んでいた炎が掻き消され、水しぶきとともにモウカザルは地面へと落下した。
モウカザル「うきぃ……」
モウカザルは倒れた。
遊馬「モウカザル!!」
モウカザルの元へ駆け付ける遊馬。
少し遅れて小鳥が遊馬達に駆け寄る。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:09:47.16 ID:IqwsgXgAO<>
シロナ「ミロカロス、戻って」
ミロカロスをモンスターボールに戻すシロナ。
モウカザル「うき〜……」
シロナ「モウカザルは大丈夫かしら?」
遊馬「ああ。進化して強くもなったし!」
小鳥「でも負けちゃったね」
遊馬「それにしても、最後のモウカザルの攻撃……何でミロカロスは倒れなかったんだ?」
シロナ「それはミロカロスの『ふしぎなウロコ』」
遊馬「?」
シロナ「ミロカロスの特性よ。状態異常のときに自身の防御力をあげるものなの」
遊馬「状態異常?」
小鳥「おにびで受けた火傷ね!」
遊馬「そうか、それで防御力が上がっちまったのか!」
小鳥「火傷を負わせたことが逆に仇になっちゃったのね」
遊馬「ちぇっ、シロナ姉ちゃんのポケモンが使う技だから強いって思ったのになー」
シロナ「!」
シロナ(そっか、ミカルゲのおにびを見て真似をしたのね)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:11:28.32 ID:IqwsgXgAO<>
遊馬「完敗だったぜー」
小鳥「強かったね、シロナさん」
シロナ「いいえ、遊馬くんも遊馬くんのポケモン達も私のポケモンと渡り合っていたわ。いい勝負だったわ、遊馬くん」
手を差し出すシロナ。
それに遊馬も応じ、手を重ねる。
遊馬「おう!」
====
シロナ「それじゃあ、私は用があるから。ここで」
小鳥「はい」
遊馬「じゃあな、シロナ姉ちゃん!」
シロナ「ジム戦頑張ってね、遊馬くん。それと小鳥ちゃんも」
小鳥「? 私はジムには……?」
シロナ「うふふ、それはどうかしらね? 旅は人を変えるものよ」
小鳥「ううん?」
意味深な台詞を言い残して、シロナは遊馬と小鳥に手を振りながら空き地を出ていった。
小鳥「どういう事?」
遊馬「とりあえず、ジムへ行こうぜ小鳥!」
小鳥「う、うん」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:13:46.62 ID:IqwsgXgAO<>
====
シロナ「……」
シロナはとあるビルの前に立っている。
先程、遊馬達と一緒にいた空き地のすぐ傍にあるビルだ。
シロナ「ここね。ギンガ団のビルというのは」
ある少年が写った写真を手に持ち、ビルを睨むシロナ。
シロナ(……ギンガ団。宇宙を作るエネルギーを生み出し、新世界を作り出すことを目的とする悪の組織)
シロナ「止めなければいけないわ。チャンピオンであるこの私が!」
シロナは一つのモンスターボールを取り出す。中に入っているのはミロカロスだ。
シロナ(まさか炎ポケモン相手にあなたが苦戦を強いられるなんてね……。九十九遊馬くん、私がミカルゲを出さなければあるいは……?)
シロナ「……ふふ。彼のP・ゲイザーや、ヒコザルにヘイガニと連れているポケモンからもしかしてと思ったけど。通りで……」
シロナ「うふふ、今から楽しみね」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:14:28.40 ID:IqwsgXgAO<>
====
《ハクタイジム》
遊馬「たのもー!!」
ナタネ「来たわね、遊馬くん」
遊馬「ナタネ!」
ナタネ「さっそく挑戦を受けます。バトルフィールドに案内するわ」
バトルフィールドは草木が生えて緑に染まっていた。
小鳥「ジムの中とは思えないわ!」
遊馬「ここでバトルするのか! 楽しそうだぜ!」
小鳥(観客席はちゃんとしたところみたい)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:15:37.36 ID:IqwsgXgAO<>
立ち位置に着く遊馬とナタネ。
ナタネ「勝負は三対三の交代戦よ!」
遊馬「オーケー!」
遊馬・ナタネ「決闘(バトル)!!」
遊馬「かっとビングだぜ、モウカザルー!」
モウカザル「うきい!」
ナタネ「! ヒコザルが進化したのね!」
遊馬「おう! モウカザルだ!」
ナタネ(炎タイプ……)
ナタネ「まずはあなたよ、チェリンボ!」
チェリンボ「ちぇりーん!」
遊馬「知らないポケモン……P・ゲイザー、セット!」
P・ゲイザーが読み取ったチェリンボの情報をレンズに映す。
遊馬「草タイプなのか!」
小鳥(草タイプは炎タイプに弱い。相性だけなら遊馬の有利!)
小鳥(……遊馬、負けないで。このバトルで負けたら遊馬は……)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:16:39.44 ID:IqwsgXgAO<>
遊馬「ここは正面から行くぜ! モウカザル、『かえんぐるま』!!」
モウカザル「うききいいい!!」
ナタネ「『やどりぎのタネ』!」
チェリンボがモウカザルに種を飛ばす。しかし、種はモウカザルを包む炎に弾かれてしまう。
ナタネ「っ!」
遊馬「いけえ! モウカザルー!!」
ボオオウッ!! モウカザルのかえんぐるまがチェリンボに炸裂した。
チェリンボ「ちぇりぃ……、」
チェリンボは倒れた。
ナタネ「チェリンボ!」
遊馬「よっしゃー!」
小鳥「やった! 最初のバトルは遊馬の勝ちね!」
遊馬「幸先いいぜ!」
ナタネ「チェリンボ戻って。今度は……リーフィア!」
リーフィア「りーぶぃ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:17:47.97 ID:IqwsgXgAO<>
レンズを通してリーフィアを見る遊馬。
遊馬「こいつも草タイプ! ってことはナタネは……」
ナタネ「ジムリーダーは各々特定のタイプのポケモンを極めている……そうよ、私のエキスパートタイプは草タイプ!」
小鳥「!」
小鳥(だとしたら、このままモウカザルで……!)
遊馬「戻れ、モウカザル!」
小鳥「って、何で戻しちゃうの〜!?」
遊馬「へ?」
小鳥「炎タイプのモウカザルなら草タイプ相手に有利に進められたのに!」
遊馬「そのことか。確かにその通りだけど」
かちゃりとモンスターボールを構える遊馬。
遊馬「こいつが戦いたそうだからさ!」
ヘイガニ「へいへーい!」
小鳥「へ、ヘイガニ!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:19:24.40 ID:IqwsgXgAO<>
ナタネ(! 草タイプに水タイプ……不利な状況だけどポケモンの意思を尊重するのね)
ナタネ「遊馬くんらしいわ」
遊馬(それに勝機はあるからな!)
ナタネ「リーフィア、『かげぶんしん』よ!」
リーフィア「りぶぃー!」
ヘイガニ「へい!?」
リーフィアが素早く動き回ることで残像が出来、すなわちリーフィアは分身した。
遊馬「なにぃ!?」
十近くの数のリーフィアが一斉にヘイガニに刃を向ける。
ナタネ「『リーフブレード』!」
ザキイイイッ!! いくつもの刃がヘイガニの身体を切り刻んだ。
ヘイガニ「へぃい……っ!」
遊馬「ヘイガニー!!」
ナタネ「『シェルアーマー』で急所は外れたようね。でも直に戦闘不能になるわ」
リーフィアが追撃の構えをとる。
遊馬(もう一度あの攻撃を喰らったら……!)
遊馬「『バブルこうせん』で防ぐんだ!」
ヘイガニ「へいー!」
ハサミから大量の泡を出して、ヘイガニはリーフィアの視界を塞ごうとするがリーフィアのリーフブレードによって簡単に破られてしまう。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:20:46.79 ID:IqwsgXgAO<>
ナタネ「こんな小細工は効かない! リーフィア、『リーフブレード』!!」
リーフィア「りふぃーん!」
リーフィアとその分身がヘイガニに迫る。
ヘイガニ「……っ!」
ザキイイイッ!! ジム内に響く程の斬撃の音だ。
ナタネ「ヘイガニは戦闘不能に……」
しかし肝心の斬撃はヘイガニへと向かったのではなく、生い茂る地面の草に向けられていた。
当然、ヘイガニは倒れていない。
ナタネ「リーフブレードは地面を切り裂いただけ……!?」
予想外の出来事に困惑するナタネ。だがナタネはもっと重要なことに気付いていない。
そう、リーフィアの分身が消えている。
ナタネ「ど、どうして!?」
遊馬「オレにも考えがあったのさ!」
ヘイガニ「へいへいー!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:26:17.50 ID:IqwsgXgAO<>
ナタネ「!」
ヘイガニのハサミの隙間から冷気が発しているのをナタネは見た。
ナタネ「『こごえるかぜ』か……!」
ヘイガニはハサミから発した冷気でリーフィアの足元を凍らせ素早さを下げたのだ。
遊馬「水タイプだからって氷タイプの技が使えないわけじゃねえ!」
小鳥「『こごえるかぜ』……」
小鳥(この旅で遊馬は少しずつ成長しているのね)
遊馬「かっとビングだ、『クラブハンマー』!」
ヘイガニ「へいへーい!」
ゴシャアアッ!! こごえるかぜで冷気を纏わせたハサミがリーフィアの腹に減り込んだ。
リーフィア「りふぃ……!?」
ナタネ「リーフィア!」
リーフィアは倒れた。
遊馬「やったぜ、ヘイガニ!」
ヘイガニ「へいへーい!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:27:34.97 ID:IqwsgXgAO<>
小鳥「もう相手は残り一匹! 遊馬はまだ三匹だから……いけるわ、遊馬!」
遊馬「ああ、……」
遊馬(でもナタネの実力はまだこんなもんじゃないんじゃ……)
ナタネ「さすがは遊馬くん。ロトムを倒した……いいえ、ロトムと友達になっただけのことはある」
でも、と呟くとナタネはモンスターボールを握り投げた。
ロズレイド「ろぜー」
遊馬「……!」
ナタネ「私のとっておき! この子は強いよ」
遊馬「上等だぜ! 戻れヘイガニ!」
ナタネ「!」
遊馬「もういっぺんモウカザル!」
モウカザル「うっききぃ!」
ナタネ「ロズレイド、『しびれごな』!」
ロズレイド「ろーぜっ!」
モウカザルの頭上にロズレイドの出した粉が振り撒く。
モウカザル「うきぃ……っ!?」
遊馬「どうしたモウカザル!?」
急にモウカザルが地面に膝をついてしまった。
ナタネ「麻痺でしびれて動けなくなったのよ。これで得意のスピードは封じたわ」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:28:58.36 ID:IqwsgXgAO<>
モウカザル「……っ」
遊馬「くそ……。なら、状態異常には状態異常だ! 『おにび』!」
ボオオウッ!! モウカザルの出す火の玉がロズレイドを襲うが、ロズレイドのスピードに追いつかずいなされてしまう。
遊馬「く……!」
ナタネ「麻痺で攻撃の手も緩くなってしまったようね。まあ万が一当たったとしてもロズレイドには『ラムのみ』を持たせているから状態異常は平気だけど」
小鳥「タイプ相性ではモウカザルが勝ってるのに……!」
ナタネ「タイプの有利不利は覆せる……さっき遊馬くんもそうしたはずだよね」
ヒュン、とモウカザルの身体にツルが巻き付いた。
モウカザル「!?」
ツルは草むらから伸びている。
ナタネ「気づかなかった? 最初に出したチェリンボの『やどりぎのタネ』、かわされたんじゃなく……わざと外したのよ!」
遊馬「! まさか、そのタネが残って……!?」
ナタネ「そう。後からあなたのポケモンを襲うように仕掛けておいたワケ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:30:24.36 ID:IqwsgXgAO<>
ツルはモウカザルの全身に行き渡り、モウカザルの体力をどんどん吸い取っていく。
モウカザル「うきいい!?」
遊馬「モウカザルー!!」
ナタネ「モウカザルの体力はあっという間に空っぽ! やがて戦闘不能になるわ。でも駄目押しね、『マジカルリーフ』!」
ロズレイド「ろぜーっ!!」
ロズレイドの両腕の花から放たれた葉っぱがモウカザルにトドメを刺す。
モウカザル「うききいいいーっ!!」
モウカザルは倒れた。
遊馬「……!!」
小鳥「つ、強い!」
ナタネ「さあ遊馬くん。次のポケモンを出して!」
遊馬「……っ、ヘイガニー!!」
ヘイガニ「へいへーい!」
遊馬「『こごえるかぜ』だ!」
ビュオオオッ!! ロズレイドの足元に向かって冷気が放たれる。
ナタネ「二度は同じ手は効かない!」
足元の草が凍る前にロズレイドはその場を離れてしまった。
ナタネ「そして今度は『メロメロ』よ!」
ロズレイド「ろーぜぇん!」
パチン、とウインクするロズレイド。
ヘイガニ「へい〜!?」
