VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 12:38:29.77 ID:a391iXes0<>魔法少女まどか☆マギカの妄想設定SSです。
初期に書き始めたのでタイムリープの設定が本編と違ってしまった……。
矛盾するところがあるかもしれませんが、大目に見てもらえるとありがたいです。
ワルプルギスの夜から物語が始まります。
スレタイの まど×まど もありますが基本的には ほむ×まど あるいは マミ×まど です。
書き溜めはある程度してあるので、導入部から投下していきます。

それではよろしくお願いします。


<>まどか「もう大丈夫だよっ」まどか「あなたは……!」 VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 12:39:12.40 ID:a391iXes0<> QB「まだ気付いてないのかい?」
QB「まどか、エントロピーの増大を放置しておけば世界は滅びる。魔法少女というのはいわば世界が生み出した、抗体のようなものさ。いくら犠牲が出ようと、それ以上のエネルギーを生み出せれば、世界のためになるだろう?」
QB「世界のためだ」

白いぬいぐるみのような生き物はしっぽをフリフリしながら顔を上げる。

QB「こんな世界を変えられるのは魔法少女になったまどかだけだ。だから僕は破滅の未来を変えるために君のもとへやってきた」
QB「まぁ、なかなか契約してくれない君を後押しするために、何人か犠牲になってもらったけど、彼女らが束になっても君1人の方が遥かに価値が高いからね。問題はなかった」
QB「……でも、君がこの期に及んで首を縦に振ってくれないならば」
QB「君は彼女らの犠牲を無駄にすることになる」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 12:41:10.89 ID:a391iXes0<> 荒廃した世界で一対の禍々しい赤い瞳がまっすぐ私を見据えていた。そこに表情はないのになんだか口元が上がっているように見えた。しばし呆然としていた私は今更ながらこの正義の悪魔に馬鹿にされているんだと気付いた。

まどか「ほむらちゃんは」
QB「?」
まどか「そういう契約だから、死ぬまで戦って、誰にも感謝されずに消えていく、それが魔法少女だって言ってた」
QB「うん……概ね、間違いな」
まどか「私はそうは思わない」
まどか「マミさんは優しくて寂しがりで紅茶が大好きで」
まどか「杏子さんは元気で意地っぱりで」
まどか「さやかちゃんはお調子者で本当は臆病で面倒見がよくて」
まどか「ほむらちゃんは誰にも平等でみんなのことを考えてくれていて」
まどか「世界のためっていうけど」
まどか「マミさんたちの世界は? これも世界だよね? みんな世界を持ってるし歴史を持ってるの。みんな未来を持っていたの……だけど……死んじゃったら……その人の世界は……」
まどか「終わりなんだよ! その人の過去も未来も奪い去る、そんな権利があなたにあるの!? QB!!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 12:42:58.55 ID:a391iXes0<> 突然の大声にビクッと体が震えた。声は私の口から出ていた。こんなに激しく相手に怒りをぶつけたのは初めてだった。しかし感情はすぐにごちゃ混ぜになりぼろぼろと涙が出てきた。

QB「こんなことを言われたのは初めてだ」
QB「まどか。君は面白いものの見方をするね。というより人間は、というべきかな。寿命を持たない身では理解出来ないのかもしれないな……」

キュゥべえは関心したように言い、

QB「言いたいことはそれだけかい? だったら」
QB「僕と契約して、魔法少女になってよ」

返ってくるのは、もう聞き飽きた無機質な勧誘の声のみ。
全く、そう全く、私の言葉はキュゥべえに響いていなかった。私は決意を固めることにした。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 12:44:12.92 ID:a391iXes0<> まどか「……お願い、キュゥべえ」
まどか「今日の夢を見たときに時間を戻して」
QB「……現時点の君をその時点に戻せばいいんだね? 多少の干渉は出来ても結末は変わらないよ?」
QB「最後には、ここに帰ってくる」
まどか「そのときは……もう1人じゃないから」
QB「現時点の君がここ数週間の君の歴史を塗り替えることになるよ? 構わないのかい?」
まどか「……なに? 随分親切」
QB「世界そのものに干渉する願いは、慎重に設定を行わないととんでもない結果になる危険があるんだ」
QB「それに僕は契約で嘘はつかない主義だからね」
まどか「……聞かないと教えてくれないこともあるけどね」

上空に逆さまに浮遊する奇怪な物体が、こちらに気付いたか、ゆっくりと向かってきた。

QB「じゃあ、始めようか。まどか」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 12:45:16.84 ID:a391iXes0<> 風が舞い上がり、体が宙に浮くのを感じた。私は目を固く閉じて待った。私は全てが始まったあのときに、みんなの歴史を取り返しに行くんだ。今度はみんなに守られるだけの役立たずではなく、みんなと戦う仲間として!
胸に衝撃が走った。意識が薄れていく中、ぼんやりとした視界に桃色の輝きが満たされた。
私の願いは「私達五人、みんな一緒に生き残ること」!!

QB「さあ、受けとるといい……」

それは実際に見えた光景なのか、あるいは夢なのか。
血の様な、涙の様な、ひとつの雫がぽたりと落ち、次の瞬間、世界の歯車があり得ない方向に回る。奔流の中に投げ出され、上下も分からないまま私は遡っていった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 12:46:27.57 ID:a391iXes0<> 次に目を開くと見慣れた天井が見えた。時計を見ると日付は何週間も前だった。ううん、もしかして、

まどか「夢オチ……」

あのときと同じように呟いてみた。わかってる。指に確かにある。あまりにも重たい意味を持つ輝きが。

QB「うまくいったね! まどか!」
まどか「夢じゃない……」

ところで何でQBまでついてくるの?
QB「一度手痛い失敗をしているからね。君の奇跡を少しお借りして監視しにきたんだ」
まどか「ふぅん……まぁいいよ」

パパ「おはようまどか!」
まどか「……お、おはようパパ」

そこにはあの時と全く同じ、光溢れる庭で水やりをしているパパの姿。
すっかり呆けてしまった私の姿を見て、パパは怪訝な顔をした。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 12:48:25.47 ID:a391iXes0<> パパ「今、タツヤがママを起こしに行ってるんだ。まどかも手伝ってあげてくれないかな」
まどか「ふぇっ? あぁあ、うん。わかった」

ママも起こしてみんなで朝食。
タツヤが落っことしそうになったトマトを間一髪でキャッチするママ。
パパは洗いもの中。パパのごはんは毎日とてもおいしくて、そういえば最近は食べてなかったなって。前は毎日食べられるのが当たり前だったのに、魔法少女になった今となっては、ひょっとしたらこれが最後になるかもしれないよね……。だとしたら、ちゃんと味わって、感謝して食べなきゃいけないよね……。

ママ「っ? どうしたまどか」

ママが私をすこし驚いたように見た。あれ、なんでだろ、視界がぼやける。
こんなに平和で、素敵な、当たり前の生活。
一度私が失ったはずのもの。そしてもう二度と戻れない場所。
すべてを忘れて飛び込んでしまいたい。光に満ちた楽園が目の前に広がっていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 12:49:42.33 ID:a391iXes0<> まどか「うぅぅぅぅぅ……!」
パパ「ま、まずかったかい?」
まどか「ちがうの……おいしいよ、とってもおいしいよ」
まどか「おいしいから……わたし……っ!」

一瞬テーブルが静まり返った。

ママ「まどか……あんた、がんばりすぎてない?」

ゆっくりとママが静寂を破った。

まどか「え……?」
ママ「何かを為そうってときはさ、頑張り過ぎない方がいいこともあるんだよ」
まどか「変なの……」
ママ「ほら、じゃあ私は行くかな」

ママはすっくと立ち上がり、タツヤにキスをして、パパともキスをした。
そして私の前に立って、なぜか片手を上げた。

まどか「?」
ママ「?」

数秒待って、ママは玄関の方に向かってしまった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 12:52:59.42 ID:a391iXes0<> ママ「じゃ、行ってくる!」
パパ・タツヤ「「いってらっしゃーい!!」」
QB(まどか、忘れたかい? きっとママはいつものハイタッチをしようとしていたんだよ)
まどか(あっ)

QBの指摘で私ははっとした。私にとってはほとんど遠い昔の習慣だったのだ。おまけに考え事をしていて……。

まどか「マ、ママ!」
ママ「なんだいまどか」
まどか「あ、あのさ! 私、がんばるよ! ママも、がんばってね!」

自分でも何を言っているのかよくわからなかったけど、とにかく何か言っておかないといけない気がした。これがママと話す最後のチャンスだ、という根拠のない焦りが私の口を動かしていた。

ママ「だーから、がんばるなっていってるの。身が持たないぞっ」

しかしママは苦笑しただけだった。そして今度こそ玄関を出てしまった。

パパ「まどかも、支度しないと。遅刻しちゃうよ」
まどか「へ? あぁ、そっか!」

今の私は魔法少女である前に学生なんだった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 12:54:27.39 ID:a391iXes0<> 学校では早乙女先生が予定通りに玉子の焼き加減について熱く語っていた。

QB(このあと暁美ほむらがくる……まどか、気をつけて!)
まどか(私はほむらちゃんの味方です〜!)
先生「……それから今日は転校生がいまーす」

扉が開き、記憶と寸分違わない使命感に満ちた顔が見えた。
教壇に立った彼女はあのときのように私に視線を向けてきた。ううん、あの時よりもきつい視線……?

ほむら「暁美、ほむらです。よろしく」

昼休みになると、話題のハイスペック転校生に女子がたくさん群がっていた。
でもほむらちゃんはみんなを完全に無視して、私の方に向かって歩いてきた。

まどか「あ、ほむらちゃ……!」
ほむら「来なさい、鹿目まどか」

私にとっては感動の再会だったけどほむらちゃんは低い声で私の呼び掛けを遮った。手が伸びて乱暴に私の腕を掴んで引っ張ってきた。
さやかちゃんが動いた。

さやか「ちょっと転校生! 乱暴すぎるでしょ」
まどか「ちょ、ほむらちゃ……」
ほむら「来なさい」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 12:56:12.49 ID:a391iXes0<> 周りが注目していたけど、ほむらちゃんは私を半ば引きずるようにして廊下に連れだした。
まどか「ど、どうして怒ってるの? 私わかんないよ……」

人気のない廊下まで来てようやくほむらちゃんは振り返った。

ほむら「あなた、どうして」
まどか「け、契約のこと? 大丈夫だよほむらちゃん。私、ちゃんと考えて」
ほむら「なんで、戻ってきたの」

ほむらちゃん……! 契約のことだけじゃなく、私が未来から来たことにも気付いてる?
……! でもそれなら話が早い。ほむらちゃんにも協力してもらえれば……。

まどか「……みんな、死んじゃったんだよ!」
ほむら「……」
まどか「私はみんなの歴史と未来を取り返しに戻ってきたの。今度は、魔法少女として!」
ほむら「時間を戻して……永遠に失われたはずのものを取り返しに……死んだ仲間を取り返すんだって……それじゃ私の二の舞よ」
まどか「ほむらちゃんも!? ど、どうだったの?」
ほむら「……時空をいじったら二度と元の流れには戻れない。未来を変えるってそういうことよ」
まどか「……?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 12:58:34.86 ID:a391iXes0<> ちょっと休憩 だれもいないのかな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/30(水) 13:07:01.88 ID:4KXFu+yi0<> 追いついた
少し読みにくい

ループものっぽい雰囲気にwwktk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 13:14:05.21 ID:a391iXes0<> >>14 ありがとう とりあえず改行してみました

言ってることは難しくていまいち理解できなかったけど、ほむらちゃんはもう怒ってはい
ないようだ。

まどか「ほむらちゃんはどうして私が未来から来たってわかったの?」
ほむら「その理由はすぐにわかるわ」
ほむら「ワルプルギスの夜には会ったわね?」
まどか「なんでそれを……」
ほむら「私が時空に干渉する祈りで契約したから、よ」
まどか「そうなの……それでね、すぐにでもみんなと会いたいんだけど」
ほむら「それは危険ね」
まどか「どうして?」
ほむら「まずはあなたがあなた自身であることを信じてもらえないと」

そう言うと突然ほむらちゃんは私の肩をつかんで強引に物陰に押し込んだ。

まどか「ふぎゃ」

その直後、

まどか「ほむらちゃん!」
まどか「えっ」

廊下の向こうからか、私の声が聞こえた。

まどか「もう授業始まっちゃうよ」
ほむら「すぐ行くわ」

ほむらちゃんは簡単にうなずいて、「その」鹿目まどかが戻っていくのを見届けた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 13:17:24.08 ID:a391iXes0<> ほむら「あれがあなたが未来から来たとわかった理由よ。あなたはすでに契約してしまっ
たようだからあなたが未来から来た方だとわかったのよ」
まどか「今の……私? でも私はここに」
ほむら「未来が確定するまであなたは不安定な存在。今この時空には鹿目まどかは二人い
る」
ほむら「彼女に見つかると面倒なことになるわ。気をつけて」
まどか「でも、この世界の私は、私が上書きしたはずじゃ」
QB「上書きが不完全なんだよ。未来が確定するまでは二つの可能性が揺れ動いているとい
うわけさ」

ほむらちゃんはなぜかキュゥべえを無表情で見下ろし、それから何か言いたげに私を見て
きたけど、その口は閉ざされたままだった。

まどか「ほむらちゃんも二人いるの?」
ほむら「いえ、私は1人だけよ」

なんで私とは違うんだろう? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/30(水) 13:17:52.51 ID:Zzh2XduN0<> まどか「……みんな、死んじゃったんだよ!」
ほむら「……」
じゃなくて
まどか「……みんな、死んじゃったんだよ!」

ほむら「……」
見たいに一行あけてほしいです
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 13:21:46.53 ID:a391iXes0<> >>17 了解です

まどか「ところで授業には今もう1人の私が出てるんだよね……私戻れないってことに」

ほむら「話すことはこれくらいね。私はこちらの世界の鹿目まどかを守らなくてはならな
いの。あなたはもう魔法少女なのだから自分で自分の身を守って」

ほむら「それともついてくる?」

まどか「……は、はい!」

キュゥべえを追ってほむらちゃんは慌てることなく攻撃を仕掛ける。

QB「自分がいじめられているのを客観的に見るのはあまり気持ちがよくないね」

まどか「随分と余裕なんだね」

向こうのキュゥべえが殺されてしまったら歴史が上書きされてこちらのキュゥべえもいな
かったことになるんじゃないのかな? ……ややこしやタイムパラドックス。

QB「絶対死なないからねぇ」

キュゥべえは眠そうに言った。ほむらちゃんは自分を舐めているような発言にも特に反応
しない。通路の先でキュゥべえは傷ついているように見えた。可哀想な姿だけど自業自得
という単語が頭に浮かぶ。友達の命を弄んだキュゥべえには同情する気になれない。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/30(水) 13:22:34.70 ID:4KXFu+yi0<> ほむら「あれがあなたが未来から来たとわかった理由よ。あなたはすでに契約してしまっ
たようだからあなたが未来から来た方だとわかったのよ」

じゃなくて

ほむら「あれがあなたが未来から来たとわかった理由よ。
あなたはすでに契約してしまったようだからあなたが未来から来た方だとわかったのよ」

の方が読み易いと思う。単語の途中で改行するのはやめた方が良いかと
あと、名前の関係でどうしても平仮名が多くなるから、ある程度漢字を入れていくとか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 13:27:53.77 ID:a391iXes0<> こうですかわかりません

?「そこまでよ!」

狭く薄汚れて黒光りする通路に場違いに響き渡ったのは、
凛とした鈴の音のような声。

マミ「暁美ほむらと……え?」

前に立ち塞がっていたのは在りし日の紅茶少女、巴マミその人だった。

マミ「鹿目まどか、はいま下にいるはず……しかもいつの間にか契約を……?」

ほむら「用が無いなら」

ほむらちゃんはマミさんを無視して正面から向かっていった。
マミさんは躊躇なくマスケット銃を発砲。

ほむら「先に行かせてもらうわよ」

しかしその時にはすでにほむらちゃんはマミさんを抜いて先に向かっていた。
マミさんは振り向かずに背後に向けて発砲。
でも既にほむらちゃんは角を曲がっていた。
銃弾は壁に当たり、甲高い音が反響していった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 13:32:41.56 ID:a391iXes0<> マミ「……やれやれ」

マミ「えっとそちらは……未来からきた鹿目まどか……ね。何を企んでいるの?」

ばれてるなら仕方ない。ほむらちゃんは無理だろうっていうけど
マミさんを説得してみよう!

まどか「私が未来で見たのは私を残して死んじゃったみんな」

まどか「私はみんなを取り戻しにきたんだよ」

マミさんは変わらずニコニコと笑みを湛えている。

マミ「あら、そうだったの? 嬉しい!」

手を打って満面の笑みを浮かべるマミさん。
私もつられて笑った。

まどか「はい、もう絶対に」

やった。マミさんやっぱりちゃんと話せば……!

マミ「そう……って信用すると思って?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 13:36:17.81 ID:a391iXes0<> その時、突然マミさんの眼の色が変わった。銃口が私の顔に向いていると気付いたとき、既に火を吹いていた。私はボッーっと突っ立ったままだった。
ブレる視界。銃弾はいつまでたってもやってこない。

まどか「……?」

微動だにしないマミさん。中空で静止している銃弾。

まどか「時間が止まって……そうか」

ほむらちゃんと同じ能力が、私にも……。
今にも時間が動き出す。私は弾道から身をそらして、
直後、静止していた銃弾が壁を貫いた。

マミ「!?」

一瞬マミさんが目を見開き、すぐにまた発砲してきた。

マミ「くっ」
まどか「マ、マミさんっ!! なんでぇ!?」
マミ「あなたが避けるからよ!!」
まどか「意味分かんないですそれ! ひゃぁぁぁっ!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 13:38:23.77 ID:a391iXes0<> こちらが避けることは出来ても反撃ができないことに気付いたマミさんは、
一度に数十本の銃を取りだし一斉掃射。橙色の雨が正面から、回避不能の弾幕となり、
私の体を貫こうと迫る。

まどか「っていたたたた!」

敢えなく直撃。でも私の体が蜂の巣にされた様子はなく、
せいぜい小石を投げつけられたくらいの痛みだった。
しかしびっくりして地面に転がっていた私にマミさんが素早く肉薄し、
ゼロ距離で回避不能の一撃を……。

まどか「きゃ!」

なんとか回避する。
でもマミさんは流れる水の如く滑らかにぴったりと私を追ってきた。

マミ「観念なさい!」
まどか「わっ、待って、マミさぁん!」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 13:41:50.85 ID:a391iXes0<> 時間を止めるなんて反則みたいなことをしている私をどんどん追い詰めてくる。
やっぱりマミさんは強い!

マミ「!!」

しかしその時不意にマミさんが動きを止めた。
すぐに私もその理由を察することが出来た。
それは予定通りの出来事だった。

マミ「結界……あの子たちが」

マミさんは一瞬私の方を見てから、すぐに

マミ「今日のとこは見逃したげるわ。今度じっくり話を聞かせてね」

あっさりそう言った。

まどか「は、話きいてくれるの……?」

マミ「なに泣いてるのよ?」

マミさんは呆れ顔でこちらを見てきた。その対応はあんまりだ。

まどか「だってぇ……マミさんさっきまで私を殺そうとしてたもん……!」

マミ「そうだった?
でも今からもう1人のあなたとあなたの親友を助けにいくからいいでしょ?」

それだけ言ってマミさんは足早に去って行った。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 13:44:40.42 ID:a391iXes0<> まどか「あ、ほむらちゃんだ」

マミさんを見失って暗闇をさ迷っていると資材の山の上に立つほむらちゃんを見つけた。
こちらに背を向けて、何か見下ろしている。

マミ「……呑み込みが悪いわね。見逃してあげるって言ってるの」

マミさんの声だ。私はいつかのその場面を克明に思い出していた。
きっと反対側には私とさやかちゃんとキュゥべえもいる。
にらみ合いの後ほむらちゃんは踵を返してこちらに降りてきた。

ほむら「仕留め損なった。
あいつと鹿目まどか、美樹さやかとの接触は避けたかったのだけれど」

まどか「今からマミさんの家に向かうはずだよね」

まどか「そこに入ってキュゥべえを捕まえれば……」

ほむら「ダメよ」

QB「それはまずいよ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 13:52:21.06 ID:a391iXes0<> ほむら「ダメよ」

QB「それはまずいよ」

ほむら「そんなことしたら巴マミはあなたを完全に敵と認識し衝突は避けられなくなる。
そんな時間はないの」

QB「そんなことしたらまどかが契約した自分自身の非道に恐れをなして
契約してくれなくなるじゃないか」

ほむら「お黙り」

まどか「確かにマミさんと戦うのは懲り懲りだよ……」

ほむら「じゃあ、今日はもう解散しましょうか」

まどか「そうだね……いろいろありがとう、ほむらちゃん」

ほむら「礼には及ばないわ。あなたは私が守る」

QB「ところで、まどか」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/30(水) 13:54:13.89 ID:a391iXes0<> まどか「……なぁに」

QB「睨まないでくれよ……」

ほむら「言いたいことがあるなら早く言いなさい」

QB「そう。まどか、君は今日家に帰るわけにはいかないよね?」

まどか「へ……? あぁ、そっか……!」

ほむら「!」

ほむら「私の家……なら大丈夫……よ?」

まどか「ほんと!?」

QB「なににやけてるんだい暁美ほむぐえぇ」

ほむら「ふぅ。じゃあ行きましょうか」


ちょっと出かけるのでここまでです。
とりとめないですが……今日の深夜にもちょっと書くかも <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2011/03/30(水) 14:49:20.55 ID:V2TdIYCe0<> ほむぐえぇwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2011/03/30(水) 15:40:08.90 ID:eNW9UJH8o<> 面白そう。期待

お節介かもしれんが、まどかが過去の自分と接触する時は
まどかまどか並んでるとややこしいから、見分けつくようしておくと良いかも知れんね

「お前に言われなくてもそうするつもりだったよタコ」って思ってたらゴメンネ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/03/30(水) 18:05:05.88 ID:r4QYPU+AO<> 契約済みは魔どかって書けば良いんでない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 00:20:41.54 ID:bL+R9q990<> 1です。ちょっとだけ再開しようと思います。
まどかの区別は考え中だったんでややこしくなってきたら参考にさせてもらいます。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 00:26:27.86 ID:bL+R9q990<> ほむホーム

まどか「いい、のかな?」

ほむら「ベッドなら余っているし当面の食料もあるわ」

家族は……と聞くのはやめた。

まどか「ありがとうほむらちゃん。お世話になります」

ほむら「夕飯に何か作ってくるわ」

まどか「あ、私も」

ほむら「いいから」

まどか「で、でも悪いよ」

ほむら「あなたにはゆっくりしていてほしいのよ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 00:28:26.32 ID:bL+R9q990<> ほむらちゃんはそう言うばかりだった。私は結局折れて、ソファでうとうとし始めた。
気張りすぎていたのかもしれない。疲れた体を包みこむ暖かさが、
私を安らかな眠りへと誘い、まぶたが一度下がってしまったらあとはもう一直線だった。

〜ほむほむ視点〜

とりあえずコーヒーをと思ってリビングに戻ってみると、彼女はソファに寝そべり
かわいらしい寝息を立てていた。そこには魔法少女特有の陰りはなく普通の少女に見えた。

ほむら「私のせいだよ……ごめんなさい、ごめんなさい……」

QB「君はまどかを救いたかったようだけど……
まどかが君たちを救いたいという願いの方が強かったみたいだね。
毎回毎回時間を戻していたのは君かい? 何度契約してもなかったことに
されるんじゃフェアじゃないね」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 00:32:06.33 ID:bL+R9q990<> QB「だけど今回のパターンでのまどかは、契約の奇跡を使ってこの時間軸に飛んだ。
まどかは君と同じく全時空存在となり、契約は上書き不可能、全時空共通の事実となった。
僕の勝ちだね」

QB「彼女がこの先の予定通りの結末を覆したとしたら、二人のまどかがこの時空に残ることになる……しかしそんなことを宇宙の法則が許すと思うかい?」

私は悪魔の戯れには付き合う気がない。まどかの手を握り彼女を運命から救いたまえと
祈り続けた。しかしわかっていた。運命は決まってしまった。彼女に残された時間は……
長くはない。それは私のせい……ごめんね……ごめんね……!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 00:34:40.54 ID:bL+R9q990<> 〜まどっち視点〜

目が覚めてしばらくして状況がじんわりと脳裏に蘇ってくる。
なんか手が温かく感じる……と思って見るとほむらちゃんがソファに突っ伏すようにし、
かわいらしい寝息を立てていた。両手で私の左手を握りしめて。

QB「この表現は既出だよ。
こういうとこから作者の力量も伺い知ることができるというものだよ」

ソファ「うるせえ」

まどか「?」

まぁいいか。

まどか「ほむらちゃん起きて。学校に遅刻しちゃうよ」

テーブルの上にコーヒーが二つ置いてあった。
ほむらちゃんが入れてくれたんだろうか。
なんというか……クールなほむらちゃんのイメージとは少し違うデザインのカップだったので……私はくすっ、と笑ってしまった。
すっかり冷めてしまっていたけど、せっかくのほむらちゃんコーヒーなので
ごくごくと飲み干した。あぁなんだかまた眠く……。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 00:39:09.20 ID:bL+R9q990<>
〜ほむほむ視点〜

目が覚めるとなにやら重たい。何かが私の上に倒れてる……?
なんだかいい匂い……頬にくすぐったいさらさらな感触。これは……

ほむら「え」

目を開けると一面まどかだった。唇の触れ合わんばかりの距離にまどかの顔……!!
唇の湿気を帯びた艶まではっきりと見えるわ……!!

「」ハァハァ

なんて綺麗なんだろう。私は完全に見惚れてしまっていて、
気がついたらなにかしようという考えが頭から抜け落ちてしまっていた。

ほむら「まどかぁ……も、ダメ……ごめん……」

キスしていいよね。ね……。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 00:42:06.88 ID:bL+R9q990<> ほむら「そ、それで……あんなふうになってたのは何か意味が……」

朝食の席、努めて平静な声で聞いてみる。

まどか「ち、ちがうよぅ! き、気付いたら倒れてたんだ、よ?」

そんなバカな。
そうよ……これは、照れ隠しだわ……やだ、かわいい……。
私の顔を見て、信じていないのがわかったか、さらに念を押すように、

まどか「ほ、本当だよ!」

まあここはそういうことにしといてあげましょう。
なんてかわいらしいのかしら。

QB「いやいや、暁美ほむらの入れたコーヒー、睡眠導入剤入りだっただろ?
それを飲んだから倒れたと考えるのがしぜn」

ほむら「そぉい!」ドガッ

QB「きゅぅ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 00:44:48.84 ID:bL+R9q990<> まどか「ほむらちゃん……? 睡眠導入剤って……?」

まどかが疑問に僅かな警戒を希釈させたような瞳で見つめてくる。
グッとくる……けどグッとこらえるのよ暁美ほむら……。

ほむら「ち、ちがうのよ、まどか……!」

今回に限っては本当に違う……。
確かにそういう行動に出るパターンもあるかもしれないけどねっ……。

ほむら「あのとき、その、あなたがストレスで眠れないんじゃないかと、思って……それだけよ!」

これは私の本心だ。
まどかは少し驚いたような顔をした。そのまっすぐな瞳を直視できずに思わず俯いてしまう。
なにもかも見透かされてしまいそうで。
どんな仮面をかぶっていても彼女はお構いなしに突きぬけてしまうのよ。
ややあってまどかは、

まどか「ありがとね、ほむらちゃん」

ほむら「……うん」

大好き。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 00:52:47.98 ID:bL+R9q990<> 〜まどっち視点〜

それから数日、私は毎晩ほむらちゃんの家に泊めてもらい、
マミさんのパトロールについていく私とさやかちゃんを尾行していた。
まあ基本的には私たちの記憶通りに進むとほむらちゃんは言ってたけど。

ほむら「あなたは……巴マミを、助けたいのね」
まどか「うん。マミさんはね……ずっとひとりぼっちだったの。だから私達は
魔法少女コンビを組もうねって約束してたの……」

あの時のことを私は決して忘れない。
弱り切った、常からは考えられない、本当のマミさん。
私の手を縋るように掴んできたマミさんに、私は嘘をついた。
まだそれをマミさんに謝っていない。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 00:54:38.80 ID:bL+R9q990<> ほむらちゃんはなぜか表情を消し、低い声で

ほむら「……してないわよ。この時空にはそんな歴史は存在しない」

ほら、まただ。ほむらちゃんは時々こうやって怖い顔になる。
すべてを諦めた瞳に。
私は希望を伝えなきゃいけないんだ。

まどか「どんな時空でも、私は私、マミさんはマミさん。ほむらちゃんだって。
たとえ運命が変わっても私達の心は、いつもここに……」

まどか「……って、ないんだっけ……あはは」

ほむら「」

息を詰まらせるほむらちゃん。
……まずいことを言っちゃったかな。こんなこと誰だって思い出したくないよね。

まどか「ごめん私、嫌なこと言って」
ほむら「違うの……」

ほむらちゃんはそのあと口を利いてくれなかった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 01:12:46.65 ID:bL+R9q990<> そして数日が経ち、この時空に馴染んできたころ。

ほむら「まどかっ、後ろをお願い!!」

まどか「オッケー!!」

止まった時間の中で、魔女に対するほむらちゃん。
私はその背後から迫る使い魔たちを一掃する。
新たに使えるようになった魔法の弓を射ると、無数の光の矢が飛び立ち、
それぞれが狙い違わず標的の寸前でぴたりと止まる。

ドッ!!

まどか「……っ!!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 01:15:29.53 ID:bL+R9q990<> 爆音が起こり、辺りは朦朦とした黒煙に覆われた。
思わず手で顔を庇い、薄目を開けて様子を窺う。
ほむらちゃんの背中が、何よりも頼もしかった。
背後では、ほむらちゃんの爆弾によって吹っ飛んだ魔女の残骸が凄惨な最期を遂げていた。
やっぱりほむらちゃんは強い……。
しかしほむらちゃんはぽつりと言った。

ほむら「……あなたはやっぱり強い」

魔女の世界が終わりをつげ、崩れていく。
跡にはグリーフシードだけが残った。

まどか「……どうする? 私はまだソウルジェムきれいだよ」

ほむら「2人で半分ずつ使いましょう」

まどか「え……でも、私はいいよ?」

ほむら「お願い。あなたも使って」

ほむらちゃんはなぜか頑なだった。下手したら戦闘中以上に真剣な顔で。

まどか「ん……わかった」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 01:24:03.89 ID:bL+R9q990<> まどか「ん……わかった」

まどか「ところで明日……だよね」

QB「マミが、魔女シャルロッテに殺される予定の日だね」

まどか「最初からわかってたくせに……」

この子を恨んだところで何の解決にもならないけど嫌味の一つくらいは言ってやりたい。

QB「まさか。僕に予知能力はないよ」

そういう意味じゃないんだよキュゥべえ……これじゃのれんに腕押しだ。

ほむら「動きは把握してるわね?」

まどか「うん……まずはいつも通り尾行するんだよね」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 01:27:55.92 ID:bL+R9q990<> ここからはまどかが二人になってややこしいので、魔法少女のまどかを「魔まどか」
もう一人のまどかを「まどか」とします。

次の日

病院から私とさやかちゃんが出てきた。
私の記憶通り、さやかちゃんは上條くんに会えなかったみたい。

さやか「わざわざ来てやったのに薄情者ぉー」

まどか「仕方ないよー」

私とほむらちゃんは病院の屋上にいた。

魔まどか「気を付けてね、ほむらちゃん。私の記憶だと、ほむらちゃんは
マミさんの魔術で捕まえられちゃうの」

ほむらちゃんはもうわかっているのかもしれないけど。

ほむら「あぁ、あれは仕方がないのよね」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 01:30:46.89 ID:bL+R9q990<> まどか「え?」

ほむら「あの場で巴マミと戦闘になったパターンもあったわ」

まどか「そんな……魔女が奥にいるのに?」

ほむら「お互い退くに退けない。そのうち魔女は目覚め、
美樹さやかは契約するも魔女に敗れ」

ほむらちゃんの口が止まらない。

QB「なるほど、そのパターンならまどかとの契約もたやすいね。さやかは犠牲になるけど」

まどか「やめて!……やめてよ……」

ほむらちゃんのことは好きだけど……たまに、こうやってすべてをあきらめたような、
暗い瞳をするのが……見てられないよ……。

ほむら「必ず、巴マミか美樹さやかのどちらかが死ぬ。
あなたは第三の道を探し出せるのかしら」

あくまでも淡々とほむらちゃんは言った。すでに数え切れないくらい
この数週間をループして、いろいろなパターンを試したからだろうか、
その瞳には諦めが見えた。でもそのパターンには私がいない。
私という要素が結末を変えられれば……。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 01:38:21.82 ID:bL+R9q990<> マミ「ここね」

マミさんともう一人の私が結界の入り口から入っていく。
それを確認して、私たちも壁を伝って下に降りる。
ほむらちゃんは迷わず結界に飛び込んだ。そして私も。

ほむら「まどかはこの世界のまどかに見られないようにね」

まどか「わかってる」

まさか、またここに来ることになるとはね……。
首のない看護婦。チーズを探し求める使い魔。
そして、前に入った時には気付かなかったけど……首切りの警告らしきものも見えた。
そこは、お菓子に彩られる欲望にまみれた「病院」。

ほむら「いくわよ」

まどか「うん」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 01:39:57.76 ID:bL+R9q990<> >>46 言ったそばから間違えたorz
まどか→魔まどか ですすいません。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/03/31(木) 01:44:39.45 ID:TWnMambBo<> おk しえn <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 01:48:01.04 ID:bL+R9q990<> ほむらちゃんは早足で進んでいく。
するともう一人の私と話していたマミさんが、不意にこちらを振り返った。

マミ「……もう会いたくないって、言ったわよね?」

ほむら「今回の獲物は私が狩る。あなたたちは手を退いて」

マミ「信用すると思って?」

私は絶対に見られないように物陰に身を潜めていた。
音だけでも、マミさんがほむらちゃんを捕まえてしまったのがわかった。

マミ「行くわよ鹿目さん」

まどか「は……はいぃ」

あっちの私は申し訳なさそうな顔をしながらマミさんに着いていった。
わ、私……情けないなぁ……!
ちょっと失望しながら、2人が見えなくなるのを見届けてすぐに私は飛び出した。

まどか「ほむらちゃん大丈夫!?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 01:53:27.44 ID:bL+R9q990<> >>49 最後のまどか→魔まどか です 何やってんだか 今度こそ合ってます

ほむら「これは巴マミの専用魔術。あなたといえど短時間で解けるものではないわ。
先に進んで」

ほむら「ここにいるあなたは最強だけど向こうのあなたはただの少女なんだから」

魔まどか「わ、わかった……でもマミさんと戦闘になったらどうしよう……」

ほむら「ならないわ。あなたなら魔女を一撃で仕留められるはず。顔を見られる前に。それからね……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 02:00:22.10 ID:bL+R9q990<> マミ「ティロ・フィナーレ!」

魔まどか「な、なんとか間に合ったぁ……?」

前の入り口とは違ったけど、とにかく例の場所に来ることができた。
マミさんの主砲がシャルロッテを貫き、派生した長い帯がかわいらしい見た目の魔女を
空中に縛りつける。そして……今見ても恐ろしい光景。

口から黒の巨体が溢れ一瞬でマミさんの眼前に口を開き丸飲みにしようと迫った。
全てが以前の悪夢の再現だった。以前の私は何もできなかった。ただ震えて怯えて。
ズルく隠れて生き延びた。
でもどんな条件だろうと助けたい人がいて助ける力があるのなら
何も迷う必要はなかったんだ。

魔まどか(今の私なら、何も恐れることなんてない)

魔まどか「マミさん……待ってて!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 02:05:10.24 ID:bL+R9q990<> ほむら(奴の本当の本体は)

私は空中から踊り出て、それを踏みつけた。

ほむら(椅子の上の人形よ)

愛嬌のある黒い巨体が露骨に嫌そうな顔をした。私の手に頼もしい弓の感触が伝わる。

魔まどか(魔女だって、もとは人間……魔法少女だったのに)

魔まどか「ごめんね!」

即座に矢を射ると巨体の頭が爆発した。まず音、そして衝撃、さらに誘爆して
全身が吹き飛ぶ。近くにいた私にも熱波が届き、ヒリヒリと痛い感覚があったけど、
油断せず、目を凝らして、魔女の死を確認する。
まだ固まっていたマミさんの前にべちゃっとグリーフシードが落ちる。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 02:09:33.39 ID:bL+R9q990<> まどか・さやか「「マミさぁん!!」」

下で震えていた私とさやかちゃんがマミさんに駆け寄った。
涙を流してマミさんの胸に飛び込む私達。
マミさんは放心状態だったけど、その顔がやがて涙でくしゃくしゃになった。
そして2人を強く、強く、確かめるように抱きしめていた。
そこに私も行きたかった。でもそれはできない。
私はマミさんに背を向けた。
歴史は変えられるんだ……! もう変わった……!
それはとっても素敵な最高の奇跡。マミさんはもう大丈夫……だから、もういいの……
これ以上望むことなんてない。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 02:18:07.11 ID:bL+R9q990<> マミ「あなた」

しかしマミさんは私を呼び止めた。
マミさんは私に情けをかけるつもりだ。その前に私の口は勝手に動いた。

魔まどか「よかった」

魔まどか「マミさん……約束、覚えていますか……?」

魔まどか「一度は……破ってしまった約束……だけど」

魔まどか「ほんのちょっとでも……守ることができて、私は嬉しいなって、思ってます」

魔まどか「さよならっ……」

マミ「待って」

魔まどか「……!」

まだ、何かあるの?
もう、解放して下さい。じゃないと、私は崩れてしまうから……。
そのまま駈け出そうかと思った。

マミ「また私をひとりぼっちにするつもり?」

しかしマミさんの言葉が私からそんな思考を洗い流してしまった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 02:22:38.42 ID:bL+R9q990<> 魔まどか「……マミさ、ん? 覚えて……?」

マミ「ごめんなさい」

マミ「覚えてはいないのだけど、あなたが言ってたことは嘘じゃないって分かったから」

当然。
そ、そういうこと……か。
そりゃ……そうだよねっ……。

魔まどか「……でも、私がいなくても、マミさんは……もう……
ひとりぼっちじゃないんです……」

私はもう必要ない。勝手にこの世界に紛れこんだ私は。

マミ「……どの世界でもあなたは変わらないのね」

マミ「でも、今度はあなたがひとりぼっちなんじゃない?」

魔まどか「……マミさん、私はね。いっつも誰かの陰に隠れて、
守ってもらいながら生きてきた……ズルい子なんですよ」

なぜか私はひどくいらだっていた。こんな私なんかに構ってくるマミさんが鬱陶しく思えた。
そんなの時間の無駄だから。そんなの、私に甘えを許すだけだから……。

魔まどか「だからこれ以上私に……頼らせないでっ……!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 02:25:33.05 ID:bL+R9q990<> 私は逃げた。崩壊していく世界の中を駆け抜ける。
あらゆる甘い欲望の塊がとけるように吸い込まれていき収束していく。
これでいい、これで!

マミ「……それ嘘。あなたは一見他人に頼ってばかりだけど、他人に何と言われても
その意思を変えることはないじゃない」

さやか「マミさん……あの助けてくれた子、知り合いなんですか?」

マミ「……」

マミ「そうね……戦友……にはなれなかったから親友、かしらね」

そして世界は元の姿を取り戻し、そこは病院の前だった。

まどか「……」

何も知らない「その」まどかは、謎の救世主が立っていた場所をいつまでも見つめていた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 02:32:07.95 ID:bL+R9q990<> 明日は早いんでここまでにしときます
見苦しいとこもありましたが、明日も午後から投下する予定です。
このようにまどかがみんなを救っていく話になっています。原作が鬱すぎたので。
次回はお弁当回です!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/31(木) 02:37:52.93 ID:8IK8hwo7o<> おつおつ。
楽しみにしてるよ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/03/31(木) 03:19:05.76 ID:lefpWscAO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/31(木) 07:54:35.58 ID:yBS0Xo9DO<> 乙マミマミ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/31(木) 08:07:37.40 ID:Ik+Ed8kIO<> 乙
続き待ってる
マミさんマミマミ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/03/31(木) 14:14:06.15 ID:bL+R9q990<> 続き投下しますね 追いつかれそうなのでペース落とします <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga sage<>2011/03/31(木) 14:15:57.25 ID:bL+R9q990<> ほむら「巴マミは死の運命を免れたのね」

ほむらちゃんはいまだ落ちない夕日に目を細めながら言った。

QB「僕は君に感謝したいね」

QB「せっかくのソウルジェムを無駄に壊さず済んだ。
それに、まどかとさやかに契約の妨げになるようなショックを与えることも回避できた」

魔まどか「契約させないよ」

ほむら「絶対に契約させない」

声が重なり、私とほむらちゃんは顔を見合わせた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 14:17:03.32 ID:bL+R9q990<> QB「やれやれ、目的は一つ……ってわけかい?」

ほむらちゃんが私を見守ってくれていたように、私はさやかちゃんが二度と進む道を
間違えないように見守ると決めたんだ。

QB「まどか……君の願いの影響が出てきている。宇宙は変わり始めた。
君がどこまで不可能を可能にしていくのか、僕はとても興味深い」

魔まどか「またそれ……」

QB「いずれ君は、史上最強の魔女として、最高のグリーフシードを生み出し、
宇宙を支えていくんだ。それまでにいくらかでも聞いておいて損はないと思うけど」

魔まどか「私、魔女になんかならないよー」

私は軽く返した。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 14:28:30.66 ID:bL+R9q990<> ふと見ると、ほむらちゃんが私に痛々しいものを見るような目を向けていた。
え?……っと、ごめんなさい……?
このとき私は事の重大さに気付いていなかったんだ。

QB「それは、ずっと先かもしれないし案外すぐかもしれないよ」

QB(なにせ願い事は一度だけだからね)

ほむらちゃんは何かを決意したような顔をした。
夕焼けはいよいよ赤みを増し、右手に連なる工場の煙突群がその光を四方八方に反射して
宝石の様に煌めいた。

ほむら「この場所……」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 14:50:09.79 ID:bL+R9q990<> 〜ほむほむ視点〜

ほむら「魔法少女になったあなただから、確かめたい」

ほむら「前にも言ったけど、魔法少女の最期って、孤独なものなの」

ほむら「誰にも気付かれることなんてない」

ほむら「以前、あなたはここで言った。「私は、絶対に忘れない」と」

ほむら「でも、あなたは自分の……」

ほむら「自分の最期を受け入れられる?」

魔まどか「私の……最期……」

ほむら「そうよ」

魔法少女は孤独なもの。以前、そう言った私に、彼女は猛反発した。
しかし、今の彼女は静かなものだった。それは、思いが冷めたのではない。
より熱く、より強い思いになっているんだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 14:58:21.79 ID:bL+R9q990<>
魔まどか「……ほむらちゃんが、見ていてくれれば」

魔まどか「私は、何も怖くないよ」

まどか……!

ほむら「……前に、「あなたは、優しすぎる」って、言ったわね」

ほむら「撤回するわ」

あの言葉が、良くも悪くも、私に与えた衝撃は甚大だった。

ほむら「みんなのために、全てを賭けた人のことを、忘れるはずがないわよね」

その言葉は私の恐怖を打ち消し、私は、また戦いに挑むことができる。

ほむら「私だって、まどかのことを忘れないわ」

まどかには敵わなくても、せめてもの恩返しが出来るとしたら、

ほむら「あなたが私たちを救いに戻ってきてくれたことを、絶対に忘れない」

それは、彼女を最期の時まで守り、そして一緒にいてあげることだ。

ほむら「絶対に」

絶対に彼女を独りにはしない。

まどかは黙っていた。
私の言葉の余韻が風に乗って消えたあと、まどかは口を開いた。

魔まどか「その優しさが、もっと大きな悲しみを呼び寄せることもあるのよ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 15:10:17.25 ID:bL+R9q990<> ほむら「!」

かつての私の拒絶の言葉が、まさかのカウンターになって返ってきた。
と、思ったけど、まどかの顔を見てみると、笑っている。

魔まどか「だったよね。今ならわかる」

まどかはいたずらっぽく笑った。

魔まどか「今わたし、すっごく嬉しいよ。ほむらちゃんがいてくれれば、もう何も怖くない」

魔まどか「悲しい結末も、一緒に越えることができるって、私は信じてる」

だから一緒に、頑張ろうね!!

まどかは希望に満ちた顔でにっこりと微笑んだ。
胸がきゅっと締めつけられ、私は返事ができなかった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 15:29:32.02 ID:bL+R9q990<>
次の日

ほむら「じゃ、学校に行ってくるわ」

鞄を持ち、革靴に足を入れ、私は振り向いた。
振り向いたって誰もいるはずがない……というのは昔の話。

魔まどか「いってらっしゃい、ほむらちゃん」ニコ

エプロンを着て、天使のように手を振ってくれる彼女がいた。

ほむら「え、ええ……」

朝早くからわざわざエプロンを引っ張り出してきて、
今日のお弁当は私がつくってあげるから!
と張り切っていたのだ。ちなみにまだ中身は見ていない。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 15:31:38.61 ID:bL+R9q990<> ほむら「私が帰ってくるまで、家から出ないでね」

魔まどか「は、はーい……」シュン

まどかはうなだれた。
しかしすぐにぴんと背筋を正して、少し無理した笑顔を浮かべ、

魔まどか「な、なんかできることないかな? ただお世話になってるだけだと私……」

出てきたのは気づかいの言葉だった。本当にこの子は……。

ほむら「……そ、そうね。じゃあ、お掃除でも頼もうかしら……」

魔まどか「掃除だね! わかったよ!」

ほむら「あっ、でも私の部屋には入らないでね」

魔まどか「えっ……う、うん?」

ほむら「じゃ、行ってくるわ」

魔まどか「いってらっしゃいっ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 15:46:13.35 ID:bL+R9q990<> 〜ほむほむ視点〜

笑顔でまどかが見送ってくれる。幸せすぎておかしくなりそう……。
しかも前にもまどかが歩いているわ……。こっちの世界の。
今頃まどか、張り切って掃除を始めているのかしら……。、

マミ「なに、にやけてるの? 暁美さん」

ほむら「と、巴マミ! 何か用かしら」

マミ「ひとりなの?」

ほむら「……いえ、私は一人じゃないわ」

マミ「私も一人じゃないけどね」

ほむら「それで? お連れ様はどちらに」

マミ「それはもういいわ。 それより昨日のことなのだけど」

ほむら「ふん、まどかがあなたを救ったらしいわね。ちゃんと感謝することね」

私は歩幅を大きくして、巴マミより前に出た。
一瞬間が空いて、背後から、

マミ「……ありがとう」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<>sage<>2011/03/31(木) 16:42:44.57 ID:x+q9N9jko<> つまんね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/31(木) 16:43:49.07 ID:6mwBJ0fIO<> しえん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 17:12:49.38 ID:bL+R9q990<> ほむら「……? だからそれは、まどかに」

マミ「あなたも、私を助けようとしてくれていたから」

ほむら「……何の話よ? 覚えがないわ」

人工河川の小道を進む。せせらぎを聴きながら、時の流れに想いを馳せてみるけど、
そんな記憶はどこにも……

マミ「まぁ、あなたが分かっていないのならいいけど。 言うべきことは言ったわ」

ほむら「よくわからない奴ね」

マミ「あなたほどじゃないわよ……学校に着くわね」

ほむら「そうね。お別れね」

マミ「つれないなぁ……昼休みにもう一度話せない?」

ほむら「……私はまどかを見守らないといけないわ。それにめんどくさいし」

マミ「もちろんよ」

そこで一度、巴マミは口を閉じ、

マミ「鹿目さんにも同席してもらうわ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 17:14:12.44 ID:bL+R9q990<> ……は?

一瞬、私は間抜けな顔をしていたかもしれない。
何を言っているの?

ほむら「意味が分からない」

マミ「そして聞かせてもらうわ」

しかし巴マミは無視して続ける。

マミ「あなたが、鹿目さんに魔法少女になってほしくない理由を」

ほむら「……あの子に伝えるべきことではないわ」

マミ「そうやって逃げていては、何も変わらないわよ」

そう言い残して巴マミは行ってしまった。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 17:15:18.11 ID:bL+R9q990<>
教室

まどか「あ、ほむらちゃんおはよう!」

ほむら「おはよう」

まどか「あのね、マミさんから伝言なんだけど……」

ほむら「知ってるわ。昼休みのことでしょ?」

まどか「あ、マミさんから聞いちゃった? そうなんだ」

さやか「転校生も誘ってるの? まぁマミさんもいるなら大丈夫だろう、けど……」

ほむら「……美樹さやか、あなたも来るの?」

さやか「悪いか……マミさんがどうしてもっていうからさー」

巴マミは何を考えているの……。
まどかと美樹さやかを呼んで、魔法少女にはならないでほしいと頼めばいいの?
特に美樹さやかに関しては逆効果な気がしてならないわ……。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 17:16:09.18 ID:bL+R9q990<> 昼休み

さやか「よっーし、じゃあいこっか」

まどか「ほむらちゃん、お弁当もって。屋上に行くよ」

ほむら「本当に行くの……?」

さやか「行くとなったらぐずぐずすんなぁー!」

ほむら「はぁ……」

屋上

マミ「みんなきたわね」

さやか「こんにちはマミさん!」

まどか「こんにちは」

ほむら「……」

屋上にはきれいな青空が待っていた。それをバックに微笑むまどかがまぶしくて
思わず目を細めてしまう。

マミ「いい天気ねぇ……それじゃ、お昼にしましょうか」

まどか「わぁー、マミさんのお弁当豪華!」

さやか「張り切ってますなぁ」

マミ「せっかくみんなで食べる日だからね。ちょっと頑張っちゃったわ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 17:17:10.26 ID:bL+R9q990<> ほむら「……料理、できたのね」

QB「マミは一人暮らしだよ? 料理できないわけないじゃないか」

さやか「いやその理屈はおかしい」

ほむら「いたのね……」

QB(まずいなぁ……暁美ほむらが何を話すかわからないけど、まどかやさやかに聞かせて、
僕の得になることだとは到底思えない……)

QB(でも、マミは頑固だし……)

さやか「じゃじゃーん! さやかちゃんもがんばっちゃいましたよーっと」

マミ「へぇぇ、美樹さん、あなた料理得意だったのね」

マミ「彼に振舞ってあげたら? ふふ」

さやか「え、えぇ〜」

さやか「そ、そうだ、まどか、あんたのは?」

まどか「私はパパにつくってもらっちゃったんだー」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 17:20:54.27 ID:bL+R9q990<> ほむら「……っ」

さやか「こ、こら転校生! そんなに見てもまどかのはあげないぞ」

まどか「えっ」

まどか「じゃあほむらちゃん、ちょっとずつ交換しようよっ」

ほむら「え、ええ」

マミ「暁美さんのはどんな感じ? 予想がつかないわ」

ほむら「こ、こんな感じよ」

私もまだ見ぬ、まどかの手作りのお弁当。
周りと同様に私も期待を持って、その蓋を開けた。

ほむら「」

時間停止が誤発したかと思ったくらい全員固まった。

マミ「まぁかわいい」ニヤ

まどか「わ、わぁ〜」

こら、そこで微妙な顔してるまどか。これを作ったのはもう一人のあなたなんだけど……。

さやか「まどかがつくった弁当みたいだなこりゃー」

まどか「うぅっ……」

何この子鋭い。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 17:42:31.57 ID:bL+R9q990<> マミ「それじゃぁ、本題に入りましょうか」

さやか「あ、やっぱなんか話があるんですか」

ほむら「……すべてを話せるかは分からないわよ」

マミ「いいわ。話せるだけのことを話してくれれば」

QB「無理に問い詰める必要はないんじゃないかな」

マミ「そうねQB……まずは美樹さんの方からにしましょうか」

さやか「わ、わたし?」

マミ「なぜあなたは美樹さんに契約してほしくないの?」


ちょっとストップ。9時ごろから再開します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/31(木) 19:02:05.26 ID:8jzr4aNIO<> QBの一人称は僕 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/31(木) 19:33:04.55 ID:/AaVhx4IO<> QBは時間ループ認識できてないんじゃね?
あとオクタビア戦までマミさん生きてるルートもあるぞ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 21:02:29.10 ID:bL+R9q990<> QB「まどかと一緒。ループ? なんのことだい?」←この場にいる
↑ こいつらは今のところ接触できてない ↓
QB(未来)「魔まどかと一緒。ループも把握済み」←ほむホームにいる

QB「10話との矛盾はありすぎるから、許してくれ」

ぼちぼち書き始めます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 21:04:19.01 ID:bL+R9q990<> ここは慎重に言葉を選ぼう。うまくいけば、美樹さやかに少しでも思いとどまって
もらえるかもしれない……それをまどかは望んでいる……。

ほむら「美樹さやか、あなたは他人のために一度きりの願いを使おうとしている」

さやか「な、どこでそれを」

ほむら「秘密。とにかく、他人に依存した願いはとても不安定なのよ」

ほむら「いつ崩れるかわからない……」

ほむら「このソウルジェム……真っ黒になったら何が起こるか、知ってる?」

マミ「それは知らないわ……QB?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 21:07:00.55 ID:bL+R9q990<> QB「魔法少女はそうならないように努力するものだ。
それに余分なグリーフシードを持っている君たちには縁のないことさ」

この反応は予想通り。こちらとしてもありがたい。
巴マミに突然真実を突き付けるのは危険すぎる……。
ある程度不信感を持ってもらえればいい。

ほむら「美樹さやかの行動指針を分析すると、魔法少女になったあなたは、
きっと自分を顧みずに戦いの渦に自ら飛び込んでいくでしょう」

ほむら「それはとても危険なの。率直に言って、あなた、魔法少女向きじゃないわ」

まどか「そ、そんな」

まどかが仲裁に入ろうとしかけた。しかし今は美樹さやかを見つめる。
彼女は私の言葉をよく考えてくれているようだ。
少なくとも頭から否定しようとはしていない。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 21:08:56.42 ID:bL+R9q990<> しばらくしてから、

さやか「……ん、否定はしない。確かに後先考えずに突っ走っちゃう事ってあるわ」

しかし彼女はこう続けた。

さやか「でも、それって、いけないことなのかな」

ほむら「あなたにとってもよくないし、まd、周りにとってもよくないわ……」

さやか「……ふぅん?」

美樹さやか……わかったようなわからないような……って顔ね。
今はこれが精一杯だわ。

マミ「じゃあ、次は、鹿目さんね」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 21:11:25.45 ID:bL+R9q990<> まどか「お、お願いします」

ほむら「えっと……」

どこまで話せるか。真摯なまどかの瞳を見て、一瞬どっちのまどかを前にしているのか
わからなくなりそうになる。だめだ。この子には闇を見せてはいけない……。
私の時間操作能力をこっちのQBに知られるのもよくないし……。

ほむら「あの淫獣から聞いたかもしれないけど」

ほむら「あなたは天性の才能を持っている」

まどか「あ、あれって……ほんとなの?」

QB「ほんとさ! 君は史上最強の魔法少女になるだろうね」

マミ「それと、契約するなってことが、どうつながるの?」

ほむら「魔法少女は……」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 21:20:52.79 ID:bL+R9q990<> ほむら「魔法少女としての力が強ければ強いほど……」

ほむら「万が一、力が暴走したときに……ひどいことになる」

マミ「力が、暴走……?」

巴マミは眉をひそめた。完全に箸が止まっている。

ほむら「まどかの力は特に強大だから、世界を滅ぼしてしまうかもしれない」

まどか「そんな……」

ほむら「そして当然まどかもそれに巻き込まれて死んでしまう。
あなたには……無事でいてほしいの……」

まどか「ほ、ほむらちゃん……!」

ほむら「悪いこと言わない。あなたは私が守ってみせる。だからあなたは契約しないで」

ほむら「それが、私とあなたとの約束だから」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 21:32:12.89 ID:bL+R9q990<> マミ「その……力の暴走、というのは、誰にも起こりうることなの?」

ほむら「ええ」

少しごまかしたけど、大筋は合っているから問題ないだろう。
しかしそこですかさず、抜け目ない淫獣が口を挟んでくる。

QB「でも、それはグリーフシードをちゃんと集めていれば、防ぐことができるよ」

QB「魔法少女になったまどかは強い。なにも心配いらないさ」

まどか「でも……死ぬのは私だけじゃないんだよね。世界が滅びるって……」

一同の注目がまどかに集中した。
俯いて考え込んでいたまどかがやがて結論を出す。

まどか「マミさん……ごめんなさい」

まどか「私、約束を守れない……」

マミ「鹿目さん……その気持ちだけで十分よ。これからも友達でいてくれるなら」

まどか「わかった、ほむらちゃん……今は、契約しないよ」

ほむら「あ、ありがとう……!!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 21:43:25.34 ID:bL+R9q990<> QB(なんてこった……)

まどか「でも」

まどか「ほむらちゃんや、マミさん、さやかちゃんが危険な目にあったら、
私、ただ見てるだけなんて嫌だよ」

QB「!」

QB「僕はいつでもまどかの傍にいるからね。契約はいつでもできるよ!」

ほむら「……それなら、絶対に負けるわけにはいかないわね」

マミ「暁美さん、いろいろ話してくれてありがとう」

ほむら「礼には及ばないわ。すべてを話したわけでもないし」

マミ「それでも……」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 21:55:12.78 ID:bL+R9q990<> マミ「そうだわ。あなた、今後私と共闘してみない?」

また巴マミは突拍子もない提案をする……。

ほむら「……なんで、あなたと」

マミ「鹿目さんを守りたいんでしょう? それは私も同じよ」

まどか「マミさん……」

マミ「それに、一緒に戦えば、私たちのどっちかが危険な状態になっても安心よね?」

マミ「鹿目さんに契約させたくないなら、承諾してほしいわ」

理屈は通っているので、とっさに反論できなかった。
だけど、もう一人のまどかはどうする? まどかとまどかを会わせたくはない。
……保留ね。


ほむら「……考えさせて」

さやか「……」

そして、昼休みの終了を知らせるチャイムが鳴った。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 21:58:28.34 ID:bL+R9q990<> ほむホーム

ほむら「ただいま」

魔まどか「わっわっ」ガサガサ

ほむら「なにしてるの……?」

魔まどか「み、みてないよ! なんにもみてないからね!」アセアセ

ほむら「……?」

魔まどか「さ、散歩でも行こうよほむらちゃん! ね!」

ほむら「え……えぇ」

巴マミの運命はすでに変えたので尾行は一時中断することにしていた。
かといってのんびりしていいわけじゃないんだけど……。
まぁいいか。まどかは、今日一度も外に出られていないのよね。かわいそうだわ。

魔まどか(ふぅ……あぶないとこだった)
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 22:29:36.83 ID:bL+R9q990<> 魔まどか「学校どうだった?」

なぜか私の顔を直視してくれないまどか。心なしか顔が赤いような。
傾きかけた西日に向かって歩を進める。この方角だと線路沿いの公園にたどりつくわね。

ほむら「昼休みに巴マミとまどか、美樹さやかと一緒にお弁当を食べたわ」

魔まどか「えっ、ずるーい……」

ほむら「……ごめん。でもあなたがあまり出歩くのは」

魔まどか「あっ、ちがうちがう。別にほむらちゃんに文句言ったわけじゃないんだ」

ほむら「……それで、巴マミにいろいろ聞かれて……」カクカクホムホム


魔まどか「そっかぁ……ちゃんと思いとどまってくれたんだね。わたし」

ほむら「ただ、美樹さやかの方は……」

QB(未来)「さやか? 契約してくれそうだったかい?」

ほむら「お前に聞かれるのは癪に障る」

魔まどか「どうだったの?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 22:33:15.20 ID:bL+R9q990<> ほむら「美樹さやかが納得してくれたかどうか自信がないわ……」

魔まどか「そ、そう……」

ほむら「できるだけの説得をしたんだけど……」

魔まどか「うん……ありがとう、ほむらちゃん」

QB(未来)「さやかが契約するのはほぼ確定だからね。
こちらから働き掛ける必要もないくらい」

ほむら「……そうね」

魔まどか「そ、そんなっ……!」

ほむら「彼女の場合、こいつに出会ってしまった段階でほぼアウトよ」

魔まどか「……」ジト

QB(未来)「僕が恨めしいかい? もっと憎んでくれると嬉しいなぁ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 22:44:09.99 ID:bL+R9q990<> 魔まどか「……やめとく」

ほむら「ただ、もし契約してしまっても、魔女化させなければいいのよ」

魔まどか「さやかちゃん……最初のうちは、頑張って魔女倒してたもんね……」

魔まどか「さやかちゃん……」ジワ

QB(未来)「あそこまで思い通りに行くとは思わなかったなぁ」

QB(未来)「杏子も、よく動いてくれていたよ」

魔まどか「……」グッ

固く拳を握りしめるまどか。こらえているのは怒りか悲しみか。
色の変わる噴水のある公園にたどりついていた。
子供連れのママたちが世間話をしていたり、
老人がベンチで談笑していたり、静かな時間が流れている。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 22:47:25.10 ID:bL+R9q990<> ほむら「鍵は、佐倉、杏子」

ほむら「彼女は美樹さやかを救う可能性を秘めた存在よ」

魔まどか「杏子ちゃんが……」

ほむら「その日は近い」

魔まどか「あの二人が、正しく出会えればいいんだよね」

ほむら「……そういうことよ」

そろそろ暗くなってきた。噴水の灯りがぼんやりと暗闇に浮かびあがってくる。
それに一瞬目を奪われていると、

魔まどか「そろそろ時間だよ、ほむらちゃん」

ほむら「……そうね」

私は振り返る。そのとき……、
まどかは、すでに魔法少女の顔をしていた。

思わず目を見開いた私に向けられていたのは、あの、神聖な微笑み。
……今は亡き彼女を、彷彿とさせるような。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 23:04:06.67 ID:bL+R9q990<> 倉庫

ほむら「まどか……毎度毎度、悪いけど」

魔まどか「わかってる。私は待機してるよ」

ほむら「ごめんなさい」

魔まどか「どうしたの? いつもは絶対隠れてなさいって怖いのに……」

ほむら「うぐ……そうかしら」

ほむら「とにかくっ、あなたは、強くなったわ」

魔まどか「えっ、ほんと?」

ぱぁっと明るい顔になるまどか。

ほむら「だからそろそろ、見てるだけっていうのもつらいわよね」

魔まどか「まっ、心配しないで。もしもほむらちゃんが危なくなったら
すぐに駆けつけるよ!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 23:06:25.85 ID:bL+R9q990<> ほむら「なるべくそれは避けたいけど。頼もしいわ」

魔まどか「えへへ」

ちなみに私たちは今、倉庫の屋根に潜んでいた。
そろそろまどかがやってくるはず。そして美樹さやかも……。

魔まどか「……ん、私がきた」

まどかを連れてきたのは緑髪の……なんていったかしら。クラスメイト。
魔女の口付けを受けていて完全に正気を失っている。

魔まどか「がんばれ私っ」

QB(未来)「ちょっといいかい?」

熱っぽかったまどかの顔が一瞬で氷点下に冷え込む。

魔まどか「……なにか用」

QB(未来)「さやかが契約した」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/31(木) 23:12:22.19 ID:2JOB97vF0<> さやかああああああ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/03/31(木) 23:23:38.40 ID:4vj8noVv0<> おいさやか

おい






おい・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 23:27:40.85 ID:bL+R9q990<> 魔まどか「……っ」

ほむら「……そう」

魔まどか「……止めようと思えば、止められてたのかな」

まどかはただ俯いて、吐くように言葉を紡いでいた。

ほむら「……無駄よ。前にも言った通り」

ほむら「そして私たちは今、彼女を救うため、最良の手段をとっているわ」

ほむら「だから、あなたは……そんなに気に病まなくても」

魔まどか「わかってるよ……わかってるけど」

魔まどか「そんなの……無理……だよっ……」

ほむら「まどか……」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 23:29:54.53 ID:bL+R9q990<> QB(未来)「それより、そろそろ下では騒ぎが起こるんじゃないのかい?」

QB(未来)「どっちのまどかにも死なれては困るんだ。しっかり守ってあげてくれよ」

ほむら「断じてお前のためじゃないわ」

魔まどか「……ほむらちゃん、気をつけてね」

ほむら「美樹さやかがうまくやるでしょう。おそらく私の出番もないわ」

ほむら「苦戦するようなら加勢するけど」

魔まどか「ほんと……気をつけて」

ほむら「心配は無用よ。だって私、もう一人じゃないから」

ほむら「ところで……」

ほむら「これが終わったら、今夜はゆっくり外食でも……しない?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/03/31(木) 23:31:52.96 ID:PHWnOZNq0<> 普通におもしろいなぁ〜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 23:33:06.96 ID:bL+R9q990<> まどかと同じくらい私も料理下手なので、これまで食事は、ほとんどインスタント食品か
レトルトで済ませていた。外食は、ずっと言いだそうと思っていたことだった。

魔まどか「ほんと! やったぁ!」

まどかの満面の笑みを見て、私も頬が綻ぶのを自覚した。

ほむら「どうせ普段使わないお金だし、好きなだけ食べて構わないわよ」

魔まどか「私のお腹が限界になる前にお願いね」

足元に黒い紋様が浮かび上がってくる。下で結界が出来あがったようだ。

ほむら「長くは待たせないわ」

私は右足を勢いよく振りおろし、屋根を破って飛び込んだ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 23:36:00.85 ID:bL+R9q990<> 結界内

まどか「や、やだ……どうしよ」

なんとか追跡を振り切って部屋に立て篭もったまどかだったが、
魔女はすでに現れようとしていた。
甲高い悲鳴が響いた後、その部屋は間もなく空っぽになった。

〜まどか視点〜

まどか「……っ……っ……」

うそつき……うそつき……。
一緒に戦ってくれるっていったのに……。
弱虫のいくじなし……。
あなたの命を救ったのは誰だと思ってるの……。

うそつき。しんじゃえ。

まどか(マミ……さん……)

まどか(やっぱり……私、が弱くて)

まどか(うそつき、だったから……怒ってるんだ) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 23:40:19.63 ID:bL+R9q990<> あなた、魔法少女向きじゃないわ。
あなたは、世界を滅ぼす。あなたさえあなたなんかあなたあ……
あなたなんか、いなければ。

まどか(ほむ、らちゃん……にも、嫌われた)

天使がゆっくりと近づいてきて、私の手足を掴んだ。
救済のためじゃない……罰を与えるためなんだ……。
うそ……なんでそんなに伸びてっ……。

まどか(あ……あぁぁぁぁあっ!!)

千切れる……っ!

?「はっ!!」

三度、斬撃が走り、すべての使い魔が両断された。
私の身体が元に戻る。
使い魔は標的を変えた。
翻るマントの色は、薄い蒼。

まどか「……さやかちゃんっ……!?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 23:46:05.01 ID:bL+R9q990<> さやかちゃんは四方を使い魔に囲まれる。
目にも止まらぬ神速で剣は抜かれ、敵を切り裂いていく。

でも……。

まどか「さやかちゃん、うしろ!」

さやか「くっそ! 触ってんじゃないわよっ!」

使い魔の数が多すぎる。
さやかちゃんは後ろから両腕にしがみ付かれ、剣を封じられてしまう。

まどか「……だれかっ!」

ドンッ! ドンッ!

連続して銃声が響いた。
あれは…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 23:52:02.38 ID:bL+R9q990<> さやか「マ、マミさんっ!」

マミ「無茶しすぎよ」

マミ「なんで契約してしまったのかは、あとでじっくり聞かせてもらうわ……」

動けるようになったさやかちゃんは、再び、使い魔を斬り、そして飛ぶ。
マミさんは魔女の本体と思しき物体を見つけ出し、一気に近づいた。
それはテレビのモニターのような形をしていた。

マミさんがマスケット銃を構え、今まさに射程距離に入ろうという時、

突然、空間から光が消えた。
完全なる暗闇に支配される。
気温が急激に低下し、背筋が凍った。

まどか「ひっ……」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/03/31(木) 23:57:43.92 ID:bL+R9q990<> その時、不意に、パッと、一点の光源……映像が映った。
それは……。

マミ「っ!?」

マミさんが飛びのいた。その目はなぜか映像に釘付けになっていた。
その腕はだらりと下がったままだ。
モニターから水死体の髪の毛の塊のようなものが、汚水にまみれて垂れ流される。

マミ「や……ぃやだ……」

マミさんに忍び寄る使い魔たち。
お菓子の魔女が画面の中から、マミさんに向けて大口を開ける。

私はなんとか声を振り絞った。

まどか「マミさん、しっかりして!! その魔女はもう死んだよ!!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/01(金) 00:00:20.88 ID:XAO3yxLI0<> さやか「マミさん!! あぁっ!!」

再び捕まってしまうさやかちゃん。
マミさんはまだ目覚めてくれない。このままじゃっ……また……!!
私は奇跡を願った。昨日みたいに、助けに来てよっ……!!

暗闇の中に一瞬何かが閃いた、と感じられた。
そして、爆発が、すべてを吹き飛ばした。

〜魔まどか視点〜

魔まどか「ほむらちゃん……遅いな……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/01(金) 00:02:34.30 ID:XAO3yxLI0<> QB(未来)「苦戦してるのかな? 以前はさやかでさえ難なく勝てた魔女だったけど」

魔まどか「魔女の実力が変わることって、あるの?」

QB(未来)「それはあるかもしれないけど……でもむしろ、相性の問題だろう」

魔まどか「相性……?」

QB(未来)「暁美ほむらに聞けば分かるだろうさ」

QB(未来)「そんなことより、そろそろ君も、出番かもしれないよ?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/01(金) 00:07:46.88 ID:XAO3yxLI0<> 〜まどか視点〜

まどか「ほ、ほむらちゃんっ……!」

さやか「な、なんであんたが来てんのよ!?」

闇の中、燃え盛る炎が、周囲を赤々と照らし出していた。
その炎を背後に、表情を陰の中に、彼女は立っていた。
そして、その腕にマミさんを抱きとめていた。

ほむら「……情けないわね、巴マミ」

マミ「うぅ……わたし……」

ほむら「まどか、彼女をお願い」

まどか「うん……マミさん。しっかりしてください……」

私はほむらちゃんからマミさんを引き取って、膝の上に寝かせてあげた。

マミ「うぅ……」

マミさんは悪夢にうなされているように苦しみ、私の身体にしがみついてきた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/01(金) 00:11:33.54 ID:XAO3yxLI0<> ほむら「あなたも下がってなさい、美樹さやか」

さやか「な、なんでよ」

ほむら「……戦力外よ」

さやか「な、なんだとっ」

まどか「喧嘩してる場合じゃないよっ!!」

魔女はまだ生きていた。いくつものモニターが飛び回っていて、
どれが本体だかわからないんだ。

ほむら(前よりも手強くなってる……?)

ほむら(……まぁ、やることは変わらないわ)

ほむらちゃんの姿が一瞬で消え、次の瞬間、すべてのモニターが爆発した。

でも……、

ほむら「っ!?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/01(金) 00:14:53.19 ID:XAO3yxLI0<> 取り残したモニターが、死角から、不意に、ほむらちゃんの眼前に迫った。

ほむらちゃん……ほむら……ほむら……名前負けしてるんじゃない?
私がせっかく……命と引き換えに……助けてあげたのに。
何度、私を殺したら気が済むの? 痛いよ、嫌だよ……。
もう、自己満足のために、私を殺すのは……やめてよ……。

ほむら(いけ、ない……精神攻撃も……強力に、なって……)

ほむら(い、意識が……)

さやか「このバカ!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/01(金) 00:17:03.28 ID:XAO3yxLI0<> 叫んださやかちゃんがほむらちゃんを助けようと飛んだ。
しかし大量の使い魔はこの空間を埋めつくさんばかりに広がっていて、
さやかちゃんは三度捕えられた。

さやか「くっそぉっぉぉぉ!!」

まどか「み、みんなぁぁ!!」

あぁ、あぁあ……。

こんなの夢だ……こんな、こんな悪夢、早く覚めてよ……!!
と、私が念じた時。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/01(金) 00:25:22.66 ID:XAO3yxLI0<> 一瞬、何が起こったのか、わからなかった。

ただ、視界が、暗闇に包まれていたすべてが、桃色の輝きで満たされた。
それは天蓋をぶち抜いて突き下ろされた、極太の光の柱のようなもの。
申し訳程度についている鋭利な先端が、辛うじてこれが矢だと主張していた。
それは、漆黒の闇に裁きを下す、天上の光陰。
それは、絶望を打ち破り、希望を振りまく救世主。

使い魔の大半が駆逐された。
ぽっかりと空いてしまった中心の空間。光が収束していくのと同時に、

舞い降りた。
救世主がくるりと私のほうを振り返る。

魔まどか「もう大丈夫だよっ」

いくじなしさんっ!

まどか「あなたは……!」

どうして……!
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/04/01(金) 00:29:46.22 ID:XAO3yxLI0<> マミ「今日はここまで、よ」

まどか「とりあえずスレタイまでたどり着けたよ……」

さやか「私弱すぎない……?」

QB「仕様だね」

魔まどか「書き溜めが尽きそうなのでペースダウンするかも……」

マミ「こんなとこまで読んでくれた方には感謝を」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/01(金) 00:45:08.28 ID:fNo6GZCBo<> おつおつ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東京都)<>sage<>2011/04/01(金) 01:54:08.88 ID:gg7jvMQso<> 乙乙
ついにWまどか対面か。wktk <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/04/01(金) 02:46:31.27 ID:9RKD+VdAO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/01(金) 07:49:03.59 ID:YRV7qTeIO<> エリーちゃん強すぎ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/01(金) 08:01:51.29 ID:SPBp52fDO<> 乙♪ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/04/01(金) 16:11:35.14 ID:b4OJu5bs0<> 続きが楽しみ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/01(金) 20:24:44.71 ID:Yv1TGc1IO<> さやかが契約した時点で詰んでる気がする <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2011/04/01(金) 20:26:03.39 ID:qYbX0VrAo<> どうあがいても魔女化だからなぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/04/01(金) 22:45:09.81 ID:XAO3yxLI0<> 再開します 


倉庫

QB「まどかが……2人いる?」

横たわった人々の中に、白いぬいぐるみのような生き物がいた。
そのとき、天井の梁の上に全く同じ生き物がぴょこっと現れた。

QB(未来)「混乱、してるようだね」

両者は見上げ、見下ろし、出会った。

QB「……君は誰だい?」

自分と同じ姿の相手を見ても、特にその表情に変化はない。

QB(未来)「僕は君さ」

ただ、その情報を求めるのみ。

QB「事情を知っているんだね? 君には、僕に説明をする義務があるんじゃないかな」

QB(未来)「……やれやれ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/01(金) 23:02:20.63 ID:XAO3yxLI0<> 結界内

す、すごい……。
現れてからものの数秒、魔女空間は崩壊を始めた。
目の前に舞い降り、繰り出された光の魔法。そこからの立ち回り。
……圧倒的だ。

今、こちらに向かって歩いてくるのは、
私と瓜二つ、いや、同じ顔をした女の子。
でも、これが私なわけがない……私はこんなに強くない。
心も。体も。

マミ「か、鹿目……さん……」

私にしがみついているマミさんがうわ言のように呟いた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/01(金) 23:14:49.26 ID:XAO3yxLI0<> さやか「ま、まどか……あんた契約しちゃったの!?」

さやかちゃんは動転した様子でその女の子に駆け寄った。
しかしすぐに私の存在に気付いて、

さやか「って、あれ!?」

二度、仰天した。

ドサッ

まるで砂袋が倒れたかのような、力の入っていない衝撃音が聞こえた。

まどか「ほむらちゃんっ!!」

ほむらちゃんは呻きながら、何かに苛まれるように、丸くなって震えていた。
私と同じ顔の女の子が、無言で彼女に近づき、軽々と抱き上げた。

魔まどか「さやかちゃん、マミさんをお願い」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/01(金) 23:21:23.75 ID:XAO3yxLI0<> さやか「う、うん……」

さやかちゃんは疑問顔のまま、私の膝からマミさんを抱き上げた。

さやか「分身でもできるようになったの……?」

さやかちゃんは魔法少女になっちゃうし、マミさんとほむらちゃんは倒れた。
そしてなぜか私と同じ顔の子がそこに助けに来る。
今までの恐怖も、これからの不安も、今は麻痺してしまっていた。

魔まどか「もうじき警察の人が来ちゃうよ……そのまえに場所変えよ?」

この場の主導権を握っているのは彼女だった。
私たちは黙って従うほかなかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/01(金) 23:52:09.90 ID:XAO3yxLI0<> 電波塔

その頃、見滝原の街を一望できる場所に、一人の魔法少女がいた。
たい焼きを食いちぎり、いらついた様子で言い放つ。

杏子「なになに? もう一度最初から説明しな!」

QB「はぁ……何度目だい?」

杏子「お前が要領得ないからだろ」

QB「だから、この街には現在、4人の魔法少女と1人の魔法少女候補がいるんだよ」

QB「魔法少女は、巴マミ、暁美ほむら、美樹さやか、鹿目まどか。
魔法少女候補は、鹿目まどか だ」

杏子「鹿目まどかってのは、いったい何人いるんだ。
同姓同名か? それとも、分身でもできるのか?」

QB「彼女たちは異なる時間軸に由来する同位体なんだ」

少女が口の中のたい焼きを咀嚼していく。
口の中が空っぽになったとき、彼女は口を開いた。

杏子「……未来人、って言いたいの? お前正気かぁ?」

QB「それは彼女に言ってくれ」

QB「知っての通り、僕はどんな願いも叶えることができる。
時間遡行も例外じゃない」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/01(金) 23:55:08.15 ID:XAO3yxLI0<> 実は、少女の横でしっぽを振っているQBは、少女と話すのと同時に、
彼女に感知できないテレパシーで、遠方の自分と話していた。

QB(ここまで、何か間違ってたかい?)

QB(未来)(いや。さすがは僕。理解が早くて助かるよ)

杏子「ふぅん……まあいい」

杏子「それで、そんないかにもヤバ気なところに、私を呼んだ理由はなんだ?」

QB「なに、ここは君にとって、いい狩場になるだろうと思ってね」

QB(君に褒められてもね。というか、君が説明すればいいじゃないか)

QB(未来)(それはこの時空に属する君の役目じゃないか。僕は同時に活動でき、
優位に立って操ることのできる協力者を求めて、君の前に姿を現しただけだよ)

杏子「気持ちわりい奴だな。何企んでやがる」

QB「……」

QB(それ協力者って言わないよ。君はまだ情報を隠しているんだね?) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/01(金) 23:59:42.82 ID:XAO3yxLI0<> 杏子「だいたい、そんな私に分の悪いしょうb」

QB「まあいくら君といえど4人を相手にするのは厳しいか」

QB「確かに諦めるのが賢明かもしれないね」

杏子「誰が、んなこと言った?
正面からじゃあ、確かにキツイ。なら搦め手でいけばいいんだ」

QB(未来)(誰もそんなこと言ってないだろ? 
とにかく鹿目まどかと契約できれば、文句ないだろ?)

