VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)<>saga sage<>2011/05/24(火) 08:28:09.80 ID:lfV9YuaI0<>昔PS版ToHeartを主人公名:蓬莱寺京一でプレイして出てきた妄想です。
あと外法帖の明らかに狙ってるCV堀江由衣なはわわメイド。
一人称・読者語りかけ視点で進行予定。
頻繁に更新はできそうにないです、イベントもやや飛ばしぎみになるかも。
指摘・突っ込み・意見・要望ありましたらどんどんお願いします。




「ふぁ〜あ……」

俺の名は蓬莱寺京一、この真神学園に通う高校三年生。
進級早々という時期はずれの転校生ともども面倒ごとに巻き込まれて、ちょいとお疲れな今日このごろだ。あくびの一つや二つは当然だろう。
俺の場合眠そうなのはいつものことだろうって? ほっとけ。

(屋上で一眠りすっか。また木の上で寝たらその下で面倒ごとが起きそうだしな)

転校生『緋勇龍麻』がクラスのチンピラどもに絡まれるとこに居合わせたのも、俺が木の上で昼寝してる時。
レスリング部の『醍醐雄矢』に緋勇に用事があるから付き添いを頼むと言われたのも、木の上で昼寝しようとした時。
緋勇の歓迎会に公園で花見してたら妖刀にとり憑かれたやつが現れたのも、俺が桜の木に上ろうとした時。
ついでにオカルト研の『裏密ミサ』に霊視されて背筋が寒くなって飛び起きたのも、俺が木の上で爆睡してる時だった。

(……マジでろくなことがありゃしねーな)

とにかく最近『木の上に上る』ことに忌避感を感じずにいられない。
そんな気分をすっきりさせようと、二時間目以降をサボる気満々で屋上への階段を『上って』いたときだった。

「はわわわわわわ〜〜〜っ!」
「なっ!? ななな、なんだぁっ!?」

やたら可愛いらしい悲鳴を上げて、そいつは俺めがけて『落ちて』きやがったんだ。
<>東京魔人学園剣風帖×ToHeart(京×マル) VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/05/24(火) 08:50:55.22 ID:lfV9YuaI0<>
「いってて……」

落下してきた『そいつ』をどうにか受け止めたはいいが、俺自身はそいつの持っていた本やら壁やらにぶつかって結構痛かった。

「はわわわわわわわ〜〜〜〜〜〜っ!! も、もうだめです〜〜〜〜っ!」

んで、当のそいつは俺に背中をあずけたまま、まだ落下してるもんだと思い込み手足をジタバタさせている。

「おい、もう止まってるぞ」
「……え? あ、あれ?」

俺が抱きとめた『そいつ』はウチの女生徒……なんだろうが、小学生と思えるほどチビっこい。
クラスの『桜井小蒔』もかなり小柄だが、それ以上だ。

「は、はわわわっ! すすすす、すみませんっ!」
「う、うおっ?」

弾かれるようにそいつは立ち上がると、今度はひざに頭がくっつきそうな勢いでペコペコ頭を下げ始めた。

「すいません! すいませんっ! わたしってば本当にドジで、そそっかしくて、その上、人様にまでご迷惑を……!」
「わ、わかった。わかったから止まれ、静まれ……つーか落ち着けぇっ!」

涙目の女の子に頭下げさせてるなんて、どう考えても俺が悪人じゃねーか!
こんなとこ新聞部の『遠野杏子(通称アン子)』にでも見つかったら俺の評判、最悪より酷いことになるだろうが!
だというのに、こいつはひたすら謝り続けることに必死で、俺の声がまったく聞こえていない!

「あーもう! いいからちょっとこっちこい!」
「ふえ? は、はわわわわわわ?」

やむなく俺はそいつを小脇に抱え、屋上への道を急いだ。
……見られてないよな? アン子のやつ見てないよな!? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/05/24(火) 09:13:56.04 ID:lfV9YuaI0<>
屋上に着くなり、俺はパニック状態のそいつをとにかく落ち着かせることにした。

「よし、とりあえず深呼吸しろ」
「は、はひ! すぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜……っ、っ、っ、っ……!」
「ば、馬鹿! 吸ってばっかでどうすんだよ! 吐け! 息を吐くの!」
「ふはぁっ! は、はぁ〜〜〜……っ」
「そうそう。ほれ、吸ってー、吐いてー」
「すう〜っ、はぁ〜っ……」

続けること2分ほど、ようやく落ち着いてきたらしい。

「……よし。もう、落ち着いたか?」
「は、はい……ご迷惑おかけして、申し訳ありません」
「あー、まあそれはいいさ。ほっといて怪我されるよりマシだ」

確かに災難ではあったが、俺が偶然居合わせたことで女の子が怪我をせずにすんだのなら、僥倖ってやつだろう。
この蓬莱寺京一、生涯女の子には優しくすると決めているのだ! ……某チビの男女を除いて。

「確認するけど、怪我、しなかったよな? 大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。本当にありがとうございます」

そういうと彼女はそれはうれしそうに満面の笑みを俺に向けてくる。

(うっ……け、結構可愛いじゃねーか)

「そ、そうか。ならいいんだ。えっーと、新入生だよな?」
「あ、はい。すいません、自己紹介してませんでした」


『HMX−12型です。よろしくおねがいします』
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/05/24(火) 09:57:38.12 ID:lfV9YuaI0<>
「え、えいちえむ……12型? なんだそりゃ?」

というかそれ、名前なのか?

「はい。呼びにくいようでしたら簡単に『マルチ』とお呼びください。開発コードなんですけど、皆さんその名前で呼んでくださいますので」
「開発コード、って。んな、ロボットみたいな……」
「? はい、わたし『みたい』ではなくて『メイドロボット』ですよ?」

メイドロボ?
マジで?

「確かに耳にロボっぽいカバーついてるけど……ヘッドホンじゃなかったのか?」
「はい、これがないと人間の方々と見分けがつかないらしいので」

いや、あっても見分けがつかない。現に俺がそうだ。

「……ロボットってことは、あれか? 腕をロケットパンチみたいに撃てたり」
「えっと……撃てません」
「足からジェットが出て飛んだり」
「と、飛べません」
「目からビームが出たり」
「だ、出せません……」
「胸にキャノン砲が内臓されて」
「い、いないです……うう」
「支援メカと変形合体を!」
「で、出来ませぇ〜〜〜ん! ごめんなさいぃぃ〜〜!」
「……まあ、それは冗談として」
「はうう〜〜〜」

……ヤバイ、この子面白い。

「悪い悪い。しかしまあ、メイドロボ? が何でうちの生徒になってんだ?」
「あ、はい。コミュニケーションプログラムのテストだそうです」
「テスト?」
「はい。わたしはコミュニケーション機能に重点を置いて作られたらしいので。その実働データ採取に感情表現が豊かな学生相手の、特に高校での対人経験をつんでほしいそうです。」
「なるほどねえ……そういえばオカルト研に来栖川のお嬢さんが在籍してたけど……そのつながりか?」
「あ、芹香お嬢様をご存知でしたか。そうですね、お嬢様の推薦もあってこの学校にお世話になることになったんですよー」

へえ、あの無口なお嬢さんがねえ。

「試験期間が終わるまでですが、よろしくお願いします。えっと、お名前は……」
「ああ、すまねえ。俺は京一。蓬莱寺京一だ」
「京一さん、ですかー。素敵なお名前ですねー」
「す、素敵? そうか?」
「はい、とってもかっこいいお名前だと思います!」
「……へへっ、ありがとよ」

……まいったな。下級生にキャーキャー言われたことはあるけど、今まで自己紹介して名前を素敵だなんて言われたのは初めてだ。
これも『コミュニケーションプログラム』ってやつなのか? だとしたら……メイドロボ、侮れねえぜ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/05/24(火) 10:25:34.14 ID:lfV9YuaI0<> 「あー……っと、それじゃ、マルチ、でいいのか? ちっと聞きたいんだが」
「はい! なんでしょうか?」

シッポがあったらすごい勢いで振りそうなほど嬉しそうにマルチは答える。

「さっき荷物運んでたろ? あれ、どう見てもマルチが運べるような量じゃなかったと思うんだが……落っこちたことから考えても、見栄えに反して力持ちってわけじゃなさそうだし」
「は、はわわわわわわっ!! 忘れてました! あれ、次の時間までに資料室に運ばなきゃいけないんです!」

質問したとたんにマルチは慌てだした。あーもう! またか!

「あううう〜。い、急いで持っていかないと〜!」
「ちょ、待て、落ち着けっての! ほれ、深呼吸!」
「は、はひ! すう〜っ、はぁ〜っ」
「……よし、落ち着いたな。で、何であんな大荷物を一人で運んでたんだよ?」
「えっと、クラスの皆さんにお願いされて……」

うん、ちょっと待とうか。

「……誰も手伝おうとしなかったのか?」
「そ、そんな! わたし、ロボットなのに人間の方にお手伝いをお願いするなんて出来ません!」

……まあ、マルチの『立場』ならそうだろうな。けど問題はそこじゃねえ。

「そうじゃなくてな、『手伝う』と言ってくれたやつはいなかったのか、ってことだ。マルチが断ったってのならともかく」
「は、はい……でも、それは」
「わかった、もういい」

よし、マルチのクラスに乗り込み決定。

「あ、あのっ! でもわたしはメイドロボですから人間の皆さんのお役に立つのは当然で……!」
「だとしても適材適所ってもんがあるだろうが! 見るからに非力なマルチに力仕事任せようとする馬鹿なんざこの蓬莱寺京一! 許しちゃおけねえ! 俺の神速の木刀の染みにしてやる!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/05/24(火) 10:38:53.14 ID:lfV9YuaI0<> 「あうううう〜〜〜。や、やめてくださいぃ〜〜〜! わたしは、わたしはいいですから、乱暴は、乱暴はダメですぅ〜〜〜〜っ!!」
「けどよ!」
「う、う……うえぇぇ〜〜〜〜〜〜んっっ!!!」
「ちょ、おい! マルチ!」

なんでお前が泣くんだよ!?
これじゃまた俺が悪人みたいになってるじゃねえか!

「やめて、やめてくださいぃぃ〜〜〜〜! うええぇぇ〜〜〜〜〜〜ん!!」
「わ、わかったよ。やめる! やめるから! マルチも泣き止め! 頼む!」

必死こいてなだめること、実に十数分。
始業のチャイムもとっくに鳴ってサボり確定した頃に、どうにかマルチは泣き止んでくれた。

「ひっ、ひっく……ぐす。す、すびばせん……わ、わりゃし、また、京一さんにご迷惑を……」
「あーもー、どこまでお前は人間尊重主義なんだよ。気にしなくていいっての……つーかこの場合、理由がどうでも、悪いのはマルチを泣かせた俺なんだから、逆に謝られると俺が辛い」
「あ、あうう……申し訳ありま……えと、じゃなくて……あうううう〜〜〜〜!?」
「わーーーーーっ!? 頭から蒸気出すほど混乱するな! つかそういうとこ確かにロボットなのなお前! それはともかく落ち着けえええええっっ!!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/05/24(火) 11:24:57.03 ID:lfV9YuaI0<> 「あうう……重ね重ね、申し訳ありません……」
「あー……もう、気にするなとしか言いようがねえ……とりあえず俺は気にしねえからマルチもそうしろ」
「は、はい……あ、授業……間に合いませんでした……荷物も運ばないと……」
「もういいだろ、一回くらいサボっちまえ。これも経験だ」

荷物に関してはマルチに頼んだやつの自業自得だ。

「でも……」
「俺が許す、誰か文句言ってきたら俺のせいにしとけ」
「そ、そんなのダメですよぅ〜」
「いーんだよ、俺にとっちゃどうせいつものことだし」
「はうう……」

生真面目なやつだ。
ロボットだからなのかもしれないが、それ以上にマルチ自身の性格ってやつなんだろう。

「ま、いつまでも考えてもしょうがないだろ。それより、せっかくだからマルチのことについて聞かせてくれねえか?」
「わたしのこと、ですか?」
「ああ、この学校の感想とか、さ。なにせウチは他校からは『魔人学園』なんて物騒な名前で呼ばれてるからな。そのへんマルチはどう思ってるのか聞きてえし」

実際物騒な人間も多い。緋勇にちょっかいかけた連中をはじめとして、俺や醍醐、緋勇などの『腕の立つ』面々も他校から見ればさぞ物騒だろうし、先日の妖刀騒ぎなど、俺たちが巻き込まれている事件も物騒そのものだ。
のほほんとしたマルチにはちと刺激的すぎる気がする。
来栖川のお嬢さんものほほんとしているが……あれは裏密と交流できている時点で別の意味で肝が座りすぎているしな。

「そう……ですね。たしかに、ここに来る前はちょっと怖かったです。研究所の外の方々と、うまくお付き合いできるか不安でしたし……」
「あ、そういう心配のが強かったか」
「はい。学校の名前に関してはちょっと驚きましたけど、芹香お嬢様が『霊的な言霊が込められた、いい名前です』と言ってくれましたから」
「あ、そう……」

さすがオカルト研副部長、言うことが違う……

「学校に関しては……まだよくわからないです。ここに来てすぐですから」
「それもそう、か。」
「でも、わたし、ここに来てよかったです」
「へえ?」

『京一さんに会えましたから』

!?!?!?

「え、ちょ、おい」
「? ど、どうかしましたか? わたし、変なこと言ってしまいましたか?」
「い、いや……そうじゃ、ねえけど」

なんつー嬉しそうな顔して『京一さんに会えました』なんて言うんだよおい!
これがメイドロボか!? なんだこの可愛い存在は!? 人類を篭絡する機械の小悪魔ですかコノヤロー!!
よーし落ち着け俺。歌舞伎町のオネエチャン相手にナンパしまくってきた(全戦全敗)経験は伊達じゃないってとこ見せてやれよー。

「と、とりあえず理由聞かせてくれねえか?」
「はい! 危ないところを助けていただきましたし、怪我がなかったか心配してくださいました。素敵なお名前も教えてくださったし……それに、ちょっと怖かったですけど、わたしのこと心配して、怒ってくださいました……不謹慎ですけど、すごく、嬉しかったです」

ああもう、両手の指をモジモジさせながら赤い顔で、上目遣いで俺を見るんじゃねえ……
畜生、普通なら媚の売りすぎだって嫌悪感を感じるだろうに、それがまったくないのはどういうこった!?
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/05/24(火) 12:01:45.07 ID:lfV9YuaI0<> 「そ、それからですね」

まだあんの!?

「こうやっていろんなお話をしたのって、研究所の外では京一さんが初めてなんです。だからわたし、京一さんに会えたこと、すっごく嬉しいんです!」
「そ、そうか。そりゃあ光栄だ。ハハハハハハ」

じゅ、純粋すぎる……まぶしいくらいだ。
やめて! そんな穢れのない瞳で薄汚れた俺を見ないで!

「あの、京一さん」
「お、おうよ?」
「あの……わたし、ロボットですけど、わたしと、お友達になってくれないでしょうか?」
「そ、そりゃあかまわねえぜ? それに、こうして話してるんだから、もう友達みてえなもんだろ?」
「本当ですか!? すっごく嬉しいです! ありがとうございます!」

そんなに大騒ぎするほどでもないだろうに。

「えへへ、わたしロボットですけど、人間の方とお友達になりたいなあって、研究所にいたときから思ってたんです……すごく難しいことだって、皆さん言ってましたけど」
「ん……まあ、そういうこともあるかもな」

確かにマルチの言うことも一理あるかもしれない。
例えばマルチに荷物運びを頼んだやつ……そういうやつはマルチを機械・ロボットとして見ている。
だから無茶なことも頼むし、それを気にしないだろう。
けど俺には無理だ。マルチがロボットだとしても、こんだけ感情豊かなところを見せられてはマルチの人格? ロボット格か? それを無視なんてできねえっての。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/05/24(火) 12:31:18.40 ID:lfV9YuaI0<> 「そう言えば、研究所の人ってのはどんな人たちなんだ?」
「皆さん、とっても優しい方々ですよ。入学のときに『護身用に』って高出力スタンガンを持ってきたときにはびっくりしましたけど」
「あー……なんか分かる気がする。いくらお嬢さんのお墨付きがあっても、学校の名前が名前だからな」

つーかその様子だと、研究所の人はマルチに対してかなりの過保護っぽい。よっぽど大切にされてるんだなマルチは。

日本には九十九神……長く使い続けたり、強い思いの込められた器物に霊が宿るという思想がある。俺も師匠との修行中に聞かされた話であり、そのときに霊木から作られたというこの木刀『阿修羅』を渡されている。
きっとマルチもそういう存在になるんだろう、と俺は漠然とだが確信を持ってそう感じた。
なんだか矛盾した言い回しだが、そういう感覚としか言い様がなかった。

「そのスタンガンっての、今も持ってるのか?」
「は、はい一応は。でもわたし、護身用とは言っても怖くて……使ったりできそうにないです。場合によって必要なのは理解しているんですが……」

確かにマルチがスタンガンを振り回すってのは絶対無理だろう、なら。

「……ま、心配すんな」
「ふえ?」
「いざってときはこの蓬莱寺京一がすっ飛んで助けにいってやるよ。俺はけっこう頼りになるぜ?」

それくらいはオトコの甲斐性、ってな?

「はうう……京一さん、ありがとうございますぅ……」
「おうよ!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/05/24(火) 13:15:15.62 ID:lfV9YuaI0<> 「あの、えっと……それじゃ、ほかには何を……」
「おう、それなら……」

俺がマルチから他にも話を聞こうとしたとき。

――ゴッ!!

「んがぁっ!?」
「はわわわわっ!? 京一さんっ!?」

俺の脳天に激痛が走った!

「ってえ……! 誰だ! この野郎……っ!」

『授業をサボって下級生と逢引とは、ずいぶんいい身分だな蓬莱寺』

「げえっ! 犬神……っ!!」
「『先生』をつけろ、馬鹿者」

振り向いたそこには生物教師の『犬神杜人』が無愛想な面をして立っていた。

「とっとと教室に戻れ、2限は半分も残っていないが出ないよりマシだ。3限もサボるなよ」
「ちっ……わかったよ」
「あ、あの……」
「ん? 確か一年の……来栖川から通達のあったメイドロボの子だったな」
「おい! マルチは俺が付き合わせただけだ! 妙なこと言いやがったら先公とはいえ許さな……!」
「ロボットだろうがなんだろうが生徒には変わりない……君」
「は、はい!」
「担当の教師に事情は俺から説明する、蓬莱寺と違って君は初犯だろうから俺もうるさく言うつもりはない。だがサボタージュは立派な校則違反であることは理解しておいてくれ」
「はい……申し訳ありませんでした」

……へえ。犬神のヤロウ、けっこう話分かるじゃねーの。

「この件はこれでいいだろう。早く教室に行きたまえ」
「あ、あの、でもわたし……頼まれていた荷物をまだ運んでなくて……」
「途中の階段に落ちていたものか?」
「はい……わたし、あれを資料室に運ぶ途中で転んでしまって……」
「そうだった! あれはマルチのクラスのやつらが無理に……!」
「……仕方がない、蓬莱寺。お前が片付けておけ」
「いいっ!? 何で俺が!」
「俺は彼女の遅刻理由を担当教師に説明せねばならん。お前の場合は今更だろう……結果的にお前を授業に遅らせることになるのは遺憾だが、仕方あるまい。わかるな?」
「う……そ、それもそうか……」

マルチを一人で戻らせたら荷物運びを頼んだやつらに難癖をつけられかねない。

「あの、でも、あの荷物はわたしが頼まれて……」
「かまわん、力仕事は体力のあまっている馬鹿にやらせておけばいい。そうだな? 蓬莱寺」
「……わーったよ、運んどけばいいんだろ。ってなわけだマルチ、俺に任せて教室に戻っとけ」
「……はい、ありがとうございます」
「手早くしろよ」
「一言多いんだよ! クソ!」

やっぱムカツク!

「あ、あの! 京一さん!」
「ん?」
「あの……また、京一さんとお話しに来てもいいですか? わたし、もっと京一さんとお話したいんです!」
「……おう! 今度は俺の知り合いも連れてくるからさ! 楽しくやろうぜ!」
「はい!」
「へへっ、またなマルチ!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/05/24(火) 13:17:37.79 ID:lfV9YuaI0<> 一回目はこれにて終了です。
どっちも古い作品ですので知ってる人がどれだけいるのやら…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/05/24(火) 17:00:01.98 ID:FyxP+gW+0<> どっちも結構懐かしい作品だな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<><>2011/06/03(金) 02:45:56.05 ID:ZDV9NXd20<> 魔人学園は大好きだ。

……帝都編はもう出ないんだろうな……orz <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)<>sage<>2011/06/03(金) 06:55:08.39 ID:UH4N82eAO<> 絶対に裏密にバレてるな…アン子じゃなくて。うふふ〜な感じに。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)<>saga sage<>2011/06/05(日) 19:00:30.78 ID:aKluQJ5r0<>
感想いたただいたみなさんありがとうございます。
続きを投下します。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/06/05(日) 19:01:12.57 ID:aKluQJ5r0<> アレから時間はすぎ、昼休み。
待ちに待ったチャイムの音と共に俺は大きく伸びをして、机に縛り付けられた疲れをほぐす。
ダレだ、居眠り疲れだろうなんて言ってんのは……否定はしねえけど。

「うっしゃあ! 飯だ飯だ!」
「さっきまで寝てたと思ってたらもうソレ? 現金なもんだね京一は」
「うっせ」

無粋な突っ込みを入れるチビは『桜井小蒔』。お前だって数学の授業は船漕いでたくせにエラソーに言うな。

「んじゃ屋上で食べるとすっか。行こうぜ緋勇」
「え〜? ボクらと一緒に中庭で食べようよ、ね? 葵」
「えっと……緋勇くんの意見に任せたほうが……」

小蒔の言葉に自信なさげに答えるのが学級委員の『美里葵』。
押しの弱い葵を小蒔が振り回すのがいつものパターンだ。そして……

「ん……購買で……何か買ってから……決める……」

ポツポツと途切れ途切れに答えたのが転入生『緋勇龍麻』だ。
表情もあまり変わらず、無愛想に見えるが、言葉よりも行動で示すってのを地で行っており、悪い印象を感じさせない不思議なやつだ。

「そっか、なら急がねえとめぼしいものがなくなっちまうぞ」
「そういう京一はどうなのさ?」
「フッ、俺は2限サボったときにすでにカツサンドを購入済みよ!」
「威張るなアホウ!」
「あだっ!」
「ちょ、ちょっと小蒔!」
「……仲……いいんだな」

『誰がこんなのと!!』

冗談じゃねえっての!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/06/05(日) 19:13:46.70 ID:aKluQJ5r0<>
「ま、とにかく購買だな。行こうぜ」
「ん……」
「しょーがないなあ」
「って、なんでお前らまでついてくんだよ!」
「どっちにしろ途中までは一緒でしょ」
「ゴ、ゴメンね京一くん」
「ちっ……ま、かまわねえけどよ」

ゾロゾロ引き連れて教室を出ようとしていたが、眼前をでっかい人影がさえぎった。

「おう、お前たちこれから飯か?」
「醍醐……わかってんならどいてくれ。でっかいのが立ってると邪魔だっての」
「む。す、すまん」

レスリング部主将『醍醐雄矢』。
悪いやつじゃないんだが、どうにもマイペースな所があり、今のようにツッこんでやらないと気づかないことも多かったりする。

「俺も一緒にいいか? 3限休みに買いそびれてな」
「あー、もうこうなりゃ4人も5人も同じだ」

こうして俺たちはやたら存在感の強い5人組で購買に向かうこととなった。
途中俺たちを見た新入生がかなりビビリ入っていたようだが、俺の知ったこっちゃねえ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/06/05(日) 19:28:28.96 ID:aKluQJ5r0<>
そうしてやってきた購買コーナー。
言わずもがなだが、腹を減らした餓鬼亡者が所狭しと群がっている。

「さて、どうすんだ?」
「まあ、人気商品の焼きそばパンやカツサンドは絶望的だろうし、安物でもとにかく数を……」
「アン……ドーナツ……アン……ドーナツ……っ!!」
「って緋勇! 目が怖ええよっ!」
「ま、まさに鬼気迫るって感じだね……」
「そ、そうね……」

どんだけアンドーナツに執着してんだてめえは!?

『はうう〜〜〜! すみませぇ〜〜〜ん、通してくださいぃ〜〜〜〜!』

「ん? この声は……」
「京一? どうしたんだ?」

聞き覚えのある声を聞きつけ、顔を向けた俺は……

『はわわわわわわ……あわわわっ!?』

「!! 危ねえっ!」

目に映る光景に即座に飛び出し、『そいつ』を抱きとめる!

「はわわわ……あれ? 痛くありません……?」
「大丈夫かよ、マルチ?」
「あっ! 京一さん!」

先ほど出会った人間くさいメイドロボの嬉しそうな顔に、俺は自分の口元が緩むのを感じていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/06/05(日) 19:50:59.16 ID:aKluQJ5r0<>
「本当にありがとうございます。一日に二度も助けていただいて……」
「なーに、気にするほどのことじゃねえよ」

まだ少々ふらついているのを立たせながら、相変わらず低姿勢なマルチに苦笑する。

「きょーいちー、なにいきなり助けたこと口実に下級生の女の子ナンパしてんのアンタはー」
「バーカ、いくらなんでも底抜け純真存在のマルチにそんなコトするか」
「へ? 知り合いなの?」
「おっと、そうだった。マルチ、さっきも話したけどウチのクラスの連中だ」
「あ、はい! はじめまして皆さん! HMX−12型、通称マルチです!」
「あ、うん? えっとボクは……いやその前にえいちえむなんとかって……?」

絶対に度肝を抜かれるマルチの自己紹介に小蒔が硬直する。ま、無理もないが。

「新入生の子ね? はじめまして、私は美里葵。生徒会長もやっているから、困ったことがあったら何でも言ってね?」
「はい! ありがとうございます!」

うんうん。美里は生徒会長を任されるだけあって、懐の深さがハンパねえ。
名前がどうとかロボだとか以前に『新入生』ってことがまず念頭に入っている。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/06/05(日) 20:11:30.12 ID:aKluQJ5r0<>
「このまま全員の自己紹介といきてえんだが、そろそろあの餓鬼の群れに突貫しねえとな。だからマルチはちっと待ってて……」
「はわわわわわわっ! そ、そうでした! わたしもパンのお使いを頼まれてるんです!」

なんだと!? マルチのクラスの奴ら、まだ懲りてねえのか!

「おい、まさかまた……!」
「い、いえ! わたしからお願いしたんです! なにか御用はありませんかって! それで、その……お使いぐらいなら大丈夫と思ったので……」

……いや、それはすげえ立派だと思うけどよ、現場がどういうものか考えて引き受けようぜ。
まあ、説明しなかったクラス連中にはオシオキ確定だがな。

「あの亡者の群れはマルチには無理だろ……注文はなんだ?」
「あ、はい、このメモに書かれたものなんですが……」
「どれどれ……カツサンド、タマゴサンド、焼きそばパン、コロッケパン、から揚げパン、カレーパン……ヘッドホン、トレーディングカード、プレステ2ゥ!? ふっざけんなああああああっ!!」

前半ともかく後半マジふざけんな! 第一プレステ2なんざまだ開発中じゃねーか!!
(※魔人学園・ToHeartはどちらもPS2発売前の時代設定です)

「あー……後半はほっとくとして、前半はマルチから引き受けた以上どうにかするしかねーな……よし、醍醐、緋勇、手伝え」
「む、かまわんぞ」
「何を……すれば……?」
「醍醐が壁、緋勇がレジ、俺が狩る、OK?」
「了解だ、俺の分も頼むぞ」
「アンドーナツ……ありったけで……金は心配いらない……!」
「了解だ……行くぜぇぇぇぇぇっっっ!!」
「あ、あのっ! 京一さんっ!?」

そうして俺たち3人は餓鬼亡者の群れに突っ込んだ。
うおおおおおおおっっ! どきやがれええええええっっ!!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/06/05(日) 20:28:49.79 ID:aKluQJ5r0<>
「よ、よっしゃ……これで注文分は全部だな?」
「は、はいっ!」
「よかったわね、マルチちゃん」
「ぬ、ぐぐ……誰だ、どさくさにまぎれてレバーブロー入れてきたのは……」
「ハモハモハモハモ……アンドーナツ、ウマイ。ハモハモハモハモ」
「あははっ、緋勇クンってば、ハムスターみたいになってる。カワイー」

激戦を潜り抜けた俺たちはボロボロになりながらも戦利品を無事入手した。
緋勇のやつだけ無傷でアンドーナツほうばってるのには納得いかねえが……

「はうう……皆さん、ありがとうございます。これで教室にもどることができますぅ〜!」
「大げさだなあ」
「ま、マルチだからな……おっと、戻る時には俺も付いてくぞ」
「む、一年生相手に人気取りでもする気?」
「逆だ」
「へ?」

アホな注文書きやがったやつらにお灸を据えてやらねーとなぁ……

「はわわわわわっ、京一さん、目が怖いですっ」

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(大分県)<>saga sage<>2011/06/05(日) 21:09:58.43 ID:aKluQJ5r0<>
「た、ただいま戻りましたっ!」

マルチをが一年の教室に入る。
俺たちは戸の影に隠れ、まだ姿は見せない。

「あ、マルチちゃんだ」
「大丈夫だったー?」
「無理しなくてもよかったんだよー?」
「え? あいつ買ってこれたの?」
「テキトーこいてんじゃないだろうな」

……それっぽいの数名、確認。

「は、はい! こちらになります、どうぞ!」
「うわ、焼きそばパンだ! ありがとーマルチちゃん!」
「おおカツサンド! すげーなマルチ!」
「やほーい! タマゴサンド〜!」

……なんだ、けっこういいやつらもちゃんといるじゃねえか。

「ぷぷ、京一ったら、娘が心配なお父さんの心境?」
「うるせえ」
「ふふ、京一は面倒見がいいからな」
「俺の初日も……声、かけてきた……お人よし……」
「剣道部の子たちにも慕われるものね、副部長からはもっと頻繁に出てくれって生徒会にも苦情が来てるけど……」
「だー! もう! ほっとけよ俺のことは!」

第一、なんでみんな付いてきてんだよ!?

「おい、俺の頼んだのがないぞ」
「俺のもだ、ナニやってんだよ」
「PS2はどうしたぁ! 来栖川なら試作の一つくらいあるだろうがぁ!」
「はわわわっ、そ、それは……こ、購買にうってなかったもので……」
「ちょっと! 無茶を言ってんじゃ……」
「おい、よせって……」
「でも……」
「は、はわわわわわわわ……」

……あいつらだな。

「ふざけんじゃねえぞ、このロボ公が……がはっ!?」
「はわわっ!? きょ、京一さんっ!?」
「えっ!? ほ、蓬莱寺先輩!?」
「てめえ! いきなりなにしやが……げうっ!?」

うるせえ。

「お、おい京一! いくらなんでも……」
「そうだよ! これじゃただの暴力……」

それがどうした。

「ひ、緋勇くん! 京一くんをとめて!」
「……無理。あれはあいつらが悪い」

よくわかってんじゃねえか、緋勇。


「ふっざけんなあああああああああっ!!」


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(大分県)<>saga sage<>2011/06/05(日) 23:35:41.58 ID:aKluQJ5r0<>
頭を血が出るほど踏みつけ、木刀を肋骨の間を抉るように押し付ける。

「おい、手前さっきマルチになんて言った」
「あが……ぎぃぃぃぃっ!!」
「言うに事欠いて『ロボ公』だぁ……? ずいぶんと大層な身分だな、おい。明らかに購買に売ってねえもん注文しといて、なけりゃ恐喝たあ、恥知らずすぎて恐れ入るぜ」
「あ……あいつが自分で買ってくるって言ったんだ! 俺は悪くねえ!」
「手前の頭には常識って言葉が入ってないみてえだな? カチ割って中身調べてみるか?」
「ひっ……ひいぃぃぃぃぃぃぃっっ!!!!」

木刀を眼前に突き出し、いつでもこいつの頭を叩き割れるよう『気』を込める。
俺の手の中で『阿修羅』が暗い喜びにざわめいた気がした。

(……そうだな、むしろここで始末しちまったほうがいいのかもしれねえ)

後で聞いた話だが、このときの俺はゴミを見るかのように冷たく、蔑んだ目でこいつを見下していたらしい。

「やめろ京一! それ以上はやりすぎだ!」
「そこまでだ……今の京一は……そいつを本当に殺す……!」

二人が俺の体にしがみつき、止めようとしてくる。
だが、俺はそんなもの意にも解さない。する必要がないほど、体が軽い。
止めんなよ醍醐、緋勇。俺は、こいつを……!

『や、やめてくださいぃぃぃ〜〜〜〜っ!!』

……マルチ?

「ダメです! 乱暴はイヤです! わたしなら大丈夫ですから! だから……!」

なんで、どうしてお前がこいつらを助けようとするんだよ?

「そんな……そんな怖い京一さん、見たくないです……!」

俺にしがみついてまで、止めようとするんだよ?

「わたしを助けてくれた、明るい笑顔の京一さんがいいです!」

なんで俺は、お前を、

「だから……だから……もう、もうやめてくださぃぃぃぃ〜〜〜〜〜!!」

『うえぇぇぇ〜〜〜〜〜ん!!』

こんなに、泣かせてんだよ……!


「……醍醐、緋勇。もう、大丈夫だ。放してくれ」
「……ああ」
「……ん」

……冷や水でも浴びせられたかのように、一気に頭が冷えた。
押さえつけていた足をはずし、木刀も袋に納める。

「ひっく、えぐっ、ひっく……」

嗚咽を続けるマルチの頭を強引に掻き抱き、そのまま落ち着かせるため、頭を撫でた。

「……すまねえ。頭に血ぃ昇ってたみてえだ」
「ひっく……うく……わ、わたし、こそ、すびば、ぜん……わたし、また、ごめいわく、を……お、お洋服、汚れちゃい、ます」
「いいんだよ。悪いのは俺だ、汚しときゃいいんだ」

なにやってんだよ俺は。
マルチがこういう揉め事見るのは泣くほどイヤだっての知ってたくせに……クソッ!

「醍醐、緋勇……手間かけさせて、悪かった」
「う、うむ……冷静になったようだし、な」
「……京一が落ち着いたなら……それでいい」

……ありがてえやつらだよ、ホント。
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(大分県)<>saga sage<>2011/06/06(月) 03:02:31.63 ID:OwWCJtF40<>
「おい」
「はひぃっ!」
「マルチに免じてここまでにしといてやる。だが……次はねえぞ?」
「(コクコクコクコクコクコク)」

俺が睨みをきかせると、そいつらは必死で頭を上下させた。

「あの……」
「ひいっ!? な、なんだよっ!」
「あの、普通に売っているものでしたら買ってこられますので……また、お仕事申し付けてくださいね?」
「(ポカーン)」
「? どうかなさいましたか?」
「い、いや……わ、わかった。また今度、よろしく頼む」
「はいっ!」

……マルチ、お前すげえよ。よくまあ、さっきまで自分を脅してたやつ相手にフツーに話せるな。
しかもまたパシリに使ってくれなんて……そりゃ毒気も抜かれるっての。

「あー……他のやつらも、騒がしくして悪かったな」
「い、いえっ!」
「わたしたちも、マルチちゃんのこと心配だったし……」
「もしかして、このパンも先輩たちが?」
「ん、まあ、な」
「うわ……だから一緒に行こうって言ったのに」
「でも、あの満面の笑みを見て、お前ら、途中から言えるか?」
『無理ッス』

あー……どうやらマルチの張り切りすぎも原因っぽいな、こりゃ。
でもまあ、マルチの人のよさがちゃんと伝わってるみたいで安心したぜ。
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(大分県)<>saga sage<>2011/06/06(月) 03:13:49.67 ID:OwWCJtF40<>
「いろいろとありがとうございました。皆さんはこれからどちらへ?」
「ん、ああ……これから昼飯だけどよ、こっちのことも紹介したいし、一緒に来るか?」
「はい! ぜひご一緒させてください! わたしも充電用バッテリーを持ってきてますので、中庭でお日様を浴びながら充電したいなーって思ってたんですよー」
「あ、そう……中庭、ね……ハハ……」
「ふふーん?」

小蒔、ドヤ顔でこっちみんな。

「行くなら……早くしよう……」
「わ、わーってるよ。んじゃ中庭だな、行こうぜマルチ」
「はい!」

ま、たまにはいいか…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/06/06(月) 03:20:51.73 ID:OwWCJtF40<> 忘れないうちに修正を

>>16
正:押しの弱い美里を小蒔が振り回すのがいつものパターンだ。そして……
誤:押しの弱い葵を小蒔が振り回すのがいつものパターンだ。そして……

>>22
正:「剣道部の子たちにも慕われているものね。
誤:「剣道部の子たちにも慕われるものね。

なんで美里関連だけ間違ってるのやらww
では続きです。
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(大分県)<>saga sage<>2011/06/06(月) 03:47:58.07 ID:OwWCJtF40<>
そんあこんなで、俺たちは中庭でパクつきつつ自己紹介となった。

「えーっと、んじゃあ、ボクから。桜井小蒔だよ、よろしくね!」
「醍醐雄矢だ。見て通りガタイあるから力仕事ならいつでも頼ってくれ」
「緋勇、龍麻……あまり……しゃべるのは、得意じゃない、が……なにかあれば、言ってくれ……」
「小蒔さん、雄矢さん、龍麻さん……はい、覚えました! これからよろしくお願いします!」

マルチのやつ、嬉しそうだな。
ま、友人が増えるのはいいこった。

「うんうん、やっぱ新入生の子は素直で可愛いな〜。葵もそう思うよね?」
「ええ、そうね。受け答えも自然で、とてもロボットとは思えないわ」

あ、やっぱ生徒会長の仕事上知ってたのか。

「へ……? あははは、葵が冗談言うなんて珍しいね!」
「いや、冗談なんかじゃないぜ? なあマルチ?」
「はい、改めまして、メイドロボットのHMX-12型です! どうぞ『マルチ』とお呼びください!」
「え? え? えええええええ?」
「そ、そうなのか……? ずいぶん人間らしいというか……」
「問題ない……科学の進歩……万歳だ……」

……緋勇、やっぱこいつはただもんじゃねえ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/06/06(月) 04:01:36.83 ID:OwWCJtF40<>
「え、えっと……マルチちゃん、でいいのかな?」
「はい! なんでしょうか!」
「ロボットって言われても、ちょっと信じられないんだけど……何か分かりやすい証拠とか、ある?」
「えっと……」

まあ、マルチを見てロボットだと思えるやつはそうそういないだろうしな。
まさかまた蒸気出して証明してもらうわけにもいかねえし……

「あ、そうだ! でしたらこれでいかがでしょうか?」

マルチはそう言うと。
手首から先を『外した』。

「わあああああっ!?」
「うおっ!?」

驚きの声をあげたのは小蒔と醍醐。
美里と緋勇は全く動じていねえ。

「充電用コネクタがこちらにありますので……どうか、されましたか?」
「え? あ、うん? あは、あははははは……ちょ、ちょっとビックリしちゃって……」
「う、うむ。そうだな」

くくく、レアなものが見れたぜ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大分県)<>saga sage<>2011/06/06(月) 04:18:12.10 ID:OwWCJtF40<>
「はふ〜……いい電圧ですぅ〜……」

そういうわけで、マルチはバッテリーにつないで充電を行っている。
マルチにとっては食事なんだろうが、どちらかというと風呂にでも入ってるような感じに見えるな。

「いつもこういう風に充電してるのか?」
「いえ、今日は簡易充電のテストも兼ねてますので。普段はノートパソコンを経由して、図書室とかで充電させてもらってます。それで簡易メンテナンスも行っているんですよー」
「なるほどねえ……さすが最新鋭は違うな」

どこかどう違うかなんざ知らねーけど。

「でも、こうやって日向ぼっこしながら充電するって、すごく気持ちいいです! 人間のみなさんが日当たりのいい所でお食事する気持ち、少しわかった気がします」
「そっか。ま、いろいろ学習するのはいいこった」
「京一もマルチちゃんを見習ってもっとがんばったほうがいいんじゃない? あとヘンなこと学習させないよーに」
「ほっとけよ!!」


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(大分県)<>saga sage<>2011/06/06(月) 04:33:26.34 ID:OwWCJtF40<> >>27の修正
正:そんなこんなで
誤:そんあこんなで

正:見ての通りガタイはあるから
誤:見て通りガタイあるから

今回はここまでです。

>>13
帝都編……ぜったいvs魔人・加藤保則があると思って楽しみにしてたんですけどねえ……
シャドウハーツ2で加藤戦やってるからアルゼから出ないもんだろうか?

>>14
ここの霊研の強化具合はハンパないかと。
なにせ裏密・来栖川の2トップに琴音ちゃんまで入ってくることに……


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(埼玉県)<>sage<>2011/06/28(火) 01:55:38.13 ID:N174Su6no<> 懐かしすぎる作品同士の組み合わせだなwwww
俺得すぎるww <>