ヘイガニはロズレイドにメロメロになった。
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:31:34.25 ID:IqwsgXgAO<>
遊馬「な、なんだ!?」
ナタネ「ヘイガニはロズレイドにメロメロ。つまりもうヘイガニはロズレイドに攻撃できないわ」
遊馬「なんだって!」
ナタネ「『マジカルリーフ』!」
バシイイッ!! ロズレイドの葉っぱがヘイガニの頬を切り裂く。
遊馬「ヘイガニ!」
ヘイガニ「へ、へい〜」
顔に傷をつけられながらも、ヘイガニは幸せそうだ。
ナタネ「『リーフストーム』!!」
ロズレイド「ろーぜー!!」
何百枚という葉っぱに激突してヘイガニは間もなく倒れた。
遊馬「ヘイガニ……!」
小鳥「遊馬のポケモンが一気に二匹も戦闘不能に……」
ナタネ「あとは残りの一匹で私のロズレイドとサシで勝負ね」
遊馬「オレの最後の一匹は……」
ナタネ「ミツハニー、だったわね。森の洋館で見たかぎりは」
遊馬「ぐ……」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:33:22.36 ID:IqwsgXgAO<>
ナタネ「まあ、たとえどんなポケモンで来ようと私のロズレイドには敵わないわ……絶対に!」
遊馬「! 絶対に……?」
ナタネ「ええ、遊馬くんでも倒せない!」
遊馬「……」
確かにナタネのロズレイドは強い。
相性の悪いはずの炎タイプで向かっても、麻痺を食らわせられチェリンボのやどりぎのタネを植えられて体力を空っぽにされる。
足元を奪おうとしても、その素早さで軽くいなされメロメロにされるとなす術もなくなる。
「しびれごな」で素早さを奪われ、「やどりぎのタネ」で体力を奪われ、「メロメロ」で自由を奪われ、トドメには「マジカルリーフ」・「リーフストーム」の容赦ない攻撃。
その戦術を前にして、どんなポケモンで向かっても勝ち目はないだろう。
遊馬でさえ、そう思っている。
遊馬(……でも、)
最後のモンスターボールを握り締める遊馬。
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:41:42.37 ID:IqwsgXgAO<>
遊馬「ポケモンバトルに絶対なんてねえええ!!」
ナタネ「!」
遊馬「絶対くらいに少ない可能性でも、オレは勝利へかっ飛ぶ! 行け、ミツハニー!!」
ミツハニー「はにぃん!」
ナタネ「ミツハニー……まずは」
しゅるる、草むらに潜むやどりぎのタネがミツハニーへとツルを伸ばす。
小鳥「あれを受けたら体力が吸い取られちゃうわ!」
遊馬「く……、上昇しろミツハニー!」
ミツハニー「はにぃ!」
ジムの天井近くまでミツハニーは飛び、ツルをかわした。
ナタネ「なんですって!」
遊馬「残念だったな。やどりぎのタネは封じたぜ!」
小鳥「やった!」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:42:40.50 ID:IqwsgXgAO<>
ナタネ「っ、まだまだよ。こんなことじゃあ私の戦術は崩れない! 『メロメロ』!」
ロズレイド「ろーぜぇん!」
遊馬「や、やべぇ!?」
ミツハニーを誘惑するロズレイドだが、ミツハニーは特に何も様子は変わらない。
ナタネ「メロメロが効いていない?」
遊馬「あ、あれ?」
ナタネ「ということはミツハニーはメスなのね……!」
遊馬「へぇ、お前メスだったのか」
ミツハニー「はにぃ〜」
照れているのかパタパタと羽根を動かすミツハニー。
小鳥(……納得)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:44:15.43 ID:IqwsgXgAO<>
遊馬(よし、なんとかメロメロも効かないみたいだし。あとはしびれごなに気をつければ……)
ナタネ「『しびれごな』!」
ロズレイド「ろーぜっ!」
ミツハニー「はにぃ!?」
ミツハニーは麻痺で技が出にくくなった。
遊馬「って、いきなりかよ〜!?」
ナタネ「ちょっと誤算はあったけど、私の勝利は揺らぎなかった。ロズレイド、『リーフストーム』!」
ロズレイド「ろぜー!!」
ビュオオオッ!! 葉っぱのハリケーンがミツハニーに迫り来る。
遊馬「まだだ……! 『かぜおこし』!!」
ミツハニー「みつは〜!!」
痺れながらも羽根を動かし風を起こすミツハニー。
強風にあてられ葉っぱのハリケーンは崩れ散る。
ナタネ「まだそんな余力が……!」
遊馬「タイプ相性ではこっちが有利なんだ! 同じ風でも飛行と草じゃ訳が違うぜ!」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:46:04.50 ID:IqwsgXgAO<>
ピピ、P・ゲイザーがミツハニーの覚えている技をレンズに映している。
遊馬(これを見て分かったぜ。ナタネの戦術の穴が!)
ナタネ「草が駄目なら、もう一つのタイプをぶつけるまで!」
腕のバラに隠し持っていた毒の針を刺そうと、ロズレイドはミツハニーに接近する。
遊馬「!」
クザアッ、ロズレイドのどくばりが決まった音だ。
ナタネ「ミツハニーは麻痺をしているから毒状態にはならないけど、ダメージは負うわよ」
遊馬「そうだな。でもダメージの分、成果は出たぜ!」
ナタネ「え……?」
見ると毒針は確かにミツハニーを突き刺しているが、ロズレイドの腕のバラが散っているのだ。
ロズレイド「ろぜ……!?」
慌てて腕を引くロズレイド。その時あることに気が付く。
ロズレイド「!」
腕に持っていたきのみがなくなっているのだ。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:48:15.77 ID:IqwsgXgAO<>
ナタネ「ラムのみがない!? どこに……!」
むしゃむしゃ、ミツハニーが口をモゴモゴと動かしている。
ナタネ「! それは……」
遊馬「ロズレイドが近付いてくるのを待っていたんだ。悪いけど、ラムのみは食べさせてもらったぜ」
ナタネ「どうやって……?」
遊馬「『むしくい』、相手のきのみを奪って食べちまう技だ!」
ラムのみを食べれば状態異常が回復する。
ラムのみを食べたミツハニーの身体の痺れはとれた。
ミツハニー「はにぃー!」
遊馬「もう自由に動けるぜ!」
ナタネ「く……、ならまた麻痺にすればいいのよ!」
ロズレイドが粉を出そうと腕を振る。
遊馬「そう上手くいくとは限らねえぜ!」
ビュオオオッ!! ロズレイドの出した粉を強風がさらう。
先程ミツハニーが繰り出したかぜおこしだ。
遊馬「あれは攻撃を防ぐためにやったんじゃねえ! 真の狙いはここさ!」
粉を乗せた風の向きは変わり、ロズレイドの方へと向かっていく。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:49:30.83 ID:IqwsgXgAO<>
ブアアアッ!! ロズレイドは強風を全身で受ける。
ロズレイド「ろぜっ……、」
風のダメージに合わさって、風に乗ったしびれごなによりロズレイドは麻痺になってしまった。
ナタネ「! ラムのみを奪ったのはロズレイドを状態異常にさせることも目的だったのね……!」
遊馬「かっとビングだ、ミツハニー!」
ミツハニー「みつはぁー!!」
再び風を起こし、その風に自身が乗って加速するミツハニー。
向かう先にはもちろんロズレイドがいる。
遊馬「『ずつき』だぁ!」
ゴチイイン!! ミツハニーの強烈な頭突きがロズレイドの顔面にヒットした。
ロズレイド「……、」
ロズレイドは倒れた。
ナタネ「ロズレイド!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:50:53.88 ID:IqwsgXgAO<>
小鳥「三匹目のロズレイドを倒した! ってことは……」
遊馬「オレ達の勝ったビング〜!!」
ミツハニー「はにぃーん!」
ナタネ「……戻って、ロズレイド」
ナタネ(今までこの戦術を破った挑戦者はいなかった。やどりぎのタネ、メロメロ、しびれごな、これら全てを対処できる数少ないポケモンの一匹、ミツハニーを遊馬くんは持っていたから……)
ナタネ(ううん。遊馬くんにはそんな難しい戦術なんて関係ないのね。真っすぐに向かってきて本来のバトルの楽しさを思い出させてくれる……素敵なポケモントレーナーね)
ナタネ「遊馬くん、これを」
遊馬「ん?」
首にかけたジムバッジを差し出すナタネ。
ナタネ「あなたの実力を認め、このフォレストバッジを授与します!」
遊馬「おう! フォレストバッジ、げっとビングー!!」
ミツハニー「はにぃん!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/01/30(月) 20:52:41.36 ID:IqwsgXgAO<>
小鳥「それにしても良かったぁ。遊馬が負けたら大変なことに……」
遊馬「大変なこと?」
小鳥「……あっ」
小鳥(安心したらつい口にしちゃった……)
遊馬「小鳥、大変なことってなんだよ?」
小鳥「それは……って遊馬覚えてないの!?」
遊馬「サッパリだ」
小鳥「……」
ナタネ「なになに? 何の話ー?」
小鳥「だから、その……あなたがこのバトルで遊馬に勝ったら……ごにょごにょ」
ナタネ「? 私なんか言ったっけ?」
小鳥「えっ」
ナタネ「ゴメンゴメン! 今のバトルに夢中であんまし記憶ないかも!」
小鳥「ええええー」
遊馬「そうだよなー、熱いバトルだったな!」
ナタネ「ええ、見事なフレーバーのバトルだったよ!」
遊馬「またバトルしようなー、ナタネ!」
ナタネ「もちろんよー!」
小鳥「…………………………………………………………」
遊馬「そうだ小鳥、聞いてくれよー。お前がいない間に森の洋館ってところに行ったんだけどさ、そこの羊羹が……」
小鳥「もうホント〜に遊馬なんて知らなーい!!」
遊馬「な、なんだよそれ〜!」
小鳥「ふーんだ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<><>2012/01/30(月) 20:53:38.44 ID:IqwsgXgAO<> だいぶ遅れました……とりあえず終わりです
読んでくださった方、ありがとうございました <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県)<><>2012/01/30(月) 21:22:21.63 ID:UAPDFSUD0<> 面白いな、乙 <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:27:38.79 ID:h7ombCSAO<>
====
遊馬「よーし、ジムバッジもゲットしたことだし次の町へ進もうぜー!」
小鳥「うん。遊馬、次に行くところは決めてあるの?」
遊馬「ねえ!」
小鳥「……やっぱり」
遊馬「なんだよ、やっぱりって……ん?」
何やらポケッチをいじりだす小鳥。
遊馬「何やってんだ?」
小鳥「ポケッチのアプリで地図になるものを探しているのよ」
遊馬「アプリ、ねえ……」
これまでポケッチを使った覚えがない遊馬だ。
小鳥「! 分かったわ。ここからはヨスガシティが近いみたい!」
遊馬「へー! ジムもあるのかな?」
小鳥「それは分からないけど……どんな町かは私知ってるわ」
遊馬「?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:28:43.64 ID:h7ombCSAO<>
小鳥「ヨスガはファッションの町なの!」
遊馬「ふぁくしょん〜?」
小鳥「ファッション! そこでしか買えない服やコスメチックもたくさんあるそうよ」
遊馬「コ……なんだって? っていうか服なんて今でもたくさん持ってるじゃねえか!」
小鳥「遊馬には理解できないわよ。旅に出るのに着替えも用意しない遊馬には」
遊馬「洗濯すれば服なんて一枚で十分だっつーの!」
小鳥「とにかく! 次の目的地はヨスガシティで決定ね?」
遊馬「ま、まあジム戦できれば何でも良いけどさ」
小鳥「そうと決まったら先を急ぎましょう!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:31:17.02 ID:h7ombCSAO<>
遊馬の手を引いて軽快に走り出す小鳥。
その後ろでゆらりと人影が動く。
「ちょーっと待ったー!!」
小鳥「ひ……!?」
遊馬「ん?」
突然後ろから浴びせられた声に振り向く遊馬達。
そこに立っていたのはヘルメットを被ったおじさんだ。
「わしには分かる。分かるぞ〜」
虫眼鏡を片手に遊馬の身体を観察し出すおじさん。
遊馬「誰だよ、おじさんは!?」
地下おじさん「わしは地下おじさんじゃ。地下を掘り続けて苦節四十年、わしはついに地下通路を完成させた! そしてこれが探検セットなんじゃが……」
遊馬「そんな話はいいから! 地下おじさんがオレの何が分かるって?」
地下おじさん「うむ、わしには分かるんじゃ。地下を掘るにあたって発掘したものがいくつかあってな。それにより四十年の経験か、それを持つ人がすぐに分かるのじゃ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:32:47.79 ID:h7ombCSAO<>
遊馬「その発掘したものって?」
地下おじさん「化石じゃよ」
遊馬「化石……! ……ってなんだっけ?」
地下おじさん「ぬあああっ!」
遊馬の発言に地下おじさんはずっこける。
地下おじさん「ポケモンの化石じゃ、ポケモンの化石!」
小鳥「ヒョウタさんに貰ったでしょ?」
遊馬「あー、あれか!」
ポケットを探ると、石ころのようなものが出てきた。
地下おじさん「これじゃこれじゃ。……ん? 今ヒョウタと言ったか?」
小鳥「あ、はい」
地下おじさん「ヒョウタが少年に化石を渡したとはどういう……?」
遊馬「オレがヒョウタ兄ちゃんとのジム戦に勝ったらくれたんだ」
小鳥「ずがいの化石だっけ?」
地下おじさん(なるほど。ヒョウタがこの前言っていたのはこの少年のことか)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:36:43.57 ID:h7ombCSAO<>
遊馬「おじさんはヒョウタ兄ちゃんの知り合いなのか?」
地下おじさん「知り合いも何も、わしとヒョウタは親戚じゃよ」
遊馬・小鳥「親戚ー!?」
地下おじさん「ああ。ヒョウタのことはあの子が小さい頃から知っているぞ」
遊馬「へ〜」
地下おじさん「なるほどな、ヒョウタが君に化石を……。ちとその化石を貸してみい」
遊馬「ああ」
化石を虫眼鏡で観察すると、地下おじさんは背負っているリュックサックを下ろしてその中から何か機械を取り出した。
遊馬「なんだそれ?」
何の機械か、遊馬にはちんぷんかんぷんだ。
地下おじさん「化石復元マシーンじゃ」
遊馬「化石復元マシーン?」 <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:39:24.27 ID:h7ombCSAO<>
地下おじさん「これに化石をはめて、と……」
ピカアアッ!! 機械にはめられた化石が黄色の光を発する。
小鳥「ま、まぶしい……」
遊馬「! これが化石の復元……!!」
地下おじさん「さあ、姿を現すぞ。太古のポケモンが!」
黄色の光で埋まっていた視界が真っ白に染まる。
遊馬・小鳥「ッ!?」
がちゃり、機械の辺りからか何か物音がする。
ちなみに遊馬達は先程の強い光のせいで絶賛視界点滅中だ。
目が利かない遊馬には状況が分からない。
遊馬(がちゃり? がちゃりって何だ? 今どういう……)
ゴツン、遊馬の足に何かがぶつかった。
思いのほか大きな衝撃に遊馬はバランスを崩しそのまま尻もちをつく。
遊馬「うわあああっ!?」
小鳥「ゆ、遊馬!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:40:42.19 ID:h7ombCSAO<>
遊馬「っツゥ……何なんだよ〜っ!」
視界を取り戻したのか、遊馬は目の前にいるモノを認識する。
「ずがぁ〜い」
遊馬「な、何だこいつ!?」
地下おじさん「ズガイドスじゃ。ヒョウタも持っていたじゃろう?」
遊馬「そういやあ……」
地下おじさん「君が持っていた化石から復元したんじゃ。そのズガイドスは君のポケモンじゃよ」
遊馬「もらっていいの!?」
地下おじさん「うむ」
遊馬「や、やった!」
小鳥「ヒョウタさんが使ってたポケモンだし、きっと強いはずよ!」
遊馬「おう!」
ズガイドスへと手を差し出す遊馬。
ズガイドス「?」
遊馬「やっと会えたな、ズガイドス。早くお前とバトルがしたいぜー。仲間になった証の握手だ!」
ズガイドス「ずがぁ〜!」
遊馬の気持ちを受け取り、ズガイドスは握手をしようと前へ出る。
しかし、
ズガイドス「がぁ〜い!!」
遊馬「ぐへえーっ!?」
ズガイドスは勢い余って遊馬の顎に向かって頭突きをかました。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:41:52.25 ID:h7ombCSAO<>
遊馬「いでぇ――――――ッ!?」
強烈な痛みにその場で転げ回る遊馬。
小鳥「だ、大丈夫!?」
地下おじさん「どうやら握手の仕方が分からんようじゃのう」
遊馬「だからって頭突きをするやつがあるかよ〜!?」
ズガイドス「がぁい?」
地下おじさん「ハッハッハ! 元気なしるしじゃよ!」
遊馬「〜〜〜っ。ま、とにかくよろしくな」
ズガイドス「ずがい!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:45:38.73 ID:h7ombCSAO<>
====
《207ばんどうろ付近のテンガン山》
凌牙「ここがテンガン山……」
アカギ「そうだよ凌牙。このシンオウを真っ二つに分けるテンガン山はまさに地方の中心と言ってもいい……」
凌牙「シンオウの中心……」
アカギ「ここはまだそのほんの一部分でしかないが、逆に言えばここから始まっているのだ……完全はね」
両手を大きく広げて口元を緩ませるアカギ。
その傍にある湖でポチャリと水がしぶいた。
アカギ「……凌牙、君はオクタンを持っていたな。どうだ? ここで水タイプのポケモンをゲットしてみては」
凌牙「必要ないぜ。オレにはアンタがくれたポケモンがいるからな」
アカギ「それもそうだな。君ならそのポケモンを使いこなすことが出来るはずだ」
凌牙「ああ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:47:33.66 ID:h7ombCSAO<>
====
《207ばんどうろ》
遊馬「ズガイドス、『ずつき』!」
ズガイドス「がぁーい!」
目の前の木に向かい猛進するズガイドス。
しかし、
小鳥「え……?」
ズガイドス「ずがいーっ!」
何故かズガイドスは方向転換をして木とは正反対の位置にいる小鳥の方へと走り出した。
遊馬「ズガイドス!?」
ズガイドス「ずがい……!?」
どうやらズガイドス本人にも想定外のことで、しかも頭突きの勢いは止まらない。
小鳥「う、うそー!?」
遊馬「小鳥……!」
小鳥を助けようと走り出す遊馬だが、小鳥との距離はそうすぐには埋められない。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:49:43.98 ID:h7ombCSAO<>
小鳥「……!!」
ズガイドスが小鳥にぶつかる、まさに直前にこんな声がした。
「トドグラー、とどのつまり『れいとうビーム』です!」
ピシイイッ!! ズガイドスの足元が凍り、勢い余ってズガイドスがこける。
遊馬「や、やった!? 何かよく分からねえけど、これでぶつかることは……」
小鳥「ないけど、これ私まで……!」
つるんと氷の上で尻もちをつく小鳥。
小鳥「いたた……」
遊馬「! 小鳥、まだだ!」
小鳥「え!?」
見ると、転んでもズガイドスの勢いは止まらず、むしろ増して小鳥に迫ってきている。
小鳥「ちょ、ちょっと……!」
立ち上がり逃げようとするが小鳥の足はもたつき、また転んでしまう。
遊馬「小鳥――――――――――ッ!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:51:23.85 ID:h7ombCSAO<>
「ポッタイシ、『アクアジェット』だ!」
ポッタイシ「ぽたー!」
バシャアアッ!! 走る遊馬より速くポッタイシが水を纏いながら地面を滑る。
ポッタイシはすぐにズガイドスに追いつき、あっという間にズガイドスをさらっていく。
ズガイドス「がい……!?」
「あとはあの子だけね」
小鳥「きゃああああー!!」
滑っていたのはズガイドスだけじゃなかったらしく、小鳥も後方に少しずつ動いていた。
しかも小鳥の後ろは急な坂なのだ。
遊馬「あのままじゃ落っこちちまう〜!?」
「手間がかかる……ニャルマー、『ねこのて』よ!」
ニャルマー「にゃあー!」
ニャルマーは小鳥のすぐ横に滑り込み、その尻尾を振った。
尻尾は鋭い爪になって小鳥を切り裂く。
遊馬「いい!?」
小鳥「ひ……!」
と思いきや、ギリギリのところで襟元をかすって小鳥を横合いに投げた。
小鳥「いた! ってあれ? 助かった……?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:52:55.13 ID:h7ombCSAO<>
キャッシー「戻ってニャルマー。ご苦労きゃっと♪」
小鳥「キ、キャッシー!?」
遊馬「なんでキャットちゃんが?」
等々力「とどのつまり、」
鉄男「オレ達もいるぜ!」
遊馬「イインチョー、鉄男!」
小鳥「さっきのポケモン達は鉄男くん達の……?」
等々力「ええ。僕のトドグラー、タマザラシから進化したわけです」
鉄男「オレのポッチャマもポッタイシになったんだ!」
小鳥「あ、ありがとう二人とも」
キャッシー「あらー? 私には何かないのかしら?」
小鳥「うっ……。って、あのやり方は乱暴すぎよ!」
キャッシー「にゃーんですって! それが助けられた鳥の態度なの!?」
小鳥「私は鳥じゃないー!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:54:13.08 ID:h7ombCSAO<>
遊馬「とにかくありがとうな、キャットちゃん!」
キャッシー「もちろんキャット!」
満面の笑みで遊馬の手を握るキャッシー。
小鳥「だからくっつきすぎ!」
キャッシー「手くらいいいじゃない」
小鳥「あなたの場合それだけじゃ済まなさそうなのよ!」
キャッシー「にゃ〜にそれ? 別に遊馬くんは誰のものでもないでしょ?」
小鳥「それはそうだけど……。むう、この泥棒猫!」
キャッシー「にゃあ!? じゃ、あなたは泥棒鳥ね! 泥棒鳥!!」
小鳥・キャッシー「むぅ〜……!!」
遊馬「な、なんだぁ?」
等々力「いつもの光景ですね」
鉄男「だな」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:55:33.22 ID:h7ombCSAO<>
遊馬「それより鉄男達がなんでこんなところに集まってんだよ?」
鉄男「偶然会ってな」
等々力「もしかしたら遊馬くん達もそろそろ着くころかな、と思ってみんなで待っていたんです!」
キャッシー「私も旅を始めたの」
遊馬「へえ〜!」
キャッシー「まさか小鳥が一緒とは思わなかったけどね」
小鳥「ふふん、遊馬は一人じゃ旅なんて出来ないだろうからね」
遊馬「何だってー!?」
小鳥「だってそうじゃない。この前なんてハクタイの森で迷子になったし」
遊馬「迷子になったのは小鳥の方だろー!?」
小鳥「遊馬の方よ!」
遊馬「小鳥だ!」
小鳥「遊馬!」
キャッシー(私も遊馬くんと言い争いたい)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 18:59:08.18 ID:h7ombCSAO<>
等々力「ところで遊馬くん! 君はジムバッジを集めていると聞きましたが、何個集めたんでしょう?」
遊馬「よくぞ聞いてくれたぜ、委員長! この前ハクタイジムで新たにゲットして今は……」
鉄男「ちなみにオレは四つだぜ!」
遊馬「……えっ」
等々力「とどのつまり、僕は三つですね!」
鉄男と委員長は胸元につけたジムバッジを遊馬に見せ付ける。
遊馬「な、なな……」
小鳥「あはは……」
キャッシー「私は集めてないけど、遊馬くんは五つぐらい?」
遊馬「うわあああああああああああああああああああああああん!!」
キャッシー「きゃっと!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 19:00:32.29 ID:h7ombCSAO<>
遊馬「うぐ、えぐ……」
等々力「ゆ、遊馬くん?」
遊馬「……二つです」
等々力「え?」
遊馬「オレはまだジムバッジ二つだけだよー! 悪かったな〜!!」
小鳥「あぁ……」
鉄男・等々力・キャッシー「…………、」
等々力「ま、まあジムバッジの数が多ければいいというものでは……ありますか」
遊馬「ぐ……」
鉄男「遊馬だしなあ」
等々力「て、鉄男くん」
遊馬「ぐぐぅ……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 19:02:23.26 ID:h7ombCSAO<>
キャッシー「というか小鳥がいるから遊馬くんはゆったりペースで旅を進めてるんでしょ?」
小鳥「なんですって!」
キャッシー「あなたは遊馬くんにとってお荷物なのよ!」
小鳥「そ、そんなこと…………ないよね、遊馬?」
遊馬「あるわけねぇだろ? オレは小鳥と旅できて楽しいぜ!」
小鳥「ゆ、遊馬〜!」
ギュウウ、と遊馬に抱き着く小鳥。
キャッシー「! ちょっとぉ!? 近づきすぎ、近づきすぎぃ〜!!」
小鳥「何よ! あなたもさっき近付いてたじゃない!」
キャッシー「シェークとホールドじゃあ話が違いますからぁー!」
小鳥「やる気?」
キャッシー「あ・い・て・に・な・る・わ・よ〜!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 19:04:36.48 ID:h7ombCSAO<>
遊馬「さっきから何なんだよ、二人とも〜」
等々力「喧嘩中の二人は置いておくとして……遊馬くん、そのズガイドスは君のポケモンですか?」
遊馬「ん?」
委員長は遊馬の背後に指を向けている。
そこにはズガイドスがいる。
ズガイドスは遊馬の後ろに回り込んで、遊馬の背中に頭突きをお見舞いした。
遊馬「どぅえええええええ!?」
等々力「ゆ、遊馬くん!」
遊馬「つぅ〜……」
ズガイドス「がい?」
鉄男「このズガイドス、どうしたんだ?」
遊馬「化石を復元してもらったんだ……」
等々力「へえ、遊馬くんは化石を手に入れたんですか」
遊馬「でも久しぶりに動くからか、慣れないみたいでさー。ずつきはノーコンだし、それでいてオレには確実にずつきを命中させるしでよー」
鉄男「そりゃあ考えものだな」
等々力「とどのつまり、それはもう慣れさせるしかないんじゃないでしょうか?」
遊馬「そうだよなあ……、ん?」
ズガイドス「がい……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 19:06:54.61 ID:h7ombCSAO<>
うつむき悲しげな顔をしているズガイドス。
どうやらトレーナーである遊馬の気持ちや自分の駄目さを知り、凹んでいるようだ。
遊馬「ズガイドス……」
ズガイドス「がいぃ……」
遊馬「そう気を落とすなよ。コントロールさえ何とかすればお前のずつきは完璧なんだ。ずつきのパワーはオレが保証してやる!」
ズガイドス「がい……」
遊馬「練習すればなんとかなる! 一緒に頑張ろうぜ!!」
ズガイドス「……がいっ!」
等々力「遊馬くんなら出来る気がしますね」
鉄男「諦めの悪さは天下一品だからな」
遊馬「あのね……」
キャッシー「頑張って、遊馬くん!」
小鳥「私も出来ることはやるからね」
遊馬「おう!」
ズガイドス「ずがぁーい!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 19:08:20.50 ID:h7ombCSAO<>
====
《テンガン山》
アカギ「凌牙、ポケモンの進化を知っているね?」
凌牙「ああ」
アカギ「研究によれば、約九割のポケモンは進化する。進化は魅力的だ。進化することで不完全なポケモンも完全に近付くことが出来るのだ」
凌牙「ま、進化形のポケモンは進化する前より強くなるのが普通だよな」
アカギ「例外もあるがね。……さて、ここからが本題だ」
アカギ「進化の条件はバトルの経験を積む以外に何がある?」
凌牙「進化の石や交換、トレーナーへの懐き、ポケモン自身のコンディション……まあ様々だな」
アカギ「ふふ、大体あってるよ。だが最も重要すべき条件が抜けている」
腰に手を回し、二つのモンスターボールを取り出すアカギ。
アカギがボールのスイッチを押す。そしてボールから出てきたのはレアコイルとノズパスだ。
凌牙「……?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 19:11:48.11 ID:h7ombCSAO<>
アカギ「例えば『つきのいし』を使うと進化するピッピは石が持つ月の力にあてられて進化するのだ。つまりは強い月光を浴びればピッピはピクシーになる」
アカギ「それと同じで、特別なエネルギーにより進化するのがこの二匹……レアコイルとノズパスなのだ」
凌牙「特別なエネルギー? まさか……」
アカギ「そう……このテンガン山のエネルギーはこの二匹の姿を変えさせる」
ピカアアッ!! 二匹の身体が青白く発光すると、その姿を変える。
ジバコイル「ばりぃー」
ダイノーズ「じゃいー」
凌牙「これがテンガン山のエネルギーでの進化……!」
アカギ「ふふ、やはりな。私が睨んだ通りだよ」
凌牙「何の話だ?」
アカギ「このテンガン山は無限のエネルギーを秘めている。この神秘な場所なら世界の始まりとして相応しい」
凌牙「世界の始まり……」
アカギ「いずれ分かるさ。……さあ、二匹も進化したことだ。そろそろ先へ進もうか」
凌牙「今からギンガ団のアジトに行くんだよな?」
アカギ「ああ。ハクタイの方は何者かによって襲撃されたようだから、私達が目指すのは本拠地であるギンガトバリビルだ」
アカギ(ハクタイビルの襲撃者については詳しく調べてみる必要があるな)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/06(月) 19:14:06.56 ID:h7ombCSAO<>
アカギ「そうだ、凌牙。水タイプを扱うのが上手な君に頼みたいことがあるんだ」
凌牙「何だ?」
アカギ「いや、アジトに着いてからでいいか。とりあえずここを……、ん?」
洞窟の出口へと歩を進めるアカギだが、その進路を大きな岩が阻んでいる。
アカギはその岩に触り、
アカギ「ポケモンの技で砕ける程度の硬さ……この山には不釣り合いな不完全さだ」
アカギは手を上げてジバコイルとダイノーズに岩を壊すよう指示をしようとする。しかし、シャークが右手でそれを制止する。
シャークの左手にはモンスターボールが握られている。
凌牙「ドクロッグ、『いわくだき』だ!」
ボールから飛び出したドクロッグは右腕を大きく振りかぶり、岩へとぶちあてた。
ドクロッグ「げろげーっ!」
バキイイッ!! ドクロッグの体長の数倍はある巨大な岩が無残に砕け散った。
視界が砂埃で埋まっているのも気にしない様子でシャークはドクロッグをボールに戻し、
凌牙「さあ、行こうぜ」
我先にとシャークは出口へと歩いていく。
アカギはその背中を一瞥すると、目を閉じて薄く笑った。
<>
◆UjkDVXCLOk<><>2012/02/06(月) 19:14:48.77 ID:h7ombCSAO<> 今日はここまで
ありがとうございました <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/02/10(金) 11:42:06.43 ID:gmq/tj6+0<> 遅くなったが乙
小鳥とキャッシーのやり取りがかわいいな <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 19:54:50.41 ID:oPTUVQ/AO<>
====
《テンガン山》
遊馬「なんだぁ? ここ」
小鳥「洞窟かな?」
鉄男「ここはテンガン山! シンオウを真っ二つに割る山だ」
等々力「鉄男くん、テンガン山で何をするんですか?」
鉄男「ずばり、そのズガイドスの特訓だな!」
ズガイドス「がい?」
遊馬「ズガイドスの!?」
鉄男「そうだ。遊馬、お前のズガイドスを鍛えてやる……オレ達でな!」
ポン、と鉄男が腹を叩く。それに呼応するように委員長とキャッシーが頷く。
等々力「とどのつまり、それはいいアイディアですね! 僕達みんなが力を合わせればきっと出来ます!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 19:56:05.13 ID:oPTUVQ/AO<>
遊馬「でもいいのかよ! 鉄男達にも旅が……」
キャッシー「当然キャット! 私達は友達でしょう?」
遊馬「キャットちゃん……」
鉄男「遊馬、いつになるにしろそのズガイドスと一緒に強くなりたいんだろ? なら答えは一つしかないはずだぜ」
遊馬「……」
『お前にもいつか見せてやるからな、この絶景をさ!』
ズガイドス「がぁい」
遊馬「……分かった。みんな、よろしく頼むぜ!」
鉄男「おう!」 等々力「とどのつまり!」 キャッシー「きゃっと♪」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 19:57:48.51 ID:oPTUVQ/AO<>
====
等々力「とどのつまり、ズガイドスはコントロールを良くしさえすれば強くなると思います!」
遊馬「コントロールを良くする練習なら普段もやってるんだけどなー」
小鳥「でもあまり成果はないかもね」
遊馬「そうなんだよなあ」
ズガイドス「がぁい……」
等々力「なら実のある練習をすればいいんですよ!」
ボールを投げてポケモンを出す委員長。
等々力「とどのつまり、ピンプクです。ラッキーの進化前なんですよ」
ピンプク「ぷくー!」
遊馬「へえ、かわいいポケモンだな!」
等々力「ピンプクを見た人はみんなそう言いますが、かわいい反面……パワーもあるんです! ピンプク、『かいりき』!!」
ピンプク「ぷくーっ!」
ピンプクは壁から岩をはがし持ち上げた。
小鳥「あんな大きな岩……!」
遊馬「なんてパワーだ!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 19:59:03.17 ID:oPTUVQ/AO<>
等々力「今回はピンプクがこのパワーを使い、ズガイドスのコントロールを正しましょう!」
ピンプク「ぷくーっ!!」
次々と壁をはがしていき、ピンプクははがした岩を遊馬とズガイドスの方へと投げる。
遊馬「いい!?」
ズガイドス「ずがぁ!?」
ドシャアン! ろくに動くことも出来ず、岩の山に埋もれてしまう遊馬達。
遊馬「あが、……なんで……?」
小鳥「ゆ、遊馬!」
等々力「こうやってピンプクが岩を投げるんで、遊馬くんとズガイドスはずつきで向かって来る岩を落としてください」
遊馬「そういう特訓なら先に言ってくれよー!」
等々力「はは、すみません」
キャッシー「少し危険だけど、これなら実戦にも役立つわね!」
鉄男「さすが委員長だな!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:01:13.46 ID:oPTUVQ/AO<>
等々力「ただまあ、特訓はこれだけじゃありませんよ。あとの二人からもそれぞれ特訓を受けてください」
遊馬「鉄男とキャットちゃんはどんな特訓をしてくれるんだ?」
鉄男「よりパワーをつけるってのだけど……それと、オレは先にヨスガのジムリーダーと戦ったからな。ズガイドスに出来るジムリーダー対策を教えてやるよ」
キャッシー「私はスピードを極める特訓よ!」
小鳥「みんな色々と考えているのね」
遊馬「ありがとうな、みんな! 恩に着るぜ!」
鉄男「礼は特訓が無事終わった後だ。まずは委員長の特訓から次にオレ、キャットちゃん……と順々にこなしていくんだ」
遊馬「任せとけって! 特訓なんて楽々終わらせて、強くなってやるぜー! ……なあ、ズガイドス!!」
ズガイドス「ずがぁーい!」
等々力「では特訓を再開しましょうか。ピンプク、頼みます!」
ピンプク「ぷくーっ!」
先程と同じように、ピンプクは壁から岩をはがし遊馬達へと投げる。
遊馬「いいや、さっきとは違う! ズガイドス、『ずつき』で岩を薙ぎ払うんだぁー!!」
ズガイドス「がぁーい!」
ズガンッ!! 頭と頭がぶつかり合う音が洞窟に響いた。
小鳥「……頭と頭?」
遊馬「うっ……」
そう、ズガイドスが思い切り頭をぶつけたのは遊馬の頭に向かってだった。
当然ズガイドスに悪気はない。
ズガイドス「が、がい!?」
遊馬「なんでこーなるのぉ……」
等々力「ま、まあ最初はこんなものですよ。とにかく繰り返しやっていきましょう」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:03:15.74 ID:oPTUVQ/AO<>
それから何度も委員長の特訓を受ける遊馬とズガイドスだが、一向に岩を落とすことが出来ず、それどころか毎度ズガイドスのずつきは遊馬の身体に直撃するのだった。
遊馬「……、」
全身がボロボロの遊馬は地面に仰向けに倒れている。
小鳥「大丈夫? 遊馬」
遊馬「体中が痛い……」
等々力「少し休憩しましょうか?」
遊馬「……いや。このまま続ける」
等々力「ほ、本気ですか?」
小鳥「遊馬! ちょっとは休まないと遊馬の身体が……!」
遊馬「分かってるよ。でも委員長がわざわざオレのためにやってくれてるんだ。少しでも早く、多くの特訓をしたい!」
遊馬「それにこんなところで諦めたら、もうコントロールなんて一生良くならねえよ! ましてやポケモンチャンピオンは夢のまた夢だ!」
小鳥「遊馬……」
等々力「……分かりました。僕も全力を尽くします」
遊馬「ありがとう委員長。さあズガイドス、頑張ろうぜ!」
ズガイドス「がぁい!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:05:48.18 ID:oPTUVQ/AO<>
等々力「特訓続行です! ピンプク、『かいりき』!!」
壁からはがした無数の岩が遊馬達に迫る。
遊馬(これはズガイドスのコントロールを良くする特訓だ。ズガイドスが頑張らなきゃいけない。でもまずはトレーナーのオレがしっかりしないと始まらねえ!)
遊馬「かっとビングだ、オレ!」
飛んでくる岩に自ら飛び込んだ遊馬。
岩の雨が遊馬の全身に降り注ぐ。
遊馬「ぐぁああああ……!?」
等々力「なっ!?」
小鳥「遊馬……っ!」
キャッシー「遊馬くん!」
思わずモンスターボールを掴むキャッシーだが鉄男に止められる。
鉄男「遊馬らしいやり方だぜ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:08:15.88 ID:oPTUVQ/AO<>
ドサドサと大量の岩が地面へと落下する。遊馬は全ての岩を受け切った。
体中から血が垂れ、服は穴だらけで余計に遊馬の身体はボロボロになっている。しかし、そんな状態でも遊馬は倒れずにいた。
遊馬の後ろでズガイドスはただ呆然と遊馬の背中を見上げている。
ズガイドス「ずが……」
遊馬「ズガイドス、これはお手本。今度はお前が岩の雨を全身で受けるんだ」
遊馬「恐いか? 確かに痛いぜ。でもお前のずつきの方が数百倍痛い! 言っただろ? お前のずつきのパワーはオレが保証するってさ。お前なら大丈夫だ」
遊馬「またずつきを外してもオレが全部受け止めてやるし、岩の方もなんとかする。一緒に乗り越えようぜ、ズガイドス!!」
ズガイドス「……ずがいっ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:09:44.80 ID:oPTUVQ/AO<>
====
遊馬「はぁはぁ……」
ズガイドス「がぁい……」
遊馬とズガイドスは洞窟の天井まで達するほどの岩の山にもたれ掛かっている。
その前に委員長は立ち、
等々力「とどのつまり、特訓はこれで終わりです。すごい根性でしたよ遊馬くん、ズガイドス」
遊馬「へへ、少しはマシになったかな……」
等々力「ええ! 多少まだ心配なところはありますが、十分安定はしています」
遊馬「そっか、ありがとう委員長」
鉄男「遊馬」
座っている遊馬に手を貸す鉄男。
遊馬「サンキュー、鉄男」
鉄男「……特訓はこれからだぞ。今度はオレが相手だ」
遊馬「!」
鉄男の手からモンスターボールが放たれる。
カバルドン「ばっかぁー!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:11:40.14 ID:oPTUVQ/AO<>
カバルドンがボールから出てくると同時に、突如洞窟は砂嵐に見舞われる。
小鳥「な、なんで砂が……?」
等々力「とどのつまり、カバルドンの特性『すなおこし』です〜!」
遊馬「まさかこの中で特訓をやるんじゃあ!?」
鉄男「その通り。キャットちゃんのスピード特訓も一緒にやるぜ」
遊馬「二対二!?」
鉄男「いいや違う。遊馬、お前はズガイドスだけで戦うんだ」
遊馬「……ってことは、一対二〜!?」
小鳥「そんな、いくらズガイドスの特訓だからってそれは厳しいんじゃあ……」
等々力「今洞窟で砂嵐が吹き荒れています。この天候では地面・岩・鋼タイプ以外のポケモンを使うのは得策ではありません。とどのつまり、遊馬くんはズガイドスで戦う他ないんです」
小鳥「よ、よく分かんないや」
等々力(ですがそのことは承知の上でしょう……)
遊馬「なんでオレは二匹使っちゃいけないんだよ、鉄男ー!」
等々力「…………………………………………」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:14:03.01 ID:oPTUVQ/AO<>
鉄男「なんでって……ズガイドス以外のお前のポケモンじゃ、この砂嵐の中ではダメージを負っちまうからだろ?」
遊馬「……そうなのか?」
鉄男「そうだよ」
等々力「うんうん」
遊馬「じゃあキャットちゃんの出すポケモンも砂嵐が平気なのか?」
キャッシー「それは大丈夫。猫は真っ暗闇でも目が利いて普段通り動けるもの、砂嵐なんてお茶のこにゃいにゃい♪ ……鳥とは違ってね」
言いながらちらりと小鳥の方を片目で見て、キャッシーは喉を鳴らす。
小鳥「むっ」
鉄男「じゃあ始めるぜ」
キャッシー「猫まっしぐら!」
ニャルマー「にゃあー!」
キャッシーが放ったモンスターボールから現れたニャルマーがズガイドスへと突進した。
ズガイドス「……ッ!?」
突然の攻撃になす術もなく、ズガイドスは吹き飛ばされる。
遊馬「は、速ぇ……ッ!!」
鉄男「二対一だってこと忘れてないか?」
カバルドンがのしのしと地面を揺らしている。
ドシンと一度大きな揺れが起こったと同時、ズガイドスの立っている地面が爆発した。
遊馬「なっ……!」
鉄男「『だいちのちから』!」
ドオオオン!! ズガイドスは地面ごと空中へ剥ぎ取られた。
ズガイドス「がぁい……っ!」
遊馬「地面を剥ぐほどのパワー……!」
鉄男「遊馬、これがオレ達のパワーとスピードだ。今からこれを伝授するわけだが、厳しい特訓になる……それでもやるか?」
遊馬「……へへっ、あったり前さぁ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:16:33.44 ID:oPTUVQ/AO<>
====
《ヨスガシティ》
特訓を終えて、遊馬と小鳥はヨスガシティにやって来ていた。
小鳥「来たわ、ヨスガシティ! ファッションの町!」
遊馬「ふぁくしょんもいいけどよー、まずはポケモンジムだぜ」
小鳥「ファッション! ……そうね、遊馬とっても頑張ったしね」
遊馬「鉄男達も一緒に来れば良かったのになー」
『では僕達はこれで』
『一緒に行かないのか?』
『オレはノモセシティに行くから別の方向なんだ』
『僕もついていこうかと』
『そっかぁ……キャットちゃんは?』
『私はさつえ……じゃなくて色々と用があって、その……』
『ふーん……?』
小鳥「みんな忙しいのよ」
遊馬「そんなもんかねー」
小鳥「鉄男くん達に負けないように遊馬もジムに挑戦よ!」
遊馬「おう!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:17:32.20 ID:oPTUVQ/AO<>
====
《ヨスガジム》
遊馬「たのもー!!」
遊馬達がジムの中に踏み込むと、照明が点いた。
「オーホッホッホ!!!」
遊馬「な、なんだぁ?」
照明の中心に立つ女性は高らかに声を上げる。
「私のポケモンは美しく、美しく、美しく、美しく、そしてビューティフルなのデース!」
遊馬「ぶ、ぶーてん?」
小鳥「ビューティフル、美しいってことよ」
遊馬「って、それじゃあ全部一緒じゃん!」
「チッチッチ、細かいことを気にするのはヨスガいいサ。今回のチャレンジャーはアナタですネ?」
遊馬「チャレンジャー? まさかアンタが……!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:18:45.78 ID:oPTUVQ/AO<>
メリッサ「イエ――――――――ッス! 私がヨスガのジムリーダー、《魅惑のソウルフルダンサー・メリッサ》デース!!」
遊馬「やっぱり……」
メリッサ「まぁよろしく頼みますヨ!」
そう言うメリッサが手を差し出した相手は遊馬の隣にいる小鳥だ。
小鳥「……?」
メリッサ「?」
遊馬「挑戦者はオレだって! 小鳥はトレーナーでもねえ!」
メリッサ「Oh、そうなのデスカー? てっきり私はこのお嬢さんが挑戦者かと……トレーナーの実力もお嬢さんの方が上と判断したのですケド」
遊馬「んなぁっ……!」
メリッサ「まっ、どちらが相手でも私の勝利は揺らがないネ」
遊馬「こっちだって負けてねえ! 勝負の行方はやってみなきゃ分からない!」
メリッサ「いいでショウ。私、熱ーい子供は好きネ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:20:20.81 ID:oPTUVQ/AO<>
遊馬・メリッサ「決闘(バトル)!!」
メリッサ「バトルの形式は三対三のシングルバトルデス。まずはアナタよ、フワライド!」
フワライド「ふんわ〜」
『P・ゲイザー、セット!』
メリッサ「?」
P・ゲイザーでフワライドの情報を読み取る遊馬。
『フワライド、ききゅうポケモン。ひとや ポケモンを のせて とぶが かぜに ながされているだけなので どこへ とんでいくか わからない』
遊馬「へえ、面白いポケモンだな!」
小鳥「風船みたいね」
メリッサ「その機械は何デスカ?」
遊馬「こいつはP・ゲイザー! ポケモンの生態情報を読み取れる、いわばポケモン図鑑さ!」
メリッサ「ワンダフル! それは素晴らしい機械デスネ」
遊馬「フワライドか……早速試させてもらうぜ。ズガイドスがどれだけ成長したか! いけ、ズガイドス!!」
ズガイドス「がぁーい!」
<>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/21(火) 20:21:42.90 ID:PB94M33DO<> ペガサスでしか再生されない <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:26:24.69 ID:oPTUVQ/AO<>
メリッサ「岩タイプのズガイドス……なるほど、相性を考えてのチョイスデスネ」
遊馬「?」
メリッサ「しかーし、そんな短絡的なタクティクスでこの私を破ろうなんて無謀も同然ヨ!」
フワライドが両腕で黒いボールのような塊を作り出す。
メリッサ「『シャドーボール』!」
ズガイドスは自分の頭程の大きさの黒い塊を正面から受けた。
ズガイドス「がぁい!?」
遊馬「ズガイドス!」
メリッサ「まだまだヨ! フワライド、上昇!!」
自身の顔を特殊なガスで膨らませて上昇するフワライド。
遊馬「!」
メリッサ「その機械で調べたのなら知っているはずデス。フワライドはガスの調節により上昇・下降して、周りに吹く風によって移動をシマス」
遊馬「それがどうかしたのか?」
小鳥「その話が本当なら、ジムの中には風が吹いていないからフワライドは動けないんじゃあ……?」
メリッサ「んー、そうデスケドそうとも言えマセーン」
遊馬「訳が分からねえ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:27:42.70 ID:oPTUVQ/AO<>
メリッサ「つまりは受動的にではなく能動的に、フワライドが移動する方法があるのデスヨ!」
遊馬「そんなのどうやって……、!」
メリッサ「気付いたようデスネ?」
遊馬「そうか……!」
そもそもフワライドがガスの調節を、それこそ能動的に出来ること自体が答えなのだ。
小鳥「上昇・下降が自由自在なら、移動もわけないってことね!」
メリッサ「イエース! フワライドは自分から風を起こすことが可能なのデース!!」
ビュオオオ!! ジム内に一陣の風が吹く。
遊馬「な、なんつー風……!」
ズガイドス「がぃぃ……!」
怯む遊馬とズガイドスだが、ただの風に気を向けている場合ではない。
今この風に乗ってフワライドが二人の目の前まで迫ってきているのだ。
そのスピードはほとんど風速なのではないか。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:29:08.23 ID:oPTUVQ/AO<>
遊馬「ヤ、ヤババナイトー!?」
メリッサ「『アクロバット』!!」
フワライドは風速に勝るとも劣らない速さでズガイドスに突撃した。
ズガイドス「がぁ……!?」
何メートルか吹っ飛んだものの、ズガイドスは何とか立ち上がる。
メリッサ「手応えはありマスネ。でもそれもいつまで続きマスカ……ネ!」
いまだ吹き続けている風に再び乗るフワライド。
今一度、風速を手に入れたフワライドのアクロバットがズガイドスに襲い来る。
遊馬(もう一度アレを受けたらまずい……!)
瞬間、遊馬の頭にある言葉が過ぎった。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:30:22.34 ID:oPTUVQ/AO<>
『スピードがある相手には……』
遊馬(そうだ、キャットちゃんが言ってた。あの特訓を思い出して……!)
遊馬「かっとビングだ、オレ!」
ズガイドス「ずがぁ!」
ズガイドスが右足で地面を蹴ると、地面から長い岩の棒が飛び出した。
メリッサ「! これは……」
続いて左足を踏み込むズガイドス。先程と同様に岩の棒が出現する。
二本の岩の棒はズガイドスの前方にズガイドスを守るように立っている。
フワライド「ふわ!?」
ズガイドスに突撃しようとしていたフワライドはその二本の棒にぶつかった。
遊馬「もう一度『がんせきふうじ』だ!」
ズガイドス「がぁい!!」
ズガイドスが両足を交互に踏み込み、二本の岩の棒がフワライドの背後に立つ。
フワライド「!」
これにより、フワライドの動きは完全に封じられた。
メリッサ「これはやられマシタネ……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:32:56.50 ID:oPTUVQ/AO<>
遊馬「『スピードがある相手は身動きを封じてしまえばいい』のさ! トドメだ、『ずつき』ー!!」
ズガイドスは四本の岩の棒に囲まれたフワライドの顔面へと渾身の一撃を繰り出した。
しかし、
ボヨヨンとズガイドスはフワライドに跳ね返されてしまった。
遊馬「んな……!?」
メリッサ「オーッホッホッホッホ!! ずつきはノーマルタイプの技。飛行タイプとゴーストタイプを合わせ持つフワライドに効き目はありマセーン!」
遊馬「ゴ、ゴーストタイプ!?」
小鳥「確かノーマルタイプが効かないタイプね」
遊馬「よく知ってるな、小鳥」
小鳥「遊馬の本で読んだから」
メリッサ「ちなみに私はゴーストタイプのエキスパートデース。私のポケモンにズガイドスのずつきは全く効果がないデスネ!」
遊馬「じゃあ、あの特訓には意味がなかったってことかよー!?」
メリッサ「ノンノン。特訓はいいコトデスヨ。私も特訓をいっぱいして、勉強をたくさんしマシタ。そうしたらジムリーダーになっていマシタ」
メリッサ「しかーし、特訓でいくらポケモンだけが強くなってもトレーナーが実力を持っていなければしょうがないのデース。アナタにズガイドスの強さに相応しい実力があるかどうかヨ?」
遊馬「オレの実力……」
ズガイドス「がぁい?」
遊馬「……くっ、とにかく今はポケモンを替えるしかねえ! 戻れ、ズガイドス!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:35:24.83 ID:oPTUVQ/AO<>
メリッサ「ほう、ポケモンを替えマシタカ」
遊馬(フワライドは身動きがとれねえ。攻撃を当てられる奴を出せばいい)
遊馬「かっとビングだぜ、ヘイガニ!」
ヘイガニ「へいへーい!」
メリッサ「Oh! 困りマシター。ズガイドスは仕事をしマシタネ。岩の棒が邪魔で攻撃を避けられマセーン!」
遊馬「改めて言われなくても分かってるっての! ヘイガニ、『クラブハンマー』を当ててやれー!!」
ヘイガニ「へいへいへーい!!」
ズドオオッ!! ヘイガニは身動きのとれないフワライドへと固めたハサミをぶち当てた。
フワライド「ふゎん……、」
フワライドは音もなく倒れる。
メリッサ「フワライド、頑張りマシタ。休んでてクダサーイ!」
遊馬「オレのポケモンはズガイドスだけじゃない。あんたがゴーストタイプの使い手だからって、十分戦えるぜ!」
メリッサ「アラ。何故勝ち誇っているのデスカ? やられたのはフワライドだけではありマセンヨ」
遊馬「なに……」
バババン!! 何かが破裂したような音を立てて、ヘイガニはその場に崩れ落ちた。
遊馬「ヘイガニ!?」
ヘイガニ「……へい、」
ヘイガニは倒れた。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:36:47.03 ID:oPTUVQ/AO<>
小鳥「ど、どうして!? フワライドを倒したはずのヘイガニが倒れるなんて!」
メリッサ「フワライドの特性『ゆうばく』デスヨ。アナタのヘイガニがフワライドを物理攻撃で倒したことにより起爆したのデース」
遊馬「そんな特性が……」
メリッサ(たとえ先程ズガイドスがフワライドを倒せていたとしても、その時は誘爆はズガイドスを餌食にしていマシタ)
メリッサ「今のバトルは引き分けデシタ。さあ、次のバトルへ移りマショウ!」
モンスターボールを構えるメリッサ。
遊馬「くそっ!」
遊馬も同様にボールを握る。
遊馬(ズガイドスはゴーストタイプに手も足も出ない! コイツで勝負をつけるしかねえ!!)
二人は同時にモンスターボールを投げた。
遊馬「モウカザル!」
モウカザル「うききぃー!!」
メリッサ「カモン、ヨノワール!」
ヨノワール「よわわーん」
遊馬「ヨノワール……!」
P・ゲイザーがヨノワールの情報を読み取る。
遊馬「やっぱりゴーストタイプかよ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:37:52.06 ID:oPTUVQ/AO<>
メリッサ「ウフフ、そのモウカザルを倒せばアナタの負けはほぼ確定デスネ」
遊馬「……っ、コイツを甘く見ちゃあ痛い目を見るぜ!」
小鳥「……遊馬、負けないで!」
遊馬「あったり前だ! モウカザル、『マッハパンチ』!!」
モウカザル「うきぃー!!」
バシュン!! モウカザルの高速のパンチが空気を切り裂く。
いや、本当に空気を切っただけだった。
モウカザル「うきゃあ!?」
顔から地面に飛び込むモウカザル。
パンチはヨノワールの身体をすり抜けてしまったのだ。
遊馬「……あっ」
遊馬(ゴーストタイプには格闘技も効かないんだった〜!!)
小鳥「遊馬のおバカー!」
メリッサ「ウフフ、どうやらすぐに決着がついてしまいそうデスネ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:39:04.76 ID:oPTUVQ/AO<>
メリッサ「ヨノワール、『シャドーパンチ』!」
ヨノワールが拳を押し出すと拳から影だけが飛び出し、飛び出した影はモウカザルの頬をかすめた。
モウカザル「……っ!」
ヨノワール「よわーん!!」
攻撃は一度だけではない。
ヨノワールが両の拳を交互にどんどん押し出していく。
拳が振るわれる度に飛び出す影にモウカザルは全身を殴られる。
モウカザル「うきゃあ……!?」
遊馬「モウカザルー!!」
ヨノワール「よのわーん!!」
ドシュウッ!! 力強い一撃がモウカザルの腹を打った。
モウカザル「……ッ!!」
なす術もなく、片手を地面についてひざまずくモウカザル。
小鳥「すごい連続攻撃……! 何か手はないの!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:42:02.39 ID:oPTUVQ/AO<>
遊馬「……」
膝をついて息を切らしているモウカザルを見つめる遊馬。
しかしその顔には笑みがこぼれている。
メリッサ「Oh、何か面白いコトがありマシタ?」
遊馬はもう一度消耗しているモウカザルを見る。
遊馬(ただやられていたわけじゃねえ。モウカザルにはピンチの時に炎技の威力が上がる特性『もうか』がある。それを発動させるためにわざと傷ついたのさ!)
遊馬「お前はオレの策にハマったぜ!!」
高々に宣言する遊馬だが、一方のメリッサは薄く笑っている。
遊馬「!」
メリッサ「ウフフ……もしアナタの笑みが私の予想通りの意味なら、私がこの笑みに含むのは失望デスネ!」
遊馬「! なに……?」
メリッサ「ズバリ、アナタの狙いはモウカザルの特性『もうか』! 体力を消耗すると炎技の威力が上がる特性デース!!」
遊馬(バ、バレてる……!?)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:43:32.39 ID:oPTUVQ/AO<>
遊馬「いや、分かってても今更遅いぜ! すでにモウカザルの体力は削られて、猛火は発動するんだからな!!」
メリッサ「果たしてそうデショウカ?」
遊馬「なんだと……」
メリッサ「モウカザルを見れば分かりマスよね?」
言われるまま、遊馬はモウカザルを見る。
遊馬「っ!」
すると、モウカザルは汗をかき体力を消耗してはいるが、それだけにしか見えない。
モウカザルの身体に猛火がみなぎっていないのだ。
遊馬「な、なんで……!」
メリッサ「言ったデショウ? 私たくさん勉強しマシタ。ポケモンのコトなら何でも知ってマス。猛火がギリギリ発動しない所で攻撃を止めたのデスネ」
遊馬「そ、そんなことが出来るのかよ!」
メリッサ「もちろんそれは特訓をしたからデスヨ」
遊馬「くそ……!!」
小鳥「猛火が使えないんじゃあ、体力が残り少ないモウカザルは……!」
メリッサ「この攻撃でフィニッシュデスネ! 『きあいパンチ』!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:44:59.48 ID:oPTUVQ/AO<>
ヨノワール「よわ〜……!!」
ヨノワールは集中力を高めている。
メリッサ「この技は繰り出すのに時間がかかりマスから、その間は何をしても構いマセンヨ!」
遊馬「……くッ」
いくら時間があるにしても、今のモウカザルは攻撃をすることもままならないだろう。
遊馬(どうすれば……!!)
モウカザル「うきぃ……」
遊馬は思考を巡らせ、何かこの状況を打開する方法を探す。
遊馬(特性さえ使えれば勝てるはずだ……猛火さえ……、!)
遊馬「そうか!!」
メリッサ「?」
遊馬(相手がダメージを与えて来ないなら、自分でダメージを与えればいいんだ!)
遊馬「モウカザル!!」
モウカザル「……、?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:46:15.47 ID:oPTUVQ/AO<>
遊馬「オレに『マッハパンチ』だ!!」
モウカザル「うきぃ!?」
メリッサ「What……!?」
小鳥「ゆ、遊馬どういうつもり!」
遊馬「まあ見てろって! モウカザル、遠慮はいらない。全力で来い!!」
モウカザル「う……、うきい!」
最初は戸惑っていたモウカザルだが、やがて頷いて遊馬に向かい高速のパンチを放った。
遊馬「ぐおおぁぁああ……ッッ!!」
遊馬も負けじと歯を食いしばり、モウカザルの顔面にパンチを返す。
遊馬「かっとビングだ、オレ!」
モウカザル「うきぃいいいい!!」
遊馬「うおおおぁああああああ!!」
ドオオオン!! 遊馬とモウカザルは互いの凄まじい威力のパンチで吹き飛んだ。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:47:41.74 ID:oPTUVQ/AO<>
小鳥「ゆ、遊馬!」
バタン、と倒れる音は遊馬の方からだ。
遊馬と同様吹き飛んだはずのモウカザルは身体に猛火を纏わせ、ヨノワールの目の前に立っていた。
ヨノワール「よのわん!?」
メリッサ「なんデスって!」
遊馬「っ……いけ、モウカザル。『かえんぐるま』!!」
モウカザル「うっきいいい!!」
ボアアアッ!! 爆裂の炎がヨノワールの身体を焼き尽くす。
ヨノワールは気合いパンチを放つ寸前で集中力が切れて、抵抗できなかった。
ヨノワール「よのわ……ん、」
ヨノワールは倒れた。
メリッサ「……!」
遊馬「よっしゃあ! ヨノワール撃破だ!!」
モウカザル「うきい!」
メリッサ「まさか、トレーナーがポケモンに攻撃をして特性を発動させるトハ……」
小鳥「遊馬が殴られる意味はあったの?」
遊馬「ノリだよノリ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:49:18.99 ID:oPTUVQ/AO<>
ヨノワールをモンスターボールにしまい、メリッサは言う。
メリッサ「……アナタを少々見くびっていたようデスネ」
遊馬「!」
メリッサ「ムウマージ、レッツゴー!」
ムウマージ「まじぃ〜!」
遊馬「三匹目……!!」
小鳥「そのポケモンを倒せば勝ちよ、遊馬!」
遊馬「おう。モウカザル、頑張ってくれ」
モウカザル「うきき!」
メリッサ「ウフフ、先の戦いで猛火が発動するほど傷ついたモウカザルなんて……私のムウマージの敵ではないデース!!」
ムウマージが目を見開くと、ムウマージの分身が多数出現した。
遊馬「『かげぶんしん』か!?」
モウカザルが火の粉を当てようとするも、ムウマージのスピードはそれをかわしてしまう。
メリッサ「『サイケこうせん』!」
ムウマージ「まじぃー!!」
一斉に念波を放つムウマージ達。その光景はどこか幻想的だ。
モウカザル「……うきゃあッ!?」
効果抜群の技を受けて、ついにモウカザルは倒れた。
遊馬「モウカザルっ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:54:03.05 ID:oPTUVQ/AO<>
メリッサ「アナタも三匹目デスネ。まあどんなポケモンかは分かっていマスケド」
遊馬「……っ、」
小鳥「……遊馬の最後の一匹は、ズガイドス……!」
遊馬「頼むぜ、ズガイドス!」
ズガイドス「がぁーい!」
遊馬(攻撃が効かなくても、何かチャンスはあるはずだ! オレはズガイドスを信じるぜ!!)
メリッサ「無理ヨ。物理攻撃を主流とするズガイドスがゴーストタイプに勝てるはずはアリマセン。ましてや、ムウマージのスピードにもついて来れないのデハ?」
ムウマージの分身がズガイドスを中心にして回り始める。
ただ回っているのではない。念波を発しながらだ。
ズガイドス「がぁ……!?」
サイケこうせんに頭を抱えて苦しむズガイドス。
遊馬「ズガイドス!!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:55:25.30 ID:oPTUVQ/AO<>
メリッサ「『シャドーボール』!!」
幾つもの丸い影がズガイドスを殴っていく。
遊馬「くそ……『ずつき』だ!」
ズガイドス「ずがぁ!!」
力を振り絞り、ムウマージへと突撃するズガイドス。
しかし実体を持たないゴーストタイプの身体にすり抜けてしまう。
遊馬「っ、今度は『がんせきふうじ』だ!」
ズガイドス「ずがあ!!」
ジムの地面から次々と岩の棒が生えていく。
ムウマージ「まじ……!」
数多くいたムウマージの分身は岩の棒にぶつかり消えてしまった。
遊馬「よし! 分身はいなくなったぜ!」
メリッサ「諦めが悪いデスネ! ムウマージ、『サイコキネシス』!!」
岩の棒と棒との間を上手くくぐり抜け、ムウマージはズガイドスへ念力を当てる。
ズガイドス「……っ!」
遊馬「ズガイドス!!」
ズガイドスの元へ駆け寄る遊馬。
ズガイドス「がぁい……、」
ズガイドスは瀕死寸前だ。
遊馬「……っ、」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:56:43.26 ID:oPTUVQ/AO<>
メリッサ「もうこれ以上アナタのズガイドスは戦えないデスネ。そろそろ降参をしなサイ」
遊馬「……、」
小鳥「遊馬……」
遊馬「……ふざけんな」
メリッサ「!」
遊馬「ズガイドスの特訓をオレの友達が手伝ってくれた。みんなはオレが勝つって信じてくれたから手を貸してくれたんだ……」
遊馬「特訓してくれた鉄男達、応援してくれてる小鳥……。オレが降参なんてしたら、みんなの思いを裏切ることになるだろうが!!」
遊馬は左目に付けたP・ゲイザーを今一度セットし直す。
遊馬(特訓で一度も成功しなかったあの技をやるしかねえ!)
ズガイドス「ずが……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:57:34.57 ID:oPTUVQ/AO<>
遊馬「かっとビングだ、ズガイドス!!」
その言葉を受けたズガイドスは全力で走り出した。
メリッサ「何をする気デス?」
遊馬「『ずつき』だぁー!!」
メリッサ「!? まさか、ムウマージに頭突きは……」
遊馬「そっちじゃない!」
ズガイドス「がぁーい!」
ズガイドスがその硬い頭を振り上げる。
狙うはムウマージではなく、自身が生やした岩の棒だ。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 20:59:04.00 ID:oPTUVQ/AO<>
バキイイッ!! 凄まじい音を立てて岩の棒が砕け散る。
ズガイドスは棒が完全に砕ける前に、別の棒へと頭突きをかます。
砕けた棒の破片がムウマージの身体を掠めた。
ムウマージ「っ!」
メリッサ「……もしや、岩をすべて壊しムウマージを生き埋めにするつもりデスカ!」
メリッサが言葉を発している間にもズガイドスは棒の破壊を続けている。
メリッサ「しかし、その作戦は賢明ではアリマセン。このままではアナタのズガイドスも埋もれてしまいマスヨ?」
砂埃が立ち、すでに周りの状況は分からなくなっている。
メリッサ(これでは指示も届きマセン……!)
遊馬「いいや、届くぜ!」
ゴシャアアアッ!! 最後の一本の棒が壊れる音だ。
メリッサ「!」
遊馬「これでムウマージは岩に囲まれたはず! でも体力はまだ余ってる。次の攻撃でトドメをさす!」
メリッサ「何を……ズガイドスの技はムウマージには効果がないのデスヨ?」
遊馬「どうかなぁ? 技自体効果がなくても、岩を介してならダメージを与えられるかもしれないぜ。例えば岩に頭突きをして貫通ダメージを与えるとかね!」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 21:01:25.09 ID:oPTUVQ/AO<>
メリッサ「こんなに多くの岩を貫通? 出来るわけがアリマセン!」
遊馬「出来るさ。ズガイドスなら!」
ズガイドスが助走をつけ、頭を振り上げる。
遊馬「『もろはのずつき』――――――ッ!!」
ズガイドス「ずがぁ――――――――――いっ!!」
ドュガアアアアアッ!! 衝撃は十メートルは続く岩ごと、その先に伏しているムウマージの身体を貫いた。
ムウマージ「まじぃぃいいいいいッ!!?」
メリッサ「ムウマージ!!」
ドシャアッ!! 壁に打ちつけられてしばらく張り付いていたムウマージだが、やがて地面に落っこちた。
ムウマージは倒れた。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/02/21(火) 21:03:30.55 ID:oPTUVQ/AO<>
遊馬「へへ、なんとか勝ったぜ……」
ズガイドス「ずがぁー」
小鳥「やったね、遊馬!」
メリッサ「Ohー、負けてしまいマシタネ……」
遊馬「いいバトルだったぜ!」
メリッサ「ハイ。アナタは面白いトレーナーデスネ。実力は決して高いとは言えないデス……」
遊馬「がくっ」
メリッサ「しかしポケモンとの絆の力は計り知れマセン。トレーナーとポケモンが互いに欠点を補い合う戦い方……デスカ」
遊馬「んー難しいコトは分かんないけど、ポケモンとトレーナーが協力して戦うのがポケモンバトルの本来の形なんだって思うぜ」
メリッサ「そうデスネ……。その点でアナタは私に勝っていたのデショウ。さあ、これを受け取ってクダサイ」
メリッサは勝利の証、ジムバッジを遊馬に授与する。
遊馬「レリックバッジ、げっとビングだぜー!」
ズガイドス「がいがぁい!」
メリッサ「遊馬ボーイ、またバトルを出来たら嬉しいデス。今度は負けマセンヨ!」
遊馬「おう! 楽しみにしてるぜ、メリッサ!」
<>
◆UjkDVXCLOk<><>2012/02/21(火) 21:04:26.54 ID:oPTUVQ/AO<> ここまでです
読んでくださった方ありがとうございました! <>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:31:46.51 ID:cGgug4OAO<>
***
ロストタワー。
ズイタウン郊外に建つ塔で、死んだポケモンを弔うための建物である。
ヨスガシティジムジムリーダーのメリッサがよく訪ねるという。
そんな特別な建物であるこのロストタワーの内部は今、ある奇妙な団体で埋め尽くされていた。
「……ふむ。ユーレイ、か」
男女関係なく、みな同じ服髪型表情考え感情を持つ集団。その異質の中に一人、他と異なる服髪型表情考え感情を持つある意味で異質な女性がいた。
「非科学的で不明瞭で不明確で不明解で不確定で不明朗。何より不完全な存在だ」
女性は集団にいる一人を呼び出す。どうやら彼女はこの集団のリーダーらしい。
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:33:35.75 ID:cGgug4OAO<>
「何デスカ?」
「お前達もそう思うでしょう?」
「…………」
団員は黙り込む。というか集団ごと一緒に考え込んでいる始末である。
まあこんなものだろう、と女性は特に気にしていない様子だ。
「む?」
女性は塔の階段の方にふと目を向ける。
ムウマ「むうー!」
野生のムウマが女性に向けて攻撃を放とうとしている。
「……ふん。ゴーストタイプ、野生のムウマか」
かちゃりと女性はモンスターボールを構え、投げた。
スカタンク「すかたぁーん!」
出てきて早々、スカタンクはムウマに飛び掛かる。
ムウマ「!」
つじぎりが急所に当たり、ムウマは戦闘不能になった。
「……運が悪かったわね。不完全なゴーストタイプを嫌う、そして……」
ジュピター「ギンガ団三幹部の一人、このジュピターを相手取るなんて」
ムウマを捨て置き、ジュピターはギンガ団員達に命令を下す。
指示を受けた団員達はシャカシャカと動き出した。
ジュピター「果たして、ここにボスが求めるものがあるのかしら……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:34:25.34 ID:cGgug4OAO<>
***
《ズイタウン》
小鳥「ここがズイタウンねー!」
景色一面に広がる高原を満面の笑みで駆けぬける小鳥。
小鳥「遊馬、遊馬。あっちには牧場もあるわ!」
遊馬「…………」
小鳥「……遊馬? どうしたの?」
遊馬「い、いや……」
遊馬(……ズイタウンってたしか)
小鳥「? とにかく、あの牧場に寄ってみようよ」
遊馬「ああ、まあいいけどさ」
小鳥「やった♪」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:35:33.28 ID:cGgug4OAO<>
そうと決まったら、と小鳥は遊馬の手を引き牧場へと走り出した。
遊馬「うーん……」
遊馬は手を引かれながらどんどん牧場に近づいていく。
するとその景色はどこか見覚えがあるのだ。
遊馬「牧場……」
考え込む遊馬だが、その思考は停止した。
小鳥が足を止めたのだ。
遊馬「ぶわっ!」
小鳥「きゃあっ!」
急に止まったので、遊馬は勢いあまって小鳥の背中に顔を埋めてしまった。
小鳥「ちょっと遊馬!」
遊馬「お前が急に止まるからだろ〜!?」
小鳥「だって……」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:37:52.43 ID:cGgug4OAO<>
頭に「?」を浮かべる遊馬の前、小鳥をはさんで見えなかったものの、ポニータの群れが走っている。
ポニータ「ぽにー!」
遊馬「ポ、ポニータ!?」
小鳥「遊馬がよく競走するポケモンよね。この牧場のポケモンかな?」
遊馬「……なんか思い出したかも」
小鳥「へっ?」
ドダダダダ!! 大勢のポニータを率いるように先頭を走っている一匹のポケモンがいた。
ポニータの進化形、ギャロップだ。
ギャロップの体は群れのポニータより一回り大きく、どうやら群れのリーダーであるみたいだ。
小鳥「すごーい! 強そうなポケモンね!」
ギャロップの快走に感嘆する小鳥。
一方で、遊馬は気が気でない様子だ。
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:39:00.75 ID:cGgug4OAO<>
小鳥「どうしたのよ? さっきから」
遊馬「あのギャロップ、人が乗っていないか?」
小鳥「え? そういえば……」
遠くからで分かりにくいが、確かに遊馬の言う通りギャロップの背中に人影らしきものが見える。
小鳥「牧場の人かしら?」
遊馬「いや、違う。あれは……」
遊馬の言葉が止まる。ポニータの群れが動きを止めたからだ。
群れの先頭に立つギャロップが遊馬の方を一瞥すると、遊馬に向かって走り出した。
明里「遊馬ぁ――――――――――――ッッ!!」
遊馬「明里姉ちゃん!」
小鳥「明里さん!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:40:36.49 ID:cGgug4OAO<>
ギャロップに乗って颯爽と現れたのは遊馬の姉、九十九明里だった。
遊馬「やっぱり姉ちゃんかよ! どうしてこんなところにー!」
明里「遊馬、忘れたの? あんたが小さい頃はよくここに連れて来てたでしょ」
遊馬「ああ、姉ちゃんが若い頃ね」
明里「今でも若い!」
遊馬は幼い頃に明里によくこの牧場に連れていかれて、一緒にギャロップに乗せられたのだ。
ポニータと競走するのはこのせいでもあるかもしれない。
明里「ていうかあんたこそ、こんなところで何してるワケ?」
遊馬「え、えーっと……それはそのぅ……」
小鳥「ポケモンの旅よね!」
遊馬「あっ、バカ!」
小鳥「?」
明里「……へえ。そういうこと」
ニヤリと明里は笑い、来た道を引き返すように歩きだし、
明里「付いてきなさい。この先にズイの新聞社があるわ」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:42:27.04 ID:cGgug4OAO<>
***
明里「ここよ」
明里はギャロップを止め、牧場の中にポツンと立っている小さな建物の前に立つ。
この建物がズイの新聞社だ。
小鳥「新聞社なんて初めて見たかも」
遊馬「久しぶりだぜー、ここも」
明里「さあ入って」
新聞社の中を見渡す遊馬と小鳥。
部屋には業務用机が並び、新聞社だけあってか新聞の記事が壁一面に貼ってある。
しかしそれ以外は特に普通の民家と変わりはなく、部屋の隅には本棚やらタンスやらが置かれている。
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:43:33.59 ID:cGgug4OAO<>
小鳥「ここで新聞を作ってるんですか?」
明里「ええ。些細なことから大きな事故まで、色んな事を記事にしてね」
小鳥「へえー!」
小鳥は壁に貼ってあるたくさんの記事を夢中になって目で追う。その様子を見て微笑む明里。
遊馬「へへ、すげーだろ小鳥! 姉ちゃんの書く記事は面白いもんな!」
小鳥「うん!」
明里「遊馬……」
遊馬「いつかオレがポケモンチャンピオンになった時は姉ちゃんに記事を書いてもらうんだあ……」
ほわほわと妄想を膨らませる遊馬。
明里「ま、それは程遠そうだけど?」
遊馬「なんだって〜!?」
明里「なによ〜!」
小鳥「まあまあ……」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:45:51.73 ID:cGgug4OAO<>
小鳥「……ん? これは何の記事ですか?」
そう言う小鳥が指差しているのは一枚の記事。
その記事の写真には真っ暗闇の中にポツリと浮かぶ光……のようなものが写っている。
明里「ああ、それはね……。ズイの遺跡って知ってるかしら?」
遊馬・小鳥「ズイの遺跡?」
明里「このズイタウンにある遺跡なんだけど、その記事の写真はその中で撮ったものなのよ」
遊馬「でもこれ、何も写ってないじゃん」
明里「よく見なさい。真っ暗闇の中に光があるでしょ? その光が微妙に周囲を照らしているのよ」
遊馬「んん……?」
よく目を凝らしてみると、確かに光の周りだけ完全に真っ暗ではない。
小鳥「本当! ポケモンみたいなものが写ってる!」
明里「でしょ?」
遊馬「そ、そうかぁ?」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:48:01.17 ID:cGgug4OAO<>
明里「これはその謎のポケモンを写して記事にしただけ」
遊馬「そのポケモンの正体は分かったのかよ?」
明里「それを今調査中」
遊馬「なんだよそれ。分かってないのか」
明里「そう言うけどね、そう簡単に見つかったらそれこそ面白くないわ。苦労して見つけるからこそ、いい記事になるのよ」
明里「このポケモンの正体を知りたがっている人は少なからずいるはずよ。その人達のために私は新聞記者としてネタを明らかにするわ!」
ボウッと明里の瞳が赤く燃える。
遊馬「オレには分からないぜ」
明里「そこで遊馬。あんた、いいところに来たわ!」
遊馬「な、なんか嫌な予感……」
明里「遊馬、ズイの遺跡を調べてきてくれる?」
遊馬「……やっぱり。まあ新聞社に呼ばれた時に分かったけどね」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:51:46.58 ID:cGgug4OAO<>
明里「何よその嫌そうな顔は」
遊馬「姉ちゃんが自分で調べに行けばいいじゃん!」
明里「私は他に仕事があるの! ポニータ達をみてなきゃいけないし」
遊馬「ポニータ達はギャロップがいるから大丈夫だよぉ! どうせ、自分が行くの面倒くさいだけなんだろ!」
明里「なによ〜?」
遊馬「なんだよ〜!」
ジリリと遊馬と明里の目が火花を散らす。
明里は素早く遊馬の首へと腕を回して、そのまま締め上げた。
遊馬「ぎゃああああああああ!?」
小鳥「ゆ、遊馬ー!」
明里「な・に・か・文・句・が・あ・る・ワ・ケ〜!?」
遊馬「ギ、ギブギブ! ないない、ないってばー!! 行けばいいんだろ〜!?」
明里「あらそう」
遊馬の返事を聞くと明里はあっさりと腕を解いた。
遊馬「〜〜っ、」
明里「遺跡は町の外れにあるからー。いいネタ持ってきてね、可愛い可愛い弟ちゃん」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:54:40.99 ID:cGgug4OAO<>
***
遊馬「まったく、いつも姉ちゃんはオレを使いぱしりに……」
小鳥「あはは……まあ忙しいんだし、少しくらい手伝ってもいいんじゃない」
遊馬「そうだけど、頼み方ってもんがあるだろ〜? いきなり首を締められたら〜」
ブツブツと遊馬は愚痴を零す。
それを聞く小鳥は笑みを浮かべている。
遊馬「? 何で笑ってんだ?」
小鳥「二人とも仲良しなんだなって」
遊馬「そ、そんなことねえよ。だって姉ちゃんなんてオレをいいように使うし……」
小鳥「でも遊馬も何だかんだ言って言うことを聞いてるじゃない」
遊馬「そ、それは! ……し、仕方なく」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:56:40.07 ID:cGgug4OAO<>
遊馬「い、いや! オレも興味があったのさ!」
小鳥「えっ?」
遊馬「謎のポケモンなんて面白そうじゃねえか!」
小鳥「もう、素直じゃないんだから」
遊馬「お。着いたみたいだぜ」
小鳥「!」
小鳥が顔をあげると、この高原に似つかわしくないいかにもな建物が目の前に立っていた。
小鳥「これが例の遺跡……」
遺跡を見た小鳥の感想。まずとにかく大きい。ぱっと見ただけで新聞社が立つ牧場の半分はある。
そして……。
小鳥「あれ?」
遊馬「どうしたんだ?」
小鳥「遊馬、これって」
遊馬「ん?」
遺跡の入り口の方へ行くと、何やら多くの足跡があった。
それは明らかに人間のものだ。
遊馬「足跡ぉ?」
小鳥「誰かが入ったってことよね」
遊馬「そんなの、記事にするくらいだから有名なんだしおかしくないじゃねえか」
小鳥「そ、そうよね」
遊馬「もしかしたらオレ達以外に謎のポケモンを探しにきたヤツがいるのかも……。行こうぜ、小鳥! 先越されちゃう!」
小鳥「うん!」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 20:58:28.71 ID:cGgug4OAO<>
***
《ズイの遺跡》
ジュピター「今度はここか」
ギンガ団員「ココハ謎ノ遺跡。ボスガ求メルモノガアルカモシレマセン」
ジュピター「……」
結局ロストタワーには何もなかったのか、奇妙な団体――ギンガ団――は今度はここズイの遺跡に足を運んでいた。
団員「遺跡トイエバ求メルモノニ一番近イ……真っ先ニココニ行クベキデシタネ」
ジュピター「……そうとも分からん。しかし伝説の三匹、『知』『意志』『感情』を司るポケモンの遺跡がこんな田舎町にあるとは思えないな」
団員「私ハヤハリ、カンナギタウンガ怪シイカト」
ジュピター「そちらにはボスが直々に確かめに行く予定だ。我々はそれまでボスの手を煩わせないためにも遺跡を探すのよ」
団員「了解」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 21:03:24.27 ID:cGgug4OAO<>
***
遊馬「遺跡の中ってこんなんなのかー! 雰囲気あるぜ!」
小鳥「ふ、雰囲気って……真っ暗だし寒いんだけど〜!」
遊馬「そうか? でもランプなんて持ってきてないし……そうだ!」
遊馬はモンスターボールを構え、投げる。
モウカザル「うきぃー!」
遊馬「モウカザル、お前の炎で遺跡を照らしてくれー!」
モウカザル「うききぃ!」
パアアア……! 炎が辺りを包み、遺跡の中は明るくなった。
遊馬「これで明るいし、暖かくなっただろ」
小鳥「ありがとう、モウカザル」
モウカザル「うきぃ!」
遊馬「んじゃ先を進もうぜ! ……っておお!?」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 21:04:18.13 ID:cGgug4OAO<>
小鳥「ど、どうしたの?」
遊馬「見ろよ、この壁!」
小鳥「?」
見ると、遺跡の壁一面にズラリと古代文字が書かれていた。
小鳥「な、なにこれ……」
遊馬「何書いてあるか全く読めないなぁー」
言いながら遊馬はポケットを探っている。
遊馬「あった! こいつで写真を撮るぜ!」
遊馬が取り出したのはインスタントカメラだ。どうやら遺跡の写真を撮るらしい。
遊馬「テイキングだ、オレー!!」
パシャパシャと壁に書かれた古代文字を撮りはじめる遊馬。
小鳥(ノリノリね……)
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 21:06:09.17 ID:cGgug4OAO<>
遊馬「あ、もう撮れないや」
小鳥「このまま進む?」
遊馬「おう! 謎のポケモンを直に見て、絶対げっとビングしてやるのさ!」
小鳥(なんか目的変わってる)
遊馬「謎のポケモンげっとビングだぜ、オレー!!」
モウカザル「うっききぃ!」
遊馬「って、うお!?」
小鳥「こ、今度は何?」
遊馬「? あっちの方……明るい?」
今遊馬達が歩いているのは遺跡の廊下だ。
遺跡の中には部屋がいくつかあるようで、廊下を照らす炎によりそれらが見える。
それらの中の一つの部屋にモウカザルの炎によるものではない光が漏れているのだ。
小鳥「さっき言ってた、私達より先にここに入った人じゃない?」
遊馬「そうみたいだけど……」
<>
◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 21:07:30.27 ID:cGgug4OAO<>
ジャリ、遊馬達の後ろで何者かが足を止めた。
遊馬「! お前……!?」
振り向いた遊馬の目に映った人物は……、
ギンガ団員「……」
かつて遊馬が戦ったギンガ団の団員だった。
小鳥「こ、この人は……!」
遊馬「ギンガ団!!」
団員は何も言わず、眉一つ動かさずに遊馬達の顔だけ見ると、敵と判断したのかモンスターボールからポケモンを繰り出した。
スカンプー「かぅぷ!」
スカンプーがその鋭い爪を振り回す。
遊馬「モウカザル、頼むぜ!」
モウカザル「うきぃー!」
遊馬「『ひのこ』!」
ボウウッ! スカンプーは火の粉を受けて倒れた。
団員「!」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 21:08:37.16 ID:cGgug4OAO<>
遊馬「へへっ、どんなもん!」
モウカザル「うききー!」
小鳥「遊馬、浮かれてる場合じゃないわ!」
遊馬「へ?」
モウカザル「うき?」
何やら光が漏れている部屋が騒がしい。
何ダ! 侵入者カ!? などという声もする。部屋には他のギンガ団員がいるらしい。
遊馬「や、やべえ! 挟み撃ちにされたら……!?」
小鳥「とにかくここから離れましょう!」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 21:09:36.56 ID:cGgug4OAO<>
***
遊馬「はあはあ、」
小鳥「はあはあっ……」
遊馬達はギンガ団がいた場所から離れ、随分と走ってきた。
遊馬(ここまで来れば……)
小鳥「……はあはあ」
遊馬「大丈夫か? 小鳥」
小鳥「う、うん。ちょっと疲れただけ」
遊馬「それにしても何なんだよ、この遺跡は〜!? 道が複雑で入り口が見つからないし、ここがどこかも分からねえし〜!!」
小鳥「もしかして私達、迷子……?」
遊馬「うっ……。いや安心しろ小鳥! オレが無事に帰してやるから!」
小鳥「ありがとう。……でも道は遊馬じゃ頼りにならないかも」
遊馬「な、なんだってー!?」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 21:10:57.15 ID:cGgug4OAO<>
小鳥「冗談。頼んだよ、遊馬」
遊馬「へっ、当たり前だぜ!」
遊馬「モウカザル、脱出するにはお前の炎が必要だ。よろしく頼むぞ」
モウカザル「うき……」
遊馬「モウカザル?」
突然、モウカザルが膝をついた。
遊馬「な、どうした!?」
ピピ、ポケットに入ったP・ゲイザーが鳴る。
遊馬「!」
『P・ゲイザー、セット!!』
付けたP・ゲイザーでモウカザルの様子を調べる遊馬。
遊馬「! 毒を負ってる!? なんで……!」
遊馬は先程のギンガ団員が使ったポケモンを思い出す。
遊馬「スカンプー、だっけ……まさか毒タイプの技をやってきたのか!」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 21:12:06.91 ID:cGgug4OAO<>
モウカザル「うきぃ……、」
小鳥「遊馬、モウカザルすごく苦しそう……」
遊馬「仕方ねえ……ボールの中で休んでてくれ、モウカザル」
モウカザルがボールに戻り、周りが暗闇に染まる。
小鳥「ゆ、遊馬」
遊馬「掴まってろ。はぐれたら脱出どころじゃない」
小鳥「うん……。でも遊馬、さっきの人達は大丈夫なの?」
遊馬「……」
小鳥「遊馬?」
遊馬「小鳥、前に話したよな? ギンガ団のこと」
小鳥「うん。ソノオタウンで蜜を盗んだ人達でしょ? 蜜は遊馬とミツハニーが取り返してきてくれたけど」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 21:13:32.36 ID:cGgug4OAO<>
遊馬「ああ、でもその先は話してない」
小鳥「その先?」
遊馬「オレがあいつらを追いかけた場所で、オレはギンガ団の偉そうな奴と戦ったんだ」
小鳥「偉そう……幹部みたいな?」
遊馬「そんな感じかな。マーズっていう奴だったけど、そいつ強くてさ。あの時ミツハニーが助けに来てくれてなかったらオレ……」
小鳥「遊馬……」
遊馬「もしマーズと同じくらい強いギンガ団員がこの遺跡にいて、戦うことになったらこのままじゃあ……」
暗闇の中、小鳥に遊馬の表情は見えない。しかし弱々しいその声から様子は伺える。
小鳥「ううん。遊馬なら勝てるわよ!」
遊馬「っ!」
小鳥「前の遊馬が負けてたかもしれなくても、この旅で成長した今の遊馬ならきっと負けない!」
遊馬「小鳥……」
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◆UjkDVXCLOk<>saga<>2012/03/05(月) 21:14:38.95 ID:cGgug4OAO<>
小鳥「かっとビングよ、遊馬!」
遊馬「……へへ、おう! 負けるかも、なんてオレらしくなかったな!」
小鳥「そうよ。それにいざとなったら私が遊馬を守るから!」
遊馬「そ、それは〜」
小鳥「何よ、私じゃ不満?」
遊馬「そんなことないけどさ〜。……あっ。見ろよ小鳥! 向こう、光が射してる!」
小鳥「えっ?」
遊馬達の前方、確かに廊下にまで達するほどの強い光が射している。
遊馬「行こうぜ、小鳥!」
小鳥「あっ、もう……待ってよ!」
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◆UjkDVXCLOk<><>2012/03/05(月) 21:15:25.29 ID:cGgug4OAO<> ここまで ありがとうございました <>
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2012/03/07(水) 15:15:12.23 ID:c5hBWpEx0<> 気づいたらいっぱい更新されてやがる乙!!
小鳥ちゃんがついてくるだけになってなくていいな <>