QB「……」

QB「なにか策があるのかい」

杏子「策なんてご立派なものは要らねえよ。
鹿目まどかと美樹さやかは契約したての新米だろ?
こいつらにまずはご挨拶して、交渉開始と行こうじゃないか」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/02(土) 00:06:46.37 ID:KGwnEB4K0<> QB「いや……鹿目まどかはやめたほうがいい」

QB「彼女は天才だ……1対1で、君もやられかねない」

杏子「……どうだか」

QB「本当だよ」

QB(もちろん)

杏子「……じゃ、決まったな」

杏子「要するに」

杏子「美樹さやかとかいうヒヨッコを、ぶっ潰しちゃえばいいんでしょ?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/02(土) 00:11:38.03 ID:KGwnEB4K0<> ほむホーム前

魔まどか「あー、鍵はほむらちゃんが持ってるんだ。どうしよ」

ほむらちゃんを背負って前を歩いていたのは、私と同じ顔の子。
今、困った声をあげている。
あまりに異常な状況に、私の頭は逆に、普通に回転していた。

まどか「わ、私が探します!」

なぜ、どうして、という疑問を頭の外に閉めだすことで。

魔まどか「あ、大丈夫だよ」

さっきから、何度も「大丈夫」。こればっかり。
今も、大丈夫、大丈夫……と呟いている。

まどか「いいえ、私、今日ちっとも役に立ってないですから!」

それを遮るように私は言った。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/02(土) 00:14:06.32 ID:KGwnEB4K0<> 魔まどか「やだなぁ……そんな他人行儀にしないでよ。自分に」

だけど、この子はそれを私に思い出させる。
私の顔が、私に安心してと言ってきている。

私は答えなかった。
この子と自分が同じ人間だとは、どうにも思えなかった

ほむらちゃんに心の中で謝り、制服を確認していくと、スカートのポケットからじゃらりと鎖で繋がれた鍵束が出てきた。

さやか「か、勝手に入っていいの? え、と……まどか……さん?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/02(土) 00:16:09.74 ID:KGwnEB4K0<> 魔まどか「なんで、さん付けなの……?」

まどかさん。
私もしっくりきた。本人はそうでもないみたいだけど。

さやか「あ、ははっ。いやねー、見た目はどう見てもまどかなんだけどさ。
よく見ると、どうも顔つきが違うよね。
気安く「まどかぁ〜」なんて呼べませんねぇ……」

魔まどか「むぅー、……入って」ガチャ

魔まどか「あ、大丈夫だよ」

魔まどか「私、居候なの」

そんな、にこやかに言われても。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/02(土) 00:41:24.96 ID:KGwnEB4K0<> ほむホーム

まどかさんは迷いなく寝室に向かい、ほむらちゃんをベッドに寝かせてあげていた。
さやかちゃんも、もう一つのベッドにマミさんを寝かせてあげた。

魔まどか「ありがとね」

さやか「いえいえ。じゃあ私、コーヒーでも入れてきますわ」

魔まどか「あ、台所は廊下を右だよ」

さやかちゃんは頷いて、部屋を出た。
そのとき、不意に、まどかさんが、すとんと座り込んでしまった。
やっぱり、戦闘の疲れが出てるのかな。

目を覚ます様子のない、ほむらちゃんとマミさんを前に
何をすることもなく、じっと、座っていた。
私はなんとなく近寄りがたくて、扉の近くに突っ立っていた。

魔まどか「……あ、あ、あ」

まどか「?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/02(土) 00:43:06.71 ID:KGwnEB4K0<> 最初、何の音かと思った。
それはまどかさんの口から出ている、嗚咽だった。

まどか「ま、まどか、さん……?」

魔まどか「んぅっ……」

さっきまで限りなく頼もしく見えていた背中が、一転、とても小さく見えた。
肩を震わせ、涙をこぼしている、その姿は、確かに私だった。

さやか「なにかあったんですかー?」

入ってきたさやかちゃんがお盆を置きながら、その背中に聞いた。
それがゆっくりと振り返った。

魔まどか「……さや、かちゃん」

さやか「ぅえっ、えっと……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/02(土) 00:49:30.96 ID:KGwnEB4K0<> 泣き腫らした目がさやかちゃんを鋭く睨んでいた。

魔まどか「どうして……契約したの」

さやかちゃんは腕を頭の後ろで組んで、部屋の隅を見つめた。
しかしまどかさんの視線はますます強まるばかりだ。

魔まどか「ほむらちゃんが、忠告してくれたはずだよね」

魔まどか「昨日のマミさんのことも、見てたよね?」

魔まどか「一つ間違えば、どうなっていたかなんて知らないんだよね!」

さやか「……」

魔まどか「ねぇ、答えてよ!」

さやか「……」

まどか「さ、さやかちゃん……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/02(土) 00:53:24.42 ID:KGwnEB4K0<> さやか「……恭介の手を、治したかったから、だよ」

ようやく、さやかちゃんは拗ねたように答えた。

魔まどか「あぁぁ……なんで……なんでなの……あぁ」

ついには両手で顔を覆ってしまった。
まどかさんの嘆きは少々、私たちの理解を越えていた。

ひょっとしたら……。
彼女は私たちが見ずに済んだものを……決して見たくないものを、
たくさん見てきたのかもしれない。もしかして私たちが、
何も気付いていないだけなのかもしれない。

魔まどか「……ごめん」

なぜかまどかさんはポツリとそう言い、部屋を出て行った。

さやか「な、なんだったの……?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/02(土) 00:55:41.68 ID:KGwnEB4K0<> まどか「わかんないけど……、さやかちゃんのことが心配なんだよ」

まどか「あの時、もしマミさんに、助けが来なかったら……どうなっていたか」

まどか「今日だって……まどかさんが来てくれなかったら、私たち全員……」

想像もしたくないけど……目を背けることのできない現実なんだ。

まどか「さやかちゃん……気をつけてね」

さやか「……わかったわよ。心配してくれてありがとっ」

さやかちゃんはようやく笑顔を見せてくれた。

魔まどか「……」

まどかさんが無言で部屋に戻ってきた。

さやか「まどかさん……さっきはまともに答えなくてごめん。心配かけた」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/02(土) 00:59:08.45 ID:KGwnEB4K0<> 魔まどか「ぅん……ぃぃよ……」

まどか「まどかさん……?」

消え入りそうな返事。足元もふらふらとおぼつかない。
そのままふらふらとほむらちゃんのベッドに向かっていき、
とすん……、と倒れ込んでしまった。

さやか「そこ、転校生のベッドですよ……? おーい」

さやかちゃんが呼びかけるが返事がない。

さやか「ダメだ。寝てるわこれ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/02(土) 01:01:13.46 ID:KGwnEB4K0<> まどか「どうする……?」

部屋の時計を見ると既に日付が変わっていた。
携帯には家からの着信履歴がずらりと並んでいた。

さやか「泊まるしかないっしょ。幸いベッドはけっこう広いし……」

まどか「マ、ママ? わっ! ご、ごめんなさい! うん……泊まってく……うん」

さやか「……わざわざ怒られるために電話するとは律儀だわ」

さやか「まどかー、マミさんの方のベッドもらっちゃうぞー?」

さやか「無回答は承諾とみなすー」

電話を終えて戻るとさやかちゃんがマミさんの隣ですでに眠りに就いていた。
私もふらふらと進んで……どっちのベッドかわからないけど、たどりついて、
そのまますぐに眠りに就いた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/02(土) 01:10:55.41 ID:KGwnEB4K0<> マミ「今日は、ここまで」

まどか「眠いよぅ」

杏子「私の登場シーンが3人で会話してるように見えるんだが……」

ほむら「しばらく平和な話が続くでしょう」

さやか「次回は まど×まど」

マミ「こんなとこまで読んでくr」

魔まどか「あ、待って」

マミ「」(時間押してる)

魔まどか「セリフの横の名前もまどかさんにするべきだと……思う?」

マミ「こんなとこまで感謝を!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2011/04/02(土) 01:19:31.33 ID:pvF1utzAO<> 乙
まさか、まどかサンドでほむら昇天とか…
あと、名前はそのままでいいと思う <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/02(土) 01:36:02.03 ID:pzp0tZjjo<> おつおつ
まどほむまどだったらほむらの反応が楽しみだ。
まどかさんは1〜3周目まどか(あるいはその記憶持ち)のイメージが個人的に強いので自分もそのままで。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/04/02(土) 03:10:05.24 ID:tEyJ+7cAO<> 乙、打ちやすい方でいいんじゃない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/02(土) 03:24:37.24 ID:PWFNpDEIO<> まどまどとは新しい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/02(土) 08:31:17.07 ID:D72KKz1DO<> 乙
QBQBに期待してるわ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/02(土) 09:55:08.28 ID:p7QMXU6E0<> 乙
マミさんかわいい!! 期待してるよ〜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/02(土) 23:43:19.67 ID:KGwnEB4K0<> そのままが多数なようなのでそのままでー

〜ほむほむ視点〜

私は……あぁ、死んだのかな……。
暗闇の中、私はぬくぬくと心地よく目を閉じていた。

しかし、体はちゃんとある……。
だったら目を開けてみたら、何か見えるのかも。
目を瞑ってぬくぬくしていたい気持ちに、好奇心が勝った。

目を開ける……。

目に入ったのは寝室の天井だった。
そして……左にまどか。
右にも……まどか。

ほむら「ここが天国か……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/02(土) 23:52:25.86 ID:KGwnEB4K0<> ほむら「ふ……ふふっ……あは……は……」

ほむら「ハァハァ」

ほむら「だったら何しても……いいわよね」ハァハァ

この状況の意味を考えようとは思わなかった。
過去のことも未来のことも、今は頭になくて。
素直な欲望が私を突き動かすのみ。
羞恥心だとか、常識だとか、そんなのどうでもいい。

これは神様からの御褒美に違いないわ……。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/03(日) 00:23:59.02 ID:Eu8gAeLa0<> さすがほむほむ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/03(日) 00:26:37.62 ID:2Kp32YXIO<> ほむほむが通常運転に戻っててワロタ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/03(日) 00:31:27.73 ID:baG7k+Iy0<> まどか「みゅ……」

とりあえず右の子のほっぺたをぷにぷに。
その柔肌をこねくりまわす。
いやいやをするように首を動かすけど、離してあげない。

まどか「んぅ……ぅん……」

ほむら「髪……さらさらだわ……」ホムホム

魔まどか「むぅ……」

ドカッ

ほむら「あぐぅ」

左のまどかから、私のお尻に膝が入った……。
顔に似合わずえげつないわね……
てか寝相悪……けど、そんなところもかわいいわ!

仕方ないわね……構ってあげましょう。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/03(日) 00:45:42.34 ID:baG7k+Iy0<> 透き通るような首筋に顔を寄せてみると、汗ばんだ芳しい匂いがした。
少し下にはワキ。まどかのワキ汗……っ。
制服の上からっていうのもいいんだけど、少し肌色が足りない……。

なんとなく、視線がスカートに向かった。
それをずるずると引き下ろしてあげる。
それに巻き込まれたパンツまでずりおちていく……。

まどか「……むぅ」ドカッ

ほむら「ひゃんっ」

今度は右の子から。
まどかに足蹴にされる喜びというものを覚え始めた私は、右の子を……。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/03(日) 01:05:40.91 ID:baG7k+Iy0<> そうして私がまどかとまどかを、容赦ない激しさでほむほむしていると、
なにやら部屋の外が騒がしい。

さやか「なんか今朝のマミさんはズバズバ言いますね……」ショボーン

マミ「あらそう? 昨日の魔女の精神攻撃のせいじゃないかしら」

さやか「あー、心の中を包み隠さずってこと……ん?」

さやか「なにしてんのよ、転校生?」

ほむら「きれいなピンク色ね……」ハァハァ

さやか「」

マミ「おい、こら



おい」

ほむら「む、なんなのあなたたちは。私はまどかたちと愛の契約をしあぐぅ」

そのとき、両側からまどかのダブル膝打ちが直撃し、私は悶絶した。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/03(日) 01:28:58.85 ID:baG7k+Iy0<> 〜まどか視点〜

マミ「言い訳を聞きましょうか?」

ほむら「いえ……なんというか……」

ほむらちゃんはなぜか私と目を合わせてくれない。
なぜか異様に顔が真っ赤。

まどか「何かあったの?」

マミ「鹿目さんは気にしなくていいのよ。私もばっちり脳裏に焼き付けたから」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/03(日) 01:43:32.02 ID:baG7k+Iy0<> 魔まどか「?」

ほむら「魔女が悪いのよ……ええそうよ、私は悪くない」

マミ「あなたねぇ」

マミさんとさやかちゃんは2人で朝食を済ませてしまったそうだ。
私たち3人の朝食は、冷蔵庫から発掘した菓子パン。1人一個。

さやか「転校生の本性を垣間見た、ってだけよ……」

まどか・魔まどか「……?」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/03(日) 01:49:32.41 ID:8nTPGqpDO<> 何がピンク色だったのかくわしく <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/03(日) 01:56:17.77 ID:baG7k+Iy0<> マミ「今日はこれだけ」

ほむら「まだまだ出せるでしょ? ほらほら」

まどか「だ、だめだよぉ……もう全部でちゃうよぉ……」

さやか「書き溜め的な意味で」

杏子「展開は考えてあるが本文がない、などと供述しており……」

魔まどか「まぁ、大丈夫だよっ」

マミ「それではまた明日、かな」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/03(日) 02:56:59.02 ID:p7BDTY610<> 乙

でも変な部分はいれないで、普通に進めたほうがいいかと・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/04/03(日) 07:32:33.73 ID:+RETtewjo<> 乙 まどほむ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/04/04(月) 01:34:01.77 ID:stMELmrk0<> マミ「えぇっと……今朝はなんだかごめんなさいね」

さやか「いやまぁ、魔女のせいだし」

ほむら「魔女のせいだもの」

まどか「あの……ほむらちゃん?」

ほむら「な、なに、かしら……」ドキ

まどか「まどかさんのこと……ほむらちゃんは知ってたの?」

珍しくほむらちゃんが一瞬ぽかんとした顔になった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/04(月) 01:37:45.47 ID:stMELmrk0<> まどか「どうして、私と同じ姿で……あなたは、だれなの?」

私はテーブルを挟んで対面しているまどかさんに、正面から聞いた。
まどかさんはここぞとばかりに、

魔まどか「私は……!」

名乗ろうとして、先を越された。

QB(未来)「鹿目まどかさ」

マミ「QB……いたの」

QB(未来)「やぁ、マミ。みんな」

まどか「それじゃ、説明になってないよぅ」

ほむらちゃんがため息をついた。
先ほどまでの豊かな表情はもう見られなかった。

ほむら「あなたたちと会わせたくはなかった」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/04(月) 01:52:47.02 ID:stMELmrk0<> マミ「美樹さんから聞いたわ。昨晩、私たちを助けてくれたんだってね」

魔まどか「あの時は、夢中で……体が勝手に動いてたんです」

ほむら「油断していたわ……。あなたたちを危険にさらしてしまうなんて」

ほむら「ごめんなさい」

まどか「そんなこと……みんなが無事だったんだから、それでいいよ」

ほむら「でも、あなたたちのショックが、予想より遥かに小さいようだから、
私は驚いているわ」

さやか「まぁ、絶対いい人なのは間違いないしさ」

まどか「でも……ねぇ、なんで私と同じ顔なの? 姿なの?」

私は核心を突く問いを発した。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/04(月) 01:55:27.08 ID:stMELmrk0<> 魔まどか「……」チラ

ほむら「……ちょっと飲み物つくってくるわね」

まどかさんはほむらちゃんの方を見た。しかしほむらちゃんはそれに気付かなかったのか、それともあえて無視したのか、席を立ってしまう。

マミ「……今更隠しても仕方ないわ」

代わりにマミさんが同意、をする。
まどかさんは一度、すぅ、と息を吸い、
一気に言った。

魔まどか「……私は、未来から来たあなただから」

まどかさんは冗談を言っているような顔ではない。

さやか「なるほどー……って、えぇぇえぇぇぇ!?」

隣でさやかちゃんが古典的な驚き方をする中、
私はぼんやりとまどかさんのことを見ていた。
その言葉を反芻して、それを信じることができるか考える。

なぜ、いつから、どうやって。
疑問は山ほどあるけれど、私が真っ先に聞きたかったのは、全然違うことだった。

まどか「まどかさん……私たちって、同じ、ですか?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/04(月) 01:56:47.24 ID:stMELmrk0<> 考えがまとまる前に思ったことを口に出していた。
まどかさん以外のみんなは怪訝な顔をした。

魔まどか「うん、同じだよ」

しかしまどかさんは即答。

魔まどか「もちろん、経験してきたものは違うけど……」

魔まどか「私たちはいつでも鹿目まどか、そうでしょ?」

にこっと笑いながら、同じ魂を持つ仲間との出会いを喜んでいるのだろうか。
私には……まだ分からない。
だけど、聞きたいことは、勝手に出てくる。

まどか「だったら、私も、まどかさんみたいに、みんなを守ることが、できるのかな」

思わず、私の口から洩れたのは、憧れ。

魔まどか「そ、それは……」

まどかさんは今度は即答してくれない。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/04(月) 02:01:02.03 ID:stMELmrk0<> ほむら「その必要はないわ」

ほむらちゃんがお盆をテーブルの真ん中に置きながら言った。

ほむら「私はやっぱり、あなたたちは……違う人間だと……思うわ」

マミ「その通りね、それに危険だわ」

マミさんはお盆の上で手を迷わせた。

マミ「なんでもかんでも頑張りすぎると、自分を滅ぼすことになるわよ……」

魔まどか「!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/04(月) 02:03:11.55 ID:stMELmrk0<> マミ「ちょっと、紅茶がないじゃないの……」

ほむら「私はコーヒーしか飲まないの」

さやか「うへー、これブラックじゃん……」

マミ「私はクリーム入りの甘い紅茶しか飲まないわ」

ほむら「邪道ね……」

マミ「……」イラッ

みんなの注意が逸れたせいで、私しか気付かなかったようだけど、まどかさんは
マミさんの言葉にぴくっと反応していた。

頑張りすぎ……。
そっか……ちょっと調子乗ってたかなぁ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/04/04(月) 02:12:43.04 ID:stMELmrk0<> マミ「今日はここまで」

杏子「前回とのギャップが……」

ほむら「魔女が悪い」キリッ

まどか「ほむらちゃんはブラックコーヒーのイメージだよねー」

魔まどか「根拠ないけどねー」

マミ「クリームヒルト・グレートヒェンってなんだかおいしそうな響き……」

さやか「マミさーん……」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/04/04(月) 02:22:00.34 ID:BczgRE3so<> 乙 まど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国四国)<>sage<>2011/04/04(月) 02:30:17.91 ID:9UhH0slqo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)<>sage<>2011/04/04(月) 16:16:11.50 ID:yIW8QoDAO<> おつ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga sage<>2011/04/05(火) 02:58:40.72 ID:2Fno+T5Y0<> QB(未来)(諦めるなんて、もったいないよ)

まどか「え?」

全員「?」

まどか「あ、ううん、なんでもない」(私にしか聞こえてない……?)

QB(未来)(君は彼女と同じ素質の持ち主だ。
彼女たちに危機が迫る時、君は切り札になりうる)

まどか(でも……)

QB(未来)(その時は近いよ……)

まどか(! どういうこと?)

QB(未来)(そのことについては、暁美ほむらや、もう一人の君が詳しいだろう)

QB(未来)(彼女たちは、君のために、命も投げ出す覚悟だよ)

QB(未来)(君も、彼女たちのために、覚悟するべきじゃないのかな)

それっきりQBは黙り込んだ。

まどか(それは……) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/04/05(火) 03:34:06.52 ID:2Fno+T5Y0<> マミ「砂糖持ってきたわ」

さやか「あ、それ私もほしいです!」ザーッ

ほむら「あ、あなたたち……なんてことを……!」

一方でまどかさんも騒ぎに混じらず、何か思いつめた顔をしていた。
ふと目が合い、まどかさんは片手を上げ、ちょいちょいと、寝室のほうを指さした。
……ついてきてってこと、かな?

まどかさんは無言で立ちあがる。

ほむら「……? まどか、コーヒー飲まないの?」

魔まどか「学校の準備まったくしてないの。ちょっと時間が……」

まどか「わ、私も行ってくるね」

ほむら「え、ええ……」

ちょっとしょんぼりしたほむらちゃん。ごめんね。
まどかさんは先に立って寝室に向かってしまった。

マミ「砂糖入れてもだめね。コーヒーな時点で」

ほむら「さっきから、黙って聞いてれば……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/05(火) 22:40:04.62 ID:2Fno+T5Y0<> 寝室

魔まどか「QBになにか言われた?」

まどか「えっ!……ええと、その……」

まどか「言われ、ました……でも、どうして?」

いきなり見抜かれた。
私にしか聞こえていなかったはずなのに。

魔まどか「顔見ればわかるよ。嬉しくないけど、あの子のやり方はわかってるんだ」

まどかさんは自嘲的な笑みを浮かべた。

まどか「まどかさん……?」

表情を戻し、その瞳が私を真正面から捕える。

魔まどか「私は、あなたを命を賭けて守りたい」

魔まどか「魔法少女じゃない、人間の、鹿目まどかを」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/05(火) 22:41:26.98 ID:2Fno+T5Y0<> まるで、お姉さんのような優しい視線。
しかし、そこで表情が一変する。

魔まどか「あなたが契約したら、私が今までしてきたことは……」

魔まどか「……すべて無駄になって消える」

魔まどか「だから、絶対に契約しちゃだめ。したら絶対に許さない」

最後の方はほとんど脅迫だった。
焦りからなのか、まどかさんはその足を一歩二歩と進め、私はなぜか壁際に
追い詰められるような形になってしまう。

だけど、と私は俯いたままで抵抗を試みる。

まどか「……そんなの、ずるいですよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/05(火) 22:43:37.60 ID:2Fno+T5Y0<> 魔まどか「……」

まどか「だって! まどかさんはいいよ、その力で、みんなを守れる。でも……」

まどか「私は……? 私からだけは、何もしちゃいけないの……? そんなの、ずるいよ」

気がついたら、まどかさんの手が私の背に回っていた。
そして私は抱き寄せられた。

魔まどか「やっぱりあなたは私だね」

私は彼女の腕の中で、そう耳元で囁く声を聞いた。

魔まどか「気持ちはわかる、わかるよ」

魔まどか「だけど……わかって」

私は答えられなかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/05(火) 22:47:06.04 ID:2Fno+T5Y0<> 〜さやか視点〜

朝は慌ただしい。
しかも一つ屋根の下、女子が5人も集まっているとなれば、

ほむら「ちょっと巴マミ。いい加減出てきなさい」

マミ「お腹いたいのよ。コーヒーなんか飲んだから……」

そういや、まどかはどこ行ったんだろ。寝室かな?
私は制服を肩に引っかけ、髪をとかしながら向かう。

さやか「まどかー、そろそろ出発するよ?」

魔まどか「……」

時間がないってのに、まどかはベッドの上でぼーっとしていた。
ぽかんとした顔で私をまじまじと見つめてくる。

さやか「な、なに……?」

魔まどか「」ポロポロ

何で泣くのよ……? 名前呼んだだけだよね?

魔まどか「まどかって呼んでくれたぁ……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/05(火) 22:49:07.28 ID:2Fno+T5Y0<> さやか「え……ああ、まどかさんの方だったか」

私が訂正すると、がくりとうな垂れるまどかさん。

さやか「しょんぼりしないの!
てかややこしいわ! なにか見た目に違いが欲しい!」

マミ「これでいいんじゃない?」

いつの間にかトイレを終えていたらしいマミさんがまどかに近づくと、
そのピンクのリボンをすいっと引いた。
ふわりと髪がほどける。

マミ「ほらかわいい」

まどか「むー、私だってまどかだもん」

髪をおろしたまどかさんは、少しお姉さんっぽく見えた。
うん……いいんじゃない? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/05(火) 23:17:24.52 ID:fYP3jPhDO<> まどかちやんペロペロ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/05(火) 23:26:30.82 ID:2Fno+T5Y0<> 通学路

マミ「それで……美樹さんの今後のことなんだけど……」

マミさんは、今にもため息をつきそうな調子で言う。

なんなのよ、みんなして……。
自分の願いを自分で叶えただけなのに、何が悪いの?
これで恭介の手も治って、またあの演奏が聴ける。
恭介……きっと、喜んでくれたよね。

マミ「やっぱり最初のうちは、私がつき添おうと思うわ」

そんなの必要ないですよ! と言いたいけど、昨日のこともあるし、
あまりでかい口が叩けない。

さやか「マミさんがいたら、私の出番がないじゃない」

あっはは、と笑ってみる。
……やばい、なんかいかにもわざとらしかったわ、今の。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/05(火) 23:34:09.87 ID:2Fno+T5Y0<> まどか「ぜ、絶対そうしてもらった方がいいよ!」

まどかはそれどころじゃないという顔。
心配してくれるのは嬉しいけど……今はそれが少しうっとうしい。
そして、そんな風に思う自分に嫌悪感を覚える。

ほむら「美樹さやかに関連して、言っておくことがある」

マミ「なに?」

ほむら「この街に、新たな魔法少女がやってくるわ」

マミ「……それがわかるのは、あなたが」

ほむら「そうよ。これは既に私が見てきたこと」

まどか「へぇー、また仲間が増えるんだね!」

まどかは無邪気に言った。

さやか「いや……魔法少女っていっても、いろいろいるんでしょ?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/06(水) 00:48:29.45 ID:RtQ2PLHu0<> ほむら「そう」

ほむら「彼女は自分の利益を第一に考える魔法少女よ」

マミ「! それってまさか……」

ほむら「グリーフシードにしか興味がない」

まどか「でも、それって、魔法少女の使命なんでしょ……?」

マミ「魔法少女にもいろいろいるのよ」

マミ「たとえば、グリーフシードを集めるために、使い魔に人間を捕食させて、
魔女になるまで放置する……とか」

さやか「な、なにそれ……」

まどか「ひ、ひどい……」

ほむら「魔法少女としては、非常に優秀。その考え方も含めてね」

ま、魔法少女って……!

ほむら「名前は、佐倉杏子」

マミ「……ッ!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/06(水) 00:50:05.93 ID:RtQ2PLHu0<> 放課後

まどか「さやかちゃんはさ……怖くはないの?」

マミさんとまどかと私は、日当たりのいい河原でのんびりしていた。

さやか「うーん? そりゃ、ちょっとは怖いけどさ」

さやか「私が契約してなかったら、まどかを失ってたかもしれないって思うと」

さやか「そっちの方がよっぽど怖いよね」

マミ「……そうね」

まどか「さやかちゃん……」

まどかの表情は晴れない。

さやか「わ、私さっ」

私は思いっきり起きあがった。
こんなの笑われちゃうかもしれないけど、

さやか「マミさんや、まどかさんみたいに、私もみんなを守りたい!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/06(水) 00:53:26.72 ID:RtQ2PLHu0<> さやか「結局きのうは役立たずだったけどさ」

さやか「でもきっと、いつか強くなって」

さやか「この見滝原市の平和を、魔法少女さやかちゃんが、
ガンガン守りまくっちゃいますからねー!」

河原に叫んでも、誰も叫び返してくれない。
まどかも、マミさんも、黙っていた。

まどか「後悔とか……全然ないの?」

さやか「……ないよ」

まどか「すごい……」

まどか「私、も……本当なら」

まどか「でも、まどかさんには……絶対に契約するなって言われて」

マミ「……自分の言葉を信じなさい」

マミさんがまどかの迷いを断ち切る。

マミ「夕方まで時間があるわね。ちょっと喫茶店でも行かない?」

話は終わったとばかりに、わくわくした顔で誘うマミさん。
あぁ……これは申し訳ないんだけど。

さやか「ご、ごめんマミさん。今日これから行かなきゃいけないとこあるんだわ」

まどか「ん、なにか用事があるの……?」

マミ「残念ね……夕方には、間にあうのかしら?」

さやか「それは大丈夫! じゃ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/06(水) 00:55:29.60 ID:RtQ2PLHu0<> 病院

さやか「そっか……退院は、まだなんだ」

恭介「足のリハビリが、まだ済んでないしね」

恭介「手の方は、一体どうして急に治ったのか……」

そう言って、包帯の取れた左手を見せてくれた。
昨日までの傷など跡形もない。
私の願いは、間違いなく叶えられたんだ……。

恭介「……だから、もうしばらく精密検査がいるんだって」

私はぼんやりと恭介の手を見つめていた。

恭介「さやかが言った通り……奇跡だよね、これ」

そう言って笑う恭介が眩しい。
その奇跡を起こしたのは私……。

だけどそれを言う必要なんて、あるだろうか。
そんなことしなくたって、幸せは確かに2人の間にあって。
恭介のそばにいられるだけで、恭介の笑顔を見られるだけで、
私……幸せなんだよ。

さやか「恭介……外の空気吸いにいこ?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/06(水) 00:56:31.70 ID:RtQ2PLHu0<> 〜まどか視点〜

喫茶店

マミ「お姉ちゃんってことで……いいんじゃないかしら?」

夕方のショッピングモールの雑踏のなかに佇む静かな喫茶店。
見滝原中学の生徒もよく利用する人気店だ。

魔まどか「ついに自由に外に出られるようにっ……!」

まどかさんはほむらちゃんに借りた黒のワンピースを着ていた。
その髪はリボンの戒めを解かれていた。

ほむら「こっちが妹ね?」

そう言って私を指さし、確認するほむらちゃん。
ほむらちゃん……なんか顔が近いです。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/06(水) 00:57:46.63 ID:q2IjOcrdP<> リアルタイム更新ktkr <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/06(水) 01:05:34.78 ID:RtQ2PLHu0<> マミ「あ、4人掛けのテーブルがあいてるわよ」

そう言って、マミさんがまず奥に入る。

魔まどか「私は妹ちゃんと一緒だよー」

まどか「わっ、まどかさん押さないでっ」

ほむら「……」

まどかさんに押されて、マミさんの対面に私たちは座る。
あとはほむらちゃんがマミさんの隣に……、

ほむら「」グイグイ

魔まどか「せ、狭いよー、そっち入ってよー」

マミ「……嫌われたものね」ハァ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/06(水) 01:28:33.39 ID:RtQ2PLHu0<> 一悶着あった後。

ほむら「それで話ってなに?」

渋々と……マミさんの隣に座ったほむらちゃん。

まどか「あ、あのね、さやかちゃんのこと、なんだけど」

ほむらちゃんがぴくりと動く。
マミさんは静かにカップを置き、
まどかさんは口にこれ以上ポテトを入れるのを止める。

まどか「まどかさん……太るよ?」

魔まどか「そんなことより、続けて」モグモグ

なんだかはぐらかされた気もするけど、真面目な顔なので、私も気を取り直す。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/06(水) 01:36:41.85 ID:RtQ2PLHu0<> まどか「あの子はね、思いこみが激しくて、意地っ張りで、
結構すぐ、人と喧嘩しちゃったり……」

まどか「でもね、すっごくいい子なの!」

まどか「いつか……マミさんや、まどかさんみたいに」

まどか「口には出さないけど、ほむらちゃんのことも」

まどか「みんなを守りたいって言ってた!」

マミさんは紅茶に口をつけた。
まどかさんはまたポテトを食べ始めた。
ほむらちゃんは表情を変えずに黙っている。

まどか「……っ」

まどか「さやかちゃんのこと、信じてあげてよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/06(水) 01:43:15.04 ID:RtQ2PLHu0<> まどか「あんなに優しくて、誰かの為と思ったら一生懸命で……」

ほむら「……魔法少女としては、致命的ね」

ほむらちゃんは突然私の言葉を遮った。

ほむら「度を越した優しさは甘さにつながるし」

その手がプラスチックの容器のフタをくるくる回す。

ほむら「蛮勇は油断になる」

外そうか外すまいか。まどかさんは落ちつかない様子で体を揺らす。

ほむら「そして、どんな献身にも見返りなんてない」

やがてその手は離れ、代わりにストローが差し込まれる。

ほむら「それを弁えていなければ魔法少女は務まらない」

ほむら「言ったでしょう」

顔にかかる前髪を人差し指でどかす。

ほむら「美樹さやかは魔法少女向きじゃない、と」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/06(水) 02:06:39.49 ID:RtQ2PLHu0<> まどかさんはふっと力を抜いて背もたれに倒れ込んだ。
マミさんは力なく笑った。

マミ「なんか他人事じゃないわね……」

魔まどか「私もだね……」

まどか「わ、私は、間違ってないと思うんだけど……」

人の為にがんばっているのに、悪いことなんてあるはずないのに。

まどか「でも、さやかちゃん一人じゃ不安で……」

でも、契約するわけにはいかないし

まどか「私、どうすればいいのか」

ほむら「美樹さやかのことが心配なのね」

まどか「でももう、私じゃさやかちゃんの力には……」

まどか「みんな、お願い」

まどか「みんなで、さやかちゃんを守ってあげて」

まどか「マミさんとほむらちゃんも、もう喧嘩しないで」

まどか「4人も魔法少女がいるんだもん。
この街は、見滝原は、もう大丈夫、なんでしょ?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/06(水) 02:09:31.94 ID:RtQ2PLHu0<> ほむらちゃん、マミさん、まどかさん、の顔を順に見つめる。
ほむらちゃんもマミさんも私の目を見てくれない。

しかしまどかさんだけは、

魔まどか「大丈夫だよっ」

力強い返事。
私のほうに勢いよく向き直り、ふわっと浮き上がる髪。

魔まどか「さやかちゃんは、絶対に私が守ってみせるから」

魔まどか「もう二度と、失敗……しないから!」

まどか「まどか、さん……!」ジワ

卑怯だってわかってる。
力は、手を伸ばせば届くのに、自分は何もしなくて。
それなのに、今すごく安堵している自分が、
大嫌いだった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/06(水) 02:11:22.64 ID:RtQ2PLHu0<> ほむら「まどかっ」

ほむらちゃんが鋭く、警告するように呼びかけた。

魔まどか「怖いの? ほむらちゃん」

しかしまどかさんは平然と返す。

ほむら「怖いわけじゃないわ。私は嘘をつきたくないだけ」

魔まどか「嘘なんかじゃないよ」

ほむら「嘘つき」

まどか「ふ、2人とも」

魔まどか「嘘なんかじゃないもん!」

マミ「ちょっと暁美さん……」

魔まどか「……」チラ

ほむら「……」プイッ

まどかさんとほむらちゃんが黙り込んでしまい、場は静まり返った。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/04/06(水) 02:15:52.06 ID:RtQ2PLHu0<> マミ「今日は……というか不定期になりつつあるんだけど、終わりね」

杏子「おい……出番が来ないんだが」

さやか「杏さや期待していいのかだけ聞かせて」

まどか「ちょこっと入る予定だって」

ほむら「もうちょっと……もうちょっとで話が動くはず」

マミ「不定期更新SS まどまどでした」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/04/06(水) 11:44:10.83 ID:IUScVKHPo<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)<>sage<>2011/04/06(水) 11:53:21.31 ID:3iYIdnAAO<> 乙、そういえば魔女化は教えてなくて力の暴走程度に誤魔化してんだよな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga sage <>2011/04/08(金) 22:57:51.11 ID:vocf9FT20<> 再開します このあたりから後編だとおもう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga <>2011/04/08(金) 22:58:28.72 ID:vocf9FT20<> 〜さやか視点〜

さやかマンション

さやか「マミさん! まどかさんも!」

マミ「暁美さんはちょっと……」

さやか「別にいいわよ、あいつは」

まどか「ほむらちゃんは新しい魔法少女の子に挨拶してくるって……」

まどかさんの後ろに隠れていたまどか。
「挨拶」を言葉通りの意味だと思ってるみたい。

まどか「わ、私何の役にも立たないけど……ついてきたいの」

この子はなんて……バカでバカでお節介でお節介で。
……優しいんだろ。

QB(昨日のようなことがないとはいえない。もし必要になったら僕の方はいつでも 準備できてるからね)

まどか(……わかってる) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga <>2011/04/08(金) 23:07:40.06 ID:vocf9FT20<> 〜ほむら視点〜

夕闇の中、ビルの屋上から屋上へ飛び移っていく影が一つ、二つ。

前を行くのは噂の魔法少女、佐倉杏子。
アイドルとしても通用しそうな端正な顔立ち。
釣り上がった目は好戦的な印象を与えているが、艶やかに滑らかに湿り気を帯びた肌は
幼さを残し、西日に煌めき鋭く流れるはポニーテール。

要するにいわゆる美少女というものだった。

それを幾分距離を置いて追っていく二つ目は、暁美ほむら。

常の如く淡々と自分の使命を果たしているだけのように見え、
また本人もそのつもりでいたが、その表情は常の無表情ではなかった。
仮面の下から無自覚に、わずかに滲むその感情は、後悔と嫉妬。
唇を噛みながら、それでも気付かない……否、気付かないふりをしているだけか。

ただし、その意識は前方を行く佐倉杏子に向いていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga <>2011/04/08(金) 23:19:56.95 ID:vocf9FT20<> おかしい……移動パターンに明確な方向性を感じられない。
……まさか気付かれた?

いや……。

ほむら(まどか)

杏子の肩には白い淫獣の姿。

QB(未来)「どこへ向かってるんだい?」

杏子「別にぃ? さんぽだよ、さんぽ」

軽口をたたき、一度足を止める。

パターン変化! ソウルジェムの反応がするほうに向かってる!

このままでは美樹さやかと佐倉杏子が接触を……!

ほむら(そっちに向かったわ! まどか!)
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga <>2011/04/08(金) 23:32:20.87 ID:vocf9FT20<> QB「う、上を見て! 」

まずQBが声を上げた。
両側を建物の壁に挟まれた細い路地。
唯一、空に開けている上に、

魔まどか「いた!」

一瞬影が飛び越えていく。

魔まどか「マミさんはさやかちゃんと一緒にいて!」

私は壁を蹴って、上の世界へ飛びだす。
ちょうど鉢合わせしたのは。

魔まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「こっちに気付いたみたい……駅に向かってるようだわ」

ほむらちゃんは少しだけ息を乱していた。
一度大きく息をつき、邪魔な髪を後ろに振って流す。
前を向く瞳に迷いはなく、

ほむら「いくわよ」

決然と、一言。

魔まどか「うんっ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga <>2011/04/08(金) 23:47:20.52 ID:vocf9FT20<> ちらと、横を見る。
ほむらちゃんはさっきのことを気にしていないように、私には見えた。
今もさやかちゃんを救うために、同じ目標、鍵、杏子ちゃんを追っているんだから。
風に乗り、いざこざは右足で踏み切って、飛び越えて、次へ! 次へ!

ほむら「電車に乗られるとまずいわ!」

杏子ちゃんはホームに停車している電車に悠々と乗りこむところだった。

魔まどか「快速だよあれ! ああっ、もう出ちゃう!」

切符なんてなくても、とりあえずぶら下がれればいい。
そう思って手を伸ばすけどそれすら叶わない。
知らない間に線路に不法侵入しちゃってる……。
なんて一瞬、常識的なことが頭をよぎった。

……ほむらちゃんも一緒だからいいや!

なんだろう……最近、わたし性格変わったのかな?
足を全力で回転させる。
私達は人間の限界をとうに越えていたけど、相手は電車だ。
加速して加速して……じりじりと手の中から零れていく。

……もう追い付けない! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga <>2011/04/09(土) 00:03:12.65 ID:ktfIxkN20<> くっ……!

気持ちが止まれば、足も止まった。
猛スピードで逃げ延びる電車。
置き土産のように疾風を巻き起こして、私たちの髪を滅茶苦茶に舞い上げた。
頭くらくらする……。

遠く、駅のホームから大勢の野次馬が私たちを見ていた。
最高速度の電車と生身でデッドヒートを繰り広げたのだから無理もない。

魔まどか「はあ……はあ……どうする?」

ほむらちゃんも顔に汗を滲ませていたけど。
やっぱりさすがだ。

ほむら「車両の連結部分を破壊するのよ!」

すぐさま逆転の手を導きだす。

魔まどか「オッケー!」

私は長距離でも威力の減衰しない弓を持ち、先頭車両と第二車両の連結部分を狙う。
それで十分。
あとは勝手に飛んでいく頼もしい味方だ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga <>2011/04/09(土) 00:25:56.64 ID:ktfIxkN20<> 矢は鋭く曲線を描き、サイドから抉りこむように貫き通した。
車両が軋み、車輪が激しく火花を散らす。

もう離れていた。

分かたれた後部車両は加速を失い、徐々に減速していく。
先頭車両は恐れを為したのかそのまま止まらずに走り去っていった。
先に車両に追いついたほむらちゃんが時間停止を発動する。

ほむら「まどか! そっちからお願い!」

魔まどか「気をつけてね!」

私も反対側から車内に侵入し、2人で両側からしらみつぶしに探していく。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga <>2011/04/09(土) 00:27:44.52 ID:ktfIxkN20<> 完全に静止した夕方のラッシュの光景。
窓から差し込む夕日がバカ笑いをする女子高生の横顔を、彫像のように照らし出し、
爆発に驚いて叫び始めたらしい中年の男の滑稽な姿を、空間に縫いとめていた。

でも。

目的の少女がいない。

静止した世界に前方から動くものが。

ほむら「いないわ」

ほむらちゃんは淡々と言った。

魔まどか「そんな! こっちにもいないよ……!」

そんなはずはない。
私たちは途方に暮れて、顔を見合わせるしかなかった。

杏子ちゃん……。
どこへ行ったの……? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga <>2011/04/09(土) 00:36:51.52 ID:ktfIxkN20<> 〜まどか視点〜

魔まどか(マミさんごめん、杏子ちゃんを見失っちゃったの!)

ほむら(そちらに向かった可能性が高い。警戒して。美樹さやかを1人にしないで)

マミ(わかったわ)

立て続けにテレパシーが脳内を流れる。
前を歩くさやかちゃんは何も言わない。
両側の壁が薄汚れて、陰気で嬉しくない道中。
四角く切り取られた空がぽっかりと空いた穴のようで、心の空白を抉ってくる。

そこにこの連絡。
なんだか不穏な空気を感じて、私はさやかちゃんの顔を窺った。
さやかちゃんは私に気付いて、

さやか「……大丈夫よ。マミさんもいるし、私たちがまどかを守るから」

何年もの間、変わらずに目にしてきた笑顔。
しかし、そこには戦いの決意が新たに宿っていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga <>2011/04/09(土) 00:50:02.18 ID:ktfIxkN20<> マミ「先輩の言うことはちゃんと聞くこと。
ひとりで突っ込んだりしちゃ絶対だめだからね?」

思えばこの3人で行動するのは久しぶりかも。
私たちにとって、マミさんは魔法少女の入り口だった。
その背中ほど頼りになるものはない。
ないけど……。

まどか「まどかさんとほむらちゃんを撒いちゃうなんて、佐倉さんって……」

言っても仕方のないことをそれでも言ってしまう。
この状況にこんな場所に、こんな役立たずな私……。
なんだか居心地が悪くなってきちゃった……。

だけどマミさんはそんなことを責める様子はなく、

マミ「佐倉さん……本当に、来ちゃったのね」

ぽつりと。
ため息のように呟いた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga <>2011/04/09(土) 00:57:25.14 ID:ktfIxkN20<> とあるビルの屋上

QB(未来)(杏子がたどりつく。知らせてあげてくれ)

すべてを知り、すべてを操る。自らすらも。
彼はすべてを見下ろすことのできる座から、自らに指示を飛ばす。

QB「マミ! 佐倉杏子だ!」

またしても上を走る影。
マミさんとさやかちゃんが私を壁際に下がらせた。

茜差す世界が、静まり返った。

マミさんに握られた左手が、少し震えていた。
しかしマミさんはそれを優しく包み込んでくれる。

ピンと張った糸のような時間が過ぎた。

やがて沈黙を背景に、少女の声が踊る。

杏子「ひっさしぶりだねぇ、マミ……元気そうで何よりだ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/04/09(土) 01:05:32.94 ID:ktfIxkN20<> マミ「キリがいいのでここまで!」

さやか「杏子の脱出マジックどうやったの? ね、どうやったの?」

杏子「ばっか、夢がなくなるだろ!」

ほむら「毎日更新はできないけれど」

まどか「ちょくちょく書いてくよー」

マミ「おわり!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(北海道)<>sage<>2011/04/09(土) 01:42:40.71 ID:lo9nAIOx0<> おつ!

さやかを暴走させないためには、仁美排除するか何とかして
さやかと上條くっつけりゃいいんじゃ・・・ってのは外道か。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/10(日) 04:03:54.21 ID:EftV2W01P<> 乙
真面目な文章の中で淫獣って出てくると吹きそうになるww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/04/11(月) 03:29:14.91 ID:lvQ2AB2m0<> 杏子「ただいま、とでもいっとくか」

杏子「この街。見滝原。この故郷……そして戦友!」

声は唄う。

杏子「最高の気分だ……いやいや、思い出すじゃない」

姿は見えないけど、声は聞こえる。
私やさやかちゃんには、言っている意味がよくわからない。
しかしそんなことはお構いなく、声は続けた。

杏子「こっちこいよ。また一緒に……」

それは、誘い。
しかし、マミさんは冷え切った声で返した。

マミ「来ないでよ。二度とこの街に足を踏み入れないで、と言ったはずよ」

眉をよせ、懐かしい友人に、とびきりの憎悪をこめて。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/04/11(月) 03:30:35.74 ID:lvQ2AB2m0<> 杏子「あーあー、そんなことも言われたかなあ。
……忘れちまったよ、そんな昔のこと」

声は困ったように……いかにも困ったように言った。
しかし、その声は少しずつ色を変えていく。

マミ「この街には四人の魔法少女がいる。いくらあなたでも暴力で街を奪えはしないわ」

マミさんは静かにマスケット銃を構え、姿の見えない相手に告げる。

杏子「マミはもう1人じゃないんだな」

出ていけ、という声に対して返ってきたのは嬉しげな声。
嬉しそうで……しかし無邪気な喜びとは違う。
ひたひたと足の裏から浸食してくるような影の差す喜びだ。

杏子「新しい子……鹿目まどかだっけ?」

杏子「そいつはまだ契約してないんだよなあ……じゃあさ」

杏子「今のうちに」

カキン、と小さな金属音がした、気がした。

杏子「……ちょっとひねっちゃおっかなあ?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/11(月) 03:31:43.49 ID:lvQ2AB2m0<> それが合図だったのか。
その子は。

空へ伸びる穴から、飛び込んできた。
長大な槍を構え、獰猛な笑みを浮かべて。

見開いた瞳に、槍の先端が閃く。
狙いは私……!

マミ「鹿目さんには指一本触れさせない!」

槍が変形し、ムチのようにしなる。マミさんの弾丸を弾き飛ばし、
その一撃はマミさんにまで迫った。

マミ「昔の私じゃないのよ」

マミさんは体をひねり腰に回していた手を返す。
出現したマスケット銃の銃身が多節棍と激突する。

マミ「どいてっ」

銃口が火を噴き、杏子ちゃんを飛びのかせた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/11(月) 03:33:05.98 ID:lvQ2AB2m0<> マミ「相変わらずね……」

杏子「相変わらずだなぁ……」

さやか「あ、あんた一体何なのさ!」

マミ「……」

杏子「んで、こっちがヒヨコか」

さやか「ヒヨコいうな!」

杏子「ちっとも離れる様子がねぇし……面倒かけさせやがって」

杏子「マミなんかと付き合って……あんたもその手のおちゃらけた正義のために
戦ってるつもりか?」

さやか「マミさんをバカにするな!」

杏子「よかったなぁ、マミ。忠実な後輩が出来てさ」

マミ「美樹さんは、私の友達よ……元・戦友さん」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/11(月) 03:35:39.96 ID:lvQ2AB2m0<> さやか「あんただって魔法少女なんでしょ? 何だってこんなこと……」

杏子「なんか大元から勘違いしてるよねぇ」

杏子「マミもさ、見てらんねえんだよバカ。いつまで人間やってるつもりなの?」

マミ「……」

杏子ちゃんは一度目を閉じる。

杏子「私たちは“魔法少女”なんだぞ?」

杏子「弱い人間を魔女が喰う、その魔女を私たちが喰う」

杏子「これが当たり前のルールでしょ?」

さやか「あんた……!」

杏子「実際さ、私はマミと別れてからさ、外の世界を見てきたよ。だから言える」

杏子「こんな説教わざわざしなくちゃいけないバカはさ」

杏子「……巴マミ、あんただけだったよ?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/11(月) 03:36:41.21 ID:lvQ2AB2m0<> 勝ち誇ったように、嘲笑う。

杏子「私は気付いた。魔法少女として、本当に守らなくちゃいけないものが何なのかに」

杏子「それをマミ、あんたにも教えてやろうと思ったよ。私の唯一無二の親友にもさ」

杏子「ところがあんたときたら」

マミさんはずっと俯いて、杏子ちゃんの嘲弄の声に耐えていたけど、
不意にその顔を上げた。

マミ「……私は悲しかったわ」

マミ「あなたは、変わってしまった」

マミ「あなたは私の大切なものを壊す、敵になってしまった」

マミ「だから、私はあなたを絶対に許さない」

マミ「私は私のすべてを、守ってみせる!」

悲しみを乗り越えた、決意の響きだった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/11(月) 03:42:07.17 ID:lvQ2AB2m0<> さやか「マミさん……あたしも、戦わせてほしい」

さやか「街の人たちを見殺しにするなんて……許せない!」

まどか「そ、そんな……みんな落ちついて」

3人とも戦う気だ。
私は何とか仲裁しようと声を上げたけど、

杏子「うぜえ」

杏子「あー、チョーうぜえ」

杏子「言って聞かせても分からねえバカに」

杏子「何も知らねえで首突っ込んでくるヒヨコに」

杏子「自己陶酔のくそったれ平和主義者!」

さやか「黙れぇ!」

マミ「だめよ美樹さんっ!」

マミさんの伸ばした手は届かない。
杏子ちゃんはさやかちゃんを正面から迎え入れた。

杏子「……来いよ、成りそこないども」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/04/11(月) 03:51:24.03 ID:lvQ2AB2m0<> マミ「寝るわ」

まどか「zzz...アニメ放送日決定...バンザ-イ......zzz」

ほむら「あと1週間もない……書き終える方法はあるの?」

QB「あるわけないじゃないか」

さやか「あきらめなければ、きっと……!」

魔まどか「設定が違うから大丈夫じゃないかな。本編終わっても続けてたりするって!」

マミ「こんなところを読んでる暇があったら寝なさいっ」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/04/11(月) 03:59:16.65 ID:uzpWfDSeo<> 乙マミ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北)<>sage<>2011/04/11(月) 10:06:21.11 ID:6Ds/RgHAO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2011/04/11(月) 10:51:21.82 ID:S+vbF5Two<> 乙まどっち <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/11(月) 19:39:20.36 ID:FfAuoLAF0<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鹿児島県)<>sage<>2011/04/11(月) 21:56:45.55 ID:NuejWPlMo<> HTML化へ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga sage<>2011/04/12(火) 01:13:46.85 ID:W2bE1bX10<> マミ「あれ……1週間以上あった……なんとか間に合わせてみるわ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/04/12(火) 01:15:57.37 ID:W2bE1bX10<> 〜ほむら視点〜

魔まどか「急がなきゃ……!」

ほむら「もう戦闘は始まってるでしょうね……! 早くしないと」

私とまどかは杏子にまんまと嵌められたのだった。

ほむら「私たちを遠ざけたのは……4対1では不利と考えt」ガクッ

魔まどか「……ほむらちゃん?」

立ち止まった私をまどかが怪訝な顔で振り返った。

ほむら「……なんでもないわ。先を急ぐわよ」

魔まどか「うん……?」

今のは……。
いや、まだ、まだ大丈夫よ……!

『えへへ……さっきのはウソ。ほんとは……』

……もうあんな笑顔、見たくないから。
私はこれくらい耐えてみせる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/12(火) 01:33:13.95 ID:W2bE1bX10<> 〜まどか視点〜

マミ「美樹さっ……あぅ!」

吹っ飛ばされたさやかちゃんを受け止めようとしたマミさんがなぎ倒される。
さやかちゃんは配水系のパイプをへし折りながら、壁に叩きつけられる。

まどか「マミさん! さやかちゃん!」

杏子「やれやれ……ひどい有様だな、マミ」

杏子「さっさと楽にしてやるよ……私はあんたの親友、だからさ?」

〜ほむら視点〜

魔まどか「使い魔の反応はここから出ていたみたいだけど……」

ほむら「移動しているのね……分かれ道だわ」

魔まどか「じゃ、ちょっとお別れだね」

ほむら「なにかあったらすぐに知らせてね」

魔まどか「うん。気をつけて!」

ほむら「あなたも」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/12(火) 01:48:43.42 ID:W2bE1bX10<> 〜まどか視点〜

さやか「負けるもんかぁ!」

杏子「寝てろ」

多節棍がムチのように振るわれる。
殺すためではなく、意識を刈り取るための攻撃。
さやかちゃんは目を見開いた。
振り切った剣を戻すには遅く。新たな剣を生むにも遅く。

まどか「さやかちゃ……!」

撥ねる水滴に映る影。
一瞬の違和感。
攻撃は近くの壁に深い爪あとを残すに留まった。

杏子「ふっ……」

狙いををあり得ない位置に逸らされた杏子ちゃんの顔に浮かんだのは、
驚きでも怒りでもない、笑い。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/12(火) 01:50:41.03 ID:W2bE1bX10<> 〜ほむら視点〜

ゴシャ

杏子は武器を槍に戻し、瓦礫を払って片手に担ぐ。
長期戦になった追いかけっこも、私がここで終わらせる。
武器はいくつかある……佐倉杏子という強敵を、生け捕りするのに最適な道具を
頭の中で吟味する。

杏子「待ってたよ……イレギュラー」

私は取り合わない。

ほむら「出会い頭に悪いけどちょっと昏倒してもらうわ」

そのとき私は、時を止め、背後から意識を刈り取るつもりだった。
それに対し、杏子は懐から何かを取りだした。

まさか爆発物!?
私は思わず……思わずその箱型の物体に注目していた。

そして杏子は、場違いな言葉を吐く。
チロリと舌を見せ、悪戯っぽい笑みを浮かべながら、

杏子「はい、チーズ」

!? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/12(火) 01:54:29.40 ID:W2bE1bX10<> 時間停止の直前、古臭いカメラが強いフラッシュを炊いた
世界は真っ白なまま静止する。

ほむら「……っ!」

時間停止を読んだ?
止まった時の中で私は立ち往生した。
しかし考える時間はない……時が動き出す!

まだ目はフラッシュの残像で使いものにならない。

足音が三回。

私は闇雲に前方に蹴りを入れた。

ほむら「ぐぅっ」

ドンッ

杏子「くぅっ」

重い衝撃が腹から全身にくまなく広がり、呼吸が止まった。
宙を舞う一瞬、私は発砲する。

後方の壁に叩きつけられた。
拳銃が手から離れ、カラカラと転がった。

杏子の蹴りは正確に私の鳩尾を狙っていたが、私の足が軌道をずらし、
なんとか気絶は免れたようだ。

彼女は肩をかすめた弾丸による傷をおさえながら、

杏子「かっは……はは、時間操作の魔術でしょ?」

杏子「その程度で図に乗らないでくれるかなぁ? 最初からわかってればさぁ、
対策なんて誰でも思いつくんだよねぇ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/12(火) 02:04:08.03 ID:W2bE1bX10<> ほむら「なぜ、それを……」

不覚。
完全に私の油断がまねいた敗北だ。
時間停止を過信したバカな私のせいで……!!

杏子「あんたに用はねぇ」

私は起き上がろうとしたが、急所を打たれたせいで全身から力が抜けてしまっていた。

さやか「邪魔しないでよ、転校生……」

起きあがりかけた美樹さやかも、

さやか「ぐあっ」

意識を刈り取られた。

まずい……今、杏子に対抗できるのは……!

QB(未来)(まどかが接近している。杏子に撤退を)

QB(やれやれ)

QB(杏子、まどかが近づいている……ここは撤退を) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/04/12(火) 21:53:11.55 ID:W2bE1bX10<> 昨日は寝オチしてました……放置すみません

〜まどか視点〜

杏子ちゃんはふぅっ、と息を吐き傷口から手を離す。

杏子「まぁ、いいだろ」

すでに傷は跡形もなく消えていた。

杏子「じゃあ、土産にもらってくよこいつ」

私は映画でも見ているかのように、その光景をボーッと見ていた。
そこに介入しようという考えが起こらない。

杏子ちゃんの手が乱暴にさやかちゃんの襟首をとらえた。

まどか「……さやかちゃんっ!!」

……わたしのバカ! なにボーッとしてるの!

思わずさやかちゃんに向かって駆け出していた。
杏子ちゃんのことは目に入っていなかった。
無我夢中で前に走る。
しかし生憎この道は直線ではなかった。

喉元に迫った死が。
簡単に私の足を止めた。

杏子「……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/12(火) 21:54:02.13 ID:W2bE1bX10<> 杏子ちゃんの強烈な視線が、私に一方的に向けられる。
品定めするように。
それを直視することもできずに、私はついに震えの限界を越えた。

膝が……崩れる。
……もう嫌だった。
重くのし掛かってきた無力感に押しつぶされ、立ちあがる事も出来ない。
立ち上がろうという気概もろとも、潰された弱虫だから。

私じゃ……何の力にもなれない。
私って、いる意味……ないのかな。

杏子ちゃんは飛び上がり、壁を蹴って上の世界に帰っていった。

まどか「待って……」

まどか「さやかちゃんを……返してぇぇえっ!」

叫びは夕空に。
無意味に溶けていった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/12(火) 22:21:56.07 ID:W2bE1bX10<> 間もなくまどかさんがやってきた。

魔まどか「私がさやかちゃんの側にいてあげられてたら!」

魔まどか「……ごめんね、怖かったよね」

違うの……私が、弱いから……

まどかさんはさやかちゃんが連れ去られたことを聞くと、
真っ先に高台に上って行方を追った。
しかし収穫はなく、意気消沈した様子。

でも、違うんだ。

私とは違う。まどかさんには、守る力がある。
機会が与えられなかっただけ。
守る機会が与えられたのに、全く何もできなかった……私とは違う。

私たちはそれぞれが、それぞれの理由で肩を落としていたけど、
そのとき別の方向から入った声が、顔を上げさせた。

マミ「ちょっと、暁美さんの様子がおかしいわ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/12(火) 22:35:06.02 ID:W2bE1bX10<> まどか「え?」

ほむら「……ハァ……ハァ……」

壁にもたれかかっていたほむらちゃん。
自分のことばかり考えていて、気付いてあげられなかった!

高熱にうなされているかのように息は荒く、手足は投げ出されていた。

まどか「ほむらちゃんっ! しっかりして……!」

マミ「蹴り一発でここまで衰弱するなんておかしい……まさか」

マミさんは何かに気付いた素振りを見せ、ほむらちゃんの手を取る。

ほむら「なに……するのよ」

マミ「いいから見せなさい」

ほむらちゃんには抵抗する力が残っていなかった。
マミさんは堅い表情でそれを取り上げた。
ぐっと、その眉根が寄せられる。

マミ「やっぱり……」

マミ「ソウルジェムが随分濁っているわ……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/12(火) 22:54:41.70 ID:W2bE1bX10<> マミさんの手には、ほむらちゃんのソウルジェム。
本来、綺麗に透き通った紫色の輝きを持つそれは、黒く濁っていた。

私は息をのんだけど、それよりも反応が大きかったのは、

魔まどか「そ、そんなっ!」

魔まどか「グリーフシードはいっぱいストックしてあるから大丈夫って」

魔まどか「ほむらちゃん、言ってたのに!」

ほむら「……」

ほむらちゃんはぐったりとしていて返事が出来る状態ではない。

マミ「なにが彼女にここまでさせたのかしら……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/12(火) 23:33:33.68 ID:W2bE1bX10<> マミさんが呟いた。
手際良くグリーフシードを取り出して、ほむらちゃんのソウルジェムを浄化する。

ほむら「……ぁ」

ほむらちゃんが細く呻いた。
まだ意識は遠のいているけれど、その手足に生の実感が戻っていく。

何度か使用済みのものだったので全快には至らなかったものの、
とりあえず危険な状態ではなくなったようだ。

魔まどか「ほむらちゃん……なんでなの」

裏切られたような、悲しげな呟きが残った。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/13(水) 01:59:16.12 ID:1p0drIGb0<> また寝オチしてたorz

〜さやか視点〜

あたしは何やら薄暗い部屋で目を覚ます。
ぼんやりとした青い光がこの部屋の唯一の光源だった。

なに……なんだっけ?

頭が回転しない。
何か、頭のねじが抜けてしまったような……。
そんな束の間の空白。

杏子「やーっと目ぇ覚ましたか」

しかし声が。
あたしにすべてを思い出させた。

杏子「こっちはヒマなんだっつーの。退屈させるんじゃないよ」

さやか「あんたは……」

よみがえった怒り、そして防衛本能。
あたしは反射的にソウルジェムを取り出そうとし……そこに何もないことに気付く。
パッと顔を上げると、

杏子「御所望の品はこちらー」ニヤニヤ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/13(水) 02:04:57.51 ID:1p0drIGb0<> ……光源はあたしのソウルジェムだったんだ。
そいつは舐めた笑みを浮かべながら、あたしの大事なソウルジェムを見せびらかしてくる。
このレベルなら逆に冷めた目で相手を見るのがあたしなんだけど、

さやか「返せっ!!」

今はなぜか、前のめりになってしまう。
さっきから気付いていたけど、手首と足首をベッドに固定されていた。

杏子「ダメダメ。だいたい口のきき方がなってないよね」

杏子「返してもいいけどねぇ?」

口の端上げて。瞳を閉じて。

杏子「あんたがまた、無様に地べたに這いつくばってるのを眺めるのも」

杏子「悪くないしさ」

こちらの神経を逆なでするような声の連続。
しかしここで、あたしの頭は本来の調子を取り戻してくれた。

さやか「……ここはどこなの」

杏子「さぁてね」

杏子「あぁ、別にあんたをどうこうしないさ」

杏子「私の目的はこの街を手に入れることだからな」

これはおかしい。
私の中のセンサーが、違和感を検出していた。
ウソをついているわけではない……けど。
とにかく、情報が足りない。

こいつに感じる違和感。

さやか「……あたしもさ、ヒマなんだよね」

それを暴くことが、

さやか「聞きたいことがいくつかあるわ。答えてよ」

突破口になると信じて。

さやか「……ヒマ潰しに」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/04/13(水) 02:11:01.66 ID:1p0drIGb0<> マミ「今日はここまで」

まどか「別に眠かったからじゃないんだからね」

さやか「次回からはあたしと」

杏子「私が繰り広げる、暗闇の交流(言語)」

ほむら「が、メインになるわ」

マミ「こんなとこまで読んでくれた方には感謝を!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/13(水) 21:25:46.53 ID:ZQqbUgS00<> 乙。
あんこちゃんつええ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)<>sage<>2011/04/13(水) 22:01:06.48 ID:7AoUDmUAO<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/04/14(木) 01:01:37.31 ID:KT9CQhMu0<> 杏子「あたしの無双はまだまだこれからだっ」

ほむら「再開するわ」


〜魔まどか視点〜

ほむら「……会ってきたらいいのに」

夜風に髪をなびかせながら、ほむらちゃんは屋根の縁に腰かけていた。
私はその隣に腰掛けて、雲隠れしようと必死な月を眺める。

魔まどか「いいの……今は」

ほむら「せっかくなのに」

魔まどか「この家は、あの子の家だから。あの子の家族だから」

ほむら「……まどかはまどか、同じ人間だって、言ったじゃない」

魔まどか「うーん、それはそれ!」

ほむら「……なにそれ」

私たちは、鹿目家にいた。
正確にはその屋根の上に。

少しだけほむらちゃんの頬がゆるんでいるのが分かって、私は嬉しくなった。
だから、言おうと思っていたことを言うのを躊躇ってしまう、少しだけ。

この空気を壊したくない。

以前の私なら、間違いなく沈黙を通して、笑ってごまかして満足だっただろう。
だけど今の私は止まらない。止まってしまう自分を許せない。
私は首を振って感傷を払い、口火を切った。

「ほむらちゃん……何であんなになるまで黙ってたの」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/14(木) 01:34:27.28 ID:KT9CQhMu0<> 沈黙は空気を停滞させ、風が私たちを追い抜いていく。
ほむらちゃんはどこまでも続く街の明かりを瞳に写して、ようやく口を開いた。

ほむら「……グリーフシードはあなたにこそ必要なものなのよ」

ほむら「私がいくら苦しんでも構わない」

ほむら「あなたのソウルジェムが輝きを失うのを、私はもう二度と見たくない」

感情を押し殺したような声。
それが、逆に私の感情を刺激する。

魔まどか「グリーフシードなんか……!」

魔まどか「そんなもののために、ほむらちゃんが苦しんで……?」

魔まどか「私には、ほむらちゃんの経験してきたことは分からないけど」

これだけは言えるんだ。

魔まどか「ほむらちゃんが苦しんでると知って、私が希望に輝けるはずないじゃない……」

しかしこのとき、ほむらちゃんの何かにひっかかったのか。

ほむら「あなたはっ……!」

ほむら「あなたは……いつもいつも他人を気遣ってるけどっ……!」

徐々に高まっていく音が聞こえるほどに。

ほむら「私は、私はもう二度と……!!」

呆気にとられていた私は、その言葉に正面衝突した。
まったくもって不意打ちだった。

ほむら「……二度とあなたを殺したくないのよ!」

ほむらちゃん……? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/04/14(木) 01:48:02.16 ID:KT9CQhMu0<> マミ「推敲中……」カタカタ

マミ「書き散らしすぎたわね……」

QB「いいのかいマミ……」

マミ「なにか?」

QB「……明日はテストなんじゃないのかい?」

マミ「」(おわり) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/14(木) 06:58:38.17 ID:3dtD7A05o<> お疲れ様でした <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/15(金) 08:11:22.15 ID:LHbZ1jVIO<> 乙っちまどまど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/16(土) 11:59:10.92 ID:lK5jCBiP0<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 21:06:15.43 ID:xJNpjk2i0<> 短くまとめる技能がほしいこの頃。今日は深夜まで、書きながら投下してきます
書き溜めが尽きたら……それはそのときに

〜ほむら視点〜

魔まどか「ほむらちゃん……まだなにか隠してるよね?」

私はまどかの謝罪を期待していたのか。
私の糾弾はまどかの決意の前では情けないほど自分勝手だった
その瞳が私の心を見通していく。

魔まどか「教えてよ」

私は何か言わないといけなかった。
まどかはどんなごまかしも真っ直ぐに突き抜けてくるし、言葉や表情の端々から
すいすいと真実へ登りつめてくるだろう

ならば。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 21:19:50.38 ID:xJNpjk2i0<> ほむら「……待ってて」

魔まどか「え?」

ほむら「あなたは本当に……何もかもお見通しね。まるで神様のよう」

魔まどか「じゃ、やっぱり何か」

ほむら「ええ、隠してる」

ほむら「今のあなたとの時間を私は大切にしたいから」

ほむら「……だから待ってて」

ほむら「いずれ、時が来たら必ず話すから」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 21:31:24.37 ID:xJNpjk2i0<>
公園

QB「君の言う通りにした結果がこれだよ……どうしてくれるんだい」

QB(未来)「交渉のタイミングはいくらでもあったろう。
それを掴めなかったのはキミじゃないか」

QB「まどかは手強い。どんなにレールを敷いてあげても気まぐれにふらふらふらと……
おまけに“もう1人”と“イレギュラー”は僕を悪魔呼ばわりだし……印象操作も
ままならないよ」

QB(未来)「おやおや言い訳かい? 確かにまどかの行動は予想できない。
でも誰の言うことも聞かないということは、向こうに束縛されることもないってことさ」

QB(未来)「まあ、どの道この追いかけっこの先は行き止まり。
まどかは逃げも隠れもできないさ」

QB「その根拠を教えてくれと言ってるんだけど」

QB(未来)「それこそエネルギーのムダ使いというものだよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 21:41:37.88 ID:xJNpjk2i0<> 沈黙が流れた。
同じ顔が見つめあい、やがてゆっくりと片方が口を開く。

QB(未来)「人間界ではより多くの情報を持つものが上に立つ。無知なる者は踏み敷かれるのみ。君はどっち側かな?」

QB「そういうとき、人間は既存のシステムの破壊をはかるものさ」

QB「まあ」

QB「僕たちは人間じゃないけどね」

あんこルーム

さやか「あんた、マミさんの何なの?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 21:54:40.74 ID:xJNpjk2i0<> 杏子「親友だよ」

さやか「マミさんはそうは思っていないみたいだけど?」

杏子「まあ……いろいろあったからな」

杏子はあたしのソウルジェムを弄ぶ手を止め、遠い眼をした。

――

鹿目家

〜まどか視点〜

私たちは食卓を囲んでいた。
そこにはまだママがいなかったけど、ひとりのお客様を迎えていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 22:03:36.80 ID:xJNpjk2i0<> まどかママ「ただいまー」

パパ「あれ、今日は早いんだね」

パパは立ち上がって玄関に向かった。

パパ「ちょうどいい。今日は可愛いお客さんがいるんだよ」

私の隣に座っていたその人は、席を立って丁寧にお辞儀した。

マミ「お邪魔してます」

ママ「これはこれは、可愛いお友達だ。いらっしゃい!」

まどか「この人がマミさんだよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 22:16:20.06 ID:xJNpjk2i0<> ママ「ああ! まどかから聞いているよ」

まどか「あの、マミさんを今日……うちに泊めていいかな?」

ママはおやおや、と少し驚き、

ママ「うちはいいけど……親御さんには言ってあるの?」

コートをクローゼットにかけて、マミさんを振り返った。

マミ「大丈夫です」

マミさんに家族はいない。
でもそんな素振りは一切見せない。

全員が席について、いつもより一人分にぎやかな夕食が始まった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 22:18:05.25 ID:xJNpjk2i0<> ママ「それにしても……まどかが先輩を連れてくるなんて珍しい。
今日はなんで?」

ママはさっそく遠慮なくマミさんに聞いた。

本当に正直に答えるとしたら、

まどか『杏子ちゃんがさやかちゃんを拉致監禁したの! 次は私も狙われるかも!
だから、魔法少女のマミさんと、屋根の上にいるほむらちゃんと、
未来から来たわたしがうんぬん』

ママ『わけがわからないよ』

……ということなのです。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 22:30:03.75 ID:xJNpjk2i0<> まどか「え、えーと」

とはいっても、適当な言い訳を考えていたわけでもなくて。

マミ「鹿目さ、あ、まどかさんがテスト勉強全然してないって言うから……」

まどか「ちょ、マミさん!?」

パパ「おやおや」

ママ「まぁーどぉかぁー?」

まどか「ち、ちがうよ!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 22:32:09.89 ID:xJNpjk2i0<> あんこルーム

さやか「……いろいろ?」

杏子「いろいろ」

杏子は組んでいた足を直し、大きく伸びをして、

杏子「あー、ちょうどいいや。お前の間違いをあたしが正してやるよ」

腕を組んで私を見据えた。

杏子「あたしが契約した理由を話してやる……ヒマ潰しくらいにはなるだろ」

……好きにすれば? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 22:40:54.42 ID:xJNpjk2i0<> 〜杏子視点〜

あたしがようやく高学年に上がった頃だった。

パパ! こっちにきて!
みんながパパのお話を聞きにたくさん集まってるよ!

ウソだろ……杏子はやさしいなぁ……。

う、ウソじゃないよ? ほ、本当だよ!

ウソウソ。

いいからきてよー!

教会の扉を開くと、通りを埋め尽くすほどの人々の姿。

呆然として涙を流す父親を見てあたしは会心の笑みを浮かべた。

君の願いは間違いなく叶えられたよ――
――QBの言葉があたしの心にしみじみと響いていった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 22:51:19.35 ID:xJNpjk2i0<> 杏子「ま、魔女退治か……」

QB「安心して。君には素質がある。それにこの街には――」

マミ「QB? その子が例の……?」

QB「――もう一人の魔法少女がいる。マミ、こちらが新しい魔法少女だよ。
昨夜、契約したばかりなんだ」

マミ「よろしくね。かわいい新人さん」

マミ「私、巴マミ」

さ、佐倉杏子です……。

マミ「困っちゃうなぁー私、先輩になっちゃったよー!」

テンション高いよ……。
……とはいえ先輩から教えてもらえるのは安心だ 。

杏子「よ、よろしくお願いします……!」

あたしはぺこりと頭を下げた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 23:00:02.41 ID:xJNpjk2i0<> ――
―――
――――佐倉さん、飛んで!

杏子「と、飛ぶって!? 飛ぶってなんですかぁー!?」

マミ「これでとどめよ!」

杏子「す、すごい……」

これが魔法少女の力か……。

マミ「ざっとこんな感じだよ」

マミ「といっても……私も最近ようやく慣れてきたとこなんだけどね」

QB「マミは契約してそろそろ一年になる……自信がついてきたようだね」

そのあとグリーフシードについて説明を受け、その日はお開きとなった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 23:05:18.34 ID:xJNpjk2i0<> 次の日

学校の帰り道。土砂降りの雨。

杏子「あぁー、傘がないよ……」

杏子「ふ、ふん! 走って帰っちゃうもんね!」ダッ

マミ「スト――ップ!!」

杏子「うわあっ!」

突然、やたら大きな傘を持った女の子が横から飛び出してきた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 23:13:02.04 ID:xJNpjk2i0<> マミ「女の子がずぶぬれなんてダメよ! 風邪ひいちゃうよ!」

杏子「マミさん……魔法少女は風邪なんて引かないんじゃないの?」

マミ「あれ? そっかなぁ……そうかもねー」

QB「君たちは細胞の一つ一つまで魔力で保護しているんだよ?
少なくとも人間にとっての病気、というものにはなるわけがないよ」

マミ「QBの話って、つまんないでしょ?」

杏子「というかさ、その傘大きすぎない?」

小学生の会話に流れなんてものは存在しない。

マミ「これは……ママのだから」

杏子「なるほど! ね、一緒に入ってもいい?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 23:18:25.31 ID:xJNpjk2i0<> マミ「えっ、と……あいあいがさって、知ってる?」

杏子「あいあい?」

マミ「知らないならいいわよ。ほら、行きましょ」

杏子「あいあい!」

男子「うわー女同士で相合傘してるぜwww」

男子2「てかマミちゃんの傘でかすぎだろwww」

マミ「……うるさいなぁ」

杏子「くらえ! 必殺」

杏子「あいあいショット!」クルクルクル

全方向に襲いかかる水滴の嵐。

男子「うわっ、やめろバカ!」

男子2「傘回すな!」

杏子「悪は去ったよ!」

マミ「必殺技……なるほど」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/16(土) 23:24:36.98 ID:x9IRnuDco<> あんこが可愛すぎる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 23:33:17.57 ID:xJNpjk2i0<> 一年後

ゲーセン

――KO!

マミ「ちょっとー、やり方分かんないよぉ!」

杏子「あー貸して貸して」

マミ「無理よ、むりむり」

杏子「黙って見てて」

――KO!

マミ「きゃー、あんこちゃんかっこいー!」

杏子「きょうこだよ!」

マミ「あっ、プリクラ撮ろうよ」

杏子「あー、あんこは遠慮しときますぅー」

マミ「まだそれ気にしてるのー?」

QB「二人とも」

QB「悪いけど、時間だよ」

杏子「はいはい、じゃあプリはまた今度ねー」

マミ「もう、次は絶対逃がさないんだからね!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 23:43:48.55 ID:xJNpjk2i0<> ――あたしたち二人、背中合わせて「見滝原の魔法少女コンビ」は大活躍したさ。
数年にわたって、この街の平和は保たれた。
あたしたちは二人とも高い素質があった。
グリーフシードを二人で分けあっていても魔力が尽きない程度にはね。

マミ「私、杏子と友達になれて、本当に嬉しかった」

マミ「私ね、魔法少女になってから、ずっとひとりぼっちで泣いてばかりだったの」

マミ「でも、あなたに出会えて。私は初めて、魔法少女になってよかったと思えた」

マミ「あのとき契約していなかったら、こんなに楽しい日々は」

マミ「決して送れなかったと思うから」

マミ「これからも、ずっとずっと、一緒に」

マミ「いてくれるよ……ね?」

杏子「……当たり前だ、あたしたちは、親友だろ?」

一度絶望を乗り越えたマミと、相変わらず正義の魔法少女を気取っていたあたし。
あたしたちは少ないグリーフシードで細々と魔力をつないでた。
自己を捨て、悪の魔女から無実の人間を守る、正義の味方!

……思えば、最初から矛盾してた。長続きするわけなかったんだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/16(土) 23:52:38.46 ID:xJNpjk2i0<> マミ「そこまでよ!」

杏子「光の魔法少女コンビ、ここにあり!」

マミ「正義の刃が罪を突き!」

杏子「正義の弾丸が裁きを下す!」

マミ・杏子「――ティロ・フィナーレ!!」

ドォォォン

QB「なんだったんだい……」

マミ「完璧だったわね……!」

杏子「あたしたち、光り輝いてたよ」

マミ「」プッ

杏子「」プッ

あたしたちはこらえきれなくなって爆笑した。
笑いすぎてマミは涙を流していた。あたしも流していたかもしれない。
清々しかった。この世界には希望以外なにもないように見えた。


――だけどさ。
終わりは本当に唐突だったよ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<><>2011/04/17(日) 00:03:01.01 ID:bv+XMpya0<> これは期待 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 00:13:34.92 ID:VQBwMTgG0<> 杏子「ただいまー」

父「……杏子」

親父はこちらに背を向けて、テーブルについていた。
部屋の中は薄暗く、明かりは蝋燭のみ。

杏子「どうしたの? まだ外に親父の話を待っている人がいるよ?」

父「……騙したな」

杏子「え?」

親父の肩が痙攣を始めた。
あたしはわけがわからずにそれを凝視していた。

父「何がウソじゃないよ、だ!! ウソだったじゃないか……!!」

割れるような怒声が空気を砕く。

騙したな騙したな騙したな騙したな騙したな騙したな
騙したな騙したな騙したな騙したな騙したな騙したな

――この魔女が!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 00:16:05.76 ID:VQBwMTgG0<> ――ちがう。

あたしは、魔法少女だ。魔女じゃない。

杏子「……なあ、母さんは? 妹たちは?」

父「……っ」

親父は急に沈黙した。
あたしは肺の中がすぅっとするような感覚に襲われる。

親父を突き飛ばして、
部屋の奥を覗き込んだあたしは凍りついた。
魂が抜けたように呆けていた。

雨が窓を叩く音だけがいつまでも響いていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 00:20:33.49 ID:VQBwMTgG0<> あたしの、家族が
あたしの、世界が

―――崩れ落ちていった。

こんな人生、生きる意味あるの?
こんな世界、守る価値あるの?

父親の血が、雨に洗い流されていく。

あたしは土砂降りの雨の中、びしょ濡れになりながら当てもなく、

マミ「杏子!」

マミ…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 00:25:27.55 ID:VQBwMTgG0<> マミにお似合いのフリフリの傘。
マミには大きすぎるそれは、いつもあたしたちが2人で帰るのにぴったりだった。
その傘は今、成長したマミの手に自然に収まり、
傘はあるべきところに戻ったように見えた。

マミ「使い魔の反応があったわ。早く向かいましょう」

杏子「……何のために?」

マミ「えっ? そりゃ、街の人を守るためよ」

杏子「でも、使い魔でしょ? グリーフシードは持ってないよね」

この世界も人間も、守ったところで何も返してくれはしない。

杏子「だったらさ、4、5人ばかり食わせて魔女になるまで待ったほうが良くない?」

なんでもっと早く気付かなかったんだ、とあたしは心中思った。
そのときマミの顔から表情が消えた。

マミの手が傘を取り落し、

ぱちんっ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 00:30:56.05 ID:VQBwMTgG0<> 杏子「痛ぇな……何すんのさ」

マミ「あなたはっ……なんてことを」

杏子「……」

マミ「……ほ、本気で言ってるの?」

杏子「あたしは……」

そうだよ。

杏子「おかしいじゃないか。魔法少女は一番上に君臨しているのに
なんで一番苦しまなくちゃいけないんだ」

杏子「魔法少女は正義の味方じゃない。
マミだって一人苦しんできた、でも考えてみれば、そんなのおかしいじゃないか」

おかしいじゃないか。
おかしいじゃないか。

杏子「人間は魔女とともにグリーフシードを生み出して、これを納める。
魔法少女は命を賭けてみんなのために戦う。こうあるべきだ。
いやこうでなくてはならなかったんだよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 00:36:44.07 ID:VQBwMTgG0<> 口がスラスラと動く。頭で口を動かしたというよりは、その逆だった。
あたしがしゃべったことはあたしの真理になるようだった。

マミは顎の先、髪の先から雨粒を滴らせながら、微動だにしなかった。

マミ「悪いけど……」

マミ「あなたの言うこと全然理解できない。聞きたくない」

杏子「そうかい」

マミは唇を噛んで、小刻みに震えていた。
しかしそのことはあたしの心に何も及ぼさなかった。

マミ「……魔法少女コンビ、解散ね」

マミ「もう二度と、この街に足を踏み入れないで」

杏子「何言ってんの? 出てくのはあんたに決まってるじゃないか。
ここはあたしの故郷なんだからさ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 00:44:13.42 ID:VQBwMTgG0<> 故郷ならっ……!
何で街の人を見殺しにしようなんて思うの!?

助けても助けても……あたしたちは!
もう助けたってしょうがないんだよ!

初めて
銃と刃が交差した。

確かに魔力はあんたが上だ。
だけどあんたの戦い方には致命的な弱点がある。
戦いは舞いじゃねえ……殺し合いなんだよ。

頭上から見たマミは茫然としていたな。
あたしは多節棍を全力で振りおろしてやった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 00:47:54.81 ID:VQBwMTgG0<> 雨はその勢いを増して、通りは川のようになっていた。

マミ「出てって……出てってよぉ……!」

水たまりで丸くなって、雨に曝されながらマミは叫び続けていた。
あたしはそれを黙って見下ろしていた。
戦闘の余波で、マミの母親の形見の傘はぐにゃぐにゃに潰れて打ち捨てられていた。

マミ……。

あたし、何してんだろ……親友叩き潰してさ……何がしたかったんだっけ。

……何で、契約、したんだっけ。

何のために契約して、何を守るために……あたしは。

杏子「……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 00:49:48.30 ID:VQBwMTgG0<> ……行こう。
この街は、近すぎて……頭がおかしくなりそうだ。

またな、マミ

この薄情な世界があたしから奪った。
正義と、希望とを、必ずこの手で取り返す……!!

――私は街を出て、そこから先は

まぁ、つまんない話だな――。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/04/17(日) 00:52:20.78 ID:VQBwMTgG0<> 30分くらいほむほむしてきます そのあと再開
間に合わせるためにはカットしなくちゃいけなかったんだろうけど……
個人的に杏マミは外せなかった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/04/17(日) 01:20:21.92 ID:RLyWUI/po<> ほむほむ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 01:23:45.94 ID:VQBwMTgG0<> ほむほむ!(再開します)


あんこルーム

〜さやか視点〜

さやか「……あたし、あんたのこと誤解してた」

さやか「そこはごめん……でも」

こいつがなぜ、ここまで話してくれたのか、あたしにはわからない。
途中から、制御が効かなくなっていたようにも見えた。

胸が締め付けられる感じがした。
けど……同情はしない。

さやか「……今のあんたは間違ってる」

さやか「マミさんの気持ちがよーく分かるよ……」

こいつ、根は悪い奴じゃないんじゃないかな……。
マミさんも、こいつを信頼していて、だからこそ、裏切りは痛烈で。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 01:29:07.77 ID:VQBwMTgG0<> 杏子「……はあっ!? 待て待て、ちゃんと聞いてたのか!?」

本気で信じられないという顔をする杏子。

さやか「聞いてたよ」

あたしは今ならこいつのことがすべてわかる気がした。

杏子「マミはあたしの事情を知らなかった……けどあんたは……」

ベッドに乗り出した体勢のまま、杏子は息巻く。
あぁ……こいつ、臆病なんだなぁ。

杏子「あたしは自分勝手な願いをした挙げ句の果てに全てを失ったんだ」

杏子「だからそれを取り返すために、自分のためだけに生きることにしたんだぞ!」

こいつは別にグレたわけでも、悪に染まったわけでもないんだ。
ただただ、純粋すぎただけ。

真剣に幸せについて考えて、出した結果がマミさんと違っただけ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 01:36:45.64 ID:VQBwMTgG0<> とりあえず顔が近い。うっとうしくなってきたよこいつ。

杏子「あたしはっ……お前があたしと同じ道を辿るのなんて見てられないんだよ!」

ぎゃーぎゃーと。
……お前はおっぱい欲しがる子供かっての。

さやか「あたしはあんたとは違う」

さやか「人のために祈りを捧げたことを悔やんでないわ」

さやか「どんなことになっても、私はこの力を人のために使うよ。
あんたみたいに、逃げ隠れしないわ」

杏子「はっ……はは……マミみたいなこと言ってんじゃないよ」

杏子は力なく笑い、手近な椅子にドサッと座った。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 01:42:22.27 ID:VQBwMTgG0<> 杏子「あんたは身を滅ぼすってことの意味がわかってないんだ。
これは逃げ隠れとかじゃない。そういう世界のルールなのさ」

杏子「……魔法少女の定めなのさ」

頭を抱えていた。
本当にうっとうしい。

ただし、そのうっとうしさの正体からは目をそらす。

さやか「そうやって信念曲げて……ぐねぐね墜ちた結果が今のあんたか……
付き合いきれないわ」

杏子「……バカ野郎!」

パッと顔を上げて、

杏子「私たちは魔法少女――」

杏子「――他に同類なんていないんだぞ!」

声を荒げて椅子から立ち上がる杏子。

あたしはバカだ……。
こんな奴のことを、ちょっとでも。

――
―――かわいい、と思ってしまうなんて。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 01:46:56.11 ID:VQBwMTgG0<> 〜まどか視点〜

まどか「あの……マミさん? 起きてる? 聞こえますか?」

マミ「聞こえているわ……あの子がいないと静かでよく聞こえる」

QBのことだろうか。
今はこの家の上で、まどかさんとほむらちゃんというツートップが
睨みをきかしているわけで、QBも近づけないみたいだった。

まどか「今日のこと……なんだけど」

マミ「……“佐倉さん”のこと?」

まどか「はい……杏子ちゃんと、マミさんは、初対面じゃなかったみたいで」

マミ「そうよ」

まどか「杏子ちゃんはどんな子なんですか……マミさんなら知ってるかなって思って」

ひょっとしたらマミさんの気に障るかと心配だったけど、

マミ「わたし、あの子のことならなんでも知ってるよ」

私が見つめるマミさんの背中は穏やかだった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 01:50:13.24 ID:VQBwMTgG0<> まどか「杏子ちゃんと、さやかちゃんは、仲良しになれると……思いますか?」

マミ「……」

マミさんはしばらく黙りこんだ。
時計の針の音がいやに大きく聞こえる。


〜杏子視点〜

杏子「……お前、もしそいつに振られたら、どうするつもりなんだ」

バカだ。
バカすぎる。

あたしのやらかしたバカなんか目じゃない。
美樹さやか……こいつは……!

さやか「……仕方ないんじゃない? 別に恩着せがましく迫るつもりもない」

そのすました顔。わかったような顔。
鼻にくるような不幸のにおいにあたしは顔をゆがめた。

さやか「もう寝るわ……」

杏子「……人質の分際で良い身分だな」

さやか「邪魔なら解放しろってーの」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 01:51:55.77 ID:VQBwMTgG0<> 〜まどか視点〜

マミ「考えてみるとね……」

マミ「あの二人、とてもよく似ているわ」

マミ「似ているから、いがみ合うかもしれない」

マミ「似ているから、理解しあえるかもしれない」

マミ「結局は、運命次第なのよね」

まどか「……仲良くしてほしいな」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/17(日) 02:07:41.48 ID:VQBwMTgG0<> 次の日

杏子「じゃ、せいぜいおとなしくしてろよ?」

さやか「何しにいくってのよ」

杏子「教えてやる義理はないんだが」

さやか「まどかに手を出すのだけは許さないからな」

杏子「人質はお前で十分」

杏子「期待してるよ、囚われのお姫様」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage saga<>2011/04/17(日) 02:11:32.80 ID:VQBwMTgG0<> マミ「今日はここまでよ」

まどか「あいあいショット!」クルクルクル

さやか「あんこちゃんあいあい!」クルクルクル

杏子「  おい  」

ほむら「明日の夜にも少し投下するわ 杏さやの予感」クルクルクル

マミ「こんなとこまで読んでくれた人には感謝を!」クルクルクル <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/04/17(日) 05:14:49.32 ID:YgYIKM920<> 『お疲れ様、まどまどSSだなんてアナタはなんてGJなの
そして佐倉杏子、その技のやり方教えて貰える?』クルクルクル <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/17(日) 09:53:29.30 ID:YVIWy/Gyo<> お疲れ様でした。

実はさやさやさんのほうがあんこさんより精神的に優位・・・・・?

「クルクルクル」は、髪で遊んでいるのか、回って遊んでいるのか・・・・・・・。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/18(月) 01:01:55.56 ID:7jvVU6LS0<> 書いてみた 推敲に時間がかかるのでヒマつぶしに

一同「あいあいー」クルクルクル

杏子「」イライラ

一同「あいあいー」クルクルクル

杏子「……お前ら、全然なってねぇ!!」ガタッ

一同「」ビクッ

杏子「マミ、放水の用意だ!」

マミ「オッケーわかったわ!」ジャバジャバ

杏子「傘を天に突き刺し! 指先の動きだけで――」

杏子「――あんあんショットォォォ!!」ツルッ

さやか「あぁっ、勢い余って傘を落としたっ(棒)」

杏子「」ビチョビチョ

一同「……」

一同「……あんこちゃんあんあん!」クルクルクル

杏子「あっ、あんこちゃんあんあん! うわああああああああああああ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/18(月) 01:05:39.35 ID:7jvVU6LS0<> さやか「……あいあい、じゃないの?」

杏子「……」

うわああああああああああああ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/18(月) 01:45:30.38 ID:7jvVU6LS0<> 〜まどか視点〜

まどか「いってきまーす!」

マミ「お邪魔しました」

パパ「娘が増えたみたいで楽しかったよ。また遊びにおいで」

マミ「は……はい……!」

学校に行くふりをしたものの、当然登校はせず、ほむらちゃんの家に向かう。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/18(月) 02:05:04.12 ID:7jvVU6LS0<> ほむホーム

魔まどか「待ってたよ! さあさあ上がって!」

まどかさんがハイテンションで出迎えてくれた。
これが徹夜明けのテンションっていうのかな……。

マミ「さやかちゃん救出作戦会議、ね」

まどか「お、お邪魔します……」

お邪魔していいんだろうか。私なんかが。

魔まどか「ほら早く早く!」グイグイ

私の躊躇などお構いなしにまどかさんは私の手を引っ張っていった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/18(月) 02:10:39.56 ID:7jvVU6LS0<> ほむら「待っていたわ」

マミ「それで、佐倉さんの居場所をつかむ手段はあるのかしら?」

期待していない顔のマミさん。
しかし。

ほむら「ああ、それは簡単よ」

返答はあっさりとしていた。

マミ「え?」

ほむら「杏子はいまだにあなたを親友だと思ってるってことよ」

ほむらちゃんはコーヒーを口に含み、瞳を閉じた。

……?

ほむら「彼女は特定の街に定住していない。
新しい街に入るときは複数のホテルをとって拠点としているようね」

まどか「お、お金持ち……」

マミ「違うわ」

まどか「え?」

マミ「違うのよ」

マミさんはそれ以上何も言ってくれない。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/18(月) 02:28:05.46 ID:7jvVU6LS0<> ほむら「そのとき彼女は必ず、巴マミという名前を使う」

マミ「勝手に人の名前使って、いい迷惑だわ」

まどか「でも……それじゃマミさんにわかっちゃうよね? そんなことするかな?」

私がおそるおそる口を出すと、まどかさんは微笑んで、

魔まどか「実は昨日、街の全部のホテルを当たってみたんだ」

魔まどか「そしたら、全部のホテルにマミさんの名前で部屋が取られてたの」

マミ「! だったらどうして突入しなかったの?」

マミさんは眉を上げた。
まどかさんは申し訳なさそうな顔で、

魔まどか「杏子ちゃんに……時間をあげたかったんだ」

ほむら「彼女の性格からして、緊急性は低いし……」

マミさんは黙り込んだ。

ほむらちゃんは先を続けた。

ほむら「こちらの勝利条件は」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/18(月) 02:30:36.97 ID:7jvVU6LS0<> ほむら「佐倉杏子の居場所を突き止め、美樹さやかを保護すること」

ほむら「佐倉杏子は説得、無理なら無力化して拘束」

ほむら「こちらにはまどかがいる。作戦は十分達成できるでしょう」

そう言うと、ほむらちゃんは立ち上がった。

魔まどか「できれば戦いたくないなぁ……」

まどかさんも立ち上がる。

3人の体が光に包まれた。
マミさんに靴が、まどかさんにリボンが、そしてほむらちゃんには
時計を模した円形の盾が、次々に生み出されていく。

3人の魔法少女が、私の前に立っていた。

魔まどか「つかまって」

微笑みと共に差し出された手を、私は黙ってつかんだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/04/18(月) 02:42:27.33 ID:7jvVU6LS0<> マミ「短いけどここまで!」

まどか「最近空気な子になりつつある……」

QB「僕には劣るよ」

魔まどか「ラストだけはほぼできてるからちょっとペース早めようと思うよ」

杏子「うわ、主人公補正!」

一同「あんこちゃんあんあん!」クルクルクル

杏子「しつけえ!」

マミ「はいはいおやすみー」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/18(月) 08:06:21.94 ID:UCQFCBe+o<> お疲れ様でした <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2011/04/18(月) 08:19:19.28 ID:un8Rtdpbo<> 乙 もうラストできてるんだね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/18(月) 10:11:34.26 ID:4ehqrlhIO<> 乙っちまどまど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/18(月) 18:08:24.70 ID:LHLmPBPa0<> もはや「イボンコペッチャンコ!イェイ!」に通じるものになってるなww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/18(月) 19:02:15.61 ID:rCovBijSO<> >>307
「杏子だけど。お前ら、ブッ飛ばすぞ?」


こうか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/18(月) 23:20:46.30 ID:dw+Ue4+N0<> 乙マミ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/20(水) 00:53:15.66 ID:y4zOZKlJ0<> 再開します 

〜杏子視点〜

さやか(なぁ……あんたもさ、無理しすぎなんじゃないの?)

さやか(強がってるけど、本当は怖いだけなんでしょ?)

部屋を出てからずっとこんな調子だった。

杏子(わけわからんことほざいてんじゃないよ)

さやか(ずっと1人なんでしょ? 自分は人間じゃないとかそうやって自分をウソで固めないと立つこともできないんでしょ?)

というか、今朝からだった。
昨日はあたしばかりが話していた感じがしたが、今朝からこいつは急に饒舌になった。
うんざりして部屋を出ても、テレパシーが追いかけてくる。うぜえ……。

あたしを改心させて、自分を解放させようって腹か?

杏子(あぁ、もう何が言いたいんだよ? はっきり言え)

さやか(……わかった)

ぴたりとさやかは黙った。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/20(水) 00:54:30.22 ID:y4zOZKlJ0<> 私は返答を待ちながら、ホテルの前を通り過ぎた。
さやかを拘束しているのとは別の、拠点の一つだ。

やがて、さやかがすぅっと息を吸う音が聞こえ、

さやか(私、あんたを助けたいんd)

途中で途絶えた。

……なんだ?

杏子(おーい、どぉした?)

返答はない。
テレパシーの不具合? 的なものか?
それともまさか、

杏子「おい猫モドキ野郎、どうなってる?」

QB「さやかの意識が途絶えたということじゃないかな?」

杏子「なんでまた」

QB「……」

杏子「……人質に死なれたら人質の意味がない」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/20(水) 00:56:03.37 ID:y4zOZKlJ0<> あたしは荷物を、ちょうど通り過ぎたばかりのホテルのフロントに預ける
ちょっと不用心だが、ひとっ走りだ、問題ないだろ。

部屋の前にたどりつき、扉を開ける。

杏子「おいどうした、お姫様。返事くらいしろっての」

電気の点いていない部屋は無音だった。
人の気配を感じない。

杏子「……おい、まさか脱走したわけないよな」

いやいやそれはない。いくらなんでも。
ここを特定された可能性はあるが、突入されればあたしが張った魔力のセンサーが
反応するはずだ。

というか、いた。
ちゃんとベッドに寝てるじゃないか。

杏子「おい、不貞寝してんじゃねぇよ」

無音。

杏子「さやか……?」

まさか、本当に眠っているのか。
それとも、まさか。

まさかの最後にたどりつき、バカバカしいと思いつつもその喉元を掴んだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/20(水) 01:02:36.33 ID:y4zOZKlJ0<> まさか、だった。

杏子「……」

杏子「どうなってる……」

こいつ――

――死んでるじゃねえかよ!!

さっきまで元気にバカなことをほざいていた……。
バカ野郎……。

杏子「なんでだ? なんで死んでんだよ!! さっきまで普通に話してたじゃねーか!!」

QB「そうだね。カバンの中のさやかは少々窮屈そうだったけど」

は?

杏子「あたしは今ここにいるさやかの話をしているんだが……」

QB「いやいや」

QB「さやかはさっき君がホテルに置いてきちゃったじゃないか」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/20(水) 01:09:13.61 ID:y4zOZKlJ0<> このあとの記憶があまりない。
分かるのはQBが何か言っていたことと、あたしがあいつを叩き潰したということだけだ。

魔法少女が身体をコントロールできるのは……せいぜい100m圏内……

こういう事故は……ただの抜け殻……魂……ソウルジェム……

――ソウルジェムを砕かれない限り、君たちは無敵だよ――

――むしろ便利だろう?――


あたしは走る。

ソウルジェム!
さやかのソウルジェム!

ソウルジェムが戻れば意識も戻る。
ただモタモタしてると……。

宿主のいない死体はいろいろと、大変なことになるかもね。

―――

フロント

受付嬢「巴マミ様……ですか?」

杏子「あぁ、ついさっき預けた荷物だ」

受付嬢「あぁ、お友達の方ですね」

杏子「は?」

受付嬢「荷物はあちらのお友達にお返ししましたよ」

私はアホの子のようにその指さす方向を向いた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/20(水) 01:22:20.20 ID:y4zOZKlJ0<> 〜魔まどか視点〜

受付嬢「巴マミ様ですね」

マミ「これ、学生証です」

受付嬢「確かに」

とりあえずフロントで杏子ちゃんの情報を集めてから、突入するかどうか決めることになった。
といってもこのホテルに泊まっているとは限らないんだけど。

マミ「……つかぬことお伺いしますが、このホテルに私名義で宿泊中の子は
今、部屋にいますか? 友達なんですけど」

にこやかな口調の中からスラスラと嘘が流れる。

受付嬢「お友達でしたか。あの子はついさっき荷物をフロントに預けて」

受付嬢「慌ただしく飛び出して行かれましたよ」

まどか「えっ」

マミ「あらあら、行き違いになっちゃったわね……」

ほむら「本当に困った奴ね」

魔まどか「いまさら待ち合わせ場所に行っちゃったのかなぁ? あははっ」

うぅ……私だけ棒読みだぁ……。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/20(水) 01:30:23.73 ID:y4zOZKlJ0<> マミ「その荷物、私たちのものも入っているので、頂いていいですか?」

ちょっと強引だったけど、最初に学生証を提示したのが効いたのかもしれない。

受付嬢「……少々お待ち下さい」

そうして首尾よく私たちは杏子ちゃんの荷物を回収できた。
泥棒みたいで良い気はしないけど、もちろん後で返すつもりだし……。

ほむら「……急ぎましょう」

ほむらちゃんはロビーの椅子まで鞄を持っていき、躊躇なく開いた。

ほむら「これは……」

ほむらちゃんは期待通りという顔。
鞄から覗いたのは美しい蒼の光。

まどか「さやかちゃんのソウルジェム!?」

ほむら「回収よ」

ほむらちゃんは盾を顕現させ、その中にさやかちゃんの魂を丁寧に収めた。

魔まどか「これでひと安心だね」

マミ「何言ってるのよ、まだ美樹さん本人を助けられたわけじゃないのよ?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/20(水) 01:48:21.26 ID:y4zOZKlJ0<> ……そうだった。
マミさんともう一人の私はソウルジェムの真実を知らないんだった。
でもこれをマミさんに伝えてはいけないって、ほむらちゃんは言ってたなぁ……。

まどか「あれ……杏子ちゃん?」

私が言葉に窮した時、ちょうどもう一人の私が声を上げた。
一瞬翻る赤髪が見えた気がした。

まどか「行っちゃった……」

ほむら「いいわ。どちらにしろ向こうからアクションを起こしてくるはず」

魔まどか「ソウルジェムを取り返せたしね」

マミ「ソウルジェムだけ取り返しても仕方ないでしょ!」

マミさんは私たちがさやかちゃんを軽く扱っていると誤解しちゃってるみたい。
そんなわけないです、と言いたいけど、ソウルジェムについて説明するわけには……。

魔まどか「あの、マミさん……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(鹿児島県)<>sage<>2011/04/20(水) 01:54:51.09 ID:NSfa7qi1o<> つまんね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/04/20(水) 01:54:58.78 ID:y4zOZKlJ0<> ほむら「待って、私から説明する」

マミ「説明ってなにを?」

ほむら「ソウルジェムにはあなたの知らないこともあるの」

大丈夫、うまくやるわ。

ほむらちゃんは私にアイコンタクトすると、

ほむら「私たちはソウルジェムから魔力を受け取っている、これは知ってるわね」

マミ「もちろんよ」

ほむら「だから、あまりソウルジェムが自分の身体から離れてしまうのはよくないの」

ほむらちゃんの声はよどみない。

ソウルジェムが自分の魂そのものであることは伏せて、
さやかちゃんの危険を説明しようとしてるみたい。

マミ「それは……そうかもね」

マミさんは眉をひそめる。

ほむら「具体的には、100m以上離れると生命活動が維持できなくなるわ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/20(水) 01:58:24.54 ID:y4zOZKlJ0<> マミ「! そんな……」

まどか「さやかちゃんは大丈夫なの!?」

魔まどか「ソウルジェムをさやかちゃんのところに戻してあげれば、大丈夫だよ」

マミ「……それで、ひと安心、なのね」

ほむら「そう、これは美樹さやかの命そのものなのよ」

まどか「ソウルジェムってすごいんだねー、魔法少女の魂だね!」

魔まどか「」

ほむら「そ、そうね……とても大切なものよ」

なに……今の……びっくりしすぎて声も出なかった……。

マミ「まぁ、まぁ……そんな事故めったに起こらないでしょうし……」

マミさんは少しショックから立ち直るのに時間がかかっていた。
オブラートに包んでもこれだ。ストレートに真実を伝えたりした日には……。

マミ「でも、佐倉さんは今頃戸惑っているでしょうね……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/20(水) 02:02:14.76 ID:y4zOZKlJ0<> まどか「あの、だったら」

もう一人の私はいかにも妙案を思いついたという顔。
我ながらわかるんだけど、こういうときは碌なこと考えてないの……。

まどか「杏子ちゃんに事情を話して……みんなでさやかちゃんを助けようよ」

ほむら「杏子に美樹さやかのソウルジェムを明け渡すというの……?」

ほむらちゃんは首をかしげた。

QB(未来)「杏子にソウルジェムを渡すなんてとんでもない」

QBがぴょこっと顔を出した。
私もそう思う。けど、それはQBとは理由が違う。
この悪魔はただ私たちの対立を煽りたいだけなんだ……!!

私は声を上げようと思ったけど、

まどか「QB……私、知ってるんだからね」

QBに非難の声を上げたのは、意外にももう一人の私だった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/20(水) 02:04:16.34 ID:y4zOZKlJ0<> QB(未来)「知ってるって何を?」

まどか「昨日、私たちの味方のふりをしてたけど、ほんとは杏子ちゃんと、
グルだったでしょ?」

私もほむらちゃんも、マミさんも驚いた。
私とほむらちゃんには自明のことだったけど、この子はどうしてそんなことが
わかったんだろう。

QB(未来)「なぜ、わかったのかな……聞かせてくれるかい?」

QBは否定しなかった。
もう一人の私は珍しく自信に満ちた声で、

まどか「だってQB、杏子ちゃんがまだ来てないのに、来たってわかってたでしょ?」

QB「……」

もう十分だ。

魔まどか「それなのに……今日は杏子ちゃんの敵なんだね……信用できませんねぇ」

魔まどか「QB、あなたが何か企んでいるなんていつものこと。
だから、私たちはさらにその裏をかくだけだよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/04/20(水) 02:23:32.74 ID:y4zOZKlJ0<> マミ「今日はここまでよ」

QB「アニメ放送に間に合いそうにないんだけど完結はさせたいと思っていて放送後にもハードルは上がるけど書きあげるつもりであってつまり次回作は短編にしたいということなんだ」

さやか「アニメには間に合わなくてもちゃんと書きあげるから」

杏子「次回はさやかをめぐって杏まどガチバトルの予定だってなぁ」

ほむら「というかスレ立てたときはこんな締切なかったわ。話が違うわ」

魔まどか「そんなこと言ってる暇があったら書こうよ」

マミ「愚痴でごめんね、レス励みになってます!」

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/20(水) 02:34:07.19 ID:9SLfiRmfo<> >>318
鹿児島県ェ・・・ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/20(水) 07:55:14.02 ID:XjcD4yIRo<> お疲れ様でした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/20(水) 11:44:13.39 ID:8u5N3inl0<> 乙〜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga sage<>2011/04/21(木) 00:53:39.20 ID:xBY0jKzo0<> アニメいよいよですね
こっちもぼちぼち始めます


〜杏子視点〜

部屋は薄赤色に染まる。
シンと静まり返り、自然光を絶たれた空間。
本当に時は動いているのか?

僅かな光源の点滅、それだけが空間に動きを生み出す。
部屋の中央には動かず静かに横たわるさやかの姿があった。

あいつらはソウルジェムの秘密を知っているんだろうか。

……おそらく知らないだろう。
今までそんなことを知っている奴に出会ったことなどないから。

ソウルジェムを、かざす。

赤い光が穏やかに眠るさやかの横顔に稜線を描き出す。
あたしの力が抜けていくのと引き換えに、さやかが肌艶を取り戻していく

絶対に死体とは呼ばせない。

QB「キミも変わってないね。結局マミと大概じゃないか」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/21(木) 00:54:50.42 ID:xBY0jKzo0<> 暗闇に2つの赤い瞳が覗いていた。
あたしはもうこいつを潰すのを諦め、

杏子「……変わったさ。あたしは変わった。
守る意味も、手段も、その対象もな」

こいつが、さやかが言いかけていたことをもう一度聞き直したい。
……だから、さっさと目を覚ましてくれよな。

ソウルジェムを指輪に戻し、ふぅ、と息をつく。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/21(木) 01:14:54.33 ID:xBY0jKzo0<> とはいえ、このままじゃ、もう二度と、目覚めない。
さやかのためだけを思えばこの体を向こうに引き渡すべきなんだろう。

『あんたを助けたい』

その言葉をさやかが忘れ去り、再び敵になってしまうとしても。

でも、それは嫌だ、嫌だ……。

なあさやか。どうすりゃいいんだよ、あたし。

眠り姫は口を開かない。
その横顔をどれくらいの間、見つめていただろうか。
あたしの中でひとつの決意が生まれていた。

さやかのソウルジェムを取り返す。これしかない。

さやかを救うためなんだ。

元は自分で撒いた種、自分で回収する。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/04/21(木) 01:16:23.72 ID:xBY0jKzo0<> マミ「ここまでよ!」

まどか「眠くてまともに推敲できないの……」

マミ「おやすみフィナーレ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/04/21(木) 07:10:17.68 ID:vjG6og7Ao<> 乙 あんこちゃんまじ聖女 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/04/21(木) 08:10:44.50 ID:SDs0wvjpo<> お疲れ様でした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/04/21(木) 09:58:10.46 ID:43qMlINIO<> 乙っちまどまど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga sage<>2011/04/21(木) 23:56:31.98 ID:xBY0jKzo0<> マミ「ここからはショートver,でお送りします」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/21(木) 23:58:03.86 ID:xBY0jKzo0<> 〜魔まどか視点〜

強引にねじ込まれるような、頭の中で反響するような、声が聞こえた。

杏子『お前ら……』

まどか「えっ」

マミ・ほむら「っ!!」

脳内に直接響いた声は。

杏子『美樹さやかのソウルジェムを返してもらおうか』

――宣戦布告。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/22(金) 00:10:20.67 ID:qi2juIFg0<> ビルの屋上からこちらを見下ろす姿があった。

ほむら「……行くわよ」

まどか「そんな――!」

襲いかかる3人の魔法少女

まどか「だめだよこんなの。絶対にけんかはよくないよ!」

ほむら「美樹さやかのためよ」

まどか「それは、わかるよ」

私とほむらちゃんは時を止め、それぞれ銃弾と矢の弾幕を張る。

まどか「でも……!」

唯一の出口は前。そこに、

マミ「ティロ・フィナーレ!」

ビルの一角が、まるごと吹き飛んだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/22(金) 00:24:39.98 ID:qi2juIFg0<> まどか「まどかさんも、なんとか言ってよ!」

魔まどか「今、さやかちゃんのソウルジェムを明け渡すのは危険すぎるよ」

まどか「杏子ちゃんはさやかちゃんを助けたいのかもしれないでしょ……?」

今にも潰されそうな声で、しかしその抵抗は一向にやむ様子がない。

魔まどか「いい加減にして……さやかちゃんが危険だって、わからないの?」

まどか「わかるよ! そんなこと、わかってるよ! なんでわからないの! 私なのに!」

直後、もう一人の私は火がついたように叫び始め、

まどか「私なのに、なんで私の言っていることを、分かってくれないの!」

私も叫び返した。

魔まどか「分かってるよ! 
あなたが今考えてることなんて! 全部、過去に私が考えてたことなんだから!」

魔まどか「だから、それが間違ってることも分かるの! あなたが犯す間違いは全部
私は知ってるの! だから、あなたは私の言うとおりにしててよ!」

まどか「そんな言い方っ……!!」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/22(金) 00:33:54.22 ID:qi2juIFg0<> そして、妹ちゃんが息をつまらせたとき、

杏子ちゃんは気付いたら逃げだしていた。
私たちは壁を蹴って空に飛び出す。

魔まどか「さやかちゃんを返してよ!!」

放った矢が杏子ちゃんの足元で起爆する。
間一髪で爆発はかわされたが、爆風が杏子ちゃんの身体を人形のように吹っ飛ばす。

まどか『まどかさん! 酷すぎるよ! こんなのってないよ!』

魔まどか「あなたは黙ってて! これは魔法少女同士の問題なんだから」

魔まどか「魔法少女には絶対に守らなきゃいけないものがあるの!」

一拍の間。
息を吸う音。

まどか『魔法少女じゃなくたって……』

まどか『……守りたいものくらいあるよ!』


思わず……私の足が、止まった。

『これは魔法少女のためのもの。あなたたちに触る資格なんて』
『それを非難できるとしたら、それは同じ魔法少女として』
『あたしと同じ立場になってみなよ』

――ボクと契約して魔法少女になってよ――


次々と流れるのは過去の記憶。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/22(金) 00:45:40.78 ID:qi2juIFg0<> 私は今なんてことを。
ずっとおかしいと思っていた言葉の数々。
それを私が口にしてしまうなんて

私は私に訴え続ける。

さやかちゃんは私の親友なんだよ!?
私だってさやかちゃんを助けたい。
あなたの力になりたい――。

彼女の中でひとつの決意が固まりつつあった。

魔まどか「で、でも――。」

一方で私も決断を迫られていた。

――いいよ、まどかさん、もう知らない――。

――私だって契約しちゃうからね――。

――
―――願い事は決まったかい?――

――だめえぇぇ!!


まどか「……だったら、こんな戦いもうやめて」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/22(金) 00:47:48.31 ID:qi2juIFg0<> 〜杏子視点〜

想像を絶する鹿目まどかの力。

こいつはもう魔法少女とか、そういうレベルの存在じゃねーぞ……!!

QB(未来)「当然さ。彼女は宇宙の救世主なんだからね」

光の矢をギリギリでかわし空中に飛び出す。
下方には走行中の列車、その上に突っ込んだ。
受け身をとり、なんとか踏みとどまる。

魔まどか「もう逃がさないよ、杏子ちゃん」

振り返ると既に追いつかれていた。

ほむら「……あの淫獣は始末しておいたわ」

杏子「あんたら、無茶苦茶だぜ……でもさぁ!」

杏子「こっちも、さやかを渡すわけにはいかなくなっちまったんだ……!!」

走行中の電車の上、向かい合う。
強風に煽られ、髪がダイナミックに暴れるが、体は落ちついたもんだ。

杏子「ソウルジェム、返してもらうよ」

勝算なんてない。だけどやる気はある。
度胸もある。
なら、やってやるさ。

ナメんなあ!!

QB(未来)「佐倉杏子っ! キミは――!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/22(金) 00:49:14.66 ID:qi2juIFg0<> こちらに歩を進めてくる鹿目まどか。
その表情からはなにも読み取れない。穏やかなまま。
ただただ暴力的な圧倒的な「力」をむやみに撒き散らしている。

聖人? 魔女? 神? こいつは……。

ま、なんでもいいな。

杏子「さやかあぁぁぁあああっぁぁぁあっ!!」

大地を割り鋼鉄の車両をぶち抜いて突き出す巨大な槍が、まどかを襲った。

魔まどか「 あ 」

あたしの渾身の一撃が電車の後方にまどかを吹き飛ばした。
猛スピードで走る電車から引き千切られるように弾き飛ばされた。
伸ばした手は届かず、虚空をつかんだ。

ほむら「まどかぁぁぁああっぁぁぁあっ!!」

電車がカーブに差し掛かり、車輪がガリガリガリッ! と耳触りな音を立てる。
砲弾が着弾するように、線路を覆う小石が飛沫をあげた。

そしてすぐに見えなくなった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/22(金) 00:51:10.54 ID:qi2juIFg0<> 〜ほむら視点〜

ほむら「まどかを……よくも!」

私は一か八か、時間停止。胸に重い痛みが走る。魔力が足りない……。
慣性に従って前方に投げ出された私。届け……!!

杏子「がっ………!!」
杏子の眼前で限界がきた。足が触れるか触れないかというところ。
限界……!
でも時間が動いたら、威力が……!

結果を確認する前に、私の意識は落ちた。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/22(金) 01:01:04.51 ID:qi2juIFg0<> 〜杏子視点〜

私はマミと“もう一人”の方に向かった。

まどか「もうやめて……」グス

杏子「泣きたいのはこっちだよ
私はさやかを助けたいだけなんだ」

杏子「そのためにソウルジェムが必要なんだ」

杏子「全部、私が撒いた種だ。謝って許してもらおうとも思ってない」

杏子「ただ……さやかにはそんなの関係ないだろ? さやかを助けさせてくれ」

まどか「本当に、さやかちゃんを助けてくれるの?」

杏子「本当だ そしたらもうこの街には来ないよ……」

まどか「わかったよ……」

杏子「ありがとう……ありがとう!」

まどか「必ずさやかちゃんを助けてあげて!」

杏子「ああ!」

マミ「ソウルジェムはさっき私が預かったわ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/04/22(金) 01:06:29.58 ID:qi2juIFg0<> マミはなぜか攻撃してこなかった。

杏子「マミ……さやかを助けたいんだ、それだけだ。信じてくれよ」

マミ「簡単に言うわね。
信じていたものに裏切られる――その怖さを知ってるくせにね」

杏子「わかってる。
でもさ、勝手だけどさ、あたしは守りたいんだよやっぱ」

マミ「本当に……本当にあなたは変わったわ」

マミ「粗末に扱ったら今度こそ容赦しないわ」

杏子「必ずさやかを助ける」

マミ「でも、それで美樹さんがあなたに恩義を感じるとは期待しないことね」

杏子「してないよ。あたしはさやかのために、さやかを助けるんだから」

マミ「やっぱりあなた、変わったわね」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/04/22(金) 01:18:31.72 ID:hFJGe46zo<> ふむ・・・・・・? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2011/04/22(金) 05:57:13.13 ID:Nl49nkipo<> 乙っちまどまど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/04/22(金) 22:57:10.33 ID:5aFiBwRy0<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)<>sage<>2011/04/22(金) 23:24:13.53 ID:Y9drVm6AO<> なんかストーリーが作者の頭の中だけで補完され過ぎている気が <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2011/04/23(土) 01:10:48.06 ID:rYsuDovNo<> まぁ乙まど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga sage<>2011/04/23(土) 23:27:23.56 ID:QZJGTp9E0<> 1です こないだの中断は寝オチ。あとしばらくPC触れなくて……。
とりあえず本編とクライマックスかぶってなくて安心した。
>>348 指摘ありがとう
アニメ終わっちゃったし通常ver.に戻してじっくりやります
書き溜めがたまり次第再開します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/03(火) 00:35:24.93 ID:CRbHu70m0<> 長らくご無沙汰でしたが再開しようと思います。理由は単純に時間がなかっただけです。


あんこルーム

杏子「さやかっ!!」

ドアノブを回しながら体当たりするように部屋に飛び込む。
後ろに扉を叩きつけると、すぐに静寂が降りた。

部屋の中央に、さやか。

その胸に、ソウルジェムを捧げる。
呼吸が乱れ、手が震えた。

そして。

眠り姫のまぶたがぴくりと動く。
動かない指先にぬくもりが染みわたる。

さやか「なに……なんなの?」

何事もなかったかのように目覚めるさやかの姿があった。

さやかだ。
さやかが、生きたさやかが、あたしの目の前にいる。

杏子「さやかぁぁあっ!!」

さやか「うわっ なになになに!?」

抱きしめた身体がびくりと震える。
生きた身体の感触は、たまらなく愛おしかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/03(火) 00:48:32.92 ID:CRbHu70m0<> 杏子「よかった……本当によかった……
もう二度と目覚めないんじゃないかって……あたし」

そこまでまくしたててから気付く。
……あれ、なんでさやかは抱きつき返してくれないんだ?

その回答は、あきれた声で返ってきた。

さやか「待て、順を追って説明しろい……」

〜説明中〜

ベッドから追いやられて椅子に座ったあたしは一通り説明する。
さやかは、あたしの言葉に真剣に耳を傾けたり、驚いたり、呆れたりする。

それらは、あたしが見たかったものの、すべてだった。

杏子「で、でもちゃんと取り返したんだ! ほら!」

さやかの手に戻ったソウルジェムを指さす。
誇らしくて、口元に笑みが浮かぶのを自覚した。

さやか「……どうやって?」

だがさやかの表情は堅い。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/03(火) 00:59:12.14 ID:CRbHu70m0<> 杏子「は?」

さやか「これはどうやって奪ってきたの」

なんだ、その目は。
まるであたしを非難しているかのような目。

杏子「あぁ……未来人を倒して鹿目まどかと交渉してだね」

とはいえ正直に言えば済むことだ。
あたしは後ろめたいことはなにも――

さやか「バカっ!!」バシィッ

杏子「ひゃんっ!」

さやかが腕を振り上げた……と思った瞬間、頬に鋭い痛みが走った。
あたしはわけがわからないまま、こちらを睨むさやかの顔を見ていた。

さやか「変な声出してんじゃないわよ!」

しかもなんか理不尽な罵倒までされて……、
わけがわからないけど……、

杏子「な、なにすんだ!」

やっとあたしは声を上げた。
とりあえず殴られたら抗議しないといけないよな……? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/03(火) 01:14:30.19 ID:CRbHu70m0<> さやか「みんなに何したの!」

私の抗議をかき消す勢いでさやかが叫ぶ。
すごい剣幕に私は少し驚きながらも、

杏子「殺しちゃいないぞ?」

杏子「鹿目まどかもあの程度じゃくたばらないだろうしなぁ」

安心しろ、と重ねて伝える。


さやか「……行くわよ」

しかしさやかは大きなため息をついて起きあがった。

杏子「行くってどこに?」

あたしは影を下ろすさやかの姿を見上げる。
さやかは、あたしにとっては何とも理不尽なことに、あきれ顔であたしを見下ろしてきて、

さやか「みんなのところによ。あんたのことも私が説明してやるからさ」

と、のたまった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/03(火) 01:24:41.48 ID:CRbHu70m0<> 杏子「だ、だいたいさやかは人質なんだぞ!」

いつの間にか完全にさやかが主導権を握っていることに気付いて、
遅まきながらあたしは優位を取り戻そうとしたが、

さやか「まだそんなこと言ってんの?」

一蹴された。
もはや立場は逆転して、覆しようがなかった。
でも、元気になったさやかを見ていると、不満は霧散していって。

因果の綱渡りを終え、正しく出会った2人が蒼い光のもとに飛び出す。

さやか(……ほんと、バカ)

――誰が、とは言わないけどさ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/03(火) 01:40:26.64 ID:CRbHu70m0<> 〜魔まどか視点〜

鋼鉄のレールに、蒼が線を引き、夜風が下草をざわざわと波立たせた。

すでに血は止まっていた。痛みもない。
ただ、ゴツゴツした石の感触に顔をしかめていた。

ちょっとがんばりすぎちゃった……。

何もない夜空を見上げていると落ちていきそうな虚無感を覚える。
今の彼女は起きあがる気力が湧いてこないのだった。

ほむらちゃんが迎えに来てくれないかなぁ……。

なんて虫のいいことを考えて、妙に冴えた目で星の数を数える。

そのとき耳に入ったのは、ガサガサと下草が立てる音。

QB(未来)「いやぁ、さすがに死んじゃったんじゃないかと、心配したよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/03(火) 01:52:07.11 ID:CRbHu70m0<> お迎えは残念ながら見飽きた淫獣だった。

ほむら「……どか……まどかぁ……!!」

遠くから僅かに聞こえる声。

魔まどか「こんなところで……終わるわけに、いかないよ」

自分で立ちあがるしかないのだ。
世界の前で、負け犬の様に横たわっているわけにはいかない。

立ち上がる。あとすこし。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/05/03(火) 02:01:05.54 ID:CRbHu70m0<> マミ「ここまでよ!」

まどか「杏さや編終了のお知らせですっ」

ほむら「ワル夜さんに変更加えようか迷ったり」

魔まどか「他SSのエンドを目の当たりにして」

さやか「気が付いたらもう夏じゃないですかっ」

QB「夏ということは、次回作、君たちは脱ぐべきだよね……」

マミ「はいはいフィナーレ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)<>sage<>2011/05/03(火) 07:25:30.58 ID:VGed+AI7o<> 乙 温泉回も水着回もあるんだよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/05/03(火) 11:41:55.69 ID:KGtQ45ODO<> 乙 久しぶり <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/05/04(水) 23:10:28.64 ID:f88nbb9p0<> ほむら「温泉回と聞いて筆が進んだわ」


〜まどか視点〜

溢れる湯が贅沢な音を立てて流れ落ち、飛沫を散らす。
つま先から順に全身へ伝わっていく温もりに、少女は伸びきったため息を一つ吐いた。

魔まどか「いいお湯だよ〜、一緒に入ろう?」

まどか「う、うん……」

『いい加減にして……』

さっきの、底冷えのするようなまどかさんの言葉が蘇る。
浴槽に手をかけたまま、顔を窺うと、目が合った。

魔まどか「?」

笑顔。
さっきまでの恐ろしさは感じられない。

魔まどか「えいっ」

えっ、ちょっ……! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/04(水) 23:43:41.96 ID:f88nbb9p0<> まどか「わぁぁっ!」バシャァァン

……溺れかけた。
突然まどかさんが私の腕を引っ張ったもんだから。

魔まどか「あは、あははっ、大丈夫?」

まどか「ケホッ……なんてことするの……」ビショーリ

まどかさんは私の抗議の視線も意に介さず楽しそうに笑っている。
向かい合う体勢で、私たちは足の裏を合わせた。

魔まどか「……これはね、お仕置きなんだよ?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/04(水) 23:45:27.27 ID:f88nbb9p0<> そのとき、確かにまどかさんは笑っていた。
しかし私は、背筋に人差し指を立てられたような気分になる。
笑顔がシフトして、別種の意図が混じる。

まどか「え……?」

魔まどか「言ったはずだよね?」

一つの浴槽の中、向かいあって、

魔まどか「絶対に契約しないで、って言ったよね?」

水中にあって、急に身体が重く感じる。
釘付け。逃げられない。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/04(水) 23:52:47.20 ID:f88nbb9p0<> まどか「……そ、それはその」

魔まどか「しかもそれで私を脅迫しようなんてね……?」

まどか「ち、ちがうの……!」

魔まどか「悪い子だなぁ……悪い子だなぁ……」

だんだんまどかさんが顔を近づけてくる。
私は視線をずらすことができなかった。
その結果、水面下から迫る魔の手に気が付かなかった。

突然視界が揺れ、水面が荒れる。ぐいっと抱き寄せられ、目を開けると

魔まどか「これはお仕置きなんだよ?」

唇も触れ合う距離、魔法少女の腕の中に囚われた私はもう逃げようがなく、
まどかさんは嗜虐的な笑みを湛えて、私に囁いた。

魔まどか「何で契約しようとしたの……言ってごらん、怒らないから」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2011/05/04(水) 23:55:12.69 ID:r5C+1q2wo<> エロい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/05/05(木) 00:02:41.85 ID:vnEIkkdT0<> 私と同じ身体なのに、力は桁違いだった。

まどか「ほ、ほんとは契約するつもりなんてなかったの!」

まどか「私は、まどかさんに喧嘩してほしくなくて」

魔まどか「あくまで交渉材料の一つとして使ったまでってこと?」

まどか「う、うん!……あっ」

心臓が一拍すっ飛ばした。

「ウソはよくないよねぇ……」

まどかさんの指が脇の下を、こちょこちょと動き回る。

まどか「あっ、や、くすぐったっ」

魔まどか「私の前でウソついてもお見通しだからね?」

魔まどか「あなたは、私の手のひらの上で、じっとおとなしくしてればいいの」

魔まどか「わかる?」

まどか「手を……手を止めてえ……!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/05(木) 00:11:16.10 ID:vnEIkkdT0<> 身体の中に異物が入りこんだような感覚が全身を痺れさせ、脳内からいけない物質が
ドバドバと溢れだしてくる。

私は懇願した。

魔まどか「正直に言えば許してあげるよ」

固く抱きしめられ、身を捩ることも出来ず、足をばたつかせる。
ばしゃばしゃという水音がむなしく響く。

まどか「……ぁ……っ……ぁふ」

声も出せず、目に涙が浮かぶ。
まどかさんはそれを見て、さらに歪んだ笑みを深める。

魔まどか「言ってごらん……ほら?」

終わりのない責め苦に、私は絶望しそうになる。
そのとき、浴室の扉に1人分のシルエットが映った。

ほむら「まどか……? 大丈夫?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/05(木) 00:13:32.36 ID:QGwFd6yxo<> 救いの女神か破滅の魔女か・・・・・・・果たして・・・・・・・・。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/05/05(木) 00:25:49.36 ID:vnEIkkdT0<> 独立した生き物のように五本の指が動き回り、普段触れられない部位をかき回していく。

まどか「あっ、ひぅ、ほむ、らちゃ、あっ」

私は助けを求めた。

魔まどか「大丈夫……だから、ほむらちゃんは入ってきちゃダメ、だよ?」

ほむら「……手伝いは?」

魔まどか「必要ないよ……」

ほむら「……わ、わかったわ」

まどか「そん、あぁっ」

まどかさんの迫力に気圧されたようにほむらちゃんはあっさり退いてしまった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/05(木) 00:35:47.69 ID:vnEIkkdT0<> 魔まどか「契約するつもりだったんだよね?」

頭が真っ白になって、もう何も聞こえない。
あえぎ、暴れても終わらない。

倒されたドミノの侵食を食い止める術はなく、
倒れていくのを呆然と見ていることしかできない。

魔まどか「私はこんなに、あなたを愛しているのに、勝手なことばかりして」

あ、なんか視界が霞んで……息、できな……

魔まどか「だから、これは、お仕置きなんだよ?」

まどかさんの声は、遠く流れた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/05(木) 00:44:06.96 ID:vnEIkkdT0<> 冷たいシャワーが私の身を打つ。

まどか「……みゅ?」

魔まどか「ごめんね……やりすぎちゃったかな」

声は上から聞こえてきた

まどか「わ、わたし……?」

まどか「はっ」

上を見上げると私が見下ろしていた。
脇の下の恐怖が蘇る。

まどか「ひっ……ごめんなさい!」

魔まどか「もういいって」

背中に腕が通され、抱き起こされる。
そして抱きしめられて……。

まどか「ぃやっ……ごめんなさい! ごめんなさい!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/05(木) 00:54:09.32 ID:vnEIkkdT0<> 魔まどか「愛してるよ」

ほっぺたが触れあった。甘美な響きが空気の震えとなって、耳元から発せられた。

まどか「ごめんなさ……え?」

お仕置きは、こない。

魔まどか「それだけなの……わかって……!」

ただ、ちょっと耳元がくすぐったい気がした。

私はこくんと頷かされていた。

一瞬の囁きは冷たいシャワーの音がゆるゆると流していった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/05(木) 01:00:57.63 ID:vnEIkkdT0<> 〜杏子視点〜

ほむホーム

外から見た家の大きさに対して明らかに大きすぎる部屋。
円卓を囲む円座。浮遊する画像たち。巨大な振り子時計。

まぁ、なんとも変な部屋だ。
イレギュラーにはお似合いだな……。

杏子「はいはいわかりました。っていうと思ってんのか?」


ちょっと書き溜めるので中断。
あれが今できるギリギリの脱線だった……。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/05(木) 10:17:24.89 ID:QGwFd6yxo<> お疲れ様でした。


・・・・・・むぅ・・・・・・まどかさんとまどかさんの絡み合い・・・・・・・・
見る人が見れば・・・・・・・。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/05(木) 20:42:29.27 ID:0DR0ip660<> >>374
なぁに気にすることはない。ただのOP再現だ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/05/11(水) 00:15:31.96 ID:ddJzdEFDO<> こないかなー <> 1<>sage<>2011/05/12(木) 01:11:17.77 ID:BM1TnKmj0<> 今書き溜めてます 案件も片付いたので今週末に投下が目標
というか待っててくれる人がいたとは思わず <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/12(木) 01:17:05.05 ID:y6tJW35ho<> 承知致しました <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/12(木) 08:04:33.67 ID:jOYNqE2SO<> 乙。最後まで頑張ってくれよ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)<>sage<>2011/05/12(木) 09:53:42.96 ID:anOBOpCQo<> モチロン待ってるよー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<><>2011/05/13(金) 16:25:05.40 ID:DIVn2NiDO<> 乙っぷい! <> saga<><>2011/05/18(水) 00:09:30.33 ID:bqQPt52B0<> 再開します あんことさやかがほむホームにやってきたところから


杏子「はいはいわかりました。っていうと思ってんのか?」

別に突っかかるつもりはないのだが、後々の優位を得るために、
少々強気に出させてもらう。

こいつらと組むこと自体は、さやかのためだと思えば、やぶさかではない。

ほむら「ここに来た以上、もうこの街を乗っ取るつもりはないんでしょう?」

ほむらの瞳は揺るがない。
答えを読まれていることは癪だが、それ以上にあたしは自分の中にある矛盾に対して、
腹が立った。

杏子「まぁ、な……」

杏子「あたしは、半端もんだよ……やっぱ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/18(水) 00:19:07.22 ID:bqQPt52B0<> ほむら「美樹さやかを助ける、という私たちの共通目標は達せられた」

暁美ほむらはわずかに首をかしげながら話を進めた。

ほむら「私たちの対立を生んでいたのは、そのやり方の違いだけだったわ」

ほむら「だから、もう敵対する理由はないでしょう?」

杏子「そうは言っても、感情的にはだな……」

ほむら「……?」

対するほむらの表情。
本気であたしの言ってることが理解できないって顔してやがる……。

さやか「転校生……あんたって奴は……」

隣で頭を抱えるさやか。

さやか(なによこの空気は……てっきり口論になってそこに私が仲裁に入る流れだと……)

魔まどか「だめだよ、ほむらちゃん」

なんだかたるんでしまった空気を、柔らかい声が包み込む。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/18(水) 00:24:57.46 ID:bqQPt52B0<> 部屋に入ってくる影があった。
風呂上がりらしく、首にバスタオル、服はパジャマ、髪は湿ったまま。

だけどわかる。
小柄な体に充溢する力感が。

……やっぱ、生きてたか。

魔まどか「……杏子ちゃんは、一周目なんだから」ニコ

ほむら「……そうね、失念していたわ」

魔まどか「さやかちゃーん! 無事でよかったよぉ……何ともない?」

さやか「もうピンピン……っていうか倒れてた時の記憶ないね……」

部屋は和やかな雰囲気になり、わたしだけが取り残される。
あたしは、鹿目まどかと暁美ほむらから感じる違和感をぬぐえない。
……正直、不気味だった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/18(水) 00:30:41.34 ID:bqQPt52B0<> 杏子「何言ってんだか知らないけどさ」

あたしが口を開くと全員の顔がこちらを向く。

杏子「とりあえず、走行中の電車から砂利にぶち込んだのは、なかったことになったのか?」

魔まどか「殺されたかと思ったよ……」ハァ

ため息をつき前髪をかきあげる。
それはせいぜい、宝くじ外れちゃったよ……くらいのため息。

こいつはおかしい。あたしには理解できない。
何考えてるのかまったく読めない……。

というか、まさか何も考えてない……。

目の前でコーヒー牛乳をちびちび飲んでいる少女の企みについて真面目に推理するのも、
なんだか間抜けに思えてきてあたしはため息をついた。

魔まどか「でも、さやかちゃんを助けてくれて、ありがとね」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/18(水) 00:32:21.55 ID:bqQPt52B0<> 杏子「……ふん」

魔まどか「本当に、ありがとう」

まどか「まどかさーん、待ってくださいよぉ……あ」

また鹿目まどかか……。

まどか「さ、さやかちゃぁん……無事でよかった……!」ダキッ

さやか「えっと、どっちのまどかなんだろう……久しぶり?」

まどか「私はまどかだよ! 杏子ちゃん、さやかちゃんを助けてくれてありがとう!」

杏子「……」フン

というか、あたしは何のためにここにいるんだろう。
感動の再会にあたしは関係がないし……。
鹿目まどか戦で魔力を消耗したからそろそろ休みたいんだが……。

そんなわけで後ろの方で目立たないようにあくびをしていたあたし。

さやか「あんた、ちゃんと謝りなさいよ」

後ろで見てようと思ってたのに、どうもそれは許されないらしい。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/18(水) 00:34:03.23 ID:bqQPt52B0<> 杏子「何でだよ」

まどか「私たちは別に気にしてないよ……ね?」

ほむら「そうね」

マミ「別にもう気にしてないわ」

魔まどか「こっちこそやりすぎちゃった。ごめんなさい」

杏子「ほら見ろ やっぱりあたしが謝る必要なんて」

さやか「つべこべ言わずに頭を下げろぉー!!」

さやかが突然あたしの後頭部をつかんだ。

杏子「ぎゃっ」

さやか「ごめんなさいは? ごめんなさいは?」

杏子「わかった、わかったから離せ!」

杏子「ほんとごめんなさい……はい……」

なんだ、なにがおこっているんだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/18(水) 00:36:03.66 ID:bqQPt52B0<> さやか「もう一回!」

杏子「本当にごめん! 悪かった!」

さやか「もう一回!」

杏子「うぅ……なんだよもー、何がいけないんだ……?」

まどか「さやかちゃん……もう十分だって……」

さやか「だめなの! もっと頭をしっかり下げて!」

杏子「痛っ!」

さやか「申し訳ありませんでしたっ! はいっ」

杏子「も、申し訳ありませんでしたっ! はいっ」

さやか「はい、は要らないぃい!!」

杏子「だあ――!!」

なんだこの茶番は。そしてさやかってこんなに力強かったか?

マミ「本当に仲が良くなったわね……」

ほむら「ループの後半ではいつもこんな感じよ」

まどか「そ、そろそろ杏子ちゃんが可哀想じゃない……?」

魔まどか「いいんだよ……これで、いいんだよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/18(水) 00:39:01.45 ID:bqQPt52B0<> 〜5分後〜

さやか「……合格、かな」

杏子「っしゃ……あぁー」

マミ「ねえ、あなたたちが遊んでいる間に私達で話してたんだけどね」

杏子「聞いてなかったのかよ!?」

魔まどか「だ、大丈夫大丈夫! 聞こえてたよ」

杏子「はぁ……」

マミ「ワルプルギスの夜まではまだ日があるし、明日、みんなでお花見とか、どうかしら?」

杏子「ワルプルギスの夜?」

さやか「お花見?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/18(水) 00:41:15.03 ID:bqQPt52B0<> 〜説明中〜

杏子「なるほど」

杏子「あのワルプルギスの夜がもうすぐ見滝原にやってくると」

さやか「未来人コンビがそう言ってるんだよね」

杏子「花見とかしてる場合か……?」

ほむら「心配には及ばないわ」

ほむら「すでに準備はほぼ整っているの」

暁美ほむらは揺るがず請け合った。

マミ「英気を養おうっていうことなのよ」

さやか「よろしい!」

さやか「ならばさやかちゃんが最高のスポットに案内してあげよう!」

さやか「明日を楽しみにしたまえよー」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/18(水) 00:46:53.38 ID:bqQPt52B0<> 〜杏子視点〜

あたしは消灯した廊下を進んでいく。
もう完全に春。夜でも寒くない。むしろ廊下はひんやりして気持ちがいい。
さて……やはり電気がついていた。

杏子「こんな時間になにやってるんだ? 勉強かい?」

薄暗い部屋の奥に潜む影にあたしは声を放った。

ほむら「いまさら勉強なんてしないわよ」

呆れたような声が返ってきた。

杏子「そりゃそうだ。じゃ、なにやってるんだ?」

ほむら「2週間後の準備。どうせあなたにはわからないことよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/18(水) 00:48:15.55 ID:bqQPt52B0<> さやかとまどかが帰宅し、あたしとマミはほむらの家に泊めてもらうことにした。
親にとやかく言われないからな。

杏子「そう言わずに見せてみろって」パラ

机の上に積まれた紙束から一枚拝借すると、

杏子「……なんだこりゃ。数学か?」

特殊記号をふんだんに取りそろえた迷宮が広がっていた。
ほむらはめんどくさそうに、しかしあたしにも分かるよう噛み砕いて説明してくれた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/18(水) 00:51:32.85 ID:bqQPt52B0<> 杏子「……弾道計算ねぇ」

杏子「でも前回も同じ計算をしたんだろ? 計算用紙なくしたのかよ……」

いかにも完璧人間っぽい顔してるのに、案外抜けてるんだろうか。

ほむら「あの、ねぇ」

ほむら「そもそも実戦利用に耐えうる弾道計算というのは……」

杏子「あーわかった。要するに風が違うんだな、そうだろ!」

ほむら「あと出現場所にも誤差があるわ……でも、基本はわかってるようね」

杏子「まぁ、親父からいろいろ叩き込まれたからなー」

ほむら「……できたらあなたにも手伝ってもらえたらそれはとっても……ふぁ」

杏子「そのくらい……って、なんて顔してんだよ……くっくっ」

鉄面皮が無防備になる瞬間。ほむらの素顔を垣間見た気がした。
机の上の小さなスタンドが暖かな光を投げている。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/18(水) 00:53:40.42 ID:bqQPt52B0<> 静寂を震わすほむら。

ほむら「……なにか?」

杏子「いや、べつにぃ?」

ほむら「……ふん」

ほむらは作業に戻ったが、やっぱり明らかに眠そうだ。
そろそろ本来の目的を果たすとするか。

杏子「なぁ、ほむら」

杏子「続きはあたしがやってやる。あんたはもう休んできな」

ほむら「……気持ちだけ受け取っておくわ」

ほむらはこちらを見向きもしない。
あたしは構わずその背中にしゃべりかける。

杏子「あんたのためだけじゃないんだ」

杏子「まどかがさ、あ、髪下ろしてるほうな……、あいつがお前を待ってるんだよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/18(水) 00:55:20.97 ID:bqQPt52B0<> ほむら「まどかが……? そう言ってたの?」

杏子「いや。ただ、あいつが時々、すごく寂しそうな顔をするのがわかる、それだけだ」

ほむら「……」

あいつはたくさんの仲間に囲まれているはずなのに、楽しく笑っているのに、楽しめば
楽しむだけ、その直後、とてつもなく寂しそうな顔をするんだ。

あたしには、その理由なんかわかるはずないけど。

杏子「行ってやれよ。幸せってのは、いつ逃げ出しちまうかわからないもんだぜ?」

ほむら、お前はまどかのそばにいなきゃだめだ。

ほむら「……まかせて、いいのかしら」

ほむらの瞳に、仕事から解放されることへの期待などはない。
ただただ、困惑だけが満ちていた。

杏子「おう、あたしにまかせとけ! 基本はわかってるあたしだぜ?」

最後のひと押し。
ようやく、ほむらの表情が動く。

ほむら「杏子……ありがとう」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/18(水) 01:07:09.39 ID:bqQPt52B0<> ほむらは何かから解放されたような顔をして、部屋を出て行った。
扉が閉まり、廊下を早足で進む足音が徐々に遠ざかっていく。
部屋に静寂が降りる。

あたしは紙をぺらりとめくった。
鉛筆を握って、計算式に向かい合う。

杏子「さて……」


杏子「弾道計算とか、できないわけだが」

基本はわかってる? バカ言っちゃいけない。全部適当言ってただけだ。

杏子「……今から勉強して間に合うかなぁ」

とりあえずあたしは適当な参考書を物色し始めた……。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/05/18(水) 01:09:34.07 ID:bqQPt52B0<> マミ「今日は、ここまで!」

まどか「>>1がマリアちゃん出したいってうるさいのでまだ終わらなそう……」

さやか「あっはははははははははは!! 来ちゃったあたしの時代!」

ほむら「残念、次回は巴マミが活躍!」

さやか「えっ」

マミ「こんなところまで読んでくれるなんて感謝です」ニコ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/18(水) 01:11:19.88 ID:1ofgbWN0o<> お疲れ様でした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)<><>2011/05/18(水) 01:17:50.82 ID:x7mjCA+go<>                   ::  -──- 、_::..                 _____
               ::   ´            `丶、::..         /            ヽ
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       :://       l {      ヽ   ヽ   ハ      ::.   、   ̄ ̄ ̄      ノ
      .::/〃   /     lハ      |イ  丁`ヽ |  \/  |::   \            /
     .::/ /       / 丁 ∨     |ヽ、  | l  |  /\  |::.     ノ/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      .::/     l  〃l |  \(\  l }\ l ∧  |  l    八::.
      ::′ / |  { | ィ予x、  \ \l    }ハ l  |  |      \::.
      ::i  ' {  {   {∨ ):ハ       x=≠=ミ |  ハ      \::.
      ::| /  |  '、 ∧{ Z:xj|          /  }/ }    }  \\::.
      ::l/  .:| l  \ ∧ ゞ沙          / /   |   ハ 八_ヾ`::.
      ::{  .:八    |\ \    ,       //}  ノ _儿_ / }ノ :::
          ::\   ! ハ>-     r   ̄}    ノ/( ___)   `ヽ :::
            ::〉ヽ}  ゝ       ー‐ '   イ ( __) /    `ー────‐-    ::.
           .::/  /   }  ≧ー--r --r__≦___j_( ___,) {                    \::.
          ::///   ノ|ハ///ハ( _____                          〉::
            ::{  /, '⌒{>r−--‐ノ      _ )   -─ イ´ ̄ ̄ ̄ ̄「 ̄ ̄ ̄ ̄   .::
            ::|//   マハ   ´    - ´/ /      /       ノ       /::
            .::/  {   マハ`ヽ、   /   (_//      /      /    _    ´::
            .::〃  ハ   \ \___ / )/    、 ′     ( ̄ ̄厂::
          :://  / 人    >── イ /      〉{        )   / ::
         ::/ /    /_ノ ) > ´         /_______,ノ 小、     /   / ::
       .::〈  ′   / {/           (ノノ_ハ_ノハ}_]_}](、|  ヽ    _} /::
         ::∨     {/          __  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ) ,|  | ヽ //::
         .::〉ー'⌒ヽ/           、___/l ̄ ̄ ̄  / |  |   ∨::
         ::/   /8      />  .___/´  |        l___j⌒´:::


<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/18(水) 15:42:08.75 ID:W2zNj5TSO<> 乙。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/19(木) 00:40:13.63 ID:V4p3j/d/0<> 乙っちまどまど!
ここの杏さやも良いよな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(宮城県)<>sage<>2011/05/21(土) 12:55:34.78 ID:Tvog09mvo<> おつー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 09:24:24.72 ID:q5YyH0BU0<> 杏さやはカットしようか悩んでいたのでそう言っていただけると嬉しい
再開します

〜ほむら視点〜

電気は点いていない。
できるだけ静かに薄く、扉を開く。
差しこんだ光がまどかの顔を照らした。

ほむら「……まどか」

あいつが時々、すごく寂しそうな顔をするのがわかる、それだけだ。

魔まどか「……ん」

起こしちゃったらいけない。私はゆっくりと扉を閉めた。
一気に暗くなるが、豆電球の光だけがうっすらと部屋を赤く照らしている。

ほむら「……まどか、はいっていい?」

魔まどか「……」ムニャムニャ

ほむら「……失礼するわ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 09:27:13.45 ID:q5YyH0BU0<> まどかの布団に入りこむと、すぅすぅと、規則的な寝息が耳元に響いてきた。
まどかが近い。それを意識する。私は天井を見つめた。

ほむら「……ねぇ、まどか」

今日のまどかは、確かに少しおかしかった。
それは杏子に言われる前から、感じてはいた。
さやかを助けるために動く姿。憑かれたように杏子を追う姿。
もう一人の自分をきつく戒める姿。

なにかに追われているかのようだった。

ほむら「……聞こえてなくてもいいわ。私が言いたいだけだから」

ほむら「やっぱり、私、あなたに話すのが怖くて逃げてるんだと思う」

ほむら「でもね、私の言葉で、今のあなたの笑顔を壊したくないの」

ほむら「……ずるいよね」

ほむら「でも……もうちょっとだけ」

ほむら「もうちょっとだけ……」

魔まどか「……」

ほむら「……やっぱり、もうダメ、かな」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 09:29:15.18 ID:q5YyH0BU0<> まどかのまぶたがぴくっと動く。
その顔に、寝汗がじわりと浮かんでいた。

ほむら「……まどか?」

魔まどか「……って……らちゃ……」

まどかはなにかを探し求めるようにシーツを握り、布団の中をまさぐった。
私の手に触れた瞬間、ぱっとそれを握りしめる。

魔まどか「……め……て……」

ほむら「大丈夫だよ、まどか」

ほむら「私が最期まで一緒にいるから、もう絶対に離さないから」

ほむら「……だから、そんな」

ほむら「つらそうな顔は、やめてよ……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 09:36:50.76 ID:q5YyH0BU0<> 私の甘えが、まどかを苦しめていたんだろうか。
かといって、本当のことを伝えたら、まどかはもっと傷つくだろう。

もし、本当のことを伝えて、それをまどかが受け入れてくれれば。
私は、本当の意味で、まどかと一緒に戦えるかもしれない。
今まで、まどかのため、の一言のもと封じてきた罪悪感。
でも本当のことを伝えるのが、まどかのためなんだとすれば。

いま、私の秘密はまどかを苦しめている。

真実は私ひとりで抱えて、まどかには笑顔でいてほしいと思った。
本当の意味で通じあえなくても、まどかの笑顔さえあれば、私は満足だった。
でも、こういう考えが、今までの失敗を生んできたのではなかったか。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 09:41:28.45 ID:q5YyH0BU0<> このまどかは強い。
真実を伝えても、笑って私を励ましてくれるかもしれない。

あれ……これは私の願望をまどかに押し付けてるだけ?
まどかを守る私になりたい、じゃなかったの……?

ほむら「……あなたはどうして戻ってきてくれたの?」

ほむら「……あの世界で、あのまま、生き続けることだってできたのに」

ほむら「私が言えたことじゃないけど……」

ほむら「ねぇ……まど……か……」

魔まどか「……すぅ……すぅ……」

ほむら「……すぅ……すぅ……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 09:43:59.82 ID:q5YyH0BU0<> 桜並木

巻き散らす風、舞い上がる桜
空も地も春に染める暖かな風景。

さやか「ほら、そっち持って!」バサバサ

ブルーシートが元気よく広がる。

杏子「はぁ……?」

マミ「いいとこ知ってるのね、美樹さん」

さやか「へへっ」

まどか「……ところでまどかさんとほむらちゃんの姿が見えないんだけど」

杏子「あー、あいつらのことは気にしなくていい」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 09:45:57.30 ID:q5YyH0BU0<> 〜ほむら視点〜

ほむら「綺麗ね」

魔まどか「うん」

ほむら「散る前に間に合ってよかった」

魔まどか「うん」

風に吹かれて飛んだ花弁を目で追い、無邪気な笑みを浮かべる。
けれど、風が止むと、まどかはまたむっつりと黙ってしまう。

私があなたなら、散っていく桜なんて直視できないでしょう。

さっきから口数の少ないまどかを見て、私は胸が痛い。

やっぱり、まどかは、私のせいで。
そう思うと、今までのまどかの笑顔も、無理してたんじゃないかと思ってしまう。
私はまどかの笑顔を守ろうとして、実はまどかの心に傷をつけてきたんじゃないか。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 10:29:10.20 ID:q5YyH0BU0<> それでも、このまどかなら、私の苦しみを理解してくれるかもしれない。
卑しい期待だと、自覚する。

これを伝えることが、少なくとも今、まどかが抱える苦しみを取り除くことなんだと
私は自分に言い聞かせた。

ほむら「まどか、あなたにまだ伝えていないことがあるの」

まどかは頭にかかった花びらを落として、私に向き直った

魔まどか「なあに? ほむらちゃん」

その顔にはまだ笑顔の残滓が見えていた。

ほむら「ねぇ、まどかは、散っていった桜たちは、どんな気持ちだったと思う?」

魔まどか「えっ?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 10:33:52.22 ID:q5YyH0BU0<> 〜まどか視点〜

さやか「桜って……何でこんな綺麗なんだろ」ハムハム

杏子「迸る生と儚い死に染まってるからかな?」モグモグ

さやか「」ニヤニヤ

杏子「あーチョーうぜえ……」イライラ

まどか「なんだか眠くなってきちゃった……」ウトウト

マミ「」カシャッ

まどか「……んぅ!? と、撮っちゃだめですよマミさん!」

マミ「もう一枚! もう一枚!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 10:36:00.19 ID:q5YyH0BU0<> マミさんから逃げ回っていたら元の場所に戻れなくなってしまった。
上も下も桜。降り積もった桜は新雪のように柔らかい。

そのとき。
私は、一人立ちつくしているまどかさんを見つけた。

まどか「まどかさぁん! よかったぁ!」

魔まどか「……」

まどか「わっ」

強い風が吹き、私は足を止めさせられた。
桜が舞い上がり、まどかさんの背中を隠す。

遠く聞こえるせせらぎ。雲雀の鳴く声。
それらに紛れてしまいそうな小さな声で、

魔まどか「もし私がいなくなっても、みんながいるからね」

まどかさんは呟いた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 10:36:43.07 ID:q5YyH0BU0<> まどか「いなくなったらって……え?」

まどか「まどかさん……どこかにいっちゃうの?」

魔まどか「……いかないよ」

まどかさんは取り繕うように笑った。

まどか「約束、だよ?」

魔まどか「うん」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 10:44:22.34 ID:q5YyH0BU0<> ほむホーム

〜ほむら視点〜

ほむら「魔女化のリスクが高まるのはこれからなのよ」

私はポットのお湯を沸かしながら、

魔まどか「でも」

魔まどか「さやかちゃんには選ぶ権利があるはずだよ」

まどかはつま先立ちに後ろ髪を揺らしながら。

ここは台所。
私たちはお茶を入れてくるという名目で席を外してきたのだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 10:47:14.88 ID:q5YyH0BU0<> ほむら「さやかは絶対に耐えきれない……魔女化しなかった例がないのよ?」

魔まどか「今回は杏子ちゃんがいるし私だっている」

ほむら「この状況でさやかを登校させるなんて正気じゃないわ」

ほむら「いっそうちに監禁しといたほうが安全よ……お互いにね」

魔まどか「ほむらちゃん……おかしいよそんなの」

魔まどか「どうしてそんなこと言うようになっちゃったの?」

まどかの置いたカップに私は紅茶を注いでいく。
巴マミに押し付けられたものだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 10:53:53.04 ID:q5YyH0BU0<> ほむら「ちょっと考えれば分かるはずよ。それが最善だと」

ほむら「絶望した魔法少女は魔女になる。わかってるかしら?」

魔まどか「そんなことわかってる」

ほむら「だったら……」

視界の隅で、入口の暖簾がひらりと動いた。
背筋が凍りついた。

マミ「なんですって?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage <>2011/05/22(日) 11:00:21.69 ID:EvJdB3Ujo<> \(^o^)/オワタ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 11:03:04.66 ID:q5YyH0BU0<> マミ「魔法少女が魔女になる? なによそれ」

溢れていく。
ドバドバと。頭が真っ白になる。
紅茶が溢れていく。

いつから、どこまで、聞かれたのか――。

ほむら「そ……」

ほむら「そういう意味じゃないわ! 魔女みたいに怖いって意味で」

ここで巴マミの暴走を許したら詰みだ。

マミ「そ、そうよね」

マミ「てっきり私達があの魔女になるのかと……私ったら早とちり」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 11:05:10.28 ID:q5YyH0BU0<> 幸い、今回はあっさりと退いてくれる様子。
危ない……もっと気をつけなきゃ。

魔まどか「もう、ほむらちゃんったら、こんなにしちゃって」

ほむら「あ……ごめんなさい」

大量に溢れた紅茶をまどかが拭き取っていった。
すべてを拭き取って、まどかはため息をつく。
何気ない様子で巴マミに向き直って、


魔まどか「本当だよ」

魔まどか「魔法少女は魔女になるの」

告げた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 11:07:28.79 ID:q5YyH0BU0<> マミ「え?」

ほむら「……っ!?」

ちょっと待って……まどか!?

魔まどか「本当です。マミさん、私は見てきたんです。
魔女になったさやかちゃんを」

待ってくれない。
風呂の栓を抜いたようにまどかの口から秘密が流れ出している。
巴マミのカップに砂糖を流しこまれていく。いくらなんでも多すぎる。

魔まどか「このソウルジェムは私達の魂そのもので、これが濁り切ったとき、
ソウルジェムはグリーフシードになって、私たちは魔女として生まれ変わるんですよ」

マミ「え……え?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 11:09:13.08 ID:q5YyH0BU0<> 秘密の核心もあっさりと明かされて。
巴マミの理解が追いついていないのが不幸中の幸いか。

魔まどか「QBは何も言ってなかったって……それは聞かれなかったからですよ」

マミ「わ、私……あなたが何を言ってるのか……わからな」

魔まどか「魔法少女はいずれ、必ず魔女になるんです」

魔まどか「魔法少女は、魔女に」

マミ「や、やめて! 聞きたくない!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/05/22(日) 11:10:50.31 ID:jDG7y5RDo<> 賽は投げられた・・・・・・か・・・・・・・。
まどかさんも思い切ったことをなさる女性ですな。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 11:17:23.21 ID:q5YyH0BU0<> ほむら「まどか! やめなさい! あなたは何がしたいのよ!」

私はまどかの手をつかんで制止に入る。
でも強い力で振り払われた。私の声をかき消す大音声で、

魔まどか「つまり! 魔法少女の成れの果てが魔女。私達はかつて魔法少女だったものを
永遠に殺し続けなければいけない運命なんです!」

まどかが放り投げる真実。巴マミには受け止めきれるはずもなく。

マミ「ふぇ……え……もぉ、いやぁ……!」

膝が折れて、その場に泣き崩れた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 11:20:25.01 ID:q5YyH0BU0<> ほむら「まどか……いい加減に……!」

私は正当な怒りを持っていたと思う。

魔まどか「怖いの? ほむらちゃん?」

しかしまどかは重い一言を周囲に放り続けていた。
生半可な反論ではねじ伏せられてしまう。

ほむら「怖いわけじゃ……」

魔まどか「ウソ。見てればわかる」

魔まどか「真実を伝えたらみんながあなたの敵になるんじゃないかって……怯えてる」

魔まどか「図星でしょ?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 11:22:27.11 ID:q5YyH0BU0<> ほむら「そんなこと……ないわ」

魔まどか「でも伝えなきゃいけないの。ほむらちゃんに出来ないなら私がやるよ」

魔まどか「伝えなきゃいけないの」

ほむら「」

……そんな、言いたいことまだいっぱいあるのに。
……言葉が出てこない。

マミ「そんな、そんなの……それじゃあ、私が今までやってきたことって……」

マミ「魔法少女がやってきたことって……全部……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 11:25:39.76 ID:q5YyH0BU0<> だめだ……まどかは知らないんだ。

魔まどか「無駄なんかじゃないよ、マミさん」

魔まどか「マミさんは今まで本当にたくさんの人を救ってきたんです……。
グリーフシードを持ってない使い魔もちゃんと倒して……本物の魔法少女ですよ!」

魔まどか「私が憧れてた魔法少女そのまんまで……今でも私の憧れの先輩なんです」

マミ「私は、あなたの足元にも及ばないわ……今だって、あなたは平気なのに、
私はこんな……」

マミ「死にたい……死にたい……」

巴マミは両手で顔を覆ってしまった。
暖簾が再び揺れる。

杏子「お前らいつまで……っておい、なにやってるんだ?」

さやか「マミさん……?」

まどか「……どうしたんですか?」

なんて間の悪い。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 11:29:59.72 ID:q5YyH0BU0<> 魔法少女が一堂に会してしまった。その中央で、禁断の真実を暴露する救世主。
もう私ひとりではどうしようもない。とまらない。

マミ「魔法少女は存在自体罪なのね……エゴで契約して、エゴで災厄を撒き散らして……」

マミ「なんでこんな……私は……あなたたちは……みんな魔女……」

いけない、巴マミが危険……。

さやか「あたしたちが魔女……?」

杏子「おい、マミ……あんたら、マミに何をした?」

一度倒れたドミノは他を撒きこんでさらに悪夢を広げていく。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 11:33:45.14 ID:q5YyH0BU0<> 私はこの際、巴マミの暴走だけでも止められればいいと思うことにした。

ほむら「魔女じゃない、魔法少女よ」

ほむら「巴マミ、あなたは魔法少女なのよ」

私の言葉を理解できたのかもわからない、巴マミはにっこりと笑った。
私が一番彼女の近くに立っていた。

マミ「私は魔法少女、その通りよ。魔法少女の使命だけが、私の生き甲斐なんだもの」

マミ「私は魔法少女、それがウソでないなら……なら」


マミ「みんな、死ぬしかないじゃない!!」


さやか「は――?」

ほむら「っ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 11:39:10.11 ID:q5YyH0BU0<> 足が勝手に動いていた。
経験からくる反射。だが頭が追いついていなかった。
なにかに……巴マミだろうか? ぶつかってそのまま床を転がる。

まどか「ほむらちゃん!?」

まどかの声がぐるぐる回る。
どっちが上なのかわからない回転が一回二回。

ようやく止まって静寂が下りた。前がやわらかい。
カラン、とアイスコーヒーの氷が涼しげに泣いた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 11:42:26.46 ID:q5YyH0BU0<> マミ「暁美……さん?」

頭上から巴マミの困惑したような声が聞こえてきた。

魔まどか「ほむらちゃん?」

まどかの声はなぜか非難の声色。

そう、なぜか……私は巴マミの胸の中にいた。
なぜか今、彼女の胸に顔をうずめて抱きついている。

マミ「ちっちゃい……」

ややあって、巴マミがぽつりとつぶやいた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/22(日) 11:45:13.17 ID:q5YyH0BU0<> ほむら「な……」

マミ「暁美さん、あなた……」

マミ「……ふふっ」

魔まどか「……」

本当にもう、わけわからない。
狂ってる。

あなたも、わたしも。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/05/22(日) 11:47:01.28 ID:q5YyH0BU0<> この先推敲中です 今日中にできたら投下するかも <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)<><>2011/05/22(日) 12:00:19.46 ID:bXJsNoWWo<>                   ::  -──- 、_::..                 _____
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      ::′ / |  { | ィ予x、  \ \l    }ハ l  |  |      \::.
      ::i  ' {  {   {∨ ):ハ       x=≠=ミ |  ハ      \::.
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       .::〈  ′   / {/           (ノノ_ハ_ノハ}_]_}](、|  ヽ    _} /::
         ::∨     {/          __  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ) ,|  | ヽ //::
         .::〉ー'⌒ヽ/           、___/l ̄ ̄ ̄  / |  |   ∨::
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<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<><>2011/05/22(日) 12:02:56.07 ID:NKGs/KVm0<> 乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/05/22(日) 12:06:29.47 ID:jDG7y5RDo<> お疲れ様でした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/22(日) 13:03:09.15 ID:DmrdBxVIO<> 乙マミ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 12:12:21.94 ID:GEb/Zmhv0<> 再開します


それは信じがたい内容だった。

私の命を助けてくれたマミさん。
未来から来たほむらちゃんとまどかさん。
契約したさやかちゃんと、救ってくれた杏子ちゃん。

みんな、最期には魔女になっちゃうの?

だから、ほむらちゃんとまどかさんは私に? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 12:22:59.67 ID:GEb/Zmhv0<> 〜マミ視点〜

あの日から、私の道は分かれていた。
正義を信じて、ゼロから積み上げてきた。
仲間を失っても、誰にも気付かれなくても。
魔女を倒し続ければ、世界の為に生きているんだと感じられたから。

そのとき、視界の先に真っ暗な穴が見えた。
道が途切れていた。
穴の縁に私は立ち尽くした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 12:34:30.51 ID:GEb/Zmhv0<> そして、今まで進んできた道を、初めて振り返った。
一度死んだときから、二度と振り返らなかった背後を。

赤い道だった。
折り重なるように倒れた、数え切れないモノたち。
今までに倒してきた魔女だ。

いや……違う。
それは恐ろしい異形でも、怪物でもなかった。
少女だった。

魔法少女だった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 12:46:39.82 ID:GEb/Zmhv0<> 学校

〜ほむら視点〜

仁美「さやかさん、他でもない親友のあなたにしか出来ない相談がありますの。
今日の放課後、お時間を頂けないでしょうか?」

トイレに向かう途中、柱の陰からこんな言葉が聞こえてきた。
当然こうなる。わかっていたことだ。

私は自然な動きで柱に背を預け、反対側の会話に耳を傾けた。

さやかが気楽に返事をしているのが聞こえる。

まどか、これがあなたの考える最善? 
さやかがあまりに不憫だわ。

結果はわかっているのになぜ希望を抱かせたりするの?

廊下の喧騒の中で、二人の会話はとても聞き取りづらかった。
私は腕を組んで体重をかけ、髪を整えるふりをして姿勢を変える。

まどか「……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 12:58:34.07 ID:GEb/Zmhv0<> ほむら「……まどか」

まどかが音もなく私の隣に収まっていた。
私と同じ目的のようね。

まどか「ほむらちゃんはさ……知ってるんだよね。上条くんが何て返事するのか」

ほむら「……ええ、知ってるわ」

まどか「そう……でも、どうしようもないよね……何かしてあげたいのに」

まどか「何をしても、さやかちゃんのためにはならない気がして。
見ていることしか出来なくて」

ほむら「……」

まどかは、本当に友達思いだ。
だから、あの場面で真実を暴露した意味が理解できない。
さやかや巴マミのためを思うなら、真実を隠すしかないのに。

まどか「ほむらちゃんはさやかちゃんのこと嫌い?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 13:10:56.42 ID:GEb/Zmhv0<> まどかの表情は揺れていた。
私の返答を恐れているように見えた。

でも、それは早とちりよ、まどか。
……お世話になったことよりはお邪魔になったことの方が多いけど、

ほむら「嫌ってはいないわ。ただ合わないだけ」

まどか「そ、そっか」

まどかは少し安堵したように、笑みを浮かべた。
ふっと軽くなったように、まどかの口が開いた。

まどか「私はさやかちゃんの告白を応援してあげたい。
だって、大切な気持ちを揉み消すなんて、そんなの悲しいよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 13:19:58.42 ID:GEb/Zmhv0<> これは当然なのかしら。
まどかとまどかの意見は一致していた。
確かに、好きなのに、告白できないなんて……悲しいことよね。

……悲しい。
思わず、私は頷いていた。

ほむら「……そうだね」

まどかの考えが、少しだけど、見えた気がした。
授業のチャイムが鳴り、廊下から慌ただしく人が捌けていった。

さやか「まどか、転校生! チャイム鳴ってるって! 急ぐよ!」

まどか「あ、うん……!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 13:45:32.39 ID:GEb/Zmhv0<> 〜マミ視点〜

ほむホーム

マミ「はっ……」

飛び出したらベッドの中だった。
動悸が治まらなかった。

自分の手を見つめる。ぶるぶると震えていた。
全身が冷や汗にまみれてひどく気分が悪かった。
まだ手はその感触を覚えていた。

横たわるモノに触れたとき、その頬から生温かいものが流れ出していた。
絶対にあれは夢じゃなかった。悪寒が止まらなかった。

そのとき部屋の扉がガチャリと音を鳴らして、私はギクリとした。

魔まどか「あ、マミさんお目覚めですね!」

マミ「まどかさん……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 14:05:11.59 ID:GEb/Zmhv0<> 魔まどか「みんな学校に行っちゃって、いま私しかいないんです」

魔まどか「杏子ちゃんは朝方に出ていくのを、ほむらちゃんが見たって」

魔まどか「マミさんは……やっぱり今日おやすみした方が良さそうですか?」

まどかさんは私に朝食をつくってくれている。
彼女はエプロンを着て、台所を右に左に動き回っている。
それを私は眺めていた。

魔まどか「ほむらちゃんがね、言うんです」

魔まどか「だれかさんのせいで、面倒なことになったって……」

マミ「ええ、そうね……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 14:48:50.83 ID:GEb/Zmhv0<> 紅茶を口に含むと、少し寒気がとれた。
甘い香りはいま、恐ろしい悪夢をぼかして遠ざけてくれる。

暖かかった。
青空の中、さわやかな風が吹きわたり、陽光が部屋に差し込んでいた。
あたかも、何事もない平穏な休日の様な時間が流れていた。

マミ「あなたはどうして未来から戻ってきたの? 前の世界で何があったの?」

ふと、思いついて口に出していた。
まどかさんは、あれだけのことを知っていて、なぜこんなに平然としているのか。

魔まどか「聞きますか?」

彼女はカウンターにティーポットを置いてくれた。
私はテーブルに少し身を乗り出した。

魔まどか「マミさんは聞きたいですか?」

カウンター越しにまどかさんは再び確認してきた。

マミ「ええ……聞かせてほしいわ」

私はすぐに答えていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 15:27:36.96 ID:GEb/Zmhv0<> 杏子視点

図書館

杏子「あー休憩だ、休憩」

杏子「フリースペースってのは便利だけど、飲食禁止なのは不便だな」

小銭を自販機に突っ込んで適当な炭酸飲料を選ぶ。

杏子「さすがにマミも起きたころかな?」

杏子「あいつが一番心配なんだよな……その次はさやかだな」

あたしは?

ふと、自問した。
あたしは魔女になっても、何も感じないのか?
今まで殺してきた奴ら、みんな元は魔法少女だったんだぞ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 15:41:03.68 ID:GEb/Zmhv0<> まぁ、そんなこと深く考える性質じゃないんだよね。
とっくに諦めちゃってただけかもしれないけど。
でもなんだかな……最近、また信じてみたいと思ってたとこだったのにな。
また前に戻っただけだけどさ。

杏子「つまんねぇ世界だな……」

プルタブを開けるとぷしゅっと音を立てて、泡が溢れだした。
もちろんそれを読んでいたあたしは口をつけてそれをとらえる。
渇いた喉に染みる。こういうのは一気にあおってだな……。

杏子「」ゴクゴクプハー

一気飲みするのが基本さ。ただし魔法少女に限r

杏子「」ゲップ

ご愛嬌だ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 15:48:14.27 ID:GEb/Zmhv0<> 空き缶をゴミ箱に放り込んであたしは席に戻る。

机に広げた参考書。
ほむらから勝手に借りたのと、図書館で借りたものが混ざってる。
その中から新たな一冊を選ぶ。

杏子「なんか挟まってんな…」

パラパラとめくると紙切れが落ちた。
一見して、落書きにも見える。

大きな円の中にいくつも同心円が描かれ、中心に小さな点があった。
そして円の半径の変化を調べているような計算の跡。

杏子「……あいつ、ダーツでも嗜むのか?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 16:01:30.88 ID:GEb/Zmhv0<> マミ「あなたは……最初から全て知ってたっていうの?」

マミ「本当は私、死ななきゃいけなかったの?」

カウンターのむこうに立つまどかさんが、ひどく遠くに見えた。
手の届かないところにいるように見えた。

なんで笑っているのかまったく理解できなかった。
どこにも希望なんてないこの世界で、なんで平然と笑顔を浮かべているのか。

みんなを助けるために戻ってきた。

その言葉が頭の中で強く響いた。

私の中で一度崩れた「魔法少女」というものが、
また何らかの形をもって起き上がろうとしていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 16:16:49.99 ID:GEb/Zmhv0<> 魔まどか「本当の歴史は、これから作ります」

魔まどか「私はみんなを助けに来たんです」

魔まどか「次こそ5人で生き残るために……!」

マミ「……5人?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 16:17:33.14 ID:GEb/Zmhv0<> 学校 放課後

〜まどか視点〜

みんなが帰り仕度を始める中、私は先手を打つために立ちあがった。
机に両手をついて前のめりになった。

まどか「さやかちゃん今日これから、どうするの?」

さやか「悪いね、一緒に帰れないのよー」

さやか「仁美がさ、どうしても2人きりで話したいっていうからさ」

さやか「まぁ、まどかなら……」

言ってからさやかちゃんは顎に手を当てて、迷う素振りを見せた。

仁美「申し訳ありませんが」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 16:24:33.13 ID:GEb/Zmhv0<> 鞄を机に置きながら、少し強い口調で仁美ちゃんが遮った。

さやか「あ、やっぱダメなのね……」

でも! ここで2人を一緒に帰しちゃだめだ。
私は何かに向けて宣戦布告して、手をグーにした。

まどか「じゃ、じゃあ、お話が終わったら一緒に帰ろう! 私待ってるから!」

さやか「あー、でも遠回りになるよ?」

まどか「それでもいい! 連れていってください!」

さやか「んー、どうするよ、仁美?」

仁美ちゃんは私を探るような目で見据えてきた。

仁美「まどかさん……なぜそこまで?」

まどか「だって……! いや、それは……」

さやかちゃんが上条君に告白したあと、慰めてあげなくちゃいけないから! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 16:37:24.16 ID:GEb/Zmhv0<> 私が言葉に詰まると、仁美ちゃんはしばらく待ってから目を閉じて、

仁美「……そんなに聞きたいのかしら」

一言、呟いた。

まどか「ち、ちがうちがう!……そ、じゃなくて」

だって、なにを話すかはもう知ってるんだから!

私が必死で否定すると、仁美ちゃんはため息をついた。
目が怖い。私は中途半端に立ち尽くす。

仁美「今回は、本当に真剣なお話なんですの。悪戯心で邪魔されたら、
私はいつものように笑って流せないかもしれませんわ」

さやか「仁美……」

まどか「……ごめん、なさい」

仁美「行きましょう、さやかさん」

さやか「うん……あー、まどか、気にすんな?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/05/29(日) 17:08:41.03 ID:GEb/Zmhv0<> 何をやっているの、私は。
教室に取り残された。私は椅子に腰を下ろした。
悔しかった。

でも諦めるつもりはなかった。
一緒に連れてってもらえないなら、勝手についてってやるんだから……。

ほむら「準備は出来た? まどか」

廊下に出ると、後ろから声をかけられた。
出口の脇に、ほむらちゃんが立っていた。

まどか「……うん!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/05/29(日) 19:16:49.35 ID:GEb/Zmhv0<> なんか完全に手が止まってしまった。再開するとしたら深夜になりそうです。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方)<>sage<>2011/05/29(日) 20:22:50.35 ID:YCp3e+Oxo<> 乙。無理すんな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方)<>sage<>2011/05/29(日) 20:23:41.29 ID:YCp3e+Oxo<> 乙。無理すんな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/05/30(月) 08:03:20.09 ID:kcDSMVaIO<> 乙マミ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2011/06/02(木) 14:12:15.06 ID:Adwjk/x+o<> 乙っちまどまど! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/06/05(日) 17:11:44.27 ID:ca8qd2Fk0<> 再開します だいたい完結までの流れできた マジ遅筆

〜さやか視点〜

中央にそびえる時計の高みを目指すように、無数に伸びるパイプの口から水が流れ落ち、
噴水の周りに座る買い物帰りの主婦や会社員に、時折しぶきを飛ばす。
夜になると、周囲のイルミネーションが幻想的な空間を演出するので、
デートの待ち合わせ場所としてよく使われている……らしい。

仁美「さやかさんもまどかさんも、昨日はどうなさったの?
季節の変わり目ですから体調を崩されたのではと私……」

噴水の外周を回り込みながら、仁美は小首を傾けた。
仁美にはサボリを隠す必要もないだろうけど。一応、学級委員だしね。

さやか「うん、まあもう大丈夫よ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/05(日) 17:14:55.10 ID:ca8qd2Fk0<> 元気2割増しの笑顔で余計な心配は吹っ飛ばす。
勢いよく鞄を振って歩いて見せると、仁美は安心したように微笑んだ。

仁美「本当は昨日お話したかったんです。お待ちしてましたのよ」

さやか「そんな改まって、さやかちゃんに何のお話かな?」

今までの様子からみると、かなり真面目な話みたいだけど。
でも、親友の悩みなら何だって聞いてあげるつもりだ。

……内心、緊張してるわ。

いつかだれかが言っていた。
重要なことほど、軽く考えた方がいい。

さやか「はっ、まさか、恋の、お悩みかなあ〜?」

たぶん、こんなふうに。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/05(日) 17:17:49.86 ID:ca8qd2Fk0<> 仁美「……」

仁美は笑わなかった。かと言って、茶化されて機嫌を損ねた様子でもなく。
ただ、黙ってあたしのほうを見た。

さやか「え、マジ?」

……やばい、地雷踏んだ?

仁美は答えず、代わりに首を振った。

仁美「いえ、お話はお店に着いてからにしましょう。こちらですわ」

さやか「あれ、いつものとこじゃないの?」

今まで駅の方に向かっているんだと思ってたのに、仁美は急に道を変えた。

仁美「盗み聞き、されたくありませんから」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/05(日) 17:20:17.18 ID:ca8qd2Fk0<> 前に立って進む仁美に、遅れて歩く。
人通りが少なくなって、イルミネーションやショッピングモールが姿を消す。

さやか「まどかだってわざわざここまで来ないでしょー」

仁美「そうでしょうか……さっきまで後ろにそれらしき姿があったように思います……」

言われてあたしは振り返る。
ガス灯を模したダイオードの街灯と背の低い街路樹が交互に並んで、
レンガ敷きの通りの奥行きを強調していた。

仁美「もういませんわ」

それからしばらく歩いて、やがて仁美は足を止めた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/05(日) 17:23:54.09 ID:ca8qd2Fk0<> 仁美「こちらです」

さやか「うお……なんかレトロというか豪華というか、中学生が入っていいのかな?」

木の扉は両開きで、ノブには金の装飾が施されていた。
窓は内側をカーテンで覆われていて中の様子はうかがえない。

仁美が扉を押し開けるとカランカランと、鈴の音が響いた。
あたしもそれに続いて入る。

橙のやさしい光が満ちていた。
大きさも長さもまちまちなランプが天井からいくつも垂れ下がっていることに気付く。
白熱灯のような明るさはないので全体的に薄暗い。

仁美「アイスティーを2つ」

さやか「あ……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/05(日) 17:27:14.78 ID:ca8qd2Fk0<> 店内にいる客は片手で数えられるほどで、そもそもそんなに広くもなかった。
写真立てや時計、バスケットなどの小物がこまごまと置かれ、
それらが集まって形作られている空間だった。

仁美「私が支払います。こちらがお付き合い頂いているのですから」

さやか「あ、うん……ところでシロップはついてくるのかな?」

いい雰囲気だなぁ、と思う。

でも正直、慣れない場所での居心地の悪さのほうが大きかった。
学生なんてあたしたちしかいないし。

仁美「まあいけませんわ。ここのアイスティーはそのままで頂くのが一番なのです」

仁美「さやかさんにもすぐにわかりますわ」

この風景に仁美はきれいに収まっていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/05(日) 17:31:23.12 ID:ca8qd2Fk0<> しばらく雑談をして、運ばれてきたアイスティーにストローをさす。
仁美に言われたとおり、そのまま飲んでみる。

感想。やっぱシロップは必要じゃないかな……。

ちらと伺うと、仁美は黙って優雅に飲んでいた。
あたしはもう一度ストローをくわえてみたけど、
流れこむ液体の渋みはやっぱりあたしに心地よいものではなかった。

コップを戻す。真ん中まで下がった液面が波立った。
仁美が顔を上げる。

さっきから、店の奥で電話がけたたましい音を立て続けているのに、誰も取る様子がない。
しかしあたしはそれを無視して、口を開いた。

さやか「……それで、話ってなに?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/05(日) 17:57:40.50 ID:ca8qd2Fk0<> 〜ほむら視点〜

駅前にあるショッピングモールのなか。
いつもの店に先回りして奥の席を確保してから、すでに10分以上経っていた。

まどか「ほむらちゃん……こないね」

不安げにまどかがささやくのはこれで4回目。

ほむら「絶対にくるはずなんだけど……」

最初はこんなときもあるだろうと高を括っていた私も、すこし焦れてきた。
こんなに遅かったことは今までにない。

そしてまどかがついに指摘した。

まどか「ね、ねえ、もしかして私のせいじゃないかな?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/05(日) 18:08:02.83 ID:ca8qd2Fk0<> 胸に手を当てる、その瞳にはおびえが見えた。
私は時計から目を離して、まどかの代わりに平静に努めた。

ほむら「あなたのせい? どうして」

まどか「私、仁美ちゃんに疑われるようなことをしたの……だから」

まどか「場所を変えちゃったってことは……」

まどかは言った途端にブルッと震えて、口を手で押さえた。
一瞬思考が脱落して、私はまどかの顔を茫然と見返した。

今までに、まどかが志筑仁美に同行を要求したことはあったか。


……ない。

私ははっと息を飲んだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/05(日) 18:19:50.52 ID:ca8qd2Fk0<>
バタフライ・エフェクト。

繰り返す、と言ってもまったく同じことを繰り返しているわけじゃない。
今回、私は明確にさやかを助けるために行動した。
その結果、まどかは志筑仁美とさやかの密会を知ることになった。
そうでなければ、知らないはずだった。

私の反応で、泣きそうになるまどか。
心の底から申し訳なさそうに震える声を出した。

まどか「あああ、ごめん……!」

だとすると……!

ほむら「まどか、さやかの家に向かって!」

まどか「う、うん……」

ほむら「私は上条恭介を押さえるわ!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/05(日) 18:31:15.26 ID:ca8qd2Fk0<> 〜さやか視点〜

仁美「それではよくお考えになって、後悔のなきよう」

そう言い残して、仁美は店を出て行った。
カランカランという音がむなしく響き、扉は閉まった。

電話の音はあきらめたようにぱったり止まっていた。
あたしは降りてくる沈黙に囲まれ、ランプの光をぼうっと見つめる。

仁美に恭介とられちゃう。


『また上条くんですの? まぁ、CDを……』

『お優しいのですね』

『早くよくなると良いですわね』


……どんな気持ちで、仁美は話していたんだろう。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/05(日) 18:42:59.27 ID:ca8qd2Fk0<> アイスティーはまだ半分残っていたけど、あたしは立ち上がって背を向けた。
あたしにはこの味はわからなかった。

カランカラン

店を出て、抜け落ちたように歩いていくと、俯いていたあたしの目と耳に
バッと洪水が押し寄せた。

駅前に戻っていた。

雑踏に踏み出した途端に、あたしは立ち尽くす。
気付いたのだ、目的地がないことに。

通行人があたしを迷惑そうに見ながら避けていく。
あたしは道路標識のように突っ立っていた。

しかしやがて、あたしの身体は空っぽのまま流れに乗って歩き始めた。

思考が脱落して、帰路は薄暗くなっていった。
通りの喧騒は、空虚な心によく反響した。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/05(日) 18:51:47.61 ID:ca8qd2Fk0<> 明日、仁美は告白する。ついに恭介にも彼女ができるんだ。
音楽バカのあいつには、もったいないくらいの彼女が。
はは、おめでたい。

湿気た生ぬるい風が、濁った空気をかき回す。
すっかり暗くなった夜道を歩き、人通りも途絶えたところで。

帰ってきちゃった。

もういい。今日はもう眠りたい……。
夜ごはんもいらない。お風呂なんて入らなくても平気。
だってあたしは魔法少女なんだから。

エントランスまで一直線。
庭園に挟まれた先、石畳の道の先。


……まどか? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga sage<>2011/06/05(日) 19:07:29.20 ID:ca8qd2Fk0<> マミ「今日はここまで!」

さやか「うおおお」

杏子「パクリいくない」

まどか「完結までできたのは流れだけだよ、本文はないよ!」

ほむら「話が違うわ」

魔まどか「あ、マミさんちょっといい?」

マミ「あら、服装の描写が一切ないまどかさんじゃないはやくして」

魔まどか「えっと、委員長の魔女か門の魔女を出したいんだけど、どっちがいいかな」

マミ「マリアちゃんはすでに出演決定してるわああ時間がない次もたぶん日曜日じゃないかしらおわり」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/06/05(日) 19:11:12.61 ID:dJQKjbW0o<> お疲れ様でした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県)<>sage<>2011/06/05(日) 21:24:21.48 ID:o02+W46io<> おつー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga sage<>2011/06/12(日) 09:30:49.25 ID:iHYGkrE00<> わかりました、両方出します


〜マミ視点〜

魔まどか『冷蔵庫にケーキあるけど、食べちゃだめですよ! みんなで食べるんだから!』

外気に触れた瞬間、解放感と罪悪感が同時にやってきた。
一歩踏み出し、さらに一歩。
歩き始めたらもう戻る気にはならない。
離れれば離れるほど、罪悪感は薄まっていった。

まどかさんには悪いけど、ひとりになりたい。

誰もいない自宅に帰り着く。

いや、それは正確ではなかった。
リビングに入ると、三角テーブルの上に友達がいた。

QB「おかえり、マミ。遅かったじゃないか」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 09:36:40.69 ID:iHYGkrE00<> マミ「キュゥべえ……」

窓から差し込む斜光が部屋を真っ二つに裂いていた。
光の中に鎮座するQBは黙っていた。
放り捨てたカバンがフローリングの上を滑る。

QB「……」

マミ「どうして話してくれなかったの」

マミ「今まで私たち、ずっとずっと一緒にいたのに、どうして何も話してくれなかったの」

見つめると吸いこまれそうな2つの宝石だ。
QBの瞳は、こんなにも赤かったかしら……?

QB「ふぅ……キミも僕に騙されたと、そう思ってるのかい?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 09:46:23.88 ID:iHYGkrE00<> 彼は長いしっぽをぴょこぴょこと左右に振る、いつもの仕草をする。
私は一歩、彼に近づいた。

マミ「まどかさんに、すべて聞いたわ」

マミ「あなたのことわかったつもりでいたのに」

マミ「本当は何もわかってなかったのね」

QB「僕は聞かれたことには全て正直に答えてきたよ」

マミ「なにが目的なの」

QB「この宇宙の寿命を延ばすことさ」

マミ「……えっ?」

さらに一歩踏み出そうとした足が、止まる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 09:58:04.82 ID:iHYGkrE00<> QB「すべてはそのためだよ」

QB「そのために、人間の感情に秘められたエネルギーを求めているんだ」

QB「つまりは、魔法少女の魔力だね」

QB「この宇宙に星の数ほど存在する知的生命体、その中でもこの惑星に住む
人類という種は、殊に特異だった」

マミ「……?」

QB「すべての個体が別個の感情を持ち、共存共栄している世界だなんて。
キミたちはそれが宇宙全体から見てどれほど異常なことであるか、知らないんだよね」

マミ「そんなの……普通のことよ」

QB「キミにとっては、ね」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 10:06:25.21 ID:iHYGkrE00<> QB「エネルギーの回収効率を上げるために、
僕たちは人間の魂を固形化するテクノロジーを発明した」

マミ「……」

QB「それはつまり、君の考えている通り、ソウルジェムのことだよ」

QB「それはキミの魂そのものなんだ。だから、それを砕かれるとね――」

QB「――魔法少女は死ぬんだ」

QB「希望を持つ魔法少女が絶望するその瞬間、
ソウルジェムが燃え尽きて、グリーフシードへと変わるその瞬間に」

QB「膨大なエネルギーが発生する」

QB「それを回収するのが、僕たち、インキュベーターの役割なんだ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 10:14:13.48 ID:iHYGkrE00<> わけがわからなかった。
流れる言葉を、耳が受け付けなかった。
しかしそのあとも、QBはよどみなく説明を続けた。

QB「もちろん最初から成功したわけじゃない。試行錯誤を重ね、
回収効率を上げた。そして遂にそのエネルギーはエントロピーを凌駕した」

QB「宇宙はね、本来誕生の瞬間を最後にして、
あとは衰退するしかないはずだったんだよ」

QB「だけど、キミたちの祈りと犠牲が、宇宙の運命を変えてくれたんだ。
有り得ないことだが、もしも僕に感情があったなら」

QB「きっとキミたちに感謝したに違いない」

斜光が彼を横断し、上げた顔は奇妙な陰影を形作っていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 10:26:58.66 ID:iHYGkrE00<> *

沈黙はどれほど続いたのか、わからなかったけれど。
夜の帳が降りていた。

マミ「あなたのお話はよくわかったわ」

QB「わかってもらえて嬉しいよ」

まだ電気をつけていなかったので、部屋は真っ暗になりつつあった。
広い窓から見滝原の夜景を見渡すことが出来た。

マミ「そのうえで、もう一度聞かせてもらうわ」

マミ「どうして話してくれなかったの」

QB「勘違いしないでほしいんだが、僕たちは君たちを知的生命体として、
きちんと尊敬しているんだよ。決して人類に対して悪意なんて持っていないんだ」

マミ「なら、どうしてだましたの」

QB「だましてなんかないさ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 10:36:15.62 ID:iHYGkrE00<> マミ「なら、今あなたが話したことを、どうして契約する前の女の子に話せないの?」

マミ「……どうなの?」

QB「……」

QB「……全てを承知の上で契約したまどかのような例もある」

マミ「あら、逃げるのね?」

予想に反して、彼はすぐに弱みを見せた。
しかし、そこで彼の言葉は終わりではなかった。

彼のシルエットが言葉を紡いでいく。

QB「だって、話す意味がないじゃないか。
人間には寿命があって、いずれその意識は消滅する運命にある」

QB「普通の人間として一生を終えるか、魔法少女になって魔女になるか。
いずれにしてもその自我は永遠のものじゃないんだ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 10:46:46.87 ID:iHYGkrE00<> マミ「それは、全然違うことでしょ……」

QB「僕たちにはその違いが理解できないけど……」

QB「ただ、どうしても運命に抗いたいなら、魔女になりたくないのなら」

QB「ソウルジェムを砕くんだ。それしかない」

マミ「なっ」

QB「魔法少女を出来るだけ多く道連れにして果てるがいいさ」

マミ「バカ、言わないでよ……」

マミ「もうあなたが分からないわ……」

恐ろしさに足が震えた。
しかし同時に、それ以外魔女化を避ける術はないことも直感した。

――
朝食中断しますー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/06/12(日) 10:49:57.90 ID:nCCco4tjo<> 一端乙
さぁここで耐えられるか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 11:35:59.16 ID:iHYGkrE00<> 再開します
――

QB「みんな君が復帰するのを待っているのに。ベテランの君らしくないよ」

QB「数多の魔女を撃ち殺してきた君が、今更なにを恐れると言うんだい?」

QB「君の運命を受け入れるんだ。みんなにも分からせてあげるがいい」

輪郭を闇に溶かし、声だけになったQBが私の耳の中を通り抜ける。

マミ「だめ……今の私は、みんなには会えない。会ってはいけないの」

マミ「だって私は」

マミ「もう、魔法少女じゃないんだもの……!!」

座り込んでいた。
目も耳も塞いで、闇の中に溶けて消えてしまえればいいと思った。

しかし頭の中に入り込んでいた彼はそれを無視して、

QB「散々ひとりはいやだと言っていたのに、まったくわけがわからないよ」

声は届き、私は闇の中に落ちた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 11:46:46.18 ID:iHYGkrE00<> 〜さやか視点〜

まどか「さ、さやかちゃんっ!」

甲高い声があたしの耳を突き、頭を覚醒させた。
鞄を落として飛んできたまどかが、ガバッとあたしに抱きついてきて、
寝起きのあたしは後ろに倒れそうになる。

2,3歩下がってようやく踏みとどまった。
まどかはあたしの背に回した手に、痛いくらいに力を込め、しがみ付いてくる。

さやか「まどか? な、なんで……いるの?」

見ればまだ制服を着ていた。まさかずっと待ってたの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 11:56:00.71 ID:iHYGkrE00<> まどか「さやかちゃんのこと見失っちゃって……もし何かあったらって思って」

ようやく離れてくれたまどかは涙声で洩らした。
えへへ、とまどかは安堵したように笑う。

さやか「な、何の話をしてるのさ……?」

別に告白のひとつやふたつで危険な目になんて……。

まどか「まだ、告白してないよね?」

まるであたしの内心が見えているかのように。
まどかはあたしを爆発させた。

さやか「こ、告白!? なんであんたそれ、え?」

あたしの驚きを尻目にまどかは深いため息をつく。

まどか「よかった……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 12:05:09.28 ID:iHYGkrE00<> さやか「なんで……?」

まどか「聞いてたわけじゃないの。でも、わかるよ」

さやか「う……そっか」

まどかの顔を見ていると、乾ききっていた心が潤っていく。
ごちゃまぜだった感情が整理され、いつもの調子に戻っていく。

さやか「まどか、ちょっと今あたし、頭ん中わけわかんなくなっちゃっててさ……」

さやか「話、聞いてくれないかな」

まどか「うん、もちろんだよ」

まどかは即答した。
うれしくて。うれしくて。

さやか「ありがとう」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 12:15:24.92 ID:iHYGkrE00<> エントランスへと向かいながら、まどかはふと生垣に目をやる。
そして、生垣に向かって話しかけた。

まどか「杏子ちゃんも、そんなとこにいないで行こうよ」

杏子「……はっ、バカ野郎!」

突如、生垣が声を上げた。

さやか「は!? 杏子!?」

なんでそんなとこにいたんだ……。
杏子はバラされたことに憤慨した様子で立ちあがった。

杏子「あー、あたしはもう帰るからな」

まどか「えー」

杏子「あー、さやか」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 12:25:41.28 ID:iHYGkrE00<> 杏子「何言われたか知らないけど、妙なこと考えるんじゃねーぞ?」

杏子「じゃあな」

さやか「あ、おい……」

まどか「杏子ちゃん……」

杏子はくるりと背を向けて、すぐにその姿は闇の中に消えた。

さやか「なんだあいつ……?」

まどか「さっき待ってたら杏子ちゃんが通りかかって、なにしてるのかって聞かれて」

まどか「事情を話したら、仕方ねえなぁ、って言いながらずっと一緒に待っててくれたの」

さやか「生垣のなかで?」

まどか「あぁ、あれはさやかちゃんが来たのに気付いて、慌てて隠れたんだよ」

さやか「よくわからん奴だな……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 12:37:22.68 ID:iHYGkrE00<> *

さやかの部屋

私はベッドに背を預けて、まどかはベッドの上。

まどか「さやかちゃんは、上条くんのこと好きなんだよね?」

さやか「えっ、いや……」

まどか「いまさら隠さなくても」

さやか「いや、まぁ……うん」

まどか「でも明日まで……だね」

まどかはため息をついた。

仁美の宣言は、明日まであたしに時間をくれる、ということなんだ。
幼馴染として、恭介を思ってきた年月の長さを尊重してくれて。

だからお先にどうぞ、と。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 12:47:37.80 ID:iHYGkrE00<> さやか「そんなこと、急に言われてもさあ……!!」

まどか「そうだよね……」

さやか「それでできるんならとっくにしてるわよ……」

告白なんて、ずっと先のことだと思っていたんだ。
あたしはただあいつの側にいて、それでいつか……と、思っていたんだ。

まどか「……仁美ちゃんにお願いしてもう少しだけ待ってもらえないかな」

あたしは首を振った。
必死で考えてくれているまどかには悪いけど、あたしが臆病なのは絶対で、
答えはないんだ。

さやか「見て……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 12:57:22.71 ID:iHYGkrE00<> さやか「あたしのソウルジェム。さっきからさ、だんだん濁っていくの」

輝きの中にどす黒い煙が渦を巻いて、光は濁って汚かった。
あたしの瞳も、いま同じ色をしているんだろうな。
まどかが息をのんだ。

さやか「まどかさんが言ってたことは、本当なのかな」

さやか「絶望した魔法少女は、魔女になるってさ」

あたしはそれを見て驚きはしない。
まさに今のあたしの心を表してくれていて、同調してくれているだけだ。

まどか「ダ、ダメだよ!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 13:09:02.14 ID:iHYGkrE00<> まどか「明日、マミさんとほむらちゃんにグリーフシード分けてもらおうよ」

さやか「でも、どうせまたあたしはさ……何度でも絶望すると思うんだ」

さやか「迷惑かけるだけだよ……意味ないよ……」

取り落したソウルジェムがカラカラと転がった。
あたしたちはそれを目で追う。それも数秒のこと。

まどかがすぅ、と息を吸った。

まどか「……負けないで、さやかちゃん」

まどか「……あきらめないで! 簡単だよ!」

まどか「先に告白して、上条くんと付き合っちゃえばいいんだよ!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 13:25:18.42 ID:iHYGkrE00<> さやか「そんなのムリだよ」

さやか「ムリだよ……」

まどかの腕がうしろから伸び、あたしの首に巻きつく。
まどかが近かった。やわくて、いいにおいがした。
耳元でまどかがささやく。

まどか「ムリじゃないよ、できるよ」

まどか「あきらめちゃ、だめだよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sagasage<>2011/06/12(日) 13:56:48.79 ID:iHYGkrE00<> ちょっと書き足したくなってしまったので中断します 1時間以内には再開します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします <>sagasage<>2011/06/12(日) 14:29:06.54 ID:ZAtiN33J0<> お疲れ。

>>1のペースで良いよ。
焦らずゆっくりと。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 14:55:32.42 ID:iHYGkrE00<> ありがとう、しかし間に合った 再開
――

〜ほむら視点〜

ほむら「はぁっ……はぁっ……」

恐ろしい後悔に弾かれたように私は走っていた。
何度も邪魔されて、邪魔で邪魔で邪魔で、いつからか切り捨てていた。
彼女のまっすぐな祈りも正義も、無言で全てへし折ってきた。

だってそれは、まどかのためだから。

さやかの気持ちは、私が忘れてしまった、かつて持っていたものと同じだった。
何度も巡るうち、時の狭間に置き忘れてきたものだった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 15:21:19.84 ID:iHYGkrE00<> 彼女は灯台。時の海に煌めく正義。
思い出させてくれる、私に人間を思い出させてくれる。

私もまどかに毒されたみたい。
どうせ私はもう人間じゃないのだから、まどかだけ救えればよかったのに。
いまさら正義も希望もなかったのに。

ヴァイオリンの音色が聞こえてきた。

みんなを救いたい。
それは当たり前の望み。
忘れていた、忘れようとしていた。
だけど私は性懲りもなく、また一度、信じてみたいと思ったんだ。

ほむら「……!?」

上条家の門の前には、先客がいた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 15:36:42.52 ID:iHYGkrE00<> QB(未来)「理解できない。君のしたことは、僕たちを利するだけだ」

QB(未来)「……何を、企んでいるんだい?」

インキュベーターと……。

魔まどか「みんなを、助けたいと思ってる」

魔まどか「なにも矛盾なんてないよ」

……まどかが、向かい合っていた。

QB(未来)「君はいったい……おや、暁美ほむらじゃないか」

ほむら「まどか……」

魔まどか「あ、ほむらちゃんも、来てくれたんだね」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 15:48:22.96 ID:iHYGkrE00<> まどかはちゃんと考えていたんだ。
ずっと上条恭介を見張ってくれていたに違いない。
さやかのことをちゃんと考えて、真実を暴露したんだ。

私がけさ、まどかに言ってしまったことを思い出すと、後悔がにじんだ。

魔まどか「ありがとう、みんなを助ける気になってくれたんだよね!」

ほむら「……ええ」

まどかは満面の笑みを浮かべて、私の手を握った。
この子と一緒なら、みんなを救うことも出来るかもしれない。
希望を追い求めるなら、仏頂面より笑顔の方がいい。

私は本当に久しぶりに、自然な笑みを浮かべることが出来た気がした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 15:58:02.20 ID:iHYGkrE00<> QB(未来)「だが、君が真実を暴露したことによって、マミとさやかの運命は
間違いなく加速したよ」

QB(未来)「君が本当に何も企んでいないことを祈っているよ」

魔まどか「私はあなたとは違ってウソはつかないんですよーだ」

QBを振り返りながら、まどかはおどけてみせた。

QB(未来)「余裕だね。だけどマミの動向には注意した方がいいよ」

QB(未来)「彼女はすでに帰宅してしまったようだし」

魔まどか「え」

QB(未来)「知らなかったんだね。真実を伝える者として、あまりに無責任で
不用心じゃないかな」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 16:08:38.22 ID:iHYGkrE00<> ほむら「お前が言うことじゃないでしょう」

魔まどか「ケーキありますよって言っておいたのに……」

QB(未来)「君はマミのことを甘く考えすぎだよ。今、マミが何を考えているか……
まるで想像が及んでいない。僕としてもそれでは困るんだよね」

ほむら「……お前が?」

QB(未来)「そう、だから忠告しよう」

QB(未来)「今、マミに近づくのは危険だ。彼女は魔法少女の運命に絶望した」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 16:20:10.10 ID:iHYGkrE00<> QB(未来)「彼女は君たちとは会いたくないと思っている。
自分が君たちを襲ってしまうのではないかと、怖れているからだ」

QB(未来)「今の彼女に会うのはやめた方がいい」

魔まどか「ほむらちゃん、私、明日マミさんに家に行ってくる」

ほむら「ええ、それがいいと思う。私からも、お願いするわ」

QB(未来)「やれやれ」

QB(未来)「遅かれ早かれ、結末は同じだよ」

QB(未来)(これでさやかから注意を逸らすことが出来た) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 16:30:49.51 ID:iHYGkrE00<> 翌日 昼休み 
〜さやか視点〜
屋上

さやか「恭介、もう松葉杖は、いらないの?」

恭介「ああ、思ったより治りがいいから、それなら早く慣らしておこうと思ってね」

あの、まどかが。
あんなに積極的に動いてくれるなんて。

あたしたちはまどかの計らいで、青空の下2人きりだった。

さやか「恭介が……リハビリを頑張ったからだよ、おめでとう」

恭介「はは、でも僕が頑張れたのは……」

恭介「君のおかげだよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 16:40:12.85 ID:iHYGkrE00<> さやか「えっ」

恭介は箸を置くと、あたしに向き直った。
あたしは驚いて、口の中のものを噛まずにごくりと飲み込んでしまった。

恭介「入院中、僕はなげやりな気持ちになっていた。
でも君は、こんな腑抜けのために何度も何度もお見舞いに来てくれた」

恭介「ありがとう、さやか」

さやか「そんな……」

恭介「この手が治った奇跡、君が言っていた魔法を信じてこれから頑張るよ。
僕にとってさやかは、奇跡の魔法使いなんだ」

恭介は柔らかく微笑んだ。

嬉しいのに、嬉しいけど。
やっぱり恭介をだましている気がして、それはあたしには耐えられなかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 16:50:20.12 ID:iHYGkrE00<> さやか「……簡単に信じちゃダメだよ」

恭介「えっ?」

だから、あたしは見栄を張るのが苦手だった。
喋る必要のないことまで喋るから、幸せが口から逃げるんだ。

さやか「奇跡も、魔法もね、使うには代償がいるの。
あたしは、そんなに綺麗なもんじゃないし、恭介の思い描くものにはなれない」

でも、あいつにはそんなことはお見通しだったのか。
恭介は再び微笑んだ。

恭介「そんなことはないさ」

恭介「君がいてくれたから僕は今、前を向いて生きていられるんだよ」

さやか「恭介……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 16:59:32.94 ID:iHYGkrE00<> *

恭介「新学期の授業はやっぱり大変かい?」

恭介「ずいぶん間が空いちゃったから不安だなぁ……」

さやか「う、うん……あたしもよくわかんないや」

さっきから心臓が早鐘の様に鳴っていた。

いつ言えばいいの……?
それは今だ。今言わなきゃ、今しかないんだ。
休み時間には恭介は他の男子に囲まれてしまう。

今しかない。
まどかが用意してくれた機会を、逃しちゃいけない。
さあ、口を開け。

でも、あたしの口は麻痺したように動かない。
意を決して口を開こうとすると鼓動が跳ね上がる。
たった一言の言葉を紡ぐだけなのに、
それは断崖から飛び降りるに等しいことと感じられる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 17:10:25.54 ID:iHYGkrE00<> いや、本当にそうなんだ。
落ちたら、助からないかもしれないんだ。
あたしの足は動かなかった。

美樹さやかがあたしの背中をぐいぐい押していた。
しかし美樹さやかは踏みとどまる事にも必死だった。


――大変だ、早く戻らなきゃ。

さやか「あ、恭介……」

あとひと押しだったのに。
はっと顔を上げると、恭介が片付けを始めていた。

なにも言えないうちに。

恭介が離れる。
言葉は出なかった。手は届かなかった。

昼休みの終わりを告げるチャイムが無情に鳴り響いていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 17:19:08.75 ID:iHYGkrE00<> *

放課後

授業が終わっても仁美は立ち上がらない。
あたしも黙って座っている。
まどかは落ちつきなく、仁美とあたしを交互に見ていた。

きっかり3分後、仁美が立ち上がる。
恭介に向かって臆することなく歩いていく。

見届けて、あたしは帰り支度を始めた。
机の横にかかっている鞄を取ろうとすると、上から声がかかった。

ほむら「さやか、本当にいいの?」

慣れ慣れしく話しかけられた、とあたしは反射的に思った。

さやか「何よ、転校生があたしの心配?」

さやか「それにいつから下の名前で呼ぶようになったのよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 17:29:30.69 ID:iHYGkrE00<> 仁美は恭介と連れ立って教室を出て行った。
どうしようもない気持ちを、目の前の転校生にぶつけてやりたかった。

まどかが立ち上がった。

まどか「さやかちゃん、そんな言い方ってないよ。
ほむらちゃんはさやかちゃんのこと心配しているんだよ?」

そんなことはわかってる。わかってるんだ。
あたしの心が汚いだけなんだ。

ほむら「いえ……構わないわ。
いまさら彼女と仲良くする資格なんて、私にはないもの」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/12(日) 17:38:00.33 ID:iHYGkrE00<> ほむら「慣れ合いたくない気持ちはこちらも同じ。失礼したわね」

転校生は顔をわずかに伏せる。

表情に乏しいのは相変わらずだけど、
目元に浮かんだ陰影が、哀愁の片鱗を見せた気がした。

さやか「……ほむら」

ほむら「……!」

さやか「あたし今日ヒマなんだ。魔女退治のコツ、教えてくれない?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sagasage<>2011/06/12(日) 17:38:46.73 ID:iHYGkrE00<> マミ「今日はここまで!」

ほむら「私はわかったのよ。>>209あたりで杏子が魅せた、脱出マジックのトリックがね」

さやか「なにそれすごい」

魔まどか「なにそれおぼえてない」

ほむら「杏子の特殊能力は幻覚を見せること……と明かされたわ」

ほむら「つまり、私たちは幻覚を追わされていたのよ!」

まどか・QB「「な、なんだって――!!」」

杏子「いや、すまん……一家心中とかあったじゃん?」

杏子「あの後から幻覚とかマジトラウマでさ……もう使えねえんだわ、はは」

一同「うわあまじくうきよめねえ」

杏子「どう見ても>>1が悪いだろなんだこの状況」

マミ「次回も日曜日で。さよならフィナーレ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/06/12(日) 17:39:28.91 ID:FYEp90aFo<> お疲れ様でした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 10:02:45.24 ID:sh/CUqT30<> 冒頭だけ投下してまたしばらく推敲作業に戻ります。
始めに断わっておくと僕はマミさんが大好きです。あしからず
再開します。
――

宝剣の切っ先のように月光が刺し込み、駅のホームを鋭角に切り取る。
私は走っていた。全身が緊張して汗が滴りひどく焦っていた。
夜風は生ぬるかったが、匂いはほとんど感じなかった。
ソウルジェムを砕かれると魔法少女は死ぬ。

なら――。

そして、彼女たちを見つけた。
こちらに背を向けている。これは幸運だ。
展開したリボンが彼女たちを絞め上げ、その無防備な姿を空中に曝した。

マミ「ごめんなさいね」

マミ「でも、私もう終わりにしようと思うの」

マミ「勝手な話かもしれないけれど」

マミ「もう迷いはないから」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 10:06:31.09 ID:sh/CUqT3o<> 私は驚く彼女たちの間に歩を進めていった。
これで終わりだ。蒼い輝きが、私の心を冷酷に染めてくれる。何も怖くない。
マスケットを構え、まずは杏子。

杏子「お、おいマミ……冗談はよせ」

彼女は冷静だった。
張りつめた空気の中、私を見つめる瞳は純粋に澄んでいた。
かつてのように。

杏子「これを解け。ちゃんと話そ……」

でも、私だって冷静よ。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 10:10:13.34 ID:sh/CUqT3o<> 短い発砲音が彼女の命に終止符を打つ。

杏子「う……!」

硝子細工を落としたような、透き通った破砕音が耳に響いた。
場は恐慌に陥った。

さやか「きっ、杏子!!」

マミ「あなたもよ、美樹さん」

さやか「い、いやああああああああああああ!!!」

私は私の仕事を冷静にこなすだけだ。
おへその位置に輝くソウルジェムを打ち砕く。
こんな姿にされて……私が救済してあげなくちゃね。

美樹さんのリボンを解くと、その体は杏子の隣に力なく横たわった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 10:14:33.25 ID:sh/CUqT3o<> ほむら「巴、マミ……あなた、自分が何をしているのか分かっているの!?」

ほむら「こんなこと、ぜったいに許さな……」

撃ち抜く、命を。

ほむら「い……!」

あとひとりだけ。

魔まどか「もうやめてええええええ!!!」

涙を溢れさせた彼女の胸元をやさしく穿つ。
銃弾は的確に彼女の魂を打ち砕いた。

私は深いため息をついた。

胸の中に渦巻く感情はたっぷりの満足と、ちょっぴりの後悔。
これをしてしまったら、私の末路も決まってしまう。

すぐに後を追うつもりだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 10:19:05.87 ID:sh/CUqT3o<> マミ「うふふ。あは」

死ぬのは怖い?怖い? 怖い!!
でも、もう死ぬしかない。彼女たちの命を奪い、私も死ぬ!

「なんで」

マミ「?」

声が、聞こえた。
はっとして、俯いた顔を上げた。
周りの空気が固体になった。

まどか「なんでこんなことを!」

彼女は累々と転がる死体を見下ろし、涙に涙に訴えてきた。
しかし、私は正しかった。そう信じているからこそ。
彼女の顔を正面から見ることが出来た。

そして、ふと気がついた。

――
一応グロ注意 嫌な人は>>524
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 10:29:29.11 ID:sh/CUqT3o<> 彼女も私が気がついたことに気がついたようだ。

まどか「……あは」

右手が煌めいた。月光を反射するなにか。

踏み込みは一瞬。
白く細く、直線に空間を裂く。
駆け抜けるようにすれ違う。私は後ろに跳んだ。

跳んだ。跳んだ。跳んだ。
自分の背中が見えるなんて、どれだけ速く飛んだのやら。

まどか「まみさんのくびぶっしゃあぁぁぁははははは!!!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 10:34:17.23 ID:sh/CUqT3o<> *グロ注意



まどか「あっははは……はははあ、はあ」

噴水のように血が吹き出す身体を、遠くから眺める。
高く高く、数メートルも噴き上げる赤い迸り。
ホームの天井にまで達し、広がって滴り落ちる。
断面は綺麗ではなく、ズタズタに破れた皮と粉砕された骨が血汁の具材となり、散乱していた。

妙に空虚で、なにも考えられなかった。
鹿目さんは幽鬼のようにふらふらと揺れながら、痙攣していた。

私はもう動けない。
ただ、見せられるものとして無様に転がっているだけだった。
そのあと、すべては立て続けに起こった。

断面がごぼっと音を立てて、中身を吐きだした。
鎖骨が砕け、折れる音がして、それも地面に吐きだして、首が360度うごめいた。

身体から新しい首が生える光景だった。
不思議とその顔は血にまみれていなかった。
あれは、私だ。

じゃあ、私はもう巴マミですらないのか。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 10:36:35.69 ID:sh/CUqT3o<> はいもう目を開けても大丈夫です
――

巴マミはこちらを見てにっこり笑った。

「あはははは、よくもやってくれたね、あはは、えへへ」

みんながむくりと起きあがる。
ソウルジェムは砕けたままだったがお構いなしだった。
巴マミの隣に全員が並び、にっこり笑った。

全員が私を見下していた。徐々に赤く染まっていく視界の中、
最期に見た光景は異様なものだった。

剣、槍、弓、マシンガン。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 10:40:56.36 ID:sh/CUqT3o<> マスケット。

各々の武器を向け、私を嗤う声が延々と響いていた。
みんなが笑顔で、その中心には私が立つ。
傍から見ればとてもほほえましい様子だった。

私がここに血糸を引いて転がってさえいなければ。
私さえいなければ。

銃声が鳴り響く前に、耳の中に直接響く声があった。

「落ち着きなよマミ……」

「君の拘束魔法は、ひとりにしか使えないはずだろ?」

それじゃあ……。
まるで、それ以外は真実と言っているみたいじゃない。

銃声が響いた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 10:46:40.49 ID:sh/CUqT3o<> そして私は世界に飛び出す。
絶望を塗りこまれた、しかし陽光がやさしく照らす世界へと。

マミ「……ぅあ」

顔中が濡れているのを感じ、思わず触れるとそれは涙だった。
脳裏に先刻の光景が映り込んだ瞬間、一気に喉元までこみあげる。

マミ「うっ……あぁ……あぁ……」


ピンポーン


私が起きるのを待っていたかのようなタイミングで、インターホンが鳴る。
首を振って、無視することにするはずだった。

視界がずれ、る。
音が極度に歪曲されて脳内に拡大されて。

魔まどか「マミさーん」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 10:50:22.53 ID:sh/CUqT3o<> 魔まどか「まどかでーす」

……殺される

杏子「あたしも」

杏子「いるぜー」

……殺される!!

魔まどか「お見舞いのケーキ持ってきましたよー」

杏子「開けてくれー」

杏子「じゃないと、このドアぶち抜くぞー」

魔まどか「物騒なこと言わないでよもう」

杏子「冗談だよ」

魔まどか「杏子ちゃん、冗談に聞こえなーい」


私は飛び起きて、玄関に向かって叫んだ。

マミ「か、かかかえって!!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 10:54:14.77 ID:sh/CUqT3o<> ぺったりと笑顔を張り付けてナタを振るい、
ソウルジェムを砕かれてもにっこりと笑って立ち上がる。

化け物!!
出ていけ!! 出ていけ!!

魔まどか「マ、マミさん……」

マミ「こないで!! こないでよ!! くるなぁ!!」

顔を合わせたら最期、きっとまた首を狙われる。
私が彼女たちを殺したことを恨んでいるに決まってる。
涙がとめどなく溢れた。恐怖のためだけではなく……。

魔まどか「……すみませんでした」

ふと、玄関の向こうが静かになる。
彼女の息が途切れ途切れ、荒くなっていく。

泣いて、いるの? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 10:56:13.49 ID:sh/CUqT3o<> 魔まどか「マミさんの気持ちも知らないで、勝手にはしゃいでて」

魔まどか「本当に、ごめんなさい……!!」

まどかさんの涙が、私を平静にする。
ふと、我に返った。

あぁ、私は、なんということ。
あれは悪夢だった。ただの夢だったんだ。
だれも殺されなかった。私の首は飛ばなかった。

それなのに私はまどかさんを泣かせている。

マミ「違う、違うのよ」

しかしそれでも玄関を開けることだけは、どうしてもできなかった。

マミ「でもごめんなさい、今日は……今日はダメなのよ」

よくわからないことを言っていたと思う。
愛想を尽かされても仕方がない。支離滅裂だ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 11:23:47.71 ID:sh/CUqT3o<> 杏子「マミ、みんなは、あんたが戻るのを待ってるよ」

杏子「いつでも戻ってきていいんだからな」

杏子のやさしさと、まどかさんの嗚咽が、私の身を裂いていく。
帰っていく足音が徐々に遠く消えていった。

涙で何も見えず、崩れ落ちる。
悪夢だ。悪夢。

死と断面と笑顔とを思い出して、私は口を押さえた。

マミ「……っあ」

トイレに直行する。
一番近かったから。もう手では抑えきれず、便器にぶちまけた。
口の中に酸の味が染みた。

トイレの床に座り込み、便座に突っ伏すような体勢で、涙と吐瀉物を吐きだし続ける。
誰かがこの光景を見ていたら、あまりの滑稽さに笑い転げるに違いないと思った。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 11:25:37.31 ID:sh/CUqT3o<> QB「大変だ、マミ」

案の定、誰もいない部屋ではなかった。
デリカシーどころか感情もない友達だけれど。

QB「ソウルジェムが、かなり濁ってきているよ」

QB「魔女を殺さなければ、君は魔女になってしまう」

マミ「ふぁ……ん……な、なにが……いぃらいの、よ……えうぅ……う」

歯の合間から、唇から、粘液が垂れる。
涙とその粘液が混ざって、雫となって便器の封水になる。

QB「君に時間はないんだ」

QB「君が止めない限り、魔女は殺され続ける」

QB「僕は構わないけれど、君にとってはそうじゃないんだろう?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 12:37:11.31 ID:sh/CUqT3o<> 直線距離では数メートルなのに、下に降りてから行くのでは面倒だ。
おそらくそういう理由で、こうした空中回廊が多く存在するのだろう。

隣接する高層ビル群は、無秩序に回廊で結ばれ、ひとつの城の体を為していた。

あまり管理が行き届いていないので、不良やホームレスの溜まり場にもなっている。
おそらくそう言う理由で、魔女や使い魔が多く存在するのだろう。

時々名もない彼らが人知れず消えていくのは、そういうことだった。

暁美ほむらの、巡回ルートのひとつだった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 12:44:27.26 ID:sh/CUqT3o<> 〜ほむら視点〜

さやか「はああっ!」

前だけを見て剣を振るう。
立ち止まりふっと短く息を吐いて、腰だめに構えた剣を短く持って三段に振るい、
敵の触手を切り捨てる。跳躍して空中の敵を狙う。
召喚した8本の剣が前面に円陣を為し、突き進む彼女の先端として突き刺さる。

派手に光を散らし、火花を散らし、使い魔を駆逐していく。ように見える。
まどかが声をもらし、さやかの戦いに見惚れる。

ほむら「……」ハァ

周囲が見えていない。
思わずため息が漏れる。速度は大したものなのに。

私はアサルトライフルを構え、援護射撃に徹することにしていた。
あいにく、さやかが気付いている様子はないけれど。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 12:56:58.60 ID:sh/CUqT3o<> 一匹の使い魔が、跳躍の最高点を越えたさやかとすれ違うように逃げた。
音符の装飾が織り為す魔方陣を足場にして反転。
主に先立ち無数の剣が飛び急ぐ。

無駄に多い……。

さやか「これでっ!」

最後の一匹に思い切り投げつけられる剣。
魔力を込めた一撃は何よりも速く使い魔を貫いた。

結界が崩壊した。

まどか「やったあ! すごいよさやかちゃん!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 13:05:37.35 ID:sh/CUqT3o<> 着地したさやかにまどかが駆け寄った。
目を閉じて力を抜く。人の身体を取り戻す。

開口一番。

ほむら「無駄な動きが多い」

ほむら「敵の間合いに入って戦う以上、最小限の動きでなければ反撃されるわ」

ほむら「今回は敵が雑魚だっただけよ」

あぁ、やっぱりまだ無理。
こんなことしか言えない。
彼女の顔を見れば、冷たい言葉しか発してこなかった口は、それしか発してくれない。

まどか「か、辛口だね……」

ほむら「正直な感想よ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 13:17:19.87 ID:sh/CUqT3o<> 長い間によく固められた心の壁は、そう簡単に崩れない。
さやかと最後に仲良く話した思い出は、遠く遠くかなたにある。

さやか「わかった……」

さやかも変身を解いた。
素直なさやかだ。というよりボーッとしている。
私は少し違和感を覚えた。
まどかは目の前のさやかの横顔をじーっと見つめていた。

まどか「……」

さやかはこつんと靴を鳴らして、薄暗い回廊に回った。
まどかを見据える瞳は淀んでいた。

さやか「なによ? あたしが素直に言うこと聞いたらおかしい?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/19(日) 13:37:19.37 ID:sh/CUqT30<> まどか「あ、そんなわけじゃっ!」

ぴちゃり、と天井のよく冷えたパイプから水滴が落ちる。
それが頬に当たり、まどかはびくぅと身体を震わせた。

まどか「ひぁっ」

さやかは無視した。

さやか「あたしなんかよりずっと先輩なんだから、素直に聞いて当然でしょ」

ほむら「さやか……?」

さやか「もう帰ろうよ。まどかもあんまり遅くなると良くないよ」

鞄をひっつかみ、先に立って歩くさやか。
まどかは慌ててそれに追従した。

まどか「う、うん……」

じめじめと薄暗い回廊をあとにする、そんな今夜は春のおぼろ月夜。
雲間に隠れ、揺れ動いて落ち着きのない……。
風に舞い上げられた髪を押さえようともせず、さやかは月を見上げた。

まどかと私は、彼女にかける言葉を持たなかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/06/19(日) 13:46:47.76 ID:sh/CUqT30<> 工事中なので中断します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/19(日) 19:41:28.63 ID:/JDIVTUDO<> 乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/20(月) 11:21:56.28 ID:A0t0BjbIO<> 乙っちまどまど <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 18:43:55.37 ID:uhY+Xjc9o<> 再開します
―――

翌日 教室

女子1「ねえ、さやか聞いたぁ?」

さやか「なに?」

女子2「仁美のことだよ」

さやか「仁美? が、どうかしたの?」

女子1「あ、さやか知らないみたい」

女子3「え〜!」

さやか「な、なんなのよ」

女子1「何とあの仁美が上条くんに告白しました!」

女子2「アハハハ!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 18:45:08.05 ID:uhY+Xjc9o<> さやか「け、結果は!?」

女子3「それは……ねえ」

女子1「どうもねえ……」

女子2「ご覧あれ!」

さやか「仁美……?」

仁美「……」

教室の中を覗きこむ。
仁美は席について、ぼうっとしていた。

女子1「これであのお高い鼻も根元からへし折れましてよ……」

女子2「ぎゃはははwww」

女子3「ちょ、似てるwww」

あたしは最低だ。

まどか「さやかちゃん……?」

最低だけど……。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 18:49:03.95 ID:uhY+Xjc9o<> 〜ほむら視点〜

切っ先は空を刺し、燦然と煌めく。
日の光が結界を切り開き、彼女の勝利を祝福しているかのようだった。

彼女は振り返る。

さやか「どう?」

ほむら「まだまだね」

見事な速攻だった。
しかしこの得意満面を増長させるようなことは言わず。
小気味よくその顔が不満に染まる。

さやか「うぐ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 18:52:33.24 ID:uhY+Xjc9o<> なんだよもー、と言いながら変身を解くさやか。
ぷくーっと膨れた頬。昨日はなかった豊かな表情が戻っている。
私はグリーフシードを拾い上げ盾に収納しながら、

ほむら「いくらスピードがあっても正面から突撃するだけじゃ、意味がないわ」

ほむら「……あいつには勝てないわ」

私は「工事中」の看板を立て直して、足場の階段を下りる。
カンカン、と革靴の音が球形のドーム内に反響していた。
ここは、設計者の悪趣味が具現化したような工事現場だった。

今はさやかの戦勝の舞台となっているものの。

さやか「ワルプルなんとかってやつ? なに、そいつそんなにヤバイわけ?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 18:54:33.83 ID:uhY+Xjc9o<> さやかは鞄を肩に担ぎ、私の横に並んだ。
昨日、私たちの間にいたまどかが、今日は来ていない。
必然的に私たちの距離が近くなる。

ほむら「ええ、ヤバイなんてものじゃない」

ほむら「奴は桁違いよ。圧倒的な物量と底なしの耐久性で、
魔法少女をまとめて飲みこんでしまうの」

強風が吹き、鉄骨がガタガタと騒いだ。
さやかは顎に手を当てて、うぅむと唸る。

さやか「ほむらは、一度も勝てなかったの?」

ほむら「いえ……そういうわけでもないわ」

私の返答にさやかは怪訝な顔をする。その理由を私も察することが出来たので。

さやか「勝ったんなら、なんでまだ戦いを繰り返すのさ? せっかく……」

ほむら「奴は……いえ」

ほむら「さやかは、ワルプルギスの夜をどういうものだと思ってるのかしら?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 18:56:36.57 ID:uhY+Xjc9o<> 少々唐突な質問だったかもしれない。

さやか「え? そだねえ」

少し考えるふりをする、さやか。

さやか「まあ、ラスボス的な? 最強で最悪の魔女って言うくらいだし?」

階段を下りきり、私たちは作業員用の小さな扉から外に出た。
人目を気にして電柱の陰にコソコソと隠れるさやか。
ひょっこりと顔を出して周囲を窺う。みぎひだりみぎひだり……。

さやか「……」

全く隠れられていないわね。
私は無言で待った。

さやか「……」フー

安全確認が出来たらしい。
まだチラチラと後ろを振り返りながら、さやかが出てきた。

ほむら「確かにそう言われているわ……」

私はようやくさっきの続きを言う。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 19:00:20.45 ID:uhY+Xjc9o<> さやか「ん、違うの?」

さやかは頬に指をくっつけて小首を傾げた。

車が風を切って通り過ぎる。
さやかは口元を押さえて、目をいっぱいに見開いた。

さやか「……はっ!」

ばっと手を開き、大げさに人差し指を私に突き付ける。
私は鼻に当たりそうになったその指を一歩引いて避けた。

さやか「わかったぞ!」

さやか「あんたが黒幕だったのか!」

ほむら「……まあ大変」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 19:02:15.28 ID:uhY+Xjc9o<> さやか「おのれ、さやかちゃんが成敗してくれるー!」

肩を掴まれたかと思うと、今度は腰に手が伸びてきた。
くすぐったくて腰を捻る、さやかが面白がって頬を寄せる。
やけにテンションが高いわね……。

あぁ、なんて久しぶりなのか。
こんなに無邪気に騒ぐさやかと一緒の時間を過ごすのは。
壁が崩れていく。音が響いていく。

腰に抱きつかれたまま私は信号待ち。
車が次々と通り過ぎていく中、私は彼女を振り払えなかった。

さやか「……」

無言のさやかの締め付けが少し強くなるのを感じた。
信号が青になり、隣に立っていたサラリーマンがケータイを閉じる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 19:08:09.17 ID:uhY+Xjc9o<> 〜まどか視点〜

ボタンに手をかけた時、一瞬ためらった。

今の私は、マミさんに何の言葉も用意できていない。
それでも、何も分からなくても、私は動かずにはいられなくて。

ピンポーン、という音が迷いを断ち切った。
よしっ、と気合をこめて、手を握りしめる。

まどか「マミさん、私です」

まどか「まどかです」

マンションの廊下は静かだった。返答はなかった。
私を拒む扉がどっかりと立ちふさがっていた。

私は扉を見上げて拳を握った。

マミ「……」

今、一瞬、気配を感じた気がした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 19:10:29.06 ID:uhY+Xjc9o<> まどか「マミさん?」

私は扉の奥に、もう一度呼びかけた。
扉に耳をくっつけてみる。

マミ「……」

クジラの形をした雲が泳ぎ、できた隙間から光がこぼれる。
表札が煌めき、次の瞬間、夕刻の静かな空気が震えた。

マミ「どっち?」

まどか「え?」

聞こえた声。

まどか「あっ、えーとまどかさんじゃないほうです!」

ドア越しの会話。
つながった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 19:13:35.53 ID:uhY+Xjc9o<> マミ「ごめんなさいね、今日はちょっと……」

しかし小さな声は、遠慮がちながら、明確に入室を拒否した。

だけど私はここに立つ。背筋を伸ばして、指先まで緊張させて。

まどか「お話だけで、いいんです」

扉に近づいて、マミさんに近づいて、呼びとめて。
放っておいたら、そのまま揺らいで倒れてしまいそうな危うさを感じて。
焦りが私の口を加速させた。

マミ「え?」

まどか「ドアは閉めたままでもいいんです、このまま話だけしちゃダメですか?」

まだ気配は感じる。
きっとこのドアのすぐそばまで来てくれている。
私のふらつく足は、今こそしっかりと地面を踏みしめ、手は扉を押しこんだ。

マミ「そこまで気を遣わなくても……」

マミさんは相変わらず消えそうな声で答えた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 19:15:39.37 ID:uhY+Xjc9o<> 私は畳みかけた。スカートの裾を握りしめる。

まどか「でもそこにいるんでしょう。体調が悪いわけじゃないですね」

まどか「というか、もう話せてます、よね。
私、このままマミさんとお喋りしたいな!」

奥で、すとん、と音が聞こえた。
扉が少し揺れる。私はマミさんが扉にもたれかかって座ったのだと分かった。

二人、扉を挟んで背中を合わせた。

姿は見えないけど、マミさんを近くに感じることが出来た。
それはとても、久しぶりな気がした。

西日が廊下を橙に染めていた。

マミ「夢を見たの」

マミ「私がソウルジェムを砕いて、みんなを殺す夢」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 19:18:13.79 ID:uhY+Xjc9o<> 声に微妙な震えが走る。しかし止まる事はない。

マミ「魔女になるくらいなら死んだほうがいいって、私の中から聞こえてくるの」

私は黙っていた。
マミさんは急に慌てたように続ける。

マミ「変だよね、最低よね。でもだんだん声は大きくなってきて……」

マミ「私、いつみんなを襲うか、わからないの」

下の階から、子供たちがドタドタと走る音が聞こえる。
私は扉に耳をつけて、呟きを辛うじて拾う。

消えそうだった。涙声だった。

マミ「私の中に、もう一人、いるの」

マミ「入れ替わる機会を狙っているんだわ。寝て、次に起きたら
目の前にみんなのソウルジェムの欠片が……」

マミ「そんなことばかり考えるの……そうなる前に、私死んだほうがいいかな……」

マミ「死ななきゃダメかな……」

マミさんの言葉を噛みしめる。
沈黙がいつまでも続いていくかのように思えた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 19:26:43.48 ID:uhY+Xjc9o<> 私は目を閉じ、口を開いた。

まどか「そんなの知らない」

マミ「えっ」

まどか「私は魔法少女じゃないからわからないの。ごめんなさい」

マミ「か、鹿目さん……?」

私は息をつく。
クジラの大きな姿は橙色の光を帯びて、靄の中を泳いでいた。
マミさんにかける言葉を選ぶ時間をたっぷり与えてくれた。

まどか「でもね、だからわかることもあるの」

目を開けて、振り仰ぐ。
それは空はくすんだ茶色になり、最後の赤い光が闇に溶け込む。
マンションの廊下には、一斉に灯りが燈り、夜の反転を起こした。

まどか「殺しちゃダメだよ。仲間も自分も、大切にしなくちゃ、ダメだよ」

まどか「理由なんていらない。いま生きているから、これからも生き続けるんだよ」

私は立ち上がる。鳴り響く午後5時のチャイム。
おうちに帰らないといけない時間だね。

まどか「そうでも思わないと、やってけないよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/06/26(日) 19:28:18.87 ID:uhY+Xjc9o<> 訂正 ×それは空は→○空は <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 19:30:12.36 ID:uhY+Xjc9o<> 〜杏子視点〜

杏子「あいつ……!」

唇を舐め、かみしめる。
あたしは見ていたんだ。

杏子「あいつ……!」

背後から迫る使い魔を蹴り飛ばし、うずくまる少女に群がる影に槍を突き下ろす。
針金をねじ切るような音がして、影を絶つ。

結界が泡となって夕闇に溶ける。消える。

だけどあたしのもやもやは消えない。

少女「あ……あ……!」

あたしは踵を返して、変身は解かず、すぐにあいつを追った。
この子は怪我もなさそうだ。

それよりもあいつだ……!
いったい、どうしちまったんだよ……! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 19:32:43.24 ID:uhY+Xjc9o<> 電柱の上のカラスを追っ払い、降り立つ。
周囲を見回すと、逃げるように走り去るマミの背中を見つけた。
あたしは建物の上を渡り、先回りする。

結界を感知したとき、マミのマンションのすぐ近くだとわかった。
だから放っておこうと思った。
だが、いつまでたっても戦闘が始まる気配はなく。

近づいてみたら、結界と逆方向に走るマミを見つけたんだ。

杏子「おい!」

すすけた駅の高架下。旧駅舎時代の汚い壁が露出しているのが珍しい。

前に立ちふさがっているのがあたしだと気付いて、マミは足を止めた。
うつむいて、シャツの袖をぎゅっと握りしめて、髪を揺らして。

あたしはマミに一歩近づいた。

杏子「逃げたな……!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 19:38:26.67 ID:uhY+Xjc9o<> 杏子「中には女の子がいたんだぞ! それを知ってたのに……」

杏子「お前それでも……!?」

かつての自分だってそうだった。
そう思い出し、言葉が止まる。

だけど、糾弾してくれたマミが、それをするなんて。
理不尽かもしれない。だけど怒りは止まらなかった。
怒りは反転してあたしにも返ってくる……。

マミはすぅ、と息を吸った。
震えが止まり、目を開き、あたしを見据える。

かつての相対のようだ。

マミ「……人間じゃないし」

マミ「魔法少女でもないわ」

ぐらり、と。

マミの無表情の危うい均衡が、徐々に崩れていく。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/06/26(日) 19:46:18.23 ID:uhY+Xjc9o<> 口元に歪んだ笑みを浮かべ、次の瞬間、それがふっと、消える。
見開いた眼は何を見ているのか。

胸に手を寄せて、息を飲む。染みだす涙の奇跡の泣き顔。

マミ「じゃあ……私なんなの!? 何のためにいるの!?」

ヒステリックな叫びを上げながら、マミは逆に近づいてきた。
一瞬目を奪われていたあたしは出鼻をくじかれることになった。

杏子「は、はあ……?」

あたしは踏み出した足を戻さざるを得なかった。

髪留めを乱暴に引き抜くマミ。
縦ロールがくるくると無軌道に暴れ、次にぶわっと広がった。

マミ「もう誰も守れない! 魔女に銃も向けられない!」

マミ「わたしこわい! こわいの! ねえっ、どうしてわからないの!?
どうしてあなたたちは普通なのっ!?」

マミ「どうして……まだ魔女を殺せるの!?」

杏子「……」ハァー

あたしは手の平に息を吐いた。
マミは目尻に涙を浮かべていた。

次の瞬間、その雫が宙に飛んだ。

ぱちん! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sagesaga<>2011/06/26(日) 19:47:02.67 ID:uhY+Xjc9o<> マミ「今日はここまれ!」ヒリヒリ

さやか「どうしたマミさん」

まどか「とても展開が遅いけどこのあとは戦闘だらけなので」

ほむら「今のうちに平和な話を片付けておきたいのよね」

魔まどか「日曜更新のスタンスは変わらずー」

マミ「こんなとこまでよんでくれたかたにはかんしゃを!」ヒリヒリ
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/06/26(日) 19:51:04.46 ID:C4NZEvDuo<> 乙っち乙マミ

「人間じゃないし、魔法少女でもない」でGS生んじゃうかと思った……ひやひやさせやがる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/06/26(日) 19:57:38.02 ID:DTDbdhBXo<> お疲れ様でした。

マミさんも大変ですね・・・・・。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)<>sage<>2011/06/26(日) 20:41:28.97 ID:UKSrKyQvo<> 魔女よ!ってなるのかと思った…よかった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2011/06/27(月) 02:53:44.72 ID:IknHwm8oo<> 乙っちまどまど!
そらそうなるわな、マミさん頑張れ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/27(月) 12:55:44.28 ID:bVye+b4SO<> ヒス女+杏子=魔女化フラグの公式が来るかと思ったわ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/06/29(水) 08:34:54.17 ID:LQgwLGxIO<> マミマミ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/07/03(日) 23:24:02.67 ID:F47ztuHdo<> まだ日曜日だよね 再開します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/07/03(日) 23:25:23.77 ID:F47ztuHdo<> マミ「いたい……」

杏子「黙れ」

マミは張られた頬を押さえ、呆けていた。
ふっくらと真っ白な頬を、赤い手形が深く蹂躙していた。
いつかのお返しさ。

あたしは自分の声が震えないように、息を吸った。

杏子「あたしたちは魔法少女なんだ。あんたが戦わないで誰がこの街を守る?」

杏子「人も魔女も報われない。戦わなくちゃ生き残れない。戦わなくちゃ……」

杏子「救われないんだ」

マミの瞳はまたしても涙でいっぱいになっていく。
雫を満杯に湛えて、こぼれた涙が路上を洗う。
頬を伝ったものは解いた髪にしみ込んでいく。

杏子「マミ、あんたが正しかったよ」

杏子「あたしたちが救いや見返りを求めるなんて、考えが甘かったのさ。
あたしたちが、みんなと自分自身を救わなくちゃいけなかったのさ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/03(日) 23:31:17.20 ID:F47ztuHdo<> 杏子「魔女退治は、絶対にあん畜生の便所掃除なんかじゃない。
魔女を倒せば人を救い、あたしら自身も救い、魔女だって救うことができるのさ」

杏子「勝手だけどさ……やり直そう。マミ」

マミは黙り込んでいた。

あいにく、ストックがあまりないけど。
ポケットを探って出てきたチョコレート菓子をマミに差し出す。

マミ「……」

マミは手を握りこむ。
手はゆっくりと上げられた。

杏子「ぁっ!!」

鋭い痛みが走る。
乾いた音が響き渡る。
はたき落とされる。

マミ「近寄らないで!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/03(日) 23:35:14.53 ID:F47ztuHdo<> 菓子が汚い路上にばらまかれ、箱はくるくる回って壁にこつんとぶつかる。
髪をなびかせて走り去って行く。

杏子「お、おいマミ!」

あたしは、マミと菓子の間で一瞬立ち往生した。

杏子「ちくしょう……」

散らばったお菓子を握りしめる。
畜生、おぼえてろ!

杏子「マミのバカヤロー!!」

下ろした髪は左右に波打ちながら涙のように輝いていた。
その背中に向かって思い切り叫んだ。

夕日に染められたポッキーは無残な断面を晒していた。
生ぬるい風には少し湿気が混じり始めていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/03(日) 23:41:21.54 ID:F47ztuHdo<> *

叩けば引き、追えば戻る。
そんな異形となった彼女が反撃に転じた理由はひとつだけ。

魔まどか「終わりだよ」

結界の行き止まりに追い詰められたのだった。
湖の上を走り続けて、今まで逃げの一手を打ってきた多足の魔女が、
ついに10本の足のうちの半分を撃ち放つ。

横からも後ろからも上からも襲いかかる。幻想的な光の帯を引きながら少女を狙う。
それより早く、結界に水の線が縦横無尽に走り、圧倒的な速度で収束する。

その名を知る者なら呟いただろう。
水蓮をあしらった長大な杖の名を。あらゆる魂を裁き、癒しを与えるその杖の名を。
ロータス・ロッド、と。

一閃。
すべての攻撃が、彼女を中心に巻き起こった暴風でかき消される。
すでに彼女は飛んでいた。

瞬きの間に、駆け抜けていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/03(日) 23:46:17.35 ID:F47ztuHdo<> 魔まどか「あなたはもう、誰も呪わなくていいんだよ」

着水と同時に、彼女の背後で爆発し、死とグリーフシードだけが残った。
天高く、見上げた先から降りてくる魔女の断片だった。

彼女は口元に笑みを浮かべ、杖はカン、と硬い湖面を叩く。

魔まどか「これで5つ目! 今日のノルマ達成だよ」

拾われたグリーフシードは、しかし使われることなく仕舞いこまれる。
そもそも彼女はほとんど消耗していなかったのだ。

ぱしゃん、と音がして湖面が荒れ始める。
突如すべてが弾け、結界が崩壊した。

QB(未来)「とんでもないハイペースだね……」

肩の上で尻尾を振るQBがため息混じりに伸びをする。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/03(日) 23:52:47.60 ID:F47ztuHdo<> 魔まどか「うーん、そろそろ暗くなってきたし、帰ろっかな」

変身を解くと、すっかり春の装い。
すっきりとした水色のワンピースに麦わら帽子。
どこにでもいる中学生の少女が姿を現した。

目深にかぶった麦わら帽子の下から、ポニーテールにした桃色の髪が溢れだす。
くいっと指で帽子を持ち上げ、歩き始める。

変装の真似事。旅先で購入した帽子に、リボンだった。
後頭部のしっぽを弄びながら、得意げに、えへへと笑って。

魔まどか「見滝原に」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/03(日) 23:57:53.43 ID:F47ztuHdo<> 〜魔まどか視点〜

画一化された座席、整然と並び垂れ下がる吊革。
多数存在する座席の袖、ドアの横に存在するわずかなスペースに私は収まっていた。

外の景色がガラス越しに少し歪み、徐々に都市の光が近づいてきた。
見滝原まではあと2駅。

QB(未来)(ねえ、まどか、まどか)

心地よい振動と、ちょうど寄りかかることのできる壁を得て、うとうとしていたところに、
テレパシーが割り込んだ。

魔まどか(なによぅ……)

QB(未来)(ちょっと確認しておきたくてね)

QB(未来)(どうも最近、魔女の力が加速度的に増大しているようなんだ)

QBは吊革に器用にぶら下がって身体を前後に振っていた。
私は眠い目をこすって少し姿勢を正した。

QB(未来)(今思えばあれは予兆だったのかもしれない)

QB(未来)(ほら、エリーを覚えているよね? 君が初めてもう一人の君と対面したとき、倒した魔女だよ) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/04(月) 00:04:08.02 ID:CWK6WGfso<> 言われて思い出す。

前の時間軸で契約したてのさやかちゃんに難なく倒された魔女。
この時間軸で、さやかちゃん、マミさん、ほむらちゃんをことごとく沈めた魔女。

QB(未来)(前の時間軸よりも、強くなっていたよね)

魔まどか(でも、あれは相性のせいだって言ったじゃない)


――Next station is Mitakihara...


QBはくるりと回って私の方に飛び乗った。


QB(未来)(そう思ってたんだけどね)

QB(未来)(この現象は特に見滝原で顕著に見られるようなんだけど)

QB(未来)(なにか心当たりはないかい?)


―――間もなく、見滝原、見滝原に到着します。


QBの無表情からは何一つ読み取ることが出来なかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/04(月) 00:10:16.07 ID:CWK6WGfso<> ほむホーム


魔まどか「ただいま!」

ほむら「おかえりなさい、まどか……って」

ほむら「なんでそいつを肩の上なんかに?」

ほむらちゃんは露骨に嫌そうな顔をした。
綺麗な眉根に深いシワが一本入り、睨みつける。

魔まどか「一周して可愛く見えてきたからね」

魔まどか「それにこうしてると本物の魔法少女みたいでしょ?」

ワンピースのすそをつまんで、気取って回ってみる。
なんだか楽しくて仕方がなかった。

ほむら「まどか……」

ほむらちゃんは顔を伏せてリビングに入っていってしまう。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/04(月) 00:17:15.49 ID:CWK6WGfso<> *

魔まどか「やっぱりどこにも魔法少女がいないよ」

ほむら「ワルプルギスの夜が近づいていることに、皆が気付き始めているのね」

チーズとトマトの味を噛みしめる。少し硬い宅配ピザの独特の風味。
コーラはサービスでちょっとうれしい。

QB(未来)「勝ち目のない相手からは逃げる、というのは最も安全で確実な手だからね」

QB(未来)「賢明だ」

魔まどか「おかげさまでグリーフシード独り占めだぁー」ヘラ

私はなぜだか嬉しくて楽しくて仕方がなくて。
それをほむらちゃんが咎めるように、

ほむら「まどか……」

魔まどか「えへ、冗談だよほむらちゃん。本気にしないで!」

魔まどか「なんとか他の街も守って見せるよ」

魔まどか「ところで、さやかちゃんとは……?」

私はほむらちゃんの責めるような視線から逃れるために、そう言ったんだけど。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/04(月) 00:29:11.43 ID:CWK6WGfso<> さやかちゃんの名前を出した瞬間。
ほむらちゃんを見て驚くことになる。ほんとに一瞬だったけれど……。

硬い表情がほころび、口元に淡い笑みが映り込んだような、気がしたんだ。

コーラを小さく口に含み、こつんとテーブルに缶を置く。
プルタブが光を反射し、ほむらちゃんの唇は湿り気を帯びて開く。

無表情だった。

ほむら「……えぇ、最近だいぶ筋が良くなってきたわ」

ほむら「ちゃんと訓練すれば案外、強くなるんじゃないかしら」

そう答えるほむらちゃんを見て、一瞬胸が騒いだ。
しかし思念が形を持とうとする前に、QBが口を挟んだ。

QB(未来)「そういえば、最近マミの様子はどうだい?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/04(月) 00:44:42.03 ID:CWK6WGfso<> 〜マミ視点〜

高層マンションにはよくあること。
オープンテラスというスペースが存在する。
マンションの住人ならだれでも自由に立ち入ることが出来る。
今夜は私の貸し切り状態だった。

夜風が湿っぽく私の頬を撫でた。
どんよりと、絵具を滅茶苦茶にかき混ぜてしまったような、渦巻く灰色。
雲に分け入る、天空へ通じる穴が、そこだけに月明かりを漏らす。

明日は雨が降りそうだ。
白い小さな姿がテーブルの上に飛び乗り、ころんと転がって落ちついた。

QB「眠れないのかい?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/04(月) 00:47:41.80 ID:CWK6WGfso<> 彼を見て、心が一度、重く沈む。
しかしやはり長年の付き合いが、私を頷かせる。

マミ「私、こわい」

マミ「私が眠った瞬間にね、私は目覚めるのよ」

マミ「そして、みんなを……。私、こわい」

マミ「私が、こわいの」

バラの花が屋上庭園を彩っていた。
壁に張り巡らされたトゲはみんなこちらを向いて、夜の光にぎらついていた。

QB「君は自分の正義を否定されるのが怖いんだね」

QB「見せてごらん、君のソウルジェムを」

マミ「……ええ」

私の魂はすっかり濁り切っていた。
もはや限界が近いのだと私にも理解できるほどに。

QB「君の魂は、もう長くはもたない」

QB「だから」

マミ「あなたが私に何をさせたいのかは、分かってるわ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/04(月) 00:53:43.18 ID:CWK6WGfso<> マミ「でも、それは出来ない」

QB「魔女が、殺されても構わないって言うのかい?」

マミ「……」

マミ「鹿目さん、明日も来てくれるかしら」

次こそは扉を開けよう。
鹿目さんだけは、わかってくれる。
彼女の笑顔だけが、私の道を照らしてくれる。

濡れている。雫がこぼれる。
雨が降り始めたからか、それとも。

見上げて、手を伸ばす。

世界は私を見ていた。私も世界を見つめていた。
静かな雨の中、包み込まれる。夜闇に飲まれていく。

誰にも理解されない。
戦いたくない。なら逃げるしかない。その先に何があっても。

散りばめられた地上の星たちを見下した。遠く遠く手は届かない。
夜景は揺らめきながら、滲んで溶けていった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sagesaga<>2011/07/04(月) 01:00:18.65 ID:CWK6WGfso<> マミ「今日はここまで!」

さやか「……」

マミ「おやすみなさい」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/07/04(月) 07:06:51.67 ID:HjVUV5Elo<> お疲れ様でした <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/04(月) 07:57:06.20 ID:bgWtYz4IO<> 乙マミマミ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/07/04(月) 11:48:34.29 ID:RgZOsZNs0<> まどマミ期待!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/04(月) 15:01:24.12 ID:bE+/gjVIO<> 乙っちまどまど! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/07/11(月) 08:06:54.45 ID:6yxs0Sit0<> 今回はないのかにゃ〜? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2011/07/11(月) 15:57:27.88 ID:45vXhXXJo<> 先週は書いてる時間がなかったよー 今週の日曜には投下するよー <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2011/07/17(日) 11:13:36.26 ID:b8vpXXB0o<> 午後から外出するので1パートだけ投下しときます 先週はすまんかった <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<><>2011/07/17(日) 11:14:20.14 ID:b8vpXXB0o<> 少し冷えて硬質に澄んだ空気を叩く、廊下の足音。
雨脚は少し弱まったものの、梅雨の到来が近いのはどうやら間違いなく、
依然として路面を洗い、夕暮れの街を行く人々の足を早めていた。
コツンコツン、と徐々に近づく革靴の音は、一枚の扉の前でぽつりと止まった。

ピンポーン

伸びた指が、しとしとと降り続く春雨の鬱鬱とした雑音を絶つ。清澄な響きを生む。
廊下に立ち止まった姿が、変わらぬ様子で、幾度目かの訪問の時を告げる。

まどか「マミさん、私です……まどかのまどかさんじゃないほうです」

まどか「今日も来ちゃいました」

雨音さえも遠慮したかのように音を押さえ、静かに背景に身を潜めた。
生じた空白を埋めるように、しとしとしとしとと降り注ぎ、空気を潤していく。

まどか「学校では、さやかちゃんの元気がだんだん戻ってきて、
ほむらちゃんともお話ができるようになって、あたしも楽しいです」

風に吹かれて、恵みの雨はマンションの廊下にまで踏み入った。
手すりに当たって飛び跳ねて、打って変わって楽しげに歌い、水溜まりへと流れる。

まどか「……マミさん」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/17(日) 11:20:01.46 ID:b8vpXXB0o<> 見ているものは誰もいない。それでも彼女は、扉に向かって満面の笑顔だった。
たったこれだけのことを言うために彼女はわざわざやってきた。

返事はなくとも、何の見返りもなくとも、彼女は扉に語り続けた。
折りたたんだ傘は静かに濡れそぼり、笑顔の彼女の代わりにぽたぽたと泣いた。

まどか「明日の朝、また私来ますから。もし良ければ一緒に学校――」

最後にそう言って、立ち去ろうとした。
そのとき、不意に雨音が途絶えた。

雫が飛び散る雨の世界が、閉鎖された室内に唐突に通じた。開いた。
乱暴な解錠音が耳を突く、息を飲む間も許さない、視界に飛び出してくる、

動くことも許されずに。

次の瞬間には激しく抱き締められていた。

まどか「マミさん!」

まどかは思わず小さく叫んだ。

全身を束縛する鎖のように、マミの腕はまどかを拘束していた。
柔らかい抱擁だとかいった、そんな余裕じみたものは欠片もない。
むしろ、自分のものを取られまいと必死で縋りつく幼児のようでさえあった。

まどか「……マミ、さん?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/17(日) 11:26:38.22 ID:b8vpXXB0o<> マミ「あなたは……何で」

マミ「何で私なんかのために……!!」

強い締め付けの中、びしょ濡れの言葉が滲み出した。
まどかは彼女に温もりが戻っていることを肌で感じて、心から暖かくなる。
目を閉じて、抱きしめ返したその姿は、子供をあやす母親のようだった。

まどか「だって、マミさんですし」

まどか「私の、大好きな、マミさんですし」

マミ「うぅ……う う う う う」

縛りつけるような抱擁が解かれ、マミは涙をごしごしとこすりながら、
かすれた鼻声で言った。

マミ「ごめんなさい、急に」

まどか「いいえ、泣きたいときは思い切り泣いて、いいと思います」

間髪を入れず、まどかは力強く言った。
最近になって、自分の中から力の湧きだすこの感覚が止まらない。
まるで自分の中にもう一人いるみたい、と思う。今のまどかは強いまどかだった。

まどか「マミさんは……」

まどか「いつもがまん、してるように見えるから」

マミ「そうかな……」

マミはまだ涙の跡の残る顔を上げた。

そして改めて嬉しそうに出迎える。
色彩的な笑みと清純な瞳を取り戻した彼女は、まどかの手を引いて誘う。

マミ「今までごめんね」

マミ「どうぞ、上がって! 紅茶とケーキしかないけれど」

雨が降り続いていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/07/17(日) 11:27:21.09 ID:b8vpXXB0o<> とりあえずここまで 夜につづきます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2011/07/18(月) 03:08:11.66 ID:JJ/TTTWPo<> 乙っちまどまど! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/07/18(月) 06:20:04.05 ID:rEWg2xha0<> まどマミだ〜! ヤッター! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/07/18(月) 12:38:27.79 ID:EN1yPvs7o<> 〜魔まどか視点〜

電話越しのほむらちゃんの声は少しトーンを落とし、申し訳無さげに響いた。
それに呼応するように背筋に走る感覚は、どこからか届いた予感だったのか、
心がきゅんと冷え込んで、次の思考も声も瞬間的に封じられてしまった。
ほむらちゃんの声は相変わらず受話器からくぐもって聞こえていた。

ほむら「ごめんなさい、まどか、魔女退治は無事に、終わったのだけどね……」

ほむら「杏子とさやかに絡まれちゃってね、だから」

ほむら「悪いけど、お夕飯は先に食べててくれるかしら」

話を聞く限りでは、さやかちゃんと一緒に帰っていたところで、偶然に杏子ちゃんと
出会ってそのまま一緒に食事に行く流れになってしまったらしい。
せっかく関係も改善したことだし、断るのもはばかられたとか……。
ほむらちゃんがみんなと仲良くなれるのは私の望むところだ。一緒にお食事なんて
願ってもない進展だし、だから、構わない。

魔まどか「うん、わかったよ! 楽しんできてね!」

ほむら「本当にごめんなさい」

受話器が無機質な音を流し始め、のし掛かる落胆が陰気な部屋に立ち込める。
ピー、と炊飯器が白けた音を鳴らし、バカにされた気分になった。

魔まどか「はぁ……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/18(月) 12:43:30.16 ID:EN1yPvs7o<> 私はようやくの思いで整えた食卓を見遣った。
暖かいはずの食事も何やら色褪せて湿っぽく見え、空腹感が消え失せる。
一人で食べる気になど到底ならなかった。私は鈍い光を放つフォークとナイフを
片付けようとした。

魔まどか「はれっ……?」

ぽたり、と一滴。
水滴が跳ね、王冠が弾け、銀色のナイフの輝きの中に溶けた。
はっとして、私は初めて気が付いた。

魔まどか「あ、あれ、やだ、やだなぁ……」

一度気付くと止まらなくなり、
頬を伝ってぽたぽたと立て続けに流れ落ちていく。自分でも予想外だった。
視界が滲み、テーブルクロスにいくつもの染みが浮かんだ。

目を上げれば哀れな食卓が広がっていて、止めればいいのに、今までの数時間の
努力が脳裏に蘇ってきてしまった。全部私が作った下手くそな料理だった。

魔まどか「ばかぁ……」

最近、ほむらちゃんと一緒にいる時間が短くなっていたから。

私は市外の魔女退治に向かい、ほむらちゃんはさやかちゃんの魔女退治を
サポートしていたから。だからせめて、一緒にいられる数少ない機会である
お夕飯の時間を、ほむらちゃんに喜んでもらいたいと思ったのに。

魔まどか「ほむらちゃんのばかぁ……せっかく作ったのに……」

魔まどか「もう、時間ないのに」

魔まどか「ひと、りにし、ない、でよっ」

ぽたぽたぽたと立て続けに雫がクロスに飛来する。
ひとり、みじめに俯いていた。

そのとき、不意に顔を上げる。

魔まどか「……っ!?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/07/18(月) 12:46:22.01 ID:EN1yPvs7o<> ここまで。1パートずつちまちまといきます スケジュール変わるから週一制が崩れるかもしれません <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/07/18(月) 12:48:02.07 ID:vijpC5NYo<> お疲れ様でした。

なんだか切ないですね・・・・・。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/18(月) 15:22:21.78 ID:l3LB3q7IO<> 乙っちまどまど!
うむむ……切ねえ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/28(木) 08:37:40.51 ID:PqGTdYsIO<> 乙・フィナーレ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/30(土) 03:23:07.06 ID:zxPylIyQo<> 〜まどか視点〜

側溝に騒ぎ立てる泡立った水音が濁流の中に蓄積していく。
マミさんから手渡された傘は未だ乾ききっていなかったけど、彼には次の仕事が
待っていた。私は一人の帰り道を思うと心まで雨降りになっていくような思いだった。

マミ「送っていくわ」

土砂降りの雨を見て、躊躇なくマミさんは言った。
そんなマミさんの申し出は心底ありがたかったのだけど、

まどか「でもこんな雨ですし」

マミ「ええ、だから一人で帰すわけにはいかないわ。
それに、まだあなたと話したいこといっぱい、あるんだもの、ね?」

まどか「マミさん……」

その偽りの無い笑顔は子供のように無邪気で優しく、別れ難く思えたので、
自然と私の首は縦に動いていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/30(土) 03:26:12.01 ID:zxPylIyQo<> *

3人。傘をぶつけ合いながら、それでも寄り添って進む姿は多少、通行の迷惑だが、
周囲には背伸びして夜遊びする中学生のように見えていた。
無論その中に不穏な視線が含まれていることも彼女たちは承知の上だったが……。

「もうさすがに帰らないと」

「だからさぁ、只でさえ同棲生活なんだしさぁ……」

「あー、そういやほむら、例の件だけど、どうにか収集つきそうだよ」

好き勝手に口を動かしながら、繁華街の漆黒の雑踏の中を縫うようにして、
強引に通過する自動車の撒き散らす雨水に不平を漏らして、歩んでいく。

ほむら「あぁ……」

気のない返事。しかし杏子は特に気にせず、指で傘をくるくると回転させながら
得意げに尖らせた唇を開くと共に、止めどない自分語りが滔々と流れていく。

杏子「苦労したぜー? 図書館に連日入り浸って、1から勉強に勉強を重ねてさあ……」

さやか「何の話してんのよ?」

事情を知らないさやかがそれを遮る。
ほむらは広場の時計をちらりと見て、さらにその早足を早める。

杏子「ひーみーつー」

しかし、ふと、違和感を覚えて立ち止まった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<><>2011/07/30(土) 03:32:55.84 ID:zxPylIyQo<> そして聞くともなく聞く。

ほむら「1からって……基本はわかってるんじゃなかったの?」

くるくると鬱陶しく回っていた傘がぴったりと動きを止めた。
数秒して今度は2倍速で逆回転を始める。顔にかかる水滴にほむらは顔をしかめた。

杏子「あ、ああもちろんさ! バカあれだよ初心忘るるべからずって言うじゃん?」

突如慌てだした杏子を怪訝な目で見つめる。
しかし詳しく聞いている時間もないので切りあげることにした。

ほむら「じゃあ私はここで」

さやか「また明日ねー」

まるで友達に接するときのように、さやかは屈託のない笑みで手を振った。
いや、すでに友達だった。
ということで、ほむらは友達なら少し意地悪をしてもいいよね、と思い立った。
そうして、意図的に歪められた唇が置き土産の言葉を残す。

ほむら「そういえば、さやか、確か明日……当てられるわよ数学」

さやか「ちょっ!? それマジすかほむらさん! 未来情報? 未来情報なの!?」

ほむら「ええ……今日当てられなかったことを鑑みれば、ほぼ間違いないわね」

さやか「どうせ間に合わないのになんつー捨て台詞なんだ!」

さやか「あんたあたしのこと嫌いでしょ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sagesaga<>2011/07/30(土) 03:33:56.48 ID:zxPylIyQo<> ほむら「そんなことはないわ……」

染みるように伝わる言葉にさやかは眉を上げた。ほむらは自分の中で渦巻く感情に
自ら問いかけるように、首をかしげ考える。そして、果たして、口を開くと、

ほむら「ええ……そんなことはない」

確かめるように紡がれる言葉は汚い夜には似合わないしめやかな美しい響きを伴う。
夜露に濡れ、艶を残す黒髪は嘘偽りのない感情の煌めきを見せて翻った。
さやかは、返す言葉がなかった。ほむらの背中に黙って視線を送り、呆けていた。

杏子「よかったじゃん?」

肩をポンと叩かれて、はっと我に帰る。

さやか「…う、うるさいし!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/30(土) 03:36:05.88 ID:zxPylIyQo<> 〜ほむら視点〜

すっかり暗くなってしまった。
早く帰らないと、まどかが心配するかも……。
雑踏を脱して、街灯の疎らな裏路地、近道の一つに足を踏み入れる。

なんだかんだ言ってしっかり今夜を楽しんでいた。この胸に残る暖かさがその証拠だ。
さやかや杏子と仲良く、友達として仲良く、過ごしたのはいつぶりか――。
もしかしたら、初めてだったかもしれない。

さやかをからかったことを思い出し、思わず口元が緩む。だらしないと思いつつ、しかし
嫌な気分ではなかった。肩の荷が下りたような、詰まりがとれたような、ゆるゆるとした
柔らかい気持ちだった。

――しあわせ。

街灯が消えかかっていた。
この光が消えたら完全な闇に包まれてしまうだろうな、と思う。

口元を引き締める。ワルプルギスのこと、考えにふける。
杏子の準備が出来た。今回の戦力は盤石。しかし、最後のチャンス。
今回のループは、絶対に、本当に絶対に負けられない。
これで勝てなかったら、もう何度やり直そうが、絶対に勝てないだろうから。

そう、絶対に――。

傘を握る手に力がこもる。路地の先を見据え、終わりの見えない道を突き進み、
前だけを向いて。前しか見ていなかった。
だから、意味がわからなかった。

光が消えた意味が。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/07/30(土) 03:41:14.97 ID:zxPylIyQo<> ほむら「―――っ!!!」

その瞬間、意味もわからないにも関わらず、即座に反応出来た事は、
ひとえにこれまでの経験の賜物だった。魔力感知能力が鋭敏になり、
敵の動きを直感的に察知できたのだ。

ほむら「んっ!!」

そちらを見る前に、すでに撃ち放った熱弾が影を撃砕していた。
しかしこちらも、髪の一房が切り裂かれて、静かに宙に舞っていた。
雨が止んだのは一瞬だけだった。撃破と同時に結界は晴れていった。

あれは――。

一瞬だけ視界に入った使い魔の姿から魔女にアタリをつける。
街灯はもう砕け散って点灯しなかった。
真っ暗闇の中、取りだした光点が放つ切なげな紫が、闇を切り開いた。

強く反応している。

まどかは、ちゃんと帰宅したかしら。

――マミさんちに行ってくるね!

ほむら「……くっ」

傘は不要だった。楽観は不要だった。
放り捨て、ソウルジュムだけを片手に、ほむらは走り出す。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/07/30(土) 03:51:03.38 ID:zxPylIyQo<> マミ「寝ましょう」

ほむら「早朝にこっそり更新」

まどか「次回はねっとりとしたまどマミ……どういうこと?」

さやか「そのままの意味だよ」

杏子「なんだか先が長そうだけど一応このスレには収まる予定だと思うよ」

マミ「さあさあ、おやすみなさい」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/07/30(土) 07:20:46.72 ID:vfEHzcDDO<> 乙あんこちゃんあんあん
・・・次回予告mjsk!? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/07/30(土) 10:23:14.74 ID:HzGKJlSwo<> 乙っちまどまど! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2011/08/01(月) 01:33:41.69 ID:3qc98QwTo<> 快適な夜だ!! 投下の時間だ!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 01:34:32.25 ID:3qc98QwTo<> 〜まどか視点〜

マミさんの持つ傘は相当に傷んでいて、骨の部分がさびた上に軸もぶれていた。
マミさんはその傘に両手を添えて歩いていた。
雨脚強まる中、その背中が私を先導した。鼻歌の旋律に乗り、ぴょんっと水溜まりを
飛び越えて、くるりと振り返って私に告げる。

マミ「戦いはもういやなの!」

くす玉を割ったように飛び出す色彩豊かな微笑みに、思いがけず心奪われ立ち止まる。
腰を折って私の顔を下から覗きこむように、

マミ「ワルプルギスからは逃げちゃいましょ」

それは無邪気そのもので、鼻の頭にくっついた雨粒が光っていた。

マミ「魔法少女だって、放課後に紅茶飲んで、テストで泣いて、みんなと笑って
いいじゃない。いつまでも苦しみ続けなきゃいけないなんて変だと思うの」

いや、よくない……。
マミさんは戦わなくちゃ、だめなんだ。誰かのためとかじゃなく、マミさん自身のために
戦ってもらわなくちゃ、だめだ。

まどか「マミさん、それは」

マミ「ダメだなんて言わせないからね」

この胸の高鳴りは……なに……?
マミさんの眉がくっと寄り、じとっと睨まれてしまうと何も言えない。
マミさんの舞台はさらに続く。

マミ「そう、キュゥべえに頼んで人間の姿に戻してもらうのよ。そしたら、魔法少女卒業。
みんなでパーティするの! そして一緒にお泊まりなんかするのよ!」

QB「……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 01:37:43.20 ID:3qc98QwTo<> まどか「でもでも……」

考えてみればマミさんは、当たり前のことを当たり前に言っているだけなのに、
それを聞いて度肝を抜かれた私はすでに、染まり切っていたのかもしれない。

まどか「そ、そんなの幸せ過ぎます――」

マミ「信じてないわね、だけど」

それが叶わぬ望みだと、私は知っていた。
ひょっとしたら、マミさんも知っていた。
その上でマミさんは現実を乗り越えようとしているのか、

マミ「いつか必ず叶えてみせるんだから」

あるいは単なる現実逃避をしているだけなのか、私にはわからなかった。

夢見る無実の乙女に現実は刃を向ける。マミさんを苦しめているもの。
見え隠れしている。マミさんはこう言っていたんだ。

果たして、今なお、あの夢を恋願う意味はあるの?

――もちろんです!!

不甲斐ない私には……そこまで、たどりつけなかった。
私ではマミさんの願いを叶えることはできなかった。

私の心を映したかのように、世界が変わっていく。
文字通り。

まどか「マミさん、これって……!」

マミ「……っあ」

にわかにキュゥべえは声を上げる。

QB「マミ、結界が出来るよ! 用心して!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 01:44:25.85 ID:3qc98QwTo<> 〜結界〜

雨は変わらず降り続き、薄暗い結界内は底なしの闇の広がりを見せていた。
そして取り込まれた私たちは傘を手にしたまま、しばし立ち往生していた。

まどか「マミさん」

マミ「ここは引きましょう、鹿目さん」

マミさんは奇妙な早口で言った。
そして私の肩に飛び乗るキュゥべえ。

まどか「えっ……はい」

どちらからともなく私たちは手をつないで、結界の中を進んだ。
マミさんには出口の方向が分かっているようだ、迷いなく先導してくれる。
土砂降りの雨の背景は赤々としていた。空が渦巻いている。

まどか「――怖いんですか?」

モノクロの地面から目をそらし、私は前を行くマミさんに尋ねた。
水溜まりに足を入れても水は跳ねず。前も後ろも闇のなか。


本当に進んでいるのか――……。


鮮明に聞こえる。
コツコツと私たちの足音だけ。くぐもった雨音の中。

本当に進んでいるの――……。


マミ「……先輩失格だよね」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 01:49:50.03 ID:3qc98QwTo<> 私の手を握る力が強まる。マミさんはうつむいていた。

QB「……」

マミ「もう私、魔法少女を名乗れないわ。こんな臆病な魔法少女っていないもの……」

マミ「先輩失格……魔法少女失格……――」

感じる。マミさんは震えていた。
噛みしめた唇から血が流れるのが見えていた。

マミさん……!

マミ「――人間失格だわ」

っあ!!

マミさんの握力が瞬間的に強く強くなり、私は思わず声を上げた。

マミ「あ、ごめんなさい」

まどか「いいえ、大丈夫ですよ」

マミ「……」

まどか「……」

キリキリと張りつめて、今にもぶちっ、と切れそうな糸が一線、伸びていた。
刺すような沈黙が果ての見えない結界に、無限に続くように思えた。

そして

……まただ。マミさん、また震えてる。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 01:56:54.78 ID:3qc98QwTo<> マミ「……さっきの話だけど、本当だからね」

マミ「魔法少女なんて、辞めてやる。そうして私は幸せを掴んで見せる」

それはマミさん自身に言い聞かせている言葉のように聞こえた。

マミ「みんな普通の学生に戻るの。普通に笑いあえる、そんな日常を取り戻すの。
ええ、絶対によ。もう嫌だもの、絶対に嫌だから……」

マミ「後ろ指を指されたって、臆病者だって言われたって構わない。もう一度、もう一度
……あれを、あんな日常を……だから!」

マミ「――あなたも一緒に来て!!」

……やっぱり、言わなきゃ。

私は躊躇していた。
しかし、やはりだめだと思った。言ったらすべて終わってしまうかもしれない。でも、言わなかったとしたら。

私は、この先ずっとマミさんを欺き続けることになる。
だましてウソついて……そしたら、また繰り返すだけ、だよね。私は2人に期待されている。
そして、あの子は、あの子なら……躊躇わずに言うんじゃないかな……。と、思う。

もう一人の自分に勇気をもらい。
そんな悪夢の宣告を課されてしまったことを呪いながら、
こんなことしか言うことのできない自分を最後まで恨みながら、私は、

まどか「無理、ぜんぶ無理なんです……」

私は、マミさんは。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sagesaga<>2011/08/01(月) 01:58:44.93 ID:3qc98QwTo<> マミ「――」

マミさんは……マミさんの表情は動かなかった。
泣き笑いのような表情で、何も聞こえなかったかのようだった。
一方で私は、私はマミさんのことを見ていなかった。マミさんの背後を見ていた。
目を見開いていた。

マミさんの背後に迫る、刃に、目を見開いていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 02:00:44.87 ID:3qc98QwTo<> ――マミさんっ!!

放り捨てた傘が地面に落ちるよりも前に。
体当たりする。マミさんを突き飛ばす。

そして刃が突き抜けた。

使い魔!!

のっぺりとした影の様な姿が重い挙動で剣を構え直す。
どろりとした狂気が空間に満ちて、私の中にもそれは入ってきていた。

まどか「使い魔が! マミさん! 戦わないと!」

マミ「や、やめて!! 殺さないで!!」

しかしその錯乱した頭にさらに錯乱した声が重なる。
マミさんはなぜか私の顔を見て、恐喝にあったかのごとく怯えきっていた。

マミ「そうだわ、夢だわ、夢なのよ……」

まどか「マミさん、私は何もしませんから! それより早く――」

キラリと光る無数の線が見えた。
影の剣が振るわれるごとに雨が切り裂かれ、徐々に結界の様子が明かされていく。

天は真っ赤に染まり、地には地獄絵図が描かれて。
視界の先にはそびえ立つ門。

まどか「ひ……ぁ……っ!!」

剣先が向けられる。もつれる足。尻もちをつく。乾ききる喉。
剣先が向けられる。喉元に迫る。肩が笑って動けない。

剣先が向けられ――。

マミ「――鹿目さん!!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 02:06:25.90 ID:3qc98QwTo<> 変身したマミさんがマスケット銃を取り出そうとする。
発光し、使い魔が一瞬ひるむ。

マミ「――!?」

しかし、それだけだった。
マスケット銃は、出現しなかった。
マミさん自身も驚いた顔で、状況が理解できない様子だった。

まどか「ひぁっ――……」

そして剣が振るわれる。
風を切る音が、雨を裂く音が、首を切り裂く。
最後まで私は、何の役にも立てずに私は、

――!?

ただ、それを見ているだけだった。

それは、握り潰される完熟トマトだ。
蛇口が外れた水道の如く、粘り気のある液体が吹き出して足に身体に頬に、襲いかかった。
冷や水を浴びせかけられたように凍り付いた、滴り落ちる液体は粘り、
私の頬に糸引くように舌を這わせ、神経を焼き切っていく。冷たく平面的に赤を晒し、

"マミさんの"生命を絶望的に奪い去っていた。

最後に私と使い魔の間に割って入ったマミさんは、丸腰だった。
ぐらりと横ざまに倒れる姿は人間よりも人形に近かった。
どしゃり、と鈍く重い衝撃が走る。血の海に沈む。

ああ――。

ぽかん、と開いた口に流れ込む血は冷たい。
息もせず、身動きもせず。


――マミさん、しんじゃった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 02:15:38.78 ID:3qc98QwTo<> 息を吸う。ふるえる。吸う。吸う。ふるえる。

QB「まどか!!」

QB「今すぐ僕と契約を!!」

キュゥべえが何か言っている……でも、よく聞こえないよ……。
ねえ、マミさん……、こ、この冷たいの……な、なんなの……。

まどか「っマミ…さん…!?」

なに、なんだっていうの……。

まどか「い、いやだよ……マミさん……いやああああ!!! 」

これは、なんなの……!? これは、なんなの……!?

まどか「――マミさああぁぁぁああん!!」

マミ「逃げて……」

使い魔が動く。

QB「早くするんだ! まどか!」

まどか「!?」

信じられないことに、マミさんは立ちあがっていた。
再び、私の前に立つ。
意図を理解できなかった。だって、なんで、そんな。意味分かんないよ!!
吹き飛ばされ。血が吹き出す。
なんで、そんな!!

マミ「だいじょ、ぶ、だから……はや、くにげ……なさいっ!」

崩れ落ち、しかしまだ立とうとしている。
しかしその唇に笑みが浮かんでいた。
しかし身体は痙攣していた。

マミ「あなたを救うために死ねるなら」

マミ「そんなに幸せなことって、ない、もの」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/01(月) 02:16:40.91 ID:kHBzfdXPP<> ねっとりって… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 02:19:56.17 ID:3qc98QwTo<> まどか「バカ言わないで……」

まどか「そんなのいやです……」

マミさんを離したくない。どうせ救えない。生き残ったところでそれが何になるの!!
こんな世界で生き延びて、何が幸せ!? 何が幸せなの!?

マミさんが死ぬなら、私だって死ぬ。

マミ「はやく……」

まどか「絶対にいやだ……」

まどか「!」

周囲に使い魔が取り巻いているのが見えた。

まどか「マミさぁん……」

マミ「だいじょ うぶ だ  から!!」

空間が歪み、私たちのいる場所が沈み込んで窪地のようになっていく。
空間が歪み、遠くに見える門が楕円形に見えた。
空間が歪み、私には360度の視界が与えられた。

研ぎ澄まされた剣でガラスを撫でるような音が響き渡り、それを聴いて。

――なにかが、大切な何かが、私の頭の中で切れた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/01(月) 02:26:30.53 ID:rHQbgJnoo<> ねっとりしてない‥‥どろどろ‥‥ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 02:28:46.93 ID:3qc98QwTo<> もう動かない魔力ではずの強引に身体は、魔力で動かしているんだ。
突き飛ばされブレた隅には映っていた視界。そのままマミさん崩れ落ちるマミさん。
狂った聴覚を刺激する狂った言葉が狂った波長で狂った……狂った。

「は や く に げ  な さ 」

重い一撃が襲いかかる。

朦朧とした視界で、異常な光景に異常な目が慣れてきてた。
私は小学生の頃、クラスの悪い男の子たちが路上に空き缶を置いて、
トラックが踏み潰したり吹き飛ばしたりするのを面白がっていたのを思い出してた。

今のマミさんは空き缶なんだ。丸腰で動くこともできずにいる。
吹き飛ばされてきたマミさんに巻き込まれて私は地面に叩きつけられ、何度も転がって。
一緒に沈み込んでいく。空き缶といっしょだ。私も空き缶なんだ。

まどか「ごほっ、ごほっ、ごはっ……はうっあはははは」

口の中に大量の異物が入りこみ私は躊躇わず思い切りよく吐いた。
吐瀉物は真っ赤なマミさんの血に染まってた。

QB「マミ、無茶苦茶だよ。まどか、君だってこんなの見てられないだろう?」

続く使い魔の一撃で薙ぎ倒される。

まどか「もう、おわりだねまみさん、えへへへへ」

QB「ああ、なんてことだ」

狂った狂った狂った狂った狂った狂った狂った狂った狂った狂った
狂った狂った狂った狂った狂った狂った狂った狂った狂った狂った

まどか「――だめだよおおおおおおおおお!!」

意味もなく叫ぶ。爽快だった。
そして、もはや身動きもしないマミさんに最後の一撃が迫り、
私は血と嘔吐にまみれたぐちゃぐちゃな視界に、最期を見ていた。
見ているだけだった。

全部、”大爆発”するのを見ているだけだった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 02:33:32.68 ID:3qc98QwTo<> ――大爆発? 最高だよね!! 

そう、それを遠くから見ていた。
ただの一瞬で、魔法のように包囲を脱していた。


見上げる。

屹立する優美な姿、清冽に流れる艶のある黒髪。
ふわりと舞い上がり、黒衣に包まれた細長い足がくるりと回転し、


――すぐに終わらせるわ。


まどか「ほむ……らちゃん……」

マミ「な――」

マミ「――やめてよ!」


――まどか……!!


ほむらちゃんは強い嫌悪感を示す。私を見て痛々しげに眉を寄せ、
黙って目の前に手の平をかざした。私は意味もなくその手の平を凝視した。
なんでこんなことを? どうせ意味なんかないどうせ意味なんかないどうせ意味なんかない
どうせ意味なんかないどうせ意味なんかないどうせ意味なんかないどうせ意味なんかない
どうせ意味なんかない意味なん、か な い    の   に。 いみ な

――――――――あ。


まどか「……!? マミ、さん!? マミさんが!! 助けてほむらちゃん!!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 02:37:20.47 ID:3qc98QwTo<> 走ったのは怖気だった。さっきまでずっと、ずっと見ていたはずなのに、
何とも、感じなかった。重傷のマミさんを見て笑っていた自分がいた。

う……っ。
今度こそ本当に吐き気を催した。自分の身体を、精神を、乗っ取られたような気がして。
思わず後ろを振り返り、心臓を撫でた。今、わたしはわたしだろうか?

そのことが、血や傷なんかよりもずっとずっと恐ろしかった。
正常な感覚が戻って、マミさんに声をかける。

その記憶がしっかり残っていることが恐怖だった。

そして

ほむらちゃんの後ろ姿がこれほどに、これほどまでに、頼もしく見えたことはない。

ほむら「まだ勘違いしているようだけれど」

爆発する。

ほむら「あれは」

爆発する。

マミ「やめてえええ!!」

爆発する。

ほむら「魔法少女じゃなくて」

爆発する。

ほむら「魔女よ」

最大級の爆発が起こり、結界がビリビリと震えた。
業火が使い魔も魔女もまるごと焼き尽くしていた。

ほむら「殺さぬ限り、呪いを生み続ける、それが魔女。
そんなこと生前の彼女たちも望んでいたはずがない」

ほむらちゃんは極めて淡々とした声で言う。
マミさんは震えて涙を流していた。

ほむら「分かるわよね」

ほむら「死だけが、彼女たちに向けられる唯一の救いなのよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 02:42:41.05 ID:3qc98QwTo<> マミさんは横たわったまま、それでもほむらちゃんのことを睨みつけた。
ほむらちゃんは黙って見つめ返すのみだった。

結界が徐々に崩壊していく……と、同時に土砂降りの雨が戻ってきた。
マミさんは全身に刻みつけられた重傷を穿つ雨粒に痛々しく呻いた。

まどか「マミさんっ!! 死んじゃいやだよ!」

ほむら「――!」

足音が聞こえた。
揺らめきの中から、新たな人影が現れた。
ゆっくりと歩み寄り、水溜まりも意に介さず進んできた。

ほむら「――遅かったじゃないまどか!」

麦わら帽子に顔を隠したまどかさんだった。

マミ「なんでっ……!!」

マミ「あれは魔法少女なのに! 私たちとおんなじなのに! なんでこんな!」

マミさんは、強引に上体を起こす。
全身から流れ出る血が、真っ赤な水溜まりを作っていた。

まどかさんは歩み続ける。
独り言のように呟きを漏らしながら、

魔まどか「まだ、そんなことを。マミさんは」

魔まどか「いつまでも」

ばしゃり、と水溜まりに足を突っ込み、立ち止まり見下ろす。

マミ「そんなことですって! あなた……!」

一際大きな水しぶきが上がった。

魔まどか「マミさん」

突然、まどかさんがマミさんを押し倒したのだ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 02:47:36.60 ID:3qc98QwTo<> 馬乗りになり、肩を掴む。
マミさんは苦痛に声を上げることも出来ない。

まどか「ちょっと、まどかさんっ!」

魔まどか「この子の命が、私の世界なの」

魔まどか「何もかも、マミさんは全く分かってないんだよ。
全部、この子にかかってるの……だから絶対に、守らなくちゃいけない……のに」

魔まどか「ねえ、マミさん……もういい加減にしてよ。わけのわからないことに、
みんなを捲き込まないで。どうしてそうなの? まだ信じてくれないの。おかしいよ」

魔まどか「助けたいんだ、助けたいんだよ……それだけなのに……。
私はマミさんを助けたいだけなのに。それはウソじゃないんだよ……おねがいだから」

魔まどか「ねぇ、信じてよ!」

マミ「……」

マミさんはすでに意識を失っていた。
無理もない! こんなことをしている場合じゃない!
まどかさんはこの重傷のマミさんに、何も感じないっていうの!?

まどか「まどか、さん。ダメだよ! マミさんは今すぐ病院に……!!」

魔まどか「あなたは死ぬところだったんだよ。もしあなたが死んでたら……わたし……」

まどか「っ……!!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/01(月) 02:52:08.79 ID:3qc98QwTo<> これが私か!!
がっかりだよ!! こんな状態のマミさんを見て、何も感じないなんて!!

――さっきまでの私と同じじゃない!!

まどか「マミさんが!!」

まどか「こんな目に遭うくらいなら私が死ねばよかった!!」

一瞬だけ、そう言った瞬間、言わなきゃよかったと思った。
ぞっとするような殺気に私は総毛立つことになった。
だけど、私は見つめ返す。私は絶対に間違ってないから!!

魔まどか「あなたの、命は、あなた、だけの、ものじゃないの、わかるよね」

まどかさんは感情を押し殺したような声を漏らし、マミさんに治癒魔法を使い始めた。

魔まどか「ああ、どう、してなの……」

徐々に周りに人が集まってくる。
野次馬から悲鳴が上がるまで時間はかからなかった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/08/01(月) 02:56:49.74 ID:3qc98QwTo<> マミ「……」

まどか「……」

杏子「……お、おう」

さやか「あれだ……書いているうちに筆が乗ってきて気付いたら鬱度が必要以上に……」

まどか「次回はいいことあるよ、まどマミは健在だよ」

ほむら「でも次回は魔まどほむがねっとr」

マミ「おっとそこまでだ。おやすみなさい。まぁこれ以上鬱なシーンは今後ないと思うわよええたぶん」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/01(月) 07:52:58.99 ID:Mw9byFj3o<> お疲れ様でした <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)<>sage<>2011/08/01(月) 08:14:21.81 ID:Uc6h7vODo<> 乙っちまどまど! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/08/01(月) 11:02:24.17 ID:2QI9E6/Jo<> 乙まどまど


うわぁーい!痛々しさ150%だぁ!
……朝っぱらから読むのがきつかった(褒め言葉) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/01(月) 11:21:02.88 ID:P5UcfvAho<> まどか、君が死んだ程度で何かが救われるわけ無いでしょう。それは慈愛とかじゃなく典型的な思考放棄です。
マミさん、まどかを自殺という[田島「チ○コ破裂するっ!」]の道具にしないでください。見せられる方はドン引きです。
乙 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/01(月) 23:14:21.79 ID:hFITyEsDo<> このまどかは、魔女の口づけ受けても解けても、結局死にたいんだなw <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/04(木) 00:42:46.94 ID:GE0Dy7i40<> まどマミ・・・バンザーイ!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/06(土) 03:08:33.36 ID:q+akKmKh0<> 荵吶▲ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/08/13(土) 22:13:44.92 ID:PzGp6Vvb0<> まだかにゃ〜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2011/08/14(日) 21:35:37.05 ID:hw9CAiFQo<> 盆休み中には……。
ちと、キリのいいとこまで書いてから投下したい流行り病にかかりましてね <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/16(火) 20:19:31.35 ID:9S/JAhcE0<> 待ってるにゃ〜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>sage<>2011/08/24(水) 00:31:03.60 ID:thzKfQxlo<> ひと段落したんで投下します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 00:32:08.37 ID:thzKfQxlo<> 〜ほむら視点〜

凍てつく水の中を進むような、深夜の雨上がりの帰り道。
陰気にうな垂れている街灯が水溜まりの鏡面を照らし出す。
私はまどかに付き添い、彼女の自宅に辿り着いた。

まどか「……な、なんか、変」

ほむら「……大丈夫よ」

蒼天に浮かぶ月の下、大きな家には明かりが一切点いていなかった。
深夜だから当然……と言うことは出来ない。
こんな深夜に、娘が帰ってこないのに、眠ってしまう親などいない。

しかし、もはや雨はやんでいた。

まどか「ママ、パパ!?」

悪い想像が、全て連鎖しているのではないかという不安が、立ちこめた。
まどかは私の手を振りほどいて、ドアに走り寄る。鍵を取り出して差そうとするも、
震えるばかりで空回りする手が、ガチャガチャと長い時間を無駄にしていた。

ほむら「貸しなさい」

それを見かねた私は彼女の小さな手の中から鍵を奪い、しっかりと差しこんだ。
固唾を飲んでまどかは、私が扉を開けるのを待っている。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 00:33:46.04 ID:thzKfQxlo<> まどか「……どうしたの? 開けてよ、早く!」

切羽詰まった様子で詰め寄るまどか。
疲労の色の濃い顔に、深刻な不安が刻みこまれていた。
跡が残ってしまうのではないかと思うほど、その表情は強張り、小刻みに震えている。

ほむら「ひとつ、約束して」

明かりがついていない理由は。何も一つだけではないだろう。
娘を探して街の中を回っている可能性だってある。

ほむら「私よりも、前を歩かないって――」

何もかもが、結果的に良い方向に向かっていると、思っていた。
この時間軸で、このまま行けば。全てが成功するのではないか。
そう期待していたのだ。そう、ようやく、この連鎖から解放されるのではと。
そんな時間軸で。またしても。久しぶりに。見た。

血と肉を撒き散らす、冷え冷えとした蹂躙の光景が、目の奥に焼き付いて――

まどか「――いいよもう!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 00:35:33.05 ID:thzKfQxlo<> まどか「わかったから! はやく!」

ほむら「……ええ」

――また、全て崩れてしまうのでは。ないか

――いや、もう、崩れてしまったのだろうか

――何をいまさら。さっき、はっきりと見たでしょうに


まどか「ほむらちゃん!!」


――いや!

ほむら「――大丈夫」

言い、私は扉を開け放つ。

雨はもはや止んでいた。

ほむら「約束、分かってるわね?」

何よりもまず、まどかが突発的に室内に飛び込まないよう注意した。
まどかの顔を窺うと、焦燥感はありありと見えるものの、暴走する様子はなかった。

後ろから入ったまどかが扉を閉めてしまうと室内に闇が落ちた。奥行きが消失する。
取りだしたソウルジェムが強い紫に照らし出す、暗黒の室内。
光源は低い。無限に広がる天井が、光を飲みこむようにして、私たちを見下ろしていた。

ほむら「!」

玄関を入ってすぐ、廊下の上に、一枚の紙が置いてある。
かわいらしいクマのぬいぐるみを重しとして。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 00:37:05.80 ID:thzKfQxlo<> ほむら「これは……書き置き、みたいね……?」

まどか「――ほんと!?」

ほむら「ええ……まどかへ。これ読んだらすぐ私の携帯に電話入れろ……ですって」

まどか「よ、よかった……よかったぁ」

ほむら「ほら、ね、やっぱりあなたを探しに行っただけだったのよ」

そう言って、安堵して力を抜きかけた、その時。
足に衝撃が走り、私は体勢を崩した。

ほむら「――っ!?」

暗い室内、不意打ち。誰もいない部屋。
得体の知れない喚き声が、私の足元から響いていた。
ざわざわと這い寄るモノが心臓を鷲掴みにする。

まどか「――ひっ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 00:41:24.96 ID:thzKfQxlo<> させるか!

全ての要素が、またしても頭の中を駆け巡り、
もう間に合わないかと思いながらも、
反射的に銃口と光を向けた

その先、


タツヤ「……うぁ」


ほむら「……は?」

目が点になった。
床にへたり込んで震える幼い姿があった。

まどか「タ、タツヤ!?」

ほむら「え」

私の脇を抜けて彼を抱き上げるまどか。
私はまだ銃を構えたまま固まっていた。。

タツヤ「う……うぁぁぁぁ……!」

得体の知れない喚き声が、私の足元から響いていた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 00:43:34.37 ID:thzKfQxlo<> *

パチリ、とボタンを一つ押すだけで、世界に光が満ちた。

まどか「ほらぁ、もう泣かないの」

タツヤ「あぁっ――!!」

ほむら「ごめんなさいったら……」

まどか「ママとパパがどこ行ったかわかる?」

タツヤ「あぁっ――!!」

突然足に走った衝撃は、一人の幼い男の子の精いっぱいの勇気だったらしい。
――が、そんな彼も、今は泣き叫ぶばかりで埒が明かない。

ほむら「電話しましょう」

まどか「そうだね……」

まどかは携帯電話を取り出す。
母親の電話番号にかける。

まどか「あ、もしもし? まどかだけど……」

疲れてて、叱られるかもしれないってことは忘れているのかし――。

まどか「わっ!?」

電話がつながったらしい。が少し様子がおかしい。

知久『まどか!! 今どこいるんだい!? あんな言い方ってないだろう!』 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 00:47:51.54 ID:thzKfQxlo<> それはただの叱声ではなかった。
スピーカーモードではないのに、声ははっきりと私にも聞こえてきた。

まどかの父、知久の、聞いたこともないような怒声だった。
私は思わず眉を寄せ、まどかは怯える以前にただ仰天していた。
戸惑いつつ、おどおどと返す。

まどか「い、家に着いたとこ、だよ」

知久『なんであんなことを!……ママがどんな思いで!……ママ』

電話口の奥でくぐもった声が聞こえ、知久の言葉が一度途切れる。
まどかは受話器を、熱々の水筒でも持っているかのように、抱えていた。
そして、改めて一言。

知久『僕たちも今すぐ帰るから、絶対に動かないように!』

嵐のように電話は切れ、困惑に困惑を重ねたまどかの揺れる瞳が、私に向けられる。

私は……。

ほむら「……あぁ」

なんとなく、事態が読めた気がして、そして自分のことのように気が暗くなった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 00:49:47.88 ID:thzKfQxlo<> *

少し時を遡る。

詢子「まどか!! 無事か!?」

病院の廊下に忍び寄っていた夜の静寂が、切羽詰まった叫びに蹴散らされ、
フロアに緊張が走り抜けた。病室の前のベンチに腰かけていた少女は、顔を上げた。

魔まどか「――あ」

しまった、という風にその表情が固まる。
ランプに照らされた頬は赤く染まり、茫然として見上げていた。

詢子「しっかりしろ! アタシが分かるか!?」

母はその理由を誤解した。
肩を掴んで前後に揺すって声をかける。

魔まどか「――え、あ、何ともないよ。だいじょぶ。大丈夫」

それに対する返答は、違和感を覚えるほどに平坦だった。
まるで、道ですれ違っただけの他人に突然声をかけられて驚いているかのような。

知久「通り魔に遭ったって……!?」

2人は携帯に警察からかかってきた電話を受け、即座に病院に駆けつけたのだった。
想定できた事態に対応できなかったことにまどかは戸惑ったが、
それは顔には出さなかった。

――どうやって逃げようか。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 00:52:39.75 ID:thzKfQxlo<> 魔まどか「大丈夫だよ」

詢子「何ともねえ……んだな。アタシのこともちゃんと分かるな?」

――ちがう、あなたたちが心配しなくちゃいけないのは私じゃない。

魔まどか「うん、大丈夫。ママのこと忘れるわけないじゃない」

――。

この状況でなぜ、笑うことが出来る?

詢子「……」

安心した、という表情ではなかった。
目線が鋭利になり、目の前にいる、娘の形をした、何者かを見極めにかかる。

魔まどか「私の顔に何かついてる?」

――家に帰って。あの子のそばにいてあげて。

詢子「……」

交差する視線。
一方は見上げる視線、他方は見下ろす視線。

見上げる視線が、ふっと、笑みを浮かべた。

魔まどか「ほんとに……鋭いねママは……そうだよ」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 00:53:51.52 ID:thzKfQxlo<> ――ちょっぴり、嬉しいような。

魔まどか「私はね、ママの知ってる……まどかじゃないんだ」

詢子「ふぅん……」

――すっごく、悲しいような。

詢子「ああ、確かに私の知らないまどか、が……いた、みたいだねえ」

詢子「悪い子、悪い子……っ!」

パチン!

平手が炸裂し、乾いた音が廊下に反響した。
痛くも痒くもない一撃だった。

――嬉しいな。ママが、私を見てる。ママが、私を叱ってくれる。嬉しい。嬉しい。

詢子「どうして何も相談してくれねぇんだよ……毎晩毎晩……!」

――ありがとう、ママ。ありがとう、ママ。

詢子「言ってみろよ……1人で抱えこんでんじゃねえ! 夜遊び、挙句の果てに……
通り魔だって? アタシだってな、伊達にあんたの母親やってねえんだぞ……!」

――本当に、ありがとう。

知久「ママ…!」

――そして、ごめんなさい。

詢子「ちょっと黙ってて……」

知久「はぁ……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 00:55:20.42 ID:thzKfQxlo<> 娘は、俯いていた。ひっぱたかれて、そのままだった。
麦わら帽子が斜めに影を落とし、表情を隠していた。
そういえば、見覚えのない帽子だった。

魔まどか「……」

母は目を閉じ一息ついて、前髪を払って言う。
目の前にいる娘、に語りかける。

詢子「悪いな、まどか」

詢子「悪かったよ、謝る。だから、顔上げてくんねえかな……」

それは本当に娘だったのか。本当に母だったのか。
ただ、そっと伸ばしかけた手が、娘に触れることだけは、なかった。

魔まどか「――こっちこそ、ごめんね。でもやっぱり」

顔は上がり、その言葉を、ただの事実でしかないと言うように。
まるで神様のような、完璧に無感情な微笑みが向けられるなか。

――私は


魔まどか「――私はあなたの娘じゃないの」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 01:01:19.63 ID:thzKfQxlo<> 詢子「!!」

見開かれる目に、最後の娘の顔が映りこんだ。
飛び出していく。手は離れ、遠ざかっていく。

――私はあなたの娘じゃないの

知久「まどか!! ……詢子」

追おうとした父は、しかしふと気付いて足を止めた。

詢子「――ぅ」

手は虚空を掴み、膝が、がくりと折れる。

――ごめんなさい、ママ。

詢子「――ぁ」

声がへし折れ、自他共に認める最強の母親が、崩れ落ちた。

私は――…… <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 01:05:15.59 ID:thzKfQxlo<>
――ほむらちゃん! ほむらちゃん! ほむらちゃ――

――ごめんね、まどか

――こうするしかないの


――これがハッピーエンド……

――ほむらちゃん! ほむらちゃ――

――ほむらちゃん!

――こんなの


こんなのってないよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 01:07:16.79 ID:thzKfQxlo<> 翌日

無音。
エレベーターは静かに高速で、垂直に上昇していく。
ここは、見滝原でもっとも天国に近い建物である。
桃色の髪の少女は一人、移り変わっていく階数表示に目をやっていた。
いまだ天上は遠い。



天の羽衣のように無重力に浮き上がり、その膨らみを弾けさせる。
風が止むと、何事もなかったかのように、元に戻る。

マミ「そんなの、私が勝手にしたことだもの」

マミ「あなたは何も悪くないのよ」

まどか「ね、マミさん……もう二度とあんなことしないって、約束してください」

穏やかでない眼差しが突き刺さる。
対するマミの顔には儚げな笑みが浮かぶのみで、両者には温度差があった。
数秒の間。そして

マミ「……というよりもね」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 01:10:24.12 ID:thzKfQxlo<> マミ「もう私のそばに来ない方がいいわ」

マミ「私じゃ、いざっていう時にあなたのこと、守ってあげられないもの」

いま、桃色の足音はエレベーターを降り、廊下を歩み始めた。
重く踏みしめるように、斜陽の落とす影を深めながら。

まどか「そんな! 私、マミさんを一人にできないよ!」

マミ「だめよ、言ってたでしょう、もう一人のあなたが」

マミはまどかの目を見ない。

マミ「絶対に、守りきらなくちゃ、あなたを」

黙りこむ。
マミが顔を上げると、後輩は花がしおれたようにうつむいていた。
うつむいて、ぷるぷると震えたあと、

まどか「なんで、なんで私なんですか……」

先までとは打って変わって、弱弱しく声を落とした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 01:12:42.44 ID:thzKfQxlo<> まどか「私なんか守っても、まったく何の役にも立たないのに」

マミ「そんなこと……」

ようやく椅子に座りこんだまどかは、小さくなって見えた。
空気が抜けて沈み込んでいく。

まどか「本当に、違うんですよ」

影が声を紡ぐ。

まどか「私とあの子は、同じなのは見た目だけ……本当はあの子の足元にも
及ばないんです。私だってこんなの情けないし、嫌で、嫌で仕方ないけど、
でも、こればっかりは、どうしようもないんです」

マミ「鹿目さん……」

まどか「でもね、もし、もしも魔法少女になれたなら、魔法少女になった私が戦って」

僅かに差し込んだ希望が顔を持ち上げ、そのか弱い手を握りこむ。
マミはそれを黙って見つめていた。

まどか「マミさんのことだって私の手で、守ってあげられるかもって思って……」

マミ「……」

まどか「……」

しかし、直後に降りた沈黙は、あまりにも深かった。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 01:15:35.57 ID:thzKfQxlo<> まどか「私は」

まどか「私はもう限界です……誰ひとり、マミさんのことを守ってくれない。
私が魔法少女だったら、昨日だってあんなことにはさせなかったのに」

まどか「もう誰かに守られてるだけなのは嫌です。もう、我慢、できないんですよ……」

――コンコン

扉がノックされる、音がした。
ピンと張った弦が指で弾かれ、空気が震えた。

マミ「ど、どうぞ!」

スライド式のドアが動くと、もう一人が姿を現した。

マミ「まどかさん」

もう一人のまどかは、なぜか立ち止まったままだった。
まどかがいることを認め、そこに少しきつくなった瞳を向けた。

魔まどか「来てたんだ」

まどか「うん」

返したまどかにも笑顔はなかった。
カチャ、とまどかがケーキの皿を置く。
マミはその音にぴくりと肩を動かし、2人を交互に見た。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 01:17:25.46 ID:thzKfQxlo<> マミ「ケ、ケーキ食べる?」

魔まどか「いいよ、それはマミさんのでしょ」

マミ「え、ええ」

ドアの前で突っ立っているまどかと、マミの前に進み出るまどか。
沈黙がまたしても降り、風だけが暴れていた。

マミ「あの! 昨日は、悪かったわ」

魔まどか「別に気にしてないですよ」

マミ「そう……でもやっぱり迷惑かけちゃったかなって思ってね……」

沈黙は消えない。

マミ「えっと……」

まどか「……」

魔まどか「……」

沈黙は消えない。


――……さやかの剣が煌めき、ほむらは姿勢を低くする

――……使い魔の先頭が切り裂かれ、さらにその剣尖は鋭く切り込まれていく
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 01:20:51.64 ID:thzKfQxlo<> まどか「何をしに来たの?」

まどかは鞄を置くと立ち上がり、窓枠に腰かけて入口に佇むもう一人に相対した。
2人が睨みあっているように見えたマミは何とも居心地が悪かったのだが、その認識は
微妙に間違っていた。

魔まどか「マ、マミさんのお見舞いだけど」

困惑した様子のもう一人は、まどかの発する圧力のために部屋に入れないのだった。
険悪な態度を取っているのは片方だけだったのだ。


――……ほむらは爆撃の準備をする。止まった時の中を先行し、

――……前方に群がる使い魔を一掃するべく、大量の爆弾を設置。


――……直後、大規模に爆ぜた。


まどか「……きのうは」

まどか「きのうは来てくれなかったのにね」

魔まどか「それは」


――……爆発と同時にほむらの脇を抜け、爆風の中、真っ先にさやかが先陣を切る。

――……それを追って守るように杏子が飛び込む。


マミ「あ、あなたたちは二人もいて不公平よね」

マミ「暁美さんだって一人なのに」

まどか「……」

魔まどか「……」

スライド式のドアが自動で動き始め、ぴしゃっと閉じた。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 01:22:45.00 ID:thzKfQxlo<> もう風も黙っている。再三の沈黙が襲いかかり、まどかは顔を隠し窓枠に腰かけていて、
まどかはそれを怪訝な顔で見つめていて、マミはもう布団に顔を半分方隠していた。
口を開けるのはもはや一人だけだった。

まどか「だから」

まどか「別人ですよ。私はこんなに立派な人じゃないし、いても意味ないですし」

魔まどか「や、やめてよ」

魔まどか「おんなじだよ、私たち」

魔まどか「自分を……粗末に、しないで……」

か細い声が、逆転した関係に流されながら、そのまま流れていった。
もはや、威圧してきている。相手は、守るべき情けない自分ではなかった。

まどか「それに、私はマミさんを見捨てたりしないし……」

さりげなく突き刺さる。目を見開く。

魔まどか「ど、どういう意味……?」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 01:26:14.47 ID:thzKfQxlo<> まどか「本当にお姉ちゃんみたいに思ってたの」

シュル、と衣擦れの音がする。まどかは窓枠から滑り降り、靴底が床を撫でた。
澄んだ瞳が鏡映しの自分を正視する。

まどか「大丈夫って、言ってくれたときは、本当に嬉しかったよ」

まどか「信じてたのに、嬉しかったのに」

まどか「ウソつき、だ」

魔まどか「……っ」

まどか「変わっちゃうんだね。私……どうしちゃったの? いったい何があったの?」

まどか「見捨てちゃうの? マミさんも、みんなも?
もしかして、またやり直せばいいや、なんて思ってないよね」

マミ「鹿目さん!」

しかしまどかはまどかに詰め寄られても、下がることはなかった。
一瞬だけ目を閉じると、それを開く。

魔まどか「マミさん」

マミ「は、はい」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 01:29:11.11 ID:thzKfQxlo<> そして歩く。
もう一人の自分には目もくれずに抜ける。
目の前の電柱を避けるように、ビラ配りを無視していくように、抜ける。
無視されたまどかの手が、固く拳を握りこむ。

魔まどか「マミさん、もう戦えますか」

マミ「えっ」

唐突な問いにマミはうろたえた。それはまったく無茶な問いに聞こえた。
しかしまどかの瞳は揺るがない。ただ聞いているだけだ。
まだ無視された状態で立ち尽くしていたまどかは、その一言でぱっと振り返り、

まどか「まだダメに決まってるでしょ! 昨日の今日で」

予想以上にひどいもう一人の自分の態度に、怒りの感情を目覚めさせていた。
しかし言われた方は疲れたようにため息をつくと、簡単に答えた。

魔まどか「もうケガは治ってるはずだよ」

魔まどか「マミさんは魔法少女なんだから」

マミさんは魔法少女なんだから

マミ「……ええ」

まどか「マミさん!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 01:31:27.77 ID:thzKfQxlo<> 2人のまどかがベッドに近づいた。

魔まどか「みんな待ってますよ。マミさん」

マミ「私……」

魔まどか「気持ちは分かります。でもいつまでも立ち止まってられない」

魔まどか「本当にもう時間がないの」

魔まどか「お願いだから戦ってください、でないと」

魔まどか「マミさんの大切なもの全部、なくなっちゃうんですよ」

マミ「!」

布団を掴んでいた手が離れ、小さく開いた唇が現れた。
戦わなければ、戦わなければ。

まどか「それって何だかほむらちゃんみたいだね」

まったく好意的でない視線、返答は求められてもいない。
嫌な沈黙が降りかけた時、やはりまどかは顔を見ない。

魔まどか「ねえ、どういう意味なの」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>saga<>2011/08/24(水) 01:37:31.13 ID:thzKfQxlo<> まどか「悪口言ったわけじゃないよ」

魔まどか「……」

魔まどか「マミさん? どうですか?」

マミ「わた、しは」

たっぷり猶予を与えられてなお、マミは答えに詰まった。
答えは最初から決まっていた。だが怖い。だがもっと怖いことは。

マミ「ごめんなさい、まだムリ……魔女を殺すなんて、とてもできない」

魔まどか「……」

マミ「ごめんなさい」

魔まどか「マミさん、私にはね、ひとつ夢があるの」

魔まどか「でも多分叶わないんだ。というのは時間が足りなかったの」

魔まどか「だから、マミさんにこの夢を託したいの」

まどかは、麦わら帽子をかぶりなおすと椅子に座り込む。
もう一人の自分は睨みつけてきていて、先輩は戸惑った顔しかしてくれない。
帽子の下に自嘲的な笑みが浮かぶ。ああ、私この世界の人間じゃないんだっけ。

マミ「それはどんな夢なの?」

だけど、せめて。

魔まどか「全ての魔法少女を救う夢です」

お願いだから。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2011/08/24(水) 01:40:02.30 ID:thzKfQxlo<> マミ「今日はここまで!」

さやか「遅すぎでしょうよ」

魔まどか「ここが見滝原だったらお前もう死んでいるぞ」

まどか「どうも忙しくなってるみたい」

ほむら「次回はほむまどね」

マミ「いえ、まどほむよ」

QB「素敵やん」

マミ「おやすみフィナーレてぃろてぃろ」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/08/24(水) 01:41:18.69 ID:0fYvR18ro<> >QB「素敵やん」

タイムリーすぎてワロタ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)<>sage<>2011/08/24(水) 01:42:25.70 ID:0RIqu/JLo<> 乙っちまどまど!
まどかから見れば自分の世界を二人にどんどん壊されていってるからな
そんな人にいろいろ言われても……ねぇ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/08/24(水) 01:45:00.95 ID:31nAf0vJo<> 乙乙


分かり合うにはまだまだ時間と折衝が必要みたいやね
プルプルプルプルゥ〜♪の夜まで時間も無い、頑張れ麦わら屋! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/08/24(水) 03:24:11.79 ID:jFvUUR6DO<> 更新乙カレー空間 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)<><>2011/08/24(水) 03:25:45.34 ID:V6NIPfXg0<> 乙!
暗い!この世界暗すぎる!
誰も救われない気がするww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>saga<>2011/09/01(木) 01:00:31.58 ID:A5Zl5Vp5o<> ふぇぇ、新ローカルルール怖いよぉ……保守投下

――

手はだらりと下がったままだった。
世界の頂点に立つ少女に、膨れすぎた気球の魔女が迫った。
不意に嬌声が上がり気球が爆発、爆炎を撃ち出して少女を消し墨に

――ほむらちゃん、ずっと一緒にいてくれるって言ってたのに

手にした杖を中心に展開している魔法陣が炎を吹き散らした。
孤高の少女が閉じた瞳を片方、開く。

魔まどか「ねえ、あなたはどう思う?」

下を向く目線。言葉。
それは倒すべき怪物に向ける言葉ではない。
打ちひしがれた一人の少女が、自分の飼い犬に同情を求める姿にこそ近い。

魔まどか「ひとりぼっちで、見捨てられて、誰にも救われない」

魔まどか「そんなの私は、悲しいよ」

しかし、倒さなければいけない仲間だった。
涙の雫が地に落ちる前に決着はついていた。

魔まどか「うそつきうそつき」

静寂の中、結界が崩れるまでの僅かな時間、ここは彼女のためだけの世界となった。

魔まどか「なによ……なんだっていうの」

そして世界に亀裂が走り、広がり、崩壊していく。

パキ         パキ     パキ  パキ パキパキ

魔まどか「もういやだ」
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/01(木) 01:02:26.60 ID:A5Zl5Vp5o<> ああ、名前欄ミスった 千葉県さんそんないないしこれでいいよね
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> 1<>sage<>2011/09/01(木) 01:04:48.19 ID:A5Zl5Vp5o<> あぁ 環境変わったせいか 千葉県って出ない 
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/01(木) 02:34:57.74 ID:hYMXZkF8P<> ん…ほむらは?オイ、ほむらはどうした?
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/05(月) 09:41:00.66 ID:N0KOlZthP<> この板でも保守書き込みが付く時代くるのか
待ってるよ <> なすーん<>なすーん<>なすーん<>                      __        、]l./⌒ヽ、 `ヽ、     ,r'7'"´Z__
                      `ヽ `ヽ、-v‐'`ヾミ| |/三ミヽ   `iーr=<    ─フ
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                             |          | | <> 1<>saga<>2011/09/26(月) 02:48:45.69 ID:u0AdwVrWo<> ファミレス

〜ほむら視点〜

弾かれたように動いた2本のフォーク。
目標は丸皿にたったひとつ残されたサイコロステーキ。
ステーキにフォークが食い込む。そしてそれを持ち去ろうとする。
直後、金属音が響き、他方のフォークが突き刺さる。
戦況は再び不透明になる。そして、

二人の少女、さやかと杏子が睨みあっている。

この光景をぼんやりと眺めていたのだが、なんだか魂を抜かれそうな心地がした。
もう抜かれているのだけれど。手に余るグラスをテーブルに置くと同時に、
自然と深いため息が漏れるのだった。

帰りたい。

ほむら「はあ……」

今回のループ、私の中でようやく新鮮な芽が露をたたえて萌え始めたところだった。
それを突如、ショベルカーかなにかで地盤ごと耕されてしまった様な、
目も当てられない荒涼とした心象風景だった。

やがてステーキはさやかの口の中に収まり。

杏子「……」

杏子はもぐもぐと動くさやかの口を茫然と見つめていた。
やがて、さやかの指がぴっと私を指さす。 <> 1<>saga<>2011/09/26(月) 02:51:08.25 ID:u0AdwVrWo<> 杏子「ん、なーに、辛気臭い顔してんのさ」

案外あっさりとした様子で、杏子は私に向き直る。
さやかにじとっとした目を向けてから、だが。

さやか「本当にどんよりした顔してるよね」

それは生まれつきだろう。放っておいてほしかった。
本当の話、部屋の隅っこで体育座りして壁とおしゃべりしたい気分だった。

息を吐く。
さやかと杏子は仲良くこちらを覗きこんできている。何も言わないわけにもいかない。

ほむら「それ、よく言われるわ」

口の中を空にしたさやかは私の皿から勝手にピザを取りつつ、少し眉をひそめた。

さやか「マミさんのことはあたしもショックだったけどさ、今じゃもうピンピンしてたじゃない」

杏子「そうそう、それに」

さらに杏子も背もたれから身を乗り出して同調した。ひょいっとピザをつまむ指。

杏子「あんたはあたしらの指揮官だろ? しっかりしてもらわなきゃ困るぜ」

その声には非難というほどの強さはないけれど、杏子は少し憂鬱そうな表情で、
ピザをまずそうに噛んでいる。

杏子は巴マミのことを心配していないのかしら、という疑問がふと頭に浮かんだ。
そういう私もまだお見舞いに行っていないのだけどね。

杏子「なー、聞いてる? しっかりしてくれって言ってるんだよ?」

ひらひらと私の目の前で杏子が手を振る。
私はそれをどかしながらグラスを掴みとった。 <> 1<>saga<>2011/09/26(月) 02:53:47.57 ID:u0AdwVrWo<> さて面倒なことになった。
今までの会話から察するに、この二人はまどかより私のほうを信頼しているみたい。
まぁ、あの子もいろいろと穏便じゃなかったものね。無理もないかもしれない。
そういうわけで最も信頼できる情報源は、私ということになったようだ。
それは、まぁ理解した。のだけれど。結論から言うと。

それは無理。

私はピザの皿を2人の方に押しやった。
まったく食欲がない。ていうか、誰よこんなものを頼んだのは。
こってりとした厚いチーズの匂い、いや臭いが、鼻に不快だった。

ほむら「私が指揮官? やめてちょうだい」

ほむら「私はまどか以外眼中になかった」

何度も無為なループを繰り返し、強くなったと勘違いして、思いあがって。
今まで、何回殺してきたんだろう。それを覚えてすらいない。

ほむら「今まで数えきれないほどあなたたちを使い捨ててきたっていうのに
いまさら虫が良すぎるでしょう」

それでも、ひょっとしたらもう許されているんじゃないかと思ったんだ。
しかし、それこそが、勘違い。
あのとき結界に飛び込んだ瞬間、はっきりと聞こえた。
重体で横たわる巴マミの姿を認めた瞬間、はっきりと聞こえた。

「逃げられないよ」

って。 <> 1<>saga<>2011/09/26(月) 02:56:54.87 ID:u0AdwVrWo<> さやかが口に水を含む。ごきゅ、と喉が鳴る。
杏子がピザを噛みしめる。カリカリという音が止まらない。

さて、私は誰に向かって言い訳しているのかしら。
私はグラスを戻して、口を開く。

ほむら「まどかを救う邪魔になるとき、さやかを躊躇わずに殺そうとしたし、
まどかと杏子の命を天秤にかけたときは半秒も迷わなかったのよ」

だけど口はスラスラと動いた。
脳内に直接刻まれた原稿を読み上げているかのようだ。

ほむら「この時間軸だってそうなの。ワルプルギスの夜にあなたたちが
皆殺しにされたとしても、私はまた、何食わぬ顔であの教室に紛れ込むのよ」

唐突に、さやかがテーブルにグラスを下ろした。
私の口に戸を立てるように。

一瞬。

さやか「――あんたがそこまでまどかに入れ込む理由は?」

さやかの目はまっすぐに私を射抜いた。そこには私が"期待"したような非難や怒りは
まったく無く、全然違う、もっと純粋なものが照射されていた。
それは気に食わなかった。しかもまた、その質問が核心を鋭く突いている。

ほむら「……ある、約束を果たすためよ」

これ以上は、余計な事まで思い出しかねないので、簡潔に済ましておく。 <> 1<>saga<>2011/09/26(月) 02:58:43.06 ID:u0AdwVrWo<> さやかは納得した様子ではなかったが、それ以上追及しなかった。
私はわずか安堵して、息を調える。油断も隙もあったもんじゃない。

さやかが私を指揮官に立てようとしているのは明白だった。とんでもないことに。
無理だ。私の行き先にはいつだって死が待っている。私以外の人の死が。
お願いだから、わかって、さやか。

これ以上余計なことを言われる前に、ここで宣言しておかなくてはいけない。
私はダメ押しに走る。

ほむら「私のしたことが正当化されるわけじゃないの。もう後戻りできないの。
はっきり言っておくけど、もしまたワルプルギスに勝てなかったら、そのとき私は」

躊躇はした。しかし一瞬のこと。
後戻りなど出来ないのだから迷いはない。

ほむら「すぐに、即座に、この世界を切り捨てるわよ」

言ってやった。言ってやった。だから無理だと言っているのだ。
二人は裏切られるだろう。未来から来た救世主などいない。絶望を伝える死神だけだ。
それが分かったら、もう誰にも頼らないようにするほかない。誰にも。まどかにも。
ましてや、私なんかを頼れるはずもない。

杏子「は」

そう思ったのに。 <> 1<>saga<>2011/09/26(月) 03:01:56.63 ID:u0AdwVrWo<> 杏子「好きにしろよ。変な気を遣ってんじゃねえ」

ぴし、と確かに空気がひび割れた。

最高につまらない演説を聞かされたような顔で、杏子は私を見た。
杏子の怒りを感じる。でもそれは私が期待している怒りとは違う。

杏子「アンタが、何度も同じ時間を繰り返してるってんなら、
あたしにこういうこと言われたのも、初めてじゃないよね?」

ほむら「……」

言葉が耳に痛かった。
封印したはずの記憶で頭が内側から破れてしまいそうだ。

どうしてわからないの。

さやかは見ようによっては投げやりな様子で、

さやか「いいじゃないのよ、自分勝手で。あんたの大事なまどかを守り通せばさ」

さやか「どうせあたしは残機ゼロ、リセット不可の人生ですよーだ」

でも、とさやかは言葉を切る。
鋭い眼光を避けるように私は、さやかの首のあたりに視線をぼんやり下ろした。
なにか、聞いてはいけない言葉が、さやかの口から発せられようとしている。

そう思った瞬間、すでに私の耳に吸いこまれていた。避けようもなかった。

さやか「舐めるなよ。あたしたちだって、守りたいものくらいあるのよ。
なにかを守りたいと思ってるのは、あんただけじゃないんだよ。 ねえ、ほむら」

さやか「――あたしたちにも、守らせなさい」 <> 1<>saga<>2011/09/26(月) 03:04:32.82 ID:u0AdwVrWo<> 強い言葉が突き刺さったが、なんともない。
私にはその意味もよくわからなかったが、なんともない。
両目の間に指を突き付けられたような、実感のない痛みがあった。

でも、なんともないんだ。

ほむら「おかしい、そう、そんなのはおかしいのよ」

そんなの違う。だって守ってきたのは私だ。そして守れなかったのも私だ。
そう断言できる。だからなんともない。

なのに、なぜ私は今こんなに、さやかの言葉に震えているのだろう。
気持ちの悪い痛みは、引かないのだろう。
めまいがして、思わず顔に手をやってしまうのだろう。

ほむら「ねぇ、おかしいでしょ……おかしいって言って」

こんな会話は初めてだ。私がみんなを守る。誰かに守られるなんて……、ない、はず。
こんな会話は……、いや、そもそも。

本当の意味でこの二人と会話をしたことなど、今まであったのか。

ほむら「おかしいって言って」

わからない。わからない私を二人は見つめていた。
杏子が言葉を継ぐ。

杏子「――おかしくないよ。 おかしいのは、あんただ」 <> 1<>saga<>2011/09/26(月) 03:05:52.77 ID:u0AdwVrWo<> 杏子「だいたい、あたしたちをもっと頼れってことさ」

杏子「まどかぁまどかぁまどかぁって、お熱いのはもうわかったよ、もうさ。
次はちょーっとよく周り見てみなよ。少なくとも、今ここにいるあたしは
あんたの友達のつもりなんだけどなぁ」

さやか「おっと、あたしも忘れてもらっちゃ困るね」

さやか「せっかくこの魔法少女さやかちゃんがあんたの味方になったげた世界だしさ、
大事にしなさいよ!」

まったく私には眩しすぎた。目がくらんで顔を背けてしまう。
友達、味方。遠い夢の世界の素敵な単語。だめだ。これはいけない。

ほむら「だめよ、やめて……」

私は冷静だからロクな結果にならないことが分かるんだ。
だから今までそういうのは避けてきた。
でもここまで言われてしまった今、私が冷静な人かどうかはかなり怪しかった。

なんでだろう。

ほむら「大嫌いなのよ……こんなこと言って期待させる所とかね、最低最悪よ。
また騙すんでしょう。騙すのなら、今度は最後まで完璧に騙しきってちょうだい」

ほむら「――ワルプルギスの夜が、明けるまで」

騙されるのって、なんてこう、素晴らしいんだろう。 <> 1<>saga<>2011/09/26(月) 03:14:45.26 ID:u0AdwVrWo<> ――ほむら帰宅後

杏子「あれ、どう思う」

さやか「いや……あたしはまどかさんのこと信じたいんだけどね……命の恩人だし……
ただなんだかね……嫌な予感がする」

杏子「尾ける?」

さやか「よしなよ。様子を見よう」

杏子「……そんな暇があればいいけどねぇ」 <> 1<>sagesaga<>2011/09/26(月) 03:18:32.41 ID:u0AdwVrWo<> マミ「お久しぶりですね! でも今日はもう終わりです」

まどか「お久しぶりです! 次会えるのはいつなんだろう!」

さやか「お久しぶりですけど書くペース落ちてますすいません!」

ほむら「お久しぶりですけど……ええと、お久しぶりです」

QB「ぶりぶりうるさいよ」

杏子「次回は今度こそほむまど!」

マミ「いや、どう見ても、まどほむ、以上でした」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/26(月) 03:21:25.30 ID:uBxL0HtPo<> このぶりぶりざえもんめ
乙彼料いちおくまんえん <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/09/26(月) 06:49:27.63 ID:L63Mb0vfo<> お疲れ様でした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)<>sage<>2011/09/27(火) 14:21:09.06 ID:TrQ+jjuc0<> 乙ー <> 1<>saga<>2011/09/28(水) 04:57:12.68 ID:ejhg5rBL0<> 再開します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸)<>sage<>2011/09/28(水) 08:20:21.27 ID:GLG+qFsAO<> しょうもな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/09/28(水) 09:23:20.45 ID:XEWa4iCDO<> ・・・NEO値か <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)<>sage<>2011/09/30(金) 21:54:48.86 ID:SWWyRH1Vo<> こんなのってないよ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2011/10/13(木) 08:42:34.38 ID:GbL9M20G0<> まだかにゃ〜 <> 1<>sage<>2011/10/15(土) 01:21:52.97 ID:GRI0NU9Q0<> ちょっとまだ晒せる状況じゃないです……生きてはいます <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/15(土) 01:25:05.18 ID:6H5ezFQTP<> まどマミがあるならいつまでも待ち続けますよ
ごゆっくり <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2011/10/15(土) 19:13:04.04 ID:Arl3BVTl0<> 待ってるにゃ〜 <> 由美亜<><>2011/10/18(火) 22:30:04.59 ID:5dTBQCIB0<> 待ってます!!! <> 1<>sage<>2011/10/22(土) 04:10:05.93 ID:7wvGxWD0o<> 再開します 眠いから1レス20行 <> 1<>saga<>2011/10/22(土) 04:10:35.49 ID:7wvGxWD0o<> ビル屋上

QB(未来)「やあ、僕に何か用かい?」

QB(未来)「僕の手助けが必要な二人でもないだろう? いまさら何か相談したいことでも?」

杏子「ああ、まあね。ちょっとお話しようか?」

QB(未来)「ソウルジェムを突き付けるのはよしてくれよ」

杏子「……」

QB(未来)「……で、鹿目まどかのことだよね?」

QB(未来)「彼女のことなら前に説明したと思うんだけどな」

さやか「どうして、二人いるのか、教えてもらいにきたの。
まどかさんがほむらとは違う理由を、まどかだけが二人いる理由を」

杏子「説明してもらおうか」

QB(未来)「僕に聞かなくても」

QB(未来)「本人に聞いてみたらいいじゃないか。それとも、なにか聞けない理由でも?」

さやか「……」

QB(未来)「正直、君たちがそこに気付くとは思ってなかったよ」

QB(未来)「知っているかい? ここ最近、局地的に魔女の魔力が
跳ねあがっている。鹿目まどかがこの世界にやってきてから、ずっとだ」

杏子「……? そうだとして、それが今、何か関係あるのか?」 <> 1<>saga<>2011/10/22(土) 04:13:07.18 ID:7wvGxWD0o<> QB(未来)「分からないかなあ」

QB(未来)「鹿目まどかの特異性を見抜いた君たちなら、分かるはずだよ」

QB(未来)「彼女が特別なところは、まず圧倒的な魔力係数値と成長速度、
さらに異常に鋭敏な、魔力感知能力。そして何より、彼女の持つ二重性――」

QB(未来)「そういう、魔法少女の領域から逸脱しているところにこそ、あるんだよ」

杏子「……」

QB(未来)「端的に言おうか――」

QB(未来)「もはや彼女は、魔法少女じゃない。そう、言うなれば、もはや半分――」

さやか「――魔女?」

―――……

――……

――違う!

――私が、私があなたを――

――ありがとう、ほむらちゃん

――でも、もう私はいいんだ

――全てあの子に託そうと思うんだ

――だから、あの子をどうか……

――あの子は関係ない! あの子は――

――大丈夫、信じて、大丈夫


大丈夫だよ <> 1<>saga<>2011/10/22(土) 04:14:58.68 ID:7wvGxWD0o<> 〜ほむら視点〜

ほむら「ごめんなさい。今日も無理やり誘われたの」

魔まどか「そう」

帰宅すると、私はそう報告した。まどかはそれを承認した。
まどかの口元が震えているのを見て取って、私は顔を背けた。

まどかの様子はもうはっきりと、おかしい。
うさぎのように真っ赤に充血した目をしていて、今もまだ鼻声だ。

振り子時計が巨大な影を下ろしながら私たちの前を過ぎる。
部屋中に散りばめたワルプルギスの夜の資料が、私たちを見下ろしている。

二日連続でまどかを放って勝手に外食。しかも今日こそは帰ると言ったのに。

まどかはうなだれ、私は何か声をかけなくてはいけないんだろうな、と思った。
しかし声をかけたところでなにかが変わるのか?

ほむら「悪いけどもう休んでいいかしら、ちょっと疲れて……」

もうこの時間軸はダメかもしれない。そんなことまで頭をよぎった。
私に指揮官は務まらないし、まどかまでこんな様子なのでは……。

魔まどか「待って」

しかし、まどかは私の手を掴んだ。
生々しい接触が、まどかの熱が、身体をぞくりと駆け抜ける。

魔まどか「……」 <> 1<>saga<>2011/10/22(土) 04:19:59.32 ID:7wvGxWD0o<> また振り子時計が私たちの前を過ぎる。まどかは強く握りしめていく。
まどかは、なぜこんなに悲しそうにしているのだろう。少し疑問に思った。
そんな問いが、平行線の思考を少し波立たせた。

帰りが遅くなったことを、そこまで根に持つものかしら。

申し訳ないんだろうな。申し訳なく思うべきなのだろう。
だけれど、そんな気持ちは欠片も湧きあがってこなかった。
どれだけ汲みあげようとしても、私はそんな感情を抱いてはいなかった。

罪悪感を感じなくちゃ、という実のない焦りだけが空回りしていた。

まどかの前に立つ資格もないと思った。

ほむら「まどか、本当に今日はもう、わたし……」

だから、私は手を振りほどこうとする。しかしまどかが遮った。

魔まどか「大丈夫だよ、私が何とかする」

とくん、と心が裏側から冷えるような震えが走り。身体が凍りつく。
まどかは、この弱り切った様子のまどかは。

それでも、自分の事より、私のことを心配してくれているんだ。

ああ、醜い。
私のなんて醜いことだろう。やっぱりまどかには敵わない。

私は申し訳なくなって、まどかを直視することが出来なかった。
まどかの握力がさらに強くなっていくのを感じた。言葉はまだ続いていた。

魔まどか「ちょっと残念だけどね。信じてたんだけどね」 <> 1<>saga<>2011/10/22(土) 04:20:38.07 ID:7wvGxWD0o<> 魔まどか「何でこうなったのかなぁ、何で……もう一人いるのかなぁ」

魔まどか「何で……私がニセモノなのかな、私だって、まどかなのになぁ」

すっと、顔が上がり、頬を流れる雫が光る。悲愴な微笑みだった。
まどかの唇が私の名前を紡ぎ出すのを、黙って私は聞く。

魔まどか「私にとっての、ほむらちゃんは、前の世界の、ほんとの私を知ってる、
たった一人のほむらちゃんなんだよ?」

魔まどか「でもほむらちゃんにとって私は、たった一人じゃないんだね」

そのとき、まどかの声のトーンが微妙に段階を落とした。
胸騒ぎがした。まどかは何かをこらえているような、ギリギリの表情をしていた。

何かを言わなくてはいけない気がした。しかしいったい、なにを?

まどかは貼りつけたような笑顔を浮かべて震えている。
喉まで出かかった言葉を必死でこらえている。

迷っているうちに、すべては終わっていた。
まどかは鼻をすん、と鳴らして、はにかんだ。

魔まどか「ごめん変なこと言って……忘れて?」

魔まどか「もう一人の、本物の私と、さやかちゃんとマミさんと杏子ちゃんと、
ほむらちゃんは幸せになればいいんだよ……それでっ、私はっ」

魔まどか「ワルプルギスの夜を倒したら、あとはもう黙って、消えるから」 <> 1<>saga<>2011/10/22(土) 04:21:27.84 ID:7wvGxWD0o<> そう言ってまどかが笑う。まどかの笑顔がぶれる。

ほむら「――まどか!」

突如湧きあがった感情は紛れもなく、怒りだった。
そう、私はまどかに対して怒っていた。何の考えもなく。だって。

冗談じゃないわ!! 私がまどかを守るの! まどかのことを忘れろだなんて!
私の人生を否定するのと同じことよ! あなたを守るのは! 私しかいない!

思わず拳を握りしめていた。ほとんどまどかに殴りかかりそうになりながら、
私は驚くほど大声を上げていた。

ほむら「私はまどかを忘れたりしない! あなたを消させはしない! 
不安な気持ちは分かるけど、あきらめたらダメよ!」

ほむら「私が何とかする! だから、しっかりしてよ! 
私の人生は全部、あなたのための人生なんだから!」

ありったけ。心の中ぜんぶ。

私は吐きだした。しかしまったくいい心地はしなかった。
動悸がして、ひどく落ちつかなかった。

まどかは再び貼り付けたような笑顔に戻っていた。
私は息を整えようとしながら、妙にまどかの口元が気になった。

まどかの唇が艶めき、言葉を紡ぐ。
かくして生まれた響きは、以下のように耳に心に響いていた。

魔まどか「――そんなのウソだ」

まどかは <> 1<>saga<>2011/10/22(土) 04:22:02.39 ID:7wvGxWD0o<> 魔まどか「私がこんなにひとりぼっちなのは、ほむらちゃんのせいでしょ?」

感情が欠落したような顔で、声を流すまどか。
今までかけられていたリミッターが外れてしまったかのようなまどか。
今までずっと言うのを我慢してきた言葉が漏れてしまったかのようなまどか。

私は、一線を越えてしまったことを知った。

ほむら「か、帰りが遅くなったのは謝るわ……けどそれだけよ。
わ、私はあなたのことを愛してる!」

魔まどか「愛?――――――――ふっ」

笑った!

ほむら「ほ、本気なんだから! あなたのことが、命よりも魂よりも、大事なのよ!」

こんな風に言う言葉じゃない。怒りにまかせて言う言葉じゃない。
だけど、温めてきた言葉は気付いたら口から飛び出していて、そして二度と戻ってはこない。

まどかは言う。

魔まどか「あなたに私の気持ちが分かるわけないよ」

魔まどか「いつもいつも、まどかのため、まどかのためって、本当は自分のためでしょ!
楽だよね、そうやって逃げてれば、誰のせいでもなくなるからね!」

ほむら「ち、違う!」

魔まどか「どこが!?」

ほむら「そんなはずないじゃない! 聞きなさい!」

ほむら「あなたのためじゃなかったら、こんな腐った人生、とうに終わらせてるわよ!」

魔まどか「ほらウソばっかり!!」

私たちは二人とも立ち上がり、握った拳を互いに胸に当て、顔を突き合わせて
唾も飛ぶほどに叫び、想いの限りを涙ながらにぶつけ合った。 <> 1<>saga<>2011/10/22(土) 04:23:17.98 ID:7wvGxWD0o<> ほむら「まどか」

離れる。まどかの手。
華奢で女の子らしい手が、いまやっと、得難い宝物のように見えた。
静寂と暗闇の中、少女はくるりと背を向けて歩む。

魔まどか「"どうして暁美ほむらは一人だけなのに、鹿目まどかは二人もいるんだ"」

魔まどか「知ってる。みんなそう思ってること、知ってるよ」

まどかの二つの瞳を前髪が遮る。

魔まどか「ほむらちゃん、ひどいよ。全部わかってるくせに、わからないふりしてる。
それか、最初からウソだったんだね、最低だね、ほむらちゃん」

魔まどか「ウソだよね! 最期まで一緒にいてあげる、なんてさ!!」

ほむら「!!」

ほむら「……」

私は、長いこと返事が出来ずにいた。
お互いに叫び合って。はあはあとつく荒い息だけが聞こえていた。

ほむら「……まどか」

ようやく息も落ちついた頃、私はまだ背を向けたままのまどかに呼びかけた。 <> 1<>saga<>2011/10/22(土) 04:24:20.96 ID:7wvGxWD0o<> ほむら「ねえ、別れたくないの。本当よ。本当にそう思っているのよ」

魔まどか「私だって、ずっと一緒にいたかったよ」

私はまどかを救いたいだけなのに。まどかは私を拒絶する。
自分がとんでもない間抜けに思えてきて、泣きそうだった。

ほむら「私はこんなにもあなたを愛しているのに、どうして私を見てくれないの」

ほむら「愛してるのに……!!」

まどかは澄んだ瞳で私を見据え、糾弾した。

魔まどか「薄っぺらだからだよ」

魔まどか「みんなして、私をなんだと思ってるのかな」

魔まどか「もし私がいなかったら、みんな」

まどかは唇を噛む。躊躇するのは数秒だった。

魔まどか「あの倉庫で……み、みんな終わってたくせにさあ!」

ほむら「ま、まどか……そんな……」

私はまどかがこんなことを言うなんて信じられなかった。
<> 1<>saga<>2011/10/22(土) 04:24:54.72 ID:7wvGxWD0o<> 拳を握りしめ、大きく口を開けて、別人のように必死な顔で。
まどかは発作を起こしたかのように心臓に手を添えて痙攣した。

しかし震えを耐え忍び、さらに言葉を紡ぐ。

魔まどか「それが……それが……それが、この扱いなの? 
もう、わけわかんないよ……イヤだよ……確かに私は二人いるよ、でもさ、それってさ」

魔まどか「わたし……ただの使い捨てだったってことだよね」

ほむら「や、やめてまどか……」

止まらない。

魔まどか「ま、そりゃそっか! 二人いるんだから片方は捨てていいよね! 
あぁ、ほむらちゃんは天才だねー! あぁ、ほむらちゃんなんて、だいっきらい!!」

ぱぁっ、と場違いな笑顔でまどかは私の心を抉りぬく。

魔まどか「だいっきらい!! だいっきらい!! だいっきらい!!」

魔まどか「 だ いき ら    い あ ああ あ あ 」

ほむら「ま、まど、か……もう、やめて……」

まどかは両手に顔をうずめ、壊れたように涙と鼻水にまみれていた。

魔まどか「あ ああ   あ     あ     あ   あ ああ あ」

今度こそ沈黙が降りる。膝が折れる。 <> 1<>saga<>2011/10/22(土) 04:26:07.84 ID:7wvGxWD0o<> まどか、まどか、まどかが。

私の、まどかが。

ほむら「まどか……らしくないよ……そんなこと言う子じゃないでしょ……」

魔まどか「こんなことも言うよ……これが私だもん、ちゃんと見てよ」

魔まどか「……愛してるとか、よく、言えるよ」

魔まどか「私を見てよ……私を」

暗く沈みこんだ声が心に重くのしかかった。
私は、本当にまどかを愛していたのだろうか。守っていたのだろうか。

私は、だれを守っていたんだろうか。

ほむら「一体、どうすればいいの」

アホのような質問だと思ったけれど、今はこれしか出てこなかった。

魔まどか「知らない……自分で考えてよ、それくらい」

案の定、まどかは取り合わない。顔をごしごしとこすり、宣言する。

魔まどか「私はもう疲れた、もう寝る、おやすみ」

まどかが部屋を出て行く。
床に手をつきながら力なく視線を上げて見る、まどかの背中が闇に消えていく。

これで終わりか。もう終わりなのか。
私はそのまま、ぱったりと、糸が切れた人形のように、床にくずれおちた。 <> 1<>sagesaga<>2011/10/22(土) 04:27:42.36 ID:7wvGxWD0o<> マミ「今日はここまで!」

杏子「湿っぽい話はここまでだ!」

さやか「バトルのじかんがやってまいりました」

ほむら「書けるの?」

まどか「えっ」

マミ「次回から戦闘パートに突入する、かと! 思います……たぶん!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/22(土) 05:33:31.08 ID:qQD5C1MDO<> 久しぶり!!
待ってたよぉーっつ!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/22(土) 12:21:58.75 ID:P7WAhdpao<> ひさしぶりだー
おつおつ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2011/10/22(土) 15:16:23.03 ID:nrkPg8FaP<> まどっちひとりぼっち <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2011/10/27(木) 23:31:38.39 ID:vCIHMyNNo<> まどっちまどまどぉぉ!! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県)<>sage<>2011/10/27(木) 23:39:19.41 ID:n0zHhg4to<> しかし誘われた方も方だが
誘った方も方だなこれ
「じゃあまどかさんも」にはならなかったのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/14(月) 23:22:38.08 ID:Lsyc2mDDO<> 待ってる <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/21(月) 07:31:40.25 ID:QMbLwQZSO<> 今週水曜日に投下予定です
保守トン <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/23(水) 09:37:47.23 ID:baj118OAo<> 再開します 朝夜に分けるかも
月1ペースくらいが居心地いいなあとか思ったりしてません <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 09:39:18.62 ID:baj118OAo<> 契約したてのころは、毎晩、大事に手にとって見とれていたもの。
魔法少女としての証、私だけの輝き。

それが、かつては私の正義を意味していたけれど。
今となって、その余りにも綺麗すぎる輝きが、毒を帯びて私の目を刺していた。
毒りんごのように妖しく誘うのは、魔女を食いつぶしてつやつやと光る、醜い輝き。

私の命を無駄に延ばし、魔女がその糧として殺されるんだ。

マミ「こんなモノさえ、なかったら」

――だったら、ソウルジェムを砕けばいい。
――そうすれば、グリーフシードのために魔女を殺さなくてもいいわ!

ベッドの上、膝の上、柔らかい布団の上に、そろそろ濁りが強くなってきたソウルジェムと、
まどかさんに分けてもらったグリーフシードとを並べる。

マミ「でも、ダメだわ。だって他のみんなは魔女を救う気なんてないもの」

マミ「私だけが死んでも、みんなが魔女を殺し続けるわ」

本当に魔女を救いたいの? なら、他のみんなも殺せばいいのよ。
そんなに魔女を救いたければ、やってごらんなさいよ。
あの夢の中で、やったこと、同じように。

あのときは、できたでしょう? <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 09:45:45.49 ID:baj118OAo<> マミ「――あの夢の話はやめて!」

結局、何もする気なんてないのね、わかってる。あなただもの。
魔女の正体を知ったとたんに、手の平返して、偽善者もいいとこだものね。

マミ「なによ……どうしてなの。どうして、みんなを幸せに出来ないの」

なによ、それ。どういう意味?

マミ「人も魔女も魔法少女も、みんなが救われる手が、どうして見つからないの?」

……。

……あぁっ! 哀れな魔法少女たち!
甘い誘惑に惹かれた罪に、運命に、飲まれて消えるしかない乙女たち!
永劫の苦しみの中から彼女たちを救い出すべき救世主は、どこへ行かれたのかしら!

あなたが私を救う気が無いのなら、私があなたになってさしあげましょうかしら!

……なんて。

みんなを幸せに? まったくバカね。 <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 09:50:24.12 ID:baj118OAo<> そんな魔法少女にさえ成りきれないあなたに、
誰が、何を、期待していると思っているの?

……大丈夫、安心して。

あなたの心がどうであれ、あなたは魔法少女、魔女を狩る者よ。
それを否定するというのなら、ほかにあなたの生きる道はない。

マミ「……」

ソウルジェムが濁ってきちゃったわね。
魔女を殺して奪ったグリーフシードを使いましょう。
飼育されたブタみたいな命、いくらか延ばせるわ。さあ。

マミ「……」

やらないの? 

マミ「私……」

なるの……魔女に?

私……。

まどか「なにしてるんです」

マミ「あっ」

視界の端から不意に降りた手が、私の手首を掴んで引く。
カチッと二つがぶつかり、黒い煙が雪崩を打って流れ出す。

まどか「マミさん……」

いつの間にかベッドの脇に立っていた鹿目さんは、持っていた鞄をドサリと取り落した。 <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 10:00:52.61 ID:baj118OAo<> すっごく嬉しいよ ほむらちゃんがいてくれれば もう何も怖くない

悲しい結末も 一緒に越えることができるって 私は信じてる

だから 一緒に 頑張ろうね



伸ばした手を嘲笑うように、何もない空間が、広がっていた。

ほむら「はぁ……うっ」

目を汚す液体をごしごしと手でこすり落とす。
海苔みたいにべったりと張り付く髪の毛と汗まみれの制服が身体を硬直させていた。
心臓が激しく暴れて、荒い呼吸をさらに絞め上げた。

ほむら「まど……か……?」

振り子がゆっくりと私の上を通り過ぎ、はっとする。
あのまま、寝てしまったんだ。

起きあがると、部屋はいつもの表情で私を出迎えた。

ほむら「ん……」

立ち上がって、少しよろめき、ふらつく足で台座に腰を下ろす。
悪夢でも見ていたのだろうか、覚えていないけど、身体がぶるぶると震え、
それを押さえる手さえ、震えて。

足元の地面が消えてしまったかのように、妙にふわふわした感覚だった。
生身で空高くから突き落とされ、今まさに風を切って自由落下しているわたし。

ほむら「……」 <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 10:11:26.16 ID:baj118OAo<> 1分か、10分か、私はそのまま呆けていた。
しかし、立ち上がる。取りとめのない思考を絶ち切る。

寝室の扉は開いていた。
時計の針は、午前5時12分を指していた。

QB「――まどかなら、出かけて行ったよ」

ベッドの上に。

視界は紅く染まり、中央の白を強烈に際立たせた。
足はいつの間にか、大地の感覚を取り戻していた。
強く拳を握りしめれば、手の平にしっかりと爪が突き刺さった。

QB「暁美ほむら。君はその力でこの世界から逃れることができるんだったね」

明け方の、淡く非現実的な光が部屋を染める。

QB「もう行ったらどうだい? この世界はもう終わりだよ」

QB「この世界のまどかが僕と契約すれば、もう一人は絶望して魔女になる」

QB「そして」

QB「もう一人が命を落とせば、この世界のまどかは僕と契約してくれるだろう」

QB「どちらにしても、死角はない」

QB「魔法少女の契約は一度きり、願い事も一度きりなんだよ」

QB「ワルプルギスが来たら、それでもう、全ておわり」

QB「もうどちらのまどかにも、未来なんてないんだよ、ほむら」

QB「今度のワルプルギスを倒すのは、まどかでも無理」

QB「だから君にはここで無駄死にされるより、別の世界で絶望してくれたほうが、僕は助かるんだけど」

ほむら「……」 <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 10:19:39.07 ID:baj118OAo<> 私は彼に惹かれるように、自然と歩を進める。
彼の瞳の赤が強烈に私を引きよせていき、彼は近づく私を瞳に映し、
身動きもせず、たたずんでいた。

QB「そして君の言う、まどかへの愛とやらも、そこで実現すればいいだろう」

QB「君がまどかに伝えた嘘も、与えた仕打ちも、そのまどかには何も分からない」

QB「――どうだい?」

ほむら「……」

頭が熱い。熱にうなされているようだ。
私は彼に歩み寄り、その頭部と胴体を軽く掴んで前に掲げた。

QB「――?」

そして、単純に左右に引き裂いた。

QB「――っあ」

手を離すと、床に転がる断末魔は不自然に静かだった。
体中に熱い興奮が激流の如く走り、頭の中を痺れさせ、恐怖を消してくれる。
電流が走り、肩が持ち上がり、脳の血管がいくつか切れ、警鐘を鳴らす。

ほむら「―――――――――興味ないわ」

数秒前まで言葉を発していた白い顔面が、跡形もなく破裂する。 <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 10:25:44.82 ID:baj118OAo<> 学校 廊下

さやか「仁美、ちょっと、今朝のはどういうこと?」

仁美「今朝って……ああ、上条君のことですの……」

さやか「そうよ」

さやか「恭介はあんたをふ、振ったはずじゃないの?」

仁美「振られてませんわ。ええ、振られてるもんですか……まぁ」

仁美「お付き合いさせていただいているわけでも、ありませんけれど……」

さやか「はあ? ……ちょっと、こっちはマジなのよ」

仁美「ですから」

仁美「彼に言われたましたのよ。返事は少し待ってくれないか、と……」

さやか「!……」

さやか「……それで、何でそれ、あんたは黙ってたのよ」 <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 10:29:38.66 ID:baj118OAo<> 仁美「彼が何を迷っているのかは私には分かりかねますが……言わせてもらえば。
あなたに私が責められる謂れはないですわ」

仁美「あなたが告白しなければ、告白すると。私はそう言っただけですから」

さやか「んーっ……あんた……なんつーか、すごいわね」

さやか「あたしで良かったね。他の奴だったらあんたぶん殴られてるかもよ?」

仁美「さやかさんは、お殴りになりませんの?」

さやか「殴ってほしいの?」

仁美「遠慮しておきます」

さやか「あたしが、悪いのよ。他の子がどうとかじゃない。私が伝えるかどうかなのよね……」

さやか「……あたしもやらせてもらうわ。あたしだって恭介に告白してやる。
ホントだよ。今度こそやってやるんだから! 文句ある?」

仁美「ええ、どうぞご自由に」

ほむら「……」 <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 10:53:30.13 ID:baj118OAo<> 先生「アイデンティティーは一般に自我同一性と訳され、それが達成されないと、
自分が何者で、何をしたいのかがわからない、という同一性拡散の危機に……」

ほむら「……」

まどか「……さやかちゃん、今日、なんかほむらちゃん元気ないよね」

さやか「……んー、あいつは元からじゃないの」

まどか「……さやかちゃんも、元気ないよね?」

さやか「……元からじゃないの?」

先生「鹿目くん、では問A−15を」

まどか「……え、は、はい!」

まどか(ほむらちゃん一番前で寝てるし!) <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 11:02:40.72 ID:baj118OAo<> さやか「ほむらー、早く行くよ! 杏子の奴どうせ超はやく来てんだから!」

まどか「あ、私はマミさんとこ行ってくるから」

さやか「マミさんのこと任せっきりでごめんね」

ほむら「お手洗いに行きたいのだけど……」

さやか「早くしなさいよー」

―10分後

さやか「……おそい」

まどか「……ごめん、さやかちゃん、私もう行くね」

さやか「あー、そうした方がいいね、こりゃ出てきそうにないよ」

―15分後

さやか「おせええええ!」



杏子「――で、いなくなった?」

さやか「私もよくわかんないけどさ……」

さやか「いつまで経っても出てこないから、まさかと思って……」

杏子「時間止めて逃げたか……でも、なんでだ?」

さやか「心当たりがないわけじゃないわ。ちょっと付き合ってもらっていい?」

杏子「二手に別れた方がよくないか?」

さやか「……面倒なことになるかもしれないし」 <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 11:13:39.89 ID:baj118OAo<> 道路幅は2メートル弱しかなく、両側から押しつぶすように壁が迫っていた。
マンホールの中からくぐもった流水の音が聞こえ、ゴミの腐臭に軽くむせる。

仁美「……こんなところでいったい何の話ですの?」

ほむら「私はあなたについていろいろ知ってるのよ」

前を行くほむらは、ずんずんと奥へ進んでいき、日の光が徐々に届かなくなっていく。
仁美は周囲を軽く見回し、すこしだけ彼女から距離を取った。
逃げ出さないのがほむらへの信頼の表れだった。

ほむら「良家のお嬢様。学芸に秀で。強情にして潔白」

仁美「?」

砕け散ったランプの破片を踏みつけ、ほむらは不意に振り返る。
周囲を見回したあと、隅に転がるビンのラベルを凝視しながら、
つぶやく。

ほむら「美樹さやか、今でもあなたの親友かしら」

仁美「もちろんですわ」

ほむら「ウソね」

ほむら「あなたは、ウソばかり」 <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 11:19:19.45 ID:baj118OAo<> ゴミ捨て場に放置された台車の下から野良猫がひょっこりと顔を出す。
沈黙の中、とおく大通りの方からバイクのエンジン音が長く響き渡った。

仁美「聞き捨てなりません……」

ほむら「なぜ……さやかにウソを吐いたの」

重ねるような言葉。
仁美の表情にわずか不快感が浮かび、目は疑うようにほむらへ。

仁美「……なんのことでしょう」

ほむらは一歩、仁美との距離を詰める。
絹糸のような黒髪がしなり、やわらかに落ちる。

ほむら「私は知っている、と言ったはずよ」

迫られて、仁美は諦めたように深呼吸した。周囲を見回して、

仁美「……彼女が、どれだけ彼のことを慕っているか、お分かりですか」 <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 11:24:50.28 ID:baj118OAo<> ほむら「ええ……嫌というほどに」

仁美「……なら、わかるでしょう。彼女に事実を伝えてしまうのが、どれほど重いことか」

言って、しかし仁美は不意に顔を背けた。横を向いて一歩、二歩。
自信が揺らぎ、その表情に後悔がにじむ。

仁美「……私は、そんなつもりはなかった、すぐに伝えるべきだったと、知っていますわ。
……でも、けれど、どうしても……言えなかったのです」

ほむら「そんなの知ったことじゃない」

蓋をするように言い放ったほむらは、仁美の肩を掴んで立ち止まらせる。

ほむら「あなたの憶病のツケが回ってくるのは、さやかのところなのよ」

声が高くなり、感情がジャンプする。

仁美「わかっていますわ……ですが」

仁美「あなたには関係のないことでは?」

仁美も振り返り、軽く睨みつける顔は不満げだった。
ほむらのあごがすっと下がった。仁美はさらに続ける。

仁美「第一、私があのときウソを吐いたというのは、正確ではありません。
上条君からのお返事をいただいたのは、あのあと、昼休みのことなんですから」

ほむら「状況がよく分かっていないようね」

仁美「……っ!!」

唐突に走った手が仁美の胸倉を乱暴にひっつかむ。

ほむら「あなたがしたことが、いいか悪いかなんて、どうでもいいの」 <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 11:28:59.91 ID:baj118OAo<> 仁美「ちょっと、手を離してください」

つま先立ちになり、のけぞった体勢になる。
鞄が汚い地面に力なく落ちた。ほむらは意に介さない。

ほむら「これは交渉ではないわ、あなたに対する命令よ」

ほむら「上条恭介から手を引きなさい」

にゃー、と隅の方で野良猫が怯えたように鳴いた。

仁美「彼が私を、選んだのですから、あなたが介入、できるはずがありません」

ギリギリと首を絞めつけられながら、仁美は必死でほむらの手を握りしめた。

仁美「こんなことして、何になりますか」

ほむら「さやかが幸せになる、その結果、まどかが幸せになる」

ほむら「なんてこと言っても、結局は私のためかしら……残念ね、志筑仁美」

仁美「まどかさん……? 何の話」

浮かんだ疑問は、断ち切られる。ほむらの手が上がり首が締まることで。

ほむら「もう甘いことはしない、私の気持ちが本物だと、示すためにも。
あなたに恨みはないけれど、あなたの行動が、私とまどかの邪魔になるのよ」

ほむら「言うことが聞けないというなら、もう私は手段を選ぶつもりなんてない」

ほむら「上条恭介から 手を引きなさい……っ!」

仁美「は、なしてっ……!」

仁美の足が地を離れ、ぱたぱたと暴れる。ほむらの瞳に慈悲は映っていなかった。
壁に押し付けるために、彼女を抱えたまま歩きだす。仁美の抵抗が弱まっていく。

ほむら「……」 <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 11:48:25.54 ID:baj118OAo<> 〜さやか視点〜

さやか「おい! 何やってんだよ!」

視界に飛び込んだ光景に向かってあたしの声が、一直線に貫く。
仁美とほむら、目撃情報通り。やっぱり……。

仁美「さや、かさ……」

杏子「おいおい」

杏子「一般人の女の子を路地裏で恐喝とは、さすがのあたしも真っ青だよ……」

ほむらは、ぱっと手を離す。

ほむら「気にしないで、ちょっとした依頼をしていただけだから」

仁美を下ろすほむら。でも手首をつかんだままだ。
ごほごほとせき込む仁美。ほむらのなんでもない風を装う素振りに神経を逆なでされる。
その振りはもう見飽きてんのよ!

さやか「いいから仁美から離れなさいよ!」

ほむらは、軽くこちらを一瞥し、

ほむら「いやだ」

ギリッと口の中から音がし、拳を握りしめる。
杏子は眉をひそめて状況を注視するにとどめていた。 <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 11:51:48.31 ID:baj118OAo<> さやか「おせっかいなら、やめてくれる!?」

ほむら「別に、あなたのためじゃない」

あたしのためじゃない? なら……。

さやか「あたしのためじゃないって……じゃあ、何よ」

さやか「また、まどかのためかよ」

ほむら「違うわ、これは私のためよ」


これも否定されるとは思わなかった。


ほむら「まどかのおかげで目が覚めた。私の本当の気持ちに気付けたわ。
私は、まどかを手に入れたいだけだったの」

舞台の独白を演じるように、陶酔しきって歌うほむら。
あたしは背筋が寒くなるのを感じた。あたしに向けられた感情ではないのに。
ピリピリと痛い。

ほむら「私のまどかと、このまどか。重ねていた」

さやか「……まどか愛も極まるとハタ迷惑だってことでいいわね」

ひるんでいられない。仁美はライバルである前に、友達なんだから。
あいつの勝手で傷つけさせはしない!

前のめりになり、あたしの気がじりじりとほむらに迫る。
ほむらはそれを宣戦布告と受け取ったか。

ほむら「あぁ、これは愛じゃないらしいわ。じゃあ、なにかしら、ただの妄執かしら」 <> 1<>saga<>2011/11/23(水) 11:54:00.94 ID:baj118OAo<> ほむら「もう心置きなくやれる。まどかにまた振り向いてもらうためなら。
私はこいつにどんなことでもできるわ」

ほむら「さやか、私はあなたのこと、友達だと思ってるけど、
邪魔するなら、今はあなたにだって容赦しないわよ」

風がざわめき、ほむらの殺気が強まる。変身するつもりか。

杏子は見ているだけだ。 いざとなったら助けてくれるかもしれないけど、
あたしはいま、一人でほむらと戦わなくちゃいけない。 格上の相手とだ。

さやか「友達か……」

さやか「ありがとう、望むところだよ。
友達のイカれた頭。ぶん殴って治してあげる」 <> 1<>sage<>2011/11/23(水) 11:55:20.51 ID:baj118OAo<> 午前分終了 できれば深夜にも投下します <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(チベット自治区)<><>2011/11/23(水) 12:32:26.92 ID:MlsAW3Lh0<> 乙
お待ちしておりました <> 1<>saga<>2011/11/24(木) 02:45:46.29 ID:Cd+FibDfo<> ほむら「ケガしても知らないわよ……っ!?」

ほむらが手を伸ばし、今まさに変身しようという時。

さやか「おらぁ!!」

地を蹴って飛び込む。両手に握りしめるのは、ずしりと重いカバン。
一撃のもと沈める勢いで、あたしは力の限りそれを振りおろした。
ほむらは変身を断念して飛びのき、ずざっと革靴が地面を滑る。

さやか「……っし!」

蒼と紫の光の粒子が弾け、互いに変身を完了する。
あたしは持ち手を低く、剣先を高く、突撃の姿勢。

ほむら「……私ね、友達でも殺すのよ。油断しない方がいいわ」

さやか「あんたこそ、ヒヨッコだと思って甘く見てると、痛い目見るよ!」

杏子が仁美を招き寄せて背中に隠すのを、横目で確認する。
ほむらは構えも取らずに棒立ち状態。どう動くのかわからない。
ほぼ丸腰の相手に剣を振るっていいものか、と一瞬頭をよぎったけど。

さやか「はっ!」 <> 1<>saga<>2011/11/24(木) 02:49:25.44 ID:Cd+FibDfo<> 相手は、あの暁美ほむら。どうせスルっと避けるよね!
友達を信頼して、正面から斬りかかる。

目の前のほむらがふっと後ろに引き、紙一重の空間を剣先がなぞる。
盾を使わないのは余裕の表れか。舐められたもんだ。

ほむらは引いた勢いでふわりと舞い上がる。
空中で何かを取りだすのが見え、あたしは着地を狙うべく走り出し、

さやか「……いっ!?」

乾いた木をかち割るような音。
そして、熱波と赤い光が背後から襲いかかる。

さやか「なぁ―――!?」

杏子「――振り返るな! こっちは無事だ!」

さやか「!!」

その声で、回りかけた首を戻すことができた。
ほむらが着地する場所に意識を集中する。
風を切って西洋剣が走り、一直線に飛び込み、ほむらの盾に弾かれ甲高い音を上げる。

ほむら「……っ」

ほむらの表情が変わる。
どうやらあたしが爆発に怯まなかったことは誤算だった様ね!
ぱっとゴミ袋の山の陰に飛び込むほむら。 やれる! 勝てる!
 
さやか「舐めるなぁ!」 <> 1<>saga<>2011/11/24(木) 02:52:53.17 ID:Cd+FibDfo<> 投げつけられたゴミ袋を一文字に斬り裂く。ほむらへの一直線が通じる。

そして、あたしは、宙に舞うゴミの吹雪の先に見た。
真っ暗な銃口を無表情に向けるほむらを。

聞くだけで心臓が割れてしまいそうな銃声が轟いた。

さやか「……っ!!」

――よし!!

外れだ。
前髪は散った。体勢は崩れかけていた。でも、その弾は遅い!!
接近して、攻め続ける! 時間停止だけはさせない!

剣の殺界にほむらを捉えて、殴りかかるように。

さやか「――覚悟しなさいっ!」

ほむらの盾にあたしの剣を叩きつける。狙い通り体勢を崩すほむら。
剣を消滅させてあたしは自分の手を伸ばして飛び出す。


これは取ったと思った。


でも。

勝てる、と思った瞬間が、最も危ない瞬間なんだ。
どこかで聞いた言葉、なにも命がけの戦いのときに実感できなくてもいいのに。 <> 1<>saga<>2011/11/24(木) 02:56:03.09 ID:Cd+FibDfo<> がくん、と視界が揺れる。
足を払われ、さらに地面のヌメりを踏んで滑る。前のめりにほむらに突っ込みそうになる。
ほむらは盾の中に手を入れ、それを取りだす。刃渡り20センチほどのそれを。

仁美「さやかさん!!」

白い輝きが鮮明にあたしの目を刺した。ぞっとしてのけぞる。
ほむらは躊躇なくその刃をあたしの顔面に向けて突き出した。

おちつけ。

勢いに逆らわず、そのまま後ろに倒れ込む。
そこから先は運任せ。そのときのあたしは冴えていた。

さやか「やあっ!」

ほむら「ぐっ!」

ぐるん、と視界が一回転。途中で足が何かを蹴飛ばす。
オーバーヘッドキックの要領で、ナイフを蹴り飛ばしたらしい。
ほむらは素早く飛びのいた。ここで逃がしたらもう運は巡ってこない!

さやか「させる……かぁ――――!!」

地を蹴る。飛びこむ。伸ばした手は、ほむらの胸倉を掴んでいた。
時間が停止する。しかし、あたしたちを除いて、だ。

両手を押さえつけ。押し倒す。単純な腕力なら勝てる。
まだジタバタと暴れて睨みつけてくるほむらに、あたしは笑ってやった。

さやか「はい、確保!」 <> 1<>sage<>2011/11/24(木) 02:57:31.91 ID:Cd+FibDfo<> マミ「今日はここまで!」

ほむら「ガチの深夜で反省してる」

まどか「さやかちゃんハイパープレイとかうらやましい」

杏子「鬱鬱としたまどまどSSに爽快シーンをお届けしたかったんだよ」

さやか「そろそろ伏線回収しないと年内に終わんないよ」

マミ「それじゃこれで……あ、ナイフは持たせてみたかっただけね」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/24(木) 11:37:07.53 ID:aHx0Ids30<> 乙
さやかちゃんが元気なのが救い <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)<>sage<>2011/11/24(木) 18:59:06.44 ID:69hOGByOo<> このほむら手加減してるような・・・?
正してもらいたいのか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)
(岩手県)<>sage<>2011/11/25(金) 22:59:44.35 ID:+Y1H1yJmo<> 銃弾が遅いなら魔女の攻撃なんて蝿が止まるな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(不明なsoftbank)<>sage<>2011/12/07(水) 20:37:26.00 ID:lZe9T1Hr0<> ほ <> 1<>sage<>2011/12/19(月) 03:17:53.27 ID:Ik77R3mgo<> お手数かけました 再開です <> 1<>saga<>2011/12/19(月) 03:19:28.36 ID:Ik77R3mgo<> 線路を引き裂かんばかりに車輪が回転し、非生命的な直線のホームに電車が進入する。
線の外側を歩く人々に対し警笛が鳴り響き、すぐに追い抜いていく。

――4番線に、電車が参ります……

アナウンスをかき消すように突入する電車。尋常な速度ではない。
風を切り、視線を下に落としていたホームの人々も思わず顔を上げた。

若干オーバーランした車両はようやく、渋々といった様子で停車する。
アナウンスと共にドアが開くと、辟易した様子の乗客たちが一斉に外に溢れ出た。

遠くどこかで、微かに空気が身震いした。 <> 1<>saga<>2011/12/19(月) 03:20:46.23 ID:Ik77R3mgo<> 〜杏子視点〜

これで、終わったのか?

事前に仕込まれていたらしい爆弾はあたしたちに直撃せず。
ほむらは時間停止を使うヒマを与えられず。そのままさやかに組み伏せられた。

とりあえずは、安心だ。状況はそう見える。
なのに。なんだけど。

この緊張感は、どうしてまだ消えようとしないんだろう?

いかにも釈然としない。直感が告げる気配だ。
あたしは緊張を解かず、慎重に、さやかの方へ歩を進めた。

往生際悪く暴れていたけど、ほむらの腕はがっちり押さえられてビクともしない。

ほむら「っ! っ!」

さやか「こら、大人しくしろっ」

杏子「もう、よしなよ。みっともないったらありゃしない……」

ほむら「はなしてっ!」

だだをこねる子供みたいな支離滅裂で応じられちゃあ、ため息も漏れるってもんだ。
目を潤ませて、これじゃこっちが悪いみたいじゃないか。あたしは閉口した。

仕方がない。

杏子「……あのさぁ」 <> 1<>saga<>2011/12/19(月) 03:24:02.91 ID:Ik77R3mgo<> 杏子「本当にあの子を殺す気があるんなら、なんであたしらが来るまでモタモタしてたよ?
どうせ口だけなんだろ? さては……愛しの鹿目まどかにフラれたか?」

適当にカマをかけてみるけど。
どうやらまともな話はできそうにないか。

ほむら「知ったような口きくんじゃないわよ!」

さやか「あんたさぁ、なんでそんなに焦ってんのよ? バカみたい」

さやかはにべもなく言った。
まぁ確かに、口に出しただけで一丁、覚悟が決まるわけでもなし。
すぐに変われるわけないんだ。それくらい、ほむらも分かってるはずだ。

ほむら「志筑仁美を潰さなきゃ、さやかを助けなきゃ、まどかに顔向けできないの」

ほむら「お願いだから、やらせて。あなたたちにとっても、悪いことにはならないから」

ふと、ほむらの声がクールダウンした。……でも、勘違いしちゃいけない。
冷静に真摯に、その瞳はより強く、狂気に燃えているのが、見て取れた。
こうなってしまうと、言うべき言葉ももはやない。

さやかを守るために、志筑仁美を潰す。そりゃ、全く考えたことがないと言えば、
あたしだって嘘をつくことになるけど、さ。

今までがどうであれ、今のほむらは、きっと優しい。
優しいから、自分のために他人を犠牲には出来ない、はず。

そこまで考えて。
ため息をひとつ、吐いて。

杏子「おい、あんた」 <> 1<>saga<>2011/12/19(月) 03:29:44.23 ID:Ik77R3mgo<> あたしは背後に立つ影にも声を放った。そう。
こっちにも困った奴がいるんだ。状況わかってないのかな。

杏子「いつまでここにいるつもりだい? さっさと逃げなよ」

仁美「いえ、ちょっと……」

悠長すぎる返答。
さやかの周りはこんなのばっかりか。

杏子「ちょっと……も何も、こいつは一応あんたを殺そうとした奴なんだぞ」

あたしは変身して、ほむらを押さえるのを手伝った。
仁美はやはり動じる様子もなく、居座っていた。

仁美「さやかさんに――」

さやか「あー、そういや見られちゃったねぇ」

さやか「驚かせちゃったかもしれないけど……あたし、魔法少女ってヤツなのよ」

仁美「あの……」

これには持て余したような返答。まあ当然だろう。
変身を解いてしまえば、周囲は適当に忘れていくものなんだけどな。
この手の面倒な説明は扱いが難しい。それに知り合いとなると無視もしにくいのか。

案の定、さやかはてこずっていた。

さやか「ホ、ホントだって! キュゥべぇっていうのと契約してさ……」

仁美「待って下さい、さやかさん」

説明もままならず、口を挟まれるさやか、だが。
あたしはそこで少し、違和感を覚えた。でも、さやかは気付いていない。

志筑仁美はまるで、魔法少女のことなど、眼中にないかのように見えたんだ。 <> 1<>saga<>2011/12/19(月) 03:35:35.20 ID:Ik77R3mgo<> さやか「いやいや、だから――」

仁美「そんなことはどうでもよいのです」

さやか「――え?」

その言葉は、溶けるように場に染みわたった。
さやかが言葉を失うと、場は急に静まり返った。

しかしもう、空気は元には戻らない。
あたしがさっきから感じていた緊張感が、濃厚になる瞬間だった。

沈黙に刻むように、志筑仁美は続ける。

仁美「それよりさやかさん、私はあなたに、伝えなくてはならないことがあるのです」

一言で場の主導権を握ったのは、魔法少女3人を黙りこませたのは、ただの人間の少女。

あたしは、口を挟むべき隙間を探し、間もなく断念することになる。なんでだか。
この二人の間には、あたしには理解できない不思議な絆があるようだった。

仁美はそれを受け入れ、利用し、迫っていく。
さやかは惑い、引き、追い込まれていく。

そんな、絆。

さやか「な、なに?」

ほむらの抵抗が強まり、渾身の力で暴れ始めた。、
反射的にその手を掌握し、合わせて押し込める。不意に怖くなった。

志筑仁美は、何を言おうとしているのか。止めるべきじゃないのか。どうするんだ。
ほむらを放したら、志筑仁美の安全は保障できない。どうするんだ。

ほむら「やめなさい! 志筑仁美! 絶対にやめなさい!」

ほむら「杏子! ねぇ、放してよ! 分かっているんでしょ!?」

杏子「け、けどっ……」

さやか「ちょっとうるさいよ」 <> 1<>saga<>2011/12/19(月) 03:39:28.95 ID:Ik77R3mgo<> 仁美「私、上条君からお返事をいただいたんですの」

仁美は、たちまち核心に迫った。さやかは着実に追い詰められていく。
でもあたしは何もできない。声の一つも上げられずにいる。

一方さやかは、きょとんとして仁美を見返した。

さやか「へ、へんじ? って……」

ほむら「やめて! 杏子! 手を離しなさい! 聞こえないの!? 放してよっ!」

放してやったらどうなるかなと、思ったけど、やっぱりできるわけない。だって思うんだ。
いま、二人に介入すること、邪魔することは、絶対に恐ろしい悲劇になるって。思うんだよ。

何よりも怖かったのは、そのこと。ホントは志筑仁美が死ぬことなんかよりも、ずっと怖い。
あたしはさやかの何なのか、あるいは何でもないのか、ということが、
きっとはっきりしてしまうということが。怖い。

邪魔は、出来なかった。

そして無意識に、あたしの術がほむらの声だけをシャットアウトしていたらしい。
ほむらの必死の訴えはいつの間にか、まったく聞こえなくなっていた。

ようやく仁美の意図、事態を理解したさやかは、少し身震いした。
喉が渇ききって、吸いこんだ空気がざらざらと痛かった。

さやか「返事……」

さやか「な、なんて?」

仁美「本当にごめんなさい、今朝はウソをつくつもりではなかったの」 <> 1<>saga<>2011/12/19(月) 03:42:01.90 ID:Ik77R3mgo<> 仁美はさやかに答えない。
だが、答えを明かしたも同然ではあった。

仁美「ついさっき、いえ、昼休みの事ですわ。
お伝えするのが遅くなって、本当に申し訳ありません」

さやか「な、なんて言ってたのよ! 恭介は!」

さやか「ねぇ!」

仁美「――承諾、と」


――あぁ、さやか


さやか「ホントに……?」

仁美「私は、ウソをつきません」

早くも終止符を打とうとしているのだと、あたしはなんとなく察した。

それでも二人は、変わらず向きあい、立ち会っていた。
ただ、さやかの固く握りしめられた拳が、震えていた。
あたしはさやかの顔を見なかった。見ることが出来なかった。

さやか「ああ……そうね、そうだよねぇ、うん……」

仁美「さやかさん……」

あたしは目を閉じてしまいたかったが、耐えた。
一番そうしたいのはさやかのはずだから。仁美の次の言葉を待つ。

仁美「私は、あなたと……いえ」 <> 1<>saga<>2011/12/19(月) 03:43:37.50 ID:Ik77R3mgo<> 仁美「あなたと私は、ずっと友達ですわよね」

さやか「え……? あぁ、もちろん、もちろん」

二回連続で言った言葉が、妙に間延びして聞こえる。
そのあとの沈黙を余計に深く沈ませ、そして仁美は言った。

仁美「では、祝って頂けませんか」

杏子「な……」

耳を疑って、思わず顔を上げたあたしは、さやかの顔を見てしまった。

さやか「……」

仁美「……」

杏子「さや……」

さやか「うわぁぁぁぁぁああああああああ!!!」

仁美「あっ」

怒声のような叫びが、あたしを叩いた。
踵を返したさやかが、路地裏の奥へ消えるまで。わずかに数秒。 <> 1<>saga<>2011/12/19(月) 03:46:05.16 ID:Ik77R3mgo<> 杏子「……?」

あたしは呆気にとられて、ただ右から左に走り抜けるさやかを目で追っただけだった。
そして、ゴミ捨て場からひょっこりと顔を出した猫が、急にとてとてと這いだしてきて、
一目散に路地の先に走って行った。そしてあたしはと言えば、まだ呆けていた。

間の抜けた沈黙が、切れた電話のように伸び切っていた。

頭の中で、いくつかの重要なことがぐるぐる回っていた。特に重要なことが混ざっていた。
なんだっけ。マミが言ってた。鹿目まどかのヤツも言っていたことだ。なんだっけ。

ああ、そうだ。

――さやかは、前の世界で、失恋のショックで、魔女になって、そして死んだ。

杏子「――さやか!! もどってこ――」

あたしは、さやかの影も残っていない路地の奥に向かって叫びかけた。
しかし、それを凌駕するモノが唐突に背筋を這いあがり。首筋を舐めて耳を貫く。


ほむら「おまえ――――――――――!!」


しまった!!
<> 1<>saga<>2011/12/19(月) 03:56:06.68 ID:Ik77R3mgo<> 気付いた時にはもう、突き飛ばされ、尻もちをついていた。完全に油断していた。
ゆらめくように立ちあがった影が、蠢き、志筑仁美をその視界に捉える。

理性を信用していたんだ。
だが、知るべきだった。それは、無意味な信用だと。

杏子「止まれ! ほむら!」

時間を止められたら最後。志筑仁美の命は潰える。
飛び起きて、ほむらの足首に手を伸ばした。

無情にも。
手が、空をつかんだ。そこに、何もなかった。

痛々しい音が響き、身体をくの字に折り曲げて、吹き飛ばされたほむらが、数メートル離れた電柱に激突した。
あたしのソウルジェムが強烈に輝き始めていた。
ほとんど交通事故のような光景に、あたしは呆然とするしかなかった。

そして、振り切った形で静止していた足が、ゆっくりと下ろされた。

ほむら「な……!?」

杏子「……は?」


例によって、あの小柄な姿だった。
こちらに背を向け、桃色のリボンと純白のフリルをあしらった、破壊の塊。

肩越しに向けられた視線は、氷の鋭さでほむらを突き刺していた。
キバを抜かれたように、ほむらは力なく電柱にもたれかかる。
いっぱいになってしまった表情で、身震いする。

影が、冷え切った声を薄く。

魔まどか「――何をしてるの? ほむらちゃん」 <> 1<>sagesaga<>2011/12/19(月) 03:58:50.69 ID:Ik77R3mgo<> マミ「こんげ、今日はここまで!」

ほむら「もういいのよ、今月はって言っちゃいなさい」

さやか「いや、年末にもう一回投下するの」

杏子「ああ、あれか、レスこじ――」

さやか「――年明けから書けないかもしれないから、念のためよ」

QB「僕としては、早ければ早いほどいいんだけど」

まどか「ごめんね」

マミ「今更落としたら滑稽ね。おやすみなさい」

というか、書き溜めを小出しにする遅滞戦術にするかもしれません <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/19(月) 04:01:29.32 ID:XD3AkPEAO<> お疲れ様でした
この話の仁美はなかなか無神経ですな… <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/19(月) 07:05:10.76 ID:Y68US5lyo<> お疲れ様でした。 <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/19(月) 07:32:52.38 ID:OPkyvg00P<> まどかさんこわいよぅ
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/19(月) 13:45:11.93 ID:UwNji5CAO<> 最強の魔法少女様がお怒りになっておられる……! <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/20(火) 01:46:16.39 ID:emNkHkpao<> 乙!熱い展開ね <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/20(火) 20:14:37.02 ID:UALuALOko<> この仁美度胸あり過ぎだろ…臆病だなんてとんでもない <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/25(日) 12:20:31.48 ID:G2WJEW9Oo<> いやぁお疲れ様です <> 名無し<>sage<>2011/12/25(日) 20:02:58.40 ID:k8BxCv+SO<> 今日最初から見てきたのに、まだ終わってなかっただと…お疲れさまです。 <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<><>2011/12/30(金) 02:38:07.27 ID:wnXIE2tT0<> この仁美は潰されるべき <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/30(金) 03:15:48.13 ID:fW87jx/00<> 乙乙 <> SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)<><>2011/12/30(金) 14:54:15.89 ID:BiBuSDbVo<> ほむらはもう全員ブッ潰して次の世界へ行ったほうがいいだろ <> 1<>sagesaga<>2011/12/31(土) 16:14:46.99 ID:fYTwW/26o<> 引き返した風が波立つ水面を平らかに治めて行く。
色褪せた空はつまらなさそうな顔をして、漫然と流れる雲を引きずり、
目を下ろせば、川辺に一人二人、くたびれた釣り人が眠ったように座り込んでいた。

QB(未来)(ねぇ、まどか)

QB(未来)(これから、どうするんだい?)

肩の上に陣取る白い影が動いた。
少女は重そうに頭を動かし、車窓から目を離す。

カーブに差し掛かり、傾く電車。
彼の一言がすぐさま導いたのは。脳裏にまざまざと再現されるのは、ほむらちゃんの顔。

バンッ、と電車のドアが外から叩かれ、相対速度に乗って向かいの車両が駆けぬける。
すべてをかき消すような怒涛は、数秒の後、何事もなかったように鎮まる。

一本、二本、そして十本。さらに続いて数十本。
カーブの続く中、空に溶けていく巨大な構造体の、その一角が姿を顕す。
電車はみるみる煌びやかな鋼鉄のジャングルへ迫っていき、風景に活気が満ちて行く。

その視界のすべてが、少女の瞳には空々しく映っていた。

こんなはずじゃなかったのに。
私だって、まどかなのに。

消えたくなんてないのに! 鹿目まどかは、この私なのに! 
この名前は私のものなのに! 誰にもあげたくなんて、なかったのに!

こんなの絶対、おかしいよ。

もしもし、神さま。いるのなら。
私の幸せ、返してよ。私の最期を、返してよ。

……

――何をしてるの? ほむらちゃん <> 1<>sage<>2011/12/31(土) 16:19:18.02 ID:fYTwW/26o<> 1レスで勘弁してくださいホントにごめん。ちょっと無理です。時間とか、アイデアとか。
でも絶対蒸発はしませんから、ふと思い出したとき気が向いたら……くらいでお願いします。
あと、レスありがとう。ほんとにうれしい。なんか語りすぎてる感ありありだけど、年末だからだと思う。
<> SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/31(土) 16:32:55.14 ID:6JGxLp/+o<> 乙
完結するなら遅くても良いかなって私は思うのでした <> SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>sage<>2011/12/31(土) 20:32:06.30 ID:dCN4ecsAo<> 予告通りの遅滞戦術乙
嘘です
更新してくれるだけで超嬉しいです <> SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)<>sage<>2012/01/01(日) 00:30:26.17 ID:Tn6aGOuBo<> 完結を是非とも見届けたいSS
期待しています <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(不明なsoftbank)<>sage<>2012/01/18(水) 16:43:48.94 ID:TCau/ufe0<> ほ <> 1<>sage<>2012/01/21(土) 16:42:34.95 ID:ykRZJC9po<> まだ通常運行ではないけど、再開します  <> 1<>saga<>2012/01/21(土) 16:43:04.77 ID:ykRZJC9po<>
マミ「けさ、来たのよ、杏子が」

まどか「え?」

マミ「目覚めてみたら、窓枠に腰掛けた彼女が、こちらを見ていたわ」

まどか「……ソウルジェムを?」

マミ「そうだったけど それだけでもなかったみたいね」 <> 1<>saga<>2012/01/21(土) 16:43:58.15 ID:ykRZJC9po<> 病院

〜マミ視点〜

におい。天使のにおい。懐かしいにおい。
うっすらと赤い光を散乱させる差し込み。朝方の冷えた窓、虫の息でしがみ付く夜露。
天国のまどろみの中で、わずかに残る傷跡もみるみる癒えていくのが分かった。

――ふふ、まるで、魔法みたい。

その安らぎに身を任せて、夢と現実の境界線上を歩み。
くるくると回る風景が集約されていき、やがて一つの像を結んだ。

杏子「――よっ」

こちらに手を伸ばして紅い宝石を向ける、親友の姿に見えた。
悪戯っ子のようにニヤリと笑い、引っ込める。

杏子「――っと」

窓枠から飛び降りると、無造作に結ったポニーテールが朝日色に煌めき、

マミ「――杏、子」

杏子「調子はどうだ」

マミ「……あ、痛くないわ」

杏子「ほむらに聞いたぜ。かなりヤバかったって?」

視線が正面を見据える。
杏子はぴんと背筋を伸ばして固まる。

杏子「その」

マミ「?」 <> 1<>saga<>2012/01/21(土) 16:47:39.60 ID:ykRZJC9po<> 杏子「――ごめんな、マミ」

マミ「――?」

杏子「あれだよ、ほら――。マミのこと守って、やれなくて、さぁ」

マミ「……?」

杏子「……で、ちったぁ頭冷えたの?」

杏子「自滅なんて一番ダセェ最期だ……せっかく、生き長らえた命だろ。
お前さぁ、その命、もっと大事に生きろよな」

面倒くさそうに吐き捨てる言葉。
閉じた目蓋も、斜に構えた横顔も、すべて。

マミ「――ありがとう」

杏子「……まだ、お前は魔法少女じゃない、のか?」

マミ「ごめんなさい」

杏子「……なぁ、あたしたち、もう昔には戻れねえのかな」

マミ「戻れるものなら……戻りたいわよ」

だけど、もう違う。戻れない。
だからこそ、あの日々の記憶は色褪せることなく、より強く輝いて見える。
すべては変わってしまったのに、相変わらず私たちは二人揃って生きている。

しばし風の音に場を預けていた。
目を閉じて、しみじみと。

……あぁ本当に。これだけならいいのに。
ただの、親友同士でいられたなら。どんなにも、よかったのに。

杏子「……ごめんな」 <> 1<>saga<>2012/01/21(土) 16:49:59.55 ID:ykRZJC9po<> マミ「私のこと心配してたみたいなの」

まどか「そんなの」

マミ「今でも、まだあの子のこと全部許そうとは思えない。
だけれど、あのときね。何だか昔のあの子みたいだった。そう思ったわ」

マミ「……楽しい時間だったわ」

切り違える形で張られた光の線が、床面を走る。満足げなマミさん。
低く赤い光を横顔に受けて、まどかの返しは薄い。

まどか「そうですか……」

マミ「ええ、楽しかった」

たった二日前、身を挺して後輩を守り、文字通り身を裂かれたマミ。
だが今では満ち足りた緩みを見せている。到底受け入れられなかった。

そんなことにはお構いなく、今日のマミの口は忙しい。

マミ「鹿目さんは知らないよね。昔は……あんな子じゃなかったのよ」

マミ「杏子とはね、雨の降る日の帰り道、よく一緒の傘に入って歩いたものよ。
彼女は、小さくてイタズラ好きで、それで私は、そのお姉さん役だったの」

まどか「あの、ボロボロの傘のことですか?」

マミ「ちゃんと修復したのよ。ボロじゃないわ……」

水を差されたマミさんは、少し頬を膨らませた。
私は、冷酷な感情が沸騰しそうになっていた。抑えて、深呼吸する。

まどか「……そうですか」 <> 1<>saga<>2012/01/21(土) 16:52:37.77 ID:ykRZJC9po<>
このマミさんを黙らせたい。
どうしてこんなにマミさんは笑っているの。誰に向かって笑っているつもりなの。

マミ「いい思い出ね」

まどか「だったら何で、ねえマミさん。あなたはどうして命を粗末にするの?」

マミ「……」

ああ、やっと黙った。それでいいの。
いや、よくない。何を考えているの私は。なんでこんな――。

まどか「楽しいんですよ? 私だってマミさんと話してると楽しい! それなのに、
マミさんは、昔のことばかり話すの。今のマミさんは楽しくないってことですか?」

まどか「生きてて……楽しくないんですか?」

マミさんは目を細めた。私は思わず腰を浮かせていた。
天国のような暖かい病室だった。真っ白で、何もなかった。
全てを言葉で塗りつぶすには、絶好の場所だった。だから私は吐き出した。

まどか「魔女とか魔法少女とか……。ごまかすのはもうやめて。死にたいなんて!
もうやめてください! 本当は死ぬのが怖いんじゃないですか!?」

表情が追いついたように、マミさんは眉を下げてうつむいた。
幸せの邪魔をされて、少し恨めしそうだった。私を見る目は不満げだった。

マミ「だって……」

マミ「もう無理なんだって、諦めろって……あなたがそう言ったんじゃない」

まどか「確かに、そうです。けど、そんなの絶対変だって……そう言ったのは」

まどか「マミさんでした。そ、それは……私もそう思います、思うんです
こんなの絶対おかしいですよ。それなのに、どうして諦めちゃうんですか?」 <> 1<>saga<>2012/01/21(土) 16:55:00.86 ID:ykRZJC9po<>
マミ「正直つらいの」

深いため息が漏れた。耳にくすぐったい音だった。
悲しみに沈むマミさんの姿。赤く染まり、目元が角度を下げる。
マミさんに似合わない、単調で湿気た表情だった。

そして気付けば、私は腰をおろしていた。
マミさんは笑みを途絶えさせ、物憂げに頭を掻いてため息を再びひとつ。

マミ「なぜって? それが、よくわからないの。
わかるのなら、こんなふうにウジウジ悩んでいないでしょう」

マミ「もうイヤ、考えたくないのよ……頭がおかしくなるんだもの。
ねぇ、ほら、こんな私に構うなんて時間の無駄だと思うでしょ?」

ぽつぽつと垂れる水滴のような言葉に、

まどか「……それは、よく分からないです」

マミ「私にも、分からない」

まどか「マミさん……もう、イヤだよ」

気持ちが寄り添ってしまった。今に始まったことでもない。私だって。
もう穴だらけだった。知らない間に心が崩れ、じょぼじょぼと溢れ出していた。

まどか「なんで、こんなことになっているのか、もうここ最近は何が何だか分からなくて。
頭がおかしくなりそうなんです。ほむらちゃんともう一人の私が、突然現れてから」

まどか「何もかも訳が分からないまま、ひどいことばかり起こって、
さやかちゃんも、マミさんも、まどかさんも、まったく笑わなくなって、
みんなみんな、バラバラになってって……」 <> 1<>saga<>2012/01/21(土) 16:57:42.07 ID:ykRZJC9po<>
まどか「私だって、もうイヤだけど、でもそれでも、私は魔法少女じゃないから。
みんなより、背負っているものが少ないから、やれることは、やらなくちゃって、
思ってきたけれど……」

だんだん飛び飛びになっていく。言葉がつながらなくなり、何を言っているのか、
もうわからない。魔法少女でもないくせに、私は何を偉そうなことを……。

マミ「えらいわ。私なんかより、ずっとしっかりした子よ。鹿目さんはね」

マミさんは弱弱しい笑みを浮かべた。
その笑みを、マミさんが浮かべるから、私は笑えない。

まどか「そんなことないんです。
だって今、そう言いながら諦めちゃってるマミさんを、助けられないんだもん」

マミ「ごめんなさいね」

まどか「謝るっ……くらいなら……戦ってくださいよっ!!」

マミ「……」

まどか「……ごめん、なさい。マミさん。おかしかったですね、今の」

まどか「というか、最近もうずっとおかしいんです。わたし。自分が自分じゃないみたい。
私の中、迷路みたい。強かったり弱かったり。すごいおかしい、です」

ふと、マミさんは眉をひそめた。 <> 1<>saga<>2012/01/21(土) 17:00:33.15 ID:ykRZJC9po<> マミ「……分かっているでしょうけど、契約してはいけないわよ。
何か悩んでいるなら、なおさら」

案の定、すぐにフタをしようとするマミさん。
だけど私は前に出た。

まどか「魔法少女になれば、」

マミ「分かっているでしょうけど!」

ああ、もう!

まどか「じゃあ、どうすればいいの! いいんですかっ!」

マミ「……」

廊下のだれか。足音が静寂のリズムを打っていく。

またやっちゃった。
そしてやってくる、冷静。

まどか「……私はね、みんなに、マミさんに、生きていてほしいだけなの。
ねえマミさん、マミさんはどうしたいと、思っているの?」

マミ「それは……出来るなら、魔女を、人を、魔法少女をみんな、助けたいよ」

まどか「ホントに?」

マミ「ホ、ホントよ!」

まどか「そうですか……」


――なら、きまりだね。

――――――キュゥべえ。

QB「――呼んだかい?」

マミ「――!?」 <> 1<>sagesaga<>2012/01/21(土) 17:01:05.54 ID:ykRZJC9po<>
マミ「はいここまで!」

杏子「マミがケガしてから作中で2日しか経ってないらしい」

さやか「誰だよ時間操作してる奴」

ほむら「呼んだ? このまま行けば見滝原より先にこのスレが終わるわ」

魔まどか「そんな甘い話はないでしょ。QBあたりが次スレを立てるに決まってるよ」

QB「ボクは甘くないよ」

まどか「まどマミとかまどマミとか魔まどほむとかあとまどマミとか書きたいから仕方ないね」

マミ「あ、一応全体から見れば終盤には入っているから……。
3個も4個もスレが立つ心配はないでしょうね」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<>sage<>2012/01/21(土) 20:01:08.93 ID:MoyL2Egro<> お疲れ様でした。

あんまり妙なことをおっしゃっておられますと・・・・・・・・・・・・・・・。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)<>sage<>2012/01/21(土) 21:16:24.30 ID:tY323ango<> 乙!!

ふらぐたてるのいくないwwwwwwwwwwwww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/01/21(土) 23:39:11.62 ID:mcD4Vt/Xo<> 乙
まどマミ、魔どほむ……ふむ、続けて <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)<><>2012/01/27(金) 02:13:52.93 ID:dwZTxaHs0<> マミ「今日も紅茶が美味しいわ」668からの分岐改変が起きない平行世界
もし改変が起きない平行世界のマミがシャルロッテに死ななかったら OR マミ死亡後にまどかがマミ、QBの蘇生願いを願ったら
魔法少女全員生存ワルプルギス撃破
誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって
<> 1<>sage<>2012/01/29(日) 04:38:09.18 ID:BZmAVGk7o<> 一気に再開します <> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:38:51.40 ID:BZmAVGk7o<>
路地裏

〜魔まどか視点〜

いやらしく水気に満ちた風が回り、耳元に吹きかかる鼻息のように。
小動物みたいにせっかちな鼓動で刻まれて、分厚く沈んで腐っていくの。

魔まどか「もうおしまいだね、私たち」

魔まどか「私ね、ごめんなさいって言おうとしてたんだ」

魔まどか「けどもう、ダメなんだね。終わりにしなくちゃ、いけないみたい」

側溝を通る、濁った水がバシャバシャと遊んでいる。
穢れも淀みも、心地よい音色に変えて、すべて浮かべて運んでいく。

熱く火照った身体が底から冷やされていく。
ほむらちゃんは、目元の陰影を深めて、悄然としていて。
口は動かず、表情も動かず、戸惑った瞳だけがふるふると震えていた。

魔まどか「私からの、ほむらちゃんへのお願いは、たった一つだけだったの」

魔まどか「なんだったと思う――ほむらちゃん?」

胸を締め付けるだけ。口に出すだけむなしいもの。言葉なんて。
私の声、裏返って奇妙に高く、いつも以上にか細くて、おぼつかなかった。

ほむら「――えっ……と」

だけど、ほむらちゃんの瞳はまるで怒鳴りつけられたかのように大きく揺らいだ。
すべてがわざとらしく、学芸会レベルの下手な演技のようにしか、映らなかったけれど。

特に期待していたわけじゃないの。

最後まで分からないことばかりだった。結局何も伝えられなかった。
私の気持ちを分かってくれているわけがなかった。

ほむら「――えっと……えっと……」
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:39:44.61 ID:BZmAVGk7o<>
それを知ってなお問う私は、我ながら意地悪が過ぎていた。
極度の焦りがほむらちゃんの顔を苦痛に歪めていくのを見て。
私の奥底からゆっくりと首をもたげる、下品で腐った快感。

けっこう長くかかったと思う。
私の最後の良心が、ほむらちゃんを助けてあげてよ、と声を上げるまで。
要するに私って、そういうことだったんだな、と。浮かべた笑みは冷たくて。

魔まどか「分かんないよね……仕方ないよ」

粘土を噛んでいるように口が重たくて、相変わらず声は別人で。

魔まどか「ほむらちゃん、お花見のときのお話、ありがとうね。
隠さないで全部話してくれたよね、うれしかったよ」

魔まどか「みんなみんな、あなたのおかげで。悪いことは私のせいだから」

魔まどか「バイバイ、ほむらちゃん。私はもう二度と、あなたの前には現れない」

ほむら「へ……?」

やっぱりお花畑の住人だ。その顔。ほむらちゃん。
愛と憎しみが入り混じって混濁した頭に、その鈍感さがカチカチと火花をちらつかせる。

ほむら「な、何を言ってるのよ……」

どうして。わたしは当たり前のこと、告げただけ。
なのに、あなたは信じられないって顔、するの?
こんなところでさえ、分かりあうこと、できないってことなの?
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:40:14.40 ID:BZmAVGk7o<>
魔まどか「さやかちゃんを捜しに行かなくちゃ、だからもうお別れなの」

ほむらちゃんは知らない。だけど私は知ってしまった。
私の心の中には悪魔がいるってこと。その悪魔は、実は私自身だってこと。
その悪魔が、今までどれほどあなたのことを、侮辱してきたかってことを。

ほむらちゃんは知らない。

ほむら「何言ってるのよ……私たち、一緒に戦ってきたじゃない! 
この世界は今まで、うまくやってきたじゃない! ワルプルギスの夜まで、
あと少しのところでしょう! なのに! どうしてこんなところでお別れになるの!」

ほむら「どうして、そんなわけ分からないことばかり言うのよ……!?」

魔まどか「私がいなくなっちゃうことが、心配なんだね。でも大丈夫」

魔まどか「心配いらない。だって私は、ただの使い捨てだもん。使い捨てなりに、
ちゃんと私の仕事をする。ワルプルギスの夜を倒すよ。そして、私は消えるだろうけれど、
その時はちゃんとあの子が残るから、だから大丈夫。そんなに怖がらないで、大丈夫」

魔まどか「大丈夫だよ、みんなが幸せになれるなら、そこに私がいなくたって」

魔まどか「もう、ちゃんと受け入れたから」

ほむら「――――!!」

ほむらちゃんの無垢な瞳が光を放つ。耐えがたくて、私は暗闇に背を向けた。
奇妙に狭い視界で歩み始めると「まどか!」とほむらちゃんが叫んだ。

べたっと潰れるような音でそれが不自然に途切れる。
振り返って見ると、ほむらちゃんが思い切り痛そうに転んでいた。
よろめいて、荒い息をつきながら、それでも立ちあがろうとして。
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:41:11.69 ID:BZmAVGk7o<>
空中に弓が出現。した瞬間も分からず、閃光が走っていた。
ビシッという音が飛ぶ。その光の軌跡が頬をかすめて浅く裂き、鮮血が跳ねた。

ほむら「――っ」

ただのかすり傷だったにもかかわらず。
まるで心臓を射抜かれたかのように、ほむらちゃんは崩れた。

矢を射るのに弓を握る必要すらない。こんなのもう、ただの化け物だよね。

魔まどか「ついて来たら、怒るよ」

これはただの方便。意味も感情もない。魔法少女は人間じゃない。
その本当の意味は、こういうことだったんだろうか。

――わからなかった。

ほむらちゃんは変な顔で静止していた。
もはや言うことも何もない。私からも何もない。


ほんとうのおわり。


魔まどか「それじゃ今度こそ、さようなら」

魔まどか「ほむらちゃん」
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:41:49.20 ID:BZmAVGk7o<>


杏子「……なぁ、ほむら」

杏子「あいつから魔女の反応がするよ。止めなきゃまずくないか」

杏子「あいつが魔女になったらさ、世界、終わるんじゃなかったっけ?」

ほむら「――それより、杏子。あなたはさやかを捜しに行きなさい」

ほむら「それと、彼女のことだけど。彼女は魔女にはならない。その心配は無用よ」

杏子「……そんなこと言ったって、普通じゃ信じられないぜ」

ほむら「そうでしょうね、それでも……これは本当のことなの」

杏子「……あいつのこともあんたのことも、さやかの奴は、信じてた。
だから、あたしもあんた達のことは信じたいと思ってるんだ」

杏子「信じて、いいんだな?」

ほむら「ええ、いいわ」

杏子「じゃ、あたしはさやかを助けに行くけど……あんた、黙っていなくなるなよ……?」

ほむら「……」



ほむら「ええ、まどかは、決して魔女にはならないわ。決してね」

ほむら「だってあの子は、私たちとは違うもの。ただの魔法少女では、ないんだもの」
<> *は場転の記号みたいなもんです<>saga<>2012/01/29(日) 04:42:47.52 ID:BZmAVGk7o<>
病院

〜まどか視点〜

QB「――――――――」

額の中央に穿った一撃。大きく暗い穴が貫通していた。出血はなかった。
ただ可愛らしいぬいぐるみの姿が、ぱたっと空気の抜けたように崩れた。
そして、もう二度と何かを言うことはなくなった。

契約のことなんて頭から消え去っていた。
彼が私たちの苦しみの元凶であったのは、違いないけれど、
赤い瞳を晒して打ち捨てられる彼の姿は、いくら何でも哀れだった。

殺したのは、硝煙の揺らめくマスケットからのそっけない一撃だった。
その銃口はガタガタと震えて、撃ち手であるマミさんは恐怖とともに、それを手離す。
もう使えないはずの力。それは亡霊のように出現し、やはり亡霊のように消え去って。

マミ「そん、な、いや、いやぁっ、キュゥべえ!」

まどか「……」

マミ「キュゥべえぇ……!!」

キュゥべえさえ、いなかったら。
何度もそう考えたけど、それはこんな結末を望んでのことじゃないのに。
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:43:22.69 ID:BZmAVGk7o<>
ボロボロと大粒の涙を彼の死体に落としながら泣き縋るマミさんを見て、
私は心の中にぽっかりと穴が開いたように感じた。どうしようもなく空虚な気持ちだった。
悲しいとは思わないけれど、嬉しくもない。にわかには受け入れられないというだけ。

まどか「キュゥべえ……ホントに死んじゃったの?」

マミ「し、死んでるわけない! そうでしょ、キュゥべえ! ねぇ、答えて……!」

まどか「マミさん……キュゥべえは、もう……」

彼がいなくなることは、私たち人間にとって良いことのはずなのに。
得られたのはやや大きめの喪失感、ただそれだけだった。感慨は薄かった。
もうキュゥべえの声を聞くことは二度とないんだろうなということだけ、うつろに考えていた。

――それが覆されるなんて、思ってもみずに。


QB「自分で殺したくせに。君はやっぱり変だよ、マミ」

QB「それになんだい、ちゃんと戦えているじゃないか」


布団の中から。
あり得ない声が私たちの耳を通じ、そして彼が姿を現した。
マミさんはビクリと肩を震わせ、目を剥いて、嗚咽を止めた。

真正の白、ツヤの戻った赤い瞳。金環を抜ける長い耳。
影のようにスルリと布団を抜け出して、転がる姿は幻想ではなかった。
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:44:01.33 ID:BZmAVGk7o<>
QB「ああ、君たちは、僕が死ぬところを見たことがなかったね?」

QB「殺しても無駄だよ。身体なんてそんなもの、いくらでも替えがきくもの」

あり得ないことだけど、それがキュゥべえ。私はそう、変に納得していた。
本当に生きていた。死なないのがむしろ自然なことで。

彼はおもむろに自らの死体に近づき、咀嚼し始めた。
私たちは顔を見合わせてから、あとは何も言えずにそれを見つめていた。

しばらくして小さなげっぷが、夕焼けに染まる病室に間抜けに響いた。

まどか「た、食べちゃった……」

マミさんは長い間止めていた息を、やっと深く吐いた。
喜びなど欠片もない。華麗な双眸は、鋭く彼を刺しこんでいた。

マミ「……なんなのよ」

マミ「人を、バカにするのもいい加減にしなさいよっ……!!」

先ほどまでの涙が嘘のように、彼への怒りに満ちていた。
それを受けて、キュゥべえは答えもせず。

QB「さぁ、まどか。契約をやりなおそう」

抜けぬけと言ってのけた。
さすがに私も鳥肌が立って、大きく首を振った。

まどか「……やっぱり、ちょっと考えてからにさせて」

QB「それは残念だ。僕は殺され損じゃないか」

キュゥべえは特に執着を見せずに伸びをして寝転んだ。
マミさんからの強烈な視線を総身に浴びてもお構いなしの、ふてぶてしさで。
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:44:35.81 ID:BZmAVGk7o<>


『マミ! 聞こえるか!』

突如として場を揺るがす、脳内に大きな声が響き渡った。

声は……杏子ちゃん。
私とマミさんは顔を見合わせて、耳を傾けた。

マミ『……杏子、どうしたの?』

杏子『おい……気付いてないのか! 魔女が、いたるところに! もう何がなにやら! 
さやかは居場所もわからない。まどかとほむらは別の魔女に当たってる、はず!』

杏子『あたしは今、土手に現れたのを叩きに向かってる! さやかのことだ!
魔女に突っ込んで死のうとしてても、おかしくないからね!』

まどか『ちょ、それ、いったいどういう――』

杏子『――けどっ、足りねえんだ! まだいるんだよ、病院の近くにも!
だからマミ、無茶でも何でもやってくれ! 戦ってくれよ!』

杏子『さやかのことだけど、あいつ今、ちょっと情緒不安定でね……分かるだろ?
たぶん、危険な状態だと思うんだ。そっちにさやかがいたら、助けてやってくれよ!』

マミ『美樹さんが危ないのね……それは……でも、私じゃ……』

杏子『ああくそ、もうまどろっこしい言い方はやめだ! 
よく聞けよマミ、魔女を助けたいんならな!』

杏子『魔女をぶち殺すしかないんだよ! あんたも分かっちまってんだろ!?』

マミ『わ、わかったわ……』

杏子『それでこそ魔法少女だよ――――じゃ、頼んだ』

怒涛のようなテレパシーは唐突に途絶えた。
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:45:38.93 ID:BZmAVGk7o<>
マミ「……じゃあ、行ってくるわね」

勢いで言わされたような感じはあったけれど、ともあれマミさんは引き受けた。
布団を抜けだして立ちあがる。その瞳が見据えるのは、左ではなく右。ドアではなく窓。
キュゥべえは興深げにその姿を見つめていた。マミさんは一呼吸置いて、踏み出し、


まどか「――私も行きます」

すかさず、私はその手をつかんでいた。
絶対に離してあげない。マミさんをひとりにはさせない。

マミ「なに言ってるの」

四角く街を切り取る窓の先には、危険に満ち満ちた外界が広がっている。
この白い病室は、戦いに疲れ果てたマミさんに残された、唯一の安全地帯だった。
そこを飛び出すということが何を意味するのか、マミさんだって分かっているはず。

マミさんの表情は見えなかった。くるくると巻いた髪が隠している。
金の光に縁取られた輪郭のラインが倒れて、やがてこちらを振り向く。

マミ「ダメに決まっているじゃない……!」

首を大きく横に振って全力で拒否するマミさん。
だけど私には勝算があった。

まどか「足手まといだから……?」

マミ「あなたは、魔法少女じゃないからよ。付いてきてはいけないわ。
本来、あの結界は人間の立ち入る領域ではないのよ、当然でしょ?」
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:46:48.52 ID:BZmAVGk7o<>
まどか「それだけ、ですか」

マミ「それだけ、で十分でしょう」

まどか「……忘れちゃったの、マミさん? 私、あの子と同じ素質があるんだよ」

まどか「私がマミさんを死なせない。連れてってくれないなら、契約します!」

マミ「バカなこと――!」

まどか「――杏子ちゃんが!」

まどか「さやかちゃんも危ないみたいなこと、言ってました。
それでも黙ってここで待て、って言うんですか? 前にも言っておいたはずですよね」

まどか「みんなが危険な目に遭ったら、契約するかもしれないって、言いましたよね」


QB「いつだって契約できるよ、まどか」

まどか「今がそのときだって、気がしてるんです。もう我慢するのはおしまい」

まどか「――さぁ、行きましょう、マミさん」


マミ「……本当に、仕方がないわね!」
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:47:26.69 ID:BZmAVGk7o<>


〜ほむら視点〜

二手に別れる道と風景は対称、その軸上に位置するのは、私に不釣り合いな西洋建築。
なぜここに帰ってきてしまったのかは、よく分からなかった。

ちょうど時は夕暮れで、街の人たちが家路を急ぐ中、特段怪しい行動ではなかったのに、
誰かに監視されているような気がしたのは、私が悪いことをしている証拠かしら。
暗い背徳感が頭上から降りてきていて、かといって足を止めようとは思わず。

ほむら「……ごめんなさい」

自宅に入り、扉を閉めてしっかりと鍵をかける。
そうやって、背徳感を閉めだそうとしてみたけれど、無駄だった。出てくるの。
どこからか、鍵穴からか覗き穴からか、それとも私の口の中からか、気付けば元通り。

暗い背徳感に包み込まれる。

ほむら「……ごめんって言ってるでしょう」

入ると、真っ先に広い空間に出る。
中央に円形の台座が、周囲にワルプルギスの資料が、それぞれ配置されている。
今の私にとっては、嫌な思い出の舞台でしかない。足早に通り過ぎて先を目指す。

扉の前で、靴を脱ぐ。開けると、奥に向けて廊下が続いている。
右手に寝室。左手はお手洗い。正面はリビングへと続く廊下の扉。

数歩進んでもう十分と、軽く息を吐いた。

やり残したことが何か無かったかなと、未練たらしい思いが浮かんだ。
しかし時間はあまりない。切り捨てる必要がある。
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:50:06.26 ID:BZmAVGk7o<>
背徳感は視界の端々に残る闇に溶け込んで、じわじわと囲い込んできていた。
そいつらに殺される前に、事を済ませる必要がある。心が死ぬ前に、消え去る必要がある。

私は変身した。

一瞬だけ、紫の眩い光が廊下の闇を晴らしたものの、すぐに再び溶けていく。
むなしい明かり。私の希望の末路に思えて、そんなのはくだらない感傷と切り捨てる。


ほむら「……」

いざ、砂時計に手をかけると何もできないものね。
脳裏にこの世界での記憶が巡り巡って、こういう時だけいいことばかりを思い出すの。

まどかの使った「お別れ」という言葉がふさわしいわ。
私も、みんなにお別れを告げてから動くことにしよう。それくらい許されるはずよね。


ほむら「……さやか、杏子、巴マミ。次の世界ではあなたたちのことも救ってみせる」

ほむら「今度こそ誰も切り捨てないし、自分に嘘も吐かないから、それで許して……」

いいことばかりでは、もちろんなかった。
ひとつの記憶がズキンと脳を痛みつける。それはまどか。私の友達。


――まどかのためにって、本当は自分のためでしょ!


私は 「まどかのために」 戦えない。おそらくは、もう二度と。

何を言われようと次の世界に渡れば関係ないと、インキュベーターなら言うだろう。
けれどそれはウソ、だってまどかに言われた言葉は、消えないもの。
他でもないあなたに否定されてしまったのだから、私は永遠にそれを、背負うのだろう。
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:51:18.64 ID:BZmAVGk7o<>
会いたいよ、まどか。
でもあなたが拒むのなら、もう仕方がないとしか、言いようがない。
また次の世界であなたに会えるのを、待つしかない。今度こそと願うしかないんだ。


――そうやって逃げてれば、楽だよね


大丈夫、元に戻っただけだもの。
まどかと最初からやり直そう、みんなとも最初からやり直そう。
私はもう何度も繰り返してきたんだから、今更なにか思うこともないわ。

夕闇はすでに夜に沈み、廊下の闇が深まり、足もとまで迫っていた。

乾ききった唇を舌でなめて、右手の握力を強めた。上手く掴めないわ。
モタモタしていると闇に呑まれる……、早く時計を起動しなくちゃ、でも。
でも困った、廊下に落ちている。ホコリが。もしくは風に混じった変な臭いが。

砂時計に手をかける。時間を戻して、再びやり直す。切り捨てる必要がある。
もう十分みんなに謝っただろう。全ては次の世界に向けて。この世界に未練を残さず。
右手で盾を握りこみ、ちょっと強めに引くだけよ。なんて簡単なの。二秒で済むわ。

本当に

本当にこの世界はとても上手くいっていた。途中まで。とても惜しかった……。
それでいいじゃない、十分頑張ったし、次はきっとうまく行くわよね。
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:52:16.72 ID:BZmAVGk7o<>

私にとってのほむらちゃんは、前の世界のほんとの私を知ってる、


―――――――たった一人のほむらちゃんなんだよ?


――それなのにほむらちゃんにとって、私は


――――――――――――――たった一人じゃないんだね
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:53:16.27 ID:BZmAVGk7o<>
バカみたいに長い時間、バカみたいに突っ立っている私。

バカみたいに逃げ出して、バカみたいに甘える私。

バカみたいに逆上して、バカみたいにバカみたいに――――。



――――ガコンッ!!

正面、廊下の扉がへこみ、蝶つがいを振り切って吹っ飛ぶ。
リビングに突っ込み、ソファに突き刺さり、さらに飛び跳ねて、窓ガラスにヒビを入れる。


ほむら「う……―――ううううううううう!!!!」

それを追うようにリビングへと駆けこむ。
足が、床板を変形させて、何度も叩きつけられる。
滑稽な姿だと自覚していたって止まらない。叩きつけなきゃ内から壊れてしまうの。
床板を踏み抜いて転倒する。なお拳を打ちつけて、喚き散らして、バカじゃないの。


ほむら「私は、私は、なんて―――っ!!」

ほむら「そんなのイヤ! 別れたくなんてない! まどか! まどかぁ!」
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:55:17.51 ID:BZmAVGk7o<>
そんな私を止めるものがあるとは、思ってもみなかった。
だけど、それがある以上、止まらざるを得ないというもの。
沸騰した頭に冷静さが戻ると同時に、嗅覚が悲鳴を上げることになった。


それは部屋全体に満ちた、異臭――だった。


ほむら「まどかあぁ……っ!? うっ、な、なにこれ……!?」

さっきまでいた、路地裏の臭いに近かった。
つまりは、腐敗と嘔吐と下水の臭い。なんでここでそんなモノが。

ほむら「うっ……な、なんで、なんなの……」


私は叫びを止めて、ふと冷静になった。

さっきまでこの時間軸そのものを放棄しようとしていた卑怯者が、
自宅の異臭を気にかけるなんて、と我ながら冷笑的になる。
鼻を貫くこの臭いの異常さが、逆に平静な思考を戻してくれたのかもしれない。

臭いは部屋に充満していて、どこが発生源かは分からなかったけれど、
生ゴミなら台所だろうか。足を床から抜いて、向かった。

ほむら「――本当にひどい臭い、どうして」

狭く細長い台所の最奥に鎮座するのは、小さなゴミ箱。
それが溢れかえっていた。フタが閉まらないほどの量のゴミで。

ほとんどが食べ物だった。腐敗が始まっている上にぐちゃぐちゃに潰されていて、
さらにはごちゃ混ぜで、分かりにくいけれど、どうも調理済みの食材のように見えた。

その中にひとつだけ食材ではないもの――本が混ざっていた。
表紙が上を向いていた。それは私が買った覚えのない、料理の雑誌だった。
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:57:23.72 ID:BZmAVGk7o<>
そういえば、巴マミが門の魔女の結界内で、重傷を負った日――。
まどかは来るのが遅かった。だからこそ、あの日の夜には台所はきれいだった?

そういえば、私が一人勝手に外食して、二度約束を破った日――。
私も、早朝に家を出て行ったまどかも、台所には入っていなかった。だからこそ?

まどかは、私のために、二日連続でお夕飯を作ってくれていた。
私は、それを食べてはいない。じゃあ、その料理は、いったいどこに――。


ほむら「――――――っ」


こつん、と膝が床を叩いた。異臭だったものが途端に、とてもいい匂いに感じられた。
手を伸ばし、ためらわず両手に握りこんだ。ぬちゃっと音がして、指の間から出てきた。

ちなみに

その雑誌には、複数のページに折り目が付いていた。
開いてみると、手書きの文字が、蛍光ペンの下線が、たくさんたくさん。


私は家を、飛び出した。
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 04:59:25.17 ID:BZmAVGk7o<>
〜魔まどか視点〜

前のほうから気配を感じて、反射的に目を開いて顔を上げる。
涙を拭いて、ぼやけた視界を晴らして。


魔まどか「――ほむらちゃん!?」


にゃーお。
という鳴き声が響いた。

息が詰まって、数秒、その黒い猫の子と見つめ合う。
やがて、視界が下がっていく。再び汚い地面に埋められる。
瓦礫の山の中、無様にへたりこんで、さやかちゃんを助けに行くことすら放棄して、
甘えに甘えて、震えるしかない。弱くて弱くて、どうしようもなくて。


魔まどか「もう、ゆるして、ください」


近づいてきた猫が足にすり寄った。その玉のような瞳が清純に私を映す。
ボロボロと涙が溢れ、震える手で頭を撫でた。その子は逃げずにいてくれた。


魔まどか「ひとりじゃ何もできないの。強がってるだけで、本当は何も変わっていないの」


魔まどか「ほむらちゃん、ねえ、どうしたらいいの――?」


再び正面、今度ははっきりと足音が聞こえてきた。人間の足音だ。
私は信じられない思いで顔を上げた。本当に、本当に、来てくれたの!?


魔まどか「――ほむらちゃん!?」


まぶしい。まぶしい。
圧倒的な照明。そして、聞こえる声は。
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 05:02:41.66 ID:BZmAVGk7o<>


QB(未来)「ようやく、架け橋が通じる時が来た」

QB(未来)「まどかの、まどかを囲む世界への執着こそが、この世界の生命線だと、
彼女たちが知っていたなら、君をもっと大切に扱ったんだろうね」

QB(未来)「マミと同じだよ。君たちはいつもそうだ。ひとりはイヤだと言いながら、
勝手にひとりになりたがる。その奇妙な傾向を利用させてもらったよ」

QB(未来)「君は、家族を裏切り、自分自身に憎悪され、最も大切な親友とも決別した」

QB(未来)「これでもう、君がこの世界に執着する理由は、なくなった」
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 05:04:44.89 ID:BZmAVGk7o<>


「――1842時。一班。現場に到着」


「建物の倒壊を確認」「大丈夫かい! キミ!」「ケガはないか!」
「――傷病者の搬送を最優先に」「――しかし思ったより被害は」


頭にぐわんぐわんと響く声、サイレン、パトカーの白と黒と、赤色灯。
ピントが合わない。ぐるぐるぐるぐるぐるぐる。

ほむらちゃんじゃなかった。おまわりさんだ、なんでだろう。
ああ、ほむらちゃんがこの建物を爆破しちゃったからか。それじゃあ仕方ない。


――ちょっと、さわらないでよ。


さやかちゃんを助けにいかなくちゃいけないんだから。
ほむらちゃんに謝らなくちゃいけないんだから。

下から猛烈に強い桃色の光が溢れていた。私の胸の、ソウルジェムの輝きだ。
たすけて、たすけて、ほむらちゃん、たすけてよ。くるしいよ、ほむらちゃん。

ぐるぐるぐるぐる。

視界が回る。頭の中も回る。目も回る。

回って回って、ぐるぐるぐるぐる。


そして、暗転した。
<> 1<>saga<>2012/01/29(日) 05:10:09.40 ID:BZmAVGk7o<>


QB(未来)「ずいぶん遅くなったから心配だったけれど」

QB(未来)「やっとやっと、この時が来た。しかも滞りなく流れているみたいだね」

QB(未来)「時間軸を超越するこれほど膨大な魔力の供給、全くさすがというしか無いよ。
これで僕の狙いはほぼ達成されたと言える。ありがとう」


QB(未来)「まどか、君は奇跡の救世主なんかじゃない」

QB(未来)「君の願いが魔女を潤し、この世界に最悪の絶望をもたらしてくれるのだから」

QB(未来)「だったら、こう呼ぶのがふさわしいじゃないか」


QB(未来)「――最悪の魔女の化身、鹿目まどか」
<> 1<>sagesaga<>2012/01/29(日) 05:10:55.05 ID:BZmAVGk7o<>
マミ「今日はここまで」

さやか「眠気なんて簡単に以下略」

杏子「3,4スレはホントにないです」

ほむら「私の家の構造は独自設定ね」

まどか「独自設定だね」

魔まどか「呼ばれた気がする」

マミ「おやすみフィナーレねむねむね……」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/29(日) 05:22:50.95 ID:RsCNbjbAo<> 乙フィナーレ!
関係ないけど魔まどかさんって素手でコンクリ破壊しそう <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/01/29(日) 08:13:31.07 ID:VTBEPH/Po<> 乙
魔まどかさんラスボス化しちゃうんです? <> 1<>sage<>2012/02/18(土) 22:09:37.83 ID:+2ts+odto<> 今日と明日はがんばる 再開します <> 1<>saga<>2012/02/18(土) 22:10:23.82 ID:+2ts+odto<>
上司たちの阿鼻叫喚の様を前にして、一人の若い婦警が棒のように立ちつくしていた。
野次馬を追い払う仕事をしなければならないはずだったが、もはや必要はなかった。

「何をしてる! 早く応援を呼べよ!」「応答願います――」「退避しろ!」
「強い妨害電波が――」「狙撃か?」「いや……」「ぎゃあああああああああ!!!!」

最初は爆発だった。
何の前触れもなく、一台の警察車両のボンネットにマンホール大の大穴が開いた。
車両を内側から引き裂く悲鳴のような音が響き、次の瞬間、大破炎上した。

車内に残っていた彼らの長は、その一瞬で炎に包まれ、輪郭は影に消えた。
野次馬は唐突な熱波に腰を抜かし、一目散に離れていく。

異常事態。
それでも残された彼らはプロとして、この異常の意味を理解しようと試みた。
爆破事件の現場に派遣された彼らは、ありとあらゆる爆破の手法に精通していたが、
結論から言って、残念ながら、それらは何の役にも立たなかった。

爆破を受けて、周辺への警戒を密にするが、すでに遅い。
襲撃者はすでに次の獲物を襲っていた。一人の警官が腹に大穴を開けて即死する。
まるで見えない巨大な槍で貫かれたかのように、綺麗な円形にくりぬかれていた。

彼らは理解できない。なぜパトカーは数メートルも打ち上げられているのか。
パトカーが回転しながら宙を舞い、警官を押しつぶし、爆発し、
逃げる者に破片が数十本と突き刺さっていくのか。

――ごめんなさい。

宙を舞う中、声が聞こえ、薄く閉じかけた視界に垣間見る。
奇天烈な出で立ちをした黒髪の女の子が、コマ落ちしたアニメーションのような動きで、
謎の襲撃の嵐も意に介さず、惨劇の中心に向かってくるのを。

彼らは理解できない。
なにも理解できないまま、全滅した。

破壊の中心に、静かに眠りに落ちる少女を残して。
<> 1<>saga<>2012/02/18(土) 22:14:45.53 ID:+2ts+odto<>


ほむらは走っていた。
乱れる息を裂きながら、恥も外聞もない全力疾走。
それは一人の少女に許しを請うため。この世界に残る許しを請うためだった。

途中、必死の形相で転がるように走る集団とすれ違った。双方に余裕なし。
T字路に差し掛かる。直進か、左折か。考える間もなく到達する。そして。

ほむら「――はっ!」

ダン!と右足を叩きつけて急制動をかける。そのつま先を掠めるように、
深くえぐり取られる石畳。そのまま壁まで一息に掘り進み、聞く耳を軋ませる。
おぞましい音と傷跡が威力を誇示した。一歩の差で、同様に引き裂かれていただろう。

ほむらは、物騒な襲撃者に向き直った。

もとより魔女の気配は感じている。
破壊の中心にいるまどかは、安らかな寝息を吐いている。これは予想通り。
しかし、この惨状はまったく予想だにしないものだった。

彼女の頬は猛火の勢いに当てられ、じりじりと削られていく。
見ればまさに死屍累々。貫かれ、押しつぶされ、動かなくなった者たち。
ぷちっという音がした。小さくて、その音は炎の燃え盛る中に消えた。
ほむらの唇に自らの歯が食い込み、小さな血の玉が膨らんで、弾けた。

ほむら「……まどか、いま助けるわ」
<> 1<>saga<>2012/02/18(土) 22:16:55.01 ID:+2ts+odto<>
電撃のように飛んだのは、先の警官を襲った、腹を抉る刺突。
不可視の槍は瞬きの間に狭い路地を抜け、棒立ちのほむらを突かんと迫る。
大穴が開いた。しかし、さすがにコンクリートの壁は貫通出来なかった。

前に。
既にほむらは躍り出ていた。不可視の槍など問題にならない3回の瞬間移動が、
猛攻をかいくぐり、彼女をまどかのもとへと導く。素早くその軽い体を抱え上げる。

と、石畳が盛り上がり、みしみしとひび割れが走った。彼女は瞬時に理解する。
地を割って飛び出す槍を危うく回避し、投げ飛ばされてきた車もやり過ごし、
3階建てのビルの屋上まで、一気に距離を取る。

猛攻がやんだ。

周囲を照らしている炎の赤が、真っ黒になった。それだけではない。
視界すべてが、単調なコントラストに塗り替わっていく。地形も位置関係も掻き回す。

それは、今更な結界発生の光景。
距離感も失せていく中で、決して離さないように、ほむらはまどかを抱きしめる腕に力を込めた。
<> 1<>saga<>2012/02/18(土) 22:22:09.77 ID:+2ts+odto<>
白と黒。
影の世界に、惨劇がそのままの形で持ち込まれていた。
真っ黒に燃え上がる警察車両の残骸、動かない警官隊たち。
そして、たった二人だけ、生き残った者たち。

ほむら「まどか……まどか……目を覚まして……」

一方的な蹂躙の光景の真ん中で場違いに、天使のような寝顔をさらす少女。
彼女を腕に抱きながら、ほむらはふと、バカな妄想に走る。

こんなに幸せそうに眠るまどかなら、私のことを許してくれるかもしれない。
それどころか、私のしたことなんて、なかったように、笑ってくれるんじゃないかしら。

ぴく、とまどかの目蓋が動いた。

ほむら「……まどか!」

魔まどか「ん……ほむ、らちゃん……?……なに、があっ、たの……あっ!?」

とろんとした寝惚け眼が、瞬きひとつで、理性の色に染まる。
同時にバッと起き上がり、その腕からはっきりと、逃げ出していた。
開いた距離は、二人の心の距離だった。

ほむら「あっ……」

魔まどか「……」
<> 1<>saga<>2012/02/18(土) 22:26:00.08 ID:+2ts+odto<>
魔まどか「……おまわりさんたちが! し、しっかりして! 目を覚まして……!」

動かない警官隊の肩を懸命に揺するまどか。
肉体の大部分を損失したその男が生きているはずはなかった。
しかしまどかは構わず、揺することで息を戻そうとするかのように、揺すり続ける。

魔まどか「イヤ……死んじゃイヤ……どうして、いつも……!!」

その肩に遠慮がちな手が置かれた。

ほむら「まどか、もう遅いわ……私が来た時にはすでに皆殺しだったの……」

魔まどか「……っ離して! 私はもうあなたとは……!」

びくっと肩が跳ねあがり、ほむらは熱いものに触れたように手を戻した。
まどかの嗚咽が、彼女の周囲に不可侵の領域のあることを、嫌でも認識させた。
締め出されたほむらは、現実に打ちのめされ、遠い声をかけることしかできない。

ほむら「ごめん、なさい……」

魔まどか「ひどい……なんで、こんなことに……これ、私がやったんだっ!」

ほむら「いいえ、殺したのは魔女よ、あなたじゃ――」

魔まどか「――私がやったんだっ!」

ほむら「まどか……」

抑えきれない渇望が、ほむらを再び前に進めた。もうまどかに触れずにはいられない。
今度は露骨に思い切り振り払われた。そのまま立ち上がり、殺意すら籠る目が刺す。

魔まどか「……離してって言ってるでしょ!」
<> 1<>saga<>2012/02/18(土) 22:29:30.49 ID:+2ts+odto<>
ほむら「ま、待って!」

まどかは結界の奥へと、迷い込むようにふらふらと歩き始める。惨状を残したまま。
置いて行かれそうになり、慌てて追いかける。もっと誠実に謝れば、きっと……。

ほむら「ごめんなさい! この二日間、あなたを一人ぼっちにして、ごめんなさい!」

魔まどか「……気安く、話しかけないで」

返答はひたすら気だるく、そっけなかった。迷惑電話への応答程度の注意だった。
しかしほむらは、この期に及んでまだ言葉が通じると信じていた。

ほむら「私、バカなの。あなたが怒っていた理由が今更になって分かったの」

魔まどか「……」

二人は急な断崖に突き当たるが、まどかは躊躇なく飛び降りようとする。
その手が掴み取られ、ぐっと引き戻された。邪魔をするなとばかりの眼光が突き抜ける。
ほむらは一瞬怯んだが、それよりも謝りたかった。まだ自分の勘違いには気付いていなかった。

ほむら「……お願い、聞いて! もう絶対にウソは吐かないから!」

魔まどか「……?」

ほむら「あなたの気持ちを踏みにじるようなことをして、本当に申し訳なかったと、
思ってるわ。でも、私は嬉しかったの。あなたの気持ちが、嬉しかったの」

ほむら「だから、あなたのために、何でもしたいの! それから言いたいことは全部言ってほしいの! 
私は何でもあなたの言うとおりにするから! だからもう一度、チャンスを……!」

魔まどか「……そんなことで怒ってるわけじゃないもん」
<> 1<>saga<>2012/02/18(土) 22:32:55.72 ID:+2ts+odto<>
ほむら「え?」

それは片方にとってのみ、想定外の反応だった。
まどかは掴まれた手を逆に引いて、断崖に身を投げた。

軽い着地。
と同時に、結んた手が離れ、まどかは数歩だけ前へ走り、二人の間に必要な距離を取る。
立ち止まった背中が、振り返らずに、声だけを届けた。

魔まどか「……もうおわり! 言ったよね? 
私たちはもう友達でもなんでもないんだよ! 赤の他人です!」

ほむら「でも!」

胸に走る鋭い痛みをこらえ、ほむらは食い下がる。

ほむら「それじゃ、私はどうすればいいの!? あなたの消滅まで、時間もないのに!
望みを言ってよ! 何でもするわ! 夜には帰るわ! あなたのためにご飯も作るし! 
グリーフシード集めも一人でやってあげる! だから――」

二人は、女神の巨腕に乗って歩く。その先端に、孵化寸前のグリーフシードがひとつ。
ここでまどかは、ようやく振り返った。対話のためではなく、決別のために。


魔まどか「――ほむらちゃん、あんまり私を怒らせないで」


桃色の宝石がいきなり眼前に、突き出される。
思わずのけ反ったほむらに、まどかは奇妙な言葉を投げかける。


魔まどか「見てこれ。私のソウルジェム。きれい?」

<> 1<>saga<>2012/02/18(土) 22:40:22.12 ID:+2ts+odto<>
ほむら「えっ?……はい」

まどかはその返答に満足したように笑って、一息ついた。
ほむらは意図を掴めず、困惑して、指輪型に戻されるソウルジェムを見つめていた。
意図は、すぐにわかった。まどかが明かした。


魔まどか「……おかしいなぁ、私もう絶望してるはずなのにね」

ほむら「!!」


いつの間にか、まどかはまったく笑っていなかった。


魔まどか「――ほむらちゃん、あんまり私を怒らせないで」


もう怒っていた。当たり前だ。彼女は騙されるのが大嫌いなのだった。
おためごかしを並べ立て、躊躇なく他人を欺くほむらは、まどかにとって、
あのインキュベーターとさえ、大差ない敵意の対象となり果てていた。

しかしほむらは、この期に及んでまだ言葉が通じると信じていた。


魔まどか「もうごまかされるのだけはイヤなの! 話してよ! どうして話してくれないの!?」

ほむら「……そ、それだけは、話せないわ! まどかのために、話すわけにはいかない! 絶対に!!」

魔まどか「また、 まどかのために って言う――!!」


双方の心を締め付けるだけの言い合いは、幸か不幸か、始まってすぐに終わった。
ハッとして、二人してグリーフシードへ向き直り、瞬間、それぞれの武器を構える。

一度休眠していた魔女がふたたび目覚めようとしていた。
武器の向きを合わせ、視線は前方、声だけを交わす。


ほむら「これは影の魔女よ。注意して。もう以前と同じ強さとは限らないわ」

魔まどか「ほむらちゃんこそ、慣れてるからって油断しないでよ。
これが済んだら、本当のことを話してもらうんだから――――」


魔まどか「――――だから、負けないでね」


二人は、勝てると思っていた。
<> 1<>saga<>2012/02/18(土) 22:42:05.38 ID:+2ts+odto<>


青い夜の帳が下りていた。
円形の噴水広場を、縦に並んで、二人が歩いていた。
見滝原中学の制服姿だった。夜遊びした挙句に歩き疲れた、ようにも見える。

周囲の様子はあまりにも平穏な日常そのままだった。

広場の全員に聞かせるように大声で騒ぐ集団とすれ違い、二人は距離を縮めた。
無言で歩く二人に注意が向くも一瞬、雑踏に消えて行く。

広場を抜けて、紅茶店や花屋などが立ち並ぶ洒落た路地に入る。
まどかはレンガを踏んで、黙々とマミの後ろについていく。

そんな葬式のような顔をしなくてもいいのに、とマミは同情混じりの思いを流した。
そして、自分もつい先までこうだったのか、と思って少しおかしくなる。

まどか「……」

マミ「……」

病院を出ると、何のことはない。世界は何も変わっていない。
マミは自分の殻を破って初めて、この沈黙が痛いと感じた。
ずっと続いていた沈黙を耐えきれずに破る。もちろん話題は選んだ。

マミ「美樹さんは、おそらく大丈夫だと思うわ」

マミ「……私なんかが言っても、説得力がないかもしれないけど」

沈黙の圧力が、余計な一言を追加させた。
<> 1<>saga<>2012/02/18(土) 22:44:51.86 ID:+2ts+odto<>
まどかはマミの気遣いを感じつつ、簡単に寄り添う自分を許さない。
知らず、もう一人の自分と同じ道を歩みながら、まどかも変わってきていた。

まどか「マミさんには、さやかちゃんのことは分からないんです……」

マミ「分かるわよ。上条君でしょう?」

まどか「!……はい」

マミはより深い理解に立った笑みを浮かべていた。
ガス灯を模したダイオードの街灯の青い光のもと、二人は進む。

マミ「もう一人のあなたに聞いた話でね、前の世界では彼女は今よりもっと悪い状況だったらしいの」

まどか「もっと悪い……? そんなの、あるんですか?」

視線を落とし、レンガの溝を目で追いながら、想像もつかない光景を思いやる。
マミも、話に聞いただけのその光景を、惨劇を、思った。

マミ「……聞きたいの?」

なぜか、マミは挑戦するような声色で聞いていた。
かつてもう一人のまどかに同じように聞かれ、マミは躊躇なく「聞きたい」と答えていた。

これは鹿目まどかに対するズレた挑戦だ。ズレていると、彼女自身も自覚した。
しかして、まどかは顔を上げ、まったく簡単に返答してみせた。

まどか「ううん、今はこの世界のさやかちゃんを助けなくちゃ」
<> 1<>saga<>2012/02/18(土) 22:47:12.21 ID:+2ts+odto<>
マミ「そうね……ええ、今の彼女には、たくさんの仲間がいるわ」

打たれたような笑みが、マミの口元に浮かんだ。完全な敗北は、むしろ心地よく感じられた。
これから向かう戦場で、果たして守られるのはどちらかしら、などと考えてしまう。

まどか「今日のさやかちゃんは、なんだか様子がおかしかったし……。
それに、それに、ほむらちゃんも……おかしかった」

まどか「わたし気付いていたのに、何もしなかった……あの二人と、仁美ちゃんと、
きっと何かあったんだ……全部、私の……」

マミ「私のせいだなんて言わないで……それはこちらのセリフよ」

まどか「マミさん……?」

マミ「あなたが美樹さんと別れて、私の所に来なければいけなかったのはそもそも……」

まどか「やめてください」

まどかは決然とした声で遮った。失敗を悟りマミは口を結ぶ。
今度は沈黙も短く、進み出たまどかがマミの横に並んだ。

まどか「マミさんは、前の世界のことを知ってるの? 
私たちに何があったのか、これから何が起こるのか……」

マミ「聞かなければよかったかもって、少し後悔してるわ」

まどか「分かります……」

まどかはお菓子の魔女とマミの戦いを思い出した。
この世界ではもう一人の自分が魔女を撃退してくれたものの、前の世界では……。
推測から結論への到達。まどかは敢え無く命を散らしたマミを幻視していた。
<> 1<>saga<>2012/02/18(土) 22:57:06.07 ID:+2ts+odto<>
そして今更になって、もう一人の自分が少しかわいそうになった。
マミさんを目の前で失って、もしかしたら他のみんなもそうなって……。

それでもしかし、自分に向かって「大丈夫」と笑ってみせた。
門の魔女との戦いに助けに来てくれなかったのも、何か事情があったのかもしれない。
やがて諸々の思いが極まり、一つの質問の形でこぼれ出た。


まどか「もう一人の私は、マミさんを幸せに出来ましたか」

マミ「……簡単に答えられることではないわね」

まどか「じゃあ言い方を変えます……前と今と、どっちが幸せでしたか」

マミ「前の世界では、少なくとも最期まで魔法少女の正義を信じていられたのよね」

マミ「でも、この世界は……いいえ、やめましょう」

マミ「だって、そう、この世界はまだ終わっていない」
<> 1<>sagesaga<>2012/02/18(土) 23:00:45.20 ID:+2ts+odto<>
マミ「今日はここまで……というか今から続き書くの」

まどか「次回は説明回になっちゃうかも」

ほむら「つまりは淫獣登場ということね」

マミ「最後に、次回は明日、とのことです――――ええっ?」

大丈夫です、なんとか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/18(土) 23:05:04.12 ID:gIEjwPzM0<> 乙ですたー!
魔どかさんとほむほむのすれ違いっぷりが辛い・・・
そして、ガンガレマミさん。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/18(土) 23:15:45.20 ID:NkYmqy8vP<> 希望が見えねえ…
いつでも待ってますぜ <> 1<>sagesaga<>2012/02/19(日) 11:21:19.32 ID:+mJdZNWxo<> ゴタゴタする前に再開 <> 1<>saga<>2012/02/19(日) 11:21:48.81 ID:+mJdZNWxo<>


水滴に映る見滝原の夜景が許容量を超え、一滴引かれて落ちる。
天井に走る良く冷えたパイプから、さやかの頬を濡らす。

ここは、かつてほむらと初めて共闘したとき、教えてもらった狩り場だ。
出てきたのは使い魔だけだった。八つ当たりにはちょうどいい、と特に気に留めない。
そう、これはただの八つ当たり。何らかの焦燥に追われているわけではない。

ただ、さやかはムカついていた。
なぜって、ソウルジェムをもう一度確認すれば分かる。やはりまだ、綺麗なままだ。
そこにあるべき濁りがないことに、心底ムカついていた。

さやか「……なんでだよっ!」

QB(未来)「わからない」

遠く小さく答えがあった。無人の空中通路は光も弱く、一般的には危険な場所。
でも、この声には覚えがあった。予想通り、小動物が影を割って歩み出てくる。

QB(未来)「魔女になるかと期待したのに、どうもなりそうもないね」

さやか「あんた……ねぇ、おかしいよ、恭介取られたんだよ、あたし! 
なのに、これっぽっちしか絶望出来ないなんて!」

さやか「あたしの想いはこの程度だったって言いたいわけ!?
あたしは、恭介が……こんな、こんなに、こんななのに……!」

QB(未来)「失った時の絶望は、かけた想いに比例する。
自身の願いに裏切られて絶望する魔法少女を、僕は数え切れないくらい見てきたよ。
君もその例に漏れず、魔女になるはずなんだけどね……?」

QB(未来)「過去の君自身の例から言っても不可解だ……。
なぜ君が未だに絶望しないのか、正直に言って、僕にも良く分からないよ」
<> 1<>saga<>2012/02/19(日) 11:23:23.32 ID:+mJdZNWxo<>
キュゥべえは言葉を切って、さやかのソウルジェムを観察した。
理性的な言葉がさやかの狂熱を冷ましていくと、酷薄な現実が垣間見えてきた。
さやかは、くす、と自嘲的な笑いを浮かべた。

さやか「これじゃ仁美に負けて当然だよね」

さやか「やさしい人たちに囲まれて、ぬるくなってたのかな……?」

QB(未来)「杏子とほむらのことを言っているのかい?
彼女たちはお世辞にもやさしいとは思えないけど……」

さやかはキュゥべえの隣に腰を下ろし、自分のソウルジェムを眺めた。
感情のない悪魔との会話は、疲れたさやかの精神にとって適温だった。

さやか「はは。そりゃ杏子もほむらも、ハタから見てりゃとんだ悪党だけどさ。
そう考えてみれば、なんであたしもあんな連中とつるんでたのか……」

QB(未来)「初期値のズレが引き起こした結果の変動と言ってしまえばそれまでだけど、
少なくとも前の時間軸では、君は彼女たちとは一応の敵対関係にあったんだよ?」

さやか「前の時間軸……か。そのあたしはお利口なことだねぇ……」

さやか「けどね、なんつーか、違うのよ。多分そのあたしは、知る機会がなかったんだね。
だけど、今のあたしは分かってる」

QB(未来)「何をだい?」

さやか「良くも悪くも、魔法少女の中身は人間なんだなぁって、こと」
<> 1<>saga<>2012/02/19(日) 11:25:51.25 ID:+mJdZNWxo<>
QB(未来)「え? いや、魔法少女は人間じゃ……」

さやか「人間ってのは、反省できる生き物よ。根っから腐った奴でもない限り、
話をすることくらいは出来るの。それどころか、あいつらは……うん、そうだよ」

さやか「だからマミさんも、あいつらのことを追い出さなかったんじゃないかな?
あいつらだって、ああなんだ。なら私だって、いつかは人間として幸せになれるって、
なんとなく信じてたの、きっとそうなんだよ……!」

さやかは言いつつ立ち上がり、ガラス越しの夜景を全身に浴びた。
黄金の十字路を眼下に置いて、雲まで届く摩天楼を仰ぎ見る。
やがて、完全に置いて行かれていたキュゥべえは嘆息した。

QB(未来)「ああ、また君たち人間が好む、観念的な言葉遣い、だったか……。
すまないけど君が何を言っているのか、僕にはわからないよ」

さやかはバッと振り返り、何事か言おうとして、言葉を失ったように黙り込んだ。
さっとキュゥべえの前にあるソウルジェムを取り上げて、指輪型に戻す。
一時の熱は、一言の冷静で簡単に冷めていた。さやかの呟きは再び陰鬱にまみれた。

さやか「そうだよね、分かんないよね……。あたしは恭介が好きなのに。
それがこの程度の濁りにしかならない気持ちなわけないのに……」

さやか「やっぱ、違ったのかな。
魔法少女には感情なんてほとんどないようなもんなのかな……」

さやか「人間のふりしてるだけで、ホントはただのゾンビなのかな……」
<> 1<>saga<>2012/02/19(日) 11:27:53.94 ID:+mJdZNWxo<>
天井の良く冷えたパイプから、また一滴引かれて落ちる。
キュゥべえは頭に当たりそうになったそれを、尻尾で防いだ。
その正面に、さやかはふらりと座りこんだ。膝を折り正座、そして項垂れる。

さやか「あんた、魔女が生まれるときのエネルギーが欲しいんだっけ」

QB(未来)「まあそう思ってもらって差し支えない。正確には、希望から絶望への――」

さやか「――だったらさ、「僕と契約して魔女になってよ!」じゃ、ダメなの?」

天井の良く冷えたパイプから、また一滴引かれて落ちる。
さやかは頬にそれを受け、しかし拭わない。涙のように一線引いて流れて行く。
キュゥべえはしばし言葉を失っていた。人間で言うところの、驚きに目を見開いていた。

QB(未来)「君は……いや……」

さやか「どうなのよ」

QB(未来)「そうだね……システムとして成り立たないことはない」

さやかの追及に、キュゥべえはひどく歯切れの悪い答えを返した。
こんなことでは、さやかは全く止まらない。勢いよく、まくし立てるように、

さやか「なんで魔法少女をつくるの。人間でもないのに、人間みたいに生かされて、
これじゃただ苦しいだけだよ。私たちは、何のためにいるの。どうして、どうして?
あんたはあたしたちをこんな目に遭わせるのよ、こんなのもうイヤだよ、苦――」


QB(未来)「――まさにその苦しみこそが、僕たちの求めるエネルギー源だからさ」


さやか「どういうこと?」

QB(未来)「君が言う、人間を直接魔女に変換するシステムは、かつて存在していた。
けど、どうにも安定しなくてね。現行のシステムの成立過程で淘汰されていったんだ」

さやか「……?」
<> 1<>saga<>2012/02/19(日) 11:30:47.08 ID:+mJdZNWxo<>
キュゥべえは観念したように顔を上げ、改めて口を開いた。


QB(未来)「さやかは魔法少女の存在意義を知りたいんだろう? 
だったらそれはソウルジェムの存在意義を問うことに等しい。
その問いに対する答えを示すことで、僕は君の疑問に答えよう」

QB(未来)「結論から言うと、全てのエネルギーはソウルジェムから取り出すのが、
ベストなんだ。もしもソウルジェムがなかったら、と想像してみるがいい」

QB(未来)「つまり、生身の人間から直に感情エネルギーを抽出し、
不要物から魔女を生成し配置するというシステムだよ」

QB(未来)「問題は一点だけ。でも重大なものだ。
つまり回収効率が悪すぎるということに尽きる。かなりの確率で失敗するんだ」

QB(未来)「するとどうなるか。エネルギーが体内に残存したり、
非物質のまま感知不能なまでに拡散してしまったり、はたまた物理的に爆発して、
全エネルギーを浪費してしまったり」

QB(未来)「これではかえってエントロピーの増大を後押しするだけだよね?
そこでソウルジェムシステムが登場したわけなんだ」

QB(未来)「ソウルジェムは君たちの感情エネルギーを確実に安全に蓄積していく媒体だ。
エネルギーを人間の内世界という不安定な場に留めることを良しとせず、
ちゃんと目に見える形で外部へと集める……」

QB(未来)「このソウルジェムシステムの登場によって回収効率は飛躍的に向上し、
さらに地上に跋扈する魔女の駆除も同時に行えるようになった」


QB(未来)「魔法少女はきちんと役に立っているよ。僕たちにとって不可欠な存在なんだ」


長い説明を終え、キュゥべえはさやかの様子を確認した。
さやかはさっきからずっと項垂れたままで、微動だにしていなかった。
<> 1<>saga<>2012/02/19(日) 11:35:54.88 ID:+mJdZNWxo<>
QB(未来)「……聞いてたかい、さやか?」

さやか「……悪いね。あんまり聞いてなかったわ」

無論、しっかり聞いていた。

QB(未来)「やれやれ。君の高い洞察力には、少しは警戒させられていたというのに。
どうやら買いかぶりだったらしい」

QB(未来)「もっとも、君が道化を演じているだけで、
実はすべてを見通しているのではないかという疑いも、僕はまだ捨ててはいないわけだけど」

さやか「買いかぶりだよ。あたしバカだから……で、結局、何が言いたいのさ?」

QB(未来)「君の思い違いを正してあげようと思っただけだよ。
君はさっき「魔法少女には感情がない」と疑ったね」

さやか「……違うの?」

ようやくさやかの顔が上がった。
視界の中央に立ち、キュゥべえはあくまで冷静に宣言する。

QB(未来)「致命的な間違いだ。魔法少女にだってもちろん感情はあるさ」

さらに強く追加する。

QB(未来)「いや……なくてはならない。きちんと希望を抱き、きちんと絶望できる。
そういう子こそが、魔法少女の適格者だからね」

そして、問う。

QB(未来)「君はどうなんだい、さやか?」
<> 1<>saga<>2012/02/19(日) 11:37:27.76 ID:+mJdZNWxo<>
さやかは気圧されて、思わず視線を外していた。
再び鋼鉄製の床が視界を埋め、頬に当たる水滴に今度はびくりと震えた。
そんな自分が情けなくて、同時に許せなくもあった。

さやか「あたしは……ダメだよ。今は、半端に恵まれてるせいで、絶望さえできない。
かといって希望があるわけでもない」

さやか「でも、悔しいって、思うことくらいは出来る」

さやか「守りたいものも、ある……仲間だって、いる……」

そのとき、ソウルジェムが内からの光に強く輝いた。それは鼓動。
キュゥべえはここぞとばかりに高い声を上げた。さやかを鼓舞するように。

QB(未来)「ごらんよ、さやか! 魔女の反応だ! わかるかい? 
君にも素質があったからこそ、僕は君の願いを叶えたんだ!」

QB(未来)「君だって一人の魔法少女だ。魔女を倒せる。
そうすれば、この世界のために役に立てるだろうさ!」

さやか「……そっか」

キュゥべえに励まされて、さやかは立ちあがった。
そう、キュゥべえが、魔法少女を、励ましていた。

さやか「いろいろありがとうね、キュゥべえ。なんか見えた気がする」


さやか「あんた意外とやさしいね?」


QB(未来)「礼には及ばないよ。
僕は、僕の目的のために君を利用しているに過ぎないのだから」
<> 1<>saga<>2012/02/19(日) 11:43:12.22 ID:+mJdZNWxo<>
―――――――――――――――――――――――――――

このソウルジェムシステムは、まだ完成をみていない。
グリーフシードから得られるエネルギーは、魔女の持つ潤沢なエネルギーの
ほんの一部でしかないからだ。もしも、それを自在に取り出せるようになれば……。

……とにかく。

鹿目まどかが僕らに齎すデータは、極めて貴重なものになるだろう。
まどか、ひょっとすると君は本当の救世主になるのかもしれないね。
あるいは魔法少女が戦わなくてもいい未来が、本当に来るのかもしれない。
そうしたら、まどかの犠牲も無駄にはならないし、マミも喜ぶのかな……?

―――――――――――――――――――――――――――
<> 1<>sagesaga<>2012/02/19(日) 11:45:27.64 ID:+mJdZNWxo<>
マミ「今日はここまで!」

杏子「次回からは燃やしたり潰したり引き裂いたり!」

さやか「貫いたり打ったりなぎ倒したり!」

まどか「ただし展開の遅い」

ほむら「話に」

QB「」

マミ「次回はまた2月中に!」

ちなみに急に焦ってるのは3月はいろいろアレで投下できなそうだからです
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/19(日) 12:50:33.24 ID:hurfXQWJo<> 乙
だいぶ話を忘れてるな
他のSSと混線してる気がするので読み返してくる <> 1<>sagesaga<>2012/02/19(日) 13:35:15.51 ID:+mJdZNWxo<> ですよねー。あらすじ作ったんで良ければ使ってください。

【前の世界】
〜ワルプルまでほぼ原作通り〜
魔まどか「5人で生き残りたい」で契約、QB(未来)と共にタイムリープ。

【この世界】
魔まどかとほむらが合流、共闘。
シャルロッテ戦。魔まどかがマミを救う。
エリー戦。魔まどかが全員を救う。Wまどか初対面。スレタイ回収。
QBとQB(未来)が接触。
杏子戦。なんだかんだで和解。

花見。ほむらが魔まどかに何かを伝える。
魔まどかがソウルジェムの真実を暴露。
マミは魔まどかから前の世界の話を全部聞く。引き籠りに。
仁美のターン。ほぼ原作通り。
魔まどかが市外の魔女退治を始める。ほむらのために料理するが無駄に。
ほむさや初共闘。のち杏子も混じって3人で外食兼作戦会議。
まどかはマミの家に通うようになる。
イザベル戦(門の魔女× 芸術家の魔女○ 今気付いた)。マミ重傷。
病院で魔まどかと詢子さん対面。魔まどか「私はあなたの娘じゃない」。逃げる。
翌日。病院で魔まどかとまどか口論。まどかが一方的に魔まどかを敵視。
その夜。魔まどかはほむらのために料理(ry ほむら帰宅後大喧嘩。
ほむらは仁美の殺害を試みるが、さやかの妨害で失敗。
仁美は恭介が自分を取った宣言。さやか逃げる。
魔まどかからほむらへお別れの言葉。ほむらは帰宅後舞い戻ってくる。
QB(未来)「魔まどかは最悪の魔女の化身」発言。

エリー戦。魔まどほむの共闘(今から)。他の全員も別の結界へ移動中。
<> 1<>sagesaga<>2012/02/19(日) 13:38:11.11 ID:+mJdZNWxo<> 最後の行 エリー戦× エルザマリア戦○ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(岩手県)<>sage<>2012/02/19(日) 13:40:09.42 ID:gmAPxbeco<> ほむらが魔まどかに隠してることってなんだっけ? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/19(日) 13:42:40.57 ID:mw56j03f0<> 更新お疲れ様です


欝も絶望ももうあちこちで慣れたから大丈夫さハハハ
……お手柔らかにお願いします <> 1<>sagesaga<>2012/02/19(日) 13:45:13.23 ID:+mJdZNWxo<> >>849 まだ明かしてないから大丈夫 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/19(日) 14:21:02.94 ID:hurfXQWJo<> >>847
これはご親切にどうも
読み返したら思ったより鬱展開でワロス <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/20(月) 00:53:51.35 ID:m91FnEl1o<> 魔まどかさんにめちゃくちゃにされたい <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/02/21(火) 17:34:49.69 ID:y2Dlcvjso<> 進行遅いけど一番楽しみなss
ゆっくりでいいから頑張ってくれ <> 1<>sagesaga<>2012/02/26(日) 22:49:48.09 ID:yZ83ajeJo<> 前回とのシーンの順序を間違えた気がしなくもない こっちの話だけど

そして再開 <> 1<>saga<>2012/02/26(日) 22:51:45.23 ID:yZ83ajeJo<>
路地裏

〜杏子視点〜

上条恭介という男と、直接会ったことはなかった。
にもかかわらず、あたしはその男についてよく知っていた。

ただのなりゆきだよ。こちとら何の興味もなかったさ。
だけど、さやかの奴がそれはもう楽しそうに話すもんだからさ、聞いててやっただけなんだ。
その中で、まあ、あたしも律儀にフルネームで覚えてておかしいんだけどさ。
志筑仁美っていう女についても、聞かされた。というのも、これがさやかの恋敵らしくてさ。
こないだはどうなることかと思ったよー、なんて言っちゃって。おっと違う、その前だその前。

そう、なんとその志筑仁美が、さやかに抜け駆けで上条に告白したのさ。
あー、いや、抜け駆けってわけじゃないのかな? まぁいいや。でも結局なんとかなったわけ。
どうもうまくいかなかったらしくてね、ざまあないな。さやかも結構ホッとした様子だったよ。

だけどその時、あたしは思ったね。その志筑仁美って、まったくひどい女じゃないか? 
聞けば、良家のお嬢様で学級委員なんだとさ。見るまでもなくツラも透けて見えるってもんだよ。
とはいえ、あたしは口には出さなかったよ。そいつはさやかの親友でもあるらしいからね。
だから絶対に悪口なんて言うわけがないし、みんなさやかの勝手だと思ってたし。
勝利宣言をした挙句、祝福しろとほざくその精神にも、口をつぐんでいたよ。

でも……まぁ、限界ってのはあるよね。

限界。分かるよね? やっぱりさ、もう耐えられないんだわ。


杏子「――それが反省してる奴の言葉か!! ふざけんな!!」
<> 1<>saga<>2012/02/26(日) 22:55:58.28 ID:yZ83ajeJo<>
決してあたしの方から絡んだわけじゃない。第一、こんな奴の事はすでに眼中にはなかった。
あたしはほむらと別れた直後で、さやかの走り去った方向に駆け出そうとしたところだった。

夕日の断末魔も過ぎて、夜の闇はさやかの気配を覆い隠そうと迫ってきていた。
そんなときに、こいつはあたしを呼びとめたんだ。

曰く、


仁美「――さやかさんを捜して、あなたはどうするおつもりなんですの?」

仁美「――説得……それは、あなたに出来ることなのですか?」

仁美「――反省していますし、謝りに行くつもりですわ。
けれど、その相手はあなたではありませんから」


問答は続き、こいつの全く悪びれない態度にあたしの感情が爆発した。
他者に対してこれほどの怒りを抱かされたのは、久しぶりだった。

仁美「さやかさんとまどかさんが最近おかしかったのは、あなたのせいですの?」

志筑仁美はあくまでも強情に、主導権を握り続けた。
このひどい女の前に、たまらず逃げ出したさやかの代わりに、立っているんだと感じた。
感じて、絶対に負けるもんかとばかりに、足を肩幅に開いて構えた。

仁美「あら、そういえば……」

仁美「お二人の様子がおかしいなと思ってから、しばらくして、だったかしら……
彼の怪我が、唐突に完治したのは」
<> 1<>saga<>2012/02/26(日) 22:57:50.80 ID:yZ83ajeJo<>
そんなあたしを相手にせずに、ブツブツと独り言をつぶやいていたかと思えば、
ちらり、とこちらの顔を盗み見る。あたしは面白くない。いったい何なんだ。

用がないなら放置しよう、だいたい志筑仁美を言い負かしたところで、
先にさやかが魔女になっちゃったら意味ないんだし、とあたしが努めて冷静になろうとしていると、

仁美「……あらあら」

不意に、志筑仁美が愉快そうに笑うんだ。
再び視線を向けた先、仁美はわざとらしく横を向いて、あたしを避けた。

仁美「……魔法、少女……魔法、ですか……嫌ですわ、私、なんてことでしょう」


仁美「まさか、さやかさんが魔法で上条君の手を治したのかしら? なんて……くすっ」


一瞬、目の前が真っ白になった。

口に添えた手から、かすかに漏れ聞こえたのは、くすっ、という笑い。
それからまた、あたしの方をちらりと盗み見て、視線を逸らす。笑っている。
身体の中、一瞬のうちに圧力を増した激情で、内側から爆発するかと思った。


杏子「――――てめぇ!!」


仁美「……まさか、本当にそうなんですの?」

バッとこちらを振り向いた仁美に、あたしは面食らった。
その顔には先までの笑みが欠片も残っていなくて、残っていたのは深刻に真剣な、
親友の危機を案ずる、まったく自然な少女の顔だった。

あたしの怒りは行き場を失って、激情から一転、訳が分からなくなった。
<> 1<>saga<>2012/02/26(日) 23:00:48.84 ID:yZ83ajeJo<>
なんで、なんで、そんな顔をするんだ?
志筑仁美は、自分の男を手に入れるためなら、親友すら欺くひどい女じゃなかったのか?
だいたい、今までのが演技だったとして、それに何の意味がある……?


仁美「――教えてください!! さやかさんは私の親友なんですのよ!!」


その瞬間、あたしは閃く。

――ハメられた、と。

そして0.1秒で後悔した。
その通りだとすれば、それは厄介なことに間違いなかった。

待て待て待て。

あたしの方が間違ってたって言うのか? 志筑仁美は、本当にさやかの親友なのか?
本当に何の悪気もなくて、今までの癇に障る態度はあたしから情報を得るための演技で、
それはさやかを心配してるからだって?

そんなの、受け入れられるもんか! 受け入れないぞ!


仁美「さやかさんやまどかさんが危険な目に遭っているというのなら――!!」

杏子「あ、あんたには、関係ないだろっ!」


こいつが正しくさやかの親友だったというのなら、あたしを唯一の手掛かりと思ったのだろうか、
身に纏っていたウソ、余裕と不遜は消え去り、仁美は必死に言葉を突き出してきた。


仁美「ありますわ。大ありです。だってそれは私! 私にこそ関係のあることですもの!
むしろ……ええ、そうですわ……関係ないのは、あなたではありませんの!?」

仁美「私たちのことが、あなたには分からないのでしょう?」
<> 1<>saga<>2012/02/26(日) 23:05:38.62 ID:yZ83ajeJo<>
いつの間にか、激しているのは仁美の方だった。あんまりな豹変ぶりに追いていけなかった。
本当に演技だったとすれば、これも演技なのか? わからない……。

ただ、ひとつ引っかかった言葉があったので、それをあたしは口にしていた。


杏子「な、何なのさ……あんたたちのことって……?」


仁美は、ふぅ、と息を吐いて、胸に手を当てた。
感情的になり過ぎた自分を押さえようとしているようだった。
これはさすがに演技とも思えない。いや、さっきだって見破れなかったわけだけど……。

仁美「私とさやかさんは、親友にして、上条君を巡って戦うと決めたライバルでもあります。
私は上条君のことが好きで、さやかさんもまた、彼のことが好きでした」

仁美「けれど、あなたは違いますわ」

ひとつひとつ言い聞かせるような言葉に、またあたしはイラッとした。
一方、仁美は単語一つを吐くごとに、自らの確信を強めていくように見えた。

もともと薄暗かった路地裏はみるみる闇に呑まれていき、仁美のふっくらとした頬に、
最大の陰影を落としていた。闇の中から覗く強い視線は、刺すように痛い。

仁美「お分かりでしょう? これが私とあなたの違い。立ち位置の違いなんです。
さやかさんを説得するのにふさわしいのは誰ですか? あなたでしょうか? 違いますわ。
そう、私に決まっています」

仁美は一息に、淀みなく言い切った。
突き付けられた容赦のない正論に、あたしの精神は敗北を認め……なかった。

杏子「――う」

杏子「――っうるせえな!! 黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって!
これはあたしたち魔法少女の問題だ! 素人は引っ込んでな!」
<> 1<>saga<>2012/02/26(日) 23:08:29.80 ID:yZ83ajeJo<>
思わず叫んでいた。
そうだ、こっちにだって言い分があったじゃないか!
あたしは魔法少女で、そうだ、こいつはただの人間じゃないか! 何を恐れる意味がある?


仁美「そんなもの……だったら、私も契約すればいいだけのこと!」

仁美「私にも教えてください! 魔法少女のこと!」

杏子「黙れ黙れっ! 何も知らないくせに! ああ、知らないくせに!
お前にさやかの何が分かってたって言うんだよ!?」


何も知らず、軽々しく契約を語るのは、あたしが許さない。
その口を閉ざすまで、叫んで叫んで、かき消してやる。


杏子「さやかはな、上条の手を治すために、全部捨てたんだぞ! 気付いた時には遅かったさ!
けど! あいつは、さやかは挫けずに、自分の正義を貫いてきたんだ!! あたしが諦めた正義を!!」

杏子「それを、それを、あんたみたいなヤツに――!!」


あたしは、はっと気が付いて、その瞬間、言葉が続かなくなった。
仁美は黙り込んで、あたしの言葉を待っていた。

自分のためだけに生きるって、もう誰にもすがったり救いを期待したりしないって決めたのに。
どの口でマミに説教できたんだ。「自分で自分を救うしかない」だって? どの口で?

思う間に、言葉が勝手に出ていた。


杏子「……返せよ」

杏子「あいつは、あたしに必要なんだ。やっと見つけたんだよ。
真っ当に生きていいんだって、すがってもいいんだって、あいつが……」
<> 1<>saga<>2012/02/26(日) 23:10:55.65 ID:yZ83ajeJo<>
杏子「返せよ……!」

仁美にはおそらく、意味が分からなかったのだろう。
気の毒そうな顔を向けられ、またイラッとした。


仁美「……やっぱり、あなたにはできないと思いますわ」

仁美「ですから、さやかさんの説得は、私にやらせて下さい」

仁美「本当にさやかさんを救いたいのなら、あなたにも賢明な判断が出来るはずです」


黙り込んだあたしの耳を、落ち着いた静かな声が通り抜けて行く。
まだ何か言っているみたいだけど、あたしは既に答えを見つけていた。
仁美は一歩踏み出し、あたしの前に立ち、

仁美「まず私に、魔法少女――」


杏子「――何も知らないくせに」


壁を蹴って一拍、跳び上がって二拍。完全に仁美の不意を突く形で。
バッと視界が開け、夜の風に腐臭が吹き散らされる。
薄汚い路地裏からあたしは飛び出していた。その下方から、驚きの声が上がる。

仁美「あっ!」

仁美は当然ついてこられない。そんな当たり前のことを愉快に思い、思ったことにイラついた。
屋上のフェンスを踏みつけるとぐにゃりと歪んで、その貧弱さにあたしはますますイラついた。
噛みしめた奥歯が軋み、代わりに親指を噛んだ。志筑仁美はやっぱり嫌な奴だった!

フェンスを蹴って一度跳ぶだけで、嫌な奴はいとも簡単に視界から消え失せた。
<> 1<>saga<>2012/02/26(日) 23:14:20.73 ID:yZ83ajeJo<>


魔女をぶち殺すしかない。
それが魔女にとって救いであり、魔法少女にとって生きる道であり、人間にとっては安全だからだ。

頭の中で呪文のように唱えた。先までの弱い自分を追い払うために。
魔法少女が弱みを見せたら、それが魔法少女の死に際。そういうもんなんだ。

杏子「……とんだ、時間の無駄だった」

建物の上を跳び駆けながら、本当にそう思う。志筑仁美に何が出来たというのか? 
剣幕に押されてつい相手をしてしまったけれど、さっさと無視するべきだったんだ。

こうしてその圧力から脱してみれば、あまりにあっけない話だった。
さやかを追いかけるための、貴重な上にも貴重な時間を、無駄にしてしまった。

あの嫌な奴がうろたえ、見つかるわけもない相手を探し求めてさ迷う姿を思い浮かべて、
愉快に思い、思ったことにまたイラついた。舌打ちまで失敗して、もう、本当に、

杏子「――嫌な奴!」

あいつのことを考えるだけで、あたしが損をする。本当に嫌な奴だ。
そう思って、ようやくあいつのことを頭の外に追い出した。頭を切り替える。


――さやかはいったいどっちに向かった?


考えつつ、実はほとんど確信に近い予感があった。
すなわちさやかは、魔女の結界へ向かっていると。

おそらく鹿目まどかとほむらが相手をしているであろう魔女の反応も、もう遠く消えて。
その眼下に見滝原の街を見下ろす病院の方角に向かうにつれ、やや大きめの反応が現れる。
<> 1<>saga<>2012/02/26(日) 23:16:31.10 ID:yZ83ajeJo<>
やがて病院も視界を越える高さに達し、そこまで近づいて、あたしは妙に思った。
もう結構な距離を移動しているのに、反応の大きさがあまり変わらないんだ。

杏子「……複数の反応か」

経験がないわけじゃない。ソウルジェムによる魔女探索の弱点の一つだ。
つまり、反応している魔女の数を判別できないということ。
複数の反応自体、滅多にないことではあったものの、そうと分かれば仕方がない。

それにもう、遠慮してる場合でもない。
あたしは決心して、足は止めずに、テレパシーで呼びかけた。


杏子「――マミ! 聞こえるか!」
<> 1<>saga<>2012/02/26(日) 23:20:44.78 ID:yZ83ajeJo<>


発電量の大部分は工業用として供給するらしい。
郊外とはいえ街の中、よくぞこれだけ突き刺したと言いたくなる。
まるで墓標のように、大規模な風力発電機のプロペラが無数林立していた。

それらを横目に流し、杏子は堤防を駆けぬける。
病院の近くにいる魔女はマミに任せることにして、自分はもう一つの反応に向かうのだ。
夜のジョギングに勤しむスポーツマン風の男を軽々と抜き去り、
前カゴに入れた買い物袋の重さにふらふら揺れるママチャリも追い抜かす。

杏子「はっ……はぁっ……結界は……この先……橋の上、か?」

流れ落ちる清水の涼しげな音が聞こえてきた。しかしそれは人工の滝だった。
それどころか、杏子の走る脇を流れる川も含めて、すべて作りモノだった。

直線の遅い流れの両側を走る堤防が、この先でコの字型に連結する。
そして滝からの落水が橋の下に滝壺を置き、くぐり抜けるように流れて行く。
この、機能上まったく不要な滝は、見滝原市の新奇的なデザインの一環で、
実際にデートスポットとしてもよく利用されていることから、成功と言えた。

その橋が、いま結界に呑みこまれていた。
普段は煌々と下からライトアップされるはずだが、光は奇妙に歪められ、
本来の幻想的な光景からはかけ離れて、禍々しい雰囲気を醸し出している。
ただただ、奥にあるはずの滝のせせらぎだけが、内側から漏れ聞こえているのみだった。


杏子「――無事でいてくれよ、さやか!」


もちろんここにいるとは限らない。それでも。
眼前、魔女の意匠を散りばめられた障壁へと、杏子は躊躇なく飛び込む。
<> 1<>saga<>2012/02/26(日) 23:23:49.40 ID:yZ83ajeJo<>
バッ

と、あたしは足をつけるべき地面がないことに気付いた。


杏子「――わああっ!!」


いきなりパニックに陥る。
パラシュートなしのスカイダイビングなんて、誰が望んでするもんか!

唐突に出現した爽快過ぎる青空が、長く暗闇に慣れていた目に突き刺さって痛かった。
そう感じる間にもどんどん高度を下げていて、眼球を圧迫するような突風が襲いかかる。

髪が滅茶苦茶に吹き散らされ、膨らんだスカートがバタバタと暴れ回る。
一応、攻撃を警戒するが、この状況じゃガードしても吹き飛ばされるしかない。

杏子「おいおい、あたしは空は飛べないんだぞ! なんて卑劣な魔女なんだ!」

たまらず叫んだが、このまま落ちて死ぬという心配は、あまりしていなかった。
確かに、結界は魔女が用意する戦場なんだから、魔女にとって有利になっていてもおかしくはない。
でも少なくともあたしは、魔女と魔法少女のどちらかに極端に有利な結界を、見たことはない。

あたしにはその理由がなんとなく分かった。魔女は魔法少女のなれの果てだという真実を知った後で。
たぶん、結界って言うのは魔女の生前の心象風景を表しているだけなんだろう。もしそうだとすれば、


杏子「この結界に青空が広がっているのにも、何か意味がある……か」


だからこそ、おそらくいつまで経っても地上には辿り着かない。
足場になりそうなものがあれば少しはやりようがあるってのに……。

杏子「……ん?」
<> 1<>saga<>2012/02/26(日) 23:27:21.38 ID:yZ83ajeJo<>
相変わらずの風の暴力に目を細めて見下ろした先に、なにやら不思議な光景が見えてきた。
無数に散りばめられた白い点と、その中に紛れた大きく黒い点。あっという間にそれらは大きくなってくる。

杏子「……お出ましか!」

下から迎撃してくる様子はない。そのおかげで観察する余裕があった。
白い点は洗濯物(セーラー服?)で、黒い点が本命の魔女だ。
そして張り巡らされた洗濯ヒモが、ちょうどおあつらえ向きだった。

細い細い一本を目指して、あたしは空中でくるりと回転、足を下にして着地に備える。
下から突き上げるような突風でスカートが舞い上がって視界を遮るが、強引に押さえつける。

集中一瞬、

杏子「――はっ!」


だらりと緩んでいたヒモが一瞬にしてビンッと、弓弦を引き絞るように張る。
引きちぎられる寸前までその曲率を高め、しかし……耐えた。

杏子「よし!」


あたしは結果に満足し、痛快に笑って、


「――あぶない!」


何か聞こえた。


杏子「――うっせえ!」

頭上から攻撃が迫っていたのは知ってる。何とも軟弱な攻撃だけど。
あたしはヒモの張力を利用して、後方宙返り、そして他のヒモに跳び移った。
と、さっきまでいた場所に大量の「攻撃」が降ってくる。
<> 1<>saga<>2012/02/26(日) 23:33:14.88 ID:yZ83ajeJo<>
杏子「……なんだこりゃ」

大量の机と、椅子……か?
良く分からないけど、ここの魔女は何とも貧弱そうだ。
さやかがいたとすれば、さっさと倒してるはず。てことはハズレかよ――


杏子「あー、はいはい、魔法少女が助けに来ました余計な口出しすんじゃねー……っておい!?」


あたしは先のお節介な声の主を振り返って、絶句した。
それは、さやかではない。ないが、あたしを絶句させるには十分すぎる、重要人物だった。


杏子「――なんであんたがこんなところにいるんだよっ!!」


それは、あるいは全ての元凶と言っても過言ではない。
二人の少女の平穏を破った、無自覚な台風の目にして、夢の一つ形。


恭介「……えっと」


上条恭介だった。
<> 1<>sagesaga<>2012/02/26(日) 23:35:51.30 ID:yZ83ajeJo<>
マミ「今日はここまで!」

ほむら「初めて章分けとかしてみたら、全九章中の第八章だったわ」

さやか「その手のウソは聞き飽きたよ」

まどか「今の時点ではホントの話だよー」

マミ「なんだかこの場所での私ってテンプレ台詞ばかりね……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/27(月) 00:05:36.86 ID:a64+Kafbo<> >>859が最高にスカッとする強力な一撃で鳥肌立った <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/02/27(月) 23:13:50.14 ID:d9OZo0Lh0<> 恭介何しに来てんだよ!?
すっげー気になるわぁ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(愛知県)<>sage<>2012/02/28(火) 11:12:31.50 ID:LyBJF7Dfo<> 仁美「お分かりでしょう? これが私とあなたの違い。立ち位置の違いなんです。
さやかさんを説得するのにふさわしいのは誰ですか? あなたでしょうか? 違いますわ。
そう、私に決まっています」

実際この通りすぎて困る <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(長屋)<>sage<>2012/03/04(日) 06:15:00.43 ID:1NaBYkU/o<> 俺は嫌いだが仁美もちゃんといい子なんだよなぁ
ただいい子すぎたのが空回りしちゃったってのがな <> 1<>sagesaga<>2012/03/22(木) 16:46:32.79 ID:bG+ciPA7o<> なんかがんばったら3月中にも投下出来た <> 1<>saga<>2012/03/22(木) 16:47:05.97 ID:bG+ciPA7o<>
爽快な夏の午後を思わせる青空を裂くように、縦横無尽、洗濯ヒモが張り巡らされていた。
握ってみるとある程度の弾力をもって応えてくれるが、その細すぎるヒモは唯一の命綱なのだ。
落ちれば無限の青空へ真っ逆さま。どこにも逃げ場はない。

宙に在る、制服のスカートのような巨大な布の影から、何か褐色の物体が連続して打ち出されていた。
狙いは大雑把だったが、その先端には銀色に煌めくスケート靴があった。

それを阻むのは血色の紋様からなる防壁。杏子の正面に、二人を守る向きに高くそびえる堅牢な盾だった。
バールでガラスを叩き割るような甲高い音が立て続けに響いている。

魔女の打ち出した褐色の物体が単なる重力加速以上の加速を得て、次々激突していく。
だが、びくともしない。壁に接触すると同時にそれらは次々に弾け、爆炎の跡に何も残さない。

褐色の止めどない怒涛は、完全に阻まれていた。
まるでホースの水をアクリル板で受けて散らしているような光景だった。 <> 1<>saga<>2012/03/22(木) 16:48:00.83 ID:bG+ciPA7o<>
杏子「――まぁ、そう言う手もあるかもね」

背後の爆炎に結んだ髪を揺らしながら、杏子は背を伸ばした。
4本の手足でしがみついている恭介と対照的に、彼女は何の苦もなく洗濯ヒモの上に立っていた。

恭介「……脱出するってこと?」

うんうん、という頷きが返ってくる。
しかし恭介は、それは別に自分へ返した頷きではないような気がした。

恭介にはこの突然現れた救世主(?)が何を考えているのか全く分からなかった。

まず人の顔を見るなり「なんであんたがこんなところにいるんだよ」だ。
彼は仁美が戻ってくるのを、橋の上で待っていただけだった。
またなぜか彼女は彼のことを知っていて、最初の驚きの後はいちいち舌打ちされたり、
さやかのことを聞いてきたり、ここからの脱出法を知っていることを仄めかしてきたりするのだった。

恭介には杏子が何を考えているのか全く分からなかった。


杏子「――――」

不意に小さく首を振って、彼女はパッと目を開く。
背後で派手に爆炎を噴き上げる防壁に背を預けながら、どこか吹っ切れたような表情で恭介を見下ろした。
何か素晴らしいアイデアを得たかのようだった。しかし恭介は嫌な予感がした。

杏子「ダメだ。やっぱそりゃダメだよね」


恭介「……えっ?」

杏子「いざ、さやかを見つけた時に、何もできないんじゃ意味がないからね」

恭介「何を言って……」

杏子「あたしがあんたたちの件について部外者だってのは事実なんだよ。
だから、ちょうどいいし、ちょっとあんたに取材したいのさ」 <> 1<>saga<>2012/03/22(木) 16:48:32.20 ID:bG+ciPA7o<>
何かが勝手に決められている。
それはなんとなく分かった。どうやらすぐに脱出させてくれそうにないことも。これまたなんとなく。
恭介は頭の中に大量の疑問符を浮かべながら、杏子をぼんやりと見つめた。

握手でも求めてきそうな笑みを浮かべた杏子が、安心させるように言う。

杏子「心配すんなって。簡単な話さ。まずあたしが質問する。あなたにとって、美樹さやかとは何ですか?
あんたはそれに率直に答える。それでいい。あたしはちゃんとあんたを助けるし、あんたは晴れて命拾いさ」

杏子「ね、いい話じゃない?」

その笑みは親愛の情を呼び起こすどころか、わずかな恐怖を覚えさせた。
しかし足場もなく引くことも出来ないまま、恭介は彼女の影の差す笑顔を見上げた。

恭介「な、なんで……?」

杏子「なんで、だって? そりゃあんたのせいに決まってるじゃないか。この恩知らず」

杏子は相変わらずの笑顔だった。
恭介には何の心当たりもなかった。ただ、恩知らずに向かってなんで笑うんだろう、とは思った。

恭介「ま、まだ助けてもらってないんだけど……」

杏子「……早く話せ。助かりたいならね」

笑顔はそのまま、声が微妙に低くなる。
恭介は、やっぱり責められているんだ、と思った。

恭介「結局、脅迫なんだ……分かったよ、話すってば」 <> 1<>saga<>2012/03/22(木) 16:50:08.61 ID:bG+ciPA7o<>


数分後、杏子は深いため息をついた。
恭介に対する無条件のいらだちが霧散していくのを感じていた。

杏子「……あんた、本当に何も知らなかったんだな」

バカバカしくなって、頬が下がる。
いらだちが霧散したあとに、今度は恭介への僅かな同情が出てきていた。

杏子「あたしら魔法少女はね、契約を結ぶにあたって、ひとつだけ自分の願いを叶えてもらうことが出来るのさ」

杏子「ただし、その代償として魂を抜かれて、石ころに変えられちまうんだけどね」

魔法少女、というところで恭介が眉をひそめると、杏子は面倒くさそうに自分の背後を指さした。
恭介はますます困惑した。

あの化け物が魔法少女? いやいや、あたしらって言ってた……つまり魔法少女はこの子? 
言いたいことは、これだけの不思議を実際に目にしたんだから信じろ、ってことか?

恭介は困惑していたので、最も重要な点を理解できなかった。

恭介「……な、何が言いたいの?」

杏子「その左手はどうして治った?」

また勝手に話を変える。

恭介「知らないよ……医者も分からないって言ってた」

ここまでずっと一方的な詰問に付き合わされた恭介は、だんだんイラついてきた。
杏子の顔しか見えなくなり、彼女が自分の命を握っていることも忘れそうになった。

恭介「だいたい、今それが何の関係があるのさ」 <> 1<>saga<>2012/03/22(木) 16:52:44.71 ID:bG+ciPA7o<>
思わず反抗的になり、しまった、と恭介は思った。
しかし杏子は少し黙りこむと、やがて静かな声で言った。

杏子「……さやかは魔法少女の契約をした。つい最近のことだよ」

杏子「それでも分からないってんなら、そりゃあんたの責任だね」

恭介「……」

杏子「あたしから言える事は、そうだな」


杏子「……その左手、死んでも守り抜け。たとえあんたが死んだとしても、左手だけは、守り抜け」


杏子「それだけだ」

言葉を切り、腕を組んで魔法の障壁に寄りかかった。
二人はしばらくじっと見つめ合っていた。やがて恭介は自分の答えを確認するため、口を開く。

恭介「……その、願いっていうのは」


恭介「自分の為の事柄でなきゃダメなのかな?」


その質問の意図を瞬時に悟り、杏子は眉をピクリと動かした。
恭介はその反応だけで、もうほとんど答えが分かってしまった。果たして、


杏子「……そんなことないさ」


答えは肯定された。
恭介は甚大な衝撃を受けた。


恭介「……!!! じゃ、まさか……!!」 <> 1<>saga<>2012/03/22(木) 16:56:19.55 ID:bG+ciPA7o<>
 ふぅ

というため息が恭介の耳を震わせた。
唇もほとんど動かさない、小さなため息が杏子から漏れたのだった。
緊張が解けて、疲れたような優しい表情になっていた。

杏子「あんたのこと、誤解してた。けどたまにはさ、あんたの方からさやかに話しかけてやりなよ」

腕組みを解きながら、

杏子「まぁ、知らなかったことは仕方がないけどさ。
でも、知ったあとでどう動くかは、よく考えたほうがいい」

槍を肩に担ぎ、恭介に背を向ける。

杏子「その左手、もう動くんでしょ? この障壁は残しといてやるから、ここでおとなしく待ってなよ」


振り返ると、もう恭介への敵意はなかった。


杏子「……すぐに、済むから」

恭介「あ、あれを倒してくれる……の?」

杏子「勘違いすんじゃないよ。あんたのためじゃない、さやかのためなんだからな」


責めるでもない、覇気のない声だった。
その声を最後に、杏子はするりと障壁をすり抜け、飛び立った。


恭介「き、気をつけて!……」


返事はなかった。置いて行かれた障壁だけが彼の前に立ち、彼を敵の攻撃から守っていた。

毎日のように見舞いにやってきてくれたさやかの笑顔が、鮮明に蘇ってきた。
恭介は、さやかに感謝していた。恭介は、幸せな気持ちを噛みしめていた。


恭介「…………っ?」

しかし、ふと疑問が過ぎった。

さやかが消え、さっきの杏子のセリフが聞こえる。
恭介はいまさらになってその意味を思い、思わず口に出していた。


恭介「……魂を抜かれて、石ころに変えられちまう?」 <> 1<>saga<>2012/03/22(木) 16:57:58.83 ID:bG+ciPA7o<>
杏子「さっさと終わらせてやるよ!」

多節槍がヒモを捉え、それを支点に大きく振り子運動。
魔女は動きを読んで、机や椅子を大量に投げ落としていく。

しかし杏子はすでにヒモを放していた。
見当違いの方向へ落ちた攻撃には目もくれず、別のヒモへと着地、そして走り出す。
魔女はヒモを自ら切断していくが、次々に跳び移っていく杏子を落とすことは出来ない。

明らかに杏子は強く、しかも全く油断していなかった。

徐々に魔女の本体に接近していた杏子は、多節槍をムチのように振るった。
蛇のように伸びた先端が、遥か高所にある洗濯ヒモに巻きつき、杏子を引き上げる。

杏子「この程度の魔女を相手にするなんて――」

空中に飛び出した杏子は一際大きく弧を描いて、魔女の頭上に迫る。
すでに彼女は多節槍を収め、大きく振りかぶっていた。勝利を確信して叫ぶ。

杏子「――あたしにも、さやかにも、役不足だっつーの!」


恭介は、その様子を障壁越しに見つめながら、さやかのことを考えていた。
杏子の動きを見ていて、まったく関係ないような記憶を不意に呼び覚まされたのだった。

幼い彼女は、ブランコを大きく漕いで、その最高点で宙に飛び出す。
しかし、その午後は雨上がりだった。彼女の落ちる先には水溜まりがあった。そして。

恭介「――あぶないッ!」


ガキィン、という耳障りな高音と、恭介の叫びが重なった。 <> 1<>saga<>2012/03/22(木) 17:07:44.57 ID:bG+ciPA7o<>
杏子「な!?」

不意な、予想外の衝撃に手首が激しく痺れる。
魔女まであと2メートルほどのところで、彼女の刃が何かに阻まれた。

ハッとして見ると、何もないはずの空中に亀裂が走っている。
亀裂が走ったことで初めて、それは光を反射し輝いたのだと分かった。
何か――ガラスのようなもの――が、密かに張られていたことに気付いた。

杏子「――――くそっ」

ガラスの向こう側から、例によって机と椅子が飛来する光景が、杏子の瞳に映り込んだ。
しかし今までの攻撃とはわけが違う。このままではガラスの破片で八つ裂きにされる。


恭介「逃げろおおおおおおおおおお!!!」


無理だ。槍が抜けない。汗ばんだ手が滑る。
机と椅子がもうすぐそこまで迫っている。でも槍が抜けない。


杏子「――――!!」


そして、粉々になった。
ガラスの破片がシャワーのように噴き出し、ダイヤモンドダストのように煌めいた。
しかしそれは決して幻想的な代物ではなく、凶悪な散弾銃の掃射に他ならなかった。

大きいものは数メートル、小さいものは砂粒ほどまで、ガラスの嵐が吹き荒れた。
結界内に干されていた洗濯物は数秒でズタズタにされた。


杏子「――っあ――ぐっ――!!」

杏子は、斜め下方に弾き飛ばされていた。
寸前に槍を分解することを思いつき、多節槍を周囲に巻くことで、巨大なガラスの直撃は避けられた。
しかし小さい破片は容赦なく彼女の全身を刺し、圧力で肺を押しつぶした。

そして自らの障壁に杏子は叩きつけられる。
と、同時に恭介を守っていた障壁が完全に消滅した。 <> 1<>sagesaga<>2012/03/22(木) 17:10:02.68 ID:bG+ciPA7o<> マミ「今日はここまでよ」

まどか「このスレもかれこれ一年」

ほむら「あと少しと言いながら一年」

さやか「一周年の日に最終回なんでしょ?」

QB「あるわけないじゃないか」

杏子「てめぇ!」

マミ「下書きだけかなり先まで書いてたから、次の投下は近いうちにできるかと」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/22(木) 19:47:13.09 ID:DzToaJXi0<> 乙 恭介がどう動くかに懸かってるな <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/22(木) 20:19:09.67 ID:L9w85L6Ro<> さやかちゃんはどこに行っても助からない定めなのだろうか、まだ分からんけど <> 1<>sagesaga<>2012/03/24(土) 16:00:16.27 ID:Lwhk5oNho<> たまには速度を上げる努力でもしてみる <> 1<>saga<>2012/03/24(土) 16:00:56.59 ID:Lwhk5oNho<>
〜マミ視点〜

結界の中に、雨は降っていなかった。
街灯なき夜道のような闇の中、縦に並んで二つ、円形の明るくないスポットライトに照らされて、
鹿目さんと私が歩いていた。その光は二人の足元の影のよう。
ずっと付いてくるけれど、特に害はないようだった。
先の見えない歩みは、言うなれば暗夜の航海だ。ただ革靴だけが、高く良く響く足音を鳴らしていく。


マミ「――魔法少女の互助組織のようなものを作ろうと思うのよ」

まっすぐ前を見つめたままで、はっきりと言った。
言った瞬間、意識が後頭部から抜けて行くような不思議な感覚があった。
頭の中ではすでに熟考を重ねたはずなのに、口に出した途端、途方もない妄想に思えてしまう。

でももう、後戻りするつもりなんてなかった。
それが妄想か現実かは、鹿目さんに判断してもらおうと決めたはずだから。

私たちは足を止めない。私が次の言葉を紡ぐだけ。

マミ「不公平な契約を阻止したり、新米の魔法少女のサポートをしたりする組織よ」

未来から来た鹿目さんからソウルジェムの真実を知らされたとき、
魔法少女の生きる意味が、私には分からなくなってしまった。

正義の魔法少女が、邪悪な魔女を駆逐する。
そういう構図の一方の極に自分を当てはめることで、辛うじて生き延びてきた私にとって、

 魔法少女=魔女

という事実の提示は、すべてを破壊する宣告に他ならなかった。 <> 1<>saga<>2012/03/24(土) 16:02:31.04 ID:Lwhk5oNho<>
マミ「もちろん簡単にはいかないでしょうね」

だから、逃げた。
魔女退治は人殺しに、正義はエゴに、なり下がった。魔法少女も魔女もなくなった。
私はもうすべて忘れてしまえと言った。すべての希望が過去にはあって、私を慰めてくれた。
どんなに追っ手がやってこようと、絶対にこのまま逃げ続けてやると叫んだ。

けれど。
追っ手が狙い、消し去ろうとしていたのは私ではなかった。
憶病が呼んだ結果はそれ以上に過酷で非情だった。

狙われたのは、私の最後の支えになってくれていた、鹿目さんだった。
私は逃げ続けたせいで、その鹿目さんを危うく失ってしまうところだった。

マミ「でも」


そのとき初めて、ようやく目が覚めたの。


マミ「真実を伝えて団結を促すわ。そうして少しずつ広げていくつもりなの」

実のところ、このときから私は、より建設的に現実的な方法を考え始めていた。
一日の大半を真っ白な病室の天井を見つめながら過ごすのは相変わらずだったけれど、
それでも時折身体を起こしては、そういう方法について考えを巡らせるようにはなったんだ。

そして、自分でひねり出した考えをいま、鹿目さんに伝えている。
それは要するに、こういう問いへの答えだった。


 【魔法少女=魔女 のとき、魔法少女の存在意義はあるか】 <> 1<>saga<>2012/03/24(土) 16:03:57.86 ID:Lwhk5oNho<>
マミ「魔法少女は、魔女を倒すのよ。それは義務で、存在意義で、人間、魔女を救うためなの。そして」


マミ「魔法少女がお互いに救い合う世界をつくりたいの」


話すうちに、私の中で確信が深まっていた。
これは妄想なんかじゃない。間違いなく実現できる現実だ。
ドクン、と胸が一際高く心音を響かせる。宇宙の真理を究明したかのような歓喜の震えだった。

ふと、私の後ろを歩く鹿目さんの足音が止まる。

まどか「マミさん」


私も思わず立ち止まった。鹿目さんは間を置かず口を開いていた。


まどか「だれがつくるんですか?」


音が言葉になるまで長い時間がかかった。それはまったく簡単な呟きのようなものだった。
しかし言葉に変換されてみても、やっぱり意味を理解できなかった。それは簡潔すぎた。

マミ「えっ?」

何かまだ穴があったという恐怖。自信満々で提出した答案の間違いを指摘されたような。
背筋にぞっと走る寒気に、思わず振り返る。
鹿目さんは私の目を真正面、真摯に見つめ返してきた。


まどか「マミさんは魔女を殺せないじゃないですか」

まどか「それなのに、どうしてそんな話を思いついたの?」

マミ「未来のあなたと話をして、魔法少女を助けるために戦ってるのを、見せてもらってるうちに……」

まどか「違いますよ、そういうことじゃないです……」 <> 1<>saga<>2012/03/24(土) 16:05:43.99 ID:Lwhk5oNho<>
その視線が揺れて墜落していく。
鹿目さんはスカートのすそを握りしめて、うつむきながらふるふると首を横に振った。
しかしやがて、その拳をぎゅっと握りこむと、思いつめた顔をパッと上げた。

まどか「……魔女になろうとしているマミさんが」

まどか「どうしてまだ魔法少女のこと考えてくれるのかなって、思ったんですよ」


私は立ちすくんで、自分の二の腕を握りしめた。
鹿目さんはおかしなことを言った。ただ、おかしなことを言っただけだったのに。

どうして、こんなにも胸が締め付けられるんだろう……?
口を開くとき、乾いて貼りついた上下の唇を剥がさなければならなかった。


マミ「……何を言うのよ、鹿目さん」

マミ「私、魔女になりたいだなんて思ってないわ」

出てきた言葉はなんだか萎んだスポンジみたいに軽かった。
鹿目さんの目は鋭く私を射抜き、言葉は間髪いれず振り下ろされる。


まどか「じゃあさっきのは何だったの?」

まどか「私が病室に入ったとき、マミさんは何をしてたの?」


マミ「……」

確かにあの時、私はなにかしようとしていたっけ。
というより、すべきことを敢えてしないでいたっけ。 <> 1<>saga<>2012/03/24(土) 16:07:47.23 ID:Lwhk5oNho<>
私が魔女になったら、間違いなくさらに犠牲が増えることになる。
だからこそ魔女になる前に死ななくちゃいけないと、何度も念じたはずなのに。
その一方で、もう魔女になってしまいたいという欲望が、心の中に共存していた。

自分でも、自分の気持ちが分からなかった。


まどか「私にはマミさんの気持ちが分かるよ」


答えられない私を、鹿目さんは責めようとしなかった。
明確に私の前に屹立し、一度だけ私の目をまっすぐに見つめてきた。
やがて、目を閉じて静かに、一言ずつ告げていく。

まどか「マミさんは魔女を殺さなくちゃいけないって……分かってるんです」

まどか「でも、自分では……殺せない」


私の見つめる先で、鹿目さんの合わせた手が、言葉に迷うたびに指を組み替えていた。
迷っているというより、言葉を慎重に選んで話そうとしているようだった。
彼女は一度口を閉じてじっと考え込んで、もう一度口を開く。

まどか「……魔女を殺すのが……魔法少女の……正義で……」


まどか「マミさんは……魔法少女に正義であって……ほしかった」

まどか「自分が魔女になって……他の魔法少女に……殺されることで……魔法少女は正義の味方になる……」

まどか「そして、マミさんの理想を……正義の魔法少女に……引き継いでほしかったんじゃないかな」


その言葉は、バケツに張った水にインクを一滴ずつ落として行くように、私の心に色を付けていった。
こめかみに鈍い痛みが続いた。鹿目さんはもう口を閉ざしている。

私は顔を上げて言った。


マミ「……そんなの身勝手よ」 <> 1<>saga<>2012/03/24(土) 16:10:11.59 ID:Lwhk5oNho<>
マミ「そんな理由で魔女になるなんて、今までに魔女になった子たちへの侮辱だわ」

自分の声とは思えないような、やけにクリアな声が通って行った。
音声だけでなく、心の中まで研ぎ澄ませていくような力がこもっていた。

鹿目さんは、頬を緩めて緊張感もなく、にっこりとした笑顔になった。
彼女は、そのあと簡単にうなずいた。

まどか「……そうですね」

うなずくのみならず、さらにその唇の動きのまま、


まどか「だからマミさん――――魔女にならないでください」


マミ「……!」


恥ずかしい。

思わず顔を背けた……。羞恥で顔が真っ赤になる……。わたし……もう……!!
身勝手だったのはだれっ!? 侮辱していたのは、魔女になろうとしていたのは、私じゃないの!?

あまりの恥ずかしさで、最初に抱いていた確信は四散していく。

でも……それを、鹿目さんが受け止めるのだった。


まどか「――魔法少女が救い合う世界って」 <> 1<>saga<>2012/03/24(土) 16:12:02.18 ID:Lwhk5oNho<>
はしっ、と私の両手を彼女が挟み込んだ。
指が絡み、ぎゅっとつかまれて、今度は別の意味で動揺した。
鹿目さんの顔が近かった。私を見上げる顔は相変わらずとても可愛らしかった。


まどか「すっごくいい考えだと思います」


ありがとう、と言う声はどこか遠くから聞こえた。
私はもう、心の底から、魔女にはなりたくないと思っていた。


まどか「でも今のままじゃ誰にも伝わりません」


やっと分かった。だから魔女になってはダメって言うのね?


まどか「マミさんが自分で示さなくちゃいけないの」


鹿目さんは時間に追われるようにまくし立てる。


まどか「でないとソウルジェムの真実も、キュゥべえの正体も、いつかまた忘れられちゃう」

まどか「マミさんを救えるのは、マミさんだけなんですよ!」


鹿目さんの言葉が暗闇の中に永遠に響いて行く気がした。
しかし、声はもうそこまでだった。鹿目さんは言い切って、黙っていた。


私たちはいつの間にか窪地のような場所に立っていた。
天は真っ赤に染まり、地には地獄絵図が描かれて。視界の先にはそびえ立つ門。
私たちは二人とも、始めから気付いていた。何しろ今回は。


結界の中に、雨は降っていなかったから。 <> 1<>saga<>2012/03/24(土) 16:14:45.57 ID:Lwhk5oNho<>
私は何を言おうかと悩んだ……。

何かかっこいいセリフを言うべきかしら。でもそれは不真面目かしら。
沈黙を続けるのが一番野暮ね、と思い、結局つまらないことを言ってしまっていた。


マミ「鹿目さん、魔女を殺すのって、やっぱり可哀想じゃない?」

まどか「殺されないほうが可哀想じゃないですか……」

マミ「……そうね」

――よし。

マミ「私、決めた」


 そのとき


 ぴし

という音が聞こえた。
聞こえた時には、すでに二人は分断されていた。
結界が大きく波打って、どことも知れぬ場所へと流されていった。 <> 1<>saga<>2012/03/24(土) 16:15:31.34 ID:Lwhk5oNho<>


まどか「……マミさん?」

次にまどかが目を覚ましたとき、彼女はのどかなお花畑の真ん中に転がっていた。
空がどこまでも晴れ渡り、そして隣にマミの姿はなくなっていた。 <> 1<>sagesaga<>2012/03/24(土) 16:17:30.88 ID:Lwhk5oNho<>
マミ「今日はここまで!」

まどか「まだまだ下書きがあるから身を粉にして書くよ!」

ほむら「私のまどかがそんな慣用句を知ってるはずがない」

マミ「次回は二人の鹿目さんがそれぞれ頑張る回になる予定ね」

杏子「おい……さやかはどうした!?」

さやか「そういうシーンの順番なんだってさー」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/24(土) 22:20:08.89 ID:vMEQKQZZo<> 乙
マミさんww <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/25(日) 03:49:21.35 ID:yNXfrtOWo<> おつかれ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/25(日) 18:54:01.65 ID:jrgljIP2o<> 乙
マミさんはいつでもかっこつけたいんだな <> 1<>sagesaga<>2012/03/31(土) 14:26:44.81 ID:qtk7+BAFo<> 再開します。場転しすぎなので、名前欄に何レス目の続きなのか書くことにします <> >>828の続き<>saga<>2012/03/31(土) 14:28:07.13 ID:qtk7+BAFo<>
〜影の魔女の結界内〜

天に一点、まどかの指さす先に光点。
伸ばした人差し指が横に流れて、息を合わせたように流星群が飛び交っていく。
噴水の逆再生みたいな弧を描いて全方向から集結し、雷鳴のような唸りを轟かせ、高密度の桃色の鉄槌となる。
自身の一部と見える枝や使い魔などを、頭上に構えて防御する魔女の姿が一瞬見え、

飲まれた。

爆発したのか、削り取られたのか、それすらも判別できない一瞬だった。
やがて、光の膜から這い出すように猛烈な炎の泡が噴き出し、逆に光は霞んで消えた。
まどかとほむらは静かに黙ってそれを見つめていた。

まどかは弓の構成を崩して、槍のような形状に組み直す。
ほむらはそれをちらりと見て、槍ではなく巨大な矢じりだと看破した。
一方まどかは、ほむらの方をちらりとも見ていなかった。

ほむら「……いったん離れましょう」

その矢じりには金の装飾が施され、長さはまどかの背丈より長いくらいだった。
しかしまどかはそれを使い慣れた様子で、軽く準備体操のように振り回している。

ほむら「……反撃が来るとすれば、それは強力よ。いったん離れましょう」

ほむらがまどかに伝授した戦い方は、弓に番えた矢を射る、というものだけだ。
空を指さすだけで流星群を操ったり、勝手に他の武器をこしらえたりする方法など教えていない。
すべて、市外の魔女退治をたった一人でこなしている間に、まどかが自力で会得した能力だった。

ほむら「……ねぇ、聞こえないふりしないでくれるかしら」

そのとき唐突に、噴き上がる爆炎が消え……否、内側に収束した。
炎をすべて飲みこみ、魔女の身体が風船のように膨れ上がっていく。

ほむら「――ッ逃げなさいったら!!」 <> 1<>saga<>2012/03/31(土) 14:29:04.15 ID:qtk7+BAFo<>
結局ほむらは自分ひとりだけ、時間停止を使って後方に退避していた。
まどかはそれに目もくれず、正面を見据え、両手で構えた槍の刃を向ける。

低く落とした腰、やや上向いた刃。
素人臭い構えは、その身に満ちる貫禄のせいで、どこか超越的なものにも見える。
薄く開いた口から息を漏らす。どこまでも見開かれた瞳が魔女の初動を見逃さない。

魔女の身体は自らを焼いていた炎を残らず吸いつくすと、ボコボコと内側から盛り上がっていく。
特に腹は気球のバルーンほどにまで膨れ上がり、さらに膨らんで、みちみちと裂け目が出来てきて、
裂け目の内側から溶岩に特有の赤い光がこぼれ出し……。

圧縮された灼熱の炎の怒涛が溢れだした。
しかしまどかも一拍遅れて、槍の先端から桃色の光の柱を撃ち放っていた。
その速度は一拍の遅れを補って余りある。せめぎ合いは魔女の至近で発生せざるを得ない。
それに威力でも、まどかの方が上回っていた。せめぎ合いは数秒で終わり、全ての熱が魔女へと到達する。

音が消えるほどの衝撃で、まどかは吹き飛んだ。
しかし高まった身体能力で軽々と着地。さっさと走ってその場を後にする。
今度こそ魔女は、粉々に爆発していた。

ほむら「あの子、しばらく見ないうちにとんでもない力を……」

スカートのすそをつかみ走ってくるまどかを見つめる。ほむらの瞳にはわずかな恐怖が含まれていた。
強大な魔力があるのは初めから分かっている。でもこのまどかはそこに留まらない。
自分の力を受け入れて、完全に制御している。自分の知っているまどかがどこかに行ってしまった気がして、
ほむらは儚い寂しさを覚えていた。どちらにせよ、もうまどかは彼女のことなどどうでもいいのだが。

ほむら「それともやはり、あの方法が、成功した結果だというの……?」 <> 1<>saga<>2012/03/31(土) 14:31:19.11 ID:qtk7+BAFo<>
まどかが何かを叫んでいた。
しかし、燃え盛る炎にかき消されて聞こえてこない。
かなり近くまで迫って、ようやくほむらは聞き取ることが出来た。

魔まどか「――――まだだよ!」

赤い靴がパカンッ、と黒い地面を打つ。
ほむらの正面でくるりと魔女に向き直り、腕を振るって水平に伸ばす。
すると、まどかがここまで走ってきた足跡に沿うように、光点が燈りまばゆく輝いた。

ほむら「これは……?」

彼女の後頭部に向かって漏れた呟きに、答えはない。
まどかは膝立ちになり、祈るように両の手を合わせていた。
すると、光点が増殖していく。最初の位置から等間隔を置き次々に、地面を埋め尽くしていく。

いつの間にか、場は静けさを取り戻していた。
ほむらがハッとすると、あれだけ燃え盛っていた炎がもう消えつつある。
爆炎の中から無数の手が伸び上がり、炎を再び飲みこんでいるのだった。影が元に戻っていく。

ほむら「こいつ……」

二回殺せば終わるはずじゃなかったのか。
そう思って、すぐに打ち消す。そうだ、もう、これは別の魔女なのだ。
ひょっとしたら無限に復活することすらあるかもしれない。影が完全に形を取り戻す。
と、同時に無数の手が弾丸のような速度で襲いかかってきた。

ほむら「――ッ!」

魔まどか「動かないで!」

ほむらの時間停止に先んじて、まどかが叫ぶ。
叫びながら、後ろ手に、無造作に、ほむらの右手をつかみ取っていた。
ぱんっ、という乾いた木を鳴らすような音が響いて、まどかの熱くなった指とほむらの冷え切った指が絡む。
まどかは振り返らずに、ただぎゅっと握りこんできた。ほむらは、すごくやわらかいなと思った。

正直、陶然としていた。数秒間、ほむらは何も考えられなくなっていた。
まどかにとっては言葉の通り、ほむらに下手な動きをさせないためだったので、都合がよかった。

二人を囲む小さな円内を除いて、全ての光点から矢が打ち上げられる。
襲い来る魔女の手と、打ちあがる光の矢が、その物量を競い合うようにぶつかった。
燃やし燃やされ、打ち砕き打ち砕かれして、凄絶にせめぎ合っていく。 <> >>895<>saga<>2012/03/31(土) 14:32:47.98 ID:qtk7+BAFo<>
〜芸術家の魔女の結界内〜

〜まどか視点〜

土のにおいで目を覚ました。ちくちくするものに耳をくすぐられて、たまらず起きあがった。
そのときようやく、私は外の広い場所にいることが分かった。そこは一面のお花畑だった。
空は澄み切った青で、黄色い野原の真ん中に、川が静かに流れているのだった。

まどか「ここ……結界の中……なんだよね?」

QB「だろうね」

まどか「わっ!?」

独り言のつもりだったのに、急に後ろから答えがあってびっくり。
振り返るとそこにキュゥべえがいて、黙ってこちらを見上げていた。

マミさんに殺されてしまったキュゥべえが、何のためらいもなく自分の死体を食べてしまうのを見てから、
私は彼のことを直視できずにいた。でも今は、彼に会えて純粋にほっとしていた。

いつもなら勝手に肩に乗ってくるのに、キュゥべえは許可を求めるようにこちらを見ていた。
キュゥべえなりに反省してるのかな、と思うと少し笑みを浮かべることも出来た。手を差し伸べて、

まどか「いいよ、今は。一緒に行こう」

と言うと、キュゥべえは素早く私の腕を伝って、肩にちょこんと乗っかった。
私はよいしょっと立ちあがって、辺りを見回した。やっぱりいない。
でも、一応呼びかけてみよう。私は少し大きく息を吸って、それから、

まどか「……マミさーん!!」

広がる黄色い平原。遅い川の流れ。鳥のいない晴れた空。
私の声は大して響くこともなく、また何の反応も得られなかった。
分かってはいるんだけど、やっぱり……。

まどか「マミさんと、はぐれちゃったみたい……」 <> 1<>saga<>2012/03/31(土) 14:33:24.71 ID:qtk7+BAFo<>
一度結界に迷い込んだ人間は、決して自力で脱出することは出来ない。
よく考えるとかなりまずいのかな……。でもだからと言って、動かないことには始まらない。

まどか「綺麗なところだけど、油断しないようにしないと……」

気持ちを切り替えて、マミさんを探しに行くことにした。

のどか過ぎる田園風景。ただし、そこには虫も鳥もいなかった。
道の両脇を菜の花の絨毯が覆っている。なだらかな坂を上っていくと、川に差し掛かった。
川辺を下ったところには何人かの女の人が並んで座っていて、
手を水面に浸して、バシャバシャやっているのが見下ろせた。

洗濯でもしてるのかな?

QB「まどか、そっちは危ないよ」

ガタゴトと前から車輪の音がして、慌てて目を上げると、私は驚いた。

なんと、本物の馬車がこっちに向かって来ていたの!
茫然としていると、馬はなぜか私の前で足を止めた。数秒後、馬車の中から舌打ちが聞こえた。

まどか「あ、す、すいません!」

慌てて私は道を開けた。

まどか「どうぞ!」

頭を下げていると、また馬車はガタゴトと進み始めた。車輪が視界に入り、そして出て行く。
そのまま何事もなかったかのように、私を置いて馬車はどんどん遠ざかっていく。

まどか「えっと……」 <> 1<>saga<>2012/03/31(土) 14:34:19.20 ID:qtk7+BAFo<>
馬車を追いかければいいのか、それとも橋を渡ればいいのか、私は迷って立ち往生した。
道の先にはレンガ作りの橋がかかっていた。川は橋に垂直な向きへと流れ、流れ続けて、
地平線の先まで延々と流れ続けていた。そしてその両岸には黄色い絨毯が無限大に広がっていた。

と、向こう岸に、赤い屋根に白い壁の小さな家が建っているのを見つけた。

まどか「……あれだ」

なんとなく、あれが私の目指すところだという気がして、私は橋を渡ることにした。
何と言っても、他に何もなかったんだから、そうするほかなかった。
あるいは、そのように仕組まれていたのかもしれない。

まどか「橋を渡るよ、キュゥべえ」

QB「うん」

下の方ではバシャバシャという音がひたすら続いていた。
洗濯でもしてるのかな?

橋を渡りながら、このままマミさんに会えなかったらどうしよう、という不安が浮かぶ。
私のこともそうだけど、むしろマミさんは大丈夫かな……。戦えているのかな……。

と、橋を半分ほど渡ったところで、ガタンと音が響いて足元が揺れた。

――え?

思わず足元を確認したけど、何ともない。

まどか「いったい…………わっ!?」

突然、ジャラララララ!!! という音が響き、私は飛び上がった。
音は真横から。そちらを見ようとする間にも、視界が傾く。前に身体が傾いていく。
見ると、橋を支える鎖が金属音を鳴らしながら、どんどん巻き上げられていた。
その橋は、はね橋だった。真ん中からぱっくりと割れて傾きをより大きくし、上がっていく。

まどか「キュゥ――――くっ!」 <> 1<>saga<>2012/03/31(土) 14:35:00.58 ID:qtk7+BAFo<>
キュゥべえにすがりかけて、止める。自分で何とかしなくちゃいけないんだ!
私は慌てて駆け上がった。まだ傾きは浅い。今ならまだ渡れる。私は意を決して踏み切った。

まどか「えいっ!!」

――届いた!

と思った瞬間、バランスを崩す。

まどか「わっ、わっ……ふぎゃっ!!」

ビターン! という効果音が付きそうな感じに、私は顔面から転んだ。
でも、すでに私は橋を渡ることが出来ていた。そのままごろごろと転がって、対岸に辿り着く。

まどか「いったたたぁ…………」

うつ伏せの顔を上げて、痛む額を押さえる。
橋の中央だけレンガの基礎がなくなっていて、はね橋になっていたみたい。

キュゥべえはといえば、ちゃんと着地していた。
そして、目の前には赤い屋根に白い壁の小さな家。

QB「さぁ、まどか。目的地はすぐ目の前だ」

鎖が金属音を鳴らすのをやめた。

振り返ると、すでに上がり切ったはね橋。
もう戻れないよ、と言われているみたいで、背筋が寒くなった。

下の方ではバシャバシャという音がひたすら続いていた。
洗濯の音なんかでは、なかった。 <> 1<>saga<>2012/03/31(土) 14:35:57.91 ID:qtk7+BAFo<>


部屋の中はとても狭苦しかった。私の部屋よりも狭くって、そして殺風景だった。
扉を開けると、すぐ右には大きなベッド。これが部屋を大きく占めている。
そして部屋の奥に小さな机と椅子が二つ。奥には緑色の枠にはまった両開きの窓。これが一つ。
青い壁紙に、いくつかの肖像画。奥にはもう一つの扉があるけれど、あいにく椅子で塞がれていた。
それだけ、本当にそれだけ。

ここなら、大丈夫かな……。

わかってる。結界の中には安全な場所なんて無いってことくらい。
部屋の中だろうと外だろうと危険なことは変わらないって、わかってる。
マミさんに見つけてもらえない限り、私の命は風前のともしび。
寒い。とっても寒い。それでも、大丈夫だと思い込みたかった。

「こんなところにいたのね、鹿目さん」

私はハッとして、顔を上げた。

いつの間にか、椅子に座っている姿があった。
足を組んで片手に紅茶のカップを持ち、湯気を纏わせて。余裕の頬笑みを浮かべている。
その自信に満ち溢れた頬笑みは、高慢ですらあった。

「鹿目さんも座ったら? 少し休んだ方がいいわよ」

そう言って、マミさんはもう一つの椅子を示してからニコッと笑った。
いつの間にか私の後ろに、椅子がひとつ控えていた。

まどか「マミさんに、そっくりですね」 <> 1<>saga<>2012/03/31(土) 14:37:24.03 ID:qtk7+BAFo<>
マミさんはぴくりと眉を上げた。紅茶のカップに口をつけて、

「本人だもの」

まどか「……マミさんはどこにいるの!」

そのマミさんは「あら、早いのね」と呟くと、ふっと視線を落とし、悲しそうな顔をした。

使い魔「彼女はね、死んでしまったの」

まどか「……ウ、ウソつき!」

使い魔「ウソかも。でも……本当かもしれないよ?」

彼女はいたずらっぽくウィンクしてみせると、胸の前に手を当てて、マスケットを取り出した。
よくマミさんがやっていたように、くるくると回転させて弄んでから、ピタリと銃口を合わせる。

使い魔「なにせ彼女、いま"コレ"が使えないみたいなんだもの」

まどか「どうしてマミさんの真似するの?」

使い魔「彼女が美しいからよ。だから私が、それをもらうの」

使い魔「もうもらったから、だから本物はいらないの。そして、なぜか取り込めないあなたも……」

使い魔「――いらないわ」

私と銃口の距離は1メートル弱。でも、不思議と恐怖はなかった。
その使い魔マミさんは、端正な顔を歪めて笑って、私を見て舌舐めずりしていた。
黙っていれば全く見分けがつかない程だけど、本物のマミさんはこんな表情はしない。

まどか「撃てるんですか」

まどか「本物のマミさんは今、鉄砲使えないのに」 <> 1<>saga<>2012/03/31(土) 14:38:16.06 ID:qtk7+BAFo<>
私はぎゅっとスカートのすそを握りしめて言った。
向こうはますます顔を歪めて、心底楽しそうに、ねばっこい声で答えた。

使い魔「知ってるのよ。彼女はさっき一度、キュゥべえを撃ち殺しているでしょう?」

使い魔「撃てるようになっている可能性は……十分にあるわ」

まどか「……」

使い魔「どう? 怖いでしょ? あなたの命はいま、彼女の心次第……」

使い魔「しかも! あなたは理解しているかしら……、あなたが生き残ったとしたら!
それはそのまま、マスケットを使えない彼女が、死ぬことを意味するのよ……アハッ」

キリキリと猫の目のように鋭くなっていた眼光が、下品な笑いと共に不意にだらけた。
あは、あは、という泥水の滴るような笑いが何度となくこぼれて行く。

QB「まどか……」

ずっと部屋の入り口近くに留まっていたキュゥべえが、わずかに動くのが分かった。
確かに、契約してしまえばこの危機を確実に乗り越えられるんだろう、とは思う。
でもそのとき私は、今まで私を守ってきてくれたみんなを裏切ることになる。

……大丈夫だ。契約なんかしなくたって、私は戦える。

私はスカートのすそを強く握りしめて、目の前の銃口をじっと見つめた。
その背後で、あは、あは、という笑いが吐息のように漏れる。こんなのマミさんじゃない。
顔を上げて、その目を正面から見据えた次の瞬間、私は挑むように言ってしまっていた。

まどか「……さっさと、撃てばいい」

使い魔「――ッ!!」 <> 1<>saga<>2012/03/31(土) 14:39:03.92 ID:qtk7+BAFo<>
その一言が耳に入った途端、使い魔の眉が急激に吊りあがり、恐ろしい憤怒の表情へと豹変した。
その指が引き金にかかり、乱暴ながら正確に、躊躇なくそれを引いてしまう。私は目を閉じない。

かちっ……

と、気の抜けたため息のような空しい音が響いた。それだけ確認すれば十分だった。
甲高い銃声など、鳴ることはなかった。マミさんは、やっぱりまだ銃を使えない!

使い魔「――ッ!?」

使い魔は驚愕した。その視線はすでにマスケットからは離れていて。私を見ていた。
私は、スカートのすそを握りしめていた両手を、下着が丸見えになるのも構わず、バッと持ち上げた。
使い魔が驚愕したのはそこではなくて、私の太腿にあるものに、だった。

スカートの内側に隠し、ベルトで密かに結び付けておいたそれは、黒光りする拳銃。
使い魔はとっさに使いものにならないはずのマスケットを振るって、私の手からそれを叩き落とそうとした。

使い魔「このっ――!!」

まどか「あぐっ!」

音と共に、手の甲に鋭い痛みが走る。でも、拳銃が私の手を離れることはない。
ほとんど一か八か、私は不思議と硬くない引き金を勢いよく引いていた。

ガシャン!

と、砕け散ったのは部屋の窓ガラスだったのか。
それを見る間もなく、ムチのように伸びた手が、私の首を無造作につかんだ。
呼吸が止まる。息が出来ない。足が床から離れるのが分かった。私は宙づりに首を絞められていた。 <> 1<>saga<>2012/03/31(土) 14:39:49.06 ID:qtk7+BAFo<>
まどか「――っあ――っ」

使い魔「……はぁ、魔法少女にもらった力でいい気になっちゃって」

もがく私を見上げるマミさん……ううん、使い魔。
その息はわずかに弾んでいて、頬は興奮に上気していた。

使い魔「私がっ、魔女の使い魔ならっ……あなたはっ、魔法少女の使い魔といったところね?」

使い魔の顔に余裕が戻っていく。再びあの崩れた笑みを浮かべながら、私の首を絞め上げていく。
視界が赤くなってきた。息が出来ない。それでも、私は使い魔の手を握り返していた。

まどか「――ま……っじゃ……ない……」

使い魔「……なんですって?」

少しだけ手が緩められて、使い魔は怪訝な顔で私を見上げた。
私は首を絞める手を強く握りしめて耐えながら、辛うじて言葉を紡いだ。

まどか「――っは、あな、たを倒して、マミさんを、助け、に行く。使い、魔なんかで、終わ、らない」

言いながら、震える手で再び、私は拳銃を持ち上げていく。
両手で構え、その銃口をうっとりと見つめるマミさんの額へと合わせる。
マミさんは、恋人の接吻を待つかのような恍惚に目を細めながら、

使い魔「いい覚悟ね、鹿目さん、素敵だわ。――さぁ、撃ってみなさい」

今度こそ、本物の銃声が響き渡った。 <> >>903<>saga<>2012/03/31(土) 14:42:00.94 ID:qtk7+BAFo<>
〜影の魔女の結界内〜

軽機関銃の派手な振動が停止した。
まどかの光の矢の連射とほむらの軽機関銃の掃射によって、無数に伸びていた魔女の手は一つ残らず殺し尽くされていた。
またしても炎に巻かれた魔女は、苦しみながらナメクジのように這いずり回っていた。
しかしすでに二度、炎を吸収することによって、この魔女は復活してみせている。
二人が緊張を解くことはなかった。そしてやはり、魔女の周囲に風が巻き上がり、みるみる炎を吸収していく。

ほむら(見たことのない攻撃……それに、吸収と再生……)

ほむら(強化されたっていうレベルじゃない。こいつはもう、別の魔女なんだわ)

ほむら(――そう思わなければ、やられる)

ほむら(敵の再生が炎の吸収を必要とするのなら、近距離での斬撃でも浴びせればとどめになるかも……)

ほむら(でも、時間停止を使った……って!?)

その思考を突き破る。
火柱の間から躍り出てきたのは、またしてもあの魔女が使う影の手!
しかし、その大きさが尋常ではない。ゾウでもつかめそうな、巨大、というべき大きさだった。
それが、ちょうど人がハエを叩き潰すときのように、真上から振り下ろされてくる。直後。

ドォッ! と巨重が二人めがけて叩きつけられた。
と、同時にその手が複数の爆発に飲み込まれて、わずかに怯む。ほむらの置き土産の手榴弾だった。
さらに横合いから光の矢の連射と軽機関銃の連射が飛ぶ。二人は時間停止を使って悠々と逃れていたのだった。

しかし、二人は敵戦力を見誤っていた。

二人の反撃に苦しんでいるように見えたのは、実際には、うっとうしい攻撃に怒っているだけだった。
魔女はその手の甲を振るって、迅速にゴミを払いのけた。時間停止を発動する暇すら与えられない神速だった。
ほむらの軽機関銃が宙を舞い、奈落の底へと落ちて行った。

まどか「……」 <> 1<>saga<>2012/03/31(土) 14:42:37.55 ID:qtk7+BAFo<>
〜ほむら視点〜

ほむら「あぐっ!……ぅ……」

全身を満遍なく強打されるような無茶苦茶な衝撃を受け、呼吸が止まった。鼻が痛い。潰されてしまったに違いないと思った。
私は、何か壁のようなものに叩きつけられた末、そのままそこに背中を預けてしまっているらしかった。
チカチカと明滅する視界の先に、たったひとりで戦い続けるまどかの姿が垣間見えた。

ほむら「わたし、もっ……!」

私ときたら、何も分からないまま弾き飛ばされていたというのに。
まどかはどうやってか、それを回避してのけていたらしい。

まどかが振るう武器は、その本来の形、つまり杖の形状に戻っていた。
魔女の巨重を乗せた強烈極まりない拳の一撃を、まどかは受け止めきれず、横に流しながら辛うじて乗り切っていた。

ほむら「まどかっ、わたし、も…………ぐっ!? あぁっ!?」

急いで起きあがろうとした途端、背骨に激痛が走る。痛い痛い痛い!! たまらずに腰を下ろした。
深い息をひとつ吐いてから、私はしばし茫然としていた。まさか、立てないだなんて! 立てないだなんて!

詰まるところ、私はまどかの足手まといだという、事実だった。
足手まとい、という言葉をなぞった瞬間、身の凍るような思いがした。

まどかが戦っているのに、私は一体何をやっているんだろう。

いよいよ視界が悪くなってきたと思ったら、私は泣いていた。
涙は私の頬を伝い落ちて、惨めな気分を増長させた。

彼女はよく動いていた。軽やかに跳び回って魔女の拳を回避しながら、接近を試みているようだった。
その姿は、助けなんていらない、と言っているように見えて、間もなく私は悟った。

まどかのため だなんてお節介。私の自己満足に過ぎなかったんだ。 <> 1<>saga<>2012/03/31(土) 14:46:34.54 ID:qtk7+BAFo<>
まどかの足元に円陣、周囲を取り巻く桃色の魔法陣。
それが展開するにつれ、ぴしぴしと深刻な亀裂が足場を軋ませていく。
その真正面から、魔女の巨大な拳がついにまどかを捉えた。まどかもそれを真っ向から、輝く杖で受け止める。

そして、思い切り振り払った。

あっけなく。魔女の拳はあらぬ方向へと飛んでいった。
そして今、まどかと魔女の間に邪魔するものは、何もない。

終わった、これでとどめ……。

そして、まどかはその手にある武器を、消滅させた。

まどか「……」

ほむら「……えっ」

まどか「……」

そして、もう動かない。訳が分からなかった。
この絶好の好機に、戦いに飽きてしまったとでも言うのか。

まどかの無防備な背中が、視界の先で棒立ちになっていた。
まどかはふらりとこちらを振り返った。その奥で、ジュッという熱い鉄を冷水に突っ込んだような音が響く。
魔女が影の粒子を拳に再構成したのだった。後ろに振りかぶったそれが狙うのは、棒立ちのまどか。
彼女の後頭部に拳が迫る中、私はまどかの悲しげな頬笑みを浴びていた。

まどか「……!」

私と目が合った瞬間、まどかは軽く驚いたようだった。
そして、直後、とてもとても明るく笑って、

まどか「    」

そのまま、背後から巨大な拳になぎ倒された。 <> 1<>sagesaga<>2012/03/31(土) 14:47:27.24 ID:qtk7+BAFo<>
マミ「今日はここまで」

杏子「さやかはどうしt」

さやか「そういうシーンの順番だってさ」

ほむら(更新遅いくせにシーンバラバラとか訳が分からないわ)ボソッ

マミ「次回は今回の引きから始まるわよ……」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/31(土) 20:26:52.34 ID:t6aQP2dMo<> 乙ですの!
ほむらちゃん絶望してしまうん? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/03/31(土) 21:04:09.30 ID:V27CSkKSo<> 乙
確かに並行で進めすぎな感はあるね
ただでさえ忘れかけ&混線してるのに分かりづらさが加速しちゃう
魔まどかさんの目論見がわかりません
消えるにしても相打ちはとりたいだろうし…まあ先が気になるってことで <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/01(日) 01:22:06.57 ID:jjFPOTnyo<> 魔まどか頑張れ
ほむらも頑張れ
作者も頑張れ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/04/01(日) 22:53:16.29 ID:TDmMmt2Io<> 乙乙! <> 1<>sagesaga<>2012/04/04(水) 14:24:56.98 ID:+IlzdyW5o<> 今回は分かりやすさ5割増しだと思います。がんばりました。
ただ、伏線が古いんで、あとがきに注釈でも入れますかねー <> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:26:31.34 ID:+IlzdyW5o<>
〜ほむら視点〜

ほむら「――――まどかっ!!」

なぎ倒されたまどかは、数メートルだけ低空を舞って、べたっと仰向けに叩きつけられていた。
死んだように倒れたまま、ぴくりとも動かない。魔女が拳を構え直す。とどめを刺される!

と、思ったとき。
なぜか、魔女が動きを止めた。動かないまどかと、その上で止まる拳。そして静寂。

ほむら「……?」

振り上げた拳は迷うように、ためらうように、揺れていた。それはまるで、遠慮しているかのようだった。
奇妙なことだったが、私にはその意味が分かる気がした。

そう、まどかは半分魔女だということ。
魔女同士はお互いに干渉しない。逆に結界に入ってきた魔法少女は積極的に排除する。
しかし、魔女と魔法少女のハーフなら、対処に迷ってしまうのも仕方がないのではないか。

まどかの上で迷っていた魔女は、ふと私の存在を思い出したらしい。
単なる魔法少女に過ぎない私なら、殺すことにためらいはないってことね……。先に潰すつもりだ。
ゆっくりとこちらを向く拳を正面に見据えながら、私には逃げることが出来なかった。怪我のせいだけではなく。

逃げて、それでどうするというのか。と、こう思ってしまうと、もう何の気力も湧いてこない。 <> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:28:59.24 ID:+IlzdyW5o<>
まどかに拒絶されたことなんて、今まで何度もあった。
けれど、今までとは違うんだ。このまどかは私の思いを正確に、私自身に認識できていない領域にまで渡って、
完璧に理解したうえで、それを拒絶したのだ。所詮、自己満足のための行動だと、見抜いてしまったのだ。

まどかに言われた言葉は消えない。
たとえこの世界を捨てて次の世界に向かったとしても、私の壊れた信念はもはや戻ってはこないのだ。
まどかのため、という絶対の信念は、もう何の中身もない空虚なフレーズでしかなかった。

あるいはそれでも構わず、我が道を行くことも出来たかもしれない。
その通り、自己満足だけどそれがどうかしたか! と叫んで相変わらずまどかに付きまとうことも。

けれど、今やそれすら叶わなかった。
私はもはや足手まといで、まどかについて行くことすらままならないのだから。

魔女の拳が、私を狙っていた。

死にたい、という積極的な願望ではなかった。
もしかしたらそれ以下かもしれない。これは、楽に死ねるなら死んでしまうのも悪くはないかな、という気持ち。諦念。
どうせ全力で回避しようとしても生き残る確率は低いだろうし、黙っていれば確実に死ねるのだ。無駄に動く意味はない。

ほむら「……」

踏み切り自殺に挑む人が前にする光景というのは、こんな感じなんだろうか。
正面から轟音を上げて、変にゆっくりとしたイメージを伴って、圧倒的に迫ってくる。
風を切り、突然速度を上げて、ぐわっと一気に視界を埋めたかと思うと。

ぴたり。

静止。 それは。 私の。 よく知る光景。 止まった世界に。 動ける自分。 <> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:30:28.33 ID:+IlzdyW5o<>
――時間の止まった世界。
でも、止めたのは私ではない。

魔まどか「――ほむらちゃんは、足手まといなんかじゃないよ」

まどかが。まどかが起きあがってくる。
時間の止まった世界で、私とまどか、二人だけが動くことが出来る。

私だけの世界に、まどかが入ってきて……いや違う……ここは……そう……私たちの世界か……。

私のソウルジェムを粉々に潰してくれるはずだった魔女の拳は、数メートル手前で、ただの壁と化していた。
急に私は、積極的に、死にたくなってきた。止められると逆にやりたくなる、というのとは違うかもしれないけれど。
なので、思わず抗議するように声を漏らしていた。

ほむら「なんで、止めたの……」

魔まどか「――ほむらちゃん、死にたいの?」

まどかはダメージを感じさせない動きで問題なく立ちあがると、靴音も高くこちらに歩み寄ってくる。
ぴたりと私の前で静止した魔女の拳が、静寂の中で、奇妙なオブジェのように滞空していた。

魔まどか「でも……気付いてないのかもしれないけど、……死にたいのは、私の方なんだけどね?」

ほむら「……いいえ、私の方が!」

魔まどか「なに、いってるの」


魔まどか「――あなたが、死んで、どうするのッ!!」 <> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:31:34.70 ID:+IlzdyW5o<>
突然、私は頬を張られるのかと思って身をすくめた。実際には両手で私の肩をつかんで、背にした壁に叩きつけただけ。
しかし、背骨に再び走る激痛に、私は一瞬硬直して息が止まった。まどかはそれには気付いていない様だった。

魔まどか「言っておくけど、同情してるわけじゃないからね……」

ほむら「じゃ、じゃあ、死ねって言いなさいよ……」

魔まどか「………………言うわけないでしょ?」

顔を上げると、まどかの顔が私の目線の高さにあった。手を伸ばせば抱きしめられる距離だった。
私の前で膝をついたまどかの瞳が、雨上がりの路面のように湿っているのだった。
今ここでまどかに手を下してもらえたら一番いいと思った。二度考えて、やはりこれは最高の思いつきだと思った。
そういえば、私は一度まどかを殺したことがあるんだし、自分にもその権利があるのではないかと思った。

しかし、まどかは顔を硬くして否定する。

声に涙が浸み込んで、まどかは私を揺さぶりながら、早口でまくし立てる。
私はまどかから目を背けた。背けてしまってから後悔した……。

魔まどか「……何も知らないくせにっ、軽々しくっ、死にたいだなんて言わないでっ」

魔まどか「死ぬの、怖いんだよ? 毎晩泣いちゃうくらい、怖いんだよ? 消えるって分かってて、生き続けるなんてっ!」

魔まどか「私は……あなたと……あなたが……約束したのに……!」

まどかの握力が強まってきたけれど、私は変な意地が湧いてきて、顔を戻す気にならなかった。
消滅を前にしたまどかと一緒にいてあげられなかったことは、すでに反省して謝ったはず……なのに。
私が帰宅したときにはいつも眠りに落ちていたまどかが、実は毎晩ベッドで震えていたのだと思うと、罪悪感で気が重くなった。

しかし、私の口はそこまで素直には動かなかった。
私の口から出てくる言葉は、そういう気持ちとは似ても似つかなかった。

ほむら「そうは言うけれど……じゃあ、あなたはどうして死にたいの?」

ほむら「あなたには、みんなを救う理想があったはずじゃなかったかしら?」 <> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:33:04.47 ID:+IlzdyW5o<>
肩に置かれたまどかの指が、ぴくりと動いた。
さすがに私にも、なにかまずいことを言ったというのは分かった。
逆上したまどかに殺されるのなら、それは本望だけれど……。

はぁ、という吐息が漏れるだけだった。
まどかはその吐息と共に魂まで吐き出してしまったかのように、ぐったりと肩を落としていた。
ヤケクソのような笑顔の上を、頬の緩やかな稜線を辿りながら、雫が渡っていく。

魔まどか「みんな、か……」

魔まどか「みんな、なんてどこにもいないんだよ」

私は、その意味を計りかねた。
思わずまどかの顔を見直すと、疲れたように笑っていた。
彼女は皮膚がすり切れてしまいそうな勢いで、涙をごしごしと拭ってから、

魔まどか「確かに、私には一つの世界を救えるだけの力があるんだと思う……」

魔まどか「……強いから。自分が怖いくらいに。ワルプルギスの夜にだって、負ける気がしないけど……」

ほむら「――じゃあ、やっぱりあなたは死んじゃダメじゃない!」

魔まどか「でもね、そんな指図、受けたくないの」

自分勝手なのはお互いさまでしょ? とまどかは言った。私は困惑した。
このまどかは今までのどのまどかとも違う。何を考えているのか全く分からないというのはウソではなかった。
しかし今、ずっと口を開いてくれなかったまどかが、初めて自分の思いを言葉に乗せてくれている。

――まさか、遺言のつもりかしら。 <> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:35:19.80 ID:+IlzdyW5o<>
魔まどか「――私は別に、この世界を救いたいわけじゃないもん」

ほむら「でっ、でも! あなたの大切な人たちは……あなたが守らなければ、死んでしまうのよ?」

言いながら、猛烈な自己嫌悪に襲われた。どの口が言うか、と思った。
だいたい、こういう自己嫌悪を避けるために、手早く死んでしまおうと思っていたのに……。

しかし、まどかは小さく首を振って、

魔まどか「ほむらちゃん」

次の瞬間、よく分からないことを言い始めた。

魔まどか「それ違う。アレは、違うの。私の、じゃない。あの子の、なの」

ほむら「……えっ?」

思わずポカンとした顔で聞き返していた。
その瞬間、まどかはキッ、と私を強く見据えて、突然叫び始めた。

魔まどか「アレは……私のママじゃない! パパじゃない! タツヤじゃない!」

魔まどか「さやかちゃんじゃない! 仁美ちゃんじゃない!」

魔まどか「マミさんじゃない! 杏子ちゃんじゃないんだ! アレは違うもん!」

魔まどか「――アレは、全部、あの子の、もう一人の私の、でしょ!?」

魔まどか「私のは……アレじゃないの! 私のっ、救いたかったみんなは……もう二度と還ってこないんだよ……!?」

ほむら「……それはっ」

それは違う、と言いかけたのだが、

魔まどか「あなたには耐えられる!? 自分の救った後の世界で! もう一人の自分が! 平然と過ごしていくのっ!!」



魔まどか「――私は、――――――――――――私は、消えるのに―――――ッ!!」

<> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:36:12.34 ID:+IlzdyW5o<>
……そういう、ことか。

まどかはうつむいて、荒い息を吐いていた。私の肩に乗った手に体重がかけられて、私はぴくりとも動けなかった。
しかし、いずれにせよ私は虚脱状態で、頭の中だけがぐるぐると回転するばかりだった。

まどかの叫びを聞いて、私はどうも勘違いをしていたことに気付いた。

自分の見捨てた世界には、その数だけ友達の死が存在する。という事実は、私にとっての禁忌だった。
まどかはそのことを言っているのかと思ったのだけど……、どうも少し焦点が異なるらしい。

消えるのが怖いというより、乗っ取られるのが怖いのか。

それは、もう一人のためだけに、自分の命を投げ捨てて、救ってやらなくちゃいけないという理不尽。

自分は消えるのに。何にもならないのに。

これは、世界のために犠牲になる、そんな、英雄になれるお話とは、違う。
自分の死によって、何かを残すことすらできない。だって、鹿目まどかは、死んでいないのだから……。
彼女の消えた跡には、もう一人がしっかりと生き残っていて、彼女の代わりに生き続けて行くのだろう。

彼女の背負った苦しみの片鱗が、少しだけ理解できた気がした。
確かに、救える力を持っているのにもかかわらず救わない、なんていうのは大変な罪かもしれないけれど。
でもだからといって、その彼女に向かって、世界のために死ぬ気でやり遂げろ、なんて言い放てる人間がいるだろうか。

何と言っても、彼女は神でも、天使でも、聖女でも、大人ですらもない、ただの少女なのだ!


魔まどか「……さーて、鈍感なほむらちゃんに、ここで問題です」 <> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:38:18.20 ID:+IlzdyW5o<>
顔を上げたまどかは、涙の跡もきれいになっていた。にへらと笑って、場違いにおどけてみせた。
その背後に静止している巨大な魔女の拳があった。なんとなく、まどかの時間停止も残り短いのではないかと思った。
私が使う時間停止の効果時間の、10倍は時間が過ぎていた。しかしまどかは苦もなくそれを維持していた。

魔まどか「私は、意地悪してるわけじゃなくて、あなたに自分で気付いてほしいだけなんだよ」

魔まどか「こんな私にも、まだひとつだけ、願い事が残っているの。あなたへの願い事だよ?」

魔まどか「それが何か、答えてほしいな。――ほむらちゃん?」

まどかの頬を伝う雫が、またしても、つぅっと流れて、上唇のふくらみに乗って、しみ込んで消える。
久しぶりに見た笑顔は、絶望の果てにある希望を見つけた笑顔だった。すべてを諦めるという希望の笑顔だった。

ほむら「……だから私が、たったひとり、なのね?」

魔まどか「……ヒントは無しだよー?」

なんだかまどかは楽しそうだ。私もなんだか楽しくなってきた。
もういつ途切れるか分からない時間停止。途切れれば二人もろともに潰されてしまうだろう。
だというのに、死の目前で、戯れの問答などしているのは、なんだか無性に楽しかった。

魔まどか「……まだ?」

ほむら「……あぁ、なんだか、もうすぐ、分かりそうな気がするわ」

魔まどか「……早くしてね?」


私は、あの自宅玄関ホールでの大喧嘩を思い出していた。
あのとき、私は帰りが遅いから、思い切り怒られたのだと思い込んでいたけど。彼女は、正確には何と言っていたか。

――ウソだよね! 最期まで一緒にいてあげる、なんてさ!!


さらに、遡って……。
私はまた、お菓子の魔女を撃破して巴マミを救った帰り道でのことをも、思い出していた。
まだ一月も経っていないはずなのに、遠い過去のようだ。あのときも、私たちは二人きりだった。

あのとき、私はまどかに聞いた。あなたは自分の最期を受け入れられるか、と。
あのとき、まどかは私に答えた。ほむらちゃんが、そう、私が――そうか――!

――ほむらちゃんがいてくれれば、もう何も怖くない。 <> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:39:32.67 ID:+IlzdyW5o<>
ほむら「……分かったわ」

魔まどか「……っチャンスは一回だけだよ?」

ほむら「十分よ」

私は大きく息を吸った。
まどかの握力が強まって、顔がかちこちになっている。緊張しているのかしら?
今の私には、あらゆる確信が満ちていて、それを可愛らしく思う余裕さえあった。

ふっ、と笑ってから、 <> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:41:06.63 ID:+IlzdyW5o<> .
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ほむら「――私は、あなたの最期を、ただ見届ければよかったんだね」
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<> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:41:55.99 ID:+IlzdyW5o<>
私は言った。まどかは、泣き笑いのような顔をした。そして。

背骨に激痛が走る。
息をつまらせた私は、思わず悲鳴を上げていた。

ほむら「――っま、まどか! 痛い痛い痛い痛いっ!!」

魔まどか「ほむらちゃん! ほむらちゃあん!! ほむ、ああああ!!」

まどかの頭が横をすり抜けたかと思うと、背中に回った両腕が固く抱き締めてきた。
耳元にまどかの口があるのか、湿った吐息が鼓膜を震わせて、熱い。とても熱い。
言葉は途中からただの嗚咽に変わっていた。私の悲鳴に気付いてか、少し力を弱めてくれている。
私は度肝を抜かれて、その背中を恐る恐る撫でてあげることくらいしかできない。私は、母親になってしまったかのようだった。

ほむら「……ねぇ、まどか?」

ほむら「私なんかに……その、ホントに出来るかしら」

まどかはぷるぷると震えながら、鼻をすすった。
小さく震える姿は小動物を思わせた。まどかはやがてか細い声で、

魔まどか「……言ったでしょ? あなたは、足手まといなんかじゃないって」

魔まどか「これはあなたにしかできない……あなたは、前の世界のホントの私を知ってる、たったひとりのほむらちゃんなんだから」

耳元で声が届く。
抱きつくのではなく、しなだれかかるように。まどかの桃色の髪がさらさらと私の鼻腔を突き、甘い匂いで酔わせる。
ふわふわしたレースの海に溺れて、まどかの吐息に耳から脳まで溶かされてしまいそうだった。

ほむら「わたし、が……」

魔まどか「見届けるの、最期の瞬間を」

魔まどか「私がワルプルギスの夜を倒した後に消滅する運命だというのなら、その瞬間を」

顔を上げたまどかが、満開の笑みを浮かべていた。
さっきはこれを諦めの笑みだと思ってしまったけれど、これだって希望のうちだと、今は言いたくなった。

こんなに幸せそうに笑うまどかが、たとえ消滅の運命を抱えていたって、幸せじゃないわけがないもの。 <> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:43:44.24 ID:+IlzdyW5o<>


そのあと――。

私たちは残り少ない停止時間を使って、その場を離れた。
おそらく魔女は、自衛のため以外では、まどかを狙うことはない。そう伝えると、まどかは私の盾になるように立った。
まどかは、ほむらちゃんは逃げても構わないよ、と言ったけれど、私は受け入れなかった。

魔まどか「――いくよ」

そう言って、直後まどかは時間停止を解除した。

ドンッ! と静止していた魔女の拳が女神像の首に突っ込んだ。
しかし、標的の不在に気付き、すぐにその拳を抜いて、不思議そうに蠢いた。

魔まどか「こっちだよ、こっち」

まどかは交通整備員みたいに腕を大きく振って、大いにこちらの居場所をアピールしてみせた。
魔女はたちまちこちらに気付いて拳を振り向けたが、笑顔で立つまどかを認めると、困ったように止まってしまう。

ほむら「……まどか」

魔まどか「大丈夫だよ」

まどかは簡単に請け合った。そして、前に伸ばした右腕に左手を添えて、左足は一歩引いて、構える。
そのまま、不敵に笑って、真正面から魔女の巨大な拳と相対する。……まさかとは、思うけど。

魔まどか「さっさと、打てばいい」

そのまさかだった。
魔女はほんの一秒だけ迷う素振りを見せたが、すぐに行動を起こした。
いくらなんでも本人の意思で認められてしまえば、迷うこともなくなってしまったか。

魔まどか「私が、受け止めてあげるから――!」

それは本気の一撃だった。
二人もろともに撃砕する勢い、速度は新幹線にも匹敵しているに違いない。しかも初速から最高速だ。
私はまどかの後ろで棒立ち。一方まどかの眼光は強く鋭くなり、ソウルジェムと同じく、太陽のような黄金に光り輝く。 <> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:45:29.39 ID:+IlzdyW5o<>
ドッ!!

まどかの伸ばした右手から、半透明の黄金の腕が、轟音と共に出現した。
その巨大さは、魔女の拳を凌駕する。新幹線の速度でやってきた魔女の拳を逆に、上から握って阻んでいた。

私のソウルジェムが、少し濁りを濃くしている。まどかのソウルジェムは逆に、ますます光り輝いている。

魔まどか「――っは―――っは――」

荒い息を吐いて、まどかは必死で半透明の黄金の腕を維持している。腕は頑として魔女の拳を阻んでいる。
最強だ! 文句の付けようもなく、まどかは史上最強の魔法少女だ。けれども……それだけではないのだった。

そもそも。こんな力はまどかの持つ力ではない。
巨大な腕で、破壊を齎す敵の攻撃を受け止める、だなんて――。まどかの本質にはそぐわない。
それはつまり、ここまでの全ての事象、まどかに隠した前提、それらパーツを組み合わせた結果としての――。

ほむら「――彼女の」

私は前から吹く暴風に前髪を煽られながら、

ほむら「――彼女の願いが、」

口を薄く開いて、目を見開いて、驚愕していた。それが本当ならば、本当に喜ぶべきことだったから……。

ほむら「――彼女の願いが、叶ってる!」

魔まどか「――――――このッッ!!」

気合一発。
叫んだまどかが、握った魔女の拳を下に叩きつけた。大質量の衝突が、足元を震わせる。

私たちは腕を伸ばした女神の像の、その巨腕の上で戦っていた。
それが、ぴしぴしと亀裂を走らせる。本能的な恐怖を引き起こす不気味な地響きが突然大きく、視界がたわんで、

ほむら「――ッ!」

崩落した。 <> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:46:40.80 ID:+IlzdyW5o<>
私たちの足元数メートル先から、女神の腕が砕けて、ガラガラと膨大な瓦礫を振り落していく。
当然、その先端に鎮座していた魔女も、崩落に巻き込まれていた。土煙は上がらないが、影の粒子が煙となって宙を舞った。
落ちた先には何も見えない。完全なる奈落の底へと、落ちて行く。これは、魔女を倒したということなんだろうか。

魔まどか「――はぁ」

ぱしゅっ、という空気の抜けるような音がして、黄金の腕が光の粒子となって散った。
ぐらりと倒れそうになるまどかを慌てて支える。まどかはすぐに自分の足で持ち直した。

魔まどか「――はぁ」

良かった。私たちは、勝利したんだ。あの強大極まりない影の魔女に。
私はなぜだか、涙が止まらなかった。本当に死ぬと思ったのだ。思ったけど、それでも世界はまだ続いているんだ。
私には、まどかの最期を見届けるという使命が、まだ残っているんだ……。しかも……。

ほむら「――叶って、いたんだわ」

私は、もう何もかもまどかに話すつもりだった。
良い知らせと、悪い知らせ、両方あるけれど、このまどかならそれを乗り切ってくれるのだろう。

ほむら「ねぇ、まどか。今、あの力をあなたに与えてくれた人はね――」

最高の笑顔を浮かべていたと思う。
涙でくしゃくしゃだったろうけど、私はもうウソを吐く必要がないんだと思うと、嬉しくて、幸せで――。


魔まどか「――っほむらちゃんッ!!」


しかしまどかは、全然幸せそうではなかった。 <> 1<>saga<>2012/04/04(水) 14:47:43.46 ID:+IlzdyW5o<>
物凄く切羽詰まった声色。まどかは顔をこわばらせて、さっと周囲を見回した。
私は虚を突かれて、きょとんとしているばかりで、とっさに時間停止をすることすら思いつかなかった。

まどかは胸元のソウルジェムを苦しそうに押さえていた。
さっきの長い時間停止のせいで、すぐには使えないのだと、気付いていれば……、

魔まどか「したに」

した?

ほむら「――きゃっ!」

突然、まどかが私を突き飛ばした。私はすとんと尻もちをついてしまう。
まどかは即座に弓を引き絞って射た。私の足元から、女神の腕を突き破って、なにかが、複数のなにかが、飛び出す。

それは、無数の魔女の手。
まどかが立て続けに矢を射て、それらを潰していく。しかし、間にあわない。
そのうちの一本が、私の足首を捉え、私はパニックに陥って、振りほどくには堅く――。

ほむら「――――――――っあ―――――」

直後、まどかの矢がそれを射抜いていた。

ほむら「あああああ」

魔まどか「ほ、ほむらちゃん」

しかし、それは遅すぎた。
焼けるような痛みは非現実的だった。私は見たくもないのに、そこを凝視せずにはいられなかった。
魔女の手の莫大な握力で、私の足首はきれいに切断されていた。 <> 1<>sagesaga<>2012/04/04(水) 14:56:28.34 ID:+IlzdyW5o<>
マミ「今日はここまで」

魔まどか「次回はもう一人の私のシーンのつづきからー」

杏子「あぁ、なんかマミに殺されそうになってたな。こえー」

さやか「おまえもなー」

ほむら「というか、アレは本物の巴マミじゃないはずよ」

まどか「さりげない会話でみんながあらすじを語り始めて……」

マミ「――おわりよ! おわりにしなさい!」

――――――――――――――――――――――――
作者注:>>929
>>自宅玄関ホールでの大喧嘩 ……>>705〜713
>>巴マミを救った帰り道 ……>>63〜68

分かりやすくする方法ってなに……? といろいろ考えましたが作者だけ考えても仕方ないなぁと思った。
なんか要望あったら書いてくれると幸いです。あと、ワルプル戦はどうやら次スレ立てることになりそうです。
この章が一段落するころにこのスレが埋まるといいなぁ、と画策しているところです。すごい長いねおわり。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/04/04(水) 18:43:39.46 ID:l0cYl37so<> 乙乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/04(水) 20:38:57.52 ID:VbMW+9Yko<> 乙
分かりやすくする方法?
簡単です更新速度が上がれば(ry

半分魔女って何だっけと思いつつ読み返してきたので
>>1が聞きたければ貧弱一般読者なりに分かりづらいところを分析してみる
それでモチベが下がるタイプなら言わない <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/05(木) 11:31:27.23 ID:NR5zsKEio<> お疲れ様! <> 1<>saga<>2012/04/05(木) 14:25:09.41 ID:+Rg7gGZSo<>
再開します。下はスルー可

――――――――――――――――――――――――
>>939 
それはもう是非。予想とかされるのは別に平気ですよ。されたことほとんどないけど。
ただ半分魔女の件は核心なので、かなり情報を絞ってて、まさかドンピシャされんだろうと高を括ってはいる
説明回で重点を置くべき点が分かるので、読者視点での分析とか大歓迎です

あと投下速度は……まぁ>>1のスペックはそうすぐには上がらないけど……
1投下1シーンを原則にして代わりに速度を上げることにしてます。今回早いのはたまたまです。次は分かりません。





<> >>912<>saga<>2012/04/05(木) 14:27:10.57 ID:+Rg7gGZSo<>
〜芸術家の魔女の結界内〜

のどかな田園風景の中にポツンと取り残された、白い壁に赤い屋根の小さな家。
しかしその窓は吹っ飛び、平和な光景が文字通り粉々に打ち砕かれていた。
結界内を異様な静寂が包みこみ、遅い川の流れすら凍りついたように息をひそめていた。

そして再びの銃声。室内から。
室内には、少女の首を宙づりに絞める少女と、絞められながらも刺し違えるように銃口を向ける少女がいた。
今まさに発砲された銃口からゆらりと硝煙が立ち上る。しかし不自然な風にすぐさま吹き消されていく。

まどか「ひっ……」

短い悲鳴を漏らしたのは、あるまじきことに、撃った方の少女だった。
銃口がカタカタと震える。無理もなかった。撃たれた方の少女の頭は、首の骨が折れたとしか思えない方向にねじ曲がっていた。
不思議な軟体生物のようにのけぞった形で、しかし少女の首を執念深く絞めつけ続けている。
撃った方の少女、まどかは、念の為もう一発撃ちこむべきとは知りつつも、それが出来なかった。


そして間もなく、ゴキリ、という骨を無理矢理へし折ったような音がして、崩れた笑顔が元通りに目の前に現れた。


使い魔「――心配かけたかしら?」


まどかの視界で、その姿が高速でブレる。しかし動いているのは自分の方だと気付く。
魔法少女のマミに擬態した使い魔が、まどかの首を握ったまま、それを途方もない腕力で振り回し、床に叩きつけた。
まどかの軽い身体は人形のように吹っ飛んで、部屋の床に強く叩きつけられた。

まどか「がはっ! ごほっ!」

その手を離れた拳銃が、起死回生の切り札が、カラカラと床を転がった。
使い魔は高笑いしながら躊躇なくそれをベッドの下へ蹴り込む。まどかはせき込みながらも手を伸ばした。
しかし優しく伸ばされた指がキュっと絡み、細い首を捉えてまどかを押し倒した。

使い魔「――魔力が全然こもっていないわ」

眼前に、マミの哀れむような顔が浮かぶ。慈愛に満ちているのに、その首を絞める握力は確実に命を狙っていた。
まどかの顔に、ついに明確な恐怖が浮かんだ。完全に戦意がくじけて、顔が真っ白になる。

使い魔「何の変哲もない鉛弾ひとつで、魔女の使い魔である私を倒せると思って?」

もう答えることは出来なかった。聞こえてもいなかったかもしれない。
まどかは涙を流して浅い息を漏らし、必死でもがくだけだった。使い魔は退屈そうにため息を吐いた。
そのとき、意外なところから返事が返ってきた。

QB「――ここでまどかを責めるのは、酷なんじゃないかい?」 <> 1<>saga<>2012/04/05(木) 14:30:17.63 ID:+Rg7gGZSo<>
使い魔「あら、いたの?」

使い魔が顔だけ振り向かせた先、部屋の入り口付近に、まどかと一緒にここまでやってきたキュゥべえが鎮座していた。
彼は別に使い魔を止めることはしない。苦しむまどかを平然と眺めている。
彼は単純に、このよくわからない使い魔――そもそも本当に使い魔か――を放置する訳にはいかないのだった。

QB「彼女の撃った拳銃はね、暁美ほむらが彼女の為に用意した特製の兵器なんだよ。
並みの使い魔なら、間違いなく粉々になっているはずなんだが……」

使い魔はまどかの拷問に戻りながらも、マミの顔を張りつけてニヤニヤしながら聞く。

QB「そもそも」

QB「君は使い魔にしては自我が強すぎるし、性能も並み外れて高い」

QB「古今東西、これほどの力を持った使い魔を、僕は一度として見たことがない」

QB「――その力は、誰からの贈り物だい?」

それは、核心に迫る問いだった。
未来から突如として来襲した、未来の知識を持つキュゥべえと、もう一人の鹿目まどか。
その二人が現れてからというもの、主に見滝原周辺において、魔女たちの力が徐々に増大して来ていた。
キュゥべえは詳細な説明を要求してきたが、未来から来たキュゥべえには延々とはぐらかされて来ている。
もしここでこの問いの答えを得ることが出来れば、情報格差による不利な立場も逆転できるはずだった。

そのように重要な情報だったのだが、使い魔は片手間に、適当に答える。
苦しむまどかをうっとりと見下ろしながら、

使い魔「私はてっきり、あなたの仕業だと思っていたんだけどねぇ」

QB「質問に答えるんだ」

いつになく押しの強いキュゥべえ。
使い魔は振り返りもせず、どこか拗ねたような声色で一応の答えを返す。

使い魔「……鹿目まどかからよ」

QB「……どっちの?」

さらにキュゥべえは追及を続ける。
まどかの首を片手で締め、もう片手をその髪の中に泳がせる使い魔は、ようやく面倒くさそうに振り返った。

使い魔「あっち! でも、それ以上のことは分からないわよ」

QB「……なるほどね、十分だ」

二人の間だけで通じるやりとりだった。 <> 1<>saga<>2012/04/05(木) 14:31:15.74 ID:+Rg7gGZSo<>
そのときゴトッという音がして、使い魔はハッとしてまどかに視線を戻す。
さっきまで使い魔の手首を必死で握っていたまどかの手が、力なく床に落ちた音だった。
それを見て、突然血相を変え、甲高い悲鳴を上げる使い魔。

使い魔「あら、いけない! この子、もう死んじゃいそうじゃないのっ!」

あたかも、まどかが苦しんでいることに今初めて気付いたかのような驚きようだった。
手をパッと離すと、まどかの顔が力なく横に倒れ、風船の空気が抜けるように浅い呼吸音がした。
使い魔はその首の下に手を差し入れて、優しく抱き起こした。その表情は慈愛に満ちていた。

使い魔「私は死体で遊ぶ趣味はないの」

使い魔「ほら、しっかりして……大丈夫? あぁ、つらかったわね……」

軽く揺り起こし、使い魔は頬ずりをした。ほろりと涙までこぼしていた。
まどかは、ぼんやりと薄目を開ける。しかし周りの光景を見ても状況が思い出せないようだった。

まどか「……マミ……さん……?」

寝惚けた頭の前によく見知った優しい顔があったので、まどかは疑うことなく安心した。
へら、と笑った顔は母親を見つけた赤ん坊のように幼かった。まどかはまだ寝惚けていた。

その首に、再び、勢いよく使い魔の指が襲いかかる。

使い魔「やったっ! 生きてたわ!!」

まどか「ッッ!?」

ガンッと頭を床に打ちつけられる。その上に馬乗りになって元気よく締めつけてくるマミ。
その肩が呼吸に合わせて上下し、熱く汚い息がまどかの顔面に吹きかけられた。
まどかは目を白黒させて、理不尽な暴力の前に為す術もなく晒されていた。

使い魔「……これじゃ、契約の願い事を言うことも出来ないわね」

使い魔「果てるまで付き合ってあげるから、安心なさい……!」

まどか「……!……やめ……って……!?」

ようやくまどかの瞳に光が戻った。状況を思い出して必死で抵抗を再開するが、どの道逃れられなかった。
視界の半分は白や赤の光の乱舞に覆われて、その隙間から異常な興奮状態のマミの顔が覗いている。
混濁する意識が再び遠のき始めたとき、脳内に直接響き渡るような声が聞こえた。それはテレパシーだった。

QB(――――まどか――――――)

QB(――テレパシーを使っても、契約は可能だよ――――)

QB(――このままじゃ、どうにも――ならない―――――)

QB(――――契約するなら―――――――今しかないよ!)

その声はやけにはっきりと聞こえてきて、まどかの頭だけは少なくとも息を吹き返したようだった。
もはや、助かるためには契約するしかなかった。キュゥべえの思惑通りだとしても、それは本当のことだと思った。

しかし、それにもかかわらず、まどかは迷いなく答えていた。

まどか(―――駄目――――) <> 1<>saga<>2012/04/05(木) 14:33:28.42 ID:+Rg7gGZSo<>
そのとき、不意に、締めつけが少し弱まった。
ドッと頭に血液が届くのが分かる。もっとも、まだ手を離したわけではなかったけれど。


使い魔「……本物の巴マミは、こんなことする訳ないって思っているんでしょ?」


先までの興奮状態から一転、使い魔は急に真顔で囁いた。
血液が届き、視界が徐々に晴れ渡っていく。目の前には口だけで軽く息を整えているマミの顔があった。
まどかの晴れた視界いっぱいに、その無表情が広がって、不気味に近づく。瞳孔がほとんど散大してしまっている。

まどかは怯えながらも、もちろんその通りだ、と心の中で思った。


使い魔「――ところが、そうでもないのよ?」


囁く。
瞳がガラス玉のように、生気を失っていく。

使い魔「というのも、私の本質は真似することだから。私は巴マミの深層心理を読み取ったの。あなたのもね。
さっき、あなたたちに当たっていたスポットライトみたいなのがあったでしょう? あれでバッチリともらったわ」

使い魔「つまりね……」

使い魔「これは、巴マミの深層心理を読み取った結果の行動なんだよ?」

まどか「……」

使い魔の瞳に、ふっと生気が戻る。
今度は一転して優しい暖かな光が表情に満ちる。使い魔は、さらに囁く。

使い魔「彼女は、あなたに依存している」

使い魔「あなた無しでは、もう生きられないの」

使い魔「けど別に、彼女が自ら望んだわけじゃないわ」

使い魔「他でもない、あなたが、彼女をそうしたのよ」

まどか「……!?」

そんなはずはない。まどかは絶句していた。
まどかの眼前、唇も触れ合う距離に迫るマミの顔。巴マミは、鹿目まどか無しでは生きられない――。
そんなはずはない。そんなはずはない。そんなはずはないのに。


まどかは、口元に浮かぶ猛烈な笑みを消すことが出来なかった。


それをじっと見つめたあと、マミは満足げに微笑んだ。
口元がキュッとつり上がる。歯の隙間から漏れた吐息が、まどかの半開きの口内に侵入する。使い魔は、さらに囁く。

使い魔「……自覚出来たわね」 <> 1<>saga<>2012/04/05(木) 14:34:29.06 ID:+Rg7gGZSo<>
使い魔「それじゃあ、もっといっぱい教えてあげるわ。彼女の一番の秘密、とか」

まどか「……!」

顔が元に戻らない。それどころか笑みはさらに深く醜くなっていく。自覚していた。まどかは手で口元を隠そうとした。
しかし使い魔がさっとその手首を捉えて、床に優しく押さえつける。口元に浮かぶ笑みが止まらない。唇を噛んだ。止まらない。

そして使い魔は、さらに囁く。
まどかはごちゃまぜの感情の中で、その言葉に笑みが広がっていくのを自覚しつつも、聞きたくないと思った。
これ以上聞いてしまったら、自分はもう先輩の前でどんな顔をすればいいのか、いや二度と顔を合わせられない、と思った。

しかし使い魔は、囁く。

使い魔「彼女は……いいえ」

使い魔「わたし、は――――」

上下の唇が糸を引きながら離れる。最後の一言を告げようとする。
まどかは目を閉じて首を振った。わずかな間を持たせて。しかしすぐに――

使い魔「あなたの、




「ちょっとちょっと――――」


重なる声。同じ声。 <> 1<>saga<>2012/04/05(木) 14:35:33.87 ID:+Rg7gGZSo<> .
.
.
.
.
「勝手に他人の秘密をバラすのは、よしてもらえるかしら?」
.
.
.
.
. <> 1<>saga<>2012/04/05(木) 14:40:27.45 ID:+Rg7gGZSo<>
使い魔「――がはっ!?」

次の瞬間、使い魔は椅子をなぎ倒しながら、壁に叩きつけられていた。
その身体に黄色のリボンが絡み、キュルキュルと滑りながら巻きついていた。

カチャ、と割れたガラスを踏む足音が聞こえた。
先のまどかの発砲で砕け散った窓の、緑色の枠を踏み越えて、声の主がやってくる。

まどか「――!!」

夕暮れの中から溶け出してきたような憂いを帯びた色調。
銃身のようにストレートに伸びた背筋、優雅な挙措に、丸みを帯びた雰囲気。
くるくると、穢れを寄せ付けない繊細極まりない黄金の巻き毛。

口が力強く開く。凛として響く。


「私の名前は巴マミ――」

「見滝原中学の3年生で―――」


「―――――――――魔法少女、よ」 <> 1<>sagesaga<>2012/04/05(木) 14:42:44.11 ID:+Rg7gGZSo<>
マミ「今日はここまで」

ほむら「次回は諸々の決着を一気につけるわ」

杏子「あたしは委員長の魔女の結界でズタボロ」

まどか「ほむらちゃんが足に重傷。……さやかちゃんは?」

さやか「あたし? 行方不明ですケド」

魔まどか「ちゃ、ちゃんと活躍するってば……」
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/05(木) 23:27:01.65 ID:iMwu5n550<> マミさん!これでかつ…る? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/06(金) 00:28:42.12 ID:8eFmvNEOo<> 乙
マミさん復活ktkr

微妙に不安だなー
俺は展開予想を当てられちゃうと無茶するタイプなのかどうかじゃなくて
文章を切り刻まれて凹むタイプか燃えるタイプか聞いたつもりなんだが
まーレスがつかないスレ見ると
どんなレスでもないよりマシだからよこしやがれって人たちが魚河岸のマグロ状態だし
半日かけて書き殴ったうぜえくらいの長文レスでも作者のモチベを上げると信じて
いってみますか <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/06(金) 00:31:47.96 ID:8eFmvNEOo<> 俺的まとめ
場面切り替えが激しくてわかりにくいから
人物別にまとめたら分かりやすいかなと思ったが別にそんなことはなかったぜ

・魔どか
 メインキャラにして改変部分の中核の担い手
 「私達五人、みんな一緒に生き残ること!!」の祈りで契約し、
 「今日(※ワルプルギス戦)の夢を見た日まで時間を戻して」もらう。
 ところが時間を戻した先には契約前の自分が存在していた時点から誤算が始まる。とりあえずほむホームに同棲する。
 魔法少女としては非常に強力。時間遡航の願いによりほむほむの世界にも入門済み。
 自分がこの世界の異分子であり、助けられなかったまどかとして使い捨てられるという結末を読み取って絶望していく。
 自分のこと、前の世界でのことを知っているのはほむほむだけのため、ほむほむに強く依存しているが、
 信用されていない・隠し事をされている・ほむらちゃんの方は上書きされてずっと生きていけるという事態に隔意を抱く。
 まどかの事を一ヶ月遅い自分とみなし、自分の「正しい判断」を押しつける傾向がある。
 自分がワルプルギスを撃破した後消える存在であるとほむらの推論を聞かされたらしい?
 強気で魔法少女の真実を全員にバラすが、マミさんが凹みっ放しなのに苛ついている。
 ワルプルギス戦に備えて遠征し実力を急激に伸ばす。
 マミさんの救出時に両親に出会ってしまい、私はあなたの娘じゃないと拒絶する。(パパママには当然本来の意図とは別の意味に受け取られる)
 マミさんへの風当たりがきついせいで自分にも失望される。
 ほむほむに夕食を2日すっぽかされて病み、自分は消えるから本物とよろしくやってよと切れる。
 ちょっと言い過ぎたかと思っていたが、ほむほむが暴走し始めたのを見てもうお終いだと告げる。
 この時点で魔法少女から見ると魔女の反応が見える。
 意識を失ったままエルザマリアの結界に巻き込まれる。
 ほむほむが駆けつけて目覚めるが、来て欲しがっていた内心とは裏腹に距離をとってしまう。
 このときソウルジェムが濁らない自分の異常に自覚あり。
 ぎすぎすしながらも孵化したエルザマリアと戦闘開始。
 もはや足手まといと化したほむほむを置いてけぼりに戦闘を推移するも、勝利の見えたところで戦闘を一方的に放棄、殴り飛ばされる。
 このとき何を考えたかは不明だが、ほむほむが戦闘を放棄するのに介入。ほむほむが死ぬのは気に入らない様子。
 自身の真情を吐露し、ようやくほむほむに自分の望みを察してもらうことに成功。
 二人でエルザマリアを撃退しようとするが、しぶといエルザマリアにほむほむの足を切り落とされてしまう。

・ほむら
 魔どかがついてきてしまうというイレギュラーに戸惑うも、同棲したりまどサンドしたりとうまい方に転がってほくほくしていたのも今は昔。
 魔どかと同棲してレベリングし、シャル戦に介入して運命を変えることに成功。
 魔どかに最期まで一緒と約束する。
 強化されたエリーに負け、魔どかに助けてもらう。
 魔どかのジェムを優先するあまり自分のジェムを濁らせて杏子戦でピンチに陥る。時間停止をフラッシュで返され敗北。
 魔どかに対して隠し事があるらしい。
 魔法少女の真実がバレる。ほむほむは隠そうとするが魔どかにばらされて台無し。
 さやかのケアを試みるが、仁美がまどかを不審に思ったため水際阻止失敗。
 さやかのレベリングを兼ねて魔女退治を始める。だんだん打ち解ける。
 まどマミを助ける。思い切れないままのマミに説教。
 杏さやと親睦を深める。いざとなったらお前らだって見捨ててやるぞと強がる。
 放置された魔どかになじられるも罪悪感を感じていない自分に気づく。この時間軸を捨てる算段も立て始める。
 自棄になった魔どかに怒るも、逆に嘘吐きとなじられる。「まどか」に断罪されたことで信念にヒビが入る。
 QBにすら時間遡航を勧められるが、却ってヤンデレとしての目覚めを自覚する。なりふりかまわずやる気になる。
 仁美を脅迫するが、さやかに邪魔され魔どかに邪魔され殺害ならず。ただし本気で[ピーーー]気があったかは疑問。
 魔どかに別れを告げられ、時間遡航を決意。しかし本当は別れたくないと思っていることと、自宅で魔どかの悲しみの後を発見し思い直す。
 魔女のそばで意識不明の魔どかの元に駆けつける。魔どかに謝るが的外れなこともあってにべもない。
 魔どかに隠している秘密について問い詰められるが話せない。エルザマリアを倒したら聞き出すと約束させられる。
 エルザマリア戦で、戦闘能力では完全において行かれた事実を突きつけられる。この世界では魔どかと魔女がやたら強いらしい。
 魔どかに祈りを否定され、戦闘能力でも単なる足手まといと化して自信を喪失、ここで死ぬのもありかと諦めるが、
 魔どかがそれを許してくれない。魔どかの告白で今度こそ魔どかの願いを知ったと思い仲直り。
 でも予想を遙かに超えて強大になったエルザマリアに足首をばっさり切られてピンチ。

・未来QB
 魔どかと契約した際についてきた事情通のQB。
 この時間軸のQBを情報弱者として見下している節がある。
 互いのリンクはしてないみたいなので未来QBを潰したら代わりはいないような気もする。
 何か企んで暗躍しているが、描写が伏せられてるのでよくわからん。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/06(金) 00:34:32.29 ID:8eFmvNEOo<> ・マミさん
 まどかが二人という異常事態に時間遡航のことを早期に知る。
 最初は信用していなかったが、シャル戦で助けられて和解する。
 杏子とは喧嘩別れした元相棒の仲。
 途中までは良い調子だったが、魔どかに魔法少女の真実をネタバレされて絶望。戦闘不能の引きこもり化。
 魔女(=魔法少女)を殺したくなかったり死にたくなかったりいっそ魔女になろうかと思ったり煩悶とする。
 仲間を殺したり殺されたりする悪夢に悩まされて魔法少女を拒絶し、毎日見舞いに来てくれた一般人のまどかにどんどん傾倒していく。
 魔女を殺せなくなり逃げるようになって杏子に怒られる。
 魔女からまどかを守ろうとするが銃が撃てなくなっており、いっそかばって[ピーーー]ばいいじゃんと自棄になる。
 魔どかに怒られたが覚悟は決まらない。杏子にも説教されるが決まらない。
 でもQBは撃てた。
 覚悟は定まらないけど魔女が大量発生した為、杏子の応援要請に応じて出かける。
 まどかと一緒にイザベルの結界に取り込まれ、まどかのピンチに駆けつける。

・まどか
 警告されてとりあえず契約は諦める。
 ただしみんなが契約して自分だけ戦力外の状態に関するコンプレックスは依然としてあり、
 特に魔どかが自分は契約しているのにまどかに契約するなと説教することについては反発が強い。
 自分の契約をダシにして脅迫したりもする。
 QBの裏切りを見抜いたり、たまに鋭いところも見せる。
 マミさんと仲良くなる。
 魔法少女の真実がばれて落ち込んだマミさんを毎日見舞い、打ち解けられる。
 さやかは杏ほむにまかせ、マミさん担当のような役割に。
 マミさんの扱いが酷いと魔法少女になることを検討したり、魔どかに失望したりする。
 マミさんを一生懸命説得してようやく立ち直ってきたかというところでイザベルの結界に取り込まれて分断される。
 マミさんに化けた使い魔と戦うも、あっさり殺されそうになる。
 そこに現れたマミさんに助けられる。

・さやか
 さんざん警告されてもあっさり契約、安定のさやか。
 杏子にさらわれるも逆にメロメロにするという戦果を上げる。
 魔法少女の真実がバレ→仁美に宣戦布告されるのいつものコンボで精神的に死ぬ。
 ヘタレて告白できず、仁美を見送るが仁美も失敗した様子で安堵。
 ほむらに弟子入りして魔女退治。
 まどかが二人いることに疑問を抱く。
 告白の経過を仁美に問い詰めるが、仁美は妙に強気。
 ほむほむの脅迫シーンに駆けつけて仁美を救助、お返しに恭介と恋人になれたから祝福しろと迫られる。
 たまらず逃げ出したが、思ったよりも絶望できない。自分にとって恭介がその程度の存在だったのかと懊悩する。
 使い魔にやつあたりしながら魔女を探し回る。
 現在行方不明。(どの魔女の元に向かったか不明)

・杏子
 QBに唆されて見滝原に来襲、さやかをさらったまでは良かったがあっさり逆に籠絡される。
 さやかにメロメロになって和解、ワルプルギス戦にむけた協力を約束させられる。
 ほむさやと仲良くなった。マミさんには正義の魔法少女で居てほしい。
 さやかが心配だが三角関係の件では部外者であることを指摘されて逆上。
 さやかを探すために魔女の元に突撃、パトリシアの結界に突入し交戦開始。
 強化された委員長にガラスのシャワーを食らってピンチ。

・QB
 イレギュラーが現れたり未来の自分が現れたりでそれなりに大変。
 未来の自分は思わせぶりなことだけ言って情報は伏せるわ協力してくれないわで不満たらたら。
 まどかに契約を迫りに行ったらマミさんに撃ち殺されたりわりと大変。
 それでもくじけずにイザベル結界に同行。
 使い魔?から魔女の強大化についてデータをもらってご満悦。
 とりあえずまどかの契約は諦めてないらしい。

・仁美
 コワイ子。
 想い人をぶんどった恋敵相手に、親友だから祝福しろよと言ってのける鉄面皮。
 ほむほむに殺されかけてもまるで動じない肝の据わった女。
 杏子にカマかけて大体の事情を察するも、怒らせたため現在置いてけぼり。
 (それがプラスに働いてさやかと接触できる可能性はある)

・恭介
 蚊帳の外の子。
 あんこちゃんがネタバレしたのでさやかの契約内容と魔法少女の真実について察した。
 あんこちゃんと一緒にパトリシアの結界の中でピンチ。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/06(金) 00:36:53.35 ID:8eFmvNEOo<> 未解決の伏線or重要じゃないから省略されただけかもしれない描写
・魔どかが魔女にならないと言ったときのほむほむの反応(ほむほむが隠している秘密と関係がありそう)
・魔どかがほむほむの留守中ほむホームで見た物
・杏子尾行時点でのほむほむの後悔と嫉妬(後悔→さやかの魔法少女化?嫉妬→さやかに対して?)
・鹿目家屋根でいずれ打ち明けることを約束したほむほむの隠し事(エルザマリア戦後に聞き出すつもりっぽい)
・見滝原の魔女は強大になっているようです→魔どかの半魔女化と何の関係があるの?
・魔どかがママを盛大に誤解させた件のまどかに対する波及が全く描写されてない
 (魔どか側には世界との決別としての意味があった模様。鹿目家にもどってまどかは両親とどうなった?誤解は解けた?)
・(>>902)魔どかが強くなった理由にはほむほむが何か策を授けている?(何か伝えたとすれば花見の席だと思われる)

まあいいやと思って流してたけどこの際突っ込んでみたい点
・魔どかさんの「私達五人、みんな一緒に生き残ること」ってのは契約の祈り?
 「今日(※ワルプルギス戦)の夢を見たときに時間を戻して」が願いの内容にも見えるが。
→>>847では「5人で生き残りたい」で契約したことになってる。
つまり、「5人で生き残るために夢の時点からやり直したい」が正確な願いの内容?
・ワルプルギス戦の夢からほむほむ転校の昼休みまで魔どかさんが
家族とご飯食べて登校してるように見えるけど、この間まどかはどうしてたの?
(まどかが上書きされてないのなら本来ベッドで鉢合わせするのが正しくないか?)
・シャルロッテの本体は人形なのにグリーフシードは恵方巻きさんから出てきたの?
・杏子はどうやって魔どほむの追跡を撒いたのか?(電車の時点で幻術を使える描写はない)
・電車上の対決の描写が分かりづらい
 魔どかが渾身の一撃をあっさり食らったのはどうして?
 ほむほむは何をしようとしてどうなった?杏子を時間停止中に蹴ろうとして意識不明→勝手に転がり落ちてった?
 盾にしまっておいた(一番安全だと思われる)ソウルジェムがなんでマミさんに預けられてた?
・Wまどかはさやかが気持ちを告白することを応援したいと考えてるようですが、
 魔法少女の真実を知って告白する資格がないと思い込むのがさやかだったのに、魔女化についてぶちまけることが
 どうやってさやかの告白を応援することにつながると魔どかさんが考えたのかわかりません
・マミさんのグロ悪夢も実はようわからん描写だなーと思ってたり
 マミさんはまどかの何に気がついた?刃物で武装してることに?
・>>654は伏線?誰のいつの描写かさっぱりわかんね
 ありえる可能性としては魔どかの前ループでの出来事だが、それでは意味が通らない
 それ以外のループでの出来事なら魔どかが覚えている道理がない
・魔どかの半魔女化について登場人物が認識していく様子が伏せられすぎのため、ほむほむが魔女化について言い出す場面が唐突に感じる
・芸術家の魔女は>>600あたりで登場している
 >>625でほむほむが使い魔も魔女も丸ごと焼き尽くした
 これが芸術家の魔女であることは>>847のあらすじで明言されている
 が、>>904では再び芸術家の魔女の結界と記載されている
 →まっとうに解釈するなら、株分けした使い魔が成長したか、誰かの陰謀でグリーフシードが孵化させられたか…?
  ミスか伏線か今はちょっと判断が難しい
・結局マミさんは今鉄砲撃てるの?撃てないのならQBを撃てたのは何故?撃てるのならなんで使い魔の銃は不発だったの?

今後の展開について
魔どほむ→エルザマリア撃破
杏子→パトリシア撃破
まどマミ→イザベル撃破
さやか→その他の魔女と戦闘有り?場合によっては魔女化?
仁美・恭介→さやかの真実を元に三角関係に新展開
これだけやってようやく一段落。
ほむほむの隠し事と魔どかの祈りが叶っていることに対する伏線回収
魔どかの魔女化、見滝原の魔女の強化と未来QBの企みに関する伏線回収
さらにワルプルギス戦
魔どまどの同時存在を世界が修正
これくらいやってようやく終わりが見える?
当たるとか外れるとか以前に、まとめるだけで疲れたので展開予想とか勘弁
でも恭介が何事もなかったように仁美とキャッキャウフフしたら殺意が漲るな
これだけ知っといてそれはないと思うが、
見直してると魔どほむ・まどマミ・杏さやがベースに見えるんで不安 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/06(金) 00:40:34.56 ID:8eFmvNEOo<> うだうだ言ったのをまとめると

出し惜しみし過ぎて>>1の脳内にしかない情報が多すぎる
伏線張って寝かしてあるつもりなんだろうけど
配分を間違ってわけわからん状態になってると思われます
上で突っ込んだ点、意識的に伏せてあるのは別ですが、
それ以外は描写不足で伝わってないと考えてください

とはいえ即興とは違ってこのSS設定が複雑
正直見くびってましたゴメンナサイ
俺の読解力もだいぶ不足気味

冗談めかして言ったけど更新速度上げろってのは割とマジです
時間をおくほどこのSSの記憶が揮発していくから間隔が開くほどに設定を忘れてまう
定期的に少しでも更新されればそれが上書きされるので
わかりにくいって問題の8割はそういう手段で解決可能
理想的には週1の更新があれば、
わかりにくいと感じる事はこのSSで言うと場面切り替えのやたら激しい魔女戦くらいになる筈

それではこのSSの完結を祈って。
<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/06(金) 01:05:32.73 ID:yks1ZSVAo<> まとめるならもうちょっと読みやすくしてくれよ
別に読めるから構わんが <> 1<>sage<>2012/04/06(金) 01:39:54.48 ID:EqczXnaSO<> 投下がないから証明はできませんが自称1です
丁寧なまとめありがとう すごく的確でした
ただ言い訳(とか蛇足的補足)も相応にあるのでそれは次回投下時に、最短で今週土曜に、隅っこのほうに書いときます
てかマジでお疲れ様です <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/06(金) 02:46:50.43 ID:OHzcW2A6P<> どいつもこいつものろけやがってよぉ! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/06(金) 04:56:41.38 ID:AmEHquN8o<> お疲れ様 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/04/08(日) 22:41:57.82 ID:muWulyo5o<> 乙乙! <> ◆D4iYS1MqzQ<>sagesaga<>2012/04/10(火) 23:27:10.81 ID:43co6dr4o<>
酉付けました>>1です。再開します。
このレスはスルーすることができます。
――――――――――――――――――――――――

■>>952〜954の名無しさんのまとめ(主に>>954)への言い訳と補足

なんか書いているうちに長くなってきて、これ話の内容に使えばよくね?ってなったので……。
これから説明可能なところは、先の展開を読んで頂ければわかるようにしておきます。
今更そうするわけにもいかないところだけ、ここで言い訳なり補足なりすることにします。
予想されたことに対して言及しないときはその通りということです。
指摘されなかった伏線もあったのでこっちで気付いてもらえるように頑張ります。
ならって人物別に行ってみます。

・魔まどか
 花見の席にて、ワルプル撃破後に消滅する運命のことのみ、ほむらから聞かされる(描写なし)。
 その話を聞いて焦ったため、先走ってソウルジェムの真実を暴露。暴露自体は元々考えていたこと(描写なし)。
 タイミング早すぎたと後で自分でも思うが、今更止まれないので気付かないふり(描写なし)。
 強化した理由は純粋な実力と市外の魔女退治と、あと未回収伏線によるなにか(これが最大の理由)。
 
・ほむら
 魔まどかの出現に怒りはしたが、戸惑ってはいない(描写通り)。
 杏子尾行時点での後悔と嫉妬……後悔→魔まどかと険悪になったこと。嫉妬→さやかへ。

・QB(未来)
 コイツの企みについては、さやかを励ましたシーンが今のところ一番分かりやすいかも。回収予定でもある。
 
・QB
 まどかと契約したいので、魔まどかが邪魔で仕方ない(描写なし)。QB(未来)を出しぬこうとしている。

その他
・ほむら留守中ほむホームで魔まどかが見たもの……回収しようとしたら矛盾したので、なかったことに。
きっと百合った薄い本かなんかじゃないですかね。
・初日のWまどかの矛盾……魔まどかとママを会わせたかったご都合で。
 一応まだ二人の存在が不安定だったとかいう言い訳もないことはない。
・シャルロッテのGS出現の描写……演出上の都合。
・杏子戦の描写ぜんぶ……>>1が疲れてた。ゴメン。
・半魔女化と魔女強化の関連……回収予定
・詢子さんの誤解のその後……回収予定
・>>654の分からん描写はほむら視点。回収予定。
・芸術家の魔女と使い魔全滅したはずでは?……正直に言うとミス。
 てか推敲中に間違って使い魔逃走の描写を消したっぽい。今日一番の言い訳です。
・マミのマスケット……基本撃てない。QB撃ったのは奇跡的な確率で。

――――――――――――――――――――――――

プロットが今の形に定まったのがだいたい杏子戦後くらいからなので、
それ以前の投下を見返すと矛盾がちらほら……。でも半分くらいはバレないかも。
いえ、たいてい想像力をたくましくすれば解釈次第で辻褄は合っちゃうんです……。

ツッコミはどんどん入れてもらえると、こちらとしても捗るので嬉しいです。お願いします。
ただ返事するために毎回投下用意しなくちゃいけないのってアホらしいですね。
酉使えって話でしたね。次スレも近いしあった方が便利だと思ったのでつけました。
まとめてくれた方、ご協力ありがとうございました。それでは再開します。
結局まどマミしか入りませんでしたが、こっそりと実験的な内容です。 <>
◆D4iYS1MqzQ<>saga<>2012/04/10(火) 23:32:18.01 ID:43co6dr4o<>
〜芸術家の魔女の結界内〜

足元に散らばる宝石の数を数えていた。砕け散った夢のかけらの数を。
緑色の窓枠から高い日差しが四角く差し込む。砕け散ったガラスに光が拡散されて、無数の煌めきを放つ。
壁に架かっていたはずの肖像画がベッドの下でホコリまみれになっている。椅子の足が割れて木片を散らしている。
狭いながらも一応整頓されていた室内は、原形を留めないほどに荒れていた。

しかし、それはかえって開放感のある光景だった。
寒々しい空気は陽光に照らされて温もりを帯びるようになっていた。
閉鎖的な室内に齎された破壊が、部屋を封じ込める鎖を断ち切ったのだ。

そして向かい合う二人。
同じ顔といえばまさしく同じ顔。同じ服と言えば同じ服。同じ体型に同じ姿勢。同じ声。
しかしその身に纏う雰囲気だけは、完全なる対称だった。

使い魔「!?――――――この、死に損ないの魔法少女がッ!」

使い魔「武器を封じられておきながら、よくもここまで来れたものね!」

怒り狂うニセモノ。

マミ「……銃は怖いものね」

マミ「あんな恐ろしいもの、誰かに向けたりできないわ」

それを憐れむ本物。

マミは、驚くべき精巧さを持つ自らのコピーに対して、驚くどころか初対面の反応も見せなかった。
一目見た瞬間から、これは閉鎖された室内に残された最後の遺物だと確信していた。ならば破壊するのみ。

使い魔はそれと意図せずに、マミの心の中にいる、弱く憶病な、ゆえに凶暴な、もう一人のマミを体現していた。
高い再現力が、この相対を実現させてしまっていた。マミには詳しい理論は分からなくても、対処法は分かった。

マミ「……幼いわね」

逆光の中の影がわずかに顎を下げる。四肢を縛られた使い魔を見下ろす。
使い魔はいまだに、なぜ、なぜ、を繰り返す。対して、バキッという、靴がガラス片を踏み砕く音。

マミ「物真似にしては上出来だけど、どうせならもっと徹底的にやりなさい」

それは使い魔が美しいと感じた魔法少女の姿ではなかった。
前髪のベールの隙間から見下ろす視線には、憐れみや悲しみの色を越えた、それ以上に強い、容赦のなさがあった。
使い魔を縛るリボンを絡めた両手を胸の前でクロスさせて、冷徹な敵として立ちふさがる。それはある意味優しさだった。

なぜなら、魔女にしろ使い魔にしろ、殺されない方がよほど可哀想だから。
これは新しい正義。行為としては同じでも、その理念はまったく別の方向だった。
しかし、やはり正義。マミは、今も変わらず正義の魔法少女として立っていた。

使い魔は、これもまた形は違えど、美しい魔法少女だと感じていた。ゆえに欲した。
しかし、その身を戒めるリボンの端を握りしめるマミが、口を開く。最期だった。

マミ「銃が使えないから、何だというの?」

マミ「勝手に他人のことを分かったような口聞いて」

マミ「あなたもあなたのご主人様も、何にも分かってないわね」

マミ「聞いて驚け! 刮目しなさい!」

マミ「――――私の本質は、銃なんかじゃないわっ!!」 <>
◆D4iYS1MqzQ<>sagesaga<>2012/04/10(火) 23:33:49.04 ID:43co6dr4o<>
使い魔が何を言う暇もなかった。
言葉の終わりと同時に、使い魔を戒めていたリボンが煌々と光り輝き、収縮する。
クロスした腕を一息に引いて、リボンが千切れる。余りのリボンが使い魔を繭のように覆う。
白く輝く卵が一瞬見え、すぐに光量オーバー、室内を真っ白に塗りつぶして。

使い魔「――ッ!!」

最後に、内側からくぐもった爆発音が鈍く響いた。断末魔というには少し静かすぎた。
それはトンネル内の反響のように長く間延びして響いて、それから徐々に静寂が戻ってくる。

思い出したようにリボンが解けていくと、卵の内側が晒された。そこには何も残っていなかった。
魔法少女の巴マミが、魔女の使い魔を退治したのだ。当たり前のことをしたまでなのだ。

マミ「……」

しかし沈黙が痛かった。集中が切れるとリボンが溶けるように消えた。薄い床板のわずかな焦げ目が目立った。
生じた空白が、彼女の健在時にも増してその存在を主張していて、マミは思わず一歩下がった。

改めて滅茶苦茶に荒らされた部屋を見渡して、深くため息を吐いた。
肩にかかる巻き毛がなぜだか鬱陶しくて、手で後ろに払う。緑色の窓枠に腰かける。
部屋に残る使い魔のにおいにイヤイヤするように首を振って、窓の外に視線を逸らす。

彼女は笑っていた。
涼しい春風が吹き込んで、マミの上気した頬を冷やした。
ぶわっと舞い上がる前髪を押さえながら、あくまで窓の外を見ながら、マミは口を開いた。

マミ「――鹿目さん」

まどか「はい……」

マミ「……彼女、なにか言ってた?」

まどかが立ちあがっていた。その肩にはキュゥべえがおとなしく乗っていた。
穏やかな空気が流れる。ここは春で、解放されているのだった。
その陽光の中の横顔を見つめているうちに、まどかの浮かない顔がにわかに晴れていった。

まどかはマミのためだけを思って毎日見舞いにやってきていたわけではない。
私だけがマミさんのことを気遣ってあげられるんだ、という驕りがいつしか芽生えていた。
驕りは徐々に弱ったまどかの心に巣食い、その果てはマミへの独占欲へと至っていた。

しかしいま、二人は春の涼風に吹かれながら、通じあえていた。
まどかには、マミの気持ちが分かった。もう許されているのだと。むしろ自分の方が受け入れられているのだと。
依存などしていない。救ってあげるのでもない。救い合っているのだと。まどかはこう答えた。

まどか「――大したことじゃなかったです」 <>
◆D4iYS1MqzQ<>saga<>2012/04/10(火) 23:35:26.12 ID:43co6dr4o<>
マミ「そっか」

じゃあ、と言ってマミは顔を戻した。片足を曲げ下の壁を蹴って窓枠から下りる。
光の中で、二人はどちらからともなく手を取り合った。向かい合うと、何を言おうとしているかも分かった。
マミはこれから魔女を救うつもりで。まどかはそれを陰から支えるつもりで。しかし多くを語る必要はない。

マミ「――次、行きましょうか!」

まどか「……!……はいっ!」

マミの揺るぎなく力強い宣言に、まどかは一瞬目を潤ませ声に詰まりながら、元気よく返事した。
もはや、手を取り合う二人に魔法少女の真実など当たり前の前提に過ぎなかった。二人はそれを乗り越えて、先を見る。
いずれ魔女になる運命だとしても、魔女を人間を魔法少女を救う。その難題に挑む覚悟を決めていた。

マミ「……来たわね」

と、先に察知したマミがちらりと振り向いた先、部屋の入口の扉が外側からバンバンと叩かれていた。
鍵はないのだからノブを回せば開くはずだが、それも分からない知能レベルの追っ手らしい。
しかし力だけはあるようで、木製のヤワな扉は今にも外れてしまいそうだった。

実はこの部屋にはもう一つ扉があった。さっきまでは椅子で塞がれていたのだが、その椅子はもうその辺の木片と化している。
そこにマミが近づいた。肌色で少し肉付きの良い槍が躊躇なく破り抜く。マミが軽く回した足による一撃。

宇宙船のハッチが内圧で弾け飛ぶみたいに、扉が勝手に外側に吹っ飛んでいった。
実際、部屋の外は深淵の宇宙空間のように真っ暗だった。扉の奥は別の異空間につながっていたらしい。

まどか「わぁ――――」

単純な好奇心からまどかの瞳が輝く。しかしワクワクする間もなく、時はすぐに巡ってきた。
物凄い音と共に背後の扉がついに倒れたのだ。二人は振り返りもせず部屋の外へと駆け出していく。

まどか「……さむっ!」

マミ「急に夜になったからだわ……でも、気温はさほど低くないはずよ」

まどか「後ろの人、来ないのかな……っていうか、来た道がなくなってる……!」

マミ「魔女が、直々に相手をしてくれるってことじゃない?」 <>
◆D4iYS1MqzQ<>saga<>2012/04/10(火) 23:40:09.73 ID:43co6dr4o<>
春の陽気から一転して、こちらは夜の世界だった。
二人はいつの間にか急な石造りの階段を上っていた。あの赤い屋根に白い壁の小さな家など、影も形もなかった。
背後を振り返っても、石段が延々と下まで伸びているだけで、二人はその只中に放置されている。

マミ「さあ、行くわよ!」

階段を上り続けるしかない。マミが迷わず走り始め、それに引きずられるようにまどかがついて行く。
両側には銃眼つきの手すりがあって、古い洋式の砦を思わせた。虚空に浮かぶかがり火が仄かに道を照らしている。
月明かりと星明かり、そしてそのかがり火だけが、二人の走行を先導した。

足元に迫る闇から逃れるように、または赤い光を追いかけるように、ほとんど影と同化しながら、二人は走り続ける。
軽快な二段飛ばしで駆ける元気なマミを見て、まどかは疲れも吹き飛ぶような気分で……。

まどか「あのー、マミさーん……はぁー、はぁー」

マミ「なぁにー?」

気分だけだった。身体は正直だった。
マミに手を引かれながら階段を駆け上がるうちに、まどかはすぐに音を上げた。
というか、魔法少女のスピードについて行った割には、これでも耐えた方だと思う。

マミは足を止めてくれない。今も石段を踏みながら重力に反逆するように高みを目指し続けている。
まどかも引きずられるように走り続けるしかない。マミは少しハイになっていて、気付いていない様だった。

まどか「マミさぁん! ストップ! 無理です! 待って下さい!」 

マミ「どうしたの!? 魔女は待ってくれないわよ!!」

まったくスピードを緩めることなく駆け上がりながら、底抜けに楽しげな声が返ってくる。
がくっと脱力したまどかは、意を決して、思いっきり弱音を吐くことにした。わかってもらえるように。

勝手に恐れて、本当の気持ちをはっきりと言わないからみんな苦しんでいるんだと、ついに理解したから。
それに、自分の身勝手な気持ちも受け入れてくれるマミに対してなら、なおさら抵抗は不要と思えたから。

弱音を吐く覚悟を持つ。

まどかは強引に足を止め、全体重をかけてマミを止めようとした。
数段まどかを引きずった後で初めて抵抗にふらついて、マミは足を止めた。

マミ「わっ……と、危ないじゃない鹿目さ――」

まどか「――私は疲れたんです! もう走れないんです!」

いっそ清々しいほどの弱音だった。
ただ、あまりに清々しいので笑ってしまったのは失敗だったか。
マミは、初めて我が子の反抗期の兆候に出会った母親のような顔をした。

マミ「それは鹿目さん、私もよ。でもね、魔法少女として、一刻も早く魔女を救ってあげないと――」

まどか「私は、人間ですよ。マミさんみたいに、体力がないんですよ」

しかしまどかだって譲らない。一言一言区切るように、自分の正義をあくまで守る所存。
そこまで言われてマミはようやくハッと気がついた。 <>
◆D4iYS1MqzQ<>saga<>2012/04/10(火) 23:43:49.51 ID:43co6dr4o<>
マミ「あら、ごめんなさい。そういえばそうだったわね。舞い上がっちゃってたかな……」

まどか「というかこれ、ちゃんと終わり、あるんですか……?」

何気なく自分で言ったことが、まどかは不意に怖くなった。
そうだ、もしこのままどこにも辿り着かないとしたら? それは怖い……。
なにより、その、疲れ損だ。

マミ「ええ、もちろん」

しかしそんな不安を、マミは自信たっぷりに否定した。
その表情は、かつて魔法少女体験ツアーと称して自分とさやかを連れ回してくれた先輩にそっくりだった。
あまりに元通り過ぎて、まさか今までのつらい悩みや苦しみはウソだったんじゃないかと、一瞬本気で考えるくらいだった。

マミ「ほら、だって、上に見えるじゃない?」

まどか「な、なにがですか?」

しかしもちろんそんなことはない。
マミはそこで一度顔を引き締めると、少し悲しげにうつむいた。
深呼吸のように深いため息を一つ。階段の先の先を指さして、一言静かに。

マミ「――――魔女よ」

視界の先にはそびえ立つ門。
魔女の本体が、階段の途切れた先、砦の天辺に鎮座しているのが小さく見えた。
どうやってか、株分けしていたのか、別口の卵が孵化したのか、とにかく紛れもない芸術家の魔女。
それは先日、絶望の淵にあったマミに重傷を負わせ、まどかの命を脅かした魔女。

初陣にふさわしい相手だと言えた。

まどか「――っマミさん! した! 階段が!」

そのとき、まどかが叫んだ。

ドドドド、という怖気のする質量を伴った轟音が、徐々に近づいてくる。
大ボスの前に階段、そしてこの音といえば、もはや答えは一つしかない。ないけど……。
まどかは、マミのワクワクした表情は勘弁してほしいと思った。こっちは生身の人間なのだ。
はるか下の方で、階段が減っていく。闇に飲み込まれていく。より正確には――

まどか「崩れてます! こっちに向かってくる……!」

二人はしばし黙りこんで、迫りくる崩落を遠く見つめていた。
やがてまどかが一つ、ため息をつき、それを合図としたように、

マミ「――走るわよっ!」

まどか「はいっ!」

今度ばかりは間髪いれずに答えていた。 <>
◆D4iYS1MqzQ<>sagesaga<>2012/04/10(火) 23:46:38.38 ID:43co6dr4o<>
マミ「今日はここまで!」

ほむら「ところで、季節感って大事よね」

さやか「一周してますがな」

杏子「次は今度こそあたしの方の決着!」

まどか「投下は日曜日!」

マミ「おわり!」 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/10(火) 23:55:41.94 ID:MajGz2Yno<> 乙ー
マミさんの
完 全 復 活
季節はリアルとリンクしてて丁度いいですよね(棒) <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/04/12(木) 08:19:38.60 ID:/WhxSvAoo<> うん、丁度いいよね
丁度いいよね

お疲れ様! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(埼玉県)<>sage<>2012/04/14(土) 20:33:38.49 ID:0S0BGx4Wo<> 乙乙! <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/05/14(月) 09:07:57.90 ID:nm4M4Xnt0<> もう一月経つな… <> ◆D4iYS1MqzQ<>sage<>2012/05/22(火) 22:21:41.51 ID:7zerNpZv0<> まだ書き溜めはないのですが、リアルが少し落ち着いたので、生存報告出します
このスレはまだ使うつもり。今月中に投下するつもり。

<> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(静岡県)<>sage<>2012/05/22(火) 23:48:10.25 ID:aBLNQJ39o<> 楽しみにしているよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/06/01(金) 19:55:06.34 ID:0vbyq/sC0<> まだかにゃ〜 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県)<>sage<>2012/06/08(金) 00:30:49.26 ID:c8kyhSsAo<> まだかのぅ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道)<>sage<>2012/06/12(火) 18:04:24.16 ID:TRduFyZ/0<> てか、そろそろ次スレ建てないとヤバくね? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)<>sage<>2012/06/28(木) 01:04:41.76 ID:G1VBH50c0<> 今月もないのかな? <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/07/13(金) 15:11:25.38 ID:o1BuAYi60<> まどか「というかこれ、ちゃんと終わり、あるんですか……?」 <> ◆D4iYS1MqzQ<>sagesaga<>2012/08/15(水) 22:52:00.71 ID:xYO3YI7/0<> どうも今後さらに時間がなくなる一方なので、誠に勝手ながら、このスレ落とします。
自分としては未練たらたらなので、万が一続きを書くとすれば、この酉で新スレ立てます。
人によっては一年以上も付き合って頂きありがとうございました。
最後はほとんど放置にして、申し訳ありませんでした。 <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)<>sage<>2012/08/15(水) 23:23:37.85 ID:jkwExWmAO<> 待ってるよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)<>sage<>2012/08/15(水) 23:50:56.56 ID:7pUMM+hNo<> 残念だが次を待ってるよ <> VIPにかわりましてNIPPERがお送りします<>sage<>2012/08/16(木) 00:33:38.35 ID:SlCpoeBvo<> 残念だが仕方ないね
万が一と言わずいつか続きを書いてほしいものだ <>