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HTML化した人:lain.
優しい まどか☆マギカ
1 :1  ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 01:05:32.22 ID:XnEBDqt+o
 このSSは、1の価値観に基づいたキャラクター全員が優しかったら、という想定の下で作品が進んでいく本編再構成モノです。

 抽象的な話で申し訳ありませんが、要はキャラクター同士がいがみ合わず、ほのぼのとした世界でお話が進んでいきます。
 一部殺伐としたキャラクターが居るかもしれませんが、ループの途中であり、徐々に角が取れていくように頑張りたいと思います。
 また、一部の設定上、どう考えてもほのぼのしない可能性もありますが、あくまでループの途中でこんな話もあったらいいな、程度の話ですので、肩の力を抜いて、そんな状況でほのぼのしてて良いのかよ、というのをぐっと堪えて読んで頂ければと思います。

 物語開始日は四月二十五日。
 ほむほむが転入するところから始まります。

 1が本編のストーリーでほのぼのできるところはしたい、というSSですので、質問が出てくるような矛盾点や疑問点は出てこないように努力しますが、何かありましたらレス頂ければ最大限改善できるように頑張ります。
2 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 01:08:35.11 ID:XnEBDqt+o
 夢を見た。
 とても不思議な夢だった。
 そしてとても悲しい気分になる。

まどか「……夢オチ?」

 良いところまで行った、と思う。
 ぼやけたまんまの記憶を思い出そうとしても、なぜだか浮かばない。
 すごく良いところでコマーシャルが入るテレビ番組を見たときの消化不良な。

まどか「とりあえず起きて学校に行かないと」

 夢のことをいくら悔やんでもしょうがない。
 と、わたしはポジティブに考えることにした。 
 憂うつなのは学校の宿題や数学の問題のほう。
 ……どうか今日は数学で先生にさされませんように。 
3 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 01:09:01.14 ID:XnEBDqt+o
 制服に着替えてから、洗面所に向かいリボンとにらめっこする。  
 どちらにしようか迷っていると、

詢子「こっち」

 と、言われる。
 可愛いけど派手な方のリボンだ。
 わたしに似合うかな?

詢子「少しくらい派手な方が良いんだ、これでまどかもモテモテだな」

 仁美ちゃんみたいに、ラブレターを貰えるような可愛さかな?
 ただ、他に好きな人がいるのか、断ってるみたいだけど。

まどか「可愛いかな?」
詢子「ああ、可愛い可愛い、私の娘なんだしな」
まどか「そっか」

 リボンで髪を結ぶ。
 今日はなんだか、良い日になりそうだ。
4 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 01:09:26.97 ID:XnEBDqt+o
 ゆっくりご飯を食べていたら学校に遅刻しそうになった。
 走って、さやかちゃんと仁美ちゃんの待ち合わせ場所に向かう。

まどか「ごめん! さやかちゃん! 仁美ちゃん!」
さやか「あんまり急ぐと身体に良くないぞー?」
仁美「少し急げば大丈夫ですから、そんなに慌てずに」

 進むスピードを抑える。
 すっかり息が上がってしまっていた。

仁美「そういうときは深呼吸ですよ、深呼吸」

 言われたとおりに、たくさん息を吸って、吐く。
 何度も何度も繰り返してみる。
5 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 01:09:52.47 ID:XnEBDqt+o
まどか「はぁー、落ちついたぁ、ありがとう仁美ちゃん」
さやか「あれ? そういえばリボン変えたの?」

 わたしは指で今朝つけたばかりのリボンを触る。

まどか「派手じゃない?」
仁美「とてもよく似合ってますわ」
さやか「うんうん、可愛い可愛い」

 その言葉と一緒にさやかちゃんが私に抱きつく。

さやか「私の嫁、いつも身綺麗にする義務がある!」
まどか「え、さやかちゃんのお嫁さんになった覚えはないよぉ」
仁美「本当にお二人は仲が良いんですね」

 不意に、寂しさを覚えた。
 わたしばかりに気を使ってくれて、さやかちゃんも仁美ちゃんも平気かな?
 だけど。

さやか「うりうり、仁美も私の嫁だぞー!」
仁美「きゃ、さやかさんってば」
まどか「ラブラブだー」

 どちらかといえば、お姫様みたいな仁美ちゃんと格好良いさやかちゃんのツーショットの方が、お似合いだと思う。
6 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 01:10:18.21 ID:XnEBDqt+o
 何とかチャイムが鳴る前に教室に駆け込むことが出来た。
 クラスのみんなと挨拶を交わしてから、自分の席に座る。
 わたしの席はさやかちゃんの一つ前。

さやか「はー、今日また数学あるんだよねー」

 私は振り向いてさやかちゃんと向き合う。

まどか「今日当たるのってこの列かな?」
さやか「昨日寝てたから解んない」

 さやかちゃんはチャレンジャーだ。

さやか「ふふふ、だが良いのさ、私には嫁が二人もいる!」
まどか「私戦力外……」
さやか「まどかは可愛いからオッケー!」

 お互いに座ってなければまた抱きつかれたかもしれない。
 そして、こういうことを言っているから仁美ちゃんが、本気で私たちがそういう関係だと思っちゃってるんだろうな。
7 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 01:17:56.35 ID:XnEBDqt+o
 先生が入ってくる。
 昨日よりも、足取りが重いような気がする。

早乙女「みなさん、今日は大事なお話があります」

 クラスに緊張が走る。
 この前置きは以前にも聞いたことがある。

早乙女「唐翌揚げにレモンをかけるか否か、はい中澤くん!」
中澤「あ、えっと、人の好みがあるのでまずは聞いてみるのが良いと思います」
早乙女「はい、その通り!」

 その通りなんだ。
 ママは唐翌揚げにレモンをかけようモノならテーブルがひっくり返るけど。
 びっくり。
 星一徹さんばりのちゃぶ台返し、被害者は主にパパ。

早乙女「良いですか女子の皆さん、くれぐれも唐翌揚げに勝手にレモンをかけるような男性とはお付き合いをしないように!」
早乙女「そして男子のみんなも、勝手にレモンをかけるような無神経な人間にはならないように!」

 先生が言いたいのはこれだけですと叫んで、おいおいと泣いてしまった。
 何とも言えない空気がクラス中を包み込んだ。
8 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 01:36:08.12 ID:XnEBDqt+o
さやか「あー、今回の相手も駄目だったんだ、なんか身につまされるねえ」
まどか「可哀想だね……って言っていいのかな……」

 少なくとも、前回のきのこたけのこ論争で別れた件よりは反応に困らなかった。
 その後クラスの一部が喧嘩になったし。

早乙女「ああ、それと、今日は転校生を紹介しまーす」

 予告通りだ。
 今日は転校生が来る日。
 どんな子なんだろうなって思ったら変な夢を見てしまった。
 きっと、転校生のイメージが美人で凛々しくてクールな感じだと思っちゃったから、世紀末都市みたいな情景と一緒に女の子が登場したんだろう。

早乙女「暁美さーん、入ってきてー」
暁美さん「はい」

 あれ?
 夢で見たような長い黒髪の、手足がモデルさんみたいに細くて、すらりとした体躯に白い肌、冷たい氷みたいな雰囲気を放っている女の子。
 あ、でもひとは見た目で判断しちゃ駄目だよね、もしかしたらすごくおとなしい子で、控えめなこの可能性もあるし。
9 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 01:36:46.30 ID:XnEBDqt+o
暁美さん「暁美ほむらです、よろしくお願いします」

 あまり感情を含んでいないのに、遠くまで響き渡る声。
 まるで役者さんが話すみたいに耳にすっと入ってくるような。
 
早乙女「それじゃあ、仲良くしてあげてくださいね」

 暁美さんが歩く。
 その姿だけで一部の子たちが骨抜きになったみたいに見とれている。
 わたしもその人たちに同調しようとしたところで、
 きっ、とこちらを見たような気がした。
 あれれ、自意識過剰かな?

さやか「あれ? あの子こっちを見たような気がする、もしかして私が可愛いから?」
まどか「私も見られたような気がするけど……」
さやか「あは、じゃあまどかが一際可愛いから目が行っちゃったんだ」

 そんなまさか。
 綺麗さで言ったらどう考えても暁美さんの方が上だし。
 多分、気のせいなんだと思う。
 でも、随分と心に残るって言うか、不思議な感じ。
 芸能人の人とかに見られたらこんな気分になるのかな?
10 :1   ◆.yNNQJjyLiF72011/06/09(木) 01:37:43.58 ID:XnEBDqt+o
本日はここまで。
更新は不定期ですので、気長にお待ち頂ければ幸いです。
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)[saga sage]:2011/06/09(木) 01:40:11.26 ID:zLhgMwjR0
乙 虚淵に負けずがんばれ
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/06/09(木) 07:26:01.26 ID:lVCJZwcDO

これは期待
13 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 09:50:44.77 ID:qsaXy1geo
>>11
>>12

 虚淵さんにはどう考えても負けるとは思いますが頑張ります。
 今回の更新では登場しませんが、さやかの一人称が私→あたしになります。
 チェックしていたと思ったのに、私になってました。申し訳ありません。
14 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 09:51:10.81 ID:qsaXy1geo
 休み時間になると、一人の女の子が暁美さんに近づいていった。
 彼女の名前は榊美弥ちゃん。
 学園新聞部に所属していて、日々スクープを追っている女の子である。

美弥「あのー、ちょっと良いかな」
暁美さん「何かしら」
美弥「クラスのみんながね、聞きたいことがあるって言ってるから答えて欲しいんだけど、今時間は大丈夫かな?」

 普段は怖いモノ無しにどんどん突き進むタイプの子だけど、転校生ということも手伝って、積極的には聞けないみたいだ。
 でも、朝のホームルームから、さっきの一時間目の授業中に、いつクラスのみんなに聞きたいことを聞いたんだろう?

さやか「あ、ごめんまどか、まどかに手紙回すの忘れた」

 さやかちゃんに聞いてみると、そんな答えが。
 それを聞いて考えてみると、みんなに回しているみたいだし、聞きたいことが重なってしまうだろうから、大丈夫だったのかな、と思う。
 それに、さっきはどことなく夢のことを思い出そうとして上の空だったし。 

まどか「だいじょうぶだよ、お誕生日とか聞こうかなって思ったし」
さやか「その質問はなかったなあ」

 ……無かったの?
15 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 09:51:36.79 ID:qsaXy1geo
美弥「それじゃあ、一つ目の質問」

 暁美さんの許可を貰ったとのことで、美弥ちゃんはどんどん話を進めていく。
 クラスの殆どの子が聞き耳を立てて、一挙手一投足に注目をしている。
 そんなに見られてたら、わたしだったら緊張しちゃうな、そんな感想を抱いた。
 ちなみに最後の質問まで、誕生日のことは聞かれなかった。
 パーソナルデータだからかな? 3サイズの質問はあったけど(ノーコメントという回答だった)

美弥「今日の下着の色は?」
暁美さん「……」

 わたしはさやかちゃんを見た。
 さやかちゃんは首を振った。
 再び暁美さんと美弥ちゃんの二人を見始める。
 クラス中からなんだかなあ、みたいな空気が流れ始めた。

美弥「ごめん、すべった」

 どうやらアドリブだったみたいだ。
 
暁美さん「ごめんなさい、ちょっと緊張しちゃったみたいで気分が悪くて、保健室に行かせて貰えるかしら」

 静かな空気に耐えられなくなったのは、わたし達も、暁美さんも同じだったみたいだ。
 その時、とんとんと肘で小突かれる。
 さやかちゃんだ。

さやか「保険委員でしょ」
まどか「あ、そうだったね、暁美さん、保健室まで案内するよ」
16 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 09:53:06.15 ID:qsaXy1geo
 わたしが声をかけたときに暁美さんは驚いた様子だったけど、すっと一分の無駄もない動きで立ち上がると、差し出したわたしの手を取った。
 よく考えると、べつに保健委員だからって保健室まで案内する必要はないのかな? って気がついたけれど、きっとさやかちゃんは、わたしが授業中に上の空だったことを覚えていてくれたんだろう。
 夢の中で会ったような、なんて恥ずかしくて言えないから、少しだけ時季外れの転校生が気になっていることを察してくれたんだろう。
 いくら感謝をしてもしたりない。

まどか「こっちだよ」

 わたしが先頭で暁美さんがその次。
 ざわめく廊下を通り抜け、周りに人通りが無くなったところで、不意に自己紹介がまだだったな、と思い出す。

まどか「あ、ごめんね、自己紹介がまだだったね、わたしは鹿目まどか、名前で呼んでくれると嬉しいな。それと、暁美ほむらさん、だよね?」
暁美さん「え、ええ」

 何だろう、何かを言うことを戸惑っているような。
 口を開いたり閉じたり、その時、あ。と気がつく。

まどか「ごめん、手を繋ぎっぱなしだったね」

 初対面なのに馴れ馴れしすぎたかな。
 わたしが離そうとすると、手が強く握られた。
 あれ?
17 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 09:53:33.02 ID:qsaXy1geo
暁美さん「まどか……さん」

 暁美さんがわたしを呼ぶ。
 何かを決意したような、強い意志を感じる表情で。

暁美さん「ほむらでいいわ」
まどか「ほむら……ちゃん?」
ほむら「その、家族や友達のことを大切に思っている?」

 顔を赤くしたほむらちゃんに尋ねられる。
 
まどか「もちろん、大切だよ、みんな大好きだもん」
 
 突然どうしたんだろう、とも思ったけど、きっとこれは真剣な話なんだ。
 分からないけど、何かを伝えようとしてくれている。
 わたしも頑張って応えるようにしよう。

ほむら「そう、なら、この先、何があろうとも自分を変えようと思ってはだめ、でなければ、あなたの大切なものを……すべて失うかもしれないわ」

 との言葉と同時にお互いの手が離れる。
 わたしはなんだか、残念だなって思った。
 保健室に入っていく後ろ姿を眺めて、自分を変えるってどういうことなんだろう? と考える。
 だけど、チャイムが鳴ってしまったので慌てて教室に戻った。
18 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 09:53:58.69 ID:qsaXy1geo
 今日一日で、ほむらちゃんの名前は学年中に知られたかもしれない。
 授業中にさされれば淀みなく答えを述べて、体育の授業ではクラスの誰もが驚くくらいに大活躍……陸上競技で大活躍と言っていいのか、とにかくすごい動きを見せた。
 こんな状態で、わたしに対して何かを忠告してくれた、なんて言おうものなら、ファンクラブの子に後ろから刺されちゃうかもしれない。

まどか「……というわけなんだけど」

 そこで周りに人が少ない、放課後のカフェテリアでさやかちゃんと仁美ちゃんに打ち明けてみる。
 ぽかんと口を開いたさやかちゃんに。
 驚きを隠せないといった態度の仁美ちゃん。

さやか「はぁー、そんなドラマみたいな話があるんだねえ」
仁美「まどかさんは、どうしたいんですか?」
まどか「うーん」

 とりあえず仲良くはしたいなと思う。
 他にどうなるかはまだ分からないけど。

まどか「仲良しになりたいかなあ」
さやか「まどかならだいじょびだいじょび」
仁美「ええ」

 うん、確かに二人に励まされるとだいじょうぶだと思えてきた。
19 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 09:54:24.33 ID:qsaXy1geo
 習い事があるという仁美ちゃんと別れ、さやかちゃん希望のCDショップへ。
 わたしの好きなCDとさやかちゃんの求めるCDはそれぞれ別の所にあるので、お店の中でまずは別れる。
 演歌ならオススメをいくらでも語れるけど、クラシックはじゃじゃじゃじゃーんしか分からない。音楽の授業でいろいろやったけど、ろくに覚えられてない。
 
???「助けて!」

 どこかから声が聞こえてきた。
 辺りを見る。
 誰かが私に言ってきた様子はない。
 どこから言ってるんだろう、誰が伝えたんだろう?
 
まどか「どうしよう……さやかちゃんはまだ見てるかな」

 もしも一刻を争う事態だったら……。
 ううん、でも、さやかちゃんにも言わないと、勝手に帰っちゃったと思われちゃうならともかく、探されちゃうと大変だ。
 でも、人の命には代えられない、そう決意するとCDショップを飛び出した。

まどか「どこだろう?」

 声は確かに聞こえてるのに、どこにいるのか分からない。
 きょろきょろと見回して、近くにある改装中の建物が目についた。
 あそこかな?
 根拠もないけどそんな気がする。
 迷っている間にさやかちゃんが近づいてきた。
20 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 09:55:10.34 ID:qsaXy1geo
さやか「どうしたのまどか」
まどか「あそこから助けてって声がするの!」
さやか「よし分かった」

 そう言ってさやかちゃんはわたしのおでこに手を伸ばした。
 ……あれ?

さやか「熱は……ないみたいね? かといって嘘を言ってる様子もない」
まどか「え、さやかちゃんは聞こえなかったの?」
さやか「うん」

 どうしよう、思い違いだったにしても気が全然収まらないよ……。
 そんなわたしの手をさやかちゃんが握ってくれた。

さやか「わかった、まどかがそう言うんならそうなんでしょ、一緒に行ってあげるよ、あそこだよね?」
まどか「いいの?」
さやか「いいよいいよ、それに改装中の建物に入るとか、どきどきするし」

 あ、興味本位だったんだ。
 それでも、一緒に行ってくれるさやかちゃんが心強かった。
21 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 09:55:36.31 ID:qsaXy1geo
 建物の中はしんと静まりかえっている。
 さっきまで声が聞こえていたと思ったけど、それも止んでしまった。
 アレ、と首をひねっていると、さやかちゃんが消化器を手に取っていた。

まどか「……ど、どうしたのそれ」
さやか「武器」
まどか「え、鈍器……?」
さやか「中身をかけるんだよ、さすがにこんなの振り回せないし」

 さやかちゃん消化器を扱えるんだ。
 わたしは一度も機会が無くて、もし火事になっても使えるかどうか分からないよ。

さやか「どこから聞こえるの?」
まどか「あっち」

 正しくは聞こえていたになってしまったけど。
 手遅れになる前に駆けつけたい、携帯のバッテリーの量も問題は無さそうだ。
 これですぐに連絡が取れる。

さやか「あれ? 足音が聞こえない?」
まどか「本当だ……」
さやか「管理の人とかかな? 見つかったらまずくない?」
まどか「うん、でも、どうしよう!」
さやか「人がいるならだいじょうぶ、今すぐ逃げよう!」

 奥へ続く道から引き返す。
 何となく後ろ髪を引かれる思いがしたけど、さやかちゃんにまで迷惑をかけるわけにはいかない。
 そしてドアを抜けようとしたその時に、わたしは――
22 :1   ◆.yNNQJjyLiF72011/06/09(木) 09:57:21.01 ID:qsaXy1geo
投下終了です。
名前だけのオリキャラですが、ただの美樹さやかの名前を並べ替えただけの人物なので今後出番はありません。
それではまた、完成次第投下をします。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/06/09(木) 13:59:47.44 ID:zgZDH5juo
乙っち乙まど
このジャンルはほのぼのが逆に新しいんだよなぁ
24 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 15:11:54.60 ID:/rG2cjDso
 出口から抜け出したと思ったのに、見慣れない風景が周りに広がっている。
 空気がどことなくおかしい。
 感じたことのない不安で震えが来そうだ。

さやか「ま、迷ったのかな」
まどか「そうだね、迷ったんだよね……?」

 二人して、この場所がおかしな風景であることに気がついた。
 もしかしてわたしのせいでさやかちゃんを危険な目に。

さやか「よもやこの消化器が異世界の入り口のキーアクセサリになろうとは」
まどか「アクセサリにしてはさすがに大きすぎない……?」
さやか「いや、まどかに聞こえたという声、そしてこの消化器……まさにファンタジー!」

 むしろ消化器は、現実から来たんだと意識させるにふさわしい材料だと思う。
 慌てているんだろうな、さやかちゃんのテンションがさっきから三割増し。
 空元気なんだろうけど。

さやか「前へ進むか、後ろに進むか、どっちだと思う?」
まどか「出口に行ったらここに入っちゃったんだから……むしろ進むべきかな」
さやか「奇遇! あたしもそう思ってたとこ」

 二人で手を繋いで前へと進む。
 もう二度と、元の世界へと帰ることが出来ないんじゃないか、そんな不安を胸に抱えながら。
25 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 15:12:20.71 ID:/rG2cjDso
 しばらく進んだ先に、花のような異世界生物がいた。
 さやかちゃんの機転で消化器の中身を噴射させると、怒り狂ったようにこちらへと突っ込んできた。

まどか「わ、わ、消化器、消化器おいて逃げないと!」
さやか「命あっての物種よね! えーい!」
 
 と、ここでその生物に向かってさやかちゃんは消化器を投げつけた。
 しかし急いでいたせいで、かすりもせずに奥へと転がっていく。

さやか「さやかちゃんあーっと!」

 大暴投。
 この場で何となく実況できるんだから、まだわたし達は余裕があるんじゃないかと思えてきた。
 ありがとうさやかちゃん、わたしも元気出たよ。

さやか「ダメだ! 追いつかれるよ! ここはあたしに任せて逃げな!」
まどか「ダメだよさやかちゃん! 二人で一緒に逃げないと」
??「その通りよ、ここは私に任せて、さ、後ろへ!」

 お嬢様みたいなくるくるとした髪をぶら下げた、綺麗な女の人がわたし達を誘導する。
 何だろうあの格好、アニメとかゲームの制服みたいに、現実感がない。
 
さやか「コスプレさんに、モンスター! もう、あたしたちってホントファンタジー!」
まどか「ファンタジー好きだねさやかちゃん……」 
26 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 15:13:00.36 ID:/rG2cjDso
 長い銃みたいなのを二つ持って、花みたいな異世界生物を打ち砕いていって。
 コスプレさんとモンスターとの戦闘は一瞬で終了した。

??「危ないところだったわね、だいじょうぶ?」

 さやかちゃんに反応はない。
 どうやら言葉も出ないみたいだ。
 わたしも安心したのと、さっきまで走っていたのとで息も絶え絶え。

??「でも間に合って良かったわ、キュゥべえがいないのは残念だけど」
さやか「はぁ……きゅーべー?」
??「私のお友達なの、白くて耳と尻尾の長い動物を見なかった?」

 わたしもさやかちゃんも首を振る。
 そんな不思議な生き物が地球上に存在するのかな?
 いやぁ、でも、さっきの花みたいなモンスターも地球上に存在しないだろうから同じか。

まどか「それにしてもありがとうございます、おかげで助かりました」
さやか「あ、自己紹介がまだでしたね、あたしは美樹さやか、こっちは鹿目まどか」
マミ「私は巴マミ、あなたたちと同じ見滝原の生徒よ」

 こんなに綺麗な人だったら有名な人なのかもしれないな。
 その、格好が不思議だし。

マミ「そして、キュゥべえと契約した魔法少女」
まどか「魔法少女……?」
さやか「そんなまさか」
27 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 15:14:19.78 ID:/rG2cjDso
 マミさんは見滝原中学に通う三年生で、魔法少女。
 今まで普通に生きてきたと思ってたけど、まさかこんな所で非現実に足を踏み入れるとは思わなかった。
 ――何があろうとも、自分を変えようだなんて思ってはだめ。
 不意に、ほむらちゃんの声が聞こえたような気がした。

さやか「な、なんでやねん」
マミ「ボケじゃないのよ?」
まどか「わたし、魔法少女っていう職業の人はじめて見ました、さやかちゃんも同じだと思います」
さやか「あー、すみません、なんかテンパっちゃって」

 マミさんは優雅に笑い、そして、一瞬のうちにわたしたちと同じ制服姿に戻った。
 すごい、どんな手品なんだろ?

さやか「まどか、すごい手品だなって思ってない?」
まどか「わ、すごい、わたし声に出してた?」
さやか「すっごいぽかんってしてるもん」
マミ「あなたたち二人ともそうよ」

 ボケボケな二人組だな、って思われてるのかもしれない。

まどか「マミさんはその、キュゥべえっていう子を探しているんですか?」
マミ「ああ、そういえばそうだわ、つい話し込んじゃった、鹿目さん、美樹さんちゃんとまっすぐ帰るのよ?」
さやか「はい、帰ります!」
まどか「わかりました」
28 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 15:14:45.86 ID:/rG2cjDso
 マミさんと別れたあと、見覚えのある後ろ姿を見つけた。

さやか「あれは、転校生の暁美ほむら嬢でござる!」
まどか「ござるって」

 疲れてるだろうに、わたしを元気付けるためにさっきからさやかちゃんは変なテンションでいる。
 そんなに気を使わないで良いのにな。
 それともわたし、そんなに疲れているように見えるかな?

ほむら「……?」
まどか「こんにちはほむらちゃん、今帰りなの?」
さやか「デュフフ、拙者たちとお茶でも飲みますかなクポォ」

 もしかしたらさやかちゃんの素がこんな感じなんじゃないかと思えてきた。

まどか「ごめんね、さやかちゃんちょっと今おかしいの」
さやか「せっかく緊張感を和らげようとしたあたしの作戦がおかしいと!?」
ほむら「……ええ、ちょっとおかしかったんじゃないかしら」
さやか「まさかのダブルパンチ!? さやかちゃんちょっと泣いちゃいますよ?」

 そうやって道端で膝を抱えて目を手で覆う。
 周りの人の視線がちょっと痛い。
 しかしそんな姿もどこ吹く風、ほむらちゃんはそのまま歩き出した。
 これはきっと、わたしも追った方が良いよね? 
 ごめんね、さやかちゃんの身体を張ったボケはわたしが汚名返上するから!

さやか「いってらー」
29 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 15:15:12.07 ID:/rG2cjDso
 ほむらちゃんと並んで歩く。
 会話はお互いにない。
 
まどか「ねえ、ほむらちゃん」

 答えはなかった。
 無視されてるとしても、とりあえずは聞こえるよね?
 わたしは言葉を続けることにした。

まどか「わたしね、自分が変わっちゃいそうな出会いをしたんだ」
ほむら「……」
 
 口は閉じたままだけど、こちらを心配そうに見ている。
 ほとんど表情は変わらないけど、そんな風な気がする。

まどか「もしかして、ほむらちゃんって……」
ほむら「援助交際って、良くないと思うわ」

 え?

ほむら「違った?」
まどか「ち、ち、違うよ! そ、そういうんじゃない!」

 あー、確かにそれと同じくらいうさんくさい話だ!
 ここで、もしかして魔法少女なの? なんて言わなくて良かった!
 そうしたら、ほむらちゃんのテンションダダ下がり、クールな目でじっと見られて鼻で笑われちゃうかもしれない。

ほむら「そうなの、でも、自分の身体は大切にした方が良いわ」
まどか「そ、そうだね! 援助交際じゃないけど!」
ほむら「否定するところがまた、怪しいわ」
まどか「わ、わわ、これ以上はドツボコースな気がするよ……」
30 :1   ◆.yNNQJjyLiF72011/06/09(木) 15:16:07.21 ID:/rG2cjDso
 結局、その先の道でほむらちゃんとは別れた。
 うう、これじゃあ志半ばで逝ったさやかちゃんが浮かばれないよ……。

さやか「何か失礼なこと考えてない?」
まどか「わわ! さやかちゃん付いてきてたの?」
さやか「あたりめ前田のクラッカーっての、ふふ、進展はありましたかな?」

 わたしは首を振る。

さやか「そっかー、クールそうだもんねえ、人を寄せ付けないタイプっていうか」
まどか「そうなのかなあ……」
さやか「ま、拒絶されてるわけじゃないんだから、一回一回チャレンジしてみれば良いんじゃない?」

 そうだね。
 今日は駄目だったかもしれないけど、明日話しかけたらお話いっぱい出来るかもしれない。
 ここで諦めちゃいけないよね。

さやか「まあ、まどかはあたしの嫁だから譲るつもりはないけどね」
まどか「ええー!?」
さやか「あたしを放って置いた罰として一緒に帰るのだー!」

 そうして、暗くなる前におうちに帰った。
 今日はいろんな事があって疲れちゃったな……。 
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県)[sage]:2011/06/09(木) 16:59:16.50 ID:6VDYa+gpo
ほむらちゃんかわいい
32 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 21:35:19.14 ID:vwb9S0iro
 昨日の異世界にわたしは立っていた。
 そしてほむらちゃんがいた。
 マミさんもいた。

まどか「ほむらちゃん! マミさん!」

 わたしはふたりを追いかけている。
 でも、ぜんぜん追いつかない。

ほむら「あなた、援助交際をしているんですって?」
まどか「してないよ! そんなこと!」

 濡れ衣だ。
 それにそれは、ほむらちゃんが言い出したことだ。
 これっぽっちも本当の事じゃない。

マミ「私は魔法少女、魔物も許さないけど、エンコーも許さないわ」

 そういってマミさんは私に銃を向ける。
 そんな、それは人に撃つものじゃないでしょ?

マミ「くらいなさい」
ほむら「自業自得よ、まどか」
まどか「いやぁぁぁぁぁぁ!」

 わたしは銃で撃たれてしまい。
 そのまま――。
33 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 21:35:45.94 ID:vwb9S0iro
まどか「夢オチ……?」

 とても嫌な夢を見た。
 ただ、殺されちゃう夢って縁起が良いんだっけ?
 目覚めは最悪だから、そう思わないとまた布団をかぶりたくなってしまう。
 とにかく起きないと。

まどか「はぁー、今日はほむらちゃんと仲良くできるかなあ」
 
 起きたは良いけど身体がだるい。
 それに足が痛む、筋肉痛かな?
 筋とかを痛めてないと良いんだけど。

まどか「それに……」

 マミさん。
 昨日みたいなのと戦ってるのかな?
 誰にも分からないところで一人でいるとしたら、きっとものすごく怖いんだろうな。
 でも、魔法少女って他にもたくさんいるのかな?
 まさかマミさん一人でこの町を守ってるわけじゃないだろう。
 大都市ってワケじゃないけど、それにしたって中学三年生が守るには広すぎるはずだ。
 わたしにも何か出来ること無いかな……?
34 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 21:36:23.86 ID:vwb9S0iro
 学校に向かう途中でさやかちゃんや仁美ちゃんと合流した。 

仁美「あら? まどかさん、走り方が変でしたね?」
まどか「うん、ちょっと身体が痛くて」
仁美「さやかさんも身体が痛いと仰ってましたし……」

 ああ、さやかちゃんも筋肉痛なんだ。
 ということは、昨日のことはわたしだけが体験した夢の中の事象じゃないんだ。
 やっぱりわたしに出来ることなんか無いかなあ……。

まどか「ちょっと、身体を動かして」
仁美「お二人で?」
さやか「うん、だから仁美が考えているようなことは一つもないから」

 先回りしてさやかちゃんが答える。
 仁美ちゃんが考えている事って何だろう?
 顔を真っ赤にして恥ずかしさを隠してる風だったから……うん、よくわからない。

仁美「それは、お二人だけの秘密と言うことですか?」
さやか「はいはい、秘密秘密」
まどか「秘密……うん、そうだよね」

 仁美ちゃんを巻き込むわけにはいかない。
 わたしが一人決意をしていると、さやかちゃんが後ろでため息をついてた。
 あれ?
35 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 21:37:34.83 ID:vwb9S0iro
 教室に入るまで、ほむらちゃんの姿を探したけど、どこにも見当たらなかった。
 もしかして迷ってたりするのかな?
 きょろきょろと辺りを見回して、それから姿が見えないのを確認してため息をついた。

さやか「ご執心だねえ」
まどか「わ、な、何のこと?」
さやか「アケミンの事でしょ? いやぁ、お熱いわー」

 アケミンって、そんなあだ名ぜったいおかしいよ。

仁美「アケミン……それは、二人の間だけに伝わる秘密のキーワードなんですか?」
さやか「昨日来た転校生さんのあだ名だよ、絶対いいと思うんだけどな」
仁美「暁美さんだから、アケミン……栄養素でありそうですね」

 確かに。
 コラーゲンとかヒアルロン酸とかと一緒で美容に良いに違いない。

さやか「まどかも納得したような顔をしてるし……」
ほむら「何を納得したのかしら、気になるわ」
さやか「うわっ、ホムラン!」
ほむら「……それ、私のあだ名なのかしら」

 ほむらちゃんは不満そうだ。
 確かに、淡々と感情が動かない人に対して、少しファンシーすぎるあだ名だと思う。
 どうせあだ名を付けるのならもっと格好良いような……。
 もっと格好良いような……。

ほむら「私のことは名前で呼んで」
さやか「せっかく夜眠らずにあだ名を考えたのにぃ」
ほむら「一晩考えてそれなのかしら?」

 さすがほむらちゃん、容赦が全くなかった。
 さやかちゃんはうなだれてしばらく喋らなくなった。
36 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 21:38:08.77 ID:vwb9S0iro
 わたしはほむらちゃんにお願いしてお昼ごはんを屋上で食べることにした。
 断られるかなと思ったけど、一生懸命にお願いしたら最終的には頷いてくれた。

まどか「えへへ、嬉しいな」
ほむら「どうして、私にこんなにも関わろうとするの?」
まどか「なんでだろ? なんでかな、なんだかすごく気になっちゃったの」
ほむら「変な子ね」

 ほむらちゃんのことを知りたくて、休み時間に集めた情報によると、
 以前までは心臓が弱くて、入院しがちな生活を送っていたみたいだ。
 ろくに学校にも通うことが出来なかったらしいけど、退院してからは元気いっぱい。
 ……元気いっぱいとは普段のクールさからすると違和感があるけど、運動も出来るし、勉強も出来るし。
 きっと病院でリハビリを一生懸命に頑張ったんだろうな、って思う。

まどか「そうだ、お弁当の具、交換しない?」
ほむら「市販のお弁当と手作りのモノを交換するわけにはいかないわ」
まどか「そういうのは関係ないよ、おともだちだから交換するんだよ」
 
 わたしの言葉を聞いて、ほむらちゃんはしばらく考えるような仕草を取ったけど。
 やがて頷いて、わたしの方に肉団子を差し出した。
 どれにしようか迷ったけど、一番好きなおかずをほむらちゃんにあげた。
 とても喜んだ様子だったので、本当に良かったって思った。
37 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/09(木) 21:38:42.99 ID:vwb9S0iro
さやか「うまく行った?」

 クラスに帰って自分の席に座るなりさやかちゃんに聞かれる。
 わたしは自信を持って頷いた。

さやか「良かったじゃーん……でも、あたしとの距離はなんかまだある気がする」
まどか「大丈夫だよ、わたしも仲良くなれたし、さやかちゃんも仲良くなれるよ」
さやか「いいもんいいもん、あたしは昨日出会ったマミさんのおっぱいに満たされるんだー!」

 あ、やっぱりさやかちゃんも大きいって思ってたんだ。
 一つ年が離れるとこんなに差が出るのかな、ってお風呂上がりに自分の胸を見てみたけど、
 さやかちゃんもそうしたのかな?
 
仁美「マミさん?」
さやか「先輩なんだって、もう、仁美よりもすっごいの」
仁美「まあ、それは大変ですね」

 大変なんだ。
 そうなんだ。

ほむら「……」
まどか「ほむらちゃん?」
さやか「大丈夫だとほむら、まだまだ成長期だから!」
ほむら「やっぱり、援助交際なのね……」
さやか「マジで!? まどかマジで!?」
まどか「ち、違うよ! 確かに大きいなあとは思ったけど、そ、そういう関係じゃないよ!」
仁美「まあ! ではもっと健全な関係なんですか?」

 ほむらちゃんはわたしをからかう天才だと思う。
38 :1   ◆.yNNQJjyLiF72011/06/09(木) 21:39:25.78 ID:vwb9S0iro
 授業中に集中力が途切れたのでもう一度考える。
 なんだか、マミさんの話をしたり、魔法少女とかの話をしようとするとほむらちゃんはごまかすように……え、援助交際云々という。
 確かに、そういう事をしている同学年の子もいるって噂で聞いたことがあるけど、少なくともわたしの周りではないはずだ。
 やっぱり、ほむらちゃんは何か知ってるのかな?
 何かを変えるっていうのは、魔法少女のことなのかな。
 確かに、あんなモンスターと戦うことになったら人生は一変しちゃうだろう。
 でもでも、もしも昨日みたいな目にもう一度遭っちゃったら?
 マミさんが間に合わなかったら?
 さやかちゃんが被害にあったら?
 それだけじゃない、お友達や家族が被害にあったら?
 わたしも、マミさんみたいに戦えたら良いのかな?
 でももし、わたしが死んじゃったらみんな悲しんじゃうよね……。
 その時、ほむらちゃんの顔が浮かんだ。
 せっかくお友達になれたんだ。
 お弁当の具を交換したら喜んでくれたんだ。
 もし、ほむらちゃんが魔法少女なら、一緒に戦えば怖くないかな?
 もしもほむらちゃんが、昨日の魔物に襲われちゃったりしたら、
 なんだか、自分が襲われるよりも怖いような気がした。

先生「鹿目ー、聞いてるのか鹿目ー?」
まどか「あ、はい!」
先生「……教科書のP28から俺が良いと言うまで音読しなさい」
まどか「はい……」
 
 遠くにある非現実よりも、近くにある授業の方がよっぽど考えるべき問題だった。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県)[sage]:2011/06/10(金) 21:09:52.55 ID:yqK9YBI3o
続きが気になる
40 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/11(土) 23:14:26.40 ID:M9uZpWPCo
 放課後。
 さやかちゃんがうなだれていた。
 わたしもがっくり来ていたけど、反応する気力も無しといった風の姿を見てるとそうも言ってられない。

さやか「どうしてまどかより、あたしの方が宿題が多くなったのだ!」
まどか「そりゃあ……寝てたからじゃないかな?」
さやか「それはわかってる! しかし! ばれた理由はまどかがぼーっとしてたから!」

 授業中指されたことに気づかなかったわたしを注意しようと思ったのだろう。
 先生はゆっくりと近づいてくると、熟睡しているさやかちゃんを見つけた。
 とばっちりで不正を見つけられたと主張したいみたいだけど。

仁美「どう考えても、寝ていたさやかさんが悪いです」
さやか「ぎゃーっす! 正論を言うなー!」
ほむら「見苦しいわ、素直に宿題を解けばいいじゃない」
さやか「解ける宿題ならやる必要ないはじゃない!」

 今できるならずっと後でもできるからする必要はないって事だろうか。
 そうやって油断してるからテストの時ケアレスミスで後々泣いちゃうことになるのに。
 と、ここでほむらちゃんの方から合流したことを嬉しく感じる。
 お昼を一緒に食べたのが良かったのかな。

まどか「ほむらちゃんも一緒に帰る?」
ほむら「ええ、でもこれはあくまでも監視の一環よ」
さやか「まどかのまさかの援助交際疑惑だもんね……嫁のあたしも気になる!」
仁美「お稽古事で見守れないのが残念です……」

 いや、だからしてないからね?
 絶対してないからね?
41 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/11(土) 23:16:36.17 ID:M9uZpWPCo
 仁美ちゃんと別れたあと、先日買えなかったCDが欲しいというさやかちゃんと一緒に、
 昨日来たばかりのお店に向かうことになった。
 買おうとしていたものを置いてでもわたしを追いかけてくれたことを喜びながら、
 そういえば、ほむらちゃんはどんなCDを聞くのかなと思った。

まどか「ほむらちゃんは何か気になるものとかある?」
ほむら「そうね……まどかのおすすめは何かしら?」
まどか「わたしは演歌が好きだから、もしかしたら趣味が合わないかもしれないよ?」
ほむら「私も懐メロといわれる曲の方が好きだから大丈夫よ」

 お店には行ってしばらく、クラシックのCDが置いてある場所に向かうさやかちゃんと別れ、
 わたし達は買うわけでもなく、歌手の名前順に陳列されたゾーンを順々に回っていた。
 たくさんのCDを眺めながら、そういえば昨日見たドラマでこんなシーンがあったことを思い出す。
 端から見たら、恋人同士に勘違いされちゃう、なんてことないよね?

ほむら「……? どうしたの顔が赤いわ」
まどか「えと、その、なんだろう」
ほむら「何か言いたいことでも?」
まどか「ううん、楽しいなあって」

 ほむらちゃんはわたしとは違う方向を見ながら。

ほむら「そう、私もよ」
まどか「えへへ、そうなんだ、よかったぁ」
42 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/11(土) 23:21:15.28 ID:M9uZpWPCo
 今日は気分が乗らないから買わないというさやかちゃんに、
 悪いことをしちゃったかなと反省をしながら歩く。
 通りかかった建物の上をつい何気なく見ると、

まどか「わ、わ、ひ、人が!」
さやか「な、な! まずいよあの人、飛び降りようとしている!」
ほむら「すぐにここから離れて! 巻き込まれたらあなたたちまで死ぬわ!」

 なにか! 何かわたしにもできることはないかな!?
 そう考えて足が鈍る。
 さやかちゃんは素早く対応して、わたしの腕をつかみ抱き寄せる。
 温かい身体に包まれたわたしは、何も聞かない、何も見ないように目をぎゅっと閉じた。

マミ「はあ!」

 掛け声一閃。
 最悪の状況を予想したけど、いつまで経っても反応がないさやかちゃんを怪訝に思い顔を上げると。 
 そこには昨日であったマミさんと、探していると言っていた白い不思議な生き物が目に入った。

まどか「え、あれ?」
マミ「間一髪といったところね」
さやか「大丈夫なんですか?」
ほむら「……気を失ってるだけみたいね」

 おそるおそる見ると、女の人は倒れてはいたけど命に別状はなさそうだ。
 何をしたのかは分からなかったけど、あんな高いところから落ちた人を助けるなんて、
 やっぱりマミさんは魔法少女なんだろう。

マミ「この女の人なら大丈夫、危険だからあなたたちはすぐにここから離れなさい」
ほむら「言われなくてもそうさせて貰うわ」
さやか「さすがにあたし達じゃ何も出来ないね、まどか、ここは帰ろう?」

 わたしは頷くしかなかった。 
 ほむらちゃんがものすごく怖い顔で、わたしを見ていたから。
43 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/11(土) 23:22:31.69 ID:M9uZpWPCo
 昨日みたいに変な魔物に襲われたら、と考えたら眠れなくなって、夜中に目が開いてしまった。
 さっきまで宿題をやっていたから眠いはずなのに、どうしても休めない。
 こんな時間に散歩にも出かけられないしな……。
 仕方がないので電気を消したままで窓まで近づいて、空を見上げた。
 大きなお月様がわたしを照らしている。

まどか「何の才能もないから……わたし」

 ほむらちゃんみたいに頭が良くないし運動神経も良くない。
 さやかちゃんみたいに明るくて、人を元気にさせることもない。
 仁美ちゃんみたいに、クラスの委員長も務めるみたいにまとめ役にもなれない。
 マミさんみたいに、人知れず誰かを守れるような力もない。

マミ「こんばんは、ちょっと良いかしら?」

 考え事をしていると突然目の前にマミさんが現れた。
 ――へ?
 ここ二階なのに。
 どうしてこんなところにいるの?

マミ「窓、開けてもらえる?」
まどか「あ、はい!」
マミ「ふふ、小さな声で、電気もつけなくて良いから」
44 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/11(土) 23:23:17.42 ID:M9uZpWPCo
 マミさんがわたしの部屋にいる。
 ものすごく不思議な気分。

マミ「元気が無さそうだったから見に来たの」
まどか「そ、そんな風に見えますか?」
マミ「ええ、自分には何もできないんじゃないかーって、そう思ってるみたい」 
まどか「え、えと、それは、そうじゃないんですか……?」

 不安になる。

マミ「実はね、鹿目さんに謝りに来たの」
まどか「え、何をですか?」
マミ「今日ね、飛び降りた人がいたでしょう? あれはあなたたちより前に見つけていたの」

 驚いて言葉が出ない。

マミ「キュゥべえがね、鹿目さんには才能があって、すごい魔法少女になるってそう聞いてね」

 勧誘をしに来たの。
 とマミさんは続けた。

マミ「でもね、鹿目さんが魔法少女になるって事は、私と同じ事をさせるって事に気がついてね」
まどか「何か……いけないんですか?」
マミ「優しいのね、でも、普通に考えたらいけないことだらけなのよ」

 マミさんは訥々と語り始める。
 第一に、危険。
 マミさんは簡単に敵を倒していたように見えたけど、あれは命がけの作業なんだって。
 第二に、孤独。
 魔法少女は、誰にも理解されない、誰にも信じてもらえない仕事を延々と続けるんだって。
 
マミ「でもね、一番は美樹さんや暁美さんがあなたを守ろうとしたことなの」
まどか「え?」
マミ「魔法少女の姿でもない人が、鹿目さんが嫌な目に遭わないようにって必死に守ろうとしてるのを見て」

 ――あ、私はこの人を魔法少女にしちゃいけないし、戦う資格もないんだって。
 マミさんは、悲しそうな表情のままでいった。
45 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/11(土) 23:23:50.52 ID:M9uZpWPCo
まどか「でも、でもわたし、マミさんみたいな力が得られるんだったら……」
マミ「ありがとう、そういって貰えるだけでも嬉しいわ、私はまだ戦える」
まどか「マミさん孤独だって、寂しいんですよね? だったら」
マミ「ふふ、実はね、誰かは秘密だけど、私と戦ってくれる人を見つけたの」

 え?
 
マミ「本当はね、先の出来事のあと、もう戦うのが嫌になったの、自分が浅ましいって思えてきて」
まどか「そんな! マミさんはこの町を守ってるんですよね? 浅ましくなんて無いですよ!」
マミ「守ろうとしていた人を利用して、あなたを自分の仲間にしようとしたのよ、自分の利益のためだけに」

 マミさんは自嘲しているかのように、笑い声混じりで話す。

マミ「自分がやるせなくなって、一人でいたら、頬を引っぱたかれたわ、あなたがこの町を守らないでどうするのって」
まどか「その人も……魔法少女なんですか?」
マミ「ええ、私にはそんな資格無いって言ったら、だったら二人で戦いましょうって、不思議よね」
まどか「不思議?」
マミ「ほとんどの魔法少女ってお互いいがみ合っているの、信用出来ない人ばかりなのよ」

 驚いた。

マミ「魔法少女は利益のために戦う、正義の味方でも何でもないの」
まどか「でも、マミさんは!」
マミ「そう、思おうとしていただけなのよ、そう思ってないと孤独で仕方なかった」
まどか「事実じゃないですか……わたし達だって、助けてくれたじゃないですか」
マミ「いつの間にか最初の気持ちなんて忘れていたわ、ああ、この人達は弱いんだってそう思っていたのよ?」
まどか「どういう、ことですか?」
マミ「自分が守ってやらないと死んじゃうどうしようもない人たちってね、見下していたの」

 それが何かいけないのかな。
 一人でいて、寂しくって、そう考えるしかなかったら。
 
マミ「襲われた人を助けるのも、利益を得るのも全部自分のため、不利益も自業自得。そんな魔法少女に、ただ自分の仲間が得られるかもって考えて、巻き込もうとした、本当に申し訳ないことをしたわ」
まどか「でも、わたしも魔法少女になれるのなら!」
マミ「ダメ、そんなの私が許さない」
まどか「そんな……」
マミ「鹿目さんが私のためを思って考えてくれる、その気持ちは嬉しい、だからこそ、同じ目には遭わせたくない……そうだ、美樹さんにも伝えておいて、魔法少女になっては絶対にダメだって」

 マミさんの仲間はさやかちゃんじゃなかった。
 ってことは、ほむらちゃん?
 でもほむらちゃんは魔法少女の事なんて全く知らない風だった。
 今日だって一緒にいたのに……。
46 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/11(土) 23:29:41.21 ID:M9uZpWPCo
投下終了です。
さやかが半分オリキャラ化していますが、今の予定だと杏子ちゃんがもっとアレです。
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/06/11(土) 23:32:39.67 ID:ub3KSeKdo
お疲れ様でした。
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]:2011/06/11(土) 23:36:16.36 ID:tmx7hMIjo
乙彼ー
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[sage]:2011/06/12(日) 00:39:03.82 ID:/BKdp2H7o
おつおつ

なんだ、ただでさえ聖女なあんこちゃんが女神にでもなっちまうのかい?
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]:2011/06/12(日) 01:19:21.67 ID:1LznpGiWo

まどかが完全に魔法少女の輪から離れてる状態での視点が新鮮で面白い
51 :1   ◆.yNNQJjyLiF7[sage]:2011/06/16(木) 20:36:22.34 ID:q77g3vFLo
 最近更新が出来なくて大変申し訳ありません。
 時系列で言えば、前回で二話が終了し次回からアニメの三話の話に入ります。
 大まかなお話は出来ていますが、冒頭がしっくり来ません。
 不出来な作者で大変申し訳ありません、もう少々お待ちくださいませ。

 まどか視点の関係上、本編で説明が入りにくい部分とか、キャラ設定を書いてお茶を濁したいと思います。

鹿目まどか

 原作を意識しながら、腹黒くならないように。
 基本、魔法少女という存在は知っているが、深く介入しないというスタンスです。
 杏子ちゃん登場以後のストーリーができあがってないので、どうなるかは分かりませんが、
 コンセプト上、彼女が戦闘をするシーンはありえない……と、いいな。

美樹さやか

 1はさやかを書くとき、もはやオリキャラを書いているような感覚を受けます。
 さやかファンの皆様、大変申し訳ありません。
 今後もずっとこんな感じです。
 原作と同じように上条くんの事は好きですが、それ以上にまどかを大切に思っています。
 また、ほむらやマミさんのことも好きです。
 恋より友情を大事にするさやかなんてさやかじゃないと思わなくもないですが、
 彼女が物語を引っかき回さないように気をつけたいと思います。

暁美ほむら

 次の話が完成しない一番の原因の人。
 まどかが大事なのは原作と同じですが、マミやさやかに対しても優しく接しています。
 また、まどかに援助交際云々言ってますが。まどかと援助交際したいとかそんな考えではなく、
 自分の身体を大事にしてね、程度の意味です。エロい意図はありません……たぶん。
 まどかを主人公とするなら、攻略ヒロインはこの方、目標はツンデレ。

巴マミ

 次の話が完成しない原因の人のその二。
 自分よりもまどかやさやかの事を大事に思ってる節が、少しずつ出てきているといいんですが。
 また、QBのことも大切に思っています。

佐倉杏子

 千歳ゆまと共に登場予定。
 また、おりこやキリカは今のところ登場しません。

千歳ゆま
 
 ロリ。
 杏子登場時にマミさんが居るというストーリーの関係上彼女を登場させないわけにはいかず。
 そしてそのストーリーだと、おりこやキリカを登場させないわけにはいかないという悪循環。
 
 とまあ、作品で語れよというお話ですが、今後もほのぼのさせるので、おまえあの設定はどこに行ったみたいなことがあると思いますが、
 なにとぞ、海よりも広いキュアマリンの心持ちでご覧になって頂ければと思います。
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]:2011/06/18(土) 21:33:42.23 ID:oIOuM8wDO


やり易いようにやってもらいたい
53 :1  ◆MDOYO.AnD2[sage]:2011/06/24(金) 17:40:34.34 ID:Ufy1Ac6Ro
パソコンがストライキを起こしまして、修理を出した結果トリップも吹っ飛びました。
なんかトリップ変わっちゃいましたが、1です。
早く更新できるように、報告のみ。
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[sage]:2011/06/25(土) 00:03:58.34 ID:SLvV0/+Jo
生存報告乙っちまどまど!
待ってるよ
55 :1 [sage]:2011/06/30(木) 16:51:31.26 ID:GG+3TS9eo
 目が覚めた。
 突然夜中にマミさんが来たからかな?
 なんとなく、気が張って眠れなかった。

 魔法少女のこと。
 マミさんのこと。
 ほむらちゃんのこと。

 いろんな考えが頭の中で渦巻いて爆発してしまいそう。

まどか「起きようっと」

 制服に着替えて、
 いつも通りの朝を過ごして。
 でも、
 ほんの少し日常が変わっていく。
 そんな気がした。

 マミさんと出会ったことで。
 ううん、夢の中で見たほむらちゃんと出会ったことで。
 こうして考える機会が増えてしまった。
56 :1 [sage]:2011/06/30(木) 16:57:05.86 ID:GG+3TS9eo
 そしていつも通り、さやかちゃんと合流する。
 ……その前の道に。
 ほむらちゃんが立っていた。

まどか「ほむらちゃん、その眼鏡は?」
ほむら「似合うかしら」
まどか「うん、なんだか昔からかけてたって感じ」

 違和感がなかった。
 赤いフレームのスタイリッシュなほむらちゃんにしては、
 ちょっとやぼったい気もする眼鏡なのに。

ほむら「そう、よかったわ、勇気を出してみたの」
まどか「昔は眼鏡をかけてたの?」
ほむら「そうね、魔法少女になる前は、本ばかり読んでいたから」

 そういってはにかむ。
 昔のほむらちゃんはどんな感じだったのかな。

ほむら「私ももう一度、信じようと思って」
まどか「信じる?」
ほむら「なんでもないわ」

 そういってわたしの前を歩きだす。
 その顔が少し赤いのはわたしの見間違いじゃないはずだ。
57 :1 [sage]:2011/06/30(木) 17:03:31.30 ID:GG+3TS9eo
さやか「おー、眼鏡かけてるんだ、似合ってんじゃん」
仁美「お似合いですよ」
ほむら「ありがとう」

 二人の評価は良かったので安心する。
 そういえば、なんで眼鏡なんだろう?
 似合ってないって思ってたから外してたのかな。

さやか「なんで眼鏡って聞いていい?」
ほむら「野暮ったいでしょう、これ」
さやか「そうかな、オシャレメガネって感じするけど」
ほむら「……私がズレているのかしらね」

 ごめんなさい、わたしもほむらちゃんと同じ風に思いました。

さやか「てことは、今までコンタクトだったの?」
ほむら「……そうね」
さやか「へぇー、よく目に何か入れられるなあ」

 確かに、目に何か入っただけでも痛いのに。
 登校する間、コンタクトは痛いか痛くないかの話で盛り上がった。
58 :1 [sage]:2011/06/30(木) 17:10:04.57 ID:GG+3TS9eo
 そして校門の前にたどりつくと、マミさんが立っていた。

マミ「おはよう」
ほむら「おはよう」
さやか「おはようございます」

 みんながあいさつする中で、仁美ちゃんが困った表情を見せる。
 わたしはマミさんに挨拶をする前に、事情を説明することに決めた。
 もちろん、魔法少女とかそういう話は抜きにして。

まどか「この人は巴マミさん、ちょっと前に知り合ったんだ」
仁美「そうでしたの、はじめまして、志筑仁美と申します」
マミ「巴マミです、はじめまして」

 この分なら、特に問題なんて起こらないかな?
 仁美ちゃんも人見知りをするタイプじゃないし。
 どうにも、朝から感じる不安が胸をよぎって仕方ない。

 校舎に向かって歩き出す。
 そしてすぐにマミさんと別れて教室に向かう。
 顔を見せるためにわざわざ待っていてくれたのかな?

 教室に入ると、さっそくほむらちゃんに質問が集中した。
 眼鏡があると無しじゃ、顔の印象ってかなり変わるもんね。
 ほむらちゃんはきっと、すごく勇気を出したんだろう。
 
59 :1 [sage]:2011/06/30(木) 17:19:23.97 ID:GG+3TS9eo
 授業が終わって放課後になる。
 今日も一日、何事もなく終わってよかった。

 魔女とか、魔法少女とかいる世界でも、
 ほとんどの人は普通に過ごしているんだって考えると、
 魔法って存在が異質なものだってわかる。

 わたしは半分そちらの世界に足を踏み入れているんだ。
 でも、マミさんはこれ以上こっちに来るなって言っているし。
 ほむらちゃんもわからないけど、マミさんと同じ意見なんだろう。

 さやかちゃんはどうなんだろう。
 不思議の存在を体験した上で、どんなことを考えているんだろう。

 仁美ちゃんがお稽古ごとがあるからと別れて、
 ほむらちゃんはホームルームが終わったらどこかへ行ってしまったし
 マミさんは魔女退治に出かけていったんだろう。

まどか「ねえ、さやかちゃん、さやかちゃんは魔法少女になりたいって思う?」
さやか「んー、マミさんに止められちゃったしなあ」
まどか「わたし、魔法少女になることが目的っていうかさ」

 誰かのために何かがしたい。
 今みたいに、何もできなくて、人に迷惑ばかりかけてて、いつまでも成長しなくて。
 それで、魔女を倒すための力を手に入れたら、きっとそれは素敵なことだ。
 何かができるわたしになれるから。
60 :1 [sage]:2011/06/30(木) 17:25:41.33 ID:GG+3TS9eo
さやか「まどかはダメっていうと、それでもって言っちゃう頑固者だからなあ」
まどか「えー、どういうこと?」
さやか「あたしは、まどかに魔法少女になって欲しくないなーって」

 さやかちゃんはこっちに向き直る。

さやか「危険な目にあって欲しくないよ、まどかには」
まどか「さやかちゃん?」
さやか「なんてかさ、あたしの親友だし?」

 さやかちゃんは優しい。
 苦しい思いをするならわたしの代わりにって。
 それだったら。

まどか「だったら、さやかちゃんも魔法少女にならないで」
さやか「ん、元からなるつもりはないよ」
まどか「どうかなー?」
さやか「あー、こいつめー、あたしを疑ってますなー?」

 さやかちゃんはそういうと、わたしを抱きしめにかかる。
 その暖かさで、朝から感じていた不安が解消されるような気がした。
 どん!
 じゃれている間に足元に何かがぶつかる。
61 :1 [sage]:2011/06/30(木) 17:33:04.93 ID:GG+3TS9eo
まどか「あ、ごめんなさい」

 って、足?
 目線を下げると、一人の小さな女の子が尻もちをついている様子だった。

まどか「立てる?」

 わたしが手を伸ばすと、恐る恐るといった風に手が握られる。
 
さやか「まったく、まどかが前を向いて歩いてないからだぞー」
??「ううん、ゆまも前を見てなかったから」
まどか「ごめんね、お姉ちゃんも前を見てなかったから」

 だから、お互いさま。
 小さい女の子は立ち上がると、ぺこりとこちらに頭を下げる。
 わたしもつられて大きく下げた。

まどか「ゆまちゃん、でいいのかな?」
ゆま「うん、わたしの名前はゆまだよ」
さやか「何か探してるの? きょろきょろしてるみたいだったけど」

 さやかちゃんも気づいていたなら言ってくれれば良いのに。

ゆま「うん、キョーコを探してるの」
62 :1 [sage]:2011/06/30(木) 17:39:56.37 ID:GG+3TS9eo
 聞いたことのない名前だ。
 たっくんよりも少し年上くらいの女の子だから、
 キョーコちゃんも、それくらいの年齢なんだろう。
 さすがにその世代の子と深く付き合う機会はなかった。

さやか「じゃあ、お姉ちゃんが一緒に探してあげる」
ゆま「いいの?」
まどか「えへへ、ぶつかったお詫びだよ」

 どんな子なのかは分からないけど、一人で探すよりは三人のほうがいい。
 わたしはゆまちゃんにどんな子なのか聞いてみることにした。

ゆま「短パンに、水色パーカーで、赤い髪を一つくくりにしてるの」

 ゆまちゃんはおりこうさんだ。
 その情報から察するに、ボーイッシュな子なのかな?
 
さやか「ポニーテール?」
ゆま「うん」
さやか「少なくともあたしの知り合いにはいないな、まどかは?」
まどか「わたしもいないかな、地道に探すしかないね」

 そう結論付けて歩き出す。
 
ゆま「キョーコはね、口は悪いけど、優しいんだ」
さやか「そうなの」
63 :1 [sage]:2011/06/30(木) 17:45:53.07 ID:GG+3TS9eo
まどか「そういえば、いくつくらいの子なの?」

 話が進んで、定住していないことまで聞いて、
 ゆまちゃん大丈夫なのかな、と考えたところで、
 もしかしたら、ゆまちゃんの保護者的な存在なんじゃないかと思い至った。

ゆま「えーっと、お姉ちゃんたちと同じくらいかなぁ」
さやか「それで、ホームレスなの……?」
ゆま「今の生活はとっても楽しいよ!」

 楽しいんだ。
 その表情が陰っていないことに安心しながら、歩を進める。
 もしかして悪い人に騙されているのかな、
 と、話を聞いていると思っちゃうけれど。

さやか「あ」

 病院の前にマミさんとほむらちゃんを見つけた。
 こんなところでどうしたんだろう?
 声をかけようかどうしようかと迷ったけれど、先にゆまちゃんが二人のところへ走りだした。
 もしかして知り合いなの?

ゆま「グリーフシードだ!」

 わたしは、耳を疑った。

※ 次回へ続く  
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[sage]:2011/06/30(木) 20:19:07.55 ID:bB6g0mY3o
乙っちまどまど!
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]:2011/06/30(木) 22:09:37.29 ID:VVhwVbPao

そろそろほむほむバレるか



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