◆HIGMAmeNBU<><>2011/07/23(土) 21:35:51.34 ID:A9o+5/OmP<>木山「ということで作ってみた」

美琴「は?」

木山「とある冒険の超電磁砲だよ」

美琴「…意味が分からないんだけど」

木山「とりあえずプレイしてみてくれ」

美琴「ようはゲームを作ったからテストプレイしてくれってこと?」

木山「まぁそういうことだよ」

美琴「しょうがないわね、つまんなかったら途中でやめるわよ」

木山「じゃあそこに座ってくれ」

美琴「はいはい…ん?なんかこのイス妙にゴチャゴチャしてる気が」

木山「少し痛いだろうが君なら我慢できるだろう」

美琴「え…?ひあっ!!!」 <>タイトル:佐天「超電磁砲のRPGが出たら面白そうじゃない?」美琴「yes!!」
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/23(土) 21:37:16.29 ID:A9o+5/OmP<> ・野次、批判、感想、なんでもありで、VIPのようなノリで
 がんがんレスいただけるととてもうれしいです

・書くのは慣れていないので、アドバイスとか、こうした方がいいとか
 言ってもらえるとありがたいです <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/23(土) 21:38:40.08 ID:A9o+5/OmP<>  木山に言われるままに怪しげな椅子に座った美琴。
 妙なヘルメットをかぶされ、ばりばりーと全身に衝撃がはしり、気がつくと……

美琴「な…なに、ここは……?」

 辺りは一面、見知らぬ荒野だった!
 突然のことに我が目を疑う美琴。

 ふいに、隣から人の声が。

初春「なんなんですかぁ…? これは?」

 そには雷に打たれたかのように驚く初春の姿。

美琴「初春さん…? あなたも木山さんの、わけわからない椅子に座らされて?」

初春「あ、御坂さん …はい、嫌だって言ったのに、強引に…」

  「すごい! ひろい! 荒野!」


美琴「わっ!?」

初春「ひゃっ!?」


佐天「すごいですよ、これ。
    完全なバーチャルリアリティじゃないですか! さすが木山さん!」

 振り返ると、目を輝かせた佐天の姿が。

美琴「い、いきなり大声ださないでよ」

美琴「ゲームって? なんの話し? 佐天さん、なにか知っているの?」

黒子「お姉様、木山さんがそう言っていましたではないですか。聞いていなかったのですの?」

美琴(黒子まで…)

美琴「ああー テストプレイとかどうとか、言っていたようないなかったような……」

美琴「さすが学園都市。なんでもありね……」

黒子「心配しなくても大丈夫ですわ。黒子がついていますもの」

黒子「怖かったら私の胸に飛び込んでいいですのよ?」

美琴「いらんわ!」

  ボカッ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/23(土) 21:38:43.30 ID:zfPVVQ69o<> とりあえず書き溜めろ
ここはvipじゃないから落ちないんだ
そんなにレスが欲しければvipでやれ <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/23(土) 21:43:53.51 ID:A9o+5/OmP<> >>4
vipでやったら途中で落ちて、中途半端に終わってしまったので…

一応、序盤の方は書きためています。
ちょいちょい推敲して、手直ししながらの投下なので
少しペースは遅めです。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2011/07/23(土) 21:44:27.00 ID:AgXaV9/Co<> 書くなら読む
がんばれ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/23(土) 21:44:48.76 ID:zfPVVQ69o<> >>5
じゃあつまんねえったことだ
あきらめろ
ブログでやれ <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/23(土) 21:47:45.97 ID:A9o+5/OmP<>  こうして冒険の世界に旅立った4人。
 なにをすればいいのかはいまいち分からなかったが、とりあえずゲームを進めよう!という、
 佐天の意見により、あてもなく適当に歩き進むことにした。

 4人は、ごつごつした固い地面の上を進む。

美琴「なんだか、まがまがしいわね、ここ」

 美琴は足下の小石を蹴り飛ばす。

 荒野の乾いた大地には、植物の姿はない。
 その大地から、数メートルの高さはあろう大型の岩石がいくつも突き出ている。
 点在する岩石は、溶けかけたソフトクリームのようにねじれ、神秘的な光沢を放っていた。

黒子「冒険の世界らしいじゃないですの」

~~~
 4人は目的もなく、ぶらぶらと歩く。
 その4人の前に、一人の男があらわれた。

「助けてくれー! 魔物に追われているんだ!」

 赤髪で背の高い男が必死の形相で、こちらに駆けてくる。
 その後ろには、魔物らしき姿があった。

~~~
美琴「…あれってスライムじゃない?…たしかに、魔物と言えば魔物だけどさ」

 男が逃げている相手はまさしく、某RPGに出てくるザコ敵のそれだ。
 かわいらしい笑顔のスライムが一匹、ピョコピョコ跳ねながら男を追い回している。

黒子「男のくせに、情けないわねー。
    だいたい、か弱そうな女の子のわたくしたちに助けを求めるなんて…生き恥ですわね」

初春「たぶん、そういうイベントなんですよ。最初の敵はザコ敵と、相場が決まってますし」

 そうこう言っている間に男はどんどんこちらに近づいてくる。
 よくみると、右目の下にバーコードのような刺繍がほってある。

美琴「なーるほどね。じゃあ、ちゃっちゃとクリアしちゃいましょ」

 そう軽く言って、ポケットからゲームセンターのコインを取り出した。
 ピョコピョコと跳ねるスライム。
 そこに、レールガンの軌道を寸分たがわず、合わせる。

 実はこのコインはゲームセンターから持って帰ることは禁止されており、
 ましてやレールガンとして打ち放すなど言語道断なのだが、
 学園都市に7人しかいないレベル5能力者、
 御坂美琴はそんな細かいことは気にしなかった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/23(土) 21:49:44.34 ID:4o/XrJxPo<> いきなり荒らしが沸いてるな
まだ序盤なのに

読んでるから続け <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/23(土) 21:52:05.78 ID:moO0FqqU0<> てか>>8ステイルだろww <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/23(土) 21:52:52.69 ID:A9o+5/OmP<>  親指でコインを上空にはじく。
 敵に向かってレールガンを――

美琴「な!?」

 放てなかった。

 コインは重力にひかれるままに、美琴の足下に落ちた。

 3人が、ポカンと美琴を見つめる。

 男がこけた。つまづいたらしい。
 こちらから3メートルほどの距離である。
 男にスライムが迫る。

黒子「お姉様!? なにふざけていますの?
    まあ、たしかに助ける価値もない男ですけど…」

初春「でも、そういうゲームなんですし…」

美琴「ち、ちがうの…!」

~~~
 確実に撃つつもりだった。が、撃てなかったのだ。
 こんなことが起きたのは初めてだった。

――ピンポンパンポーン

 チープな電子音が響いた。
 どこからともなく、頭の中からだ。
 そして女性の声が続く。

『皆様はじめまして。わたくしは謎のゲームガイドでございます』

『いくつか説明を、』

美琴「……いや、あなた木山さんでしょ!?」

『……違います。わたくしは謎のゲームガイドです』

美琴「だって、声が…」

初春「まあまあ、謎のゲームガイドって言うなら、そういうことにしておきましょうよ」

 初春はなにかを気にしているようすだ。
 彼女の視線をたどると

「いたっ いたたっ」

 先ほどこけた男が、スライムにペシペシと攻撃されていた。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/23(土) 21:58:30.84 ID:A9o+5/OmP<>  頭を丸めてうずくまり、攻撃から必死に耐えている。
 早くしないと彼のHPがゼロになってしまいそうだ。

美琴「…なんでしょうか、謎のガイドさん」

『えー、皆様の能力レベルは現在0レベル、つまり無能力者になっています』

美琴「はあ!?」

黒子「なんですって!?」


『心配なさらずに。このゲームはレベル制です』

『経験値を必要量ためればレベルアップします。
 そして、ここでのレベルは、"能力のレベル"と連動しています』

黒子「つまり、レベルを上げれば私たちの能力レベルが上がる、と?」

佐天「ッ!! それって、あたしもなんですか!?」

『もちろんです。ちなみにレベルや経験値はパーティ共通ですので…
 パーティ内でレベル差がつくことはありません』

佐天「なるほど! なるほど!」

『最後に…ここで死ぬと、現実世界でも死んでしまうので、十分お気を付けを……』

『それでは、ご武運を』

 謎のガイドの説明が終わったようだ。

美琴「なんか今、とても大事なことをずいぶんさらっと言ったような……」

~~~
初春「えーっと、今の言葉……
    ゲームで死んだら本当に死ぬ…ということですよね…?」

 初春が、青ざめた顔で言った。

黒子「そういう意味ですわね…木山さんも趣味がわるいこと」

美琴「私はまだ死にたくはないし……やめようかな…」

佐天「まあまあ、やられなければいいんですよ!
    とりあえず、今はゲームを楽しみましょうよ!」

美琴「佐天さん、なんだか妙に元気いいね…」 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/23(土) 22:03:26.11 ID:A9o+5/OmP<> 初春「そんなことより…あの人を助けましょうよ! 死んでしまいそうですよ!」

 そういえばそうだった。すっかりわすれていた。

 美琴はスライムを退治しようと思うが

美琴(でも、下手してやられちゃったら死んでしまうんだよね…?)

美琴(さすがに、最初の敵で死ぬことはないと思うけど…)

美琴(でも、能力が使えないし……
    あんな大きな男が逃げるほどだからもしかしたらめちゃめちゃ強かったりして……)

 なかなか踏ん切りがつかなかった。

~~~
佐天「御坂さんったら、そんな深刻な顔しないでくださいって。あんなやつ、あたしにまかせてください!」

 佐天は敵へ一直線、勇ましく駆け出す。

初春「佐天さん、すごく勇気ありますねー」

佐天(全員無能力者なら条件は同じ! これはチャンス!)

佐天「佐天パンチ!!」

 亀の様にうずくまる男の上で跳ねまわるスライムを、佐天の拳が的確に捉えた。
 スライムの顔面に拳がめり込む。

 スライムは轟!という音とともにノーバウンドで数メートル吹き飛び、
 そのまま岩塊にたたきつけられた。

 岩塊に貼りついたスライムは数秒間制止した後にビシャリと地面に落ち、そして消え去った。


 どうやら倒したらしい。

初春「佐天さんすごい! 一撃で…!」

佐天「あはは、敵が弱かったんだよ。まあ最初の敵だしさ」

黒子「でも、得体の知れない敵に立ち向かえる勇気ってすごいことだと思いますの」

美琴「そうそう。私なんて正直ビビっちゃってさー」

 佐天を祝福する一同。

「うう……」

 男のことは、みんなから忘れられていた。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/23(土) 22:08:23.46 ID:A9o+5/OmP<> 「僕の名前はステイル、しがない旅人さ」

 ステイル、それが彼の名前らしい。
 近くで見ると、背がとても高い。ゆうに2メートルはあるだろうか。

 黒を基調としたマントを身にまとい、
 背中にはカーゴ色の、大きなリュックサックを背負っていた。

ステイル「助けてくれてありがとう。危ないところだった」

初春(こんなにおっきい人なのに、スライム一匹倒せないってどうなんですかね?)ヒソヒソ

美琴(しっ 聞こえちゃうわよ!)ヒソヒソ

ステイル「ここを通ると言うことは君たちも、目的は王都だろう?」

ステイル「王都では今、魔王討伐の勇者を公募しているからな」

佐天(なるほど、魔王を倒すことがゲーム目的かー)


ステイル「なんでも、王宮に古くから伝わる伝説の退魔の剣。
     封印されしこの剣を抜いたものを勇者として認め、
     魔王討伐の大任を任せるそうだ」

美琴(と言うことは、私たちはその封印されし伝説の剣とやらを抜かないといけない……)ヒソヒソ

美琴(大丈夫かしら?)ヒソ…

黒子(心配無用ですわ。ゲーム的に、絶対わたくしたちが選ばれるはずですの)ヒソ…

ステイル「僕もわけあって、勇者に選ばれなければならない理由があるんだ」

ステイル「……僕と君たち、どちらが勇者として選ばれるか。勝負になるな」

初春(ぜったい私たちが勝つのに……すこしかわいそうですね)ヒソ…

黒子(いたしかたないですわ。それが彼の運命ですの)ヒソ…

ステイル「あー、ところでさっきから君たち、僕の話し聞いているのかな?」

~~~
 新たにステイルが仲間に加わり、4人は5人になった。
 仲間になってもあまり役に立たなそうに思われたステイルだが、
 王都への道をステイルが知っていたおかげで、道案内として大いに役に立った。

 王都へ向けて一直線、一行は突き進む。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2011/07/23(土) 22:14:03.77 ID:Y+c3nk580<> ステイル……スライムに勝てないのにどうやって王都前に来たんだ?
ま、まさか女子高生と話す口実が欲しくてわざとスライムに……!? <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/23(土) 22:14:41.77 ID:A9o+5/OmP<>  その道中聞いた話し。
 ステイルの年齢は14歳らしい。

美琴「ええ〜!? あんた、本当に14歳なの?」

黒子「24歳の間違いじゃなくって?」

ステイル「なんだ、その目は。失礼な」

初春「…ということは、御坂さんと同じ歳なんですか!?」

ステイル「ほう、君も14歳だったのか。…なるほど、同年齢か」

 ステイルと美琴は明らか大人と子供であり、とても同年代には見えない。
 14歳と言えば、日本では中学生になる。

 だが、中学の制服を着込んで授業を受けるステイルを想像することは、
 美琴にはできなかった。

~~~
 一行は、岩の目立つ荒野を歩き続けた。

 同年齢と知ってから、美琴に対するステイルの態度が、
 若干なれなれしくなった気がするのが、美琴は若干不快だった。

 そして一時間ほど歩いただろうか。
 荒れた荒野に、少しずつ、丈の長い草が目立ち始め、
 いつしか辺りは草原地帯になっていた。

 膝ほどの丈の雑草を踏みつぶしながら、進んでいく。
 周りには木も、ぽつぽつと生えている。

ステイル「この先に川があるはずだ」

 たしかに、遠くからザーザーと、水の流れる音が聞こえてくる。

ステイル「川を渡れば王都はすぐだ」

初春「すぐって…どれくらいなんですか?」

 初春が疲れた目をステイルに向ける。

 ステイル曰く。
 川から王都までは初春たちがここまで歩いた距離の三分の一程度、だそうだ。
 ようするに、あと20分だ。

初春「ええ〜? 全然もうすぐじゃないですよぉ、もう歩き疲れましたぁ」

黒子「たった一時間歩いたくらいで疲れただなんて、軟弱ですこと。
    風紀委員会として、あるまじきことですわ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(兵庫県)<>sage<>2011/07/23(土) 22:15:13.73 ID:48z/9GPfo<> スライム……スライン……
イン!?
インだって!?
だ、だめだ、ボクにはインデックスを攻撃することなんて……


ということだと思われ。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/23(土) 22:20:10.90 ID:A9o+5/OmP<> 佐天「でもこう、舗装されてない道を歩くのって、なにげに疲れますよー」

 佐天がひたいの汗をぬぐいながら言う。

初春「ですよねですよね! もう足が痛くって……」

 ステイルは「ふむ・・・」と日の位置を軽く確認し、「まだ余裕はあるな」とつぶやく。

ステイル「では、川を渡ったら休憩としよう」

 初春は「やったー!」と手を上げて、佐天とハイタッチ。
 しかし、美琴には気になることが。

美琴「ねぇ、まだ余裕はあるってどういうことよ?」

 やや歩を早めて、前方を歩くステイルの隣に並ぶと、小声で問い詰めた。
 対しステイルは、前を見たまま答える。

ステイル「日が沈むと、王都の城門が閉ざされてしまうんだ。
     閉まったら最後、朝まで開かないから野宿するほかなくなる」

ステイル「夜は危険だからな。極力、野宿はさけたい」

美琴「危険って…魔物が出るとか?」

 ステイルはうなずく。

ステイル「だが、時間は十分ある」

 ステイルは、太陽を見上げた。

ステイル「とくに急ぐ必要もないだろう」

 美琴も太陽を見た。
 傾きかけた太陽が、柔らかい日差しを投げかけている。
 今何時なのか、いつ日が沈むのかはよくわからない。
 だが、ステイルに聞くのも癪なので、「そうね」とだけ返した。

 多分、いまは15時前後というところだ。
 そういうことにしておこう。

 それからほどなくして、一行は川にたどり着いたが……

佐天「なんということでしょう!」

初春「橋が」

美琴「ない」

黒子「ですの!」 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/23(土) 22:23:34.99 ID:A9o+5/OmP<>  なんと川を渡るための橋が壊れていた。

ステイル「昨夜の大雨で橋が流されたか…!
     まいった、これでは川を渡れないな」

 川の幅は20メートルほどあり、水が轟々と流れている。
 橋は両岸にある基礎を除き、すべて流されていた。

美琴「どこか、他に橋はないの?」

 ステイルは少し思案したのち、15キロほど下流にも橋があったはずだと言う。

初春「じゅうごきろ!? 往復30キロじゃないですか!」

初春「むりむり! そんなに歩いたら死んでしまいます!!」

美琴「たしかに現実的じゃないわね」

ステイル「……川の中を歩いて横切るしかないな」

初春「この急流の中を!? それこそ無理ですって!
    あっという間に流されて、本当に死んじゃいます!!」

ステイル「いや、この川はあまり深くないはずだ。水位は僕の腰よりも下だろう」

初春「あなたにとっての腰下は、私たちにとっては胸上です!」

ステイル「ううむ……そうなるか……」 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/23(土) 22:28:54.36 ID:A9o+5/OmP<> ステイル「よし、こうしよう。僕が川を渡り、君たちは僕の影に入って渡る。
    水流は僕にかかり、君たちの受ける水の力は減るはずだ」

つまり、こういうことだ。

 ┃         川┃
 ┃   影になる   ┃
 ┃    ↓      ┃
 ┃   ● →渡る┃
 ┃   ☆ →渡る┃ 目的地
 ┃ ↑↑↑↑↑  ┃
 ┃  水の流れ  ┃
 ┃          ┃

☆=ステイル
●=みんな

ステイル「皆で手をつなぎ合い、5人一丸になって渡ろう」
   
佐天「ふむふむ、なるほど。
    それなら誰かが流されそうになっても、他の4人で支え合えますしね」

 みんなで一致団結して川を渡ることにした。


初春「…だいじょうぶかなぁ」


~~~

美琴「ひー 水が冷たいっ」

 順番に川に入っていく一行。
 気温は寒くはなかったが、水は氷のように冷たかった。
 水に足を入れたとたん、美琴の全身に鳥肌が立つ。

 先頭から順に初春、佐天、黒子、美琴の順番だ。
 美琴と初春はステイルと手をつないでおり、5人が一つの円となり、川に入っていく。

 初春はかなり怖がっていたが、
 「もし君たちが流されそうになっても僕はぜったいに手を放さないから、安心してくれ」
 とのステイルの言葉を聞いて、少しは安心したようだ。

黒子「普段ならテレポートで済むことなのに、もどかしいですこと」

佐天「しかたないですよ。スヌーピーも言っていたじゃないですか」

佐天「配られたカードで勝負するしかない、て」 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/23(土) 22:31:21.77 ID:A9o+5/OmP<> 今日の投下はこれで終わりです。


佐天さんは地の文でもつい、さん付けそうになって困る。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)<>sage<>2011/07/23(土) 22:48:09.28 ID:7kQv2TAAO<> ステイルがNPCかPCかが問題だ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(香川県)<>sage<>2011/07/23(土) 22:49:34.85 ID:KW0GZMUuo<> スヌーピー△ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2011/07/23(土) 22:51:28.40 ID:Ov6eJxn90<> > 「もし君たちが流されそうになっても僕はぜったいに手を放さないから、安心してくれ」
全員流されたら意味が無いけどね。

ところで初春がレベル5になったところで、あまり役に立たないのは気のせいだろうか?
炎や氷の攻撃は防げるかもしれないけど、ほかの攻撃にはほとんど無力……

ここは電子戦能力でがんばってもらうしかないかな?
薬草取りに行って宇宙戦争に巻き込まれるRPGもあるし…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/07/23(土) 22:55:18.76 ID:Rnnc5j2H0<> >>24
初春がレベル5になるSSあったがそこでは無双してた
まぁここでも同じ能力になるとは限らんが <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(中部地方)<>sage<>2011/07/23(土) 23:07:08.90 ID:q4cVh5DZo<> 乙
最初だけ採用されててうれしいんだよ!
楽しみにしてるんだよ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/24(日) 00:23:26.26 ID:GJX0QUDP0<> てゆみにねへぬ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/24(日) 02:45:09.58 ID:P9u1zuvDO<> 期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2011/07/24(日) 03:53:41.92 ID:Azlr5hUYo<> なんか同じようなのを見た覚えがあるな
前にvipかどっかに投下してた? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(中部地方)<>sage<>2011/07/24(日) 03:57:26.86 ID:0bmOjNLWo<> >>29
>>5 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/24(日) 04:08:55.21 ID:VV4z5NYd0<> 佐天「超電磁砲のRPGが出たら面白そうじゃない?」
http://logsoku.com/thread/hibari.2ch.net/news4vip/1306606822/

これだな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/07/24(日) 04:23:09.03 ID:qd9rMsGAO<> >>24
遠隔でも温度維持可なら熱湯トラップとか消火ほぼ不能な火災とか出来るし、温度操作なら敵の体内沸かせちゃえばいいし
突き詰めれば何でも化け物だよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/24(日) 10:48:07.43 ID:V1+kC8VIO<> なんとなくだがボンボン坂高校とかレベルEを思い出した
魔王役には無難なとこでフィアンマ、☆あたりがくるかもしくは春生ちゃん自ら魔王になっちゃうのかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)<>sage<>2011/07/24(日) 12:15:28.45 ID:J3rgVlYAO<> 初春は極めると第四波動できんだろ。
あとRPGではブレス防げるか否かが超重要だし、有用性は高いんじゃない? <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/24(日) 13:21:43.91 ID:xICWJkb7P<> スレタイ間違えていることに今気づいた
タイトル:ってなんだよ…
地味にショックだ……


>>26
VIPの時の人かwwwwwww
ありがたく使わせてもらっています

>>29
>>31ですね


では、投下します。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/24(日) 13:22:44.53 ID:xICWJkb7P<>  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


 波は、無数の大蛇がのたうつかのように、打ち荒れている。
 ゴツゴツした川底は歩きにくく、いつ足を取られてもおかしくない。

 川の中程まで来るといよいよ本格的に、水流が強くなってきた。

初春「あわわわ 流されてしまいそうですぅぅ!」

 胸まで川につかっている初春に、ひときわ大きな波がぶつかる。

 水をかぶり、波にのまれる初春。

 初春が付けている特徴的な花飾りが、
 あっという間に川下へと流されていった。

ステイル「大丈夫か!」

 ステイルはつないだ左手を上にあげ、初春を支える。
 川から顔を出した初春が、けほけほとむせ込んだ。

 美琴は「がんばって!」と声を張る。
 が、そういう自分も決して余裕はなかった。

美琴(これは厳しいわね…)

 水流が予想以上に強かったと言うのもあるが、それよりも

ステイル「僕一人で4人分の水流を受けるというのは少し、無理があったか…!」

 冷静に考えてみれば、ステイル1人だけで4人分をカバーなんて、できるわけない。

 ステイルを素通りした水流が、美琴たちに襲いかかっていた。


 ……一度に2人ずつ、ステイルに4往復してもらう。それが最善だったか?

美琴(いや…今さらそんなことを考えても……)

 とにかく半分までは来れた。あと半分でゴールだ。

 ……あと半分。

 それは途方もなく遠く感じた。

 だが、美琴より身長の低い黒子と初春はもっと大変なはずだ。
 みんなの様子を確認した後、手を握り直す。

 ……頑張らなければ。


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


 岸まで、あと5メートルと言うところまで来た。

 美琴(まずいな…)

 冷たい水に浸かり続けていたせいで、
 体の、特に下半身の感覚がなくなってきていた。

 足の感覚がなくなれば川底の様子をつかめなくなる。
 いつ足を踏み外してもおかしくない。

 とにかく、気をつけなければ。

 美琴はゴクリとつばを飲んだ。

ステイル「みんな、がんばってくれ! もうすぐだ…!」

 ステイルが激励の声をかけた。
 ステイルはこの激流の中でも、余裕があるようだった。
 やはり、身長2メートルは大きい。

 ステイルは先ほど、絶対に手を放さないと言っていた。
 美琴が流されそうになっても、ちゃんと支えてくれるはずだ。
 そう思うと、ステイルが妙に頼もしく見えた。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/24(日) 13:24:22.14 ID:xICWJkb7P<> ステイル「し、しまった!!」

 ステイルが足を滑らせた。
 前のめりに、頭から川に突っ込む。

美琴「な…!? 」

 美琴は反射的に手を放してしまった。

初春「え?…ひゃあ!?」

 初春も手を放した。

ステイル「うわああああああああああああああああああああああ」

 ステイルはあっという間に激流に飲まれ、川を流され、そして見えなくなってしまった。



 ――対岸、陸――

佐天「…大丈夫ですか?」

ステイル「大丈夫だ、問題ない……へくしゅ!」

 ステイルが流されたあと、川中に取り残された美琴たちは、
 とにかく陸地を目指すことにした。

 あの状況でステイルの救出は、無理だった。

 なんとか岸にたどり着いたあとは、
 ステイルを捜索しに下流へと急いだ。

 そして、川に沿ってこちらへ、とぼとぼと歩いているステイルを見つけた。


ステイル「正直、死ぬかも知れないと思ったよ」

ステイル「無我夢中でもがいたけど、水の力に負けてどうしようもなかった」

ステイル「でも、流されたのが陸地に近かったのが幸いした。
    運良く陸に打ち上げられたんだ」

美琴「それにしても、あんたが流されてどうするのよ」

美琴「安心してくれとか、偉そうにおっしゃっていたのはどなたでしたっけ?」

ステイル「……すまない」

佐天「まあまあ、みんな無事だったんだし、いいじゃないですか」

佐天「結果オーライですよ!」

初春「そうそう! では川をわたったことですし、予定どおり休憩にしましょうよ!」

初春「私はもう、ほんとうにつかれました…」

 言うなり初春はバタンと仰向けに寝転んだ。

佐天「こらこら、濡れた格好のままでいたら風邪ひくぞ?」

佐天「服は乾かさないと!」

 バッ!

初春「きゃあっ なんでスカートだけ取るんですか!! 返してくださいって!」

 初春は顔を真っ赤にして、佐天を追いかけた。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/24(日) 13:26:07.50 ID:xICWJkb7P<> 黒子「お二人とも、ずいぶんお元気ですこと」

 走っていく2人を遠目に見つつ、鼻をならした。

黒子「とはいえ、お姉様もそんな服着ていたら体壊しますわよ」

 黒子の目に妖しい光を浮かんだ。
 美琴に飛びかかり、服に手を伸ばす。

黒子「やはりここは黒子が……ぐふっ!?」

 襲いかかろうとする黒子に、美琴のカウンターがクリティカルヒットした。


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


佐天「あー、あったかーい」

 5人は輪になって、たき火を囲んでいた。
 ステイルがリュックから火打ち石を取り出し、火をおこしてくれたのだ。

 集めた薪(まき)に、火打ち石一つであっという間に火を起こす姿は、鮮やかだった。
 旅人だから、こういうことは手馴れているのだろう。


 美琴は木の幹に背を預け、たき火の熱を全身で受けていた。

初春「生き返りますねー」

 たき火に手をかざす初春を、ちらりと見る。

 初春がいつも頭に付けていた花飾りは、川を渡ったときになくしてしまっていた。
 花飾りのない初春はなんだか別人のようだ、と美琴は思った。


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


 この辺りには、背の高い広葉樹がいくつも生えている。

 先に進むにつれて木の数も増え、深くなっていくようだ。

美琴「……森?」

 ぼんやり前方を見つめていた美琴は、独り言のようにつぶやいた。
 それにステイルが答える。

ステイル「森と言うほどでもないさ。数分歩けば抜けれるくらいの面積しかない」

ステイル「せいぜい、『林』ってところだな」

美琴「ふーん」



………………

………



 優しく降り注ぐ木漏れ日が心地いい。
 遠くからは、鳥のさえずりも聞こえてくる。

 美琴は木の幹に背を預けたまま、うとうととまどろんでいた。

 近代科学の結晶といえる学園都市には、こんな大自然はない。
 広大な自然もいいものだ、と美琴は思った。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/24(日) 13:28:12.82 ID:xICWJkb7P<>  やや離れた所から、初春と佐天の声が聞こえてきた。
 二人で、ここに生えている花を見ているようだ。

初春「みてくださいよ! こんなお花、初めて見ました!
    新種発見です! だと私が名前付けれるんですよね!?」

佐天「あー、たぶん、この世界の誰かがもう付けてると思うぞ」


 黒子は火打ち石に興味を持ったらしい。
 ステイルに火打ち石の使い方のレクチャーを受けていた。

 だが、なかなかうまく火を起こせないでいた。


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


美琴「…? いま、何か聞こえなかった?」

 どこか遠くから物音がした気がした。

黒子「そうですか? わたくしは何も聞こえませんでしたけれど…あなたは?」

 ステイルは、「いや」と首を横に振る。

美琴「そう…? 聞き間違えかな?」

 寝ぼけていたのかな、と再び木にもたれかかるが。

 また、物音。

 固い金属同士がこすれ合うかのような、不快な音だ。

 今度ははっきりと聞こえた。
 木々の向こうからだ。
 聞き間違えなんかではない。


美琴「ねえ、いま…!」

 ステイルが険しい顔でうなずく。
 黒子にも、聞こえたようだ。

 断続的に、何度も聞こえてくる。
 音源は、どんどん近づいてくる。

 ……いやな予感がする。

黒子「なにかしら。ちょっとわたくし、ようすを見てきますわ」

ステイル「よせ!」

 ステイルが青い顔で叫び、たき火を地面ごと蹴飛ばした。
 火のついたマキが方々に散らばる。

黒子「いったい、どうしましたの?」

 黒子はステイルの慌てように面食らっていた。

ステイル「まずいことになった…逃げるぞ」

 ステイルが、ものすごい勢いで荷物を片付けにかかった。

 そんなにまずいことが、起きているのだろうか。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/24(日) 13:29:18.13 ID:xICWJkb7P<> 初春「みんなどうしたんですか?」

 こちらの様子に気づいたらしい初春がいつの間にか隣に来ていた。
 初春の頭には色とりどりの花が、好き勝手に咲いていた。

 花飾りを現地新調したらしい。
 実に野性味あふれるヘアスタイルになっていた。
 まるで、頭が花壇になったかのようだった。

佐天「なになに、いったい何があったんですか?」

 離れた所から、こちらへゆっくり歩いてくる佐天。
 いまいち状況を飲み込めてないようだ。

ステイル「説明はあとだ。今すぐここから離れる」

 言って、荷物を入れ終わったリュックをステイルが背負った。

 佐天と初春はぽかんと顔を合わせた。

佐天「いったい何の話…」

 佐天の声は、途中で消えた。

 みしみしという音。
 10メートルほど先の、背の高い木。
 それが、ゆっくりと傾いていく。

佐天「なっ…!?」


 ドオォォンと言う音。
 地響き。
 30メートルもある木が、倒れたのだ。

 ステイルが悪態をつく。

初春「なになに!? どういうこと!?」


 木のあった場所にいる"それ"をみて、皆が息をのんだ。

<>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/24(日) 13:34:38.16 ID:xICWJkb7P<> 今回の投下はここまでです。

1レス80行も使えると投下が楽でいいですね



区切り線

~~~

味気なかったので、

 △  ▼  △  ▼  △  ▼

カラフルなのにしてみました。


……逆にうるさすぎかな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)<>sage<>2011/07/24(日) 14:11:18.62 ID:J3rgVlYAO<> ステイルは本物なのか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2011/07/24(日) 14:18:22.96 ID:9ymBUPT70<> 本物だとしても、まともに魔術行使できなくなってるかもしれないな・・・火打石わざわざ使ってたし <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2011/07/24(日) 15:05:05.43 ID:MvIGPOePo<> カラフルww
期待する <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/24(日) 15:12:55.90 ID:mKiVkVPr0<> >>43
レベル上がったらイノケンさんとか召還できるようになるさ...多分 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2011/07/24(日) 16:04:21.59 ID:6m0Lbddh0<> そういえばこのゲーム、レベルは6段階しかないのか?
「レベル100こえたら超能力相当」とかかもしれないけど。
隠しで、絶対能力とかあるかな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage saga<>2011/07/24(日) 16:32:30.21 ID:21g0Sxdd0<> >>46
10の6乗段階がMAXLなんじゃない? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/25(月) 11:36:31.09 ID:oucFclBL0<> 10の6乗=1000000 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/25(月) 12:28:59.23 ID:k0sbon/QP<> >>44
期待に答えられるように頑張りたいです。

ちなみに、この三角形ならべた区切り線は他の書き手さんが使っていたのを見かけて
これいいなと思って、ちょっと拝借させてもらいました。


それでは、続きを投下します。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/25(月) 12:31:10.48 ID:k0sbon/QP<>  美琴は金縛りにでも遭ったかのように立ち尽くした。

 カマキリがいる。
 それが第一印象だった。

 ただし、全長8メートルの、だ。
 カマキリを思い切りゴツくし、縦に踏みつぶしたかのような化け物がそこにいた。

 その巨大カマキリが、両腕の、1メートルはあるゴツいカマをこすりながら、
 こちらを値踏みするように見ていた。


ステイル「にげろ!!」

 ステイルは巨大カマキリに背を向け駆けだした。
 美琴も我に返り、ステイルの後を追う。
 みな一目散に逃げた。


黒子「なんなんですの!? あの気色悪い物体は!!」

 全力で走りつつ、黒子が悲鳴に近い声をあげる。

美琴「もしかして、魔物!?」

ステイル「…あれはカマムシだ」

佐天「虫!? あれが!?」

ステイル「ああ…奴は、人を食べる!」

初春「そんな無茶苦茶な…!!」

ステイル「とにかく、奴からは逃げるしかない!」


 武器もない能力もない。
 なら、逃げるが吉だ。


   *   *   *


 必死に走る5人を、カマムシは凝視している。

 どうやらあの人間どもは、自分から逃げ切るつもりでいるらしい。
 無駄な事をするものだと、カマムシは思う。

 今まで、自分から逃げ切れた人間など、一人とていなかった。

 カマムシが背中の4枚羽を広げた。

 乾いた土のような色の上羽。
 透明な下羽には、どろっとした油のような光沢がある。

 4枚の羽を羽ばたかせ、
 体長8メートル、体高2.5メートルの巨体が宙に浮いていく。

 カマムシは、肉食性のどう猛な昆虫だ。
 動物ならば、なんでも食べる。
 その中でも、人間の肉が一番の好物だった。

 カマムシは、地上から2メートルほど浮いたところで、
 逃げる人間たちに向かって飛翔した。

 加速。
 速度は急速に上がり、人間たちとの距離は見る見る縮まっていく。

 人間が、5人も。一度にこれほど捕食できるのは、いつ以来だろうか。
 カマムシの巨大な複眼に、脱兎のごとく逃げる5人の姿が映り込む。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/25(月) 12:32:07.14 ID:k0sbon/QP<>
   *   *   *


美琴「ッ!!」

 後ろを振り向いたわけではない。
 ――何かが来る。
 背後からの、プレッシャー的なものを感じとったのだ。


美琴「よけて!!」

 ほとんど反射的に動いていた。
 叫ぶと同時に横っ飛び。
 真横を走る初春に突っ込み、そのまま初春を押し倒す形で地面に突っ伏す。

 直後、轟!と風切り音。
 先ほどまで自分たちがいた場所を、
 巨大な物体が弾丸のような速度で通り過ぎた。

 すさまじい風圧が、美琴たちを襲った。

 空気の壁。全身を殴られたような衝撃。
 美琴はごろごろと、3メートルも転がった。


美琴「くっ…」

 口の中に土の味を感じつつ、美琴は地面に手をつき起き上がる。

美琴「初春さん?」

 2メートル側方にある、背の高い草藪が、がさがさと動く。

初春「うぅ…」

 初春が、草藪の中から這(は)うように、出てきた。

美琴「へいき?」

初春「なんとか…」

 初春の服全体に、
 なんだかよく分からない植物の種がびっしりと付いていた。



佐天「いたた……」

黒子「ずいぶんと、手荒い歓迎ですこと」

 7、8メートル離れた草むらから、佐天、黒子。
 そして、美琴の後方、木の陰からステイルが姿を見せる。

 全員、無事のようだ。

ステイル「くそ…逃げ切れないか…?」

 ステイルが、額に手を当てる。

 逃げようとしていた進行方向上。
 そこには、カマムシが回り込んでいた。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/25(月) 12:34:18.14 ID:k0sbon/QP<> 美琴「戦って、そして倒せばいいのよ!」

ステイル「そんなの不可能だ!」

美琴「他に生き残る方法があるの?」

美琴「相手は空を飛べるのよ。逃げれるわけないじゃない!」

ステイル「僕たちには武器すらないんだぞ?」

黒子「大丈夫ですわ。これでも、それなりに修羅場は通ってきたのですから」

黒子「第一、ジャッジメント的に、
    こんな危険きわまりない殺人虫を野放しにはできませんわ」

 カマムシと戦う。
 それしかない。


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


 カマムシが、4本の足をぐぐっと縮める。
 そして、ためた力を解き放つように、跳躍した。

 その巨体からは想像もつかないほど軽々しく、高く飛び上がったカマムシ。
 その狙いは、

美琴「ッ!! さがって!」

 飛び上がったカマムシが、こちらに向けて落下してくる。
 下敷きにされたら、ただでは済むまい。


 美琴は走る。
 初春もそれに続いた。

 1秒後。
 すぐ後方にカマムシが落下。


 衝撃。
 地面が吹き飛び、草混じりの土が四方八方に飛び散る。

初春「きゃあっ」

美琴「つ…!」

 着地地点から一番近かったステイルが、土をもろに受けた。

ステイル「ぐはっ!」

 2メートル超の長身が、ノーバウンドで数メートルも吹っ飛んでいく。

美琴「この…!」

 カマムシの横っ腹に全力の回し蹴りをくらわせる。
 だが、

美琴「くうッ…!」

 まるで巨大な岩盤を蹴ったかのようだった。
 足がじんとしびれる。

美琴(なんて硬い…!)

黒子「お姉様!!」

美琴「ッ!!」 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/25(月) 12:35:36.47 ID:k0sbon/QP<>  カマムシの腕の大がま。
 1メートルを優に超えるその大がまを、こちらに振り下ろしてきたのだ。
 鋭い風切り音が聞こえる。

美琴(体勢が…!)

 回し蹴りの直後。
 体がよろける。
 避けられそうにない。

初春「美琴さん!!」

  ザクンッ!という、生々しい音が草原に響いた。


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


 直径80センチほどの大木に、半分くらいまで、大がまがめり込んでいる。
 斬撃は、美琴の目と鼻の先で止まっていた。

美琴(助かっ…た?)

 木に助けられたらしい。

 間近で見ると、大がまの刃には無数の返しが付いているのがわかる。
 返しといっても、一つ一つが美琴の手の幅より大きい。
 まるで、鋭いナイフがびっしり並んでいるかのようだ。


 このような大木がざっくり切れるほどの威力。
 もし直撃してたら…
 冷や汗がどっと吹き出る。

 間髪入れずカマムシが、今度は反対側の大がまを振ってきた。
 弧を描くように接近。

 美琴は即座にジャンプ、回避しようとする。

 空を切ったかまは地面にあたり、振り抜かれ、地面をえぐる。

 衝撃で、美琴は吹き飛ばされる。

 先ほどは自分を守ってくれた木に、美琴は激突。頭を打った。

美琴「がッ…」

 目の前に無数の星が飛び、視界が暗転する。
 美琴はどさりと、糸が切れたかのように地面に崩れ落ちた。

<>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/25(月) 12:37:30.27 ID:k0sbon/QP<> 以上で今回の投下は終わりです。



しかしこう、主人公たちの面子が多いと
視点をどうしたらいいのか迷いますね。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/07/25(月) 12:39:25.17 ID:lorPGWfAo<> ステイル役にたってねぇww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2011/07/25(月) 13:16:56.67 ID:MDU0q4+Y0<> 誰か、バット、金属バットを!
佐天さんなら金属バットさえあれば! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/25(月) 13:53:56.04 ID:CRF7BMi70<> 上条さんマダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2011/07/25(月) 19:20:02.72 ID:b2pDVObU0<> 超電磁砲のRPGだからあってもスポット観戦かと。

打撃戦は手馴れているから有効な武器持ってりゃぽんぽんレベルが上がっているだろうな。
あれ?そもそも幻想殺しレベル1ってどんな化け物?

>>54
今回みたいに人の心が読める第三者視点で良いと思う <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/26(火) 07:57:21.84 ID:64IzJRXGP<> >>55
ステイルさんは…道案内でとても役に立ってくれました。

>>56
RPGの世界にそんな無粋な武器無いです

>>57
上条さんが地面にさわると、この世界消滅しちゃいそうですね
こえー

>>58
なるほど、了解です。



では、投下します。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/07/26(火) 07:58:09.78 ID:64IzJRXGP<>
   *   *   *

佐天「御坂さんが…!」

 数メートル先。
 木に激突した美琴は、ぐったり倒れ込み、ぴくりともしない。

 カマムシは、無防備な美琴に、今にも襲いかからんとせんばかりだ。
 ちょっとまずいかもしれない、と佐天は思った。


黒子「こいつ…!」


 黒子が、地面からこぶし大の石を、手早く拾い上げた。
 振りかぶって投げつける。
 石は風を切って飛んでいき、カマムシの頭部に直撃。
 ゴスッ!とにぶい音が響く。


 佐天は、石の命中を確認する前に走り出していた。
 手には、がっしりした木の棒。

 どうやら、あいつは相当頑丈らしい。
 カマムシとの距離を詰めつつ、佐天は考えを巡らす。

 ならば、弱点を狙う。

 やつの一番弱そうなところは……

 佐天は棒を両手で握りしめ、振り上げる。
 駆けた勢いを相乗させ、横からカマムシに、棒を叩き付ける。

 狙いは、カマムシの細い首だ。

 クリティカルヒット。
 両肩がじんと痺れるほどの打撃。 <>
◆HIGMAmeNBU<>sage<>2011/07/26(火) 07:59:17.80 ID:64IzJRXGP<>
 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


 カマムシはゆっくりと頭を動かした。
 じろりと、凍り付くような視線を佐天に向ける。

 無機質な複眼の奥に、光が見えた気がした。

佐天「うぐっ!!」

 胸郭側方に、強い衝撃。

 死角から、裏拳のように舞ったかまに、殴り飛ばされたのだ。
 肺の中の空気が強制的に吐き出され、吹き飛ばされる。

 ズザァアと、草地の上を3メートルも滑って静止した。


初春「大丈夫ですか!?」

 初春が、こちらに駆けよってきた。

佐天「……なんとか」

 ゴホゴホと、咳き込みながら答える。

 胸脇の、殴られたところを確認する。
 触ると強く痛むが、骨は折れてない。

初春「佐天さん」

佐天「うん…」

 初春に助け起こしてもらう。
 佐天の制服には、黄緑色の線が幾重にも走っていた。


 佐天はカマムシを、キッとにらむ。

 これ以上ない、最高の攻撃だったはずだ。
 だが、カマムシにダメージは見られなかった。


佐天(なんてやつ……!)
<>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/07/26(火) 08:00:52.03 ID:64IzJRXGP<> 以上です。


>>59>>60はトリップ忘れです…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/26(火) 11:38:53.26 ID:FaGQMuk8o<> 分子の動きを自在に制御して、オルカ姉さんみたいなこと+凍結できるだろう
って考察なら見たことある
<>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/07/27(水) 22:05:26.57 ID:m3+NkvrJP<> 投下します。 <> ◆HIGMAmeNBU<><>2011/07/27(水) 22:06:14.84 ID:m3+NkvrJP<>
   *   *   *

黒子(なるほど……)

黒子「足ですの!」

 最低限の言葉。
 それでも美琴は、こちらの意図を理解した。


 うなずくなり、美琴は振り抜かれたかまを、屈み込んで下からくぐり抜ける。
 そしてカマムシの懐へ、突進して行く。



 ――美琴は軽い脳震盪(のうしんとう)で済んだ。
 ぐったり倒れ込んでいた美琴に、黒子は急いで駆けよった。
 美琴は気を失っていたようだが、揺さぶったら、なんとか目を覚ましてくれた。


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼
<>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/07/27(水) 22:07:02.97 ID:m3+NkvrJP<>
 美琴がカマムシの懐へと潜り込んだ。

 狙いは、足。

 きゃしゃな4本の足のうち、体重がかかっているのはどこか。


 カマムシの左前足を、美琴は狙う。

 同時に、黒子も走る。
 カマムシへ、美琴とは別方向から接近。

 美琴は腰を落とし、低軌道の蹴りを繰り出す。
 大地に突き刺さるカマムシの細長い足を、地面すれすれから蹴り飛ばした。
 
 足と足が衝突。

美琴「ぐぐ…」

 だが、カマムシはぴくりともしない。

 無理なのか?
 黒子はあきらめかけたが、

美琴「らあああああああああああああああああああ!!!!」

 美琴が雄叫びを上げ、止まりかけた足に勢いをのせる。
 足を、跳ね上げるように振り抜いた。

 地面が爆発したかのように、土砂が飛んだ。
 カマムシの左前足が、弾かれ、浮き上がったのだ。

 8メートルの巨体がバランスを失い、傾いていく。

 カマムシは、初めて慌てたかのように見えた。

 両腕のかまを振り回し、体勢を整えようともがく。
 が、既に立て直せないところまで来ていた。

 左のかまを地面に突き立て、体を支えようとするが、勢いに負ける。
 カマムシは、胴体を斜めに傾け、転倒。大地が揺れる。

 これで、やつに一泡吹かせてやった。
 黒子は内心ほくそ笑む。

 だが、これだけでは意味がない。
 疾駆する黒子は、立ち上がろうと足をばたつかせるカマムシ、
 そして地面に突き刺さったままの左のかまを視界にいれる。


 このかまの威力は脅威だ。
 だが、これさえ無くなれば。


 斜めに突き立てられたかま。
 黒子が流れるような身のこなしで、かかと落としを炸裂させる。
 
黒子(どんなに硬い殻で身を固めていても、
    関節だけはもろいはずですの……)

 人間で言えば手首に相当する部位だ。
 黒子の足の下、1メートルの大がまの付け根が、みしみしと鳴る。


 ばたつくカマムシの動きが、止まった。


美琴「やった…!?」






<>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/07/27(水) 22:09:48.85 ID:m3+NkvrJP<> 以上です。


なんか、レス投稿するたびに

>ERROR:おまいが書き込んだ時間は物凄く混雑してたみたいなので、1秒ほど時間をおいて投稿しなおしてください。
>ロック開始から-1154409秒。 (1203)


こんなのが100%の確率で出るんだけど、なんなんでしょうね?
まあ、エラーでも、実際には普通に投稿できてるから、無視して問題はないですけれど…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/29(金) 22:51:01.20 ID:soCmoG7SO<> 時間帯的にエラーが出やすいだけじゃない? <>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/05(金) 04:37:23.39 ID:g8PYmbDJP<>


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


 不意にカマムシが、のたうつように動き出した。
 二つの複眼に見えるのは、激しい怒りの色。

 突き刺さったかまを、カマムシはものすごい力で抜き上げた。

黒子「なっ!?」

 かまの上に乗っていた黒子は、上空高くに舞い上げられる。

 黒子の視界が高速に縦回転する。

 空、地面、空、地面、空……

 ぐるぐるぐるぐる、上も下も分からない。

   *   *   *

 まるでペットボトルロケットが飛んでいくかのようだった。
 黒子は斜め60度の方向にぶっ飛んでいく。

美琴「黒子!!」

 美琴はとっさに走り、黒子を追う。 
 その視界に、影が映った。

 かまだ。

 斜め下から、切り上げるような軌道。

 ――やばい、このままでは体が真っ二つだ!


 美琴は前に出していた足を地に突っ張らせる。
 加速しかけた体を、急ブレーキ。

 かまが迫る。

 足の関節が外れそうなほどの力で地を蹴り、後ろへ。

 ズバンッ!という音の後、血しぶきが飛翔した。

美琴「く…」

 背中から地面に落ちる。

 細切れに裂けた常盤台中制服に、じわりと、血染みが広がった。


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


 木が、ガサリと揺れた。
 そこから黒い影が飛び出す。

 影は自由落下し、ダン!と響かせる。
 カマムシの背に張り付いたそれは

美琴「佐天さん!?」

 カマムシは佐天を振り落とそうとするが、背中には手が届かないようだ。
 かまがむなしく空振りする。

美琴(たしかに、背中の上はかまの死角だけど…!)

 カマムシは体をよじる。
 佐天はカマムシに振り落とされそうになりながらも、背中から頭側へ、じりじり、にじり寄る。

美琴「ッ…! 飛ぶつもり…!?」

 カマムシが羽を広げ、羽ばたき始めたのだ。 <>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/05(金) 04:37:57.33 ID:g8PYmbDJP<>
   *   *   *


佐天「うわぁ!!」

 佐天を乗せたカマムシの高度が、ぐんぐん上がっていく。

佐天「くそっ…」

佐天「飛ぶなんて反則だっての!」

 風切り音が、轟々と響く。


〜〜〜〜

佐天『あいつ、なんであんなに硬いんだよ。実は虫じゃ無くてロボットなんじゃないの!?』

初春『ええっと……』

初春『見たところ…カマムシは全身が、とても固い外骨格に守られているんだと、思います』

佐天『……すごく硬かったよ』

 それは先ほど、身をもって経験していた。

初春『でも、外骨格も一枚岩ではないはず……』

初春『全身があんな硬い殻で覆われているとしたら…
    カマムシは動くことが出来なくなってしまうはずですから…』

佐天『つまり…殻には隙間があるってこと?』

〜〜〜〜


 佐天は右手を伸ばし、外骨格の首の付け根にある突起をつかみ、

佐天「こいつめ、おとなしくしやがれってんだ」

 自身の体を引き寄せる。

佐天(…初春の言うとおり)

 カマムシの首の付け根。
 背中側の外殻と首側の外殻が重なり合っており、
 カマムシの首の動きに合わせて、外殻がぎしぎし擦れる音が、かすかに聞こえる。

 佐天はさっと目を走らせた。
 一番隙間が大きい部位は。

 首の左端付近にある、5センチほどの隙間。
 あそこだ。

 そこに、ナイフを突き立てるかのように、隙間を狙って右手を突き刺した。

 バッタの腹部のような感触。
 そう思った。

 佐天の手は、あっけないほど簡単にカマムシの首を突き破り、
 腕が首の中に埋まっていった。 <>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/05(金) 04:39:37.92 ID:g8PYmbDJP<>

 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


 カマムシが、ビクンと、大きく体を痙攣させた。

佐天「うぉあっ」

 思わず振り落とされそうになった。
 反射的に、右腕を引っこ抜く。

 ぬちゃぬちゃした気色悪い感触とともに、何かが引きちぎられるような音。

 羽ばたきはとっくに止まっていた。
 カマムシは、斜め45度の角度で猛スピードで落下していた。

佐天(やばいやばい、どうしようどうしよう!)

 カマムシと共に落下する佐天はどうしようと迷うが、
 この状況でどうしようもなく、あっという間に地面が近づく。

 大地を削り、細い木を何本かなぎ倒しながら、カマムシは墜落した。

佐天「きゃあ」

 骨がばらばらになるほどの衝撃。
 佐天は投げ出され、草地の上を何度もバウンドした。 <>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/05(金) 04:41:33.66 ID:g8PYmbDJP<> 更新にちょっと間が空いてしまいましたが、
今回の投下は以上です。

もうちょいペースあげれるように頑張りたいです。



>>68
とりあえず、今は収まっているみたいですね。
結局、なんだったのかはよく分かりません。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/08/05(金) 09:33:20.37 ID:+xZLZxVy0<> 佐天さん、強ぇえww <> ◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/06(土) 02:08:26.73 ID:FFSOoxnyP<> 投下します <> ◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/06(土) 02:09:16.57 ID:FFSOoxnyP<>

 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


佐天「うひゃぁ」

美琴「水がつめたい!!」

 佐天と美琴は、戦いによって汚れた体の、泥や汚れを川の水で流し落としていた。

黒子(……それにしても、やたらめったら手強い相手でしたこと)

ちゃぽちゃぽちゃぽ。

 川のふちにしゃがみ込む黒子は、
 川の中に入れた右手が作る水の渦を見るともなく、眺めていた。

 カマムシにぶっ飛ばされた黒子はあの後、
 たまたま近くの木に登っていた佐天に捕まえられ、助けられたのだ。

 もし佐天が違う木に登っていたら、黒子が別方向に飛ばされていたら。
 今こうしてのんびり休む事も出来なくなっていたかもしれない。

 佐天と美琴は服を着たまま、ばしゃばしゃ水を掛け合っている。

 初春は黒子の隣にちょこんと座っている。
 ステイルはなにやらごそごそと、リュックの中をあさっている。


 黒子はみんなの様子を一瞥する。

 まあ、なにはともあれ全員無事でよかった、と胸をなで下ろしつつも、
 そんな黒子はつい先ほど、富士急ハイランド顔負けのGで全身くまなく攪拌(かくはん)され、
 脳みそが頭蓋骨の中でぐるぐる回っているかのような感覚が、未だに続いていた。

 気分は、すこぶる悪かった。


初春「白井さん、大丈夫ですか?」

 心配そうに、下から黒子の顔をのぞき込む。

黒子(……)

 あまり大丈夫ではなかった。

 先ほどから、乗り物酔いのような吐き気が黒子を襲っていた。
 ちょっと気を抜けば、初春の顔面が吐瀉物まみれになってしまう。 <>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/06(土) 02:09:57.07 ID:FFSOoxnyP<>
 満身創痍なのは黒子だけではない。
 佐天は全身打撲。
 制服は濃淡様々な緑が混ざる、迷彩柄仕様になっていた。

 カマムシと墜落したとき、草地に体を激しくこすったせいである。


 美琴に至っては、
 常盤台制服の腹から胸にかけてがずたずたに引き裂かれ、
 おまけに血糊(ちのり)までついている。

 三人とも、HPはレッドゾーンだった。

初春「薬草とか回復薬とか、あればいいんですけどね」

ステイル「薬草なら、ここにあるが」

黒子美琴佐天「ッ!?」

 一斉に振り向く三人に、若干たじろぎつつ、

ステイル「やっと見つかったんだ」

 と、リュックの中から、茶色い紙の包みを取り出す。
 ひもを解き、500mlペットボトル大の縦長な包みを開けると、

佐天「薬草じゃないですか!」

美琴「これを飲めば、シャキーンってなってHPが回復!?」

佐天「使わせてもらいます!」ワシッ

美琴「佐天さん、独り占めしないでって!」

黒子「お二人とも落ち着きますの、こういうときは平等に三等分ですの!」 <>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/06(土) 02:10:48.25 ID:FFSOoxnyP<>
ステイル「あー…君たち、」

ステイル「それは食べられないが…」

黒子美琴佐天「…?」

 薬草を一つかみずつ手に持ち、いざ口に放り込もうとしていた三人は、
 口を開けたまま一斉にステイルを見る。

 そしてそんな三人に若干たじろぎつつ、

ステイル「それはグリーンハーブと言って、すり潰して傷口に塗って使うんだ」

ステイル「鎮痛作用、抗炎症作用、凝血作用もある」

ステイル「いわば、血が出たときの万能薬だな」


黒子美琴佐天「へぇー……」


 棒読み気味な相づちの三重奏が、自然あふれる川沿いに広がった。 <>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/06(土) 02:13:43.22 ID:FFSOoxnyP<>
以上です。 <>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/06(土) 02:14:36.34 ID:FFSOoxnyP<> とりあえず、
一日、二日に一回くらいのペースで更新したいなーと思っています <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/06(土) 02:17:16.74 ID:DMm9QC2Mo<> 乙
街に着くにはもう少しかかりそうだな <>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/07(日) 15:16:46.23 ID:sHNVt79rP<>

  ― 第2話 ―


 腹も胸も包帯でぐるぐるに巻かれた状況というのはどうにも息苦しい圧迫感があるもので、
 おまけに包帯からは妙なかび臭さが漂っているとなると、美琴の心も穏やかではなかった。

美琴「なんなのよこれ」

 と、さけるチーズもびっくりな制服からのぞいている包帯を指し、

美琴「あんた旅の人でしょ? もっとマシな物ないの?」

ステイル「贅沢言わないでくれ」

 凛と歩きながら、

ステイル「旅に必要なものを古くなるたびに新調していたら、お金がいくらあっても足りない」

初春「まあまあ、」

 美琴の半歩前を歩いている初春がこちらを向き、

初春「御坂さんは治療できただけよかったじゃないですか」

 恐る恐るといった様子で、美琴越しに後ろを盗み見る。

美琴「……まあね」 <>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/07(日) 15:17:17.51 ID:sHNVt79rP<>
 美琴の二歩後方で、黒子と佐天はぺしゃんとしおれていた。

 特に出血もない二人には、グリーンハーブは役立たずで、
 治療できたのは美琴だけだった。

 以前の倍くらいに膨らんだステイルのリュックにぶつからないよう気をつけて、 
 美琴は隣を歩くステイルから少し、距離を取っている。

 林の中を、ステイルの案内で進んでいた。


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


ステイル「あれだ」

 林を抜けてすぐ。
 開けた視界の中で、ステイルが指す物は簡単に見つかった。

美琴「あれが王都……」

 数百メートル前方。城壁だ。
 キロメートル単位で広がる城壁が、夕日を受けてオレンジ色に輝いていた。

黒子「ずいぶんと仰々しいですわね」

佐天「それはまあ、なんたって王都ですし」 <>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/07(日) 15:17:52.30 ID:sHNVt79rP<>
――in the 王都――


わいわい、がやがや


 もしはぐれたら二度と再会できないんじゃないか、と美琴は思った。

 無数の人間が行き交っていた。
 中世ヨーロッパ的な街並みには、いかにもゲームに出てきそうな服装の人もいれば、
 学園都市にいても全く違和感ない身なりの人もいる。

 それが妙にちぐはぐに見えた。


 城門をくぐって、守衛らしき兵の横を通り抜け、街の中へ入った一行は、
 年期の感じる、ややくたびれた石畳の敷き詰められた大通りを歩いていた。


ステイル「なんといっても王都だからな、」

 しきりに辺りを見回す4人に、面白そうな声で説明する。

ステイル「推定人口10万人、大陸で一番賑やかなところだ」


佐天「ねぇねぇ、あそこに売っているヤチェの実って、なんだろ?」

黒子「なんでしょう、初めて見ますわね」

初春「せっかくだし、買ってみましょうよ!」

美琴「あ、私も!」タッタッタ…


ステイル「……」

 誰も聞いていなかった。 <>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/07(日) 15:22:57.91 ID:sHNVt79rP<> 以上です。


>>80
やっと街に到着です。
もっと、開始速攻で街に着かせた方がよかったなーとも思っています。



ちなみに4人のステータス

・御坂美琴

服:常盤台中学の制服
武器:素手


・白井黒子

服:常盤台中学の制服
武器:素手


・初春飾利

服:柵川中学の制服
武器:素手
アクセサリ:野性味あふれる花飾り


・佐天涙子

服:柵川中学の制服
武器:素手 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/07(日) 15:23:34.04 ID:RnM/WCJho<> ステイルたん涙目 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/07(日) 17:31:57.70 ID:BoKTsLySO<> 乙
カマムシ戦がイベント戦闘で誰か助けが来るかと思ってた <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/07(日) 22:48:56.74 ID:+eMV6pZCo<> ヤチェのみ
しぶさと すっぱさが ほどよく ちょうわした(ry <>
◆HIGMAmeNBU<><>2011/08/08(月) 03:46:20.27 ID:kKskU7S6P<> 投下します <> ◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/08(月) 03:47:18.19 ID:kKskU7S6P<>

 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


「へい らっしゃい!!」

 美琴たちが露店に入るなり、
 タオルを鉢巻きのように巻いた店主が、はつらつと歓迎してくれた。

 簡素な露店には、見たこともない果物や木の実。

 果物屋さんなのかな、と思いつつも、しかし、

美琴(この人どっかで見たことあるような…)

黒子「こちらを一山いただきたいですの」

 と、日本語で“ヤチェの実”と書かれた木箱を指す。

「まいど!…俺の顔に、なんか付いていますかね?」

美琴「え…あ、いいえ!」

 美琴は慌てて目を伏せつつも、
 そうか、この人は、よく行く八百屋さんの店主にそっくりだ、と気づいた。

 左目尻のほくろの位置まで、同じ。
 ただの他人のそら似なのだろうか。

美琴(あれ、右目だっけ?)

 などと考えているうちに、
 黒子はずだ袋に入れられたヤチェの実を、店主から手渡され、

「銀貨9枚になりやす!」

黒子「……へ?」 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/08(月) 03:48:36.90 ID:kKskU7S6P<>
初春(銀貨ってなんなんですか!?)ヒソヒソ

黒子(どう考えても、この国のお金のことでしょうけれど……)

初春(私たち、一文無しじゃないですか!)

美琴(え〜!? どうしよう!)

 美琴は、ちらりと店主を見る。
 腕組みをした店主が、怪訝な目を向けていた。

佐天(一円玉9枚で何とかならないかな? 銀色ですし)

美琴(なるわけないでしょ!)


ステイル「銀貨9枚だな」

 いつの間にか、ステイルがいた。
 ステイルは、店主の隣にある木箱の上に、無造作に銀貨を置く。

 店主は銀貨を見るなり、にこやかな笑みを浮かべ、

「どうも、まいどありー!」

 5人を見送った。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/08(月) 03:49:08.55 ID:kKskU7S6P<>
 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


 手のひら大のヤチェの実は、見た目以上に、ずっしりと重かった。
 氷の結晶がそのまま実になったかのような、不思議な実に見えた。

 ステイル曰く、そのまま丸かじりで食べられるらしい。

 美琴はヤチェの実に、ガブリと、かぶりついた。

 シャリシャリした食感とともに、
 渋みと酸味が調和した、さわやかな味が口内に広がった。

佐天「なんだか、独特な味ですね」シャリシャリ

黒子「暑い日に食べたくなりそうな食感ですわ」

ステイル「ところで君たち……一文無しでよくここまで来れたな」

美琴「え…ま、まあね!」

 ヤチェの実を味わっていた美琴は、思わぬ不意打ちを受けて、むせかけた。
 たしかに、4人そろってまったくお金がないというのは、少々不自然かもしれない。

ステイル「もしかして……」

 夕日を背に立つステイルは、いつになく真剣な顔で、言った。

ステイル「君たち、家出少女か?」 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/08(月) 03:50:04.23 ID:kKskU7S6P<> 以上です。


>>86
イベントもなにも無くてサーセンwwwwwwwwwww

>>87
ポケモン(ry
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/08(月) 12:29:06.36 ID:K6Ue4ujNo<> 乙
家出少女wwwwww <> 87<>sage<>2011/08/09(火) 01:59:19.64 ID:z1w/Zjngo<> 乙。
どうせ違うだろーと思ってたら本当にポケモンでワロタ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/10(水) 00:24:25.18 ID:3Mw+khcIO<> たおしたカマキリから何かしら剥ぎ取るのかと思った。この世界ではモンスターの素材は用無しなのか。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/10(水) 20:46:02.86 ID:ISeUaonVP<>

△  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


 日が沈んだ後の、藍色に染まりつつある空を見上げ、ステイルは言う。

ステイル「暗くなってきたな。少し急ごう」

ステイル「このまままっすぐ進むと、王宮に突き当たる」

 言うなりステイルは、ただでさえ大股な歩幅を、さらに大きくした。
 必然的に、美琴たちも早足になる。



〜〜〜〜

佐天『財布、落としちゃって…探しても見つからなくて…』

ステイル『それは…災難だったな』

 佐天のとっさの言い訳に、ステイルは深々とうなずいていた。

〜〜〜〜



美琴「……」

 家出少女として警察に通報でもされたら非常に困ったことになるし(警察があるかどうかは不明だが)、
 もっとマシな言い訳があるだろうと美琴は思うが、

美琴(まぁ、あれで納得したなら別にいいか)

 美琴の視界を、一匹の羽虫が横切った。
 なんとなく目で追っていくと、街灯が目に入る。
 通りの喧騒を照らす炎の周りに、無数の羽虫が群がっていた。

 一方、初春は別のことを考えているようで、

初春「王様……」

 夢見るような顔で言う。

初春「やっぱり、豪華な暮らしを満喫しているんでしょうかね。
    天井まで届きそうな背もたれの椅子に座って、
    金で出来たスプーンとフォークで食事して、」

佐天「どういう価値観よそれ」

ステイル「……君たち、国王の事をなにも知らないのか?」

 あきれたというよりも、いぶかしむという色に見えた。

佐天「もももちろん! 知ってますよ!!」

佐天「ただまあ、無学なもので、あまり詳しいことは、」

ステイル「では、なにを知っているのだ?」

佐天「ゴメンナサイ。なにも知りません」 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/10(水) 20:46:43.55 ID:ISeUaonVP<>

 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


ステイル「国王は、とても若い」

ステイル「前国王が急死されたんだ……つい最近の事だ。
     その後、ほどなくして魔王討伐の公募が出された」

 美琴はあごに手をやり、考える。

美琴「つまり、前国王が亡くなったから仕方なく、若い王子が国を次ぐようになった…ってこと?」

初春「王様が死んだのをいいことに、
    血の気の多い王子様が魔王を倒そうとたくらんでいる、とかだったり」

佐天「にしても国王、なんで死んじゃったんですかね」

佐天「もしかして、単身魔王に挑んで散ってしまったとか……!?」

美琴「それはないと思うけど……」

 仮にも国の王に、酷い言い様なものだと内心思いつつ、
 美琴はステイルに目を向ける。

美琴「で、どうなの?」

 ステイルは何かを言おうとして、

ステイル「……」

 また口を閉じた。

美琴「なによ?」

ステイル「いや…」

 ステイルは大きく息を吐いた。

ステイル「国王に直接聞いた方がいいだろう。もうすぐ会うんだ」

ステイル「僕が話すより確実だし、わかりやすい」


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


美琴「黒子、アンタはどう思う?」

黒子「……」

 返事がないので振り返ると、黒子はぼんやりと歩いていた。
 話しかけられた事に気づいてないらしい。

 ――そういえば、黒子はさっきから一言もしゃべってないな。

 どうしたのかな、と、美琴は黒子の肩に手を乗せた。

美琴「黒子?」

黒子「あ、え、はい?」

 ハッと、美琴を見た。

黒子「なんですの?」

美琴「だからその……」

 もう一度さきほどの言葉を繰り返そうとしたが、ふと、

美琴「…どうしたの? ぼーっとしちゃって」

黒子「いえ…」

黒子「ただ、木原さんも、よくこんな物を作ったと思いまして」

美琴「んー、たしかに。五感も完全再現だしね」

 と、自分の体を改めて見回しながら言った。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/10(水) 20:47:22.76 ID:ISeUaonVP<>
黒子「それもすごいと言えばすごいですけれど……」

黒子「いえ……たしかにすごい、驚くべき事ですわね…」

 ごにょごにょと喋る黒子は、どうも歯切れが悪い。

黒子「ただ、それよりも、わたくしは、もっとその…」

 不意に、ワッと、ひときわ大きな喧騒が聞こえた。 

 美琴は何事かと振り向く。
 美琴たちは、魚店の横を通りかかっていた。

 主婦たちと魚屋店主の、激しい値下げ交渉が、すぐそこで繰り広げられていたのだ。
 「もっとまけて」だの「いやこれ以上は無理だ」だのの、必死の攻防を見ると、
 どこの世界でも主婦業というのは命がけなのだなあ、などと考えてしまう。
 

黒子「うぅむ……」 

 それを見た黒子は相変わらず、難しい顔のままだった。


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


 それからしばらく進むと、開けた、広場のようなところに出た。
 石畳の一部が剥がされて、むき出しの地面に、植え込みや樹木が植えられている。
 それらが、広場全体に幾何学的な模様を作り出していた。

ステイル「あれが、そうだ」

 その広大な広場の奥に、お城のような建物があった。

美琴「ようやっと、到着ね」

初春「もう、本当に…本当に疲れましたぁ」

 すっかり日は落ち、夜になっていたが、宮殿の様子はここからでも見える。
 無数のランプが、光源となっているのだ。

佐天「…水?」

 しばらく進むと、堀のような物が見えてきた。
 堀が宮殿の周りを、ぐるりと囲っている。

ステイル「水堀だ」

ステイル「堀に一カ所、石橋掛けられている所がある」

ステイル「宮殿の中には、そこからしか入れないようになっている」

黒子「ずいぶんと厳重ですこと」

 5人は水堀に沿って進んでいく。
 近くで見ると、幅6メートルほどの溝に、水が満たされているのがよく見えた。

ステイル「裏から続く川から、直接この堀に流れ込んでいるんだ」

ステイル「水は堀から地下の水路に流れていき、そのまま、街の生活用水として使われている」 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/10(水) 20:48:49.05 ID:ISeUaonVP<>

 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


 その石橋は、すぐに見えてきた。
 20メートルほど前方。
 堀沿いの木の陰から、ちらちら、見えたり見えなくなったりする。

美琴「……ねぇ、私たち、宮殿にこのまま入っていいの?」

美琴「許可とかって取らなくて大丈夫?」

ステイル「うむ」

ステイル「普段は当然、一般市民は立ち入ることは出来ないが、
    今は勇者候補者なら、誰でも入ることが出来る」

 ステイルは「まぁ、僕も入ったことはないが」と続けた。

 そうこう言う間に5人は石橋の前につき、
 いざ中へ、というところで、一人の男に会った。

 優美な彫刻が施された欄干。

 そこに背を預けたその男はこちらを一瞥すると、
 ブロンドの髪をわしわしかき乱しながら、めんどくさそうに近づいてきた。

  「なんだァ? テメェら」

 目の前に立つそいつの顔は、悪意に満ちていた。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/10(水) 20:51:07.21 ID:ISeUaonVP<> 以上です。
ついにやっと、100レス行きました。

>>94
しかし氷技くらった後に、もぞもぞしてダメージ低減ってどういう原理なんでしょうね。
すでにくらってんだから、ヤチェのみがあってもどうしようもない気が

>>95
実はなにげに、ステイルさんが剥ぎ取っています。テンポアップのため端折ったけど。
>>82の「以前の倍くらいに膨らんだステイルのリュック」ってのが伏線だったり。
ただこのペースだと作中で出てくるの、けっこう先になりそうですが。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/11(木) 01:22:28.02 ID:S581EbrLo<> 乙!
>>100
たしか、よわめた!の表示は攻撃を食らう前なんだぜ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/11(木) 01:24:37.91 ID:2vvzh1F4o<> 乙
結構長いシリーズになりそうだな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2011/08/11(木) 17:52:45.49 ID:tjtVVwkJ0<> >>97
黒子の口から出た名前が学園都市でも特に物騒な人になってるんだが…… <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/12(金) 07:53:22.74 ID:dtTo4qVtP<>
>>101
な、なんだってー!?

>>102
ペース的にちょっと長くなるかも、ですね

>>103
oh...
木山さんの間違いです
指摘感謝!


では、投下します。 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/12(金) 07:54:29.68 ID:dtTo4qVtP<>
 ブロンド髪の男は、美琴たちを一人一人、ゆっくりと見回した。
 そして、

  「……おいテメェら、なんのつもりだ? ここはゴミクズが入っていい所じゃぁねぇぞ」

 男の目は、まるで道ばたの空き缶でも見ているかのようだった。
 人を人として見ていない目。

 美琴は背筋がぞっとした。

 ――こいつは危険な男だ。

 美琴の直感と経験が、そう知らせていた。

ステイル「ここを通してほしい。僕たちは勇者候補者だ」

  「…あ?」

 男の顔から、一気に表情が消えた。

  「はっ」

 無表情の顔が、ぐにゃりとゆがみ、

  「ぎゃははははははははははははは!!!」

 下品な笑い声を上げた。

黒子「なんなんですの、こいつは…!!」

佐天「白井さん落ち着いて!」

 下手すればそのまま殴りかかっていきそうな黒子を、初春と佐天が二人がかりで制止する。

  「あー、」

 一通り笑い終わった男が、目元をぬぐいながら、

  「いやー、おもしろいわ。ホント、馬鹿すぎておもしろいわ」

佐天「んだとコラァ!!」

初春「佐天さんストップストップ!!」 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/12(金) 07:55:20.20 ID:dtTo4qVtP<>
  「そこでなにしているじゃん?」

美琴「…?」

美琴「わっ」

 振り返ると、いつの間にやら背後に、一人の女性がいた。

  「……黄泉川か」

 男の顔から、再び表情が消えた。

  「こいつらがおもしろい冗談を言うものでね」

 あざけるように言う男を無視し、黄泉川と呼ばれた女は、
 美琴たちに再度尋ねた。

黄泉川「君たち、そこでなにしているじゃん?」

ステイル「国王に面会しに来た。僕たちは皆、勇者候補者だ」

 黄泉川は、男に目を向けて、

黄泉川「だ、そうだけど。なにか?」

  「いいや」

 男は美琴たちの横を通り、広場の方向へと歩く。

  「希望者は全員通すように、とかいう勅令だっけな」

 男はハッと笑うと、背中越しに右手を上げた。


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼


黄泉川「君たち全員、勇者候補者じゃん?」

 男が見えなくなった後、黄泉川は口を開いた。

美琴「ええ、はい」

黄泉川「まぁ、立ち話もあれだし、日も暮れてるし。とりあえず宮殿に入るじゃんよ」

 と、歩き出す黄泉川に、美琴たちも続いた。


――宮殿――

 美琴たちは宮殿の一室に案内された。
 さすが、宮殿というだけある、と美琴は思った。

 広々とした天井。
 シャンデリアが照らす床には、赤じゅうたんが敷き詰められ、
 部屋の中央には、優に15人は座れそうな縦長のテーブルがある。

黄泉川「みんな、そこに座るじゃん」

 うながされるまま、テーブルの横の肘掛けいすに座る。

黄泉川「よっと…」

 黄泉川は、一列に座る美琴たちの対面のいすに腰掛けた。
 ちょうど、美琴と向かい合う形だ。

黄泉川「……」

 座るなり黄泉川は、美琴をじっと見ている。

美琴「ええっと…」

 こちらを見つめる目線に、思わずどぎまぎしてしまった。

黄泉川「すごい格好じゃんね」 <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/12(金) 07:56:25.21 ID:dtTo4qVtP<>
美琴「え、ああ」

 自分の体を見てみる。
 たしかに酷い格好だった。

美琴「まぁいろいろありまして」

 笑って言った。
 今日一日で、本当にいろいろあった。
 これまでのことを振り返ってみて、改めてそう思う。

黄泉川「……いろいろ、ね」

 黄泉川もクスリと笑った。

黄泉川「そうそう。自己紹介がまだだったね」

黄泉川「私は黄泉川愛穂、国王直属隊の隊長じゃん」

初春「へぇー、隊長さんなんですかぁ」



ステイル「僕はステイル=マグヌス、旅人だ」

初春「あ、初春飾利です」

佐天「佐天涙子です」

黒子「白井黒子ですの」

美琴「御坂美琴です」

 一通り自己紹介が終わった後、黄泉川は一息ついて、
 「さっきは悪かった。不快な思いをさせてしまって…」と、切り出した。

美琴「そんな、」

 黄泉川さんは悪くないんだから、と続けようとしたが、

佐天「ほんと、なんですかあれ!? 信じられないですよ!!」

 どうやら、佐天はかなりご立腹のようだ。

黄泉川「あいつは木原数多っていう。猟犬部隊の隊長じゃんよ」

ステイル「部隊? なら、部隊長か?」

黄泉川「あー、そうそう」

 黄泉川は頭をぽりぽりかいた。

佐天「なんですか、猟犬部隊って」

黄泉川「……」

 佐天の質問に黄泉川は表情を険しくする。
 2秒ほどの沈黙の後、

黄泉川「まあ、ろくな所じゃないね」

黄泉川「特に、さっきのあいつ。部隊長木原には、私もあまり関わりたくないところじゃん」

黄泉川「とても危険な男じゃんね」

美琴「ふーん。そんな気はしてたけど」

黄泉川「うんうん、正しい判断じゃん。えらいぞ。
     まぁ、下手に彼には近づかないようにする事じゃんね」


 どうやらこの王都も、一枚岩ではないらしい。





<>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/12(金) 08:02:02.00 ID:dtTo4qVtP<> 以上、2071文字です。



しかし、台本形式+地の文だと主語をどうするか迷う。

「」の前に発言者が書いてあるから、主語省略しても意味通じるけど、
なんか違和感があるような気も。


ただ

 美琴は
美琴「」
 と、〜〜〜

とか

美琴「」
 と、美琴は〜〜〜

てもの、なんか重複しているような感じで違和感があるような <>
◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/08/12(金) 08:07:08.17 ID:dtTo4qVtP<> 主語省略ってのは、たとえば
>>81の

ステイル「」
 凛と歩きながら、
ステイル「」


みたいなのですね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/12(金) 08:47:05.64 ID:dxnPAaTEo<> 乙
エロゲとかも○○「〜〜」ってなってるからそんな感じで書いたらどうでしょう? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>age<>2011/09/14(水) 17:09:52.93 ID:y71wg4bZ0<> もうこないかもしれないけど一応age <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/14(水) 18:11:06.77 ID:qUCWSe0po<> もう一ヶ月か…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/10/11(火) 00:10:04.75 ID:GQmW8GfJo<> もうだめだ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/11(火) 00:18:43.31 ID:w8//30vJo<> 二ヶ月か… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/11(火) 00:20:31.23 ID:cAhzuphHo<> スレが途中で終わるのは虚しいな…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)
(長屋)<><>2011/11/02(水) 23:14:50.39 ID:ioI567p10<> そろそろ3ヶ月だな <> ◆HIGMAmeNBU<>saga<>2011/11/04(金) 02:49:27.24 ID:8r+i4RV3P<> 放置してしまってすみません
ちょっと私生活が忙しくなって、定期的に更新するのは難しい状態です
更新できないのにスレ残しておくのもあれなので、いったんHTML依頼だすことにします <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/11/04(金) 02:56:41.56 ID:d72D5hrpo<> 放置長すぎ
でもまたスレ立て待ってる